説明

低周波治療器用の電極導子及び電極構造

【課題】 主面の面積を確保しながら、粘着シート全体に供給される通電電流の均一化、患部貼付中央部における良好な通電状態の確保を図り、貼付患部への配置の自由度を高めた低周波治療器用の電極導子を提供する。
【解決手段】 主面の一方が粘着導電面を有する粘着シートに貼付けられる導電面3、他方が患部側に対峙される絶縁面4をなし、導電面3は、低周波治療器の通電コードに接続される基端部10と、基端部10側から形成され、使用する粘着シートの粘着導電面を主面の略中央に露呈させるための肉抜部2と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低周波治療器用の電極構造に関し、詳しくは、低周波治療器の通電電流を供給するために、含水ゲルシート等の粘着シートとともに患部に取付けられる電極導子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種治療のため患部に電極を貼付けて低周波電流を通電する装置として、低周波治療器が広く用いられている。ここで、低周波治療器用の電極としては、従来より種々のものが提供されているが、患部貼付面に粘着層の形成されたカーボン電極で、その裏面に低周波治療器からのコードを着脱可能に取付けるスナップ接続部が設けられ、繰り返し使用されるタイプのものが主流であった。
【0003】
これに対して、近年では、低周波治療器用の電極としては、含水ゲルを基材にした粘着導電面が形成された薄型の柔らかいシート(以下、含水ゲルシートと言う。)も、使い捨て用の電極として使用されるようになっている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
すなわち、かかる含水ゲルシートは、上述した従来型の電極に比較して、低コストで製造でき、例えば患部の温度を下げるための冷却シートとして大量に流通していること、使い捨てなので、繰り返し使用する従来タイプの電極と比べて衛生的であること、基材が柔らかく、刃物での切断が可能なため、皮膚に対して通電する面積を容易に調整できること、さらには含水ゲル面に種々の薬液或いは美容液成分を含有させることで、患部への電気刺激のみならず、種々の薬効、美容等の効果を期待できること、等の種々のメリットを有している。
【0005】
このため、低周波治療器からの電流を含水ゲルシートに供給するために、患部に貼付される含水ゲルシートに対して着脱可能に取付けられる電極導子が提供されている(例えば特許文献2参照)。
【0006】
このような電極構造の場合には、通電時に電極導子の電極面(導電部)が患部(皮膚)に接触すると、低周波治療器からの電流が患部(皮膚)に直接通電する所謂「電流漏れ」状態となり、患者に不快な刺激を与えることになる。
【0007】
したがって、含水ゲルシートに取付けられる電極導子としては、低周波治療器からの通電電流を、含水ゲルシートの含水ゲル面を介して患部に供給させるために、主面の一方を導電面、他方を絶縁面として、導電面を含水ゲルシートの含水ゲル面に取り付けて、患部には絶縁面側が対峙するように使用する必要がある。
【特許文献1】特開平9−70442号公報
【特許文献2】特開2001−212249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、このような含水ゲルシートと患部との間に介在させるタイプの電極導子においては、上述した電極構造上、絶縁面が対峙する患部(皮膚)の部位には低周波治療器からの電流が供給されないために、電極導子の面積や、使用時における電極導子の配置(向きや位置など)が大きく制限されていた。
【0009】
具体的には、絶縁部の領域を減らすべく電極導子の主面面積を小さくする必要があり、かつ、この電極導子を含水ゲルシートの端側に取付ける必要があったため、低周波治療器からの通電電流を含水ゲルシート全体に均一化して供給することができない、という問題点があった。
【0010】
一方で、電極導子の主面面積を小さくした場合には、含水ゲルシートへの接触面積が小さくなるために、接触不良を生じやすくなり、また、外力により電極導子が脱落しやすくなる、という別の問題が発生する。
【0011】
また、電極導子の面積を小さくした場合には、該電極導子に含水ゲルシートを取付けて患部に貼る際に、電極導子の左右側に垂れ下がった含水ゲルシートの両端部の粘着面同士がくっついてしまい不便を生じ易い、という問題もあった。この点につき、上記特許文献2の電極導子は、含水ゲルシートを患部に貼付けた状態での着脱を可能とするものであるため、かかる不都合については回避することができる。
【0012】
しかしながら、特許文献2の電極導子は、含水ゲルシートを患部に貼付けた状態での着脱の容易化を図るべく主面が先細状となっており、このため外力等により脱落しやすいという弱点があり、粘着導電面の劣化が激しい含水ゲルシート用の導子としては必ずしも実用的に優れているとは言えないものであった。
【0013】
すなわち、含水ゲルシートの粘着導電面は、その粘着力が短時間で容易に劣化するものであり、また、そもそも該粘着力はさほど強いものではない。このため、特許文献2の電極導子では、通電コード側が下向きになるように取付けた場合や、さらには把持部やコード等にかかる外力が比較的弱い場合であっても、脱落しやすい弱点を有している。したがって、含水ゲルシート等の比較的弱い粘着力のシートに用いる電極導子としては、把持部やコード等に外力がかかっても容易には脱落しないものが求められていると考えられる。
【0014】
これに対して、耐脱落性を持たせるために、電極導子を例えば含水ゲルシートの上下から挟み込む挟持式とすることも考えられるが、この場合には構造の複雑化やコスト高を招く等の問題点がある。
【0015】
本願発明の課題は、粘着シートと患部との間に介在させるタイプの電極導子における上述の問題点を解決することにある。
【0016】
すなわち、本発明の主たる目的は、主面の面積を確保しながら、粘着シート全体に供給される通電電流の均一化、患部貼付中央部における良好な通電状態の確保を図り、貼付患部への配置の自由度を高めた低周波治療器用の電極導子を提供することにある。
【0017】
また、本発明の他の目的としては、外力等による脱落防止の強化が図られた低周波治療器用の電極導子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の第一の構成は、略薄板状をなし、主面の一方が粘着導電面を有する粘着シートに貼付けられる導電面、他方が患部側に対峙される絶縁面をなす電極導子であって、導電面は、低周波治療器の通電コードに接続される基端部と、該基端部側から形成され、使用する粘着シートの粘着導電面を主面の略中央に露呈させるための肉抜部と、を備えたことを特徴とする。この電極導子においては、肉抜部の形状に基づいて、患部に対峙する電極導子の絶縁面すなわち非通電領域の待避、分散、再分配、等が可能となる。
【0019】
本発明の第二の構成は、第一の構成において、肉抜部は、主面を基端部から左右両側に分離する形状であることを特徴とする。この電極導子においては、肉抜部により、部材の基端部から主面中央に向かって空隙が形成され、使用される粘着シートの粘着導電面が、左右の導子部材の内側の空隙箇所に露呈される。
【0020】
本発明の第三の構成は、第二の構成において、肉抜部が開口形状であることを特徴とする。第三の構成を備えた電極導子においては、主面に環状の枠部が形成され、剛性が確保されるとともに、先端側の開口部位により、引抜き時において該引抜き力に抗する力が発生する。
【0021】
本発明の第四の構成は、第三の構成において、肉抜部は、主面外形と略相似する形状であることを特徴とする。第四の構成を備えた電極導子においては、導電面の枠部の幅(太さ)を略一定とすることが可能となる。
【0022】
本発明の第五の構成は、第一乃至第四のいずれかの構成において、基端側よりも外形幅が広い幅広部を具備することを特徴とする。第五の構成を備えた電極導子においては、該幅広部により、引抜き時において該引抜き力に抗する力が発生する。また、第三の構成との組み合わせにより、使用する粘着シートが比較的大きな場合にも粘着部同士がくっつく等の不具合の回避に寄与する。
【0023】
本発明の第六の構成は、第五の構成において、幅広部は、先端部幅が最も広い形状であることを特徴とする。
【0024】
本発明の第七の構成は、第六の構成において、幅広部は、先端方向に末広となる形状であることを特徴とする。
【0025】
本発明の第八の構成は、第一乃至第七のいずれかの構成において、導電面は、外内周の縁部に絶縁領域が形成されたことを特徴とする。第八の構成を備えた電極導子においては、低周波治療器からの電流が患部(皮膚)に直接通電する所謂電流漏れ防止の強化が図られる。
【0026】
本発明の第九の構成は、第一乃至第八のいずれかの構成において、少なくとも前記粘着シートの粘着導電面に貼付される部位が可撓性部材からなることを特徴とする。第九の構成を備えた電極導子においては、患部の曲面や凹凸等に対する適応性が良好となる。
【0027】
また、本発明は、上記いずれかの構成の電極導子と、該電極導子の基端部を除く外縁形状よりも大きい外形の粘着導電面を有する粘着シートと、からなる低周波治療器用の電極構造である。
【発明の効果】
【0028】
上記構成を備えた本発明の電極導子によれば、主面の面積を確保しながら、粘着シート全体に供給される通電電流の均一化、患部貼付中央部における良好な通電状態の確保が図られ、貼付患部への配置の自由度が高められる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0030】
図1に示すように、本実施の形態の電極導子1は、その主面外形(外縁形状)につき、基端側が縦長の略矩形をなし、この矩形に対して、先端(図1上方)側が幅広となる台形が接続された左右対称の形状(換言すると略皿ねじ状)を呈している。そして、この電極導子1では、基端部側から肉抜部が形成されており、これにより導子部材が基端部から左右両側に分離するように延設され、部材の主面中央に空隙が大きく形成される。本実施の形態では、部材主面の肉抜部として、上述した外縁形状と略相似する形状の肉抜開口部2を設けており、これにより、部材全体としては、環状の枠体構造となっている。
【0031】
なお、実際の通電時には、図3に示すように、この電極導子1が2個一組で使用されることになるが、煩雑を避けるためここでは一方の導子のみについて説明する。以下、電極導子1の各部について詳説する。
【0032】
電極導子1は、図1に示す一方の主面が導電性を有し粘着シートの粘着導電面に取付(貼付)けられる導電面3であり、図2(a)に示す他方の主面が使用時に患部側に対峙される絶縁面4となっている。なお、各図では、両主面の区別のため、導電面側に斜線を加えて表している。
【0033】
電極導子1は、低周波治療器(図示せず)からの通電コードが接続される基端部10と、粘着導電面を有する含水ゲルシート(以下、単に粘着シートと言う。)に当接される部位であって、該基端部10から分岐するように延設された本体部20と、を一体に備えている(図3,図4参照)。
【0034】
そして、本実施形態における電極導子1の本体部20は、基端部10の左右端側から相互に略並行に延設された一対の本体中間部30と、該本体中間部30から末広がり状に延設された本体先端部40と、を一体に備えている。ここで、本体先端部40は、その先端側が本体中間部30に対して略直角方向となるように屈曲されることにより、本体中間部30から延設された左右一対の末広がり部を所定位置で閉じている。
【0035】
この本体先端部40は、基端側よりも外形幅が広い幅広部であり、粘着シートの粘着面左右端部のくっつきを防止する機能を担い、また、部材外縁の斜辺部41及び肉抜開口部2の先端側形状に基づいて形成された横断内縁部42により、粘着シートからの引抜き時に抗する部位として機能することになるが、これらについては後述する。
【0036】
電極導子1における本体部20は、使用する粘着シートの大きさとの関係で以下のような構成とされる。すなわち、本体部20の横最大幅(図2(a)の幅W)は、使用する粘着シートの短尺方向幅に対応した寸法であり、詳細には、該粘着シートの短尺方向の粘着導電面幅と略同一乃至若干短い幅であることが好ましい。一方、本体部20の基端側乃至中央における横幅(この例では基端部10及び本体中間部30の幅)は、上記横最大幅Wの半分程度となっている。
【0037】
同様に、本体部20の縦幅、換言すると電極導子1の部材先端から肉抜開口部2の基端側までの長さ(図2(a)の長さL)は、使用する粘着シートの短尺方向幅に対応した幅であり、詳細には、該粘着シートの短尺方向の粘着導電面幅と略同一幅乃至若干長い幅であることが好ましい。
【0038】
本体部20の幅をこのように設定することで、導電部の面積及び肉抜開口部2の十分な広さが確保されるとともに、粘着シートを横向き(図4参照)或いは縦向きのいずれの方向に取付けた場合でも、その粘着導電面内に、電極導子1の本体先端部40の全部及び本体中間部30の大部分を貼付けることができ、さらには、本体部20の外側の粘着領域も確保される。特に、電極導子1の横最大幅を上述のように十分広く確保することで、粘着シートの長尺方向が長い場合で且つ電極導子1に対して横向きに取付けた場合であっても、その粘着導電面左右両端部がくっついてしまうような不具合を回避出来る。
【0039】
なお、一般に供給されている冷却シート等の粘着シートは、その短尺方向幅(及び粘着導電面幅)が50(及び45)mm前後のものが多い。このため、本実施形態では、電極導子1の横最大幅(図2の幅W)が約36mm、部材先端から肉抜開口部2の基端側までの長さ(図2の長さL)が約45mmに設定されている。但し、本願発明がこのサイズに限定されるものではない。
【0040】
電極導子1の基端部10には、低周波治療器からの電流を供給するコード(通電コード101)を接続するためのコード接続部11が設けられている。このコード接続部11は、図2(b)に示すように、導電面3側のスナップ端子12と絶縁面4側の絶縁部材13とからなり、両者はそれぞれ基端部10の不図示の孔部を介して嵌合するように接続される。ここで、スナップ端子12は、ステンレス等の導電部材からなり、図4に示す通電コード101の接続端子102に着脱可能に係合する凸形状を呈している。一方、絶縁部材13は、スナップ端子12の裏側の凹形状に嵌入される不図示の凸部を有しており、基端部10の前記孔部を介してスナップ端子12と嵌着される。
【0041】
この電極導子1は、部材全体が可撓性を有しており、本実施形態ではポリエステルからなる合成樹脂製となっている。なお、合成樹脂としては、他にも、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニール、などを使用することができる。さらには、可撓性を有していれば、合成樹脂以外の素材を用いても良い。このように、電極導子1を可撓性部材とすることにより、後述する引き抜き時において力が分散され、該部材へのダメージを抑えることができる。
【0042】
なお、基端部10を可撓性を有しない部材で構成しても良いが、使用中に外力が加わることを考慮すると、基端部10も可撓性とする方が好ましく、これにより外力がより分散されるメリットがある。
【0043】
図2(b)は、電極導子1を側方側から表したものであり、該図からも分かるように、部材全体として略薄板状となっている。なお、電極導子1の部材厚みは、サイズや材質にもよるが、粘着シートの患部への良好な粘着性を確保する観点からは、できるだけ薄い方が好ましい。上述したサイズ及び材質の場合には、部材厚みは、概ね100μm〜125μmの範囲が好適である。
【0044】
本実施形態では、図1及び図2(a)に示すように、肉抜開口部2が電極導子1の主面外形と略相似する形状となっており、これにより本体部20の部材太さ、すなわち図2(a)の枠幅Wが本体部20全体に亘って均一化された太さとなる。本発明者が実際に試作したものとしては、肉抜開口部2の中央幅が略10mm、同先端部幅が略25mm、奥行が略40mmとされ、これにより本体部20の枠幅Wが略4〜5mm程度となった。
【0045】
なお、枠幅Wは、必ずしも本体部20全体に亘って一定である必要は無いが、通電時の電流密度の均一化を図る観点からは導電部の幅が一定であることが好ましく、一方で、枠幅Wが均一でない構成とすると、導電部の幅を均一とするためには絶縁部3a,3bにつき不必要に広い領域(所謂無駄なスペース)が生じるので、かかる観点からは、本体部20の枠幅Wが均一であることが好ましい。
【0046】
電極導子1の導電面3は、導電材としてカーボンが印刷されており、かつ、該面の各縁部に絶縁領域が設けられている。すなわち、肉抜開口部2の形成により縁部(縁周の長さ)が増えるので、この場合には使用時における皮膚の弾性や部材の変形等により、縁部を介して導電部が直接患部(皮膚)に接触する可能性もそれだけ高くなるものと考えられる。
【0047】
このため、電極導子1では、導電面3の外周縁及び内周縁には、導電材が形成されない絶縁部3a,3bがそれぞれ環状に設けられており、これにより通電時の電流漏れ、すなわち導電部(カーボン)が直接患部(皮膚)に触れることで不快な刺激を生じること、が防止される。本実施の形態では、内周縁及び外周縁からそれぞれ0.2mmの領域を絶縁部3a,3bとしている。
【0048】
一方、導電面3の反対側の主面は、全て絶縁構造とされた絶縁面4であり、かかる絶縁領域が上記絶縁部3a,3bにまで連接される。かかる構成により、貼付時における皮膚の弾性や部材の変形等にも対応して、通電時における不快な刺激の発生を回避している。
【0049】
次に、粘着シートの構成について説明する。電極導子1が取付けられる粘着シートは、略矩形の不織布等の基材の片面に、導電性の粘着剤による粘着導電面が形成された薄型の柔らかいシートである(図3,図4参照)。この粘着シートの粘着導電面は、一般にプラスチックシート等の非透水性フィルム(図示せず)が貼着され、患部への貼付け直前に該フィルムを剥がして使用されることになる。本実施形態では粘着剤に含水ゲルを用いた冷却シートを用いているが、導電性の粘着面を有するシートであればこれに限られない。
【0050】
また、粘着シートの粘着導電面には、種々の薬剤或いは化粧剤、さらには色素や香料等の各種成分が含有可能である。
【0051】
ここで、粘着導電面に含有させる薬剤或いは化粧剤成分としては、例えばアスコルビン酸(ビタミンC成分),l−メントール,サリチル酸メチル、等の種々の成分を用いることが可能である。
【0052】
以下に、電極導子1の使用方法等について説明する。低周波治療器による治療等の際には、粘着シート100の粘着導電面を例えば上方に向け、該粘着導電面に対して電極導子1の導電面3側を、本体先端部40の全部及び本体中間部30の大部分乃至ほぼ全てが接触し、且つ基端部10が接触しないように取付け(貼付け)る。このとき、電極導子1の肉抜開口部2からは、粘着シート100の粘着導電面が露呈されるので、該粘着導電面を自由な配置にて患部に当接させることが可能となる(図3,図4参照)。また、上述のように先端側の幅広部が十分な幅及び適度な剛性を有しているので、患部への貼付作業の際に、粘着シートの左右両端の粘着導電面同士がくっついてしまう不具合の発生が回避される。なお、電極導子1の基端部10への通電コード101の取付けについては、粘着シート100の取付け前或いは後のいずれでも良い。
【0053】
しかして、本実施形態の電極導子1によれば、患部貼付時において、粘着シート100が電極導子1の外側のみならず肉抜開口部2内の箇所も患部に当接して貼り付くので、良好な貼着状態及び患部の貼付中央部における良好な通電状態が得られる。
【0054】
また、電極導子1の導電面3が、粘着シート100の奥行方向及び幅方向に延びた状態となっているので、通電時には、粘着シートの全体に、低周波治療器からの通電電流(所定周波数のパルス信号)が均一に供給される。特に、肉抜開口部2に対応する患部貼付中央部に対しての通電状態が良好となり、印加電圧に応じた適度な刺激が加えられる。また、上述のように導電部(カーボン印刷部分)の幅が均一であることから、通電時において電流密度分布の均一化が図られる。加えて、導電面3に設けられた絶縁部3a,3bにより、所謂電流漏れによる不快な刺激が回避される。
【0055】
また、患部貼付状態において、上記のように電極導子1と粘着シート100との接触箇所及び接触面積が広く確保されており、さらには電極導子1の横断内縁部42や斜辺部41等により、電極導子1に外力が作用した場合であっても、容易には脱落することがない。
【0056】
例えば、図4に示すように、通電コード101が引っ張られることで電極導子1に外力が作用した場合でも、肉抜開口部2の先端側の横断内縁部42や斜辺部41等が粘着シート100の粘着導電面の奥側で密着しており、電極導子1は容易には抜けることがない。また、電極導子1が可撓性を有しているので、これにより外力が分散され、粘着シート100の剥がれ防止や、導子部材への衝撃力の緩和が図られる。
【0057】
なお、さらに強い力で引っ張った場合には、皮膚と粘着シート100との密着度が電極導子1と該シートの密着度よりも弱い場合には、電極導子1とシートが一緒に皮膚から取り外され、この逆の場合には、粘着シート100が皮膚に張り付いた状態のまま電極導子1が引き抜かれることになるが、いずれにしても、電極導子1の可撓性及び全体形状により外力が分散されるので、導子部材へのダメージは最小限に抑えられる。
【0058】
本実施形態においては、通電終了後は、電極導子1が付いた状態の粘着シート100を患部から剥がし、この状態から粘着シート100を片手で押さえながら電極導子1の基端部10をもう片方の手で把持して絶縁面4側に湾曲させれば良い。この際には、本体中間部30から末広状の本体先端部40の順に剥がれて行くので、使用する粘着シートの粘着力が強い場合であっても、部材に無理な力が加わることなく電極導子1を容易に取り外すことが可能となる。
【0059】
なお、粘着シートにつき、電極導子1の本体部20の外形形状より小さくならない範囲で、適宜の長さに切断して使用しても良い。その際には、粘着シートを例えば本体部20の外縁形に対応した形状にして使用することも可能である。但し、含水ゲルシートのように粘着力がさほど強くない粘着シートを使用する場合には、取付け時に電極導子1から外側に余る部分の面積を適度に確保することが好ましい。図4では、粘着導電面が45mm×70mmの粘着シートを横向きに取付けた場合を表している。
【0060】
このように、本発明を適用した電極導子1によれば、肉抜開口部2により部材の主面中央に空隙が形成され、使用される粘着シートの粘着導電面が、本体部20の左右の導子部材の内側の空隙箇所に露呈されるので、粘着導電面を導子部材の主面中央に露呈させることが可能となる。これにより、導子部材全体を粘着シートの中央ひいては貼付患部中央に持ってくることが可能となり、貼付患部への配置(向きや位置など)の自由度が増すとともに、主面の面積を十分に確保しながら、患部貼付中央部における良好な通電状態を得ることが可能となる。
【0061】
以下、図5乃至図7を参照して、電極導子の変形例について説明する。なお、上述と同一機能の部分には同一の符号を付し、また同一の構成については説明を省略する。
【0062】
上述した実施の形態では、末広がり部分となる斜辺部41を本体部20の先端側に設けた構成としたが、他にも、本体部20の全体を末広がり形状としても良く、さらには図5に示す電極導子1Aのように、外側縁全体を末広がり形状としても良い。この場合には、急激な引き抜き時において部材全体にかかるダメージがさらに少なくなり、図1の構成と比較して耐久性がより向上する。
【0063】
上述した実施の形態では、単一の肉抜開口部を設ける構成としたが、例えば図6に示すように、肉抜開口部を複数個設ける構成としても良い。すなわち、図6に示す電極導子1Bは、横断内縁部42と並行な横断リブ50が本体中間部30と本体先端部40との間に形成されることにより、肉抜開口部2を基端側の開口部2aと先端側の開口部2bとに分割している。この場合も、導電部材及び絶縁部(3b)については上述と同様に各縁部に形成する。
【0064】
かかる構成の電極導子1Bによれば、横断リブ50により部材中央の剛性確保、横断リブ50の前後における通電性の向上、基端側開口部2aと横断リブ50とにより形成される内縁部43による引抜き耐性の向上、等が図られる。
【0065】
この横断リブを付加する構成は、例えば電極導子につき、その全体形状(ひいては使用する粘着シート)が大きい場合、横幅が広い場合、等に好適である。但し、横断リブの数が増えると、粘着シートが患部に当接しない箇所が増えて通電面積が減り、また、肉抜開口部2の分割数が多くなり該開口部の1つ当たりの領域が相対的に減少して、露呈する粘着導電面の患部への当接状態が低下しがちになるので、全体の大きさにもよるが、通常は横断リブの付加数は少ない方が好ましい。
【0066】
上述した電極導子1では、本体先端部40の外縁を末広がり形状としたが、本体先端部の他の構成例としては、例えば図7に示す電極導子1Cのように、略「コ」字状としても良い。この場合には主面奥行方向略中央部にて左右側に突出するように形成される伸張辺部44により、引抜き時の抵抗がより大きくなるので、これを調整するために、例えば本体中間部30の外幅を相対的に広くしたり、テーパー状とする構成としても良い。
【0067】
また、上述した電極導子1では、本体中間部30の形状を直線状としたが、これを例えば波状としても良く、これにより耐引抜き性がより大きくなる。本体先端部40の形状についても同様である。
【0068】
さらには、上述した各実施の形態では、本体先端部40を最も幅広の構成、換言すると基端部10よりも外形幅が広い幅広部を部材先端側に設ける構成としたが、この幅広部を本体中間部30の領域(奥行方向における略中央位置)に設けても良い。この場合は患部貼付中央部における粘着シート100の貼付面積をより広く確保できる。
【0069】
但し、患部貼付中央部における通電性(導子部材からの距離)、及び、実際の使用に当たっては、先端部側に粘着シートの残部が出る場合(特に粘着シート100を縦方向に取付ける場合)を考慮すると、上述した引抜き耐性等の機能を奏する幅広部は、先端側に設けた方がより好ましいと考えられる。
【0070】
さらには、肉抜部につき、上述のような開口形状とせずに、部材全体形状を例えば略「U」字状、略「V」字状とする肉抜形状とすることも可能であるが、部材の剛性や引抜き耐性等を確保する観点からは開口形状とすることが好ましい。
【0071】
なお、上述した実施の形態では、低周波治療器の通電コードを着脱可能に接続するタイプの電極導子について説明したが、通電コードと一体接続された構成としても良いことは勿論である。
【0072】
以上のように、各実施の形態の電極導子1,1A〜1Cによれば、粘着シートを用いた貼付時に、絶縁面4全体をシート中央ひいては貼付患部中央に持ってくることが可能となり、貼付患部への配置(向きや位置など)の自由度が増すとともに、主面の面積を十分に確保しながら、患部貼付中央部における良好な通電状態、粘着シート全体に供給される通電電流の均一化、外力作用時における引抜き抵抗性、さらには粘着シートの左右端付着の防止、等のメリットが得られ、これら種々のメリットを構造の複雑化を招くことなく低コストで実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明を適用した電極導子の実施の形態を示す平面図である。
【図2】前記電極導子を説明する図であり、(a)が反対側の主面を示す平面図、(b)が側面図である。
【図3】電極導子の使用状態を説明する図であり、2個の電極導子及び粘着シートを両肩に取付けて通電する場合を示す図である。
【図4】電極導子の使用状態を説明する図であり、通電コードが引っ張られて外力がかかった状態を示す図である。
【図5】本発明を適用した電極導子の他の実施の形態を示す平面図である。
【図6】本発明を適用した電極導子の他の実施の形態を示す平面図である。
【図7】本発明を適用した電極導子の他の実施の形態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0074】
1 電極導子
2 肉抜開口部(肉抜部)
3 導電面
3a,3b 絶縁部(絶縁領域)
4 絶縁面
10 基端部
11 コード接続部
12 スナップ端子
13 絶縁部材
20 本体部
30 本体中間部
40 本体先端部(幅広部)
41 斜辺部
42 横断内縁部
1A,1B,1C 電極導子
2a 肉抜開口部
2b 肉抜開口部
43 内縁部
44 伸張辺部
50 横断リブ
100 粘着シート
101 通電コード
102 接続端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略薄板状をなし、主面の一方が粘着導電面を有する粘着シートに貼付けられる導電面、他方が患部側に対峙される絶縁面をなす電極導子であって、
前記導電面は、低周波治療器の通電コードに接続される基端部と、該基端部側から形成され、使用する粘着シートの前記粘着導電面を前記主面の略中央に露呈させるための肉抜部と、を備えたこと
を特徴とする低周波治療器用の電極導子。
【請求項2】
前記肉抜部は、前記主面を前記基端部から左右両側に分離する形状であること
を特徴とする請求項1記載の低周波治療器用の電極導子。
【請求項3】
前記肉抜部は、開口形状であること
を特徴とする請求項2記載の低周波治療器用の電極導子。
【請求項4】
前記肉抜部は、主面外形と略相似する形状であること
を特徴とする請求項3記載の低周波治療器用の電極導子。
【請求項5】
基端側よりも外形幅が広い幅広部を具備すること
を特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の低周波治療器用の電極導子。
【請求項6】
前記幅広部は、先端部幅が最も広い形状であること
を特徴とする請求項5記載の低周波治療器用の電極導子。
【請求項7】
前記幅広部は、先端方向に末広となる形状であること
を特徴とする請求項6記載の低周波治療器用の電極導子。
【請求項8】
前記導電面は、外内周の縁部に絶縁領域が形成されたこと
を特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の低周波治療器用の電極導子。
【請求項9】
少なくとも前記粘着シートの粘着導電面に貼付される部位が可撓性部材からなること
を特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の低周波治療器用の電極導子。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の電極導子と、
該電極導子の前記基端部を除く外縁形状よりも大きい外形の粘着導電面を有する粘着シートと、からなる低周波治療器用の電極構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−381(P2006−381A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−179755(P2004−179755)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(390018913)株式会社ホーマーイオン研究所 (10)
【Fターム(参考)】