説明

低分子量化合物の測定試薬

【課題】 競合法を用いた抗原抗体反応による低分子量化合物の測定において、従来よりも、当該化合物を検出する際の感度が向上した試薬および感度を向上させる方法を提供すること。
【解決手段】 リンカーを介してキャリアータンパク質と結合した低分子量化合物で動物を免疫して得られる抗体と、前記キャリアータンパク質と結合した低分子量化合物におけるリンカー結合位置とは異なる位置でリンカーを介して標識物質と結合した低分子量化合物とを用いた、前記低分子量化合物の測定方法、および当該方法を利用した試薬により、前記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗原抗体反応を利用した低分子量化合物の測定試薬に関する。特に、本発明の測定試薬は従来の試薬と比較し、測定感度が向上した試薬である。
【背景技術】
【0002】
脊椎動物には、自己を病気から守るための免疫系が備わっている。免疫系とは、体内へ侵入した病原体を認識して攻撃し、排除する生体保護システムである。ここで重要なのが、生体自身(自己)とそれ以外の異物(非自己)との識別である。この識別で主要な役割を果たしているのが、抗体である。
【0003】
抗体は主に血液中にあり、血流にのって体内を循環している。そして病原体が体内へ侵入すると、前記抗体が当該病原体中の特定物質を特異的に認識し、結合する。この時、抗体が認識する特定物質のことを抗原と呼ぶ。抗体と抗原との結合は、「鍵と鍵穴」に相当するメカニズムで行なわれる。すなわち、抗体の抗原結合部位(鍵穴)に当てはまる抗原(鍵)のみが結合できる仕組みである。そのため、抗体と抗原との結合にはそれぞれの立体構造が非常に重要といえる。
【0004】
抗体と抗原との特異的相互作用(結合)には高い親和性を有している。例えば、マウスモノクローナル抗体とその抗原との結合における解離定数(Kd)は1×10−9から10−10にもなる。これは仮に、抗体と抗原の濃度がそれぞれ1Mとなるように混ぜた場合、96%以上の抗原が抗体と結合するほどの高い親和性である。そのため、たとえ微量の抗原であってもそれが体内へ侵入すると、抗体によって捕捉することが可能である。
【0005】
前述したように、抗体と抗原との結合には特異性と親和性という点で大きな特徴がある。そのため抗体は、夾雑物中にある微量の特定物質を検出するための道具として非常に有用といえる。そしてこの利点を生かして、実験用試薬、免疫診断試薬、治療用医薬品など、数多くの製品が開発されている。
【0006】
抗体を用いて特定物質を検出する方法についてはこれまで非常によく研究されており、数多く報告されている。しかしその中心となる部分に注目すると、数種類に分類することができる。最も代表的な方法が、サンドイッチ法と競合法である。サンドイッチ法は、抗原を二種類の抗体で挟みこむことで捕捉し、検出する手法である。この方法ではまず、一方の抗体(一次抗体)を担体に固定化しておき、この一次抗体の働きにより、抗原を担体上に固定する。次に酵素や蛍光色素などで標識したもう一方の抗体(二次抗体)を加える。この標識化二次抗体が担体上に固定された抗原を捕捉して結合する。そしてこの標識化二次抗体により発せられるシグナルを検出することで抗原を定量する(図1)。一方競合法は、一種類の抗体を用いて抗原を検出する方法である。この方法では、抗体を担体に固定化しておき、抗原を含む試料および酵素や蛍光色素などで標識した抗原(標識化抗原)を添加する。試料中の抗原量が増えると、抗体と結合する標識化抗原が減り、シグナルが弱くなる。抗原を含まない試料を添加したときにおける標識化抗原により発せられるシグナルを100%としたときの、抗原を含む試料を添加したときにおける標識化抗原により発せられるシグナルの割合から、試料中の抗原量を算出する(図2)。
【0007】
サンドイッチ法、競合法、いずれの方法でも、抗原を定量的に検出できる。しかし、その測定原理の違いにより利点と欠点がある。サンドイッチ法では、二次抗体の量を自由に増やすことができるため、シグナルを増幅することができる。そのため、微量の抗原でも高い感度で検出できる。しかし、測定に適した二種類の抗体を用意する必要があるため、サンドイッチ法で検出できる物質は、抗体と相互作用する部位を複数有した、比較的分子量の大きいものに限られる。一方競合法では、使用する抗体が一種類で済み、実験操作がサンドイッチ法より1ステップ少ないため測定時間が短く済み、抗体と相互作用する部位が少ない低分子量化合物(非特許文献1)であっても抗原を定量的に検出できる。しかし、サンドイッチ法のようにシグナルを増幅することはできないため、同じ性能の抗体を使用した場合で比較すると、感度の点ではサンドイッチ法より劣る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−240300号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】生化学、82(8)、710:2010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
低分子量化合物は抗体と相互作用する部位が少ないため、当該化合物を抗原抗体反応を利用して定量するには、サンドイッチ法ではなく競合法による測定が用いられる。しかしながら、競合法はサンドイッチ法と比較し、抗原である低分子量化合物を高い感度で検出することができなかった。
【0011】
本発明では前記問題の解決を目指したものである。すなわち、本発明が解決しようとする課題は、競合法を用いた抗原抗体反応による低分子量化合物の測定において、従来よりも、当該化合物を検出する際の感度が向上した試薬および感度を向上させる方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を鑑みてなされた本発明は、以下の態様を包含する:
本発明の第一の態様は、リンカーを介してキャリアータンパク質と結合した低分子量化合物で動物を免疫して得られる抗体と、リンカーを介して標識物質と結合した低分子量化合物とを含む、前記低分子量化合物の測定試薬であって、前記キャリアータンパク質と結合した低分子量化合物におけるリンカー結合位置と、前記標識物質と結合した低分子量化合物におけるリンカー結合位置とが異なる、前記測定試薬である。
【0013】
本発明の第二の態様は、前記キャリアータンパク質と結合した低分子量化合物におけるリンカー結合位置と、前記標識物質と結合した低分子量化合物におけるリンカー結合位置とが、2から5炭素原子分離れている、前記第一の態様に記載の測定試薬である。
【0014】
本発明の第三の態様は、低分子量化合物がステロイドホルモンである、前記第一または第二の態様に記載の測定試薬である。
【0015】
本発明の第四の態様は、ステロイドホルモンがプロゲステロン(Progesterone)であり、前記キャリアータンパク質と結合したプロゲステロンにおけるリンカー結合位置が6位または11位の炭素原子であり、前記標識物質と結合したプロゲステロンにおけるリンカー結合位置が3位の炭素原子である、前記第三の態様に記載の測定試薬である。
【0016】
本発明の第五の態様は、リンカーが、アミノ基、カルボキシル基またはチオール基を有する物質との反応性を有する、前記第一から第四の態様のいずれかに記載の測定試薬である。
【0017】
本発明の第六の態様は、リンカーを介してキャリアータンパク質と結合した低分子量化合物で動物を免疫して得られる抗体と、前記キャリアータンパク質と結合した低分子量化合物におけるリンカー結合位置とは異なる位置でリンカーを介して標識物質と結合した低分子量化合物とを用いた、前記低分子量化合物の測定方法である。
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
本発明の測定試薬に含まれる低分子量化合物に対する抗体を調製する際、当該化合物は、その小ささのために抗体と相互作用する部位が少ない。そのため、前記化合物単独で動物に免疫しても免疫原性が低く、前記化合物に対する抗体が得られにくい。そのため、リンカーを介してウシ血清アルブミン(BSA)などのキャリアータンパク質と前記化合物とを結合した態様で動物を免疫する(非特許文献1)。これにより免疫原性を示すようになり、本発明の測定試薬に含まれる抗体を調製することができる。免疫に使用できる動物としては、当業者が通常用いる、マウス、ラット、ウサギ、ニワトリ、ヤギが例示できる。
【0020】
本発明の測定試薬に含まれる、リンカーを介して標識物質と結合した低分子量化合物(以下、標識化抗原とする)を作製する際は、当該抗原が前述の方法で調製した低分子量化合物に対する抗体に認識されうる構造であることが必要となる。すなわち、前記抗原のエピトープ(epitope)がきちんと露出していることが必要だといえる。エピトープが埋もれ、外部から接触しづらい形で標識化抗原を作製すると、当該抗原に対する抗体がエピトープを認識できず競合法による測定が行なえない。そのため、通常標識化抗原を作製する際は、免疫に使用した抗原の立体構造を変えない、すなわち、前記キャリアータンパク質と結合した低分子量化合物におけるリンカー結合位置と同じ位置でリンカーを介して標識物質と低分子量化合物とを結合した標識化抗原を用いる。しかしながら、本発明の測定試薬に含まれる標識化抗原は、リンカーを介して標識物質と低分子量化合物とを結合させる際、当該リンカー位置を、抗体調製時に使用した、リンカーを介してキャリアータンパク質と結合した低分子量化合物におけるリンカー結合位置と異なる位置とすることを特徴とし、これにより低分子量化合物の測定感度を向上させている。リンカー結合位置を変えることで感度が向上する理由としては、低分子量化合物におけるエピトープが露出する構造に変化が生じることで、抗体と標識化抗原との親和性が落ち、結果として、抗体と非標識化抗原(試料中に含まれる抗原)との親和性が相対的に上昇したためと推測される。
【0021】
本発明の測定試薬に含まれる、標識化抗原を作製する際用いる標識物質は、抗原抗体反応を利用した測定試薬において当業者が通常用いる標識物質の中から適宜選択し使用することができる。具体的には、アルカリホスファターゼ(ALP)、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)などの酵素、Cy3、Cy5、FITC、Rhodamine、などの蛍光色素がある。
【0022】
本発明の測定試薬は、従来の競合法による低分子量化合物の測定試薬と比較し、測定感度が向上した試薬であるが、本発明の測定試薬が適用できる低分子量化合物の種類は非常に幅広く、少なくともリンカーと結合可能な部位を2箇所以上有した低分子化合物であればよい。低分子量化合物の具体例としては、トリヨードサイロニン(T3)、チロキシン(T4)、3,5−ジヨード−L−チロニン(T2)などの甲状腺ホルモンや、エストロン(E1)、エストラジオール(E2)、エストリオール(E3)、プロゲステロン(progesterone)、コルチゾール(cortisol)などのステロイド骨格を有したステロイドホルモンがあげられる。この中でも、ステロイドホルモンは、リンカーと結合可能な部位が多いことから、本発明の測定試薬の測定対象として好ましい。
【0023】
低分子量化合物とキャリアータンパクまたは標識物質と結合させる際に用いる、リンカーは特に限定はなく、N−ヒドロキシこはく酸イミド(NHS)などアミノ基との反応性を有するリンカーや、カルボジイミド化合物などカルボキシル基との反応性を有するリンカー、マレイミド化合物やハロアセチル化合物、ピリジルアセチル化合物などチオール基との反応性を有するリンカーが例示できる。
【0024】
抗体を調製する際に用いる、リンカーを介してキャリアータンパク質と結合した低分子量化合物におけるリンカー結合位置と、標識化抗原におけるリンカー結合位置とは、抗体と標識化抗原との相互作用を完全に損なわない範囲で互いに異なる位置とすればよい。具体的には、キャリアータンパク質と結合した低分子量化合物におけるリンカー結合位置と、標識化抗原におけるリンカー結合位置とが、2から5炭素原子分離れていると好ましいが、測定対象の低分子量化合物の構造によっては、それ以上離れていてもよい。なお、測定対象の低分子量化合物が、ステロイドホルモンの一つであるプロゲステロン(Progesterone)の場合における、本発明の測定試薬の一例として、プロゲステロンの6位または11位の炭素原子にリンカーを結合し、当該リンカーを介してキャリアータンパク質と結合した、プロゲステロン−キャリアータンパク質複合体で動物を免疫して得られる抗体と、プロゲステロンの3位の炭素原子にリンカーを結合し、当該リンカーを介して標識物質と結合した、標識化抗原とを含む測定試薬があげられる。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、リンカーを介してキャリアータンパク質と結合した低分子量化合物で動物を免疫して得られる抗体と、リンカーを介して標識物質と結合した低分子量化合物とを用いた、競合法による抗原抗体反応を利用した低分子量化合物の測定試薬および測定方法において、従来、前記キャリアータンパク質と結合した低分子量化合物におけるリンカー結合位置と、前記標識物質と結合した低分子量化合物におけるリンカー結合位置とを一致させるところ、互いに異なる結合位置とすることに特徴があり、これにより従来の競合法による抗原抗体反応を利用した試薬および方法と比較し、測定感度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】サンドイッチ法の測定原理を示した図。
【図2】競合法の測定原理を示した図。
【図3】実施例1で作製したプロゲステロン誘導体(Proge−3、Proge−6、Proge−11)を示す図。
【図4】各標識化抗原(CJ)とウサギモノクローナル抗体との反応性を評価した結果を示す図。
【図5】Proge−3またはProge−11に標識物質を結合して得られる標識化抗原(CJ)とウサギモノクローナル抗体とを用いて競合法による抗原抗体反応を行なった結果(検量線)。
【図6】Proge−3またはProge−11に標識物質を結合して得られる標識化抗原(CJ)とウサギポリクローナル抗体とを用いて競合法による抗原抗体反応を行なった結果(検量線)。
【図7】Proge−3またはProge−6に標識物質を結合して得られる標識化抗原(CJ)とウサギポリクローナル抗体とを用いて競合法による抗原抗体反応を行なった結果(検量線)。
【実施例】
【0027】
以下、ウサギ抗プロゲステロン(Progesterone)抗体を用いたプロゲステロン測定試薬を例として、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0028】
実施例1 ウサギポリクローナル抗体およびウサギモノクローナル抗体の取得
(1)抗プロゲステロンウサギ抗体を取得するため、プロゲステロン(Progesterone)の3位、6位または11位の炭素原子にそれぞれリンカー(3位の炭素原子に結合させるリンカー:2−NHS−2−oxo−1−oxyethane,6位または11位の炭素原子に結合させるリンカー:4−NHS−1,4−dioxo−1−oxybutane)を結合した誘導体(Proge−3、Proge−6、Proge−11)を作製し(図3)、当該誘導体をキャリアータンパク質であるウシ血清アルブミン(BSA)と結合させた。
(2)(1)で作製したプロゲステロン誘導体−BSA結合体を抗原として、ウサギを免疫し、抗プロゲステロンウサギポリクローナル抗体を取得した。ここで取得した抗体のうち、プロゲステロンの11位の炭素原子にリンカーを結合した誘導体とBSAとの複合体を抗原として取得した抗体をα−Prog11とし、プロゲステロンの6位の炭素原子にリンカーを結合した誘導体とBSAとの複合体を抗原として取得した抗体をα−Prog6とする。
(3)(2)の免疫を行なったウサギから抗体産生細胞を単離し、前記細胞から特許文献1に記載の方法で抗体遺伝子をクローニングすることでモノクローナル抗体を取得した。なお本実施例で取得したモノクローナル抗体は、プロゲステロンの11位の炭素原子にリンカーを結合した誘導体とBSAとの複合体を抗原として免疫を行なったウサギから得られたものである。
【0029】
実施例2 標識化抗原(CJ)の作製およびウサギモノクローナル抗体との反応性評価
(1)実施例1(1)で作製したプロゲステロン誘導体(Proge−3、Proge−6、Proge−11)に、それぞれアルカリホスファターゼ(ALP)を結合させ、標識化抗原(CJ)を作製した。
(2)(1)で作製したCJと、実施例1(3)で作製した抗プロゲステロンウサギモノクローナル抗体との反応性を以下の方法で確認した。なお、下記に示す操作は、東ソー社製全自動エンザイムイムノアッセイ装置AIA−600IIを用いて37℃にて全自動で行なった。
(2−1)一定の濃度に調整した各CJを、それぞれ、抗ウサギIgG抗体を固定化した磁性粒子と混合した。
(2−2)(2−1)の混合物に実施例1(3)で作製したウサギモノクローナル抗体を添加し、10分間反応した。
(2−3)反応後、B/F分離を行ない、磁性粒子と結合した各CJから発せられるシグナルを検出した。ここで得られるシグナルが大きいほどウサギモノクローナル抗体と結合しているCJ量が多いことを意味しており、反応性の高さを示す。
【0030】
結果を図4に示す。免疫に使用したプロゲステロン誘導体(Proge−11)を用いて作製したCJ(11位CJ)との反応性が最も高いことが確認できた。一方、立体構造上11位とは反対の場所にある、6位の炭素原子にリンカーを結合した誘導体(Proge−6)を用いて作製したCJ(6位CJ)とは、全く反応しないことが確認できた。これは、6位の炭素原子にリンカーを結合させたことで、抗体結合部位が潰れてしまったことが原因と考えられる。なお、11位から比較的近い、3位の炭素原子にリンカーを結合した誘導体(Proge−3)を用いて作製したCJ(3位CJ)とは、弱いながらも反応性を有していることが確認できた。
【0031】
実施例3 CJリンカー結合位置の違いによる測定感度への影響(ウサギモノクローナル抗体を使用した場合)
これまでに作製した材料を用い、標識化抗原(CJ)を作製する際のリンカー結合位置の違いがプロゲステロンの検出感度にどのような影響を与えるのかを調べた。なお、下記に示す操作は、東ソー社製全自動エンザイムイムノアッセイ装置AIA−600IIを用いて37℃にて全自動で行なった。
(1)一定の濃度に調整した各CJを、それぞれ、抗ウサギIgG抗体を固定化した磁性粒子と混合した。
(2)プロゲステロン濃度既知のキャリブレータ(calibrator)溶液を用意し、(1)の混合物にそれぞれ一定量添加した。
(3)実施例1(3)で作製したウサギモノクローナル抗体を添加し、10分間反応した。
(4)反応後、B/F分離を行ない、磁性粒子と結合した各CJから発せられる蛍光シグナルを検出した。
(5)一定濃度のプロゲステロンを含む各キャリブレータ(Cal2からCal6)のシグナル(B)を、プロゲステロンを全く含まないキャリブレータ(Cal1)を加えた時のシグナル(B0)を100%としたときの相対的な値(B/B0[%])として算出し、プロゲステロン濃度を横軸(対数)、B/B0(%)を縦軸にとり、各キャリブレータ使用時の測定結果をプロットして検量線を作成した。
(6)B/B0=50%となる時のプロゲステロン濃度(C50)を指標としてその検出感度を評価した。
【0032】
実験の結果、11位CJを使用した時のC50が7.0ng/mLであったのに対し、3位CJを使用した時のC50が1.7ng/mLとなり、CJの変更によって検出感度が約4倍向上することがわかった(図5)。なお、6位CJを使用した時はシグナルが得られなかったため、検量線を作成することができなかった。
【0033】
実施例4 CJリンカー部位の違いによる測定感度への影響(ウサギポリクローナル抗体を使用した場合)
ウサギモノクローナル抗体の代わりに、実施例1(2)で作製したα−Prog11およびα−Prog6を用いた他は、実施例3と同様の実験を行ない、CJのリンカー部位の違いによるProgesteroneの検出感度への影響を調べた。
【0034】
α−Prog11を用いた場合、11位CJを使用した時のC50が47ng/mLであったのに対し、3位CJを使用した時のC50は26ng/mLとなり、CJの変更により検出感度を向上させられることがわかった(図6)。なお、6位CJを使用した場合は、シグナルが得られなかったため、検量線を作成することができなかった。
【0035】
またα−Prog6を用いた場合、6位CJを使用した時のC50が21ng/mLであったのに対し、3位CJを使用した時のC50は10ng/mLとなり、CJの変更により検出感度を向上させられることがわかった(図7)。なお、11位CJを使用した場合は、シグナルが得られなかったため、検量線を作成することができなかった。
【0036】
実施例3および4の結果より、標識化抗原(CJ)を作成する際のプロゲステロンのリンカー結合位置と、抗原を作成する際のプロゲステロンのリンカー結合位置とを、異なる位置(具体的には3から5炭素原子分離れた位置)とすることで、プロゲステロンの検出感度が向上することがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンカーを介してキャリアータンパク質と結合した低分子量化合物で動物を免疫して得られる抗体と、リンカーを介して標識物質と結合した低分子量化合物とを含む、前記低分子量化合物の測定試薬であって、前記キャリアータンパク質と結合した低分子量化合物におけるリンカー結合位置と、前記標識物質と結合した低分子量化合物におけるリンカー結合位置とが異なる、前記測定試薬。
【請求項2】
前記キャリアータンパク質と結合した低分子量化合物におけるリンカー結合位置と、前記標識物質と結合した低分子量化合物におけるリンカー結合位置とが、2から5炭素原子分離れている、請求項1に記載の測定試薬。
【請求項3】
低分子量化合物がステロイドホルモンである、請求項1または2に記載の測定試薬。
【請求項4】
ステロイドホルモンがプロゲステロン(Progesterone)であり、前記キャリアータンパク質と結合したプロゲステロンにおけるリンカー結合位置が6位または11位の炭素原子であり、前記標識物質と結合したプロゲステロンにおけるリンカー結合位置が3位の炭素原子である、請求項3に記載の測定試薬。
【請求項5】
リンカーが、アミノ基、カルボキシル基またはチオール基を有する物質との反応性を有する、請求項1から4のいずれかに記載の測定試薬。
【請求項6】
リンカーを介してキャリアータンパク質と結合した低分子量化合物で動物を免疫して得られる抗体と、前記キャリアータンパク質と結合した低分子量化合物におけるリンカー結合位置とは異なる位置でリンカーを介して標識物質と結合した低分子量化合物とを用いた、前記低分子量化合物の測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−83448(P2013−83448A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221430(P2011−221430)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)