低変形量におけるナノ結晶粒チタン合金の製造方法
本発明は、低変形量におけるナノ結晶粒を有するチタン合金を製造し、より優秀な強度を有するようにすることである。初期微細組織を微細な層構造で形成されたマルテンサイトに誘導した後、変形量、変形率速度、変形温度などが微細組織の変化に及ぶ影響を観察して工程変数を最適化させ、低変形量におけるナノ結晶粒チタン合金を製造することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ結晶粒チタン合金を低変形量で製造することでナノ結晶粒チタン合金の応用を拡大すると共に、強度、疲労特性を向上させる方法である。
【背景技術】
【0002】
チタン合金の結晶粒を微細化する方法として様々な方法が提案されてきたが、最近、本出願人の先出願である大韓民国公開番号第10−2006−0087077号(2006.08.02)にECAP(equal channel angular pressing)を利用してチタン合金の結晶粒を微細化する方法が開示されている。
【0003】
この特許出願の内容は、チタン合金材料に拘束せん断加工(ECAP)行い、優秀な特性を有するナノ結晶粒チタン合金を製造する方法及びこれによって製造されたナノ結晶粒チタン合金に関するものである。この特許出願のナノ結晶粒チタン合金の製造方法は、チタン合金材料を拘束せん断加工装置の折曲されたチャンネル(CHANNEL)に投入して加工する。これを更に詳しく説明すると、チタン合金材料に等温条件の拘束せん断加工を少なくとも2回行う。ここで、2回以降の拘束せん断加工を行う際、以前の拘束せん断加工に対して前記チャンネル投入口の中心を通る中心軸を基準に回転された状態で前記チタン合金材料を投入して加工する。
【0004】
しかし、この方法は4〜8の高い変形量を付与してチタン合金の結晶粒を微細化する方法である。ナノ結晶粒チタン合金の応用拡大のためには、低変形量で結晶粒を微細化する技術が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、底変形量で結晶粒を有するチタン合金を製造し、より優秀な強度を有するようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
初期微細組織を微細な層構造で形成されたマルテンサイトに誘導した後、変形量、変形率速度、変形温度などが微細組織の変化に及ぶ影響を観察して工程変数を最適化させ、低変形量でナノ結晶粒チタン合金を製造しようとする。
【0007】
本発明は、変形温度575〜625℃、変形率速度:0.07〜0.13s−1、変形量:0.9〜1.8の条件で圧延してマルテンサイト組織を微細な等軸組織に分節することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明を利用すると低変形量で結晶粒の超微細化が可能になり、高強度ナノチタン合金の生産が容易になって、チタン合金の応用範囲も拡大され得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】Ti−13Nb−13Zr合金の初期微細組織及びマルテンサイト組織(光学顕微鏡)で、初期等軸上の微細組織である。
【図2】Ti−13Nb−13Zr合金の初期微細組織及びマルテンサイト組織(光学顕微鏡)で、800℃で30分維持した後水冷して得られたマルテンサイトの微細組織である。
【図3】マルテンサイト組織を有するTi−13Nb−13Zr合金の圧縮試験時の微細亀裂、微細気孔を示す微細組織(走査電子顕微鏡)で、工程条件は変形温度:600℃、変形率速度:1s−1、変形量:1.4である。
【図4】マルテンサイト組織を有するTi−13Nb−13Zr合金の圧縮試験時の微細亀裂、微細気孔を示す微細組織(走査電子顕微鏡)で、工程条件は変形温度:550℃、変形率速度:0.1s−1、変形量:1.4である。
【図5】マルテンサイト組織を有するTi−13Nb−13Zr合金の圧縮試験時の微細亀裂、微細気孔を示す微細組織(走査電子顕微鏡)で、工程条件は変形温度:550℃、変形率速度:0.001s−1、変形量:1.4である。
【図6】マルテンサイト組織を有するTi−13Nb−13Zr合金の圧縮試験時の工程変数が微細組織の変化に及ぶ影響を示す微細組織(走査電子顕微鏡)で、工程条件は変形温度:600℃、変形率速度:0.1s−1、変形量:1.4である。
【図7】マルテンサイト組織を有するTi−13Nb−13Zr合金の圧縮試験時の工程変数が微細組織の変化に及ぶ影響を示す微細組織(走査電子顕微鏡)で、工程条件は変形温度:700℃、変形率速度:0.1s−1、変形量:1.4である。
【図8】マルテンサイト組織を有するTi−13Nb−13Zr合金の圧縮試験時の工程変数が微細組織の変化に及ぶ影響を示す微細組織(走査電子顕微鏡)で、工程条件は変形温度:600℃、変形率速度:0.001s−1、変形量:1.4である。
【図9】マルテンサイト組織を有するTi−13Nb−13Zr合金の圧縮試験時の工程変数が微細組の織変化に及ぶ影響を示す微細組織(走査電子顕微鏡)で、工程条件は変形温度:600℃、変形率速度:0.1s−1、変形量:0.8である。
【図10】マルテンサイト組織を有するTi−13Nb−13Zr合金の圧延後の逆極点図である。
【図11】マルテンサイト組織を有するTi−13Nb−13Zr合金の圧延後の傾角境界(電子後方散乱回折装置)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
ナノ結晶粒チタン合金の最適条件を見つけるため、初期微細組織を微細な層構造で形成されたマルテンサイトに誘導した後、変形量、変形率速度、変形温度などが微細組織の変化に及ぶ影響を観察した。
【0012】
図1乃至図2は、光学顕微鏡を利用して観察した写真である。図1は、Ti−13Nb−13Zr合金の初期微細組織で、5μm程度の結晶粒の大きさを有する等軸組織である。これをベータ変態温度(〜742℃)以上である800℃で30分間維持した後、水冷して図2のような微細な層構造を有するマルテンサイト組織に誘導した。
【0013】
図3乃至図5は、マルテンサイト組織を有するTi−13Nb−13Zr合金を工程条件を変化させながら圧縮試験を行ってから観察した走査電子顕微鏡の写真である。図3の工程条件は変形温度:600℃、変形率速度:1s−1、変形量:1.4、図4の工程条件は変形温度:550℃、変形率速度:0.1s−1、変形量:1.4、図5の工程条件は変形温度:550℃、変形率速度:0.001s−1、変形量:1.4である。図3乃至図5のように変形後微細亀裂や微細気孔が発生するとマルテンサイト組織を効果的に動的球状化させることができない。結果的に、図3乃至図5の工程条件はナノ結晶粒チタンの製造のために避けるべき工程条件である。
【0014】
図6乃至図9は、マルテンサイト組織を有するTi−13Nb−13Zr合金を多様な工程条件で圧縮試験を行った後観察した走査電子顕微鏡の写真であり、暗い部分はアルファ相を、明るい部分はベータ相を示している。図6の工程条件は変形温度:600℃、変形率速度:0.1s−1、変形量:1.4、図7の工程条件は変形温度:700℃、変形率速度:0.1s−1、変形量:1.4、図8の工程条件は変形温度:600℃、変形率速度:0.001s−1、変形量:1.4、図9の工程条件は変形温度:600℃、変形率速度:0.1s−1、変形量:0.8である。
【0015】
図3乃至図5に示した工程条件とは異なって、図6乃至図9に示した工程条件では微細亀裂や微細気孔が発生されなかった。図6の場合、全体的に動的球状化が発生してマルテンサイト組織の層状構造が等軸組織に全て分節されており、アルファ相とベータ相共に約300nmの微細な結晶粒を有している。
【0016】
一方、図6と図7を比較すると結晶粒の微細化に及ぶ工程温度の影響が分かる。図7のように工程温度が700℃に増加する場合、分節されずに連結された状態で残っているベータ相を観察することができるが、これはナノ結晶粒チタン合金を製造するために避けるべき条件である。一方、図6と図8を比較すると結晶粒の微細化に及ぶ変形率速度の影響が分かる。図8のように変形率速度が0.001s−1に遅くなる場合、高温に露出される時間が増加するため動的球状化の途中結晶粒の成長が発生し、アルファ相とベータ相共に図6と比べて粗大になるため、これはナノ結晶粒チタン合金を製造するために避けるべき条件である。一方、図6と図9を比較すると結晶粒の微細化に及ぶ変形量の影響が分かる。図9のように変形量が0.8程度で低すぎる場合、写真のように一部のアルファ相とベータ相が動的球状化されずに層状そのままに残存するようになるため、これはナノ結晶粒チタン合金を製造するために避けるべき条件である。
【0017】
一方、ナノ結晶粒チタン合金の機械的特性を調べるため、マルテンサイト組織を有しているTi−13Nb−13Zr合金に対して圧延を行い、試片を採取し得る板材を製造した。この際、工程条件は図6の圧縮試験と同じく変形温度:600℃、変形速度:0.1s−1、変形量:1.4である。
【0018】
図10は、圧延後Ti−13Nb−13Zr合金を電子後方散乱回折装置で観察した逆極点図であり、アルファ相とベータ相共に200〜400nm程度の等軸組織に微細化されたことを確認することができる。図11は、図10と同じ条件で圧延されたTi−13Nb−13Zr合金を電子後方散乱回折装置で観察した傾角境界の分率であり、15°以上の高傾角境界が80%以上であることが分かる。図10、11の観察から、Ti−13Nb−13Zr合金が本発明の方法を使用すると従来と比べて低変形量でナノ結晶粒化され得るということが証明された。
【0019】
一方、本発明の方法を使用して製造されたナノ結晶粒Ti−13Nb−13Zr合金の引張特性を下記表1にアニーリング又は溶体化処理+時効処理と共に比較して図示した。
【0020】
【表1】
【0021】
本発明による方法の場合、アニーリング又は溶体化処理+時効処理と比べて優秀な降伏・引張強度を示しており、溶体化処理+時効処理と比べて伸び性の大きな減少なしに高強度化を成した。また、生体素材で要求される降伏強度/弾性係数の比である機械的適合性は12.9で、アニーリング又は溶体化処理+時効処理と比べて約60〜25%向上された機械的適合性を有している。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明を利用すると、低変形量で結晶粒の超微細化ができ、高強度ナノチタン合金の生産が容易になると共にチタン合金の応用範囲も拡大され得る。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ結晶粒チタン合金を低変形量で製造することでナノ結晶粒チタン合金の応用を拡大すると共に、強度、疲労特性を向上させる方法である。
【背景技術】
【0002】
チタン合金の結晶粒を微細化する方法として様々な方法が提案されてきたが、最近、本出願人の先出願である大韓民国公開番号第10−2006−0087077号(2006.08.02)にECAP(equal channel angular pressing)を利用してチタン合金の結晶粒を微細化する方法が開示されている。
【0003】
この特許出願の内容は、チタン合金材料に拘束せん断加工(ECAP)行い、優秀な特性を有するナノ結晶粒チタン合金を製造する方法及びこれによって製造されたナノ結晶粒チタン合金に関するものである。この特許出願のナノ結晶粒チタン合金の製造方法は、チタン合金材料を拘束せん断加工装置の折曲されたチャンネル(CHANNEL)に投入して加工する。これを更に詳しく説明すると、チタン合金材料に等温条件の拘束せん断加工を少なくとも2回行う。ここで、2回以降の拘束せん断加工を行う際、以前の拘束せん断加工に対して前記チャンネル投入口の中心を通る中心軸を基準に回転された状態で前記チタン合金材料を投入して加工する。
【0004】
しかし、この方法は4〜8の高い変形量を付与してチタン合金の結晶粒を微細化する方法である。ナノ結晶粒チタン合金の応用拡大のためには、低変形量で結晶粒を微細化する技術が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、底変形量で結晶粒を有するチタン合金を製造し、より優秀な強度を有するようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
初期微細組織を微細な層構造で形成されたマルテンサイトに誘導した後、変形量、変形率速度、変形温度などが微細組織の変化に及ぶ影響を観察して工程変数を最適化させ、低変形量でナノ結晶粒チタン合金を製造しようとする。
【0007】
本発明は、変形温度575〜625℃、変形率速度:0.07〜0.13s−1、変形量:0.9〜1.8の条件で圧延してマルテンサイト組織を微細な等軸組織に分節することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明を利用すると低変形量で結晶粒の超微細化が可能になり、高強度ナノチタン合金の生産が容易になって、チタン合金の応用範囲も拡大され得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】Ti−13Nb−13Zr合金の初期微細組織及びマルテンサイト組織(光学顕微鏡)で、初期等軸上の微細組織である。
【図2】Ti−13Nb−13Zr合金の初期微細組織及びマルテンサイト組織(光学顕微鏡)で、800℃で30分維持した後水冷して得られたマルテンサイトの微細組織である。
【図3】マルテンサイト組織を有するTi−13Nb−13Zr合金の圧縮試験時の微細亀裂、微細気孔を示す微細組織(走査電子顕微鏡)で、工程条件は変形温度:600℃、変形率速度:1s−1、変形量:1.4である。
【図4】マルテンサイト組織を有するTi−13Nb−13Zr合金の圧縮試験時の微細亀裂、微細気孔を示す微細組織(走査電子顕微鏡)で、工程条件は変形温度:550℃、変形率速度:0.1s−1、変形量:1.4である。
【図5】マルテンサイト組織を有するTi−13Nb−13Zr合金の圧縮試験時の微細亀裂、微細気孔を示す微細組織(走査電子顕微鏡)で、工程条件は変形温度:550℃、変形率速度:0.001s−1、変形量:1.4である。
【図6】マルテンサイト組織を有するTi−13Nb−13Zr合金の圧縮試験時の工程変数が微細組織の変化に及ぶ影響を示す微細組織(走査電子顕微鏡)で、工程条件は変形温度:600℃、変形率速度:0.1s−1、変形量:1.4である。
【図7】マルテンサイト組織を有するTi−13Nb−13Zr合金の圧縮試験時の工程変数が微細組織の変化に及ぶ影響を示す微細組織(走査電子顕微鏡)で、工程条件は変形温度:700℃、変形率速度:0.1s−1、変形量:1.4である。
【図8】マルテンサイト組織を有するTi−13Nb−13Zr合金の圧縮試験時の工程変数が微細組織の変化に及ぶ影響を示す微細組織(走査電子顕微鏡)で、工程条件は変形温度:600℃、変形率速度:0.001s−1、変形量:1.4である。
【図9】マルテンサイト組織を有するTi−13Nb−13Zr合金の圧縮試験時の工程変数が微細組の織変化に及ぶ影響を示す微細組織(走査電子顕微鏡)で、工程条件は変形温度:600℃、変形率速度:0.1s−1、変形量:0.8である。
【図10】マルテンサイト組織を有するTi−13Nb−13Zr合金の圧延後の逆極点図である。
【図11】マルテンサイト組織を有するTi−13Nb−13Zr合金の圧延後の傾角境界(電子後方散乱回折装置)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
ナノ結晶粒チタン合金の最適条件を見つけるため、初期微細組織を微細な層構造で形成されたマルテンサイトに誘導した後、変形量、変形率速度、変形温度などが微細組織の変化に及ぶ影響を観察した。
【0012】
図1乃至図2は、光学顕微鏡を利用して観察した写真である。図1は、Ti−13Nb−13Zr合金の初期微細組織で、5μm程度の結晶粒の大きさを有する等軸組織である。これをベータ変態温度(〜742℃)以上である800℃で30分間維持した後、水冷して図2のような微細な層構造を有するマルテンサイト組織に誘導した。
【0013】
図3乃至図5は、マルテンサイト組織を有するTi−13Nb−13Zr合金を工程条件を変化させながら圧縮試験を行ってから観察した走査電子顕微鏡の写真である。図3の工程条件は変形温度:600℃、変形率速度:1s−1、変形量:1.4、図4の工程条件は変形温度:550℃、変形率速度:0.1s−1、変形量:1.4、図5の工程条件は変形温度:550℃、変形率速度:0.001s−1、変形量:1.4である。図3乃至図5のように変形後微細亀裂や微細気孔が発生するとマルテンサイト組織を効果的に動的球状化させることができない。結果的に、図3乃至図5の工程条件はナノ結晶粒チタンの製造のために避けるべき工程条件である。
【0014】
図6乃至図9は、マルテンサイト組織を有するTi−13Nb−13Zr合金を多様な工程条件で圧縮試験を行った後観察した走査電子顕微鏡の写真であり、暗い部分はアルファ相を、明るい部分はベータ相を示している。図6の工程条件は変形温度:600℃、変形率速度:0.1s−1、変形量:1.4、図7の工程条件は変形温度:700℃、変形率速度:0.1s−1、変形量:1.4、図8の工程条件は変形温度:600℃、変形率速度:0.001s−1、変形量:1.4、図9の工程条件は変形温度:600℃、変形率速度:0.1s−1、変形量:0.8である。
【0015】
図3乃至図5に示した工程条件とは異なって、図6乃至図9に示した工程条件では微細亀裂や微細気孔が発生されなかった。図6の場合、全体的に動的球状化が発生してマルテンサイト組織の層状構造が等軸組織に全て分節されており、アルファ相とベータ相共に約300nmの微細な結晶粒を有している。
【0016】
一方、図6と図7を比較すると結晶粒の微細化に及ぶ工程温度の影響が分かる。図7のように工程温度が700℃に増加する場合、分節されずに連結された状態で残っているベータ相を観察することができるが、これはナノ結晶粒チタン合金を製造するために避けるべき条件である。一方、図6と図8を比較すると結晶粒の微細化に及ぶ変形率速度の影響が分かる。図8のように変形率速度が0.001s−1に遅くなる場合、高温に露出される時間が増加するため動的球状化の途中結晶粒の成長が発生し、アルファ相とベータ相共に図6と比べて粗大になるため、これはナノ結晶粒チタン合金を製造するために避けるべき条件である。一方、図6と図9を比較すると結晶粒の微細化に及ぶ変形量の影響が分かる。図9のように変形量が0.8程度で低すぎる場合、写真のように一部のアルファ相とベータ相が動的球状化されずに層状そのままに残存するようになるため、これはナノ結晶粒チタン合金を製造するために避けるべき条件である。
【0017】
一方、ナノ結晶粒チタン合金の機械的特性を調べるため、マルテンサイト組織を有しているTi−13Nb−13Zr合金に対して圧延を行い、試片を採取し得る板材を製造した。この際、工程条件は図6の圧縮試験と同じく変形温度:600℃、変形速度:0.1s−1、変形量:1.4である。
【0018】
図10は、圧延後Ti−13Nb−13Zr合金を電子後方散乱回折装置で観察した逆極点図であり、アルファ相とベータ相共に200〜400nm程度の等軸組織に微細化されたことを確認することができる。図11は、図10と同じ条件で圧延されたTi−13Nb−13Zr合金を電子後方散乱回折装置で観察した傾角境界の分率であり、15°以上の高傾角境界が80%以上であることが分かる。図10、11の観察から、Ti−13Nb−13Zr合金が本発明の方法を使用すると従来と比べて低変形量でナノ結晶粒化され得るということが証明された。
【0019】
一方、本発明の方法を使用して製造されたナノ結晶粒Ti−13Nb−13Zr合金の引張特性を下記表1にアニーリング又は溶体化処理+時効処理と共に比較して図示した。
【0020】
【表1】
【0021】
本発明による方法の場合、アニーリング又は溶体化処理+時効処理と比べて優秀な降伏・引張強度を示しており、溶体化処理+時効処理と比べて伸び性の大きな減少なしに高強度化を成した。また、生体素材で要求される降伏強度/弾性係数の比である機械的適合性は12.9で、アニーリング又は溶体化処理+時効処理と比べて約60〜25%向上された機械的適合性を有している。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明を利用すると、低変形量で結晶粒の超微細化ができ、高強度ナノチタン合金の生産が容易になると共にチタン合金の応用範囲も拡大され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変形温度575〜625℃、変形率速度:0.07〜0.13、変形量:0.9〜1.8の条件で圧延してマルテンサイト組織を微細な等軸組織に分節することを特徴とする低変形量におけるナノ結晶粒チタン合金の製造方法。
【請求項2】
変形温度600℃、変形率速度:0.1、変形量:1.4であることを特徴とする請求項1に記載の低変形量におけるナノ結晶粒チタン合金製造方法。
【請求項1】
変形温度575〜625℃、変形率速度:0.07〜0.13、変形量:0.9〜1.8の条件で圧延してマルテンサイト組織を微細な等軸組織に分節することを特徴とする低変形量におけるナノ結晶粒チタン合金の製造方法。
【請求項2】
変形温度600℃、変形率速度:0.1、変形量:1.4であることを特徴とする請求項1に記載の低変形量におけるナノ結晶粒チタン合金製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2013−503970(P2013−503970A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527803(P2012−527803)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【国際出願番号】PCT/KR2009/007069
【国際公開番号】WO2011/027943
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(509327541)ポステク アカデミー−インダストリー ファウンデイション (3)
【氏名又は名称原語表記】POSTECH ACADEMY−INDUSTRY FOUNDATION
【住所又は居所原語表記】Pohang University of Science and Technology,San 31,Hyoja−dong,Nam−gu,Pohang−si,Gyeongsangbuk−do 790−784,Republic of Korea
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【国際出願番号】PCT/KR2009/007069
【国際公開番号】WO2011/027943
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(509327541)ポステク アカデミー−インダストリー ファウンデイション (3)
【氏名又は名称原語表記】POSTECH ACADEMY−INDUSTRY FOUNDATION
【住所又は居所原語表記】Pohang University of Science and Technology,San 31,Hyoja−dong,Nam−gu,Pohang−si,Gyeongsangbuk−do 790−784,Republic of Korea
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