説明

低周波パルス印加装置およびその使用方法

【課題】複数のゾーンにパルスを印加する低周波パルス印加装置等に関し、対象者自身がまだ気付いていない自己の体の弱っている部位を探し出し、その探し出した部位を効果的に刺激する。
【解決手段】所定の周波数のパルスを発生させて該パルスの発生を一旦休止することを繰り返す自己診断モードと、前記所定の周波数より低い上限値を有する第1の所定の周波数範囲内で変化させた周波数のパルスを発生させて該パルスの発生を一旦休止することを繰り返す筋肉刺激モードと、前記所定の周波数より低い上限値を有しかつ前記第1の所定の周波数範囲よりも広い第2の所定の周波数範囲内で変化させた周波数のパルスを発生させて該パルスの発生を一旦休止することを繰り返してから該第2の所定の周波数範囲内で変化させた周波数のパルスを振幅を変調させながら発生させて該パルスの発生を一旦休止することを繰り返す神経刺激モードとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のゾーンにパルスを印加する低周波パルス印加装置と、この装置の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の体には内臓やその他の器官と密接な関連のあるつぼと呼ばれるものがいくつもある。これらのつぼを刺激すると各つぼに対応する器官が間接的に刺激されて、様々な疾病に対する治療または予防、疲労回復といった効果が得られることが知られている。また、人間の体は脳と各部位とが体に張り巡らされた神経で繋がっており、この神経を介して脳と各部位の間で生体電気とよばれる電気信号がやりとりされることが知られている。この電気信号によって脳から各部位へ指令が伝達され、また、各部位からの刺激が脳へ伝達される。上記のつぼには各器官に繋がる神経があり、このつぼに電気刺激を与えることによって各器官を間接的に刺激することができる。
【0003】
近年ではこれらの知見に基づき、低周波パルスによりつぼを刺激する手法が提案されている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。この特許文献1に記載された発明によれば、人間の足形の導電体に印加される低周波パルスによって足の裏のつぼを刺激している。また、特許文献2に記載された考案によれば、数種類の低周波パルスを選択してつぼを刺激する。特許文献1に記載されている低周波パルス印加装置では、パルスが足の裏全体に出力されてしまうため、必要な部分に対して効果的に刺激を与えることができないといった問題がある。一方、特許文献2に記載されている発明では足の裏を複数のゾーンに分け、これらのゾーンのうちの1又は複数のゾーンにパルスを印加することで、必要な部分に対して効果的に刺激を与えようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−333991号公報
【特許文献2】登録実用新案3046497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ある疾病によって弱っている部位(器官)をもつ対象者がいるとする。その疾病によっては自覚症状または外見の変化があまりなく、疾病の判断が困難な場合がある。自覚症状があまりない場合には、対象者は弱っている部位がどこなのか自分自身で気付く機会が少なく、仮にこの疾病が医師の診断により容易に判断できるものであったとしても自覚症状がない対象者が診断を受けることは考えにくい。さらに外見の変化があまりない場合には、医師が弱っている部分を特定することができないこともある。
【0006】
上記のような理由により対象者がどこが弱っている部位なのかを知ることができないと、低周波パルス印加装置を使用する機会があっても対象者はどこを刺激すればよいかがわからず、刺激する必要のない部位まで刺激してしまい十分な効果が得られないという問題が起こり得る。特許文献1および特許文献2に記載の低周波パルス印加装置ではこうした問題に対処することが困難である。
【0007】
さらに、本発明者らの永年の研究により、血行が滞っていると低周波パルス印加装置による刺激が十分に与えられないことがわかってきている。
【0008】
本発明は上記事情に鑑み、対象者自身がまだ気付いていない自己の体の弱っている部位を探し出し、その探し出した部位を効果的に刺激することができる低周波パルス印加装置、およびその低周波パルス印加装置の使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明の低周波パルス印加装置は、
複数のゾーンにパルスを印加する低周波パルス印加装置であって、
所定の周波数のパルスを発生させてそのパルスの発生を一旦休止することを繰り返す自己診断モードと、
上記所定の周波数より低い上限値を有する第1の所定の周波数範囲内で変化させた周波数のパルスを発生させてそのパルスの発生を一旦休止することを繰り返す筋肉刺激モードと、
上記所定の周波数より低い上限値を有しかつ上記第1の所定の周波数範囲よりも広い第2の所定の周波数範囲内で変化させた周波数のパルスを発生させてそのパルスの発生を一旦休止することを繰り返してからその第2の所定の周波数範囲内で変化させた周波数のパルスを振幅を変調させながら発生させてそのパルスの発生を一旦休止することを繰り返す神経刺激モードとを有し、
上記自己診断モード、上記筋肉刺激モード、および上記神経刺激モードのうちから1つのモードに切り替えるモード切替操作子と、
上記ゾーンの組み合わせを定めた複数の通電ポイントパターンの内から1つの通電ポイントパターンを選択するパターン選択操作子と、
上記モード切替操作子で切り替えられたモードで発生するパルスに応じた出力パルスを、上記ポイント選択操作子で選択された1つの通電ポイントパターンによって定められたゾーンに印加するパルス印加部とを備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明の低周波パルス印加装置によれば、上記自己診断モードを対象者の弱っている部位を探し出す場合に利用することができる。また、上記神経刺激モードをこの探し出した部位を刺激する場合に利用することができる。さらに、上記筋肉刺激モードを用いて脹脛を刺激し全身の血行をよくすることによって、弱っている部位を探し出す場合には容易に探し出すことができ、さらに探し出した部位を刺激する場合にはより効果的に刺激することができる。
【0011】
ここで、上記低周波パルス印加装置は、上記筋肉刺激モードが、上記第1の所定の周波数範囲内で変化させた周波数のパルスを第1の所定時間発生させてそのパルスの発生を一旦休止することを繰り返すモードであり、
上記神経刺激モードが、上記第2の所定の周波数範囲内で変化させた周波数のパルスを上記第1の所定時間よりも短い第2の所定時間発生させてそのパルスの発生を一旦休止する周波数一定発生を繰り返してから上記第2の所定の周波数範囲内で変化させた周波数のパルスを振幅を変調させながら上記第1の所定時間よりは短くかつその第2の所定時間よりは長い第3の所定時間発生させてそのパルスの発生を一旦休止する振幅変調発生を繰り返すモードであってもよい。
【0012】
この低周波パルス印加装置によれば、モードを選択するだけで筋肉刺激および神経刺激に効果的なパルスを出力することができる。
【0013】
さらに、上記低周波パルス印加装置は、上記神経刺激モードが、上記振幅変調発生において上記第2の所定の周波数範囲に含まれたその第2の所定の周波数範囲よりも狭い第3の所定の周波数範囲内で変化させた周波数のパルスであってさらに振幅を断続的に0に変調させたパルスを発生させるモードであってもよい。
【0014】
この低周波パルス印加装置によれば、モードを選択するだけで神経刺激により効果的なパルスを出力することができる。
【0015】
さらに、上記低周波パルス印加装置は、上記複数のゾーンが、足の裏のつぼに対応して配置されたものであってもよい。
【0016】
この低周波パルス印加装置によれば、つぼが集中する足の裏を効果的に刺激することができる。
【0017】
さらに、上記低周波パルス印加装置は、出力パルスの強さを調整する出力調整操作子を備え、
上記パルス印加部は、上記モード切替操作子で切り替えられたモードで発生するパルスの振幅を上記出力調整操作子で調整された強さに従って変調した出力パルスを印加するものであってもよい。
【0018】
この低周波パルス印加装置によれば、対象者の体調や好み等にあった出力のパルスを印加することができる。
【0019】
さらに、上記低周波パルス印加装置は、出力パルスの周波数を選択する周波数選択操作子を備え、上記自己診断モードは、上記周波数選択操作子で選択された周波数を上記所定の周波数として用いるモードであってもよい。すなわち、上記自己診断モードにおいて印加されるパルスの周波数を選択する周波数選択操作子を備えた態様であってもよい。
【0020】
上記目的を達成するための本発明の使用方法は、
上記低周波パルス印加装置の使用方法であって、
対象者の足の裏に上記複数のゾーン総てを接触させ、上記自己診断モードで発生したパルスに応じた出力パルスをその複数のゾーン総てに印加させながら上記出力調整操作子を操作してその出力パルスの強さを調整し、その対象者が痛みを感じずかつ最も強い刺激を感じる強さの出力パルスを基準出力パルスに決定する基準決定ステップと、
上記対象者の足の裏に上記複数のゾーンを接触させ、上記パターン選択操作子を操作して通電ポイントパターンを順次選択しながら選択した通電ポイントパターンごとに定められたゾーンの組合せを構成する各ゾーンに、上記自己診断モードで発生したパルスを上記基準出力パルスの強さで印加し、印加したときの刺激が上記基準出力パルスを決定した時に感じた刺激よりも弱くなる通電ポイントパターンを探す自己診断ステップとを有することを特徴とする。
【0021】
本発明の使用方法によれば、低周波パルス印加装置に対する知識がなくても対象者の生体電気の流れが悪くなっている部位すなわち弱っている部位を簡単に探し出すことができる。
【0022】
また、上記使用方法は、上記基準決定ステップを実施する前に行う、対象者を横臥させた状態でその対象者の脹脛に上記複数のゾーンを接触させ、上記筋肉刺激モードで発生したパルスに応じた出力パルスをその複数のゾーンに印加させる脹脛刺激ステップを有するものであってもよい。
【0023】
この使用方法によれば、通常低周波パルスの刺激をあまり感じない者であっても、脹脛への刺激により全身の血行がよくなり感覚が鋭敏になることによって、感覚の違いを認識し易くなり対象者の弱っている部位を容易に探し出すことができる。
【0024】
さらに、上記使用方法は、上記自己診断ステップにより探した通電ポイントパターンによって定められたゾーンの組合せを構成する各ゾーンに、上記神経刺激モードで発生したパルスに応じた出力パルスを印加する神経刺激ステップを有するものであってもよい。
【0025】
この使用方法によれば、対象者の弱っている部位を的確に刺激することができ、特に上記脹脛刺激ステップと組み合わせた場合にはより効果的な刺激をすることができる。
【0026】
また、上記使用方法は、上記脹脛刺激ステップに代えて、左右の前腕部を上記複数のゾーンに接触させてこれらの前腕部が接触しているゾーンに出力パルスを印加する前腕部刺激ステップを行ってもよい。この前腕部刺激ステップによれば前腕の筋肉を刺激して血行を促進し、特に腕から肩にかけての血行を促進させることができる。
【0027】
上記前腕部刺激ステップは上記脹脛刺激ステップの前後または脹脛刺激ステップと同時に行うものであってもよい。この使用方法によれば、全身の血行をより効果的に促進することができる。
【0028】
また、上記使用方法は、上記神経刺激ステップに代えて手のひらおよび/または指先の腹を上記複数のゾーンのいずれかのゾーンに接触させて、この手のひらおよび/または指先の腹が接触しているゾーンに出力パルスを印加する手のひら刺激ステップを有するものであってもよい。この使用方法によれば、指先の腹および手のひらにあるつぼが刺激されて上半身、特に横隔膜より上の部位を効果的に刺激することができる。
【0029】
上記手のひら刺激ステップは上記神経刺激ステップの前後または神経刺激ステップと同時に行うものであってもよい。この使用方法によれば、足の裏のつぼ、手のひらのつぼ、および指先の腹のつぼの全てを刺激することでより効果的に刺激することができる。
【0030】
さらに、上記使用方法は、上記神経刺激ステップまたは手のひら刺激ステップに代えて、モードに応じた出力パルスが印加される一対の低周波パッドを備えた低周波パルス印加装置を用意し、その一対の低周波パッドを背中の背骨の上下に貼り付け、その一対の低周波パッドに出力パルスを印加する脊髄刺激ステップを有するものであってもよい。この使用方法によれば、背骨を刺激することによって体全体を効果的に刺激することができる。
【0031】
また、低周波パルス印加装置を複数用意して上記脊髄刺激ステップを上記手のひら刺激ステップおよび上記神経刺激ステップと同時に行うものであってもよい。この使用方法によれば複数の低周波パルス印加装置によって同時に刺激することができるため、より一段と効果的な刺激をすることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、対象者自身がまだ気付いていない自己の体の弱っている部位を探し出し、その探し出した部位を効果的に刺激することができる低周波パルス印加装置と、その低周波パルス印加装置の使用方法が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態に係る低周波パルス印加装置を示す図である。
【図2】図1に示す低周波パルス印加装置の足受け台102Lを取り外した状態を示す図である。
【図3】低周波パルス印加装置100の機能ブロック図である。
【図4】各モード発生部で発生するパルスの一部を示す図である。
【図5】通電ポイントパターンとその対応する部位および症状を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る低周波パルス印加装置100の使用方法を示すフローチャートである。
【図7】ステップS100における低周波パルス印加装置の使用状態を示す図である。
【図8】ステップS100の流れの詳細を示すフローチャートである。
【図9】ステップS200の流れの詳細を示すフローチャートである。
【図10】ステップS300の流れの詳細を示すフローチャートである。
【図11】ステップS400の流れの詳細を示すフローチャートである。
【図12】指先の腹を左ゾーン10Lおよび右ゾーン10Rに載せて刺激をする状態を示す図である。
【図13】低周波パッド112を使用して脊髄を刺激する状態を示す図である。
【図14】脹脛に低周波パルス印加装置による筋肉刺激を行う前後での血圧の変化を示すグラフである。
【図15】低周波パルス印加装置による刺激を行う前後のcAMP、cGMP、およびcAMP/cGMPを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0035】
図1は、本発明の一実施形態に係る低周波パルス印加装置を示す図である。
【0036】
図1に示す低周波パルス印加装置100は、自己診断モード、筋肉刺激モード、および神経刺激モードを有する。
【0037】
また、低周波パルス印加装置100は、本体部101、左右一対の足受け台102L,102R、誤動作を防ぐために他の操作子の操作を受け付けないようにするキーロック操作子103、上記3つのモードのうちから1つのモードに切り替えるモード切替操作子104、詳細は後述するゾーンの組み合わせを定めた複数の通電ポイントパターン(以下、通電PPと呼ぶ)のうちから1つの通電PPを選択するパターン選択操作子105、出力パルスの印加時間を設定するタイマー操作子106、パルスの出力を調整する出力調整操作子107、選択されたモード、通電PP、および印加時間を表示する主表示部108、出力パルスが印加されるゾーンを表示する出力ゾーン表示部109L,109R、持ち運びのための把手110、および足受け台102L,102Rを取り外すための取外しボタン113L,113Rを備えている。さらに、図示はされていないが外部出力端子を備えており、図1ではこの端子に一対の低周波パッド112が接続されている。なお、上記パターン選択操作子105はゾーンに代えてこの低周波パッド112も印加対象として選択することができる。左の足受け台102Lは、出力パルスが印加される第1から第7のゾーン1L〜7Lを備えている。以降、これら7つのゾーンをひとまとめにして左ゾーン10Lと呼ぶことがある。左の足受け台102Lと同様に右の足受け台102Rも、第1から第7のゾーン1R〜7Rを備えており、これらのゾーンをひとまとめにしたものを右ゾーン10Rと呼ぶことがある。左ゾーン10Lおよび右ゾーン10Rは、足の裏のつぼに対応して配置されたものである。したがって、この左右の足受け台102L,102Rに対象者の足の裏を載せれば、その足の裏のつぼを刺激することができる。このつぼを刺激することで人体の臓器や器官等の各部位につながる神経が刺激される。なお、本実施形態では、キーロック操作子103、モード切替操作子104、パターン選択操作子105およびタイマー操作子106はボタン式であり、出力調整操作子107はダイヤル式であるが、これらの操作子はこれらの方式に限定されるものではなく、例えばボタン式をダイヤル式やスライダー式にしてもよく、ダイヤル式をボタン式やスライダー式にしてもよい。
【0038】
図2は、図1に示す低周波パルス印加装置の足受け台102Lを取り外した状態を示す図である。
【0039】
図2に示された足受け台102Lは、取外しボタン113Lを押下したことによって本体部101から外された状態となっている。この足受け台102Lは、先端にコネクタ1022を有する接続コード1021を備えており、コネクタ1022によって本体部101に接続されている。この接続コード1021が届く範囲であれば左ゾーン10Lに出力パルスを印加できるため、寝たきりの状態の者に対してはその者の足の裏に取り外した足受け台102Lをあてがって使用することができる。
【0040】
また、上記のコネクタ1022を本体部101から取り外すことによって、足受け台102Lと本体部101とを完全に分離することができる。この低周波パルス印加装置100には、例えば図2の右上に示すサイズの小さい足受け台202Lのようなサイズの異なる足受け台が数種類用意されている。上記のサイズの小さい足受け台202Lも先端にコネクタ2022を有する接続コード2021を備えている。このサイズの小さい足受け台202Lも既に接続されている足受け台102Lに代えて本体部101に接続することができる。本実施形態の低周波パルス印加装置100によれば、使用する人の足の大きさに合った足受け台を選択して本体部101に取り付けることができる。なお、右側の足受け台102Rも左側の足受け台102Lと同様に取外しボタン113Rによって本体部101から取り外すことが可能である。
【0041】
図3は低周波パルス印加装置100の機能ブロック図である。
【0042】
図3に示す低周波パルス印加装置100は、自己診断モードパルス発生部301、筋肉刺激モードパルス発生部302、神経刺激モードパルス発生部303、およびパルス印加部304を備えている。さらに、図3には上述したモード切替操作104、パターン選択操作子105、タイマー操作子106、出力調整操作子107、左側の第1から第7のゾーン1L〜7L、右側の第1から第7のゾーン1R〜7R、および低周波パッド112が示されている。
【0043】
自己診断モードパルス発生部301は自己診断モードに応じたパルスを発生するものである。筋肉刺激モードパルス発生部302は筋肉刺激モードに応じたパルスを発生するものである。神経刺激モードパルス発生部303は神経刺激モードに応じたパルスを発生するものである。
【0044】
ここで、自己診断モードパルス発生部301、筋肉刺激モードパルス発生部302、神経刺激モードパルス発生部303で発生するパルスについて説明する。
【0045】
まず、自己診断モードパルス発生部301について説明する。
【0046】
図4は各モード発生部で発生するパルスの一部を示す図である。
【0047】
図4(a)は、自己診断モードパルス発生部301から発生するパルスの一部を示す図である。図4(a)のグラフに示すように、自己診断モードパルス発生部301は本発明にいう所定の周波数のパルスの一例に相当する自己診断周波数200Hzのパルスを5周期発生させ、その後パルスの発生を一旦休止する。このパルスは1周期5msであるため、パルスの発生期間は5周期で合計25msである。このパルスの発生期間に続くパルスの休止期間は49msである。従って自己診断モード発生部301は合計74msのサイクルを繰り返すパルスを発生する。
【0048】
上記自己診断モード発生部301が発生するパルスを利用すれば、対象者の弱っている部位を探し出すことができる。
【0049】
ここで、低周波パルス印加装置100は、出力パルスの周波数を選択する周波数選択操作子を備え、自己診断モードパルス発生部301は、上記周波数選択操作子で選択された周波数のパルスを発生するものであってもよい。すなわち、この自己診断モードパルス発生部301において発生するパルスの周波数を選択する周波数選択操作子を備えた態様であってもよい。
【0050】
次に、筋肉刺激モードパルス発生部302について説明する。
【0051】
図4(b)は、筋肉刺激モードパルス発生部302から発生するパルスの一部を示す図である。図4(b)に示すようにこの筋肉刺激モードパルス発生部302では、30s間のパルス発生期間(本発明による第1の所定時間の一例に相当)と1s間のパルス休止期間のサイクルを繰り返してパルスを発生する。図4(b)に示す最初の30s間のパルスの周波数は1Hzであり、1s間の休止期間を挟んだ次の30s間のパルスの周波数は1.5Hzである。この図4(b)に示すように、30s間のパルスの周波数は1s間の休止期間を挟んで変化する。本実施形態では筋肉刺激モードパルス発生部302は周波数を6段階(例えば、1Hz、1.5Hz、3Hz、5Hz、3Hz、1.5Hz)に変化させる。なお、この6段階の数値の組み合わせに限らず、他の数値の組み合わせであってもよい。このように本実施形態では筋肉刺激モードパルス発生部302は1Hz以上5Hz以下の筋肉刺激周波数範囲(本発明による第1の所定の周波数範囲の一例に相当)で変化させた周波数のパルスを発生する。なお、この筋肉刺激周波数範囲の上限値は5Hzであるが、この上限値は上記自己診断モードにおける自己診断周波数(本実施形態では200Hz)よりも低い上限値であればよい。
【0052】
上記筋肉刺激モード発生部302が発生するパルスを利用すれば、対象者の脹脛を刺激して全身の血行をよくすることができる。さらに、血行をよくすることによって、後述する対象者の弱っている部位を探し出す場合にはその部位を容易に探し出すことができ、後述する神経刺激を行う場合にはより効果的に刺激することができる。
【0053】
最後に、神経刺激モードパルス発生部303について説明する。
【0054】
神経刺激モードパルス発生部303は大きく分けて2種類のパルスを連続して発生させる。
【0055】
まず1種類目のパルスは上記の筋肉刺激モードパルス発生部302で発生するパルスと同様に周波数の異なるパルスである。ただしここで発生するパルスは筋肉刺激モードパルス発生部302で発生するパルスとは、パルスの周波数および各周波数のパルス発生期間が異なる。神経刺激モードパルス発生部303で発生する1種類目のパルスは、上述した筋肉刺激モードパルス発生部302におけるパルスの発生期間よりも短い5s間のパルス発生期間(本発明による第2の所定時間の一例に相当)と1s間のパルス休止期間のサイクル(本発明による周波数一定発生の一例に相当)を繰り返す。このパルス発生期間におけるパルスの周波数は上記の筋肉刺激モードと同様にパルス休止期間を挟んで周波数が変化する。本実施形態では神経刺激モードパルス発生部303は周波数を12段階(例えば、1Hz、3Hz、10Hz、20Hz、30Hz、40Hz、50Hz、40Hz、30Hz、20Hz、10Hz、3Hz)に変化させるものである。このように本実施形態では、神経刺激モードパルス発生部303は1Hz以上50Hz以下の第1神経刺激周波数範囲(本発明による第2の所定の周波数範囲の一例に相当)で変化させた周波数のパルスを発生する。なお、この第1神経刺激周波数範囲は上限値(50Hz)が上述した自己診断周波数(本実施形態では200Hz)よりも低く、かつ、上記筋肉刺激周波数範囲よりも広い周波数範囲のものであればよい。
【0056】
2種類目のパルスは周波数および振幅が変化するパルスである。図4(c)は、神経刺激モードパルス発生部303から発生するこの2種類目のパルスの一部を示す図である。
【0057】
図4(c)に示すように、2種類目のパルスは上述した筋肉刺激モードパルス発生部302でのパルス発生期間よりも短くかつ上述した1種類目のパルスのパルス発生期間よりも長い10s間のパルス発生期間(本発明による第3の所定時間の一例に相当)と1s間のパルス休止期間のサイクル(本発明による振幅変調発生の一例に相当)を繰り返すパルスである。ここで発生するパルスも、パルスの周波数は上記の筋肉刺激モードと同様にパルス休止期間を挟んで周波数が変化する。本実施形態では神経刺激モードパルス発生部303は周波数を6段階(例えば、5Hz、10Hz、20Hz、40Hz、20Hz、10Hz)に変化させる。なお、この6段階の数値の組み合わせに限らず、他の数値の組み合わせであってもよい。このように本実施形態では、神経刺激モードパルス発生部302は、5Hz以上40Hz以下の第2神経刺激周波数範囲(本発明による第3の所定の周波数範囲の一例に相当)で変化させた周波数のパルスを発生する。なお、この第2神経刺激周波数範囲は第1神経刺激周波数範囲と同じ範囲もしくは狭い範囲であればよい。さらにこの2種類目のパルスでは周波数の変化に加えて振幅も変化する。図4(c)に示すように、パルスの振幅は最初は小さいが徐々に増加して一定の振幅になり、その後振幅は0になる。この一連の振幅変調を10s間に4回繰り返す。すなわち、パルスの振幅が断続的に0に変調する。なお、ここで説明した周波数および振幅変調の態様は一例であり、ここで説明した以外の周波数および振幅変調の態様であってもよい。
【0058】
神経刺激モードパルス発生部303は1種類目のパルスに続いて2種類目のパルスを発生させるものである。この神経刺激モードパルス発生部303で発生するパルスを、後述する弱っている部位を刺激する場合に利用することができる。
【0059】
パルス印加部304には、上記の3つのモードパルス発生部から発生したパルスが繰り返し入力される。そしてパルス印加部304は、モード切替操作子104によって切り替えられたモードのパルスに応じた出力パルスを、パターン選択操作子105で選択された通電PPを構成するゾーンおよび/または低周波パッド112に印加する。ここで、通電PPとその構成ゾーンについて説明する。
【0060】
図5は通電ポイントパターンとその対応する部位および症状を示す図である。
【0061】
図5(a)に示す表では1つの通電PPが横一行に示されており、全部で10種類の通電PPが示されている。通電PPはゾーンの組み合わせを定めたものであり、図5(a)に示す各通電PPには、刺激対象となる部位(適応)、対応する症状(適応症状)、および出力パルスが印加されるゾーンの組み合わせ(通電箇所)が示されている。通電箇所で示されるゾーンは図中の適応に示される部位を刺激することができるつぼに対応している。図5(a)に示す通電箇所は図5(b)に示す各ゾーンに付した符号によって表したものである。パルス印加部304には、通電PPと通電箇所との対応関係が記憶されており、パターン選択操作子105で通電PPが選択されると選択された通電PPに対応したゾーンに出力パルスを印加する。例えば、通電PP1は左右にある第1のゾーン1L,1R、第3のゾーン3L,3R、第4のゾーン4L,4R、および第7のゾーン7L,7Rの合計8つのゾーンで構成されている。従ってパルス印加部304は、パターン選択操作子105で通電PP1が選択されると上記8つのゾーンに出力パルスを印加する。また、通電PP10は全てのゾーンで構成されており、このため、この通電PP10が選択された場合はパルス印加部304は全てのゾーンに出力パルスを印加する。このようにパターン選択操作子105で通電PPを選択すると、パルス印加部304は選択された通電PPを構成するゾーンにパルスを印加する。
【0062】
タイマー操作子106は、押下する度にパルス印加部304内部にある出力パルス印加時間を1分単位で減少させる。なお、パルス印加部304に設定されている出力パルス印加時間の初期値は30分である。パルス印加部304はこの設定された時間の間、出力パルスを印加する。
【0063】
出力調整操作子107は、各モードからパルス印加部304に入力される発生パルスの振幅を調整するものである。これによってパルス印加部304は、モード切替操作子104で切り替えられたモードで発生するパルスの振幅をこの出力調整操作子で調整された強さに従って変調した出力パルスを印加する。
【0064】
主表示部108は、モード切替操作子104、パターン選択操作子105、およびタイマー操作子106によって設定された情報を表示する。
【0065】
出力ゾーン表示部109L,009Rは、パターン選択操作子105からの入力を受けて出力パルスを印加しているゾーンを示す情報を表示する。
【0066】
この低周波パルス印加装置100によれば、予め定められた複数の通電PPの中から一つのパターンを選択するだけでゾーンの組み合わせを決定できるため、一つ一つパルスを印加するゾーンを選ばなくてもよい。さらに、予めその使用目的にあわせたモードを選択するだけで適切なパルスが出力されるため、使用目的にあわせてパルスの周波数を設定しなくてもよい。
【0067】
次に、本発明の使用方法についての実施形態について説明する。
【0068】
図6は、本発明の一実施形態に係る低周波パルス印加装置100の使用方法を示すフローチャートである。
【0069】
図6には本実施形態の低周波パルス印加装置の使用方法の大まかな流れが示されている。ここで説明する使用方法は、低周波パルス印加装置を初めて使用する場合に望ましい一連の処理である。最初のステップS100は脹脛を刺激するステップである。次のステップS200およびステップS300は弱っている部位を探すステップである。そして最後のステップS400はステップS200およびステップS300の結果から、弱っている部位を刺激するステップである。この各ステップは対象者自らが行ってもよいし、補助者が行うものでもよい。以下、適宜図面を参照し、対象者自らが各ステップを行うものとして詳細を説明する。
【0070】
最初に脹脛を刺激するステップS100について説明する。
【0071】
図7はステップS100における低周波パルス印加装置の使用状態を示す図である。
【0072】
図7には対象者が仰向けになって低周波パルス印加装置100に脹脛Cを載せた状態が示されている。この図7では両足Lの脹脛Cがそれぞれ左ゾーン10Lおよび右ゾーン10Rに載せられ、その足先Sは図の上方向に示されている。この脹脛刺激ステップでは図7に示すように脹脛Cを直接ゾーンに接触させることが好ましい。
【0073】
図8はステップS100の流れの詳細を示すフローチャートである。
【0074】
低周波パルス印加装置101では電源投入によって意図せずに出力パルスが印加されてしまうことが防止されている。出力パルスを印加するためには出力調整操作子107を出力が0の状態に一旦戻す必要がある。従ってまず図8に示すステップS101では、出力調整操作子107を出力が0になるように操作する。この操作によって以降の出力調整操作子107の操作が反映されるようになる。次にステップS102で、モード切替操作子104を操作して筋肉刺激モードに切り替えるとともにパターン選択操作子105を操作して通電PP10を選択する。続くステップS103で、対象者が横臥して、自身の脹脛を低周波パルス印加装置100の左ゾーン10Lおよび右ゾーン10Rに接触させる。なお、健康状態によって横臥した状態にすることが困難であり例えば上半身を起こす方が楽な場合には、そのような楽な姿勢で自身の脹脛に左ゾーン10Lおよび右ゾーン10Rを接触させればよい。また、全てのゾーンに脹脛を接触させることが好ましいが、対象者の健康状態によってそれが困難である場合には一部のゾーンであってもよい。
【0075】
なお、ここまでのステップS101からS103の順番は必ずしもこの順番で行う必要はなく、例えば逆の順番であってもよい。
【0076】
ステップS104では出力調整操作子107を操作して出力を上げる。この時出力されるパルスによって脹脛が刺激されるが、この刺激の感じ方には個人差がある。例えば同じ出力であっても人によっては刺激が強すぎて痛みを伴うことがある。このことから客観的に適切な出力を決定することが困難である。そこでステップS105では、対象者本人が痛みを伴わずにさらに出力を上げることが可能か否かを判断し、可能であればステップS104およびステップS105を繰り返して出力を徐々に上げていく。ステップS105でこれ以上出力を上げられないと感じた場合はそこで出力調整操作子107の操作を止め、ステップS106で30分間筋肉刺激を受ける。ステップS104からステップS105によって調整した出力パルスが脹脛に30分間印加され、その後低周波パルス印加装置の出力は自動的に0になる。
【0077】
このステップS100すなわちステップS101からS106までが本発明における脹脛刺激ステップの一例に相当する。この脹脛刺激ステップによって脹脛の筋肉に軽い収縮を繰り返させ、その筋肉運動によって血行が促進される。なお、本実施形態では30分間の刺激を行っているが、この脹脛刺激ステップでは特に時間を制限するものではない。
【0078】
また、上記脹脛刺激ステップに代えて、左右の前腕部をそれぞれ左ゾーン10Lおよび右ゾーン10Rに載せて刺激する前腕部刺激ステップを行ってもよい。この前腕部刺激ステップによって前腕の筋肉を刺激して血行を促進し、特に腕から肩にかけての血行を促進させることができる。なお、この前腕部刺激ステップは脹脛刺激ステップの前後または脹脛刺激ステップと同時に行うものであってもよい。この使用方法によれば、全身の血行をより効果的に促進することができる。
【0079】
次に、ステップS200によって基準出力パルスを決定する手順を説明する。
【0080】
図9はステップS200の流れの詳細を示すフローチャートである。
【0081】
図9に示すフローチャートは低周波パルス印加装置100の電源を入れてスタートする。なお、電源が切れていなければ電源を入れなおしてスタートする。まず、ステップS201では、ダイヤル式の出力調整操作子107を出力が0になるよう左回転させる。続くステップS202では、モード切替操作子104を操作して自己診断モードに切り替えるとともにパターン選択操作子105を操作して通電PP10を選択する。したがって、出力パルスが左ゾーン10Lおよび右ゾーン10Rの全てに印加される。そしてステップS203で対象者の足の裏を左ゾーン10Lおよび右ゾーン10Rに接触させる。
【0082】
なお、ここまでのステップS201からS203の順番は必ずしもこの順番で行う必要はなく、例えば逆の順番であってもよい。
【0083】
そしてステップS204で出力調整操作子107を右回転させ出力パルスの出力を上げる。このステップS204によって足の裏全体に出力パルスが印加されると、対象者は出力パルスの出力の程度に応じた刺激を下肢に感じるようになる。より詳細にはこの刺激は出力を上げるに従って足の裏から徐々に上に上がってくるものである。特に健康な対象者の体は生体電気が正常に流れやすい状態すなわち電気抵抗が低い状態となっており、そのため印加された出力パルスが流れやすくその刺激を感じやすい。したがって、対象者が健康であれば、出力を上げるにしたがって足の裏から踝、脛、そして膝というように高い位置まで刺激を感じるようになる。しかし、健康な対象者が膝まで刺激を感じる出力パルスを健康でない対象者に印加しても、踝くらいの低い位置までしか刺激を感じない場合がある。その理由は、その健康でない対象者は生体電気が正常に流れにくい状態すなわち電気抵抗が高い状態となっているため、あまり刺激を感じないからである。このように、出力パルスの印加による刺激の感じ方には個人差があるため客観的に適切な出力を決定することが困難である。そこで後述する基準出力パルスおよび基準位置を対象者の主観によって決定する。
【0084】
ステップS205では対象者本人が刺激による痛みがなくまだ出力を上げることができるか否かを判断し、出力を上げることができる場合にはステップS204に戻り出力を上げる。このステップS204およびステップS205を繰り返し、対象者が無理せず耐えられるか否かを判断しながら出力を上げていく。そして、ステップS205でこれ以上出力を上げられないと感じた場合は出力調整操作子107の操作を止めてステップS206に進み、この時の出力の強さとしてダイヤル式の出力調整操作子107の右回転停止位置を覚えておく。この時の出力の強さは対象者が痛みを感じずかつ最も強い刺激を感じる強さである。この強さの出力パルスを基準出力パルスとする。
【0085】
また、この基準出力パルスにより下肢を上がってくる刺激が到達した位置(例えば膝)を基準位置とし、続くステップS207でこの基準位置を覚えておく。
【0086】
このステップS200すなわちステップS201からS207までが本発明における基準決定ステップの一例に相当する。
【0087】
続いて、ステップS300によって、基準出力パルスを使用して対象者の弱っている部位を探す方法について説明する。
【0088】
図10はステップS300の流れの詳細を示すフローチャートである。
【0089】
図10に示すフローチャートは低周波パルス印加装置100の電源を入れてスタートする。なお、電源が切れていなければ電源を入れなおしてスタートする。まず最初のステップS301ではモード切替操作子104を操作して自己診断モードに切り替える。次のステップS302では出力調整操作子107を出力が0になるように操作する。そしてステップS303では足の裏を左ゾーン10Lおよび右ゾーン10Rに接触させる。なお、このステップS301からS303の順番は必ずしもこの順番である必要はない。
【0090】
次のステップS304ではパターン選択操作子105を操作して通電PPのうちから一つの通電PPを選択する。そしてステップS305で出力調整操作子107を操作して上記右回転停止位置まで右回転させる。すなわち、上記のステップS206で覚えておいた強さに出力を調整し、基準出力パルスを印加する。
【0091】
続くステップS306では、この時出力パルスによって下肢を上がってくる刺激が到達した位置が基準位置と比較して低いか否か判断する。刺激が到達した位置が基準位置よりも低い場合、すなわち刺激をより感じない場合は、ステップS307に進みこの時の通電PPを覚え、さらに次のステップS310でこの時の刺激が到達した位置を新たな基準位置として次のステップS308に進む。一方、刺激が到達した位置が基準位置より低くない場合はそのままステップS308に進む。
【0092】
ステップS308では他に診断したい通電PPがあるか否か判断する。他に診断したい通電PPがある場合は、ステップS309で出力調整操作子107を出力が0になるように操作して、ステップS304に戻る。このステップS304からS308の処理を、診断したい通電PPがある限り繰り返すことで、印加した時の刺激が上記基準出力パルスを決定した時に感じた刺激よりも弱くなる通電PPのうち最も刺激を感じない時の通電PPを探すことができる。この一連のステップで最終的に覚えている通電PPに対応する部位が対象者の体で最も生体電気が流れにくい部位であり、最も弱っている部位と推定することができる。例えば通電PP1を覚えている場合には、図5に示すように通電PP1によって定められたゾーンに消化器系のつぼが対応していることから、対象者の消化器系が最も弱っていると推定することができる。上記のステップS300すなわちステップS301からS310までが本発明における自己診断ステップの一例に相当する。
【0093】
なお、本実施形態は最も刺激を感じないときの通電PPを一つだけ覚えるものであるがこれに限らず、印加したときの刺激が基準出力パルスを決定した時に感じた刺激よりも弱くなる通電PPを複数探し出すものであってもよい。また、本実施形態では対象者が診断したい通電PPを選択しているがこれに限らず、例えば図5(a)に示す通電PP1〜9を順番に選択するものであってもよい。
【0094】
最後に、神経刺激を行うステップS400の詳細について説明する。
【0095】
図11はステップS400の流れの詳細を示すフローチャートである。
【0096】
図11に示すフローチャートは低周波パルス印加装置100の電源を入れてスタートする。なお、電源が切れていなければ電源を入れなおしてスタートする。電源を入れるとパルス出力時間が30分に設定される。初めに、ステップS401ではモード切替操作子104を操作して神経刺激モードに切り替える。続くステップS402では出力調整操作子107を出力が0になるように操作する。さらに続く、ステップS403ではパターン選択操作子105を操作して、上記のステップS300で探し出した通電PPを選択する。そしてステップS404で対象者の左右の足の裏をそれぞれ左ゾーン10Lおよび右ゾーン10Rに接触させる。なお、ここまでのステップS401からS404の順番は必ずしもこの順番で行う必要はなく、例えば逆の順番であってもよい。
【0097】
そして、次のステップS405で出力調整操作子107を操作して下肢に心地よい刺激を感じる程度に出力を調整した後、ステップS406で出力パルスの印加を30分間受ける。その後低周波パルス印加装置の出力は自動的に0になる。このようにして対象者の体で生体電流が流れにくい部位、すなわち最も弱っている部位を刺激することができる。上記のステップS400すなわちステップS401からステップS406までが本発明における神経刺激ステップの一例に相当する。
【0098】
なお、通電PPを複数探し出した場合には、それぞれの通電PPを用いてステップS401からステップS406の作業を行えばよい。なお、本実施形態ではステップS406で30分間のパルス印加を受けているが、この時間に限定されず、タイマー操作子106を操作して対象者の好みで時間を調整してもよい。
【0099】
図12は指先の腹を左ゾーン10Lおよび右ゾーン10Rに載せて刺激をする状態を示す図である。
【0100】
図12には、低周波パルス印加装置100や、対象者の左右の指Fが示されている。本実施形態の低周波パルス印加装置100は足の裏を刺激しやすくしたものであるが、ここでは、この低周波パルス印加装置100の出力パルスを指先の腹に印加して、指先の腹および手のひらにあるつぼを刺激するために用いている。ここで、低周波パルス印加装置100は神経刺激モードに設定されており、通電PPは10に設定されている。この使用方法によって上半身、特に横隔膜より上の部位を効果的に刺激することができる。さらに、例えばこの方法を神経刺激を行うステップS400の前後に行ったり、低周波パルス印加装置100を2台用意してステップS400と同時に行ったりというように、この使用方法を上記のステップS400と組み合わせることで、より効果的に刺激をすることができる。なお、本実施形態のように指先の腹だけを左ゾーン10Lおよび右ゾーン10Rに載せるだけでなく、左右の手のひらPの全体をそれぞれ左ゾーン10Lおよび右ゾーン10Rに載せて刺激してもよい。
【0101】
図13は低周波パッド112を使用して脊髄を刺激する状態を示す図である。
【0102】
図13には、対象者Hおよび対象者Hの背中を走る背骨Sが示されている。既に述べたとおり、図1に示した低周波パルス印加装置100は外部接続端子を備えており、この端子に低周波パッド112を接続して、低周波パッド112に出力パルスを印加することができる。図13に示すように、背骨Sの上下(例えば項部と仙骨)でその背骨Sを挟むようにこの低周波パッド112を貼って、神経刺激モードの出力パルスを印加することで、脊髄に集中する神経を効果的に刺激して体全体を活性化することができる。なお、この脊髄刺激は少なくとも1時間程度行うことが好ましい。
【0103】
さらに、低周波パルス印加装置100を複数用意し、上記脊髄刺激と上記のステップS400と上述した指先の腹への刺激とを同時に行えば、より効果的な刺激をすることができる。
【0104】
以上、ステップS100からステップS400までの一連の処理によって対象者の弱っている部位を探し出すことができ、探し出した部位に対して効果的に刺激を与えることができる。さらに使用する低周波パルス印加装置は最低一台あればよく、例えばステップS100でわざわざ脹脛に合わせたゾーンを用意したり、脹脛刺激専用の装置を用意したりする必要がない。なお、本実施形態は上述したとおり初めて使用する場合に望ましい一連の処理であって、二回目以降は必要に応じて各ステップを省略してもよい。例えば、脹脛を刺激するステップS100の後の基準出力パルスを決定するステップS200および自己診断を行うステップS300を省略して神経刺激を行うステップS400を行うことも可能である。ただし体調は日によって変化するため、ステップS400で刺激をする前に、ステップS200およびステップS300によって弱っている部位を探し出すことが望ましい。
【0105】
また、ステップS100を省略して以降のステップS200からステップS400を行うことも可能である。しかし、ステップS100を行った方がステップS100を省略した場合と比べて以降のステップが容易かつ効果的に行うことができる。以下、この理由について説明する。
【0106】
脹脛は第2の心臓と呼ばれ、この脹脛が運動することによって下肢に流れる血液を心臓に戻す働きがあることが知られている。従って、この働きなしに下肢から血液を心臓に戻すためには血圧を上昇させる必要があり、心臓に過度の負担がかかることとなる。この負担が続けば様々な心疾患が発生する可能性がある。また血圧が高い状態が長く続くと血管にも負担がかかり、例えば下肢静脈瘤といった病気の原因にもなる。
【0107】
このような疾患をもつ者は運動を制限されていたり、運動自体不可能である場合がほとんどである。従って、脹脛の働きによる心臓の負担の軽減および症状の改善は期待できない。本実施形態の低周波パルス印加装置の使用方法によれば、脹脛を刺激することで脹脛の筋肉に軽い収縮を繰り返させ、その筋肉運動によって血行が促進される。さらにこの刺激を横になって行うことで心臓の負担を軽減しつつ血行をよくすることができる。その上、血行が良くなれば体の各部に栄養が行き届きやすくなり、全身の活性化や様々な症状の軽減が期待できる。
【0108】
図14は脹脛に低周波パルス印加装置による筋肉刺激を行う前後での血圧の変化を示すグラフである。図14(a)は脹脛に筋肉刺激を行わない場合の約3カ月間の血圧の変化を測定した折れ線グラフである。また、図14(b)は脹脛に筋肉刺激を行った場合の約3カ月間の血圧の変化を測定した折れ線グラフである。どちらのグラフも横軸の日付に対する最高血圧値および最低血圧値を縦軸に表している。図14(a)のグラフに示す最高血圧の平均値は155.1mmHgであり、最低血圧の平均値は87.6mmHgである。また、図14(b)のグラフに示す最高血圧の平均値は130.8mmHgであり、最低血圧の平均値は76.4mmHgである。これらの血圧の平均値を比較すると、脹脛の筋肉刺激を行えば最高血圧と最低血圧が共に低下することがわかる。ここで、この血圧の変化について説明する。まず、脹脛刺激により血行が促進されるとそれまで血流の滞っていた部位にも血液が行き届くようになる。すると、その部位が健康状態になり血流が改善されていくため血液が流れやすくなる。血液が流れやすくなれば心臓の負担が減るため、血圧が正常値に近づいていく。
【0109】
以上説明したように、脹脛を刺激するステップS100によって血行が良くなり全身が活性化されることで、図6に示す基準出力パルスを決定するステップS200および自己診断を行うステップS300を容易に行うことができ、神経刺激を行うステップS400の効果を増幅することができる。なお、脹脛を刺激するステップS100で良くなった血行は暫くの間持続するためステップS200からステップS400を起き上った状態で行っても問題はないが、健康状態によってはステップS200からステップS400を横臥した状態で行ってもよい。
【0110】
次に、低周波パルス印加装置の効果についての一例について説明する。
【0111】
人体にはその体内に生体活動に必要な物質を運ぶ様々な物質が存在する。その中にcAMP(Cyclic Adenosine Monophosphate:環状アデノシン一リン酸)と、cGMP(Cyclic Guanosine Monophosphate:環状グアノシン一リン酸)と呼ばれるものがある。
【0112】
図15は低周波パルス印加装置による刺激(以下、単に刺激と称する)を行う前後のcAMP、cGMP、およびcAMP/cGMPを示すグラフである。
【0113】
この図15には左からcAMP、cGMP、およびcAMP/cGMPの順にグラフが示されており、各グラフの左側が刺激前、右側が刺激後の数値を示している。これらのデータは40人の気管支喘息患者から得られたものである。図15の左のグラフに示す通りcAMPは低周波パルス印加装置の刺激によって増加する傾向がある。また、中央のグラフに示す通りcGMPは低周波パルス印加装置の刺激によって減少する傾向がある。そして、一番右のグラフに示すようにcAMP/cGMPの比率は刺激によって増加している。
【0114】
cAMPは代謝を促進して細胞を活性化する効果などがあり、これを低周波パルス印加装置の刺激によって増加させることによって人体の代謝を活性化させる効果があると考えられる。例えば、気管支喘息の治療に用いられるステロイド剤は生理活性物質と呼ばれ人体の免疫力等の活性化を目的として投与されるものであるが、図15に示すcAMPおよびcGMPの変化はステロイド剤等の投与の結果認められる変化と似通っている。この例にみられるように、投薬によらずとも低周波パルス印加装置の刺激により人体を活性化することが可能と考えられている。
【0115】
また、投薬を行う場合には、血行が良くない状態で薬剤を投与しても疾患のある部位まで到達しにくいため、期待される効果が得られないという問題がある。しかし、上述のごとく本実施形態の低周波パルス印加装置によれば血行が良くなるため、期待通りの効果を得ることができる。
【0116】
以上説明したように、本実施形態によれば、脹脛刺激ステップでは血行を促進することができ、神経刺激ステップでは自己診断ステップで発見した弱っている部位を集中的に活性化することができ、これらの相乗効果によって対象者を健康な状態にすることができる。なお、本実施形態の低周波パルス印加装置100を使用した後に、リハビリ運動を行えば、驚くほどの効果を期待することができる。
【0117】
これまで説明した使用方法以外にも、特に低周波パッド112だけに着目した筋肉刺激の方法として以下に述べる実施形態がある。
【0118】
まず、低周波パルス印加装置100のモード切替操作子104を操作して筋肉刺激モードに設定し、パターン選択操作子105を操作して低周波パッド112に出力パルスが印加されるように設定する。そして、背中の硬くこった部分や頸椎の周りなどに低周波パッド112を貼り、出力調整操作子107によって出力を心地良い程度の刺激がされるように調整する。これによって刺激された箇所の血流を改善し、こりをほぐすことができる。また、顎の下のリンパ節の辺りを低周波パッド112によって刺激すると、喉や舌周辺の筋肉を鍛えることができる。
【符号の説明】
【0119】
100 低周波パルス印加装置
101 本体部
102L,102R 足受け台
1021 接続コード
1022 コネクタ
103 キーロック操作子
104 モード切替操作子
105 パターン選択操作子
106 タイマー操作子
107 出力調整操作子
108 主表示部
109L,109R 出力ゾーン表示部
110 把手
112 低周波パッド
113L,113R 取外しボタン
1L〜7L 左の第1ゾーン〜左の第7ゾーン
1R〜7R 右の第1ゾーン〜右の第7ゾーン
202L 足受け台
2021 接続コード
2022 コネクタ
301 自己診断モードパルス発生部
302 筋肉刺激モードパルス発生部
303 神経刺激モードパルス発生部
304 パルス印加部
L 足
C 脹脛
S 足先
P 手のひら
F 指
H 対象者
S 脊骨

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のゾーンにパルスを印加する低周波パルス印加装置において、
所定の周波数のパルスを発生させて該パルスの発生を一旦休止することを繰り返す自己診断モードと、
前記所定の周波数より低い上限値を有する第1の所定の周波数範囲内で変化させた周波数のパルスを発生させて該パルスの発生を一旦休止することを繰り返す筋肉刺激モードと、
前記所定の周波数より低い上限値を有しかつ前記第1の所定の周波数範囲よりも広い第2の所定の周波数範囲内で変化させた周波数のパルスを発生させて該パルスの発生を一旦休止することを繰り返してから該第2の所定の周波数範囲内で変化させた周波数のパルスを振幅を変調させながら発生させて該パルスの発生を一旦休止することを繰り返す神経刺激モードとを有し、
前記自己診断モード、前記筋肉刺激モード、および前記神経刺激モードのうちから1つのモードに切り替えるモード切替操作子と、
前記ゾーンの組み合わせを定めた複数の通電ポイントパターンの内から1つの通電ポイントパターンを選択するパターン選択操作子と、
前記モード切替操作子で切り替えられたモードで発生するパルスに応じた出力パルスを、前記ポイント選択操作子で選択された1つの通電ポイントパターンによって定められたゾーンに印加するパルス印加部とを備えたことを特徴とする低周波パルス印加装置。
【請求項2】
前記筋肉刺激モードが、前記第1の所定の周波数範囲内で変化させた周波数のパルスを第1の所定時間発生させて該パルスの発生を一旦休止することを繰り返すモードであり、
前記神経刺激モードが、前記第2の所定の周波数範囲内で変化させた周波数のパルスを前記第1の所定時間よりも短い第2の所定時間発生させて該パルスの発生を一旦休止する周波数一定発生を繰り返してから前記第2の所定の周波数範囲内で変化させた周波数のパルスを振幅を変調させながら前記第1の所定時間よりは短くかつ該第2の所定時間よりは長い第3の所定時間発生させて該パルスの発生を一旦休止する振幅変調発生を繰り返すモードであることを特徴とする請求項1記載の低周波パルス印加装置。
【請求項3】
前記神経刺激モードは、前記振幅変調発生において前記第2の所定の周波数範囲に含まれた該第2の所定の周波数範囲よりも狭い第3の所定の周波数範囲内で変化させた周波数のパルスであってさらに振幅を断続的に0に変調させたパルスを発生させるモードであることを特徴とする請求項2記載の低周波パルス印加装置。
【請求項4】
前記複数のゾーンが、足の裏のつぼに対応して配置されたものであることを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1項記載の低周波パルス印加装置。
【請求項5】
出力パルスの強さを調整する出力調整操作子を備え、
前記パルス印加部は、前記モード切替操作子で切り替えられたモードで発生するパルスの振幅を前記出力調整操作子で調整された強さに従って変調した出力パルスを印加するものであることを特徴とする請求項1から4のうちいずれか1項記載の低周波パルス印加装置。
【請求項6】
請求項5記載の低周波パルス印加装置の使用方法において、
対象者の足の裏に前記複数のゾーン総てを接触させ、前記自己診断モードで発生したパルスに応じた出力パルスを該複数のゾーン総てに印加させながら前記出力調整操作子を操作して該出力パルスの強さを調整し、該対象者が痛みを感じずかつ最も強い刺激を感じる強さの出力パルスを基準出力パルスに決定する基準決定ステップと、
前記対象者の足の裏に前記複数のゾーンを接触させ、前記パターン選択操作子を操作して通電ポイントパターンを順次選択しながら選択した通電ポイントパターンごとに定められたゾーンの組合せを構成する各ゾーンに、前記自己診断モードで発生したパルスを前記基準出力パルスの強さで印加し、印加したときの刺激が前記基準出力パルスを決定した時に感じた刺激よりも弱くなる通電ポイントパターンを探す自己診断ステップとを有することを特徴とする使用方法。
【請求項7】
前記基準決定ステップを実施する前に行う、対象者を横臥させた状態で該対象者の脹脛に前記複数のゾーンを接触させ、前記筋肉刺激モードで発生したパルスに応じた出力パルスを該複数のゾーンに印加させる脹脛刺激ステップを有することを特徴とする請求項6記載の使用方法。
【請求項8】
前記自己診断ステップにより探した通電ポイントパターンによって定められたゾーンの組合せを構成する各ゾーンに、前記神経刺激モードで発生したパルスに応じた出力パルスを印加する神経刺激ステップを有することを特徴とする請求項7又は8記載の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−45562(P2011−45562A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−197144(P2009−197144)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(507062277)株式会社都 (1)
【Fターム(参考)】