説明

低濃度の燃焼性有機物質含有の液体の熱利用方法およびその熱利用システム

【課題】システム全体のエネルギー利用効率を高めた、低濃度の燃焼性有機物質含有の液体の熱利用方法およびその熱利用システムを提供することを目的とする。
【解決手段】低濃度の燃焼性有機物質含有液体の熱利用方法であって、前記低濃度の燃焼性有機物質含有液体を蒸留装置2で加熱して、当該液体より高濃度の燃焼性有機物質含有蒸気を得る蒸気生成工程と、前記蒸気生成工程で得られた前記燃焼性有機物質含有蒸気を燃焼装置4の燃料に用いる燃焼工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低濃度の燃焼性有機物質含有の液体の熱利用方法およびその熱利用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から図4に示すように、アルコール含有液体を蒸留器で蒸留し、アルコール濃縮蒸気を冷却して濃縮アルコール溶液を得て、この溶液を微細化機構(ノズル)等で噴射して燃焼することが行われている。
【0003】
また、アルコール含有液体を超音波で霧化して、燃焼装置(バーナ)の燃料に利用することが知られている(特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開2008−309359
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の図4の蒸留器を用いる構成では、アルコール含有蒸気を液化するための熱交換器等の冷却手段(冷却熱)が必要であり、そのため、システム全体のエネルギー効率の面で改善が要望されている。また、アルコール濃縮液をボイラで燃焼させるためには、液体を霧化するために別途ノズル装置が必要であった。
【0006】
また、特許文献1のような超音波霧化装置を用いた構成(図5参照)で十分な発熱量を持つアルコール濃縮ミストを得るためには、超音波霧化残液中のアルコール濃度が6〜8%含まれていることが必要であった。しかしこの残液(アルコール濃度6〜8%)を排液としてそのまま放流することができず、残液中のアルコールを分解若しくは分離する必要があった。また、超音波霧化法は、液質により霧化効率が変動するため運転安定性に懸念がある。また、スケールメリットが小さく、処理規模に比例した超音波振動子が必要であり、規模が大きいほど大掛かりな霧化装置となっていた。また、日本酒等の糖分を含むアルコール発酵液を超音波霧化する場合、糖分の一部は霧化され、それを燃焼すると、バーナに付着して成長し安定燃焼を阻害して、燃焼不良の原因となるため、改善が望まれていた。
【0007】
そこで、本発明は、上記従来技術の現状に鑑みてなされたものであって、超音波霧化装置を用いた場合のような霧化残液の排水処理の必要がなく、かつ、アルコール濃縮溶液を霧化するための噴射装置を設ける必要がなく、システム全体のエネルギー利用効率を高めた、低濃度の燃焼性有機物質含有の液体の熱利用方法およびその熱利用システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、低濃度の燃焼性有機物質含有液体の熱利用方法であって、
前記低濃度の燃焼性有機物質含有液体を蒸留装置で加熱して、当該液体より高濃度の燃焼性有機物質含有蒸気を得る蒸気生成工程と、
前記蒸気生成工程で得られた前記燃焼性有機物質含有蒸気を燃焼装置の燃料に用いる燃焼工程とを有することを特徴とする。
【0009】
この構成により、蒸留装置で生成された燃焼性有機物質含有蒸気を液化することなく、そのまま燃焼装置の燃料に用いることができ、システムのエネルギー損失を小さくできる。燃料が蒸気であるため、不完全燃焼や失火のリスクがなく、燃焼装置(例えばボイラ)でのクリーン燃焼が可能である。蒸留装置の処理によって、液体中のアルコール以外の不純物(例えば糖類)を好適に分離できる。また、蒸留装置から排出される排液は、燃焼性有機物質濃度(例えばアルコール濃度)が例えば0%〜1%(V/V)にできるため、排水処理を施すことなく放流できる。また、蒸留装置による常圧蒸留で蒸気を燃焼装置(例えばボイラ)へ送れるため、逆火のリスクはない。また、燃焼性有機物質含有蒸気を直接燃料にしているため、霧化のための噴射装置(ノズル)を設ける必要がなく、従来技術よりもシステム全体のエネルギー効率が高まっている。
【0010】
「燃焼性有機物」は、例えば、アルコール類であり、メタノール、エタノール、ブタノール等が例示される。「蒸留装置」は、特に制限されず、例えば、液体から蒸発した気体を凝縮して液体にすることなく留出する、いわゆる単蒸留の構成でもよく、液体をいれた蒸留釜を加熱して蒸気を得る構成でも良い。「燃焼装置」は、例えばボイラが挙げられる。
【0011】
また、上記発明の一実施形態として、前記燃焼性有機物質含有蒸気を露点以上に維持するように、前記燃焼装置から得られる蒸気の一部を用いて前記燃焼装置へ搬送中の前記燃焼性有機物質含有蒸気を加熱する工程を有することが好ましい。
【0012】
この構成によれば、蒸留装置から燃焼装置までの配管等の搬送途中において、燃焼性有機物質含有蒸気が液化することを好適に防止できる。さらに、この加熱手段の熱源として、燃焼装置から得られる蒸気の一部を用いることで、システム全体のエネルギー利用効率を高めることができる。加熱手段は、配管周囲に設けられた熱交換器、ジャケット等で構成できる。また、加熱手段として、電熱や太陽熱と併用可能に構成できる。
【0013】
また、上記発明の一実施形態として、前記燃焼装置から得られる蒸気の一部を前記蒸留装置の加熱に利用する構成が好ましい。
【0014】
この構成によれば、蒸留装置の加熱手段の熱源として、燃焼装置から得られる蒸気の一部を用いることで、システム全体のエネルギー利用効率を高めることができる。例えば、蒸留釜を加熱するための加熱水蒸気に利用できる。
【0015】
また、上記発明の一実施形態として、前記蒸気生成工程をバッチ処理で行うことが好ましい。例えば蒸留釜に供給される液量が一定値である。蒸留が進むと蒸留残液が少なくなると共に、例えばアルコール濃度も低下していき、蒸留して生成されたアルコール濃縮蒸気のアルコール濃度が低くなりすぎて、燃焼燃料として適切な範囲のアルコール濃度から外れてしまうという問題がある。そこで、例えば、蒸留残液が所定値未満になった場合に、蒸留残液を排出し、新たな液体を供給して、蒸留を再開するバッチ処理が好ましいといえる。
【0016】
また、前記蒸気生成工程をバッチ処理で行う場合に、前記燃焼工程における燃焼燃料に補助燃料を用いる構成が好ましい。バッチ処理であるため、アルコール濃縮蒸気を燃焼装置に供給できない時間帯がある。そこで、それとは別燃料である補助燃料を用いて燃焼装置を稼動させるように構成すれば、燃焼装置の連続運転を維持できる。補助燃料は、特に制限されない。
【0017】
また、上記発明の一実施形態として、前記蒸気生成工程において、前記蒸留装置を少なくとも2以上設置し、少なくともいずれかの蒸留装置から前記蒸気を前記燃焼装置に送るように制御する工程を有することが好ましい。
【0018】
この構成によれば、例えば、2台の蒸留装置を設置しておき、いずれか一方の蒸留装置からアルコール濃縮蒸気を燃焼装置に送るように構成し、例えば、この蒸留装置内の燃焼性有機物質(アルコール)含有液体量の減少、その液体内のアルコール濃度の減少、あるいはアルコール濃縮蒸気のアルコール濃度の減少が、所定の閾値未満に達する等の所定のタイミングでその他方の蒸留装置からのアルコール濃縮蒸気を燃焼装置に送るように構成できる。また、両方の蒸留装置からアルコール濃縮蒸気を燃焼装置に送るように構成できる。一方の蒸留装置からその他方の蒸留装置へ切り替える際に、それら両方の蒸留装置からのアルコール濃縮蒸気の送りこみが所定期間重複するように構成できる。アルコール濃縮蒸気の単位時間当りの流量(燃焼装置へ送られる流量)を搬送中の配管内で流量計測手段で計測し、その計測結果に基づいて蒸留装置から送られるアルコール濃縮蒸気の量を制御するように構成できる。また、所定の範囲内での流量制御を可能とする流量制御弁が設けられていてもよい。なお、2台の蒸留装置で例示したが、3台以上の蒸留装置を用いる際も同様に制御できる。
【0019】
また、他の本発明は、低濃度の燃焼性有機物質含有液体の熱利用システムであって、
前記低濃度の燃焼性有機物質含有液体を加熱し、当該液体より高濃度の燃焼性有機物質含有蒸気を生成する蒸留装置と、
前記蒸留装置で生成された前記燃焼性有機物質含有蒸気を燃料に用いる燃焼装置とを有する構成である。この構成は、上記方法と同様の作用効果を有する。
【0020】
また、上記発明の一実施形態として、前記燃焼性有機物質含有蒸気を露点以上に維持するように、前記燃焼装置から得られる蒸気の一部を用いて前記燃焼装置へ搬送中の前記燃焼性有機物質含有蒸気を加熱する加熱手段を有することが好ましい。
【0021】
また、上記発明の一実施形態として、前記燃焼装置から得られる蒸気の一部を前記蒸留装置の加熱に利用するための蒸気送り込み手段とを有することが好ましい。
【0022】
また、上記発明の一実施形態として、
前記液体を前記蒸留装置に供給する供給手段と、
前記蒸留装置内の液残量を測定する残液量測定手段および/または前記蒸気中あるいは液残液中の燃焼性有機物質濃度を測定する濃度測定手段と、
前記蒸留装置内の液残を当該蒸留装置外に排出する排出手段と、
前記供給手段を用いて前記蒸留装置に前記液体を設定量分供給する供給処理を制御し、前記残液量測定手段および/または前記濃度測定手段による測定結果が所定レベル未満に達した場合に、前記排出手段を用いて前記液残を蒸留装置外に排出する排出処理を制御し、当該排出処理に応じて、前記燃焼装置の運転を停止または補助燃料を用いて前記燃焼装置を運転するように制御し、前記排出処理後に前記供給処理を行うように制御する制御手段と、を有する構成が好ましい。この構成によって、蒸留装置のバッチ処理を好適に行える。
【0023】
また、上記発明の一実施形態として、前記蒸留装置を少なくとも2以上設置し、
第1蒸留装置の前記蒸気を前記燃焼装置の燃料に用いる第1燃焼処理の実行と、
第2蒸留装置の前記蒸気を前記燃焼装置の燃料に用いる第2燃焼処理の実行とを制御する制御手段を有することが好ましい。この構成により、2台以上設置した場合における蒸留装置制御、切換制御等を好適に行える。2台設置した場合に、制御手段は、いずれか一方の蒸留装置からアルコール濃縮蒸気を燃焼装置に送るように制御し、例えば、この蒸留装置内の燃焼性有機物質(アルコール)含有液体量の減少、その液体内のアルコール濃度の減少、あるいはアルコール濃縮蒸気のアルコール濃度の減少が、所定の閾値未満に達する等の所定のタイミングでその他方の蒸留装置からのアルコール濃縮蒸気を燃焼装置に送るように制御できる。また、両方の蒸留装置からアルコール濃縮蒸気を燃焼装置に送るように制御できる。一方の蒸留装置からその他方の蒸留装置へ切り替える際に、それら両方の蒸留装置からのアルコール濃縮蒸気の送りこみが所定期間重複するように制御できる。また、制御手段は、アルコール濃縮蒸気の単位時間当りの流量(燃焼装置へ送られる流量)を搬送中の配管内で計測する流量計測手段を備え、この計測結果に基づいて蒸留装置から送られるアルコール濃縮蒸気の量を制御できる。また、所定の範囲内での流量制御を可能とする流量制御弁が設けられていてもよい。なお、2台の蒸留装置で例示したが、3台以上の蒸留装置を用いる際も同様に制御できる。
【0024】
蒸留前の液体中の燃焼性有機物の濃度は、室温(例えば、平均温度6〜28℃)において、4%〜16%(V/V)の範囲が例示され、好ましくは10%〜15%(V/V)の範囲、さらに好ましくは10〜14%(V/V)の範囲である。蒸留により生成された燃焼性有機物濃縮蒸気中の燃焼性有機物の濃度は、室温において、20%〜45%(V/V)の範囲が例示され、好ましくは30%〜40%(V/V)の範囲である。
【0025】
また、上記液体にアルコール以外の不純物が含まれ、蒸留装置で当該不純物を分離することができる。これによって、糖類等の不純物を好適に分離できるため、糖類等の不純物によるバーナの燃焼不良を改善できる。
【0026】
「不純物」は、液体中に含まれる糖類が例示される。液体は、バイオエタノール、日本酒、ワイン、焼酎等のアルコール発酵液が例示され、これ液体に含まれるアルコール以外の物質も「不純物」に含まれる。
【0027】
また、上記構成において、蒸留装置から排出される排液中の燃焼性有機物質濃度が、1%(V/V)未満に構成することが好ましい。よって、蒸留工程から排出される排液のアルコール濃度は0〜1%(V/V)であり、非常に低いアルコール濃度であり、排水処理等の後処理をする必要がない。
【0028】
また、蒸留装置で生成された燃焼性有機物質濃縮蒸気中の燃焼性有機物質濃度が低い場合(例えば20%未満)または投入原液のそれが低濃度(例えば6%未満)である場合には、蒸留装置を多段に構成して、燃焼装置へ供給する燃焼性有機物質濃縮蒸気の燃焼性有機物質濃度を20%以上にすること好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施形態のシステムを説明するための図である。
【図2】実施形態の動作を説明するためのフローチャートである。
【図3】別実施形態の動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】従来のシステムを説明するための図である。
【図5】従来のシステムを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明に係る実施形態のシステム構成を図面を参照して詳細に説明する。図1は、低濃度の燃焼性有機物質含有液体の熱利用システムの全体構成を説明するための図である。
【0031】
蒸留装置2は、公知の単蒸留器を用いて、アルコール発酵液を常圧蒸留することができる。アルコール発酵液の投入用タンク1からポンプPによって、予め設定された設定量のアルコール発酵液(アルコール濃度10%〜13%)が蒸留釜に投入される。投入されたアルコール発酵液は単蒸留され、蒸留前よりアルコール濃度が高いアルコール濃縮蒸気(アルコール濃度30%〜40%)を生成する。蒸留装置2の加熱には、後述するボイラ4から得られた蒸気の一部が熱源として利用される。例えば、ボイラ4の蒸気本配管から分岐した支配管を通ってその蒸気の一部が蒸留装置2に送られる。なお、蒸留装置1は、ここでは1段であるが、目的に応じて、多段階蒸留を行えるように多段に設置したり、複数個を並列に設置することもできる。
【0032】
蒸留装置2で生成されたアルコール濃縮蒸気をボイラ4へ送る搬送中に、このアルコール濃縮蒸気が液化しないように、ボイラ4から得られた蒸気の一部を熱交換器3に送り、アルコール濃縮蒸気を加熱し、その露点以下に温度低下して液化するのを好適に防止している。例えば、ボイラ4の蒸気本配管から分岐した支配管を通ってその蒸気の一部が熱交換器3に送られる。熱交換器3は、アルコール濃縮蒸気用の配管の全体にあるいは一部に設けることができ、その液化を防止する構成である。
【0033】
蒸留装置2で生成されたアルコール濃縮蒸気は、常圧蒸留の差圧によって、ボイラ4まで配管を通じて好適に送られる。別実施形態として、アルコール濃縮蒸気をバーナ4へ搬送するために搬送気体を供給する気体搬送装置を備えるように構成できる。気体搬送装置は、搬送気体を貯留するボンベ、搬送圧力源のコンプレッサー、搬送気体の流量制御機構(オリフィス、流量制御弁等)、温度調節機構(熱交換器等)等を備えている。搬送気体としては、例えば燃焼用空気、液体燃料、酸素等が例示できる。この搬送気体を補助燃料として用いることもできる。搬送気体の温度をアルコール濃縮蒸気の露点以上にすることが好ましい。
【0034】
蒸留装置2の下部に排出用バルブ5が設けられ、排出用バルブ5を開くことで、蒸留装置2の蒸留残液(アルコール濃度1%以下)をストックタンク6に導く。ストックタンク6に溜まった蒸留残液は、所定のタイミングで、そのまま排水として放流される。蒸留装置2から排出される蒸留残液のアルコール濃度は1%以下のため、排水処理する必要がなく、システム全体として排水処理を不要にできる。なお、アルコール濃縮蒸気用配管で液化した、あるいは配管壁面に接触することで液滴に成長したアルコール溶液をストックタンク6に導くように構成できる(図上、熱交換器3からストックタンク6までの破線矢印)。液化したアルコール溶液は少量であり、ストックタンク6内の液中のアルコール濃度が1%以下に維持される。
【0035】
ボイラ4は、蒸留装置2で生成されたアルコール濃縮蒸気を燃焼する機能であり、蒸気を発生して、後段の場内への熱利用に提供し、かつ、蒸気の一部を蒸留装置2へ送り加熱に利用する構成、および熱交換器3に送り配管内のアルコール濃縮蒸気を露点以下にしないように利用する構成である。蒸気送り込み手段は、蒸気用本管から一部蒸気を取り出し、蒸留装置2あるいは熱交換器3へ送る分岐部、弁および蒸気用支管(蒸留装置2用および熱交換器3用)を有して構成できる。
【0036】
また、上記のボイラ4では、燃料としてアルコール濃縮蒸気のみを利用するように構成できるが、主燃料を他の燃料として、アルコール濃縮蒸気を補助燃料に用いるように構成でき、また、アルコール濃縮蒸気とその他燃料との混合物を用いるように構成でき、また、アルコール濃縮蒸気とその他燃料とを交互に利用するように構成することもできる。
【0037】
(処理動作フロー)
図1に示すシステムの処理動作フローを図2(a)、(b)で説明する。図2(a)の処理動作は、まず、ポンプPを駆動してアルコール発酵液を投入用タンク1から蒸留装置2へ設定量分供給する(供給処理、S1)。次いで、蒸留装置2でアルコール発酵液を蒸留し、アルコール濃縮蒸気を生成する(蒸気生成工程、S2)。蒸留装置2を稼動することによる差圧を利用して、このアルコール濃縮蒸気がアルコール濃縮蒸気用配管を通じてボイラ4に送られ、ボイラ4で直接燃焼される(燃焼工程)。アルコール濃縮蒸気用配管には、熱交換器3が設置され、アルコール濃縮蒸気の液化を抑制あるいは完全に防止している。ポンプPの駆動制御、蒸留装置2の運転制御、ボイラ4の運転制御は不図示の制御手段で行っている。制御手段は、専用回路、ファームウエア、コンピュータおよびソフトウエア等によって構成できる。
【0038】
次いで、液量測定手段で測定された蒸留装置2内のアルコール発酵液の蒸留残液量が、所定値未満であるか否かを判断する(S3−1)。液量測定手段は公知の測定器を用いることができ、リアルタイムで測定できる。「所定値」は予め設定しておき、投入時の設定量の5%〜20%の範囲のいずれかの数値を設定でき、この数値範囲はアルコール濃縮率に基づいて設定できる。蒸留残液量が所定値未満になれば、ボイラ4の燃焼運転を停止する。そして蒸留残液をストックタンク6へ排出する(排出処理S4−1)。排出処理が終了したら、ポンプPを駆動してアルコール発酵液を投入用タンク1から蒸留装置2へ設定量分供給する(供給処理、S5)。そして、ステップS2に移行する。このように、ステップS2からS5を繰り返すことで、バッチ処理を実行できる。以上のステップS3−1の判定処理、燃焼運転停止処理、排出処理、供給処理も制御手段(不図示)でコントロールされている。
【0039】
以上の動作において、ステップS4−1で燃焼運転を停止したが、これに制限されず、停止せずに、他の燃料(補助燃料)で燃焼を継続実行するように制御できる。また、制御手段の制御でバッチ処理の自動化を実現できるが、全てのまたはいずれかの処理動作を手動操作に切り替えることもできる。また、ステップS3−1で蒸留残液量を測定したが、これに制限されず、蒸留残液中またはアルコール濃縮蒸気(ミスト)中のアルコール濃度をアルコール濃度測定手段で測定し、この測定結果が所定値未満のときに燃焼運転の停止処理を実行させるように構成できる。
【0040】
(別の処理動作フロー)
図2(b)の処理動作において、図2(a)のステップS1、S2、S5と同じ処理動作の説明を省略し、それと異なる処理動作について主に説明する。アルコール濃度測定手段で測定された蒸留装置2内の蒸留残液のアルコール濃度が、所定値未満であるか否かを判断する(S3−2)。アルコール濃度測定手段は公知の測定器を用いることができ、リアルタイムで測定できる。「所定値」は予め設定しておき、投入時のアルコール濃度の20%〜50%の範囲のいずれかの数値を設定でき、この数値範囲はアルコール濃縮率に基づいて設定できる。またボイラ4での燃焼性から設定でき、例えばアルコール濃度10%〜20%の範囲の数値を設定できる。蒸留残液のアルコール濃度が所定値未満になれば、ボイラ4の燃焼運転を補助燃料運転に切り替える。そして蒸留残液をストックタンク6へ排出する(排出処理S4−2)。
【0041】
以上の動作において、ステップS4−2で補助燃料による燃焼運転に切り替えたが、これに制限されず、燃焼運転を停止するように制御できる。また、ステップS3−2で蒸留残液のアルコール濃度を測定したが、これに制限されず、アルコール濃縮蒸気(ミスト)中のアルコール濃度をアルコール濃度測定手段で測定し、その測定結果が所定値(例えばボイラ4で燃焼可能なアルコール濃度値)未満であれば、補助燃料による燃焼運転に切り替える構成ができ、または、ステップS3−1の蒸留残液量を測定する構成もできる。
【0042】
(別実施形態)
上記実施形態は、一台の蒸留装置2を用いたバッチ運転であった。以下で説明するシステムは、2台以上の蒸留装置を並列に設置したシステムである。説明の都合上2台で説明するが、これに制限されるものではない。
【0043】
(動作フロー)
図3のフローチャートを用いて処理動作を説明する。まず、ポンプを駆動してアルコール発酵液を投入用タンクから第1、第2蒸留装置へ設定量分供給する(供給処理、S10)。なお、アルコール発酵液は、蒸留処理開始される蒸留装置に蒸留開始前までに供給されていればよい。次いで、第1蒸留装置でアルコール発酵液を蒸留し、アルコール濃縮蒸気を生成する(蒸気生成工程、S11)。第1蒸留装置を稼動することによる差圧を利用して、このアルコール濃縮蒸気がアルコール濃縮蒸気用配管を通じてボイラに送られ、ボイラで直接燃焼される(燃焼工程)。アルコール濃縮蒸気用配管には、熱交換器が設置され、アルコール濃縮蒸気の液化を抑制あるいは完全に防止している。ポンプの駆動制御、第1、第2蒸留装置の運転制御、ボイラの運転制御は不図示の制御手段で行っている。制御手段は、専用回路、ファームウエア、コンピュータおよびソフトウエア等によって構成できる。
【0044】
次いで、液量測定手段で測定された第1蒸留装置内のアルコール発酵液の蒸留残液量が、所定値未満であるか否かを判断する(S12)。蒸留残液量が所定値未満になれば、第2蒸留装置を稼動し、第2蒸留装置でアルコール発酵液を蒸留し、アルコール濃縮蒸気を生成する(蒸気生成工程、S13)。そして、第2蒸留装置を稼動することによる差圧を利用して、このアルコール濃縮蒸気がアルコール濃縮蒸気用配管を通じてボイラに送られ、ボイラで直接燃焼される(燃焼工程)。第2蒸留装置を稼動している間に、第1蒸留装置から蒸留残液をストックタンクへ排出する(排出処理、S14)。排出処理が終了したら、ポンプを駆動してアルコール発酵液を投入用タンクから第1蒸留装置へ設定量分供給する(供給処理、S15)。
【0045】
次いで、液量測定手段で測定された第2蒸留装置内のアルコール発酵液の蒸留残液量が、所定値未満であるか否かを判断する(S16)。蒸留残液量が所定値未満になれば、第1蒸留装置を稼動し、第1蒸留装置でアルコール発酵液を蒸留し、アルコール濃縮蒸気を生成する(蒸気生成工程、S17)。そして、第1蒸留装置を稼動することによる差圧を利用して、このアルコール濃縮蒸気がアルコール濃縮蒸気用配管を通じてボイラに送られ、ボイラで直接燃焼される(燃焼工程)。第1蒸留装置を稼動している間に、第2蒸留装置から蒸留残液をストックタンクへ排出する(排出処理、S18)。排出処理が終了したら、ポンプを駆動してアルコール発酵液を投入用タンクから第2蒸留装置へ設定量分供給する(供給処理、S19)。そして、ステップS12に移行する。このように、ステップS12からS19を繰り返すことで、2台の蒸留装置をそれぞれ交互にバッチ処理させて、ボイラでの燃焼を連続して行える。以上の判定処理、蒸留装置の切り替え処理、排出処理、供給処理も制御手段(不図示)でコントロールされている。
【0046】
以上の動作において、制御手段の制御で複数の蒸留装置におけるバッチ処理の連続自動化を実現できるが、全てのまたはいずれかの処理動作を手動操作に切り替えることもできる。また、ステップS12で蒸留残液量を測定したが、これに制限されず、蒸留残液中またはアルコール濃縮蒸気(ミスト)中のアルコール濃度をアルコール濃度測定手段で測定し、この測定結果が所定値未満のときに蒸留装置の切り替え処理を実行させるように構成できる。
【符号の説明】
【0047】
1 投入用タンク
2 蒸留装置
3 熱交換器
4 ボイラ
6 ストックタンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低濃度の燃焼性有機物質含有液体の熱利用方法であって、
前記低濃度の燃焼性有機物質含有液体を蒸留装置で加熱して、当該液体より高濃度の燃焼性有機物質含有蒸気を得る蒸気生成工程と、
前記蒸気生成工程で得られた前記燃焼性有機物質含有蒸気を燃焼装置の燃料に用いる燃焼工程と、を有する低濃度の燃焼性有機物質含有液体の熱利用方法。
【請求項2】
前記燃焼性有機物質含有蒸気を露点以上に維持するように、前記燃焼装置から得られる蒸気の一部を用いて前記燃焼装置へ搬送中の前記燃焼性有機物質含有蒸気を加熱する工程を有する請求項1に記載の低濃度の燃焼性有機物質含有液体の熱利用方法。
【請求項3】
前記燃焼装置から得られる蒸気の一部を前記蒸留装置の加熱に利用する構成とした請求項1または2に記載の低濃度の燃焼性有機物質含有液体の熱利用方法。
【請求項4】
前記蒸気生成工程をバッチ処理で行う請求項1から3のいずれか1項に記載の低濃度の燃焼性有機物質含有液体の熱利用方法。
【請求項5】
前記蒸気生成工程をバッチ処理で行う場合に、前記燃焼工程における燃焼燃料に補助燃料を用いる構成である請求項4に記載の低濃度の燃焼性有機物質含有液体の熱利用方法。
【請求項6】
前記蒸気生成工程において、前記蒸留装置を少なくとも2以上設置し、少なくともいずれかの蒸留装置から前記蒸気を前記燃焼装置に送るように制御する工程を有する請求項1から5のいずれか1項に記載の低濃度の燃焼性有機物質含有液体の熱利用方法。
【請求項7】
低濃度の燃焼性有機物質含有液体の熱利用システムであって、
前記低濃度の燃焼性有機物質含有液体を加熱し、当該液体より高濃度の燃焼性有機物質含有蒸気を生成する蒸留装置と、
前記蒸留装置で生成された前記燃焼性有機物質含有蒸気を燃料に用いる燃焼装置と、を有する低濃度の燃焼性有機物質含有液体の熱利用システム。
【請求項8】
前記燃焼性有機物質含有蒸気を露点以上に維持するように、前記燃焼装置から得られる蒸気の一部を用いて前記燃焼装置へ搬送中の前記燃焼性有機物質含有蒸気を加熱する加熱手段を有する請求項7に記載の低濃度の燃焼性有機物質含有液体の熱利用システム。
【請求項9】
前記燃焼装置から得られる蒸気の一部を前記蒸留装置の加熱に利用するための蒸気送り込み手段とを有する請求項7または8に記載の低濃度の燃焼性有機物質含有液体の熱利用システム。
【請求項10】
前記液体を前記蒸留装置に供給する供給手段と、
前記蒸留装置内の液残量を測定する残液量測定手段および/または前記蒸気中あるいは液残液中の燃焼性有機物質濃度を測定する濃度測定手段と、
前記蒸留装置内の液残を当該蒸留装置外に排出する排出手段と、
前記供給手段を用いて前記蒸留装置に前記液体を設定量分供給する供給処理を制御し、前記残液量測定手段および/または前記濃度測定手段による測定結果が所定レベル未満に達した場合に、前記排出手段を用いて前記液残を蒸留装置外に排出する排出処理を制御し、当該排出処理に応じて、前記燃焼装置の運転を停止または補助燃料を用いて前記燃焼装置を運転するように制御し、前記排出処理後に前記供給処理を行うように制御する制御手段と、を有する請求項7から9のいずれか1項に記載の低濃度の燃焼性有機物質含有液体の熱利用システム。
【請求項11】
前記蒸留装置を少なくとも2以上設置し、
第1蒸留装置の前記蒸気を前記燃焼装置の燃料に用いる第1燃焼処理の実行と、
第2蒸留装置の前記蒸気を前記燃焼装置の燃料に用いる第2燃焼処理の実行とを制御する制御手段を有する請求項7から9のいずれか1項に記載の低濃度の燃焼性有機物質含有液体の熱利用システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−220615(P2011−220615A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90706(P2010−90706)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(000133032)株式会社タクマ (308)
【Fターム(参考)】