説明

低密度スラリーブリッジ混合物及び電気式起爆装置

【課題】膨張式拘束システムで使用するための低密度スラリーブリッジ混合物を提供する。
【解決手段】ジルコニウム金属、例えばアルミニウム金属のような熱伝導性エンハンサー、過塩素酸カリウム酸化剤、および結合剤材料を含み、そして理論密度の約45〜約65%の乾燥密度を有するように、低密度スラリーブリッジ混合物34を構成する。この低密度スラリーブリッジ混合物34を、隆起ブリッジワイヤー20に取り付けられる非研削ヘッダー12を含む起爆装置10において用い、また、その際、低密度スラリーブリッジ混合物34がブリッジワイヤー20を包み込み、それに付着するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、例えば膨張式拘束システム用のガス発生装置(インフレータデバイス)のような起爆装置(initiator)において使用するためのブリッジ混合物に関する。さらに詳細には、本発明は、より容易にブリッジワイヤーに付着することが可能である低密度スラリーブリッジ混合物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車が衝突事故などにおける突然の減速に出会う場合に、ガスにより膨らむか、または膨張するクッションまたはバッグ、例えば、「エアバッグ・クッション」を用いて自動車乗員を保護することは周知である。こうしたエアバッグ拘束システムは、通常、必要空間を最小化するために膨張せず折り畳んだ状態で収納される1個以上のエアバッグ・クッション、自動車の突然の減速を検知するための自動車のフレームまたは車体上に取り付けられるか、またははめ込まれる1個以上の衝突センサー、衝突センサーにより電子的に始動する活性化システム、およびエアバッグ・クッションを膨らませるためにガスを生みだすかまたは供給するガス発生装置を含む。自動車の突然の減速の場合には、衝突センサーが活性化システムを始動させ、次に、ガス発生装置の引き金を引き、およそ数ミリ秒の間にエアバッグ・クッションを膨らまし始める。
【0003】
1個以上の膨張式拘束システム・エアバッグ・クッションを膨らませるための多くのタイプのガス発生装置が、技術上開示されてきた。こうしたガス発生装置は、一般的に、点火器組立品または起爆装置、多可燃性火工品組成物、および起爆装置および1以上の火工品組成物を含有するための筐体を含む。起爆装置は、一般に、ブリッジワイヤーに接続される1個以上の導電性ピンを有して閉電気回路を形成するヘッダーを含む。ブリッジワイヤーは、溶接金属スリーブまたはチャージホルダー内に保持されるかまたは維持される電気点火式起爆剤またはブリッジ混合物と密接に接触して維持される。衝突の場合に、活性化システムは、起爆装置の導電性ピンを通して電流をブリッジワイヤーに導く。ブリッジワイヤーは起爆剤またはブリッジ混合物を点火し、次に、点火剤組成物またはガス発生剤組成物などの結合火工品組成物を点火させて膨張ガスを発生させ、それによって結合したまたは対応するエアバッグ・クッションの膨張が始まる。
【0004】
現在入手可能な自動車用起爆装置は、通常、ガラス対金属密封ヘッダーまたはブリッジ、研削表面上の溶接ブリッジワイヤー、または薄膜レジスタまたは半導体ブリッジなどの他の抵抗加熱デバイス、および金属−酸化剤火工品混合物またはブリッジ混合物を含む。こうした自動車用起爆装置に用いられる一般的なブリッジワイヤーは、例えば、約15ミクロン〜約40ミクロンのオーダーの比較的微細な直径を有する。こうした起爆装置は、また、一般的に、金属−酸化剤ブリッジ混合物を含有するため、ヘッダーに隣接して金属スリーブまたはチャージホルダーを含む。
【0005】
こうした自動車用起爆装置に用いられてきた一つの金属−酸化剤ブリッジ混合物は、一般にZPP混合物または組成物と呼ばれる、ジルコニウム金属および過塩素酸カリウムの高分子結合剤との混合物を含有する火工品組成物を含む。こうしたZPP混合物が適正に機能するために、混合物は、一般的に、顆粒粉末としてかまたはスラリーとしてかのいずれかでブリッジ上に堆積し、次に、その理論密度の高いパーセント、例えば、理論密度の約80〜95%までに固められる。一般に、ジルコニウム/過塩素酸カリウム、すなわちZPP混合物は、より低い密度のZPP混合物が厳しい工業用起爆装置感度要求事項に合致するために十分速くブリッジにより生成される熱を十分に伝導することが可能でなく、従って、結合火工品組成物を確実に点火して結合エアバッグ・クッションの膨張を開始することが可能でないので、こうしたその理論密度の高いパーセントまで固められる。
【0006】
一般的に、こうした現在入手可能な自動車用起爆装置は、溶接されたブリッジワイヤーを含むヘッダーにチャージホルダーを溶接し、ZPP混合物をブリッジワイヤー上でチャージホルダー中に装填し、次に、ZPP混合物をブリッジワイヤー上に押圧するかまたは締め固めることにより作りだされる。押圧また締め固め処理の間、ブリッジワイヤーを保護し支持するために、ヘッダーは、一般的に、ブリッジワイヤーの径の小部分内に対して平らに研削される。この平坦表面に対してブリッジワイヤーを押圧することは、また、起爆装置の感度をより低くすることを助ける導電性放熱板を提供する。一般に、自動車安全拘束システム産業内の競合状態は、特にシートベルト・プリテンショナー市場に対する現在の設計よりも低いコストでこうした起爆装置を作りだすことを望ましくする。しかし、チャージホルダーをヘッダーに提供し溶接すること、比較的脆いブリッジワイヤーに対する支持および保護を提供するためにヘッダーを適正に研削すること、およびブリッジ混合物を望ましい密度に締め固めることなどの製造または生産段階は、製造法に費用を付加する。
【0007】
上記の観点から、市販されている起爆装置よりも、製造コスト的に一層効果的である起爆装置に対する必要性および要求がある。詳細には、再現性があって確実に結合火工品組成物を点火するために有効であるような起爆装置に用いるための低密度スラリーブリッジ混合物に対する必要性または要求がある。さらに、隆起したブリッジワイヤーに一層容易に付着することが可能であり、それによって、チャージホルダーを、ブリッジワイヤー用の支持体および放熱板を提供するために研削されたヘッダーに提供し溶接するための必要性を排除する低密度スラリーブリッジ混合物に対する必要性または要求がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一般的な目的は、改善されたブリッジ混合物および製造するためにコスト的に有効な起爆装置を提供することである。
【0009】
本発明の一層特定的な目的は、上述の問題の1以上を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一般的な目的は、ジルコニウム金属、熱伝導性エンハンサー、過塩素酸カリウムおよび結合剤材料を含む低密度スラリーブリッジ混合物であって、理論密度の約45%〜約65%の乾燥密度を有する低密度スラリーブリッジ混合物により、少なくとも部分的に達成することができる。
【0011】
先行技術は、一般に、理論密度の約80%を超える乾燥密度へのブリッジ混合物の締め固めまたは圧縮を必要とせずに、再現性があって確実に結合火工品組成物を点火することができるZPPブリッジ混合物を提供することに失敗している。さらに、先行技術は、一般に、隆起したブリッジワイヤー上に装填することが可能であると共にそれに付着することが可能であり、それによって、チャージホルダーを提供しおよび/または起爆装置の一部としてブリッジワイヤー用の適切な支持体を提供するために研削されたヘッダーを提供する必要性を排除する低密度スラリーブリッジ混合物を提供することに失敗してきている。
【0012】
本発明は、さらに、隆起ブリッジワイヤー、ジルコニウム金属、熱伝導性エンハンサー、過塩素酸カリウム酸化剤およびアクリル結合剤材料を含有し、隆起ブリッジワイヤーに付着する低密度スラリーブリッジ混合物を含む起爆装置を包含する。
【0013】
本発明は、なおさらに、低密度スラリーブリッジ混合物を結合ブリッジワイヤーに付着させるために有効な接着特性を有する低密度スラリーブリッジ混合物を包含する。低密度スラリーブリッジ混合物は、約25〜約35組成物重量%のジルコニウム金属、約10〜約20組成物重量%のアルミニウム金属熱伝導性エンハンサー、約48〜約65組成物重量%の過塩素酸カリウム、および約1.5〜約5組成物重量%を含有し、また、この低密度スラリーブリッジ混合物は、理論密度の約45〜約60%の乾燥密度を有する。有利には、低密度スラリーブリッジ混合物は、約10〜約20組成物重量%の酸化銅などの金属酸化物補助酸化剤を含有することが可能である。
【0014】
本明細書において用いた場合、「スラリー」への言及は、微細な非可溶性固形材料の注入可能懸濁液、または粘性流体マトリクス中材料の混合物を指すと理解されるべきである。
【0015】
本明細書において用いた場合、「オール・ファイア(AF)」規格への言及は、−40℃〜+23℃で2ミリ秒内での95%信頼水準を伴う時間の99.9999%、材料、混合物または組成物を点火する直流レベルを指すと理解されるべきである。特定材料、混合物または組成物に対するAF格付けは、米国軍用規格(MIL−STD)331B、試験D2(Projectile Fuze Arming Distance)に開示されているブルーストン(Bruceton)法により決定することが可能である。一般的に、材料、混合物または組成物に印加される直流のレベルは、1.2アンペア以下である。
【0016】
本明細書における「ノーファイア(NF)」規格への言及は、+23℃〜+85℃で10秒間にわたり印加される場合に、95%信頼水準を伴う時間の99.999%、材料、混合物または組成物を点火しない直流レベルを指すと理解されるべきである。特定材料、混合物または組成物に対するNF格付けは、軍用規格(MIL−STD)331B、試験D2(Projectile Fuze Arming Distance)に開示されているブルーストン法により決定することが可能である。一般に、材料、混合物または組成物に印加される最大の直流が、400ミリアンペアを超えることは好ましくない。
【0017】
さらに、本明細書における「理論密度」への言及は、圧縮または締め固めにより得ることができる材料、混合物または組成物の理論最大乾燥密度を指すと理解されるべきである。
【0018】
本明細書における「共沸混合物」への言及は、一定割合で蒸発する水およびアルコールなどの液体の混合物を指すと理解されるべきである。
【0019】
その他の目的および利点は、添付の特許請求の範囲および図面に関連して記載される以下の詳細な説明から当業者に明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の低密度スラリーブリッジ混合物および隆起したブリッジワイヤーを含む単一ピン起爆装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、膨張式拘束システム用ガス発生装置の起爆装置における使用のためなどの低密度スラリーブリッジ混合物を提供する。こうした低密度スラリーブリッジ混合物は、一般的に、ジルコニウム金属、熱伝導性エンハンサー、過塩素酸カリウム酸化剤および結合剤材料を含み、理論密度の約45%〜約60%の乾燥密度を有する。
【0022】
理解されるように、本発明は、多様な各種の構造で具現化することが可能である。図1を参照すると、一般に参照番号10により示される単一ピン起爆装置が示されている。単一ピン起爆装置10は、少なくとも単一ピン起爆装置10の中心軸Aの一部に沿って、ピン16を位置付けるためにそれを通じて中心穴を有するアイレット14を形成するヘッダー12を含む。ピン16は、絶縁ガラス・スリーブなどの絶縁密封材18によりアイレット14内に固定される。望ましくは、ヘッダー12は研削されず、例えば、ヘッダーの追加の研削は本発明の実施において必要とされない。
【0023】
単一ピン起爆装置10は、また、ヘッダー12の口先部分22から広がるかまたは延び、かつピン16のヘッド部分24に接触してピン16とヘッダー12間の電気接続を形成するかまたは提供する隆起ブリッジワイヤー20を含む。望ましくは、しかし必ずしもそうでないが、隆起ブリッジワイヤー20は、抵抗溶接などの従来型の機械的接続を用いてピンのヘッド部分24の上部表面26に適して接続される。
【0024】
単一ピン起爆装置10は、さらに、レーザー溶接などの適当な機械的接続を用いてヘッダー12に接続される起爆装置密閉容器28を含む。起爆装置密閉容器28は、中に火工品点火剤材料32の供給品を保存することが可能である保存室30を形成するかまたは別途規定する。火工品点火剤材料32は、一般に出力チャージを生みだすように燃焼性であるかまたは点火性であるような点火剤材料を有する、当業者に公知であり、本明細書において提供される教示により導かれるものなどのあらゆる適する材料を含有することが可能である。例えば、火工品点火剤材料32は、スラリー化され、乾燥され、圧縮されたジルコニウム/過塩素酸カリウム(ZPP)混合物を含むことが可能である。
【0025】
本発明により、起爆装置は、さらに、それがブリッジワイヤー20に密接に接触するように保存室30内に有利に位置付けされる低密度スラリーブリッジ混合物34を含む。望ましくは、ブリッジワイヤー20は、低密度スラリーブリッジ混合物34により、すっぽり包まれるか、さもなければ囲まれる。有利には、低密度スラリーブリッジ混合物34は、ブリッジワイヤー20および/またはヘッダー12に付着し、それによって、ブリッジワイヤーを支持すると共に保護し、ならびにブリッジワイヤーとブリッジ混合物間の密接な接触を提供する。適当には、低密度ブリッジ混合物34は、また、火工品点火剤材料32に隣接し、密接に接触して、起爆装置10の点火または燃焼を容易にする。
【0026】
起爆装置および関連ブリッジ混合物の製造において、コストおよび労務を最小化することは、一般に、望ましい。しかし、上述のように、先行技術の起爆装置の製造は、一般的に、結合ブリッジワイヤーの径の部分内にヘッダーを研削し、研削したヘッダーにチャージホルダーを提供し取り付けるかまたは溶接し、ブリッジ混合物をヘッダーおよびブリッジワイヤー上に圧縮することを含む。一般に、ヘッダーは研削され、チャージホルダーは、圧縮段階の間ブリッジワイヤーに対する支持を提供するために取り付けられる。既に、ジルコニウムおよび過塩素酸カリウムを含有するブリッジ混合物(ZPP混合物)は、一般的に、未圧縮ZPP混合物の多孔性が、ブリッジワイヤーにより発生する熱を有効に伝導し、オール−ファイア(AF)およびノーファイア(NF)規格などの工業起爆装置感度要求事項に合致するように確実にZPP混合物を点火する混合物の能力を低下させるので、理論密度の約80%を超える乾燥密度に圧縮されてきている。
【0027】
先に記載したように、オール・ファイア(AF)規格または格付けは、−40℃〜+23℃で、2ミリ秒内で95%信頼水準を伴う時間の99.9999%、材料、混合物または組成物を点火する直流レベルを指す。従って、特定混合物に対するAF格付けの上昇は、上に定義されるパラメータ内の確実な点火をもたらす混合物に印加される電流量の増加%として測定することが可能である。
【0028】
先に記載したように、ノー・ファイア(NF)規格または格付けは、+23℃〜+85℃で、10秒間にわたり印加される場合に、95%信頼水準を伴う時間の99.999%、材料、混合物または組成物を点火しない直流レベルを指す。従って、特定混合物に対するNF格付けの上昇は、定義されるパラメータ内の点火をもたらさない混合物に印加される電流量の増加%として測定することが可能である。有利には、材料、混合物または組成物に印加される最大直流は、一般に、望ましくは、400ミリアンペアを超える。
【0029】
従来、オール・ファイア(AF)およびノー・ファイア(NF)規格などの工業起動装置感度要求事項に合致するジルコニウム金属および過塩素酸カリウム酸化剤を含有する低密度スラリーブリッジ混合物は、一般に、知られてこなかった。さらに、非研削ヘッダーおよび隆起ブリッジワイヤーを有しチャージホルダーなしの起爆装置における未圧縮状態において用いることが可能である低密度スラリーブリッジ混合物は、また、一般に、知られてこなかった。しかし、低密度スラリーブリッジ混合物内に熱伝導性エンハンサーを含むことが、一般的に上述のような一層多孔質なZPP混合物の密度の低下に関連する熱伝導度の損失を補償することが見出されてきた。従って、既知の、例えば理論密度の約80%を超えて圧縮される、高度に圧縮されたZPP混合物に比較可能なレベルに未圧縮ZPP混合物の熱拡散係数を増大させるために有効である熱伝導性エンハンサーの量は、ZPP混合物中に含むことが可能である。さらに、ZPP混合物中のこうした熱伝導性エンハンサーの包含物が、AF格付けの望ましくない上昇なしで、NF格付けの比例的により大きな上昇をもたらすことが、思いがけずに見出されてきた。以前の経験により、こうした熱伝導性エンハンサーの包含物が、AF格付けならびにNF格付け両方のほぼ同等の%増加をもたらすであろうことが示されていた。例えば、アルミニウム金属などの精力的な熱伝導性エンハンサーを含む低密度スラリーブリッジ混合物は、熱伝導性エンハンサーなしの未圧縮ZPP混合物に較べて、NF格付けの35%増加を、しかし、AF格付けでは1.5%のみの増加をもたらすことができる。
【0030】
加えて、こうした熱伝導性エンハンサーを含む低密度スラリーブリッジ混合物は、より感度の低い、より安価で一層丈夫な隆起ブリッジワイヤーと共に用いることが可能であり、それにより、研削ヘッダーに対する必要性を排除する。
【0031】
本発明により、低密度スラリーブリッジ混合物34は、望ましくは、ジルコニウム金属、熱伝導性エンハンサー、過塩素酸カリウム酸化剤および結合剤材料を含有する。有利には、低密度スラリーブリッジ混合物は、理論密度の約45〜約65%の乾燥密度を有する。上に識別されるように、理論密度は圧縮混合物、組成物または化合物の最大乾燥密度を指す。
【0032】
適当には、低密度スラリーブリッジ混合物は、ジルコニウム金属約25〜約35組成物重量%、および過塩素酸カリウム約45〜約65組成物重量%を含む。
【0033】
一般に、本発明の低密度スラリーブリッジ混合物は、好ましくは、少なくとも一つの熱伝導性エンハンサーを含む。適する熱伝導性エンハンサーの例には、アルミニウム、マグネシウム、タングステンおよびそれらの組合せなどの熱伝導性、高度発熱性金属、および酸化銅、金、銀およびパラジウム酸化物、ならびにそれらの組合せなどの熱伝導性金属酸化物が挙げられるがそれらに限定されない。
【0034】
一般的に、本発明の低密度スラリーブリッジ混合物は、熱伝導性エンハンサーなしでの高度圧縮ジルコニウム/過塩素酸カリウム(ZPP)混合物のそれに同等の熱伝導度レベルを提供するために有効な量での熱伝導性エンハンサーを含む。例えば、ある好ましい実施形態により、本発明の低密度スラリーブリッジ混合物は、アルミニウム金属熱伝導性エンハンサー約10〜約20組成物重量%を含む。
【0035】
低密度スラリーブリッジ混合物は、また、結合剤材料を含有する。望ましくは、結合剤材料は、低密度スラリーブリッジ混合物が結合ブリッジワイヤーおよび/またはヘッダーに対して付着するかまたは接着的に結合するように、低密度スラリーブリッジ混合物に対する十分な接着特性を付与する。種々の結合剤材料は、低密度スラリーブリッジ混合物中に含むことが可能である。望ましくは、こうした結合剤材料は、水分散性且つ丈夫であり、アルコール性共沸混合物の状態にある高粘度を有し、濡れおよび乾燥両方の状態においてブリッジワイヤーに付着し、比較的低いモジュラスを有し、溶液および乾燥両方の状態における化学安定性を示し、低密度スラリーブリッジ混合物の他の成分または材料と適合することが好ましい。適する結合剤材料には、アクリル結合剤、米国デラウエア州、ウイルミントンのデユポン・ダウ・エラストマーズ(DuPont Dow Elastomers,L.L.C.)から登録商標VITONで市販されているものなどのフルオロポリマー結合剤、セルロース系ポリマー、可溶性ナイロン、および種々のブロックコポリマーが挙げられるがそれらに限定されない。有利には、低密度スラリーブリッジ混合物は、結合剤材料約1.5〜約5.0組成物重量%を含む。
【0036】
本発明のある好ましい実施形態により、低密度スラリーブリッジ混合物は、低密度スラリーブリッジ混合物が結合ブリッジワイヤーおよび/またはヘッダーに付着するかまたは接着的に結合するように、ブリッジ混合物に十分な接着特性を付与するアクリル結合剤を含む。適するアクリル結合剤は、低密度スラリーブリッジ混合物の他の成分と適合し、約1.5組成物重量%ほどの低い濃度で丈夫な状態に乾燥または硬化し、許容可能なレオロジー、例えば、粘度を提供し、スラリーが塗布後および乾燥前に流れるのを防ぐ十分な濡れ接着力を有し、適切な温度安定性を有し、および許容可能な衝撃性能を提供することが好ましい。一つの特に適するアクリル結合剤は、RHOPLEX(登録商標)MC−1834などの亜鉛架橋アクリルまたは変性アクリルポリマー乳化液およびRobond(登録商標)PS−2000(両方とも米国ペンシルベニア州、フィラデルフィアのローム・アンド・ハース(Rohm and Haas Company)から市販されている)などのアクリル酸n−ブチル接着剤の混合物を含有する。
【0037】
ある実施形態において、低密度スラリーブリッジ混合物は、さらに、金属酸化物補助酸化剤を含むことが可能である。適当な金属酸化物補助酸化剤の例には、酸化銅、金、銀およびパラジウム酸化物、ならびにそれらの組合せが挙げられるがそれらに限定されない。ある好ましい実施形態により、低密度スラリーブリッジ混合物は、酸化銅補助酸化剤を含有することが可能である。有利には、低密度スラリーブリッジ混合物は、約10〜約20組成物重量%の金属酸化物補助酸化剤を含有することが可能である。
【0038】
本発明により、低密度スラリーブリッジ混合物は、アクリル結合剤などの結合剤材料を溶媒と混合してプレミックスを形成することによって調製することが可能である。適当には、溶媒はn−プロピルアルコールなどのアルコールである。n−プロピルアルコールの使用は、それが約50,000〜約250,000センチポアズ粘度などの適する粘度を有する低密度スラリーブリッジ混合物を提供するので、特に望ましくあると信じられる。こうした粘度は、スラリーブリッジ混合物が起爆装置中に詰め込まれる時など加圧下で流動することを可能とするが、しかし、またスラリーブリッジ混合物が一旦乾燥前にブリッジワイヤーおよび/またはヘッダーに塗布されると安定して所定の位置に残ることを可能とする、適するレオロジー特性を提供するために望ましくあると信じられる。さらに、上述のようなアクリル結合剤などの結合剤材料中に含有することが可能であるようなn−プロピルアルコールは、ほぼまたはそれに近い水との共沸混合物を形成する。適当には、n−プロピルアルコールの一定量はプレミックス中に含まれて、こうしたアルコールなしの水の存在が望ましくない腐食性をもたらすことが可能であるので、アルコールなしの水の存在を最小化するかまたは避けるためなどに、アルコール濃厚混合物をもたらす。プレミックスの固形物濃度は、一般に、低密度スラリーブリッジ混合物中の結合剤材料の望ましい量、例えば、約1.5〜約5.0組成物重量%のアクリル結合剤濃度を提供するために調整することが可能である。その後、ジルコニウム金属、熱伝導性エンハンサーおよび過塩素酸カリウム酸化剤の望ましい量がプレミックスに添加され、得られる低密度スラリーブリッジ混合物はかき混ぜられるか、または別途攪拌されて、スラリーを通して平均に固形物を分散する。
【0039】
低密度スラリーブリッジ混合物は、次に、先に詳細に記載されるように、起爆装置中に詰め込むことが可能である。適当には、低密度スラリーブリッジ混合物は乾燥されて、低密度スラリーブリッジ混合物のヘッダーおよび/またはブリッジワイヤーへの結合または付着を容易にするために、溶媒および存在するあらゆる水を除去する。
【0040】
本発明は、本発明の実施に関わる種々の態様を説明するかまたはシミュレートする以下の実施例に関連して、さらに詳細に説明される。本発明の精神に入るすべての変更は保護されることが望ましく、従って、本発明はこれらの実施例により限定されると見なされるべきでないことが理解されるべきである。
【実施例】
【0041】
本発明による低密度スラリーブリッジ混合物を、以下のように調製した。両方ともローム・アンド・ハースから市販されている、RHOPLEX(登録商標)MC−1834アクリル乳化液(固形物47%)15部、およびRobond(登録商標)PS−2000アクリル酸n−ブチル接着剤(固形物54%)5部を含むアクリル結合剤プレミックスを調製した。アクリル結合剤プレミックスを、さらに、n−プロピルアルコール40部と混合して、均一なスラリープレミックスを形成し、それを検定して全体固形物含量を測定した。その後、スラリープレミックスの量を計量し、この量に、ジルコニウム金属、アルミニウム金属熱伝導性エンハンサーおよび過塩素酸カリウムを添加して下記の第1表に示す組成を有する低密度スラリーブリッジ混合物を得た。得られる低密度スラリーブリッジ混合物を完全に混合して均一に分散した混合物を提供した。低密度スラリーブリッジ混合物の一部を乾燥し燃焼して、燃焼温度および燃焼副生物の化学組成を測定した。また、結果を下記の第1表に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
上述のように、許容不可の高温を有する膨張ガス流をもたらすことが可能である燃焼温度の望ましくない上昇を防止するために、適切に緩衝化される低密度スラリーブリッジ混合物を提供することは有利である。上記第1表に示されるように、アルミニウム金属熱伝導性エンハンサーの包含は、液相中よりもガス相中でのより高いレベルの酸化ジルコニウムを含む燃焼ガス流をもたらす。ガス相中のより高いレベルの酸化ジルコニウムは、約5000Kの望ましい燃焼温度の上昇なしで増大エネルギー出力を可能とするある程度の熱的緩衝が存在することを示す。こうした緩衝は、一般に、燃焼温度および燃焼速度における望ましくないバラつきを防止するか、または別途一般的に避けるために望ましい。
【0044】
本明細書において例示される本発明は、適当には、本明細書において特に開示されていないあらゆる要素、部品、段階、成分、または材料なしで、実施することが可能である。
【0045】
これまでの詳細な説明において、本発明は、そのある好ましい実施形態に関連して説明され、かつ多くの詳細事項が説明のために述べられてきたが、本発明は、追加の実施形態を受け入れ可能であり、本明細書において記載されるある詳細事項が本発明の基本的な原理から逸脱することなく適宜変形することができることは、当業者に明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジルコニウム金属、
熱伝導性エンハンサー、
過塩素酸カリウム酸化剤、および
結合剤材料、
を含む低密度スラリーブリッジ混合物であって、理論密度の約45%〜約65%の乾燥密度を有することを特徴とする低密度スラリーブリッジ混合物。
【請求項2】
前記熱伝導性エンハンサーが、アルミニウム、マグネシウム、タングステン、およびそれらの組合せからなる群から選択される金属を含む、請求項1に記載の低密度スラリーブリッジ混合物。
【請求項3】
前記熱伝導性エンハンサーが、酸化銅、金、銀およびパラジウム酸化物、ならびにそれらの組合せからなる群から選択される金属酸化物を含む、請求項1に記載の低密度スラリーブリッジ混合物。
【請求項4】
前記熱伝導性エンハンサーがアルミニウム金属を含む、請求項1に記載の低密度スラリーブリッジ混合物。
【請求項5】
該低密度スラリーブリッジ混合物を結合ブリッジワイヤーに付着させるために有効な接着特性を有する、請求項1に記載の低密度スラリーブリッジ混合物。
【請求項6】
前記結合剤材料がアクリル結合剤を含む、請求項1に記載の低密度スラリーブリッジ混合物。
【請求項7】
約25〜約35組成物重量%のジルコニウム金属、
約10〜約20組成物重量%のアルミニウム金属熱伝導性エンハンサー、
約48〜約65組成物重量%の過塩素酸カリウム酸化剤、および
約1.5〜約5組成物重量%のアクリル結合剤、
を含む、請求項1に記載の低密度スラリーブリッジ混合物。
【請求項8】
金属酸化物補助酸化剤をさらに含む、請求項1に記載の低密度スラリーブリッジ混合物。
【請求項9】
前記金属酸化物補助酸化剤が、酸化銅、金、銀、白金、およびパラジウム酸化物、ならびにそれらの組合せからなる群から選択される、請求項8に記載の低密度スラリーブリッジ混合物。
【請求項10】
前記金属酸化物補助酸化剤が酸化銅を含む、請求項8に記載の低密度スラリーブリッジ混合物。
【請求項11】
約10〜約20組成物重量%の前記金属酸化物補助酸化剤を含む、請求項8に記載の低密度スラリーブリッジ混合物。
【請求項12】
隆起ブリッジワイヤー、および
請求項1に記載の低密度スラリーブリッジ混合物、
を含む電気式起爆装置であって、前記低密度スラリーブリッジ混合物が前記隆起ブリッジワイヤーに付着していることを特徴とする電気式起爆装置。
【請求項13】
前記隆起ブリッジワイヤーは、前記低密度スラリーブリッジ混合物中に封入され、かつそれに接着剤で結合されている、請求項12に記載の電気式起爆装置。
【請求項14】
前記熱伝導性エンハンサーがアルミニウム金属を含む、請求項12に記載の電気式起爆装置。
【請求項15】
前記低密度スラリーブリッジ混合物が、
約25〜約35組成物重量%のジルコニウム金属、
約10〜約20組成物重量%のアルミニウム金属熱伝導性エンハンサー、
約48〜約65組成物重量%の過塩素酸カリウム酸化剤、および
約1.5〜約5組成物重量%のアクリル結合剤、
を含む、請求項12に記載の電気式起爆装置。
【請求項16】
前記低密度スラリーブリッジ混合物が金属酸化物補助酸化剤をさらに含む、請求項12に記載の電気式起爆装置。
【請求項17】
前記金属酸化物補助酸化剤が、酸化銅、金、銀、白金、およびパラジウム酸化物、ならびにそれらの組合せからなる群から選択される、請求項16に記載の電気式起爆装置。
【請求項18】
前記金属酸化物補助酸化剤が酸化銅を含む、請求項17に記載の電気式起爆装置。
【請求項19】
前記低密度スラリーブリッジ混合物が約10〜約20組成物重量%の金属酸化物補助酸化剤を含む、請求項16に記載の電気式起爆装置。
【請求項20】
非研削ヘッダーをさらに含む、請求項12に記載の電気式起爆装置。
【請求項21】
前記低密度スラリーブリッジ混合物が、低密度スラリーブリッジ混合物を非研削ヘッダーに付着させるために有効な接着特性を有する、請求項20に記載の電気式起爆装置。
【請求項22】
低密度スラリーブリッジ混合物を結合ブリッジワイヤーに付着させるのに有効な接着特性を有する低密度スラリーブリッジ混合物であって、該低密度スラリーブリッジ混合物が、
約25〜約35組成物重量%のジルコニウム金属、
約10〜約20組成物重量%のアルミニウム金属熱伝導性エンハンサー、
約48〜約65組成物重量%の過塩素酸カリウム酸化剤、
約10〜約20組成物重量%の金属酸化物補助酸化剤、および
約1.5〜約5組成物重量%のアクリル結合剤、
を含む、かつ理論密度の約45%〜約60%の乾燥密度を有することを特徴とする低密度スラリーブリッジ混合物。
【請求項23】
前記金属酸化物補助酸化剤が酸化銅を含む、請求項22に記載の低密度スラリーブリッジ混合物。

【図1】
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【公開番号】特開2011−93796(P2011−93796A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−245939(P2010−245939)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【分割の表示】特願2006−525334(P2006−525334)の分割
【原出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【出願人】(597065363)オートリブ エーエスピー,インコーポレイティド (87)