説明

低圧鋳造装置

【課題】 高品質の鋳造品が得られる低圧鋳造装置を提供する。
【解決手段】
低圧鋳造装置は、金型20と溶湯保持炉30を備えている。金型20は、成形空間に連なる複数のゲート25,26を有する。溶湯保持炉30の坩堝32には複数のポット33,34が収容されており、ポット33,34には、ゲート25,26に接続されたストーク35,36が収容されている。ポット33,34の底部近傍には溶湯取入口51が形成されている。溶湯取入口51を開いた状態で、ポット33,34内を負圧にすることにより、坩堝32内の溶湯をポット33,34内に吸い込む。次に、溶湯取入口51を閉じた状態で、ポット33,34に加圧気体を供給することにより、ポット33,34内の溶湯をゲート25,26に供給する。複数のポット33,34に対する上記吸引動作及び/又は上記加圧気体供給動作は、個別に制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ホイール等の鋳造品を低圧鋳造する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、アルミ合金製(軽合金製)の車両用ホイールを鋳造する低圧鋳造装置が開示されている。この装置では、金型の成形空間がディスク部成形空間とリム部成形空間とを有しており、ディスク部成形空間の中央にセンターゲートが連なり、リム部成形空間には周方向に離れた複数のサイドゲートが連なっている。
【0003】
上記センターゲートと複数のサイドゲートには、それぞれストークが接続されており、これらストークは溶湯保持炉内に配置され、その下部は溶湯保持炉内の溶湯中に浸漬している。そして、鋳造時、溶湯保持炉内に加圧気体を導入して溶湯表面を所定圧力で加圧することで、溶湯保持炉内の溶湯が複数のストークおよびセンターゲート,サイドゲートを介して金型の成形空間に充填される。
【特許文献1】特開2001−287015号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記低圧鋳造装置では、溶湯保持炉内に加圧気体を導入する際における各ストーク内の溶湯表面の位置が同一であるとともに、加圧気体の導入による溶湯供給時における各ストーク内の溶湯の上昇開始時期および上昇速度が同一である。そのため、例えば、ディスク部成形空間に溶湯が充満する前に、サイドゲートから溶湯が注がれて、ディスク部成形空間内の湯面に落ちる現象が生じる。その結果、溶湯中に気泡が残ったり、湯面の酸化膜が破壊されて内部に入り込み、さらに新たな酸化膜が形成される等により、鋳造品のさらなる品質向上を図る上での阻害要因になっていた。
また、上記低圧鋳造装置では、溶湯保持炉内の溶湯面高さは、一回の鋳造完了毎に順次低下することになるが、鋳造サイクルは一定にする必要がある。そのため、溶湯保持炉内の溶湯表面に付与する加圧力を高くする制御が行なわれ、その圧力制御系が複雑になるばかりか、圧力制御装置が高価になる。
さらに、金型の成形空間への溶湯供給量は一定にすることが、安定した品質を有する鋳造品を得るために重要であるが、加圧気体による加圧面積が溶湯保持炉内の溶湯液面全体となるため、一定の溶湯量を安定して金型の成形空間に供給することが困難である。
【0005】
なお、特許文献1では、成形空間に溶湯を充填し終わった後に複数のストークにそれぞれ不活性ガスを供給することにより、湯切れを独立して制御するようになっているが、ゲート毎に溶湯供給を制御するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の低圧鋳造装置は、
(ア)成形空間と、この成形空間に連なる複数のゲートを有する金型と、
(イ)上記複数のゲートにそれぞれ接続されたストークと、
(ウ)溶湯を保持する共通の溶湯保持炉と、
(エ)1つ又は複数の上記ストークを収容して上記溶湯保持炉内に配置され、底部またはその近傍に溶湯取入口を有する複数のポットと、
(オ)上記ポットの溶湯取入口を開閉する開閉手段と、
(カ)上記溶湯取入口を開いた状態で、上記複数のポット内を負圧にすることにより、溶湯保持炉内の溶湯をポット内に流入させる吸引手段と、
(キ)上記溶湯取入口を閉じた状態で、上記複数のポット内に加圧気体を導入して溶湯湯面を加圧にすることにより、上記ポット内の溶湯をストークを介してゲートに供給する加圧気体供給手段と、
(ク)上記複数のポットに対する上記吸引手段による吸引動作及び/又は上記加圧気体供給手段による加圧動作を、上記複数のポットを少なくとも2組に分けて独立して制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、共通の溶湯保持炉内に複数のポットを配する構成を採用し、ポットに対する吸引動作及び/又は加圧動作を少なくとも2組に分けて制御することにより、一括した溶湯供給では無し得なかったきめ細かな溶湯供給が採用可能となり、鋳造品の品質向上に寄与することができる。
また、溶湯表面への加圧力は、最適値に固定設定することにより、鋳造毎の金型内への溶湯充填が一定で安定して行なうことができ、しかも、圧力制御系が簡素化できる。また、加圧気体による加圧表面が小さくなることにより、溶湯供給量の制御性が向上する。
【0008】
好ましくは、上記溶湯保持炉が上記金型の下方に配置され、上記ストークが上記金型から垂直に延び、上記複数のポットが上記ストークを1本ずつ収容している。これによれば、ストークの構造が簡単になるとともに、より一層きめ細かな溶湯制御を行なうことができる。
【0009】
好ましくは、上記制御手段は複数の吸引用の連通制御手段を含み、各吸引用の連通制御手段は、上記1または複数のポットと上記吸引手段との間の連通を制御する。これによれば、ポットにおける湯面のレベルを異ならせることができ、ひいてはゲートへの溶湯の到達時刻を異ならせることができる。
【0010】
好ましくは、上記制御手段は複数の加圧気体供給用の連通制御手段を含み、各加圧気体供給用の連通制御手段は、上記1または複数のポットと上記加圧気体供給手段との間の連通を制御する。これによれば、ゲートへの加圧気体供給開始時刻を異ならせることができ、ひいてはゲートへの溶湯の到達時刻を異ならせることができる。
【0011】
好ましくは、上記制御手段は複数の圧力制御手段を含み、各圧力制御手段は、1または複数のポットと上記加圧気体供給手段との間に介在され、ポットに供給される加圧気体の圧力を制御する。これによれば、溶湯の供給速度を異ならせることができる。
【0012】
本発明の一態様では、上記金型が車両ホイールを成形するためのものであり、金型の成形空間が車両ホイールのディスク部を成形するディスク部成形空間と、車両ホイールのリム部を成形するリム部成形空間とを含み、
上記複数のゲートが、上記ディスク部成形空間の中央に連なるセンターゲートと、上記リム部成形空間に連なるサイドゲートとを含み、
上記制御手段が、少なくともセンターゲートに連なるポットとサイドゲートに連なるポットに分けて、上記吸引動作及び/又は上記加圧気体供給動作を独立して制御する。
【0013】
上記構成によれば、センターゲートへの溶湯供給とサイドゲートへの溶湯供給を個別に制御するので、高品質の車両ホイールを鋳造することができる。
【0014】
上記態様において、好ましくは、上記制御手段は次の制御形態を採用する。
上記吸引手段による吸引動作を制御することにより、上記センターゲートに対応するポットの溶湯の湯面を、上記サイドゲートに対応するポットの湯面より高くする。
上記センターゲートに対応するポットへの上記加圧気体供給手段による加圧動作を、上記サイドゲートに対応するポットより早くする。
上記センターゲートに対応するポットへの上記加圧気体の圧力を、上記サイドゲートに対応するポットより高くする。
【0015】
上記制御形態の採用により、サイドゲートからの溶湯がセンターゲートからディスク部成形空間に充填された溶湯に大きな落差で落ちるのを回避できるので、気泡が入り込んだり多量の酸化膜を形成せずに済み、車両ホイールの品質を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように本発明によれば、きめこまかな溶湯供給制御により、鋳造品の品質向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の第1実施形態をなす、アルミ合金製(軽合金製)の車両用ホイール(鋳造品)の低圧鋳造装置について、図1〜図4を参照しながら説明する。車両用ホイールは、周知のようにディスク部とディスク部の周縁に一体に形成されたリム部とを有している。
【0018】
図1に示すように、上記低圧鋳造装置は、支持フレーム10と、支持フレーム10に設置された金型20と、金型20の下方に設置された溶湯保持炉30とを基本構成要素として備えている。
【0019】
上記支持フレーム10は、中間高さに固定台11を有し、この固定台11の上方に昇降台12を有している。
【0020】
上記金型20は、上記固定台11に固定された下型21と、上記昇降台12に固定された上型22と、周方向に複数に分割された横型23とを備えている。
【0021】
図4に示すように、上記金型20の型締め状態では、横型23の側面同士が互いに当たり、横型23の下面が下型21に当たり、横型23の上面が上型22に当たっており、内部に車両ホイールを鋳造するためのホイール成形空間40が形成される。このホイール成形空間40は、ディスク部成形空間40aとその周縁に連なるリム部成形空間40bとを有している。
【0022】
図1,図4に示すように、上記下型21には、上記ディスク部成形空間40aの中央に連なるセンターゲート25が形成されている。また、隣接する横型23の側面間には、サイドゲート26が形成されている。本実施形態では、横型23が4分割されており、サイドゲート26が4つ形成されている。なお、横型23が2分割されている場合にはサイドゲート26は2つ形成される。これらサイドゲート26は下型21に形成された湯道27にそれぞれ連なっている。
【0023】
図1に示すように、上記溶湯保持炉30は、支持フレーム10に固定された断熱容器31と、断熱容器31内に収容された坩堝32とを備えている。この断熱容器31の内周にはヒータ39が設けられている。また、断熱容器31の上端開口は蓋部31aにより塞がれている。
【0024】
上記坩堝32内には、複数の長尺のポット33,34が収容され、これらポット33、34内には、直管形状の複数のストーク35,36がそれぞれ収容されている。
【0025】
上記ポット33,34は、その上端部が断熱容器31の蓋部31aに固定されていて、その下部が坩堝32内の溶湯に浸漬するように垂直に垂れ下がっている。ポット33,34の上端部は封止部材33a,34aにより封止されている。
【0026】
1つのポット33は、断熱容器31の蓋部31aの中央に配置されており、上記センターゲート25の真下に位置している。他の4つのポット34は、上記断熱容器31の蓋部31aの中央を中心とする円周上に互いに等間隔をなして配置されており、上記サイドゲート26のほぼ真下に位置している。
【0027】
1つのストーク35は、固定台11の中央に固定され、ポット33の封止部材33aを貫通してポット33内に垂直に垂れ下がっており、その上端開口は上記センターゲート25に連なり、下端開口はポット33内の溶湯中に浸漬してポット33の底部に対峙している。
【0028】
同様に他の4つのストーク36は、固定台11に固定され、ポット34の封止部材34aを貫通してポット34内に垂直に垂れ下がっており、その上端開口は上記湯道27を介して上記サイドゲート26に連なり、下端開口はポット34内の溶湯中に浸漬してポット34の底部に対峙している。
【0029】
図3に示すように、各ポット33,34の底部近傍には溶湯取入口51を有するポート部材50が取りつけられている。この取入口51は、ロッド形状の溶湯遮断弁52(開閉手段)により開閉されるようになっている。すなわち、溶湯遮断弁52は、断熱容器31の蓋部31aを貫通しており、この蓋部31aに設置された駆動機構により上下動され、取入口51を開閉するようになっている。
【0030】
図2に示すように、低圧鋳造装置は、吸引手段61と、ドライエア供給手段62(加圧気体供給手段)と、窒素ガス供給手段63(加圧気体供給手段)と、制御手段60とを備えている。
【0031】
上記吸引手段61は、共通の吸引通路61xに吸引ポンプ61aと逆止弁61bと圧力ゲージ61cとを上流側から順に設けることにより構成されている。
【0032】
上記ドライエア供給手段62および窒素ガス供給手段63は、手動の三方弁64により共通の加圧気体供給通路65xに選択的につながるようになっている。通常の低圧鋳造では、ドライエア供給手段62が供給通路65xに接続され、鋳造品に高品質が要求される場合には三方弁64により窒素ガス供給手段63が供給通路65xに接続されるようになっている。
【0033】
上記ドライエア供給手段62は、上流側から順に圧縮ドライエア源(図示しない),手動の開閉弁62a,フィルタ62b,圧力レギュレータ62cを有している。
同様に上記窒素ガス供給手段63は、上流側から順に圧縮窒素ガス源(図示しない),手動の開閉弁63a,フィルタ63b,圧力レギュレータ63cを有している。
【0034】
上記制御手段60は、1つのセンターゲート用制御部60aと、4つのサイドゲート用制御部60bとを有している。各制御部60a,60bは、上述した共通の吸引通路61xの下流端で分岐された分岐吸引通路61yと、共通の供給通路65xの下流端で分岐された分岐供給通路65yを有している。
【0035】
各分岐吸引通路61yには開閉弁66(吸引用の連通制御手段)が設けられている。
【0036】
各分岐供給通路65yには上流側から順に圧力ゲージ65a,圧力制御弁65b(圧力制御手段),流量ゲージ65c,圧力ゲージ65d,開閉弁67(加圧気体供給用の連通制御手段)が設けられている。上記圧力制御弁65bは空電比例弁65eにより制御されるようになっている。すなわち、この空電比例弁65eは、圧力ゲージ65dの検出圧力が設定圧力になるように、圧力制御弁65bをフィードバック制御する。
【0037】
制御部60aにおける分岐吸引通路61yと分岐供給通路65yは、上記ポット33
の封止部材33aを貫通する管からなる作動通路68に接続されている。
同様に各制御部60bにおける分岐吸引通路61yと分岐供給通路65yは、上記ポット34の封止部材34aを貫通する管からなる作動通路68に接続される。
【0038】
上記構成の装置を用いた低圧鋳造方法について詳述する。まず、密閉のポット33,34内の吸引動作を行なう。すなわち、溶湯取入口51を開いた状態で、制御部60a,60bの開閉弁67を閉じる一方、開閉弁66を開き吸引ポンプ61aを作動させて、ポット33,34内部の空気を吸引し、ポット33,34内を負圧にする。これにより、坩堝32内に保持されていたアルミ合金の溶湯が溶湯取入口51からポット33,34内に流入する。
【0039】
ポット33,34内には湯面センサ(図示しない)が設けられており、各ポット33,34がそれぞれ設定レベルL1,L2に達した時に、この湯面センサが検出して、溶湯取入口51及び上記開閉弁66を閉じて吸引動作を終了する。
【0040】
図1に示すように、センターゲート25に対応するポット33の湯面設定レベルL1は、サイドゲート26に対応するポット34の湯面設定レベルL2より高く、そのため密閉ポット33の溶湯取入口51及び制御部60aの開閉弁66は、密閉ポット34の溶湯取入口51及び制御部60bの開閉弁66より遅く閉じる。
【0041】
次に、ポット33,34内の加圧動作を行なう。すなわち、溶湯取入口51及び開閉弁66を閉じた状態で、制御部60a,60bの開閉弁67を開いて圧縮ドライエアをポット33,34内に供給する。これによりポット33内の溶湯表面が加圧されて、ストーク35,センターゲート25を経てディスク部成形空間40aに溶湯が供給されるとともに、ポット34内の溶湯表面が加圧されて、ストーク36,サイドゲート26を経てリム部成形空間40bに溶湯が供給される。
【0042】
上述したように、ポット33内の湯面がポット34内の湯面より高いので、ポット34内の溶湯がサイドゲート26に達するより、ポット33内の溶湯がセンターゲート25に達するのが早く、図4に示すようにディスク部成形空間40aへの溶湯の充填が略終了した時に、サイドゲート26からリム部成形空間40bへの溶湯注入がなされる。その結果、サイドゲート26からの溶湯がディスク部成形空間40aの湯面へと大きな落差を伴って落下する不都合を回避でき、溶湯中に気泡が入り込んだり酸化膜が多量に生成される不都合を回避できるので、鋳造された車両ホイールの品質を向上させることができる。
【0043】
上記のような吸引動作時のポット33,34内における湯面高さ制御を行なう代わりに、制御部60aの開閉弁67の開き動作を、制御部60bの開閉弁67の開き動作より早くすることにより、センターゲート25への溶湯到達をサイドゲート26への溶湯到達より早くしてもよい。
【0044】
また、制御部60aの圧力制御弁65bの設定圧力を制御部60bの圧力制御弁65bの設定圧力より高くすることによって、ポット33への加圧気体の圧力をポット34への圧力より高くしてもよい。これによれば、センターゲート25への溶湯供給量を増大させることができ、サイドゲート26からの溶湯充填前に、ディスク部成形空間40aに溶湯を十分に供給することができる。
【0045】
さらに、本実施形態において、上記3つの制御態様のうちの任意の2つを同時に行なってもよいし、3つの制御態様を同時に行なってもよい。
【0046】
本実施形態では、複数のサイドゲート26毎に制御部60bを有しているので、より一層きめ細かな制御が可能である。例えばスポーク部が5つある車両ホイールを鋳造する場合、4つのサイドゲート26毎に溶湯の充填抵抗が異なるが、充填抵抗の高いサイドゲート26に対応するポット34へは、他のポット34よりも吸引動作時の湯面を高くしたり、加圧気体の供給を早くしたり、加圧気体の圧力を高くする。
【0047】
次に本発明の他の実施形態について説明する。これら実施形態において第1実施形態に対応する構成部には同番号を付してその詳細な説明を省略する。
図5に示す第2実施形態では、複数のサイドゲート26に対応するポット34への吸引動作制御および加圧気体供給制御を共通の制御部60bで行う。
また、複数のサイドゲート26に対応するポット34への吸引動作制御を第1実施形態と同様に個別に行ない、加圧気体供給制御だけを共通の制御部で行うようにしてもよい。
【0048】
図6に示す第3実施形態では、サイドゲート26に接続される複数のストーク36が1つの共通のポット34に収容されている。この実施形態では、制御手段は、図5と同様に制御部30a,30bを1つずつ有している。
【0049】
本発明は上記実施形態に制約されず、種々の形態を採用可能である。例えば、金型のリム成形部は、最終製品のリム部よりはるかに厚いリム部を成形するものであってもよい。この場合、鋳造後にリム部をスピニング加工することにより、最終製品形状またはそれに近い形状にする。
【0050】
溶湯保持炉として上記実施形態では、坩堝式溶湯保持炉を用いたが、図7に示すように、補充溶湯が供給される第1溶湯保持室60Aと複数の長尺のポット33,34を収容する第2溶湯保持室60Bとが、昇降式遮断弁61により開閉される連通口62を介して連設されるバス式2室型溶湯保持炉を用いてもよい。なお、63は横型浸漬ヒータである。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1実施形態に係わる車両用ホイールの低圧鋳造装置の縦断面図である。
【図2】同装置における複数のポットに対する吸引,圧縮気体供給を個別に制御するシステムの回路構成図である。
【図3】同ポットにおける溶湯取入口および開閉弁を示す要部拡大断面図である。
【図4】同装置の金型の要部を型締め状態で示す拡大断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態を示す制御システムの回路構成図である。
【図6】本発明の第3実施形態を示す低圧鋳造装置の概略図である。
【図7】本発明に使用可能なバス式2室型溶湯保持炉の縦断面図である。
【符号の説明】
【0052】
20 金型
25 センターゲート
26 サイドゲート
30 溶湯供給炉
32 坩堝
33,34 ポット
35,36 ストーク
40 車両ホイール成形空間
40a ディスク部成形空間
40b リム部成形空間
51 溶湯取入口
52 開閉弁(開閉手段)
60 制御手段
61 吸引手段
62 ドライエア供給手段(加圧気体供給手段)
63 窒素ガス供給手段(加圧気体供給手段)
65b 圧力制御弁(圧力制御手段)
66 開閉弁(吸引用の連通制御手段)
67 開閉弁(加圧気体供給用の連通制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(ア)成形空間と、この成形空間に連なる複数のゲートを有する金型と、
(イ)上記複数のゲートにそれぞれ接続されたストークと、
(ウ)溶湯を保持する共通の溶湯保持炉と、
(エ)1つ又は複数の上記ストークを収容して上記溶湯保持炉内に配置され、底部またはその近傍に溶湯取入口を有する複数のポットと、
(オ)上記ポットの溶湯取入口を開閉する開閉手段と、
(カ)上記溶湯取入口を開いた状態で、上記複数のポット内を負圧にすることにより、溶湯保持炉内の溶湯をポット内に流入させる吸引手段と、
(キ)上記溶湯取入口を閉じた状態で、上記複数のポット内に加圧気体を導入して溶湯湯面を加圧にすることにより、上記ポット内の溶湯をストークを介してゲートに供給する加圧気体供給手段と、
(ク)上記複数のポットに対する上記吸引手段による吸引動作及び/又は上記加圧気体供給手段による加圧動作を、上記複数のポットを少なくとも2組に分けて独立して制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする低圧鋳造装置。
【請求項2】
上記溶湯保持炉が上記金型の下方に配置され、上記ストークが上記金型から垂直に延び、上記複数のポットが上記ストークを1本ずつ収容していることを特徴とする請求項1に記載の低圧鋳造装置。
【請求項3】
上記制御手段は複数の吸引用の連通制御手段を含み、各吸引用の連通制御手段は、上記1または複数のポットと上記吸引手段との間の連通を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の低圧鋳造装置。
【請求項4】
上記制御手段は複数の加圧気体供給用の連通制御手段を含み、各加圧気体供給用の連通制御手段は、上記1または複数のポットと上記加圧気体供給手段との間の連通を制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の低圧鋳造装置。
【請求項5】
上記制御手段は複数の圧力制御手段を含み、各圧力制御手段は、1または複数のポットと上記加圧気体供給手段との間に介在され、ポットに供給される加圧気体の圧力を制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の低圧鋳造装置。
【請求項6】
上記金型が車両ホイールを成形するためのものであり、金型の成形空間が車両ホイールのディスク部を成形するディスク部成形空間と、車両ホイールのリム部を成形するリム部成形空間とを含み、
上記複数のゲートが、上記ディスク部成形空間の中央に連なるセンターゲートと、上記リム部成形空間に連なるサイドゲートとを含み、
上記制御手段が、少なくともセンターゲートに連なるポットとサイドゲートに連なるポットに分けて、上記吸引動作及び/又は上記加圧気体供給動作を独立して制御することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の低圧鋳造装置。
【請求項7】
上記制御手段が上記吸引手段による吸引動作を制御することにより、上記センターゲートに対応するポットの溶湯の湯面を、上記サイドゲートに対応するポットの湯面より高くすることを特徴とする請求項6に記載の低圧鋳造装置。
【請求項8】
上記制御手段が、上記センターゲートに対応するポットへの上記加圧気体供給手段による加圧動作を、上記サイドゲートに対応するポットより早くすることを特徴とする請求項6または7に記載の低圧鋳造装置。
【請求項9】
上記制御手段が、上記センターゲートに対応するポットへの上記加圧気体の圧力を、上記サイドゲートに対応するポットより高くすることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の低圧鋳造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−346718(P2006−346718A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−177263(P2005−177263)
【出願日】平成17年6月17日(2005.6.17)
【出願人】(000110251)トピー工業株式会社 (255)
【出願人】(391003727)株式会社トウネツ (12)