説明

低屈折率重合体およびコーティング用組成物

【課題】 屈折率が低く、密着性が良好であり、透明性や塗装性にも優れた光硬化型低屈折率重合体及び反射防止に適するコーティング用組成物の提供。
【解決手段】化学式(1)のフルオロアクリル(メタ)アクリレート単量体(a)、化学式(2)のイミド基及びエチレン性不飽和基を有する単量体(b)及びその他の単量体(c)からなり、各単位の割合が、(a)20〜99質量部、(b)1〜30質量部及び(c)0〜50質量部である共重合体であって、ナトリウムD線で測定した25℃での屈折率が1.45以下である低屈折率重合体。
CH2 =C(X)COO―R―Rf (1)


〔式(1)中、XはCH3 基、H原子、F原子又はCl原子、Rは直鎖状又は分岐状のアルキレン基、RfはF原子を1個以上含むアルキル基;
式(2)中、R1 、R2 は、H原子又は炭素数4以下のアルキル基、又はR1 、R2 は、一つとなって5又は6員環を形成する炭化水素基〕

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、光硬化性に優れた低屈折率重合体および該重合体を使用したコーティング用組成物に関するものである。
【0002】
【従来技術およびその問題点】光学材料、表示素子、ディスプレイなどの光を透過する器材に対して、該器材自体による反射光を低減させる目的で、低屈折率の薄膜をコーティングすることが検討されている。表面に低屈折率の層が形成されると、臨界入射角が大きくなり、反射率が低下して、乱反射によるチラツキを防ぐとともに反射像(いわゆる鏡像)が見え難くなり、また透過率が上昇して像がはっきり見えるという利点が得られる。かかる反射防止膜の形成のために、MgF2 などを蒸着する方法や、パーフルオロブテンをプラズマ重合する方法が検討されている。近年、取り扱いの容易さからパーフルオロ環状ポリマーをコーティング(特開平5−196984、特開平7−224242)したり、光硬化型含フッ素オリゴアクリレートをコーティングし、更にUV硬化する方法が提案されている(特公平8−11777)。しかしながら、パーフルオロ環状ポリマーは、高価であり特殊なフッ素系溶剤にしか溶解しない上、被塗面との密着性に劣っている。一方光硬化型含フッ素オリゴアクリレートは光重合開始剤が残留し被塗面を汚染したり、濁りの原因となるという問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、屈折率が低く、密着性が良好であり、透明性や塗装性にも優れた光硬化型低屈折率重合体および反射防止に適するコーティング用組成物を提供することを目的とする。
【0004】
【問題を解決するための手段】本発明者らは、特定構造のフルオロアルキル(メタ)アクリレートと特定のイミド基を有するモノマーよりなる重合体が、光重合開始剤を全く併用しないかまたはごく少量の併用により容易に架橋し、屈折率、密着性、透明性、乾燥性、表面硬度に優れた特徴が発現することを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、下記化学式(1)で表されるフルオロアルキル(メタ)アクリレート単量体(a)に基づく単位、下記化学式(2)で表されるイミド基およびエチレン性不飽和基を有する単量体(b)に基づく単位および所望によりその他の単量体(c)に基づく単位からなり、それらの合計量を基準にして各単位の割合が、単量体(a)に基づく単位20〜99質量部、単量体(b)に基づく単位1〜30質量部および単量体(c)に基づく単位0〜50質量部である重合体であって、ナトリウムD線で測定した25℃での屈折率が1.45以下である低屈折率重合体であり、さらには上記低屈折率重合体と、単官能および/または多官能(メタ)アクリル系化合物と、溶剤とを必須成分とするコーティング用組成物である。
【0005】
【化4】CH2 =C(X)COO―R―Rf (1)
(式中、XはCH3 基、H原子、F原子またはCl原子であり、Rは直鎖状または分岐状のアルキレン基、RfはF原子を1個以上含むアルキル基である。)
【0006】
【化5】


(化学式(2)中、R1 、R2 は、それぞれ独立した水素原子又は炭素数4以下のアルキル基であるか、またはR1 、R2 は、一つとなって5又は6員環を形成する炭化水素基である。)
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明について更に詳しく説明する。本発明において使用するフルオロアルキル(メタ)アクリレート単量体(a)の具体例としては、以下の化合物が挙げられる。なお、本発明においてアクリレートおよびメタクリレートを(メタ)アクリレートと総称する。
(1)フッ素含有部位(−R−Rf)が直鎖状である単量体モノフルオロエチル(メタ)アクリレート、ジフルオロエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(αフルオロ)アクリレート、トリフルオロエチル(αクロロ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(αフルオロ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(αクロロ)アクリレート、ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロプロピル(αフルオロ)アクリレート、ペンタフルオロプロピル(αクロロ)アクリレート、ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロブチル(αフルオロ)アクリレート、ヘキサフルオロブチル(αクロロ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(αフルオロ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(αクロロ)アクリレート、ヘプタフルオロブチル(メタ)アクリレート、ヘプタフルオロブチル(αフルオロ)アクリレート、ヘプタフルオロブチル(αクロロ)アクリレート、ノナフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ノナフルオロペンチル(αフルオロ)アクリレート、ノナフルオロペンチル(αクロロ)アクリレート、ペンタデカフルオロオクチル(メタ)アクリレート、ペンタデカフルオロオクチル(αフルオロ)アクリレート、ペンタデカフルオロオクチル(αクロロ)アクリレート、ヘプタデカフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロオクチルエチル(αフルオロ)アクリレート、ヘプタデカフルオロオクチルエチル(αクロロ)アクリレートなど。
【0008】(2)フッ素含有部位(−R−Rf)が分岐状である単量体ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロイソプロピル(αフルオロ)アクリレート、ヘキサフルオロイソプロピル(αクロロ)アクリレート、ヘプタフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、ヘプタフルオロイソプロピル(αフルオロ)アクリレート、ヘプタフルオロイソプロピル(αクロロ)アクリレート、ノナフルオロターシャリブチル(メタ)アクリレート、ノナフルオロターシャリブチル(αフルオロ)アクリレート、ノナフルオロターシャリブチル(αクロロ)アクリレート、ヘキサフルオロネオペンチル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロネオペンチル(αフルオロ)アクリレート、ヘキサフルオロネオペンチル(αクロロ)アクリレート、メチルテトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、メチルテトラフルオロプロピル(αフルオロ)アクリレート、メチルテトラフルオロプロピル(αクロロ)アクリレート、ジメチルテトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルテトラフルオロプロピル(αフルオロ)アクリレート、ジメチルテトラフルオロプロピル(αクロロ)アクリレート、ジメチルオクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ジメチルオクタフルオロペンチル(αフルオロ)アクリレート、ジメチルオクタフルオロペンチル(αクロロ)アクリレート、ヘプタデカフルオロセカンダリーオクチルエチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロセカンダリーオクチルエチル(αフルオロ)アクリレート、ヘプタデカフルオロセカンダリーオクチルエチル(αクロロ)アクリレートなど。
【0009】本発明においては、単量体(a)として、上記(1)または(2)には記載されていないフッ素含有部位に硫黄原子、酸素原子または窒素原子を含む(メタ)アクリレート単量体も使用でき、具体的には、−R−Rfが−CH2 CF(CF3 )(OCF2 CF( CF3 ))nOC3 7 (式中nは0〜4の整数である)または−CH2 CH2 N(C3 7 )SO2 8 17などが挙げられる。このうち(メタ)アクリレートまたは(αフルオロ)アクリレートが低屈折率になる点から好ましく、加水分解のし難さや重合の安定性の点から(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0010】イミド基およびエチレン性不飽和基を有する単量体(b)に属する化合物のうち、下記化学式(3)で表される化合物が他の必須単量体との共重合性に優れる点で、好ましい。さらに好ましい単量体(b)は、下記化学式(4)で表されるテトラヒドロフタルイミド(メタ)アクリレートである。
【0011】
【化6】


【0012】
【化7】


【0013】その他の単量体(c)としては、前記単量体(a)および(b)と共重合性を有する単量体であれば特に限定されず、具体的には、直鎖状、分岐状、環状のアルキル基を有する(メタ)アクリレートおよびその他の各種(メタ)アクリレート等が挙げられる。さらに、直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリルレートしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートベンジル、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール400(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート、クロロエチル(メタ)アクリレート、などが例示される。
【0014】分岐状アルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、セカンダリーブチル(メタ)アクリレート、ターシャリブチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、などが例示される。
【0015】環状アルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデシニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、モルホリノエチル(メタ)アクリレートなどが例示される。
【0016】さらに、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸、クロトン酸といったカルボン酸含有モノマー、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、グリシジルビニルエーテルといったエポキシ基含有モノマー、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピルエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルアリルエーテル、クロトン酸ヒドロキシエチルといった水酸基含有モノマー、ビニルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、ジエトキシメチルシリルプロピル(メタ)アクリレートといったアルコキシシリル基含有モノマー、などが例示される。また、エチレン、プロピレン、イソブチレンのようなαオレフィン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデンのような部分ハロゲン化オレフィン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンのようなパーフルオロオレフィン、酢酸アリル、酪酸アリル等のアリル化合物、クロトン酸エチル、クロトン酸プロピル等のクロトン酸エステル類、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニルといったカルボン酸ビニル類、スチレン、αメチルスチレン、ビニルトルエンといったスチレン類、アクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド等を使用しても良い。上記単量体はいずれも、単独または数種類混合して使用することができる。
【0017】本発明の重合体における各単量体単位の割合は、前記のとおり全単量体単位の合計量を基準にして、前記単量体(a)に基づく単位20〜99質量部、単量体(b)に基づく単位1〜30質量部および単量体(c)に基づく単位0〜50質量部である。さらに、本発明の重合体は、各単量体単位の割合が上記範囲にあるとともに、ナトリウムD線で測定した25℃の屈折率が1.45以下であることが必要である。上記屈折率の重合体を得るためには、単独重合体の屈折率が低い単量体を相対的に多めに使用することが好ましい。本発明において単独重合体の屈折率が低い単量体は、フッ素原子を多く有する単量体であり、例えば前記単量体(a)に属するヘプタデカフルオルオクチルエチルメタクリレート(CH2=C(CH3)COOCH2CH2817 )の単独重合体の屈折率は1.373であり、これに対してフッ素原子を含まないメチルメタクリレートの単独重合体の屈折率は1.495である。共重合体の屈折率は、使用する単量体の単独重合体の屈折率とその単量体単位の共重合体における重量分率からある程度予測することができるので、それを利用することが好ましい。本発明の重合体の分子量は、ポリスチレン換算のGPCで求めた数平均分子量が1,000〜1000,000であることが好ましく、さらに好ましくは、塗膜の強度とコーティングのし易さから3,000〜50,000である。
【0018】本発明の低屈折率重合体は、ラジカル発生型重合開始剤の存在下、前記単量体(a)〜(c)を共重合させることにより製造できる。重合方法としては、塊状重合、水性媒体中での懸濁重合および乳化重合、有機溶剤中での溶液重合などの方法が採用可能である。ラジカル発生型重合開始剤としては、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ターシャリブチルパーオキシピバレート、ベンゾイルパーオキサイドおよびラウロイルパーオキサイド等の過酸化物、またはアゾビスイソブチロニトリルおよびアゾビスイソバレロニトリル等のアゾ化合物、過硫酸アンモニウムおよび過硫酸カリウム等の無機過酸化物が使用でき、その使用量は単量体100質量部に対し0.0001〜10質量部が好ましい。乳化重合における乳化剤としては、アニオン型、ノニオン型およびその併用が好ましく、高級アルコール硫酸エステルナトリウム塩およびポリエチレングリコールアルキルエーテル等が例示でき、またラテムル(株式会社花王製)、エレミノール(三洋化成株式会社製)、アクアロン(第一工業製薬株式会社製)およびアデカリアソープ(旭電化工業株式会社)等の反応性乳化剤も使用できる。乳化剤の使用量は単量体100質量部に対して0.1〜50質量部の範囲であることが好ましい。溶液重合における有機溶媒としては、テトラヒドロフランおよびジオキサン等の環状エーテル類;n−ヘキサンおよびシクロヘキサン等の炭化水素類;ベンゼン、トルエンおよびキシレン等の芳香族炭化水素化合物;酢酸エチルおよび酢酸ブチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトンおよびシクロヘキサノン等のケトン類;エタノール、イソプロパノール、n−ブタノールおよびn−ブチルセロソルブ等のアルコール類等が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。有機溶剤の使用量は単量体100質量部に対して20〜200質量部の範囲であることが好ましい。必要によりラウリルメルカプタンなどの連鎖移動剤を加えても良い。
【0019】重合条件としては、特に限定されないが、好ましい反応における好適な重合温度は20〜140℃あり通常は常圧でおこなわれる。好適な重合時間は3〜40時間である。重合に使用する単量体は、その全量を初期にバッチ仕込みしてもよいし、重合の進行と共に一部の単量体を逐次添加してもよい。また必要によりPH調整剤として、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、ハイドロタルサイトおよび陰イオン交換樹脂等を加えてもよい。上記重合で得られた本発明の低屈折率重合体は、単離・精製して用いても良いし、溶液重合の場合はそのまま用いても良い。
【0020】上記方法で得られる低屈折率重合体またはその有機溶剤溶液を光学器材のコーティング剤の原料として使用することができる。すなわち、本発明の低屈折率重合体を反射防止に使用するコーティング用組成物とする場合、重合体を有機溶剤に溶解するとともに、さらに単官能および/または多官能(メタ)アクリル系化合物を加えることが必要である。該(メタ)アクリル系化合物の配合によれば、塗膜の強度および耐擦り傷性を向上させることができる。単官能(メタ)アクリル系化合物としては、本発明の低屈折率重合体に対して優れた相溶性を有する化合物が好ましく、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、及びステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートや、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、及びヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートや、 ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールモノアルキル(炭素数が1〜18)エーテルのモノ(メタ)アクリレートや、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート及びポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートや、フェノールのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物のモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノールのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物のモノ(メタ)アクリレート及びp−クミルフェノールのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物のモノ(メタ)アクリレート等のフェノールアルキレンオキサイド付加物のモノ(メタ)アクリレートや、ベンジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルフォリン、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0021】多官能(メタ)アクリル系化合物としては、ポリオールポリ(メタ)アクリレート、ポリエステルポリ(メタ)アクリレート、多価エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸の反応物およびポリウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられ、その具体例は硬化型組成物に関する種々の公知文献に記載されているが(例えば特公平7−30270号公報)、幾つかの例を挙げれば以下のとおりである。
(1)ポリオールポリ(メタ)アクリレート多価アルコールと(メタ)アクリル酸との反応物であり、具体的な化合物としては、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、及びヒドロキシピバリン酸とネオペンチルグリコールのエステル化ジオールのジ(メタ)アクリレート等のジオールのジ(メタ)アクリレートや、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ又はテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのトリ又はテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのペンタまたはヘキサ(メタ)アクリレート等のポリオールのポリ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールのジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールのジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールのジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールのジ(メタ)アクリレート、トリテトラメチレングリコールのジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールのジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。またさらに、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ノナンジオール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリン等のエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート化物も使用できる。
【0022】(2)ポリエステルポリ(メタ)アクリレートポリエステル型の多価アルコールと(メタ)アクリル酸との反応物を挙げることができる。ポリエステル型の多価アルコールの多塩基酸成分としては、例えば、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸及びトリメリット酸等の多塩基酸、並びにその無水物等が使用できる。アルコール成分としては、エチレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパンのエチレンオキサイド、またはプロピレンオキサイド付加物のトリオール、グリセリンのエチレンオキサイド、またはプロピレンオキサイド付加物のトリオール、及びペンタエリスリトールのエチレンオキサイド、またはプロピレンオキサイド付加物のテトラオール等を反応させた多価アルコールが挙げられる。
【0023】(3)エポキシ(メタ)アクリレート多価エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との付加反応物等が使用できる。多価エポキシ化合物としては、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル、ブタンジオールのジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールのジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのジグリシジルエーテル又はトリグリシジルエーテル、グリセリンのジグリシジルエーテル又はトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールのトリグリシジルエーテル又はテトラグリシジルエーテル、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、フェノールノボラックのポリグリシジルエーテル、クレゾールノボラックのポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0024】(4)ウレタン(メタ)アクリレート多価アルコールと多価イソシアネート化合物と、水酸基含有(メタ)アクリレートとの反応物等が使用できる。多価アルコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオールや、エチレングリコールアジペート、ブタンジオールアジペート、ブタンジオールフタレート、ヘキサンジオールフタレート等のポリエステルジオールが使用できる。多価イソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート等が使用できる。水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、及びヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが使用できる。
【0025】本発明の低屈折率重合体と単官能および/または多官能(メタ)アクリル系化合物の割合は、塗膜の強度、耐擦り傷性と低屈折率を両立させるため、低屈折率重合体100質量部当たり単官能および/または多官能(メタ)アクリル系化合物0.1〜100質量部が好ましく、1〜50質量部がより好ましい。本発明のコーティング用組成物に用いる溶剤としては、沸点が60℃以上のものが好ましく、具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素化合物;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ミネラルスピリット、ナフサNo5やナフサNo6(エクソン化学株式会社製)、LAWSやHAWS(シェル化学株式会社製)等のターペン類が例示される。沸点が60℃未満の有機溶剤を使用すると、乾燥が早すぎ成膜性に劣る場合がある。本発明の低屈折率重合体と有機溶剤の比率は、25:75〜75:25(質量比)が好ましい。
【0026】コーティング用組成物には、塗膜表面を滑らかにして乱反射を防ぐためレベリング剤を配合することができる。レベリング剤としては、一般の界面活性剤が使用でき、例えばフッ素化アルキルエステルであるフロラードFC−430〔住友スリーエム(株)製〕、メガファックF−177〔大日本インキ化学工業(株)製〕及びメガファックF−179〔大日本インキ化学工業(株)製〕等、並びにシリコーン系化合物としてNUCシリコーンL7002〔日本ユニカー(株)製〕及びFZ−2165〔日本ユニカー(株)製〕等が挙げられる。上記化合物の中で、メガファックF−179及びNUCシリコーンL7002等の起泡性が少ないものは、表面平滑性に優れた塗膜が得られ易い点で好ましい。レベリング剤の配合割合としては、低屈折率重合体と単官能および/または多官能(メタ)アクリル系化合物との合計量(以下、硬化性成分)100質量部に対して、0.01〜5質量部が好ましい。0.01質量部未満では表面平滑性を付与することが困難となる恐れがあり、5質量部を超えると塗膜よりブリードして表面を汚染する。
【0027】本発明のコーティング用組成物は、紫外線、可視光線又は電子線等の活性エネルギー線の照射により、短時間で硬化させることができる。更に、一般的に使用されている下記の光重合開始剤、増感剤を少量使用して硬化速度を早めることができる。好ましい光重合開始剤としてと以下のものが挙げられる。アセトフェノン系としては、2−メチル−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノ−1−プロパノン(チバガイギー製イルガキュアー907)、ベンジルジメチルケタール(チバガイギー製イルガキュアー651)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバガイギー社製イルガキュア184)、ジエトキシアセトフェノン(ファーストケミカル製ファーストキュアーDEAP)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(チバガイギー製ダロキュアー1173)、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン(チバガイギー製イルガキュアー2959)及び2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン(チバガイギー製イルガキュアー369)等が挙げられる。ベンゾインエーテル系としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル及びベンゾインイソブチルエーテル等が挙げられる。ベンゾフェノン系としては、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド及び2,4,6−トリメチルベンゾフェノン等が挙げられる。チオキサントン系としては、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン及び1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン等が挙げられる。アシルフォスフィンオキサイド系としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド及びビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。その他にもカンファーキノン等が挙げられる。上記光重合開始剤と併用する増感剤としては、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4,4−ジメチルアミノベンゾフェノン及び4,4−ジエチルアミノベンゾフェノン等が例示される。
【0028】前述したように光重合開始剤は使用しなくても良いが、使用する場合は、硬化性成分の合計量100質量部に対して、0.01〜15質量部とするのが好ましく、より好ましくは、0.1〜5質量部である。0.01質量部未満では光硬化の開始を促進する効果が不十分になり、15質量部を越えると硬化塗膜の目標とする特性が低下する恐れがある。前記成分以外に、本発明のコーティング用組成物には連鎖移動剤、密着増強剤、発泡防止剤などを含んでも良い。コーティング用組成物は、ディップ、フローコート、ロールコート、ドクターブレード、スピンコート、ダイコート、刷毛塗り等で塗装でき、塗装面の反射光を抑制することができる。
【0029】以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
【実施例1】攪拌機、温度計、滴下ロート、窒素導入管のついた1Lフラスコに、溶剤としてメチルイソブチルケトン(以下MIBK)を500gと、モノマーとしてヘプタデカフルオロオクチルエチルメタクリレート(以下、17FM)を46g、ヘキサフルオロブチルメタクリレート(以下、6FM)を132g、化学式(5)で表される単量体(以下THPIMA)を22gを仕込み、十分窒素置換をおこなった後、75℃まで昇温した。フラスコの内温が75℃に到達した時点で、アゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBN)の2gをMIBK50gに溶解した開始剤溶液を滴下し、重合を開始した。75℃で5時間保持した後、温度を85℃に昇温し2時間重合をおこない、更に90℃で2時間重合させた。
【0030】
【化8】


【0031】得られた重合体溶液を大過剰の石油エーテル中に注ぎ込み、沈澱物として196g(重合率98.2%)の重合体を得た。得られた重合体のフッ素含有量は44.1%であり、1 H−NMRおよび13C−NMR分析をおこなったところ、17FM/6FM/THPIMA=23/66/11(重量%)であった。該重合体のナトリウムD線による25℃の屈折率nd は1.412であり、GPCによる数平均分子量は24900であった。該重合体を固形分30%になるようにエタノールに溶解すると、無色透明な溶液が得られた。
【0032】
【実施例2〜4および比較例1】実施例1で使用したモノマーを表1に記載のものに変更し、表1記載の重合体を得た。
【0033】
【表1】


表中、*、**、***、****および*****の付された略号はそれぞれ以下の化合物を表す。
*トリフルオロエチルメタクリレート**テトラフルオロプロピルメタクリレート***ブチルメタクリレート****化学式(6)で表される化合物*****γ−トリメトキシシリルプロピルメタクリレート
【0034】
【化9】


【0035】得られた重合体の単量体組成(質量%)は以下のとおりである。
実施例2:6FM/THPIMA=37/18/27/8/10実施例3:17FM/3FM/THPIA=45/48/7実施例4:17FM/4FM/BMA/THPIMA=50/40/2.5/12.5比較例1:6FM/MTRIEMS=98/2
【0036】
【試験例1〜4および比較試験例1〜2】実施例1〜4および比較例1で得られた重合体溶液(重合体の含有濃度は30質量%)に、単官能または多官能(メタ)アクリル系化合物および重合開始剤を混合してコーティング用組成物を得た。次いで、それをPMMA板にバーコーター#10で塗装し、60℃にて5分間乾燥後、UVランプ(フュージョン製120W/cmHバルブ、ランプ高10cm)の付いたコンベア式UV照射装置に、コンベア速度5m/分で5回通し、硬化させた。得られた硬化塗膜に対し下記の試験をおこない表3に示した。
☆密着性:碁盤目セロテープ(登録商標)剥離試験☆透明性:450nmの光の透過率(%)
☆耐溶剤性:エタノールラビング20回後の表面状態☆硬度:鉛筆硬度試験☆耐摩耗性:ティッシュペーパーで10往復こすった後の表面状態
【0037】
【表2】


【0038】
【表3】


【0039】
【発明の効果】本発明の低屈折率重合体は光硬化性を有しており、該重合体を用いたコーティング組成物は、密着性に優れ、そして透明性、硬度や耐擦り傷性に優れる反射防止塗膜を形成する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 下記化学式(1)で表されるフルオロアルキル(メタ)アクリレート単量体(a)に基づく単位、下記化学式(2)で表されるイミド基およびエチレン性不飽和基を有する単量体(b)に基づく単位および所望によりその他の単量体(c)に基づく単位からなり、それらの合計量を基準にして各単位の割合が、単量体(a)に基づく単位20〜99質量部、単量体(b)に基づく単位1〜30質量部および単量体(c)に基づく単位0〜50質量部である重合体であって、ナトリウムD線で測定した25℃での屈折率が1.45以下である低屈折率重合体。
【化1】
CH2 =C(X)COO―R―Rf (1)
(式中、XはCH3 基、H原子、F原子またはCl原子であり、Rは直鎖状または分岐状のアルキレン基、RfはF原子を1個以上含むアルキル基である。)
【化2】


(化学式(2)中、R1 、R2 は、それぞれ独立した水素原子又は炭素数4以下のアルキル基であるか、またはR1 、R2 は、一つとなって5又は6員環を形成する炭化水素基である。)
【請求項2】 単量体(b)が下記化学式(3)で表される化合物である請求項1記載の低屈折率重合体。
【化3】


(化学式(3)中、R1 、R2 は、それぞれ独立した水素原子又は炭素数4以下のアルキル基であるか、またはR1 、R2 は、一つとなって5又は6員環を形成する炭化水素基であり、R3 は分岐してもよいアルキレン基であり、R4 は水素原子またはメチル基であり、nは1〜6の整数である。)
【請求項3】 上記請求項1または2記載の低屈折率重合体と単官能および/または多官能(メタ)アクリル系化合物と溶剤とを必須成分とするコーティング用組成物。

【公開番号】特開2003−12735(P2003−12735A)
【公開日】平成15年1月15日(2003.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−201701(P2001−201701)
【出願日】平成13年7月3日(2001.7.3)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【Fターム(参考)】