低温用照明装置
【課題】 電池で駆動される照明装置であって、低温環境下においても安定した点灯ができる低温用照明装置を提供する。
【解決手段】 発光素子である発光ダイオード10や電子部品61などの動作時に発する熱を、熱伝導部材である伝熱板30を介して電池20に伝えることにより、電池の温度を周辺温度に比べ高温に保つように構成した。
【解決手段】 発光素子である発光ダイオード10や電子部品61などの動作時に発する熱を、熱伝導部材である伝熱板30を介して電池20に伝えることにより、電池の温度を周辺温度に比べ高温に保つように構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、低温環境下において電池で駆動される低温用照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の照明装置としては、例えば、低温庫に設置され充電可能な電源、すなわち電池を備えた平面型蛍光ランプがある。(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−74364号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような照明装置においては、低温環境下では一般的に特殊な電池を使わない限り電池の出力電圧が低下するため、照度が低下したり、点灯時間が短くなるなど、安定した点灯ができないという問題があった。
【0005】
この発明は、上記のような問題を解決するためになされたもので、低温環境下においても安定した点灯ができる低温用照明装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る低温用照明装置は、発光素子と、発光素子を駆動する電池と、発光素子と電池とを熱的に接続する熱伝導部材とを備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明は、低温環境下においても特殊な電池を用いることなく、安定した点灯ができる低温用照明装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1は、この発明を実施するための実施の形態1における低温用照明装置である誘導灯の分解斜視図、図2は、本実施の形態における低温用照明装置である誘導灯の断面模式図を示すものである。本実施の形態における誘導灯の発光素子は砲弾型、白色の発光ダイオード10であり、図1に示すように、複数の発光ダイオード10と、これらの発光ダイオード10を駆動するための電源として使用される電池20とが、熱伝導部材である断面形状がL字型のアルミニウム製の伝熱板30に取付けられている。具体的には、発光ダイオード10の光の出射方向と反対側の平面形状部が、L字型の伝熱板30の水平部分の下面に接し、汎用のNiCd二次電池である電池20がL字型の伝熱板30の鉛直部分の外側側面に接している。
【0009】
また、L字型の伝熱板30の水平部分の上面には、電池20の出力を発光ダイオード10の点灯に適した定電流に変換する機能を有する電子部品61が搭載された回路基板60が設けられている。そして、回路基板60と電池20とは、配線62により電気的に接続されている。このように、発光ダイオード10と電池20と回路基板60とが伝熱板30上に搭載された状態で、図2に示すように下部ランプカバー50の開口部に設けられた保持部品40の上に載置されており、発光ダイオード10と電池20と回路基板60とが伝熱板30を介して熱的に接続されている。一面に表示面52を有する下部ランプカバー50と、この開口部を閉塞する上部ランプカバー51とによって形成された空間には、伝熱板30、発光ダイオード10、電池20及び回路基板60とが収納されている。
【0010】
発光ダイオード10の光の出射方向と反対側の平面形状部には、図2に示すように発光ダイオード10に電流を流すために2本のリードフレーム15が設けられている。伝熱板30の発光ダイオード10に接する面のリードフレーム15がある箇所には、この2本のリードフレーム15を互いに短絡させないために、貫通穴31が設けられている。発光ダイオード10と回路基板60とは、貫通穴31を通る2本のリードフレーム15により電気的に接続され、回路基板60に搭載された電子部品61から定電流の供給を受ける。電子部品61は配線62を介して電気的に接続された電池20および図示しない商用電源のいずれか一方から電力供給を受ける。電池20は図示しない充電器によって充電される。
【0011】
下部ランプカバー50の内部には、反表示板側に設けられたブラストパターン53と反射板58とを有した導光板57が設けられており、発光ダイオード10から出射された光は導光板57のブラストパターン53と反射板58とにより表示面52の方向に反射し、表示面52に達するように構成されている。
【0012】
次に、動作について説明する。
発光ダイオード10の点灯時には熱を発するため、発光ダイオード10の発する熱が伝熱板30を介して電池20に伝わることになり、電池20の温度を周辺温度より高くすることができる。その結果、電池20の温度が異常に低下することなく電池20を最適な状態で使用することができ、発光ダイオード10を安定して点灯できる。
そこで、発光ダイオード10の発熱による電池20の温度の上昇度合いを調べるため、本実施の形態における誘導灯を−30℃の状態つまり低温環境下で使用した場合を想定して、電池20および発光ダイオード10の温度を熱シミュレーションにより求めた。
【0013】
本実施の形態における誘導灯の熱回路網を図3に示す。図3において、発光素子である発光ダイオード10、電池20および外気の温度はそれぞれT2、T3、T9で表される。また、発光素子の発熱量はQ2、発光素子と電池20の間の熱抵抗はR23、発光素子と外気との間の熱抵抗はR29、電池20と外気との間の熱抵抗はR39でそれぞれ表される。なお、今回のシミュレーションでは、図1および図2の下部ランプカバー50と上部ランプカバー51の熱的遮蔽効果はないものとした。
【0014】
いま、Q2を3W、R23を10K/W、R29を25K/W、R39を40K/W、T9を−30℃として熱シミュレーションを行なった。熱シミュレーションは、図3の熱回路網を電気回路を模して計算することにより行なった。具体的には、電気工学のオームの法則の、抵抗を熱抵抗、電位差を温度差、伝熱量を電流にそれぞれ対応させて計算した。計算の結果、発光素子である発光ダイオード10の温度T2は+10℃、電池20の温度T3は+20℃となった。
【0015】
また、比較として、実施の形態1における伝熱板30がなく、発光ダイオード10と電池20との間の熱的な接続がない場合の電池20の温度を、図3の熱回路網図を用いて熱シミュレーションした。図3の発光素子と電池20の間の熱抵抗R23を1000K/Wとし、他のパラメータは実施の形態1と同じにして、実施の形態1と同様の計算をしたところ、電池20の温度T2は−27.2℃と外気の温度とほとんどかわらなかった。
【0016】
このように、本実施の形態によれば、電池20と発光ダイオード10とを熱的に接続する伝熱板30の効果により、周辺温度が−30℃と低温であっても、電池20の温度を+20℃と周辺温度に比べ高く保つことができる。NiCd電池の使用下限温度は0℃とされているが、本実施の形態においては、NiCd電池の温度を使用下限温度以上にすることができる。
【0017】
ここで、誘導灯の一般的な使われ方について説明しておく。この誘導灯は、低温庫内などのおおよそ−30℃の低温環境下に設置される。低温庫には商用電源が供給されており、通常は商用電源から供給される電力により駆動され発光ダイオードなどの低温用照明装置の発光素子が点灯する。一般的には、誘導灯は常時点灯させて使用される。
停電時など商用電源が停止した場合、誘導灯は、商用電源による駆動から、内蔵された電池による駆動に切り替わる。電池は、停電になる前から商用電源から電力供給を受けて充電器により充電されている。
【0018】
上記のように、本実施の形態における誘導灯は、常時点灯させて使用される場合に、停電前に電池20の温度を+20℃と周辺温度に比べ高く保つことができるため、停電発生直後にも電池20の温度を高くすることができ、停電発生直後から発光ダイオード10を安定して点灯させることができる。また、停電発生直後から発光ダイオード10を安定して点灯させることができるため、その発光ダイオード10の発熱が電池20に伝わることにより、低温化による電池20の電圧低下が起きず、停電発生後長時間にわたり発光ダイオード10を安定して点灯できる。このため、低温対応の特殊な電池を使用する必要がなく、廉価な誘導灯とすることができる。
また、本実施の形態のように常時点灯して使用される誘導灯ではなく、常時消灯させて使用される非常灯であっても、発光ダイオード10が点灯し発光ダイオード10が発熱する状態になれば、常時点灯して使用した場合と同様の効果を得ることができる。
【0019】
なお、前述の熱シミュレーションにおいては、下部ランプカバー50と上部ランプカバー51の熱的遮蔽効果はないものとして計算したが、実際の下部ランプカバー50と上部ランプカバー51には、下部ランプカバー50と上部ランプカバー51の内部に熱が閉じ込められることにより下部ランプカバー50と上部ランプカバー51の内部の温度が外気より高くなる効果がある。したがって、先に示した熱シミュレーション結果より電池20および発光ダイオード10の温度をより高くすることができる。
【0020】
また、本実施の形態において、電池20としてはNiCd二次電池を用いたが、電池20の種類としてはこれに限るものではなく、二次電池であればNiH電池、リチウムイオン電池、一次電池であれば、マンガン電池、アルカリ電池、ボタン電池などであればよい。また、特別に低温に対応した特殊な電池であっても、電池の温度が−30℃程度と低いと電池の寿命が短くなるという問題が発生せず、点灯時間が長くなるなどの利点がある。
【0021】
また、図4に示すように、電池20の代わりに電池収納部21が取り付けられている誘導灯であっても、電池収納部21と伝熱板30が熱的に接続されていれば、電池20が取り付けられた場合は同様の効果を奏する。
【0022】
さらに、熱伝導部材の一例としてL字型であるアルミニウム製の伝熱板30の例を示したが、熱伝導部材としてはこれに限るものではない。熱伝導部材の材料としては、アルミニウムに限らず銅、銀など熱伝導性の高い材料であればよい。また、金属に限らずグラファイトシートやシートパイプであってもよい。その形状も、熱を伝えられるものであれば特に限定するものではない。図5に示すように伝熱板30の一部が電池20を巻きつける形状であれば、電池20の温度をより効率的に上昇させることができるため、より有効に効果を奏する。
【0023】
なお、発光ダイオード10から出射された光を表示面52の方向に反射するために導光板57の反表示面側に設けるパターンとしては、ブラストパターン53の例を示したが、プリズムでもよく、光を均一に表示面52の方向に反射させるものであればよい。
【0024】
実施の形態2.
図6は、この発明を実施するための実施の形態2における低温用照明装置である誘導灯の分解斜視図である。本実施の形態における誘導灯の発光素子は砲弾型、白色の発光ダイオード10であり、図6に示すように、これらの複数の発光ダイオード10と、発光ダイオード10を駆動するための電源として使用される電池20と、この電池20を充電するための電子部品である充電器63とが、熱伝導部材である断面形状がL字型の伝熱板30に取り付けられている。具体的には、発光ダイオード10は、その光の出射方向と反対側の平面形状部が、L字型の伝熱板30の水平部分の下面に接し、電池20はL字型の伝熱板30の鉛直部分の外側側面に接し、充電器63はL字型の伝熱板30の水平部分の上面に接している。
【0025】
また、L字型の伝熱板30の水平部分の上面には、電池20の出力を発光ダイオード10の点灯に適した定電流に変換する機能を有する電子部品61が搭載された回路基板60が設けられている。そして、回路基板60と電池20と、また、回路基板60と充電器63とは、配線62により電気的に接続されている。また、充電器63は、図示しない配線により商用電源と接続されておる、商用電源と接続されているときに発熱する。ランプカバー下部50の保持部品40の上に設置され、一面に表示面52を有する下部ランプカバー50と、この開口部を閉塞する上部ランプカバー51とによって形成された空間には、発光ダイオード10と電池20と伝熱板30と回路基板60と充電器63とが収納されている。
その他の構成については実施の形態1と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0026】
次に、動作について説明する。
発光ダイオード10は点灯時に、また、充電器63は商用電源と接続されているときに、熱を発するため、発光ダイオード10および充電器63の発する熱が伝熱板30を介して電池20に伝わることになり、電池20の温度を周辺温度より高くすることができる。その結果、電池20の温度が異常に低下することなく電池20を最適な状態で使用することができ、発光ダイオード10を安定して点灯できる。
そこで、発光ダイオード10と充電器63との発熱による電池20の温度の上昇度合いを調べるため、本実施の形態における誘導灯を−30℃の状態つまり低温環境下で使用した場合を想定して、充電器63、電池20および発光ダイオード10の温度を熱シミュレーションにより求めた。
【0027】
本実施の形態における誘導灯の熱回路網図を図7に示す。図7において、電子部品である充電器63、発光素子である発光ダイオード10、電池20、および外気の温度はそれぞれT1、T2、T3、T9で表される。また、電子部品の発熱量はQ1、発光素子の発熱量はQ2、電子部品と発光素子との間の熱抵抗はR12、電子部品と電池20との間の熱抵抗はR13、電子部品と外気との間の熱抵抗はR19、発光素子と外気との間の熱抵抗はR29、電池20と外気との間の熱抵抗はR39でそれぞれ表される。ここでも、下部ランプカバー50と上部ランプカバー51の熱的遮蔽効果はないものとした。
【0028】
いま、Q1を3W、Q2を3W、R12を10K/W、R13を10K/W、R19を50K/W、R29を40K/W、R39を40K/W、T9を−30℃として熱シミュレーション計算を行なった。計算の結果、電子部品である充電器63の温度T1は+60℃、発光素子である発光ダイオード10の温度T2は+66℃、電池20の温度T3は+42℃となった。
【0029】
このように、本実施の形態によれば、電池20と発光ダイオード10と充電器63とを熱的に接続する伝熱板30の効果により、周辺温度が−30℃と低温であっても、電池20の温度を+42℃と周辺温度に比べて高く保つことができる。したがって、停電発生時にすみやかに発光ダイオード10を安定して点灯できる。また、低温対応の特殊な電池を使用する必要がなく、廉価な誘導灯とすることができる。
【0030】
実施の形態3.
図8は、この発明を実施するための実施の形態3における低温用照明装置である誘導灯の分解斜視図である。本実施の形態における誘導灯の発光素子は蛍光灯の一種の冷陰極管11であり、図8に示すように、この冷陰極管11と、冷陰極管11を駆動するための電源として使用される電池20と、冷陰極管11を点灯させるための電子部品である整流素子64とが、熱伝導部材である断面形状がL字型である伝熱板30に取り付けられている。具体的には、冷陰極管11はL字型の伝熱板30の水平部分の下面に接し、電池20はL字型の伝熱板30の鉛直部分の外側側面に接し、整流素子64はL字型の伝熱板30の水平部分の上面に接している。
また、回路基板60がL字の伝熱板30の水平部分の上面に設けられており、回路基板60と電池20とは、配線62により電気的に接続されている。
その他の構成については実施の形態1と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0031】
次に、動作について説明する。
冷陰極管11と整流素子64とは冷陰極管11の点灯時に熱を発するため、冷陰極管11および整流素子64の発する熱が伝熱板30を介して電池20に伝わることになり、電池20の温度を周辺温度より高くすることができる。その結果、電池20の温度が異常に低下することなく電池20を最適な状態で使用することができ、冷陰極管11を安定して点灯できる。
そこで、冷陰極管11および整流素子64との発熱による電池20の温度の上昇度合いを調べるため、本実施の形態における誘導灯を−30℃の状態つまり低温環境下で使用した場合を想定して、整流素子64、電池20および冷陰極管11の温度を熱シミュレーションにより求めた。
【0032】
本実施の形態における誘導灯の熱回路網図を図9に示す。図9において、電子部品である整流素子64、発光素子である冷陰極管11、電池20、および外気の温度はそれぞれT1、T2、T3、T9で表される。また、電子部品の発熱量はQ1、発光素子の発熱量はQ2、電子部品と発光素子との間の熱抵抗はR12、電子部品と電池20との間の熱抵抗はR13、電子部品と外気との間の熱抵抗はR19、発光素子と外気との間の熱抵抗はR29、電池20と外気との間の熱抵抗はR39でそれぞれ表される。
【0033】
いま、Q1を3W、Q2を3W、R12を10K/W、R13を10K/W、R19を50K/W、R29を40K/W、R39を40K/W、T9を−30℃として熱シミュレーション計算を行なった。計算の結果、電子部品である整流素子64の温度T1は+60℃、発光素子である冷陰極管11の温度T2は+66℃、電池20の温度T3は+42℃となった。
【0034】
このように、本実施の形態によれば、電池20と冷陰極管11と整流素子64とを熱的に接続する伝熱板30の効果により、周辺温度が−30℃と低温であっても、電池20の温度を+42℃と周辺温度に比べて高く保つことができる。したがって、停電発生時にすみやかに冷陰極管11を安定して点灯できる。また、低温対応の特殊な電池を使用する必要がなく、廉価な誘導灯とすることができる。
さらに、冷陰極管11を+66℃と周辺温度より高くできるため、水銀の蒸気圧を高めることができ、よりすみやかに冷陰極管11を点灯させることができる。
【0035】
実施の形態4.
図10は、この発明を実施するための実施の形態4における低温用照明装置である誘導灯の断面模式図である。図10に示すように、本実施の形態における誘導灯の発光素子は蛍光灯の一種の平面型蛍光ランプ12であり、平面型蛍光ランプ12と、平面型蛍光ランプ12を駆動するための電源として使用される電池20と、平面型蛍光ランプ12を点灯させるための電子部品である整流素子64とが、熱伝導部材である断面形状がほぼ逆L字型である伝熱板30に取り付けられている。具体的には、平面型蛍光ランプ12は伝熱板30の逆L字の鉛直部分の内側側面に接し、整流素子64は伝熱板30の逆L字水平部分の上面に接し、電池20は伝熱板30の逆L字の鉛直部分の外側側面に接している。ランプカバー下部50の保持部品40の上に設置され、一面に表示面52を有する下部ランプカバー50と、この開口部を閉塞する上部ランプカバー51とによって形成された空間には、平面型蛍光ランプ12と電池20と伝熱板30と回路基板60と整流素子64とが収納されており、下部ランプカバー50の内側側面の電池20と対向する位置には電池20を加熱するためのヒーター70が設けられている。
その他の構成については実施の形態1と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0036】
次に、動作について説明する。
平面型蛍光ランプ12と整流素子64とは平面型蛍光ランプ12の点灯時に熱を発するため、また、ヒーター70はその動作時に熱を発するため、平面型蛍光ランプ12および整流素子64の発する熱が伝熱板30を介して電池20に伝わり、ヒーター70の発する熱が電池に伝わることになり、電池20の温度を周辺温度より高くすることができる。その結果、電池20の温度が異常に低下することなく電池20を最適な状態で使用することができ、平面型蛍光ランプ12を安定して点灯できる。
そこで、平面型蛍光ランプ12、整流素子64およびヒーター70の発熱による電池20の温度の上昇度合いを調べるため、本実施の形態における誘導灯を−30℃の状態つまり低温環境下で使用した場合を想定して、整流素子64、電池20および平面型蛍光ランプ12の温度を熱シミュレーションにより求めた。
【0037】
本実施の形態における誘導灯の熱回路網図を図11に示す。図11において、電子部品である整流素子64、発光素子である平面型蛍光ランプ12、電池20、および外気の温度はそれぞれT1、T2、T3、T9で表される。また、電子部品の発熱量はQ1、発光素子の発熱量はQ2、ヒーター70の発熱量をQ8、電子部品と発光素子との間の熱抵抗はR12、電子部品と電池20との間の熱抵抗はR13、電子部品と外気との間の熱抵抗はR19、発光素子と外気との間の熱抵抗はR29、電池20と外気との間の熱抵抗はR39でそれぞれ表される。
【0038】
いま、Q1を1W、Q2を1W、Q8を1W、R12を10K/W、R13を10K/W、R19を50K/W、R29を40K/W、R39を40K/W、T9を−30℃として熱シミュレーション計算を行なうと、電子部品である整流素子64の温度T1は+13.3℃、発光素子である平面型蛍光ランプ12の温度T2は+12.7℃、電池20の温度T3は+12.7℃となった。
【0039】
このように、本実施の形態によれば、電池20と平面型蛍光ランプ12と整流素子64とを熱的に接続する伝熱板30およびヒーター70の効果により、周辺温度が−30℃と低温であっても、電池20の温度を+12.7℃と周辺温度に比べて高く保つことができる。したがって、停電発生時にすみやかに、平面型蛍光ランプ12を安定して点灯できる。また、低温対応の特殊な電池を使用する必要がなく、廉価な誘導灯とすることができる。
さらに、平面型蛍光ランプ12を+12.7℃と周辺温度より高くできるため、水銀の蒸気圧を高めることができ、よりすみやかに、平面型蛍光ランプ12を点灯させることができる。
【0040】
実施の形態5.
図12は、この発明を実施するための実施の形態4における低温用照明装置である誘導灯の断面模式図である。図12に示すように、本実施の形態における誘導灯の発光素子は蛍光灯の一種の平面型蛍光ランプ12であり、平面型蛍光ランプ12と、平面型蛍光ランプ12を駆動するための電源として使用される電池20と、平面型蛍光ランプ12を点灯させるための電子部品である整流素子64とが、熱伝導部材である断面形状がほぼ逆L字型である伝熱板30に取り付けられている。具体的には、平面型蛍光ランプ12は伝熱板30の逆L字の鉛直部分の内側側面に接し、整流素子64は伝熱板30の逆L字水平部分の上面に接し、電池20は伝熱板30の逆L字の鉛直部分の外側側面に接している。電池20と整流素子64とは、断熱部材71により覆われている。
また、ランプカバー下部50の保持部品40の上に設置され、一面に表示面52を有する下部ランプカバー50と、この開口部を閉塞する上部ランプカバー51とによって形成された空間には、平面型蛍光ランプ12と電池20と伝熱板30と回路基板60と整流素子64と断熱部材71とが収納されている。
その他の構成については実施の形態4と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0041】
次に、動作について説明する。
平面型蛍光ランプ12と整流素子64とは平面型蛍光ランプ12の点灯時に熱を発するため、平面型蛍光ランプ12および整流素子64の発する熱が伝熱板30を介して電池20に伝わり、ヒーター70の発する熱が電池に伝わることになり、電池20の温度を周辺温度より高くすることができる。その結果、電池20の温度が異常に低下することなく電池20を最適な状態で使用することができ、平面型蛍光ランプ12を安定して点灯できる。また、断熱部材71は電池20と外気および整流素子64と外気の間の熱伝導を妨げる効果を有する。
平面型蛍光ランプ12、整流素子64およびヒーター70の発熱による電池20の温度の上昇度合いを調べるため、本実施の形態における誘導灯を−30℃の状態つまり低温環境下で使用した場合を想定して、整流素子64、電池20および平面型蛍光ランプ12の温度を熱シミュレーションにより求めた。
【0042】
本実施の形態における誘導灯の熱回路網図は実施の形態3の図9と同じであるが、電子部品と外気との間の熱抵抗R19の値、電池20と外気との間の熱抵抗はR39の値が断熱部材71の効果により大きくなる。
【0043】
いま、Q1を1W、Q2を1W、R12を10K/W、R13を10K/W、R19を500K/W、R29を40K/W、R39を500K/W、T9を−30℃として熱シミュレーション計算を行なうと、電子部品である整流素子64の温度T1は+45.1℃、発光素子である平面型蛍光ランプ12の温度T2は+38.1℃、電池20の温度T3は+43.7℃となった。
【0044】
このように、本実施の形態によれば、電池20と平面型蛍光ランプ12と整流素子64とを熱的に接続する伝熱板30および断熱部材71の効果により、周辺温度が−30℃と低温であっても、電池20の温度を+43.7℃と周辺温度に比べて高く保つことができる。したがって、停電発生時にすみやかに、平面型蛍光ランプ12を安定して点灯できる。また、低温対応の特殊な電池を使用する必要がなく、廉価な誘導灯とすることができる。
さらに、平面型蛍光ランプ12を+38.1℃と周辺温度より高くできるため、水銀の蒸気圧を高めることができ、よりすみやかに、平面型蛍光ランプ12を点灯させることができる。
【0045】
実施の形態6.
図13は、この発明を実施するための実施の形態6における低温用照明装置である誘導灯の断面模式図である。図13に示すように、本実施の形態における誘導灯は、電池20および整流素子64が断熱部材71により覆われていること以外は実施の形態4における図10と同じ構成である。
【0046】
次に、動作について説明する。
平面型蛍光ランプ12と整流素子64とは平面型蛍光ランプ12の点灯時に熱を発するため、また、ヒーター70はその動作時に熱を発するため、平面型蛍光ランプ12および整流素子64の発する熱が伝熱板30を介して電池20に伝わり、ヒーター70の発する熱が電池に伝わることになり、電池20の温度を周辺温度より高くすることができる。その結果、電池20の温度が異常に低下することなく電池20を最適な状態で使用することができ、平面型蛍光ランプ12を安定して点灯できる。また、断熱部材71は電池20と外気および整流素子64と外気の間の熱伝導を妨げる効果を有する。
そこで、平面型蛍光ランプ12、整流素子64およびヒーター70の発熱による電池20の温度の上昇度合いを調べるため、本実施の形態における誘導灯を−30℃の状態つまり低温環境下で使用した場合を想定して、整流素子64、電池20および平面型蛍光ランプ12の温度を熱シミュレーションにより求めた。
【0047】
本実施の形態における誘導灯の熱回路網図は実施の形態4の図11と同じであるが、電池20と外気との間の熱抵抗はR39の値が断熱部材71の効果により大きくなる。
いま、Q1を1W、Q2を1W、Q8を1W、R12を10K/W、R13を10K/W、R19を500K/W、R29を40K/W、R39を500K/W、T9を−30℃として熱シミュレーション計算を行なうと、電子部品である整流素子64の温度T1は+86.0℃、発光素子である平面型蛍光ランプ12の温度T2は+70.8℃、電池20の温度T3は+93.6℃となった。
【0048】
このように、本実施の形態によれば、電池20と平面型蛍光ランプ12と整流素子64とを熱的に接続する伝熱板30および断熱部材71とヒーター70の効果により、周辺温度が−30℃と低温であっても、電池20の温度を+46.2℃と周辺温度に比べて高く保つことができる。したがって、停電発生時にすみやかに、平面型蛍光ランプ12を安定して点灯できる。また、低温対応の特殊な電池を使用する必要がなく、廉価な誘導灯とすることができる。
さらに、平面型蛍光ランプ12を+70.8℃と周辺温度より高くできるため、水銀の蒸気圧を高めることができ、よりすみやかに、平面型蛍光ランプ12を点灯させることができる。
【0049】
実施の形態7.
図14は、この発明を実施するための実施の形態6における低温用照明装置である非常灯の断面模式図である。図14に示すように、本実施の形態における誘導灯の発光素子は熱電球13であり、白熱電球13と、白熱電球13を駆動するための電源として使用される電池20と、白熱電球13を点灯させるための電子部品である整流素子64とが、熱伝導部材である断面形状がH型であるアルミニウム製の伝熱板30に取り付けられている。具体的には、白熱電球13は断面形状がH型の伝熱板30のH型の下方空間部のソケット部に接し、電池20は断面形状がH型の伝熱板30のH型の上方空間部に接し、整流素子64は断面形状がH型の伝熱板30のH外側側面に接している。また、伝熱板30は、反射板81を備えた筐体80に取り付けられている。
本実施の形態における低温用照明装置である非常灯は商用電源と接続されており、常時消灯して使用され、非常時に点灯する。整流素子64は白熱電球13が点灯時に発熱する。その他の構成については実施の形態1と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0050】
次に、動作について説明する。
整流素子64は白熱電球13の点灯時に熱を発するため、整流素子64の発する熱が伝熱板30を介して電池20に伝わり、電池20の温度を周辺温度より高くすることができる。その結果、電池20の温度が異常に低下することなく電池20を最適な状態で使用することができ、白熱電球13を安定して点灯できる。
整流素子64の発熱による電池20の温度の上昇度合いを調べるため、本実施の形態における非常灯を−30℃の状態つまり低温環境下で使用した場合を想定して、整流素子64、電池20および白熱電球13の温度を熱シミュレーションにより求めた。
【0051】
本実施の形態における非常灯の熱回路網図を図15に示す。図15において、電子部品である整流素子64、発光素子である白熱電球13、電池20、および外気の温度はそれぞれT1、T2、T3、T9で表される。また、電子部品の発熱量はQ1、電子部品と発光素子との間の熱抵抗はR12、電子部品と電池20との間の熱抵抗はR13、電子部品と外気との間の熱抵抗はR19、発光素子と外気との間の熱抵抗はR29、電池20と外気との間の熱抵抗はR39でそれぞれ表される。
【0052】
いま、Q1を3W、R12を10K/W、R13を10K/W、R19を50K/W、R29を40K/W、R39を40K/W、T9を−30℃として熱シミュレーション計算を行なうと、電子部品の温度T1は+20℃、発光素子である白熱電球13の温度T2は+10℃、電池20の温度T3は+10℃となった。
【0053】
このように、本実施の形態によれば、電池20と整流素子64とを熱的に接続する伝熱板30の効果により、周辺温度が−30℃と低温であっても、電池20の温度を+10℃と周辺温度に比べて高く保つことができる。したがって、電池20の温度を汎用電池の使用温度下限(例えばNiCd電池の場合は0℃)以上にすることができ、廉価な低温用照明装置とすることができる。
【0054】
なお、本実施の形態における非常灯の発光素子は、白熱電球13に限るものではなく、例えば、図16の非常灯の断面模式図に示すように発光ダイオード10を発光素子としたものであってもよい。図16において、アレイ状に配された発光ダイオード10と電池20が伝熱板30に熱的に接続されており、ランプカバー55の発光ダイオード10側の内側に拡散シート54が設けられていれば、低温環境下であっても安定に点灯する下方を照明する平面型の非常灯を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】この発明の実施の形態1を示す低温用照明装置の分解斜視図である。
【図2】この発明の実施の形態1を示す低温用照明装置の断面模式図である。
【図3】この発明の実施の形態1における低温用照明装置の熱回路網図である。
【図4】この発明の実施の形態1の変形例を示す低温用照明装置の断面模式図である。
【図5】この発明の実施の形態1の変形例を示す低温用照明装置の断面模式図である。
【図6】この発明の実施の形態2を示す低温用照明装置の分解斜視図である。
【図7】この発明の実施の形態2における低温用照明装置の熱回路網図である。
【図8】この発明の実施の形態3を示す低温用照明装置の分解斜視図である。
【図9】この発明の実施の形態3における低温用照明装置の熱回路網図である。
【図10】この発明の実施の形態4を示す低温用照明装置の断面模式図である。
【図11】この発明の実施の形態4における低温用照明装置の熱回路網図である。
【図12】この発明の実施の形態5を示す低温用照明装置の断面模式図である。
【図13】この発明の実施の形態6を示す低温用照明装置の断面模式図である。
【図14】この発明の実施の形態7を示す低温用照明装置の断面模式図である。
【図15】この発明の実施の形態7における低温用照明装置の熱回路網図である。
【図16】この発明の実施の形態7の変形例を示す低温用照明装置の断面模式図である。
【符号の説明】
【0056】
10 発光ダイオード、11 冷陰極管、12 平面型蛍光ランプ、13 白熱電球、20 電池、21 電池収納部、30 伝熱板、50 下部ランプカバー、51 上部ランプカバー、60 回路基板、61 電子部品、63 充電器、64 整流素子、70 ヒーター、71 断熱部材、80 断熱部材。
【技術分野】
【0001】
この発明は、低温環境下において電池で駆動される低温用照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の照明装置としては、例えば、低温庫に設置され充電可能な電源、すなわち電池を備えた平面型蛍光ランプがある。(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−74364号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような照明装置においては、低温環境下では一般的に特殊な電池を使わない限り電池の出力電圧が低下するため、照度が低下したり、点灯時間が短くなるなど、安定した点灯ができないという問題があった。
【0005】
この発明は、上記のような問題を解決するためになされたもので、低温環境下においても安定した点灯ができる低温用照明装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る低温用照明装置は、発光素子と、発光素子を駆動する電池と、発光素子と電池とを熱的に接続する熱伝導部材とを備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明は、低温環境下においても特殊な電池を用いることなく、安定した点灯ができる低温用照明装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1は、この発明を実施するための実施の形態1における低温用照明装置である誘導灯の分解斜視図、図2は、本実施の形態における低温用照明装置である誘導灯の断面模式図を示すものである。本実施の形態における誘導灯の発光素子は砲弾型、白色の発光ダイオード10であり、図1に示すように、複数の発光ダイオード10と、これらの発光ダイオード10を駆動するための電源として使用される電池20とが、熱伝導部材である断面形状がL字型のアルミニウム製の伝熱板30に取付けられている。具体的には、発光ダイオード10の光の出射方向と反対側の平面形状部が、L字型の伝熱板30の水平部分の下面に接し、汎用のNiCd二次電池である電池20がL字型の伝熱板30の鉛直部分の外側側面に接している。
【0009】
また、L字型の伝熱板30の水平部分の上面には、電池20の出力を発光ダイオード10の点灯に適した定電流に変換する機能を有する電子部品61が搭載された回路基板60が設けられている。そして、回路基板60と電池20とは、配線62により電気的に接続されている。このように、発光ダイオード10と電池20と回路基板60とが伝熱板30上に搭載された状態で、図2に示すように下部ランプカバー50の開口部に設けられた保持部品40の上に載置されており、発光ダイオード10と電池20と回路基板60とが伝熱板30を介して熱的に接続されている。一面に表示面52を有する下部ランプカバー50と、この開口部を閉塞する上部ランプカバー51とによって形成された空間には、伝熱板30、発光ダイオード10、電池20及び回路基板60とが収納されている。
【0010】
発光ダイオード10の光の出射方向と反対側の平面形状部には、図2に示すように発光ダイオード10に電流を流すために2本のリードフレーム15が設けられている。伝熱板30の発光ダイオード10に接する面のリードフレーム15がある箇所には、この2本のリードフレーム15を互いに短絡させないために、貫通穴31が設けられている。発光ダイオード10と回路基板60とは、貫通穴31を通る2本のリードフレーム15により電気的に接続され、回路基板60に搭載された電子部品61から定電流の供給を受ける。電子部品61は配線62を介して電気的に接続された電池20および図示しない商用電源のいずれか一方から電力供給を受ける。電池20は図示しない充電器によって充電される。
【0011】
下部ランプカバー50の内部には、反表示板側に設けられたブラストパターン53と反射板58とを有した導光板57が設けられており、発光ダイオード10から出射された光は導光板57のブラストパターン53と反射板58とにより表示面52の方向に反射し、表示面52に達するように構成されている。
【0012】
次に、動作について説明する。
発光ダイオード10の点灯時には熱を発するため、発光ダイオード10の発する熱が伝熱板30を介して電池20に伝わることになり、電池20の温度を周辺温度より高くすることができる。その結果、電池20の温度が異常に低下することなく電池20を最適な状態で使用することができ、発光ダイオード10を安定して点灯できる。
そこで、発光ダイオード10の発熱による電池20の温度の上昇度合いを調べるため、本実施の形態における誘導灯を−30℃の状態つまり低温環境下で使用した場合を想定して、電池20および発光ダイオード10の温度を熱シミュレーションにより求めた。
【0013】
本実施の形態における誘導灯の熱回路網を図3に示す。図3において、発光素子である発光ダイオード10、電池20および外気の温度はそれぞれT2、T3、T9で表される。また、発光素子の発熱量はQ2、発光素子と電池20の間の熱抵抗はR23、発光素子と外気との間の熱抵抗はR29、電池20と外気との間の熱抵抗はR39でそれぞれ表される。なお、今回のシミュレーションでは、図1および図2の下部ランプカバー50と上部ランプカバー51の熱的遮蔽効果はないものとした。
【0014】
いま、Q2を3W、R23を10K/W、R29を25K/W、R39を40K/W、T9を−30℃として熱シミュレーションを行なった。熱シミュレーションは、図3の熱回路網を電気回路を模して計算することにより行なった。具体的には、電気工学のオームの法則の、抵抗を熱抵抗、電位差を温度差、伝熱量を電流にそれぞれ対応させて計算した。計算の結果、発光素子である発光ダイオード10の温度T2は+10℃、電池20の温度T3は+20℃となった。
【0015】
また、比較として、実施の形態1における伝熱板30がなく、発光ダイオード10と電池20との間の熱的な接続がない場合の電池20の温度を、図3の熱回路網図を用いて熱シミュレーションした。図3の発光素子と電池20の間の熱抵抗R23を1000K/Wとし、他のパラメータは実施の形態1と同じにして、実施の形態1と同様の計算をしたところ、電池20の温度T2は−27.2℃と外気の温度とほとんどかわらなかった。
【0016】
このように、本実施の形態によれば、電池20と発光ダイオード10とを熱的に接続する伝熱板30の効果により、周辺温度が−30℃と低温であっても、電池20の温度を+20℃と周辺温度に比べ高く保つことができる。NiCd電池の使用下限温度は0℃とされているが、本実施の形態においては、NiCd電池の温度を使用下限温度以上にすることができる。
【0017】
ここで、誘導灯の一般的な使われ方について説明しておく。この誘導灯は、低温庫内などのおおよそ−30℃の低温環境下に設置される。低温庫には商用電源が供給されており、通常は商用電源から供給される電力により駆動され発光ダイオードなどの低温用照明装置の発光素子が点灯する。一般的には、誘導灯は常時点灯させて使用される。
停電時など商用電源が停止した場合、誘導灯は、商用電源による駆動から、内蔵された電池による駆動に切り替わる。電池は、停電になる前から商用電源から電力供給を受けて充電器により充電されている。
【0018】
上記のように、本実施の形態における誘導灯は、常時点灯させて使用される場合に、停電前に電池20の温度を+20℃と周辺温度に比べ高く保つことができるため、停電発生直後にも電池20の温度を高くすることができ、停電発生直後から発光ダイオード10を安定して点灯させることができる。また、停電発生直後から発光ダイオード10を安定して点灯させることができるため、その発光ダイオード10の発熱が電池20に伝わることにより、低温化による電池20の電圧低下が起きず、停電発生後長時間にわたり発光ダイオード10を安定して点灯できる。このため、低温対応の特殊な電池を使用する必要がなく、廉価な誘導灯とすることができる。
また、本実施の形態のように常時点灯して使用される誘導灯ではなく、常時消灯させて使用される非常灯であっても、発光ダイオード10が点灯し発光ダイオード10が発熱する状態になれば、常時点灯して使用した場合と同様の効果を得ることができる。
【0019】
なお、前述の熱シミュレーションにおいては、下部ランプカバー50と上部ランプカバー51の熱的遮蔽効果はないものとして計算したが、実際の下部ランプカバー50と上部ランプカバー51には、下部ランプカバー50と上部ランプカバー51の内部に熱が閉じ込められることにより下部ランプカバー50と上部ランプカバー51の内部の温度が外気より高くなる効果がある。したがって、先に示した熱シミュレーション結果より電池20および発光ダイオード10の温度をより高くすることができる。
【0020】
また、本実施の形態において、電池20としてはNiCd二次電池を用いたが、電池20の種類としてはこれに限るものではなく、二次電池であればNiH電池、リチウムイオン電池、一次電池であれば、マンガン電池、アルカリ電池、ボタン電池などであればよい。また、特別に低温に対応した特殊な電池であっても、電池の温度が−30℃程度と低いと電池の寿命が短くなるという問題が発生せず、点灯時間が長くなるなどの利点がある。
【0021】
また、図4に示すように、電池20の代わりに電池収納部21が取り付けられている誘導灯であっても、電池収納部21と伝熱板30が熱的に接続されていれば、電池20が取り付けられた場合は同様の効果を奏する。
【0022】
さらに、熱伝導部材の一例としてL字型であるアルミニウム製の伝熱板30の例を示したが、熱伝導部材としてはこれに限るものではない。熱伝導部材の材料としては、アルミニウムに限らず銅、銀など熱伝導性の高い材料であればよい。また、金属に限らずグラファイトシートやシートパイプであってもよい。その形状も、熱を伝えられるものであれば特に限定するものではない。図5に示すように伝熱板30の一部が電池20を巻きつける形状であれば、電池20の温度をより効率的に上昇させることができるため、より有効に効果を奏する。
【0023】
なお、発光ダイオード10から出射された光を表示面52の方向に反射するために導光板57の反表示面側に設けるパターンとしては、ブラストパターン53の例を示したが、プリズムでもよく、光を均一に表示面52の方向に反射させるものであればよい。
【0024】
実施の形態2.
図6は、この発明を実施するための実施の形態2における低温用照明装置である誘導灯の分解斜視図である。本実施の形態における誘導灯の発光素子は砲弾型、白色の発光ダイオード10であり、図6に示すように、これらの複数の発光ダイオード10と、発光ダイオード10を駆動するための電源として使用される電池20と、この電池20を充電するための電子部品である充電器63とが、熱伝導部材である断面形状がL字型の伝熱板30に取り付けられている。具体的には、発光ダイオード10は、その光の出射方向と反対側の平面形状部が、L字型の伝熱板30の水平部分の下面に接し、電池20はL字型の伝熱板30の鉛直部分の外側側面に接し、充電器63はL字型の伝熱板30の水平部分の上面に接している。
【0025】
また、L字型の伝熱板30の水平部分の上面には、電池20の出力を発光ダイオード10の点灯に適した定電流に変換する機能を有する電子部品61が搭載された回路基板60が設けられている。そして、回路基板60と電池20と、また、回路基板60と充電器63とは、配線62により電気的に接続されている。また、充電器63は、図示しない配線により商用電源と接続されておる、商用電源と接続されているときに発熱する。ランプカバー下部50の保持部品40の上に設置され、一面に表示面52を有する下部ランプカバー50と、この開口部を閉塞する上部ランプカバー51とによって形成された空間には、発光ダイオード10と電池20と伝熱板30と回路基板60と充電器63とが収納されている。
その他の構成については実施の形態1と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0026】
次に、動作について説明する。
発光ダイオード10は点灯時に、また、充電器63は商用電源と接続されているときに、熱を発するため、発光ダイオード10および充電器63の発する熱が伝熱板30を介して電池20に伝わることになり、電池20の温度を周辺温度より高くすることができる。その結果、電池20の温度が異常に低下することなく電池20を最適な状態で使用することができ、発光ダイオード10を安定して点灯できる。
そこで、発光ダイオード10と充電器63との発熱による電池20の温度の上昇度合いを調べるため、本実施の形態における誘導灯を−30℃の状態つまり低温環境下で使用した場合を想定して、充電器63、電池20および発光ダイオード10の温度を熱シミュレーションにより求めた。
【0027】
本実施の形態における誘導灯の熱回路網図を図7に示す。図7において、電子部品である充電器63、発光素子である発光ダイオード10、電池20、および外気の温度はそれぞれT1、T2、T3、T9で表される。また、電子部品の発熱量はQ1、発光素子の発熱量はQ2、電子部品と発光素子との間の熱抵抗はR12、電子部品と電池20との間の熱抵抗はR13、電子部品と外気との間の熱抵抗はR19、発光素子と外気との間の熱抵抗はR29、電池20と外気との間の熱抵抗はR39でそれぞれ表される。ここでも、下部ランプカバー50と上部ランプカバー51の熱的遮蔽効果はないものとした。
【0028】
いま、Q1を3W、Q2を3W、R12を10K/W、R13を10K/W、R19を50K/W、R29を40K/W、R39を40K/W、T9を−30℃として熱シミュレーション計算を行なった。計算の結果、電子部品である充電器63の温度T1は+60℃、発光素子である発光ダイオード10の温度T2は+66℃、電池20の温度T3は+42℃となった。
【0029】
このように、本実施の形態によれば、電池20と発光ダイオード10と充電器63とを熱的に接続する伝熱板30の効果により、周辺温度が−30℃と低温であっても、電池20の温度を+42℃と周辺温度に比べて高く保つことができる。したがって、停電発生時にすみやかに発光ダイオード10を安定して点灯できる。また、低温対応の特殊な電池を使用する必要がなく、廉価な誘導灯とすることができる。
【0030】
実施の形態3.
図8は、この発明を実施するための実施の形態3における低温用照明装置である誘導灯の分解斜視図である。本実施の形態における誘導灯の発光素子は蛍光灯の一種の冷陰極管11であり、図8に示すように、この冷陰極管11と、冷陰極管11を駆動するための電源として使用される電池20と、冷陰極管11を点灯させるための電子部品である整流素子64とが、熱伝導部材である断面形状がL字型である伝熱板30に取り付けられている。具体的には、冷陰極管11はL字型の伝熱板30の水平部分の下面に接し、電池20はL字型の伝熱板30の鉛直部分の外側側面に接し、整流素子64はL字型の伝熱板30の水平部分の上面に接している。
また、回路基板60がL字の伝熱板30の水平部分の上面に設けられており、回路基板60と電池20とは、配線62により電気的に接続されている。
その他の構成については実施の形態1と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0031】
次に、動作について説明する。
冷陰極管11と整流素子64とは冷陰極管11の点灯時に熱を発するため、冷陰極管11および整流素子64の発する熱が伝熱板30を介して電池20に伝わることになり、電池20の温度を周辺温度より高くすることができる。その結果、電池20の温度が異常に低下することなく電池20を最適な状態で使用することができ、冷陰極管11を安定して点灯できる。
そこで、冷陰極管11および整流素子64との発熱による電池20の温度の上昇度合いを調べるため、本実施の形態における誘導灯を−30℃の状態つまり低温環境下で使用した場合を想定して、整流素子64、電池20および冷陰極管11の温度を熱シミュレーションにより求めた。
【0032】
本実施の形態における誘導灯の熱回路網図を図9に示す。図9において、電子部品である整流素子64、発光素子である冷陰極管11、電池20、および外気の温度はそれぞれT1、T2、T3、T9で表される。また、電子部品の発熱量はQ1、発光素子の発熱量はQ2、電子部品と発光素子との間の熱抵抗はR12、電子部品と電池20との間の熱抵抗はR13、電子部品と外気との間の熱抵抗はR19、発光素子と外気との間の熱抵抗はR29、電池20と外気との間の熱抵抗はR39でそれぞれ表される。
【0033】
いま、Q1を3W、Q2を3W、R12を10K/W、R13を10K/W、R19を50K/W、R29を40K/W、R39を40K/W、T9を−30℃として熱シミュレーション計算を行なった。計算の結果、電子部品である整流素子64の温度T1は+60℃、発光素子である冷陰極管11の温度T2は+66℃、電池20の温度T3は+42℃となった。
【0034】
このように、本実施の形態によれば、電池20と冷陰極管11と整流素子64とを熱的に接続する伝熱板30の効果により、周辺温度が−30℃と低温であっても、電池20の温度を+42℃と周辺温度に比べて高く保つことができる。したがって、停電発生時にすみやかに冷陰極管11を安定して点灯できる。また、低温対応の特殊な電池を使用する必要がなく、廉価な誘導灯とすることができる。
さらに、冷陰極管11を+66℃と周辺温度より高くできるため、水銀の蒸気圧を高めることができ、よりすみやかに冷陰極管11を点灯させることができる。
【0035】
実施の形態4.
図10は、この発明を実施するための実施の形態4における低温用照明装置である誘導灯の断面模式図である。図10に示すように、本実施の形態における誘導灯の発光素子は蛍光灯の一種の平面型蛍光ランプ12であり、平面型蛍光ランプ12と、平面型蛍光ランプ12を駆動するための電源として使用される電池20と、平面型蛍光ランプ12を点灯させるための電子部品である整流素子64とが、熱伝導部材である断面形状がほぼ逆L字型である伝熱板30に取り付けられている。具体的には、平面型蛍光ランプ12は伝熱板30の逆L字の鉛直部分の内側側面に接し、整流素子64は伝熱板30の逆L字水平部分の上面に接し、電池20は伝熱板30の逆L字の鉛直部分の外側側面に接している。ランプカバー下部50の保持部品40の上に設置され、一面に表示面52を有する下部ランプカバー50と、この開口部を閉塞する上部ランプカバー51とによって形成された空間には、平面型蛍光ランプ12と電池20と伝熱板30と回路基板60と整流素子64とが収納されており、下部ランプカバー50の内側側面の電池20と対向する位置には電池20を加熱するためのヒーター70が設けられている。
その他の構成については実施の形態1と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0036】
次に、動作について説明する。
平面型蛍光ランプ12と整流素子64とは平面型蛍光ランプ12の点灯時に熱を発するため、また、ヒーター70はその動作時に熱を発するため、平面型蛍光ランプ12および整流素子64の発する熱が伝熱板30を介して電池20に伝わり、ヒーター70の発する熱が電池に伝わることになり、電池20の温度を周辺温度より高くすることができる。その結果、電池20の温度が異常に低下することなく電池20を最適な状態で使用することができ、平面型蛍光ランプ12を安定して点灯できる。
そこで、平面型蛍光ランプ12、整流素子64およびヒーター70の発熱による電池20の温度の上昇度合いを調べるため、本実施の形態における誘導灯を−30℃の状態つまり低温環境下で使用した場合を想定して、整流素子64、電池20および平面型蛍光ランプ12の温度を熱シミュレーションにより求めた。
【0037】
本実施の形態における誘導灯の熱回路網図を図11に示す。図11において、電子部品である整流素子64、発光素子である平面型蛍光ランプ12、電池20、および外気の温度はそれぞれT1、T2、T3、T9で表される。また、電子部品の発熱量はQ1、発光素子の発熱量はQ2、ヒーター70の発熱量をQ8、電子部品と発光素子との間の熱抵抗はR12、電子部品と電池20との間の熱抵抗はR13、電子部品と外気との間の熱抵抗はR19、発光素子と外気との間の熱抵抗はR29、電池20と外気との間の熱抵抗はR39でそれぞれ表される。
【0038】
いま、Q1を1W、Q2を1W、Q8を1W、R12を10K/W、R13を10K/W、R19を50K/W、R29を40K/W、R39を40K/W、T9を−30℃として熱シミュレーション計算を行なうと、電子部品である整流素子64の温度T1は+13.3℃、発光素子である平面型蛍光ランプ12の温度T2は+12.7℃、電池20の温度T3は+12.7℃となった。
【0039】
このように、本実施の形態によれば、電池20と平面型蛍光ランプ12と整流素子64とを熱的に接続する伝熱板30およびヒーター70の効果により、周辺温度が−30℃と低温であっても、電池20の温度を+12.7℃と周辺温度に比べて高く保つことができる。したがって、停電発生時にすみやかに、平面型蛍光ランプ12を安定して点灯できる。また、低温対応の特殊な電池を使用する必要がなく、廉価な誘導灯とすることができる。
さらに、平面型蛍光ランプ12を+12.7℃と周辺温度より高くできるため、水銀の蒸気圧を高めることができ、よりすみやかに、平面型蛍光ランプ12を点灯させることができる。
【0040】
実施の形態5.
図12は、この発明を実施するための実施の形態4における低温用照明装置である誘導灯の断面模式図である。図12に示すように、本実施の形態における誘導灯の発光素子は蛍光灯の一種の平面型蛍光ランプ12であり、平面型蛍光ランプ12と、平面型蛍光ランプ12を駆動するための電源として使用される電池20と、平面型蛍光ランプ12を点灯させるための電子部品である整流素子64とが、熱伝導部材である断面形状がほぼ逆L字型である伝熱板30に取り付けられている。具体的には、平面型蛍光ランプ12は伝熱板30の逆L字の鉛直部分の内側側面に接し、整流素子64は伝熱板30の逆L字水平部分の上面に接し、電池20は伝熱板30の逆L字の鉛直部分の外側側面に接している。電池20と整流素子64とは、断熱部材71により覆われている。
また、ランプカバー下部50の保持部品40の上に設置され、一面に表示面52を有する下部ランプカバー50と、この開口部を閉塞する上部ランプカバー51とによって形成された空間には、平面型蛍光ランプ12と電池20と伝熱板30と回路基板60と整流素子64と断熱部材71とが収納されている。
その他の構成については実施の形態4と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0041】
次に、動作について説明する。
平面型蛍光ランプ12と整流素子64とは平面型蛍光ランプ12の点灯時に熱を発するため、平面型蛍光ランプ12および整流素子64の発する熱が伝熱板30を介して電池20に伝わり、ヒーター70の発する熱が電池に伝わることになり、電池20の温度を周辺温度より高くすることができる。その結果、電池20の温度が異常に低下することなく電池20を最適な状態で使用することができ、平面型蛍光ランプ12を安定して点灯できる。また、断熱部材71は電池20と外気および整流素子64と外気の間の熱伝導を妨げる効果を有する。
平面型蛍光ランプ12、整流素子64およびヒーター70の発熱による電池20の温度の上昇度合いを調べるため、本実施の形態における誘導灯を−30℃の状態つまり低温環境下で使用した場合を想定して、整流素子64、電池20および平面型蛍光ランプ12の温度を熱シミュレーションにより求めた。
【0042】
本実施の形態における誘導灯の熱回路網図は実施の形態3の図9と同じであるが、電子部品と外気との間の熱抵抗R19の値、電池20と外気との間の熱抵抗はR39の値が断熱部材71の効果により大きくなる。
【0043】
いま、Q1を1W、Q2を1W、R12を10K/W、R13を10K/W、R19を500K/W、R29を40K/W、R39を500K/W、T9を−30℃として熱シミュレーション計算を行なうと、電子部品である整流素子64の温度T1は+45.1℃、発光素子である平面型蛍光ランプ12の温度T2は+38.1℃、電池20の温度T3は+43.7℃となった。
【0044】
このように、本実施の形態によれば、電池20と平面型蛍光ランプ12と整流素子64とを熱的に接続する伝熱板30および断熱部材71の効果により、周辺温度が−30℃と低温であっても、電池20の温度を+43.7℃と周辺温度に比べて高く保つことができる。したがって、停電発生時にすみやかに、平面型蛍光ランプ12を安定して点灯できる。また、低温対応の特殊な電池を使用する必要がなく、廉価な誘導灯とすることができる。
さらに、平面型蛍光ランプ12を+38.1℃と周辺温度より高くできるため、水銀の蒸気圧を高めることができ、よりすみやかに、平面型蛍光ランプ12を点灯させることができる。
【0045】
実施の形態6.
図13は、この発明を実施するための実施の形態6における低温用照明装置である誘導灯の断面模式図である。図13に示すように、本実施の形態における誘導灯は、電池20および整流素子64が断熱部材71により覆われていること以外は実施の形態4における図10と同じ構成である。
【0046】
次に、動作について説明する。
平面型蛍光ランプ12と整流素子64とは平面型蛍光ランプ12の点灯時に熱を発するため、また、ヒーター70はその動作時に熱を発するため、平面型蛍光ランプ12および整流素子64の発する熱が伝熱板30を介して電池20に伝わり、ヒーター70の発する熱が電池に伝わることになり、電池20の温度を周辺温度より高くすることができる。その結果、電池20の温度が異常に低下することなく電池20を最適な状態で使用することができ、平面型蛍光ランプ12を安定して点灯できる。また、断熱部材71は電池20と外気および整流素子64と外気の間の熱伝導を妨げる効果を有する。
そこで、平面型蛍光ランプ12、整流素子64およびヒーター70の発熱による電池20の温度の上昇度合いを調べるため、本実施の形態における誘導灯を−30℃の状態つまり低温環境下で使用した場合を想定して、整流素子64、電池20および平面型蛍光ランプ12の温度を熱シミュレーションにより求めた。
【0047】
本実施の形態における誘導灯の熱回路網図は実施の形態4の図11と同じであるが、電池20と外気との間の熱抵抗はR39の値が断熱部材71の効果により大きくなる。
いま、Q1を1W、Q2を1W、Q8を1W、R12を10K/W、R13を10K/W、R19を500K/W、R29を40K/W、R39を500K/W、T9を−30℃として熱シミュレーション計算を行なうと、電子部品である整流素子64の温度T1は+86.0℃、発光素子である平面型蛍光ランプ12の温度T2は+70.8℃、電池20の温度T3は+93.6℃となった。
【0048】
このように、本実施の形態によれば、電池20と平面型蛍光ランプ12と整流素子64とを熱的に接続する伝熱板30および断熱部材71とヒーター70の効果により、周辺温度が−30℃と低温であっても、電池20の温度を+46.2℃と周辺温度に比べて高く保つことができる。したがって、停電発生時にすみやかに、平面型蛍光ランプ12を安定して点灯できる。また、低温対応の特殊な電池を使用する必要がなく、廉価な誘導灯とすることができる。
さらに、平面型蛍光ランプ12を+70.8℃と周辺温度より高くできるため、水銀の蒸気圧を高めることができ、よりすみやかに、平面型蛍光ランプ12を点灯させることができる。
【0049】
実施の形態7.
図14は、この発明を実施するための実施の形態6における低温用照明装置である非常灯の断面模式図である。図14に示すように、本実施の形態における誘導灯の発光素子は熱電球13であり、白熱電球13と、白熱電球13を駆動するための電源として使用される電池20と、白熱電球13を点灯させるための電子部品である整流素子64とが、熱伝導部材である断面形状がH型であるアルミニウム製の伝熱板30に取り付けられている。具体的には、白熱電球13は断面形状がH型の伝熱板30のH型の下方空間部のソケット部に接し、電池20は断面形状がH型の伝熱板30のH型の上方空間部に接し、整流素子64は断面形状がH型の伝熱板30のH外側側面に接している。また、伝熱板30は、反射板81を備えた筐体80に取り付けられている。
本実施の形態における低温用照明装置である非常灯は商用電源と接続されており、常時消灯して使用され、非常時に点灯する。整流素子64は白熱電球13が点灯時に発熱する。その他の構成については実施の形態1と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0050】
次に、動作について説明する。
整流素子64は白熱電球13の点灯時に熱を発するため、整流素子64の発する熱が伝熱板30を介して電池20に伝わり、電池20の温度を周辺温度より高くすることができる。その結果、電池20の温度が異常に低下することなく電池20を最適な状態で使用することができ、白熱電球13を安定して点灯できる。
整流素子64の発熱による電池20の温度の上昇度合いを調べるため、本実施の形態における非常灯を−30℃の状態つまり低温環境下で使用した場合を想定して、整流素子64、電池20および白熱電球13の温度を熱シミュレーションにより求めた。
【0051】
本実施の形態における非常灯の熱回路網図を図15に示す。図15において、電子部品である整流素子64、発光素子である白熱電球13、電池20、および外気の温度はそれぞれT1、T2、T3、T9で表される。また、電子部品の発熱量はQ1、電子部品と発光素子との間の熱抵抗はR12、電子部品と電池20との間の熱抵抗はR13、電子部品と外気との間の熱抵抗はR19、発光素子と外気との間の熱抵抗はR29、電池20と外気との間の熱抵抗はR39でそれぞれ表される。
【0052】
いま、Q1を3W、R12を10K/W、R13を10K/W、R19を50K/W、R29を40K/W、R39を40K/W、T9を−30℃として熱シミュレーション計算を行なうと、電子部品の温度T1は+20℃、発光素子である白熱電球13の温度T2は+10℃、電池20の温度T3は+10℃となった。
【0053】
このように、本実施の形態によれば、電池20と整流素子64とを熱的に接続する伝熱板30の効果により、周辺温度が−30℃と低温であっても、電池20の温度を+10℃と周辺温度に比べて高く保つことができる。したがって、電池20の温度を汎用電池の使用温度下限(例えばNiCd電池の場合は0℃)以上にすることができ、廉価な低温用照明装置とすることができる。
【0054】
なお、本実施の形態における非常灯の発光素子は、白熱電球13に限るものではなく、例えば、図16の非常灯の断面模式図に示すように発光ダイオード10を発光素子としたものであってもよい。図16において、アレイ状に配された発光ダイオード10と電池20が伝熱板30に熱的に接続されており、ランプカバー55の発光ダイオード10側の内側に拡散シート54が設けられていれば、低温環境下であっても安定に点灯する下方を照明する平面型の非常灯を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】この発明の実施の形態1を示す低温用照明装置の分解斜視図である。
【図2】この発明の実施の形態1を示す低温用照明装置の断面模式図である。
【図3】この発明の実施の形態1における低温用照明装置の熱回路網図である。
【図4】この発明の実施の形態1の変形例を示す低温用照明装置の断面模式図である。
【図5】この発明の実施の形態1の変形例を示す低温用照明装置の断面模式図である。
【図6】この発明の実施の形態2を示す低温用照明装置の分解斜視図である。
【図7】この発明の実施の形態2における低温用照明装置の熱回路網図である。
【図8】この発明の実施の形態3を示す低温用照明装置の分解斜視図である。
【図9】この発明の実施の形態3における低温用照明装置の熱回路網図である。
【図10】この発明の実施の形態4を示す低温用照明装置の断面模式図である。
【図11】この発明の実施の形態4における低温用照明装置の熱回路網図である。
【図12】この発明の実施の形態5を示す低温用照明装置の断面模式図である。
【図13】この発明の実施の形態6を示す低温用照明装置の断面模式図である。
【図14】この発明の実施の形態7を示す低温用照明装置の断面模式図である。
【図15】この発明の実施の形態7における低温用照明装置の熱回路網図である。
【図16】この発明の実施の形態7の変形例を示す低温用照明装置の断面模式図である。
【符号の説明】
【0056】
10 発光ダイオード、11 冷陰極管、12 平面型蛍光ランプ、13 白熱電球、20 電池、21 電池収納部、30 伝熱板、50 下部ランプカバー、51 上部ランプカバー、60 回路基板、61 電子部品、63 充電器、64 整流素子、70 ヒーター、71 断熱部材、80 断熱部材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と、前記発光素子を駆動する電池と、前記発光素子と前記電池とを熱的に接続する熱伝導部材とを備えたことを特徴とする低温用照明装置。
【請求項2】
熱伝導部材は、発光素子と電池とが取り付けられた伝熱板であることを特徴とする請求項1に記載の低温用照明装置。
【請求項3】
熱伝導部材は、発光素子と電池とに電気的に接続された電子部品へ熱的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の低温用照明装置。
【請求項4】
熱伝導部材は、発光素子と、電池と、電子部品とが取り付けられた伝熱板であることを特徴とする請求項3に記載の低温用照明装置。
【請求項5】
電子部品は、電池を充電する機能を有することを特徴とする請求項3又は4に記載の低温用照明装置。
【請求項6】
電池を保温するヒーターを設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の低温用照明装置。
【請求項7】
電池は、外周が遮蔽物によって覆われていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の低温用照明装置。
【請求項8】
電池は、外周が断熱部材によって覆われていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の低温用照明装置。
【請求項9】
発光素子が発光ダイオードであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の低温用照明装置。
【請求項1】
発光素子と、前記発光素子を駆動する電池と、前記発光素子と前記電池とを熱的に接続する熱伝導部材とを備えたことを特徴とする低温用照明装置。
【請求項2】
熱伝導部材は、発光素子と電池とが取り付けられた伝熱板であることを特徴とする請求項1に記載の低温用照明装置。
【請求項3】
熱伝導部材は、発光素子と電池とに電気的に接続された電子部品へ熱的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の低温用照明装置。
【請求項4】
熱伝導部材は、発光素子と、電池と、電子部品とが取り付けられた伝熱板であることを特徴とする請求項3に記載の低温用照明装置。
【請求項5】
電子部品は、電池を充電する機能を有することを特徴とする請求項3又は4に記載の低温用照明装置。
【請求項6】
電池を保温するヒーターを設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の低温用照明装置。
【請求項7】
電池は、外周が遮蔽物によって覆われていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の低温用照明装置。
【請求項8】
電池は、外周が断熱部材によって覆われていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の低温用照明装置。
【請求項9】
発光素子が発光ダイオードであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の低温用照明装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2008−251359(P2008−251359A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−91493(P2007−91493)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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