説明

低表面エネルギーブロック共重合体の製造方法及び用途

低表面エネルギーブロック共重合体の製造方法を開示する。このブロック共重合体は、少なくとも2種のブロックを含み、そのそれぞれがアクリル酸単量体、メタクリル酸単量体又はそれらの混合物を重合された形態で含む。少なくとも1種のブロックは、低表面エネルギー単量体を重合された形態で含む低表面エネルギーブロックである。また、当該ブロック共重合体を形成させるのに有用な低表面エネルギーマクロ開始剤も開示する。このブロック共重合体は、ニトロキシド仲介制御フリーラジカル重合によって製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2005年12月16日に出願された米国仮特許出願第60/750,870号について優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、ブロック共重合体に関する。特に、本発明は、低い表面エネルギーのブロックを有する共重合体及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
バルク重合体の表面特性を改変して、その表面に、当該バルク重合体には本来備わっていない特定の特性(例えば、透過性、湿潤性、彩色適性、耐溶剤性、接着剤親和性、親水性、疎水性、生物学的適合性、防汚性及び耐汚染性など)を付与することが望ましい場合が多い。これらの特性は、このバルク重合体の機械的性能に関与するものとは異なる特徴を要することが多いが、これは、単一の重合体を使用して所望の表面とバルク特性とを同時に達成するのを困難なものにする。
【0004】
表面改質の一般的な手段は、予備形成材料の官能化によるものである。しかしながら、これは、通常、特殊な装置を必要とし、重合体製造方法に少なくとも1回の追加工程を加え、不完全な官能化のため部分的にしか成功しないかもしれず、また、反応生成物及び未反応の出発材料を除去するために表面改質後に高価な処理を必要とし得る。
【0005】
自己組織化による表面改質は、これらの問題を回避するために効果的な方法である。この方法において、低表面エネルギーブロックを含有する共重合体は、当該低表面エネルギーブロックが表面に存在した規則的な微細構造へと自己分離する。この方法は魅力的である。というのは、バルク重合体の特性は、低表面エネルギー単位を含有する共重合体を少量添加したところで、実質的には変化しないからである。
【0006】
低表面エネルギー単量体を含有する共重合体は、慣用のフリーラジカル技術によって製造されてきた。しかしながら、共重合体の重合体組成と分子量分布を制御することは困難である。そのため、この方法で製造された共重合体は、広い分子量分布を有しやすく、かつ、かなりの量の高分子量共重合体と非常に低い分子量の共重合体とを含有しやすいが、これは、得られる組成物に望ましくない特性を与え得る。さらに、低表面エネルギー単量体単位は共重合体鎖に沿ってランダムに分布するため、これらのものがバルク重合体の表面で組織化するのは困難である。さらに、良好な表面被覆を達成するためには、高レベルの低表面エネルギー単量体単位が必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
低表面エネルギーブロックを含有する共重合体は、様々な方法、例えば、リビング陰イオン重合、原子移動重合及び基移動重合によって製造されてきたが、これらの方法のいずれにも欠点がある。いくつかの方法は、限られた数の単量体しか使用できず、一般に多種多様な単量体には適用できない。いくつかの方法は、時間のかかるものであり、かつ、特に大規模に実施することは困難である。というのは、これらの方法は、重合条件を厳格に制御する必要があり及び/又は効率的な重合のためには極めて純粋な試薬が必要だからである。いくつかは、生成物の分子量分布及び/又は組成について制御を不十分なものにし、また、いくつかは、重合体の後処理によって除去されなければならない、望ましくない副生成物の一因となる。従って、これらの欠点を有しない低表面エネルギーブロックを含有する共重合体の製造方法に対する要望がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概略
一態様では、本発明は、少なくとも2個のブロックを含むブロック共重合体の製造のための制御方法であって、該共重合体が少なくとも1個の低表面エネルギーブロックを含み、しかも、少なくとも2個のブロックが、アクリル酸単量体、メタクリル酸単量体又はそれらの混合物を、重合された形態で含むものである。一態様では、本発明は、第1ブロックが第2ブロックに結合してなるブロック共重合体の製造方法であって、次の工程:
(a)該第1ブロックを、ニトロキシドの存在下で第1単量体を重合させることによって製造し;
(b)該第2ブロックを、ニトロキシドの存在下で第2単量体を重合させることによって製造すること
を含み、ここで、
該第1単量体及び該第2単量体がそれぞれアクリル酸単量体、メタクリル酸単量体又はそれらの混合物を含み;しかも
該第1単量体若しくは該第2単量体のいずれかが低表面エネルギー単量体を含み、又は、該第1単量体及び該第2単量体の両方がそれぞれ低表面エネルギー単量体を含む、前記製造方法である。
【0009】
この方法は、単一の反応容器内で実施できる、すなわち、少なくとも1個のブロックが低表面エネルギーブロックであるブロック共重合体の「ワンポット」合成である。
【0010】
さらなる態様では、本発明は、本発明の方法によって製造されたブロック共重合体である。別の態様では、本発明は、少なくとも2個のブロックを含むブロック共重合体であって、該重合体が少なくとも1個の表面エネルギーブロックを含み、しかも少なくとも2個のブロックが、アクリル酸単量体、メタクリル酸単量体又はそれらの混合物を、重合された形態で含むものである。さらに別の態様では、本発明は、ニトロキシドの存在下でのフリーラジカル重合のマクロ開始剤として有用な低表面エネルギー重合体を製造するための制御方法であって、該重合体がニトロキシド末端基を含有する、前記方法である。さらに別の態様では、本発明は、該開始剤が低表面エネルギーアルコキシアミンである重合体の製造方法である。本発明のさらに別の態様では、本発明は、低表面エネルギー開始剤を使用して製造された重合体である。
【0011】
さらに別の態様では、本発明は、ブロック共重合体を含む重合体混合物である。さらに別の態様では、当該ブロック共重合体は、非低表面エネルギー重合体、例えば、低表面エネルギーブロックを含まない重合体と混合される。このブロック共重合体は、得られた重合体混合物の表面に移動又は「出現」し、得られた重合体混合物の表面特性を改変させることができる。別の態様では、本発明は、ブロック共重合体を表面改質剤として使用することである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
発明の詳細な説明
文脈が特に示さない限り、本明細書及び特許請求の範囲において、低表面エネルギー単量体、弗素含有単量体、珪素含有単量体、非低表面エネルギー単量体、第1単量体、第2単量体、アクリル酸単量体、メタクリル酸単量体、フリーラジカル重合性単量体、開始剤、バルク重合体、マクロ開始剤、ニトロキシド、アルコキシアミンという用語及び同様の用語には、このような物質の混合物も含まれる。低表面エネルギーブロックは、低表面エネルギー単量体のフリーラジカル重合により誘導される単位、典型的には弗素含有単量体及び/又は珪素含有単量体のフリーラジカル重合により誘導される単位を含む。非低表面エネルギー重合体は、低表面エネルギー単量体から誘導される単位を本質的に含まず、また、低表面エネルギー単量体の重合により誘導される単位を完全に含まなくてもよい。特に明示しない限り、パーセントは全て重量パーセントであり。温度は全て摂氏度(セルシウス度)である。
【0013】
一態様では、本発明は、少なくとも2個のブロックを含むブロック共重合体の制御製造方法であって、該共重合体が少なくとも1個の低表面エネルギーブロックを含み、しかも少なくとも2個のブロックが、アクリル酸単量体、メタクリル酸単量体又はそれらの混合物を、重合された形態で含むものである。低表面エネルギーブロックは、低表面エネルギー単量体のフリーラジカル重合により誘導される単位、典型的には弗素含有単量体及び/又は珪素含有単量体のフリーラジカル重合により誘導される単位を含む。非低表面エネルギーブロックは、低表面エネルギー単量体を本質的に含まない。
【0014】
ブロック共重合体は、少なくとも第1ブロック及び第2ブロックを含む。当該第1ブロックは、ニトロキシドの存在下で第1単量体を重合させることによって製造される。当該第2ブロックは、ニトロキシドの存在下で第2単量体を重合させることによって製造される。当該第1単量体及び/又は第2単量体のいずれかは、2種以上の単量体の混合物であることができる。当該第1単量体及び/又は第2単量体が単量体の混合物である場合には、該混合物中の単量体をランダムに共重合したり、勾配的に共重合したりすることができる。第1ブロック又は第2ブロックのいずれかが低表面エネルギーブロックであってもよいし、又は第1ブロックと第2ブロックの両方が低表面エネルギーブロックであってもよい。
【0015】
低表面エネルギーブロックは、1種以上の低表面エネルギー単量体、典型的には弗素化単量体若しくは弗素化単量体の混合物及び/又はシリル含有単量体若しくはシリル含有単量体の混合物を、重合された形態で含む。低表面エネルギーブロックは、低表面エネルギー単量体のみを重合された形態で含んでいてもよいし、又は非低表面エネルギー単量体を含んでいてもよい。また、当該第1単量体及び/又は第2単量体は、1種以上のフリーラジカル重合性の非アクリル酸及び非メタクリル酸単量体、例えば酢酸ビニル、ビニルメチルケトン及びビニルメチルエーテルのようなビニル単量体;スチレン及び置換スチレン、例えば、α−メチルスチレン、2−、3−及び4−メチルスチレン、2−、3−及び4−クロルスチレン及びスチレンスルホン酸並びにその塩、例えば、スチレンスルホン酸ナトリウム;アクリロニトリル;並びにメタクリロニトリルを含むこともできる。
【0016】
低表面エネルギーブロックを含有する共重合体は、ニトロキシドが仲介する制御フリーラジカル重合によって製造できる。所望ならば、この製造は、単一の反応容器内で実施できる。すなわち、この方法は、ブロック共重合体の「ワンポット」合成である。ニトロキシドが仲介する制御フリーラジカル重合技術は、可逆的停止反応によりフリーラジカル重合を制御するためにニトロキシド系メディエーターを使用することを伴い、それによって、規定の構造を有する配列共重合体(ブロック共重合体を含む)を製造することができる。ニトロキシドが仲介する制御フリーラジカル重合による重合体の製造及び適当なニトロキシドの製造については、例えば、E.Rizzardo,Chem.Aust.,1987,54(1月〜2月),32;Solomon,米国特許第4,581,429号;Georges,米国特許第5,322,912号;Georges,米国特許第5,401,804号;Frechet,米国特許第6,663,855号;Couturier,米国特許第6,700,007号;Gillet,米国特許第6,624,322号;Gillet,米国特許第6,538,141号;Couturier,米国特許第6,569,967号;Couturier,米国特許第6,495,720号;Bertin,米国特許第6,346,589号;Senninger,米国特許第6,509,328号;Callais,米国特許第6,762,263号及びCouturier,米国特許出願公開第2005/0065119号に開示されている;これら全ての開示は、引用によってここに含めるものとする。また、特に、Grimaldi,米国特許第6,255,448号;Guerret,米国特許第6,646,079号;及びGuerret,米国特許第6,657,043号に開示されている;これらの開示は、全て引用によってここに含めるものとする。
【0017】
共重合体を形成している間中、この共重合体は「リビング重合体」である。ニトロキシドは末端基として保持されるので、このものは分離してフリーラジカルを形成することができる。この連鎖は、これが再度可逆的にニトロキシド末端化するまで1個以上の単量体単位を付加することができる。この制御機構は、次式によって表すことができる:
【化1】

(式中、Mは重合性単量体であり、Pは成長しつつある重合体鎖を表し、Kdeact、kact及びkpは、それぞれ、失活、活性化及び成長反応についての速度定数である。)。
【0018】
この制御の鍵は、速度定数Kdeact、kact及びkpが握っている(例えば、T.Fukuda及びA.Goto,Macromolecules1999,32,618−623)。kdeact/kact比が高すぎる場合には、その重合はブロックされるのに対し、kp/kdeact比が高すぎるか又はkdeac/kactが低すぎる場合には、重合は制御されない。β−置換アルコキシアミンは、いくつかのタイプの単量体の重合を効率的に開始及び制御するのに対し、TEMPO[2’,2’,6’,6’−テトラメチル−1’−ピペリジルオキシ]系開始剤、例えば(2’,2’,6’,6’−テトラメチル−1’−ピペリジルオキシ)メチルベンゼンは、スチレン及びスチレン誘導体の重合しか制御しないことが見出された(P.Tordo外,Polym.Prep.1997,38,729-730;and C .J.Hawker外,Polym.Mater.Sci.Eng.1999,80,90-91)。
【0019】
重合方法が制御され、しかも重合体がリビング重合体であるため、この方法は、各ブロックの組成及び鎖長が様々な単量体又は単量体の混合物の重合媒体への連続的な導入によって厳密に制御されたブロック共重合体を製造することを可能にする。さらに、この重合のリビングという性質によって、マルチモーダル共重合体を製造することが可能になる。他の方法によって得られる重合体よりもよく規定され、かつ、多様な重合体を従来の反応器で製造することができる。さらに、この方法の活発な性質のため、官能化単量体、例えば、ヒドロキシル、カルボン酸、グリシジル及び/又はアミノ基を有する単量体を共重合体に直接取り入れることができる。これらの官能基は、重合後の改質を必要としないが、ただし、所望ならば重合後に改質されてもよい。
【0020】
一方法では、フリーラジカル重合又は共重合は、対象とする1種以上の単量体について通常の条件下で実施されるが、ただし、β−置換された安定なフリーラジカルを混合物に添加する点で相違する。当該1種以上の単量体によっては、従来のフリーラジカル開始剤を重合混合物に導入することも必要となり得る。
【0021】
1分子中で制御剤と開始剤を結合させるアルコキシアミンを開始剤として使用して重合体及び共重合体を製造することができる。アルコキシアミンは、熱により2種のフリーラジカルに分けられるが、そのうちの一つがフリーラジカル重合の開始剤として作用する炭素中心ラジカルであり、そのため別個のフリーラジカル開始剤を使用する必要はない。他方のフリーラジカルは、安定なフリーラジカルであるニトロキシドであり、これが重合を可逆的に停止させることによって重合を制御する。アルコキシアミンは、フリーラジカル重合を受けることができる炭素−炭素二重結合を含む任意の単量体の重合及び共重合のために使用できる。また、エポキシ及びヒドロキシのような官能性単量体並びに酸含有単量体を含むフリーラジカル重合性単量体も、この方法によって容易に重合される。
【0022】
有用な安定型ニトロキシドフリーラジカルは、次の一般構造を有する:
【化2】

(式中、1価のRL基は、15を超える分子量を有する。)。この1価のRL基は、ニトロキシドの窒素原子に対してβ位にある。ニトロキシドの炭素原子及び窒素原子の残りの原子価は、水素又は炭化水素基のような様々な基、例えば置換又は非置換アルキル、アリール又はアルキル基であって1〜10個の炭素原子を有するものに結合できる。また、このβ位は、例えば、水素にも結合できる。この炭素原子及び窒素原子は、2価の基を介して結合して環を形成することができる。しかしながら、該炭素原子及び窒素原子の残りの原子価は、好ましくは、1価の基にそれぞれ結合する。RLは、好ましくは30を超える分子量を有する。RLは、例えば、40〜450の分子量を有することができる。RLは、例えば、ホスホリル基、例えば:
−P(O)Rgh
(式中、Rg及びRhは、同一のもの又は異なるものであり、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アリール、アラルキルオキシ、ペルフルオルアルキル及びアラルキル基から選択され、かつ、1〜20個の炭素原子を有することができる。)を有することができる。また、Rg及び/又はRhは、ハロゲン原子、例えば、塩素又は臭素又は弗素又は沃素原子であることもできる。また、RLは、少なくとも1個の芳香族環、例えば、1〜4個の炭素原子のアルキル基で置換されていてよいフェニル基又はナフチル基を含むこともできる。
【0023】
この安定型フリーラジカルは、例えば: t−ブチル−1−フェニル−2−メチルプロピルニトロキシド、t−ブチル−1−(2−ナフチル)−2−メチルプロピルニトロキシド、t−ブチル−1−ジエチルホスホノ−2,2−ジメチルプロピルニトロキシド、t−ブチル−1−ジベンジルホスホノ−2,2−ジメチルプロピルニトロキシド、フェニル−1−ジエチルホスホノ−2,2−ジメチルプロピルニトロキシド、フェニル−1−ジエチルホスホノ−1−メチルエチルニトロキシド、1−フェニル−2−メチルプロピル−1−ジエチルホスホノ−1−メチルエチルニトロキシドであることができる。特に、一つの有用な安定フリーラジカルは、N−t−ブチル−N−[1−ジエチルホスホノ(2,2−ジメチルプロピル)]ニトロキシド(DEPN)であって、次の構造を有するものである:
【化3】

【0024】
DEPN基は、イソ酪酸基又はそのエステル若しくはアミドに結合できる。有用な開始剤は、次の構造を有し、SGIがDEPN基であるiBA−DEPN開始剤である。
【化4】

iBA−DEPN開始剤は約25℃よりも低いと安定であるが、25℃以上に加熱すると、2種のフリーラジカルに分離する。その一方は重合を開始させ、他方のSG1ニトロキシドは重合を可逆的に終了させる。SG1ニトロキシドは、約25℃を超えるとメタクリレートから解離し、約90℃を超えるとアクリレートから解離する。
【0025】
他の有用な開始剤としては、SG1C(CH32CO2Hのエステル及びアミドが挙げられる。エステル又はアミドを使用する場合には、これらのものは、好ましくはそれぞれ低級アルキルアルコール又はアミン、例えば、メチルエステルのSG1C(CH32CO2CH3から誘導される。また、多官能性エステル、例えば1,6−ヘキサンジオール[SG1C(CH32CO22(CH26]のジエステルも使用できる。
【0026】
典型的には、一官能性アルコキシアミンを使用してABブロック共重合体を製造する。二官能性開始剤を使用して対称A−B−Aブロック共重合体を製造することができる。しかしながら、トリブロックは、まず、一官能性アルコキシアミンとジアクリレート(例えば、ブタンジオールジアクリレート)とを反応させて二官能性アルコキシアミンを生じさせることにより、一官能性アルコキシアミンから作ることもできる。さらに官能価の高い開始剤、例えば、ペンタエリトリット[C(CH2OCOC(R)=CH24](式中、Rは水素又はメチルである。)のテトラアクリレート又はテトラメタクリレートエステルを使用して星形共重合体を製造することができる。これらの反応のいずれも、さらなる開始源(例えば、有機過酸化物)を添加する必要はないが、場合によっては、過酸化物又は他の従来のフリーラジカル開始剤を反応の終了時に使用して残留単量体を「追い払」ってもよい。
【0027】
共重合は、当業者に周知の条件下で、対象の単量体、アルコキシアミン開始剤及び所望の生成物(例えば、その所望の分子量を含む)を考慮に入れて実施できる。典型的には、アルコキシアミンの混合物又はニトロキシドの混合物を使用する必要はない。つまり、重合又は共重合は、例えば、塊の状態、溶液の状態、エマルジョンの状態又は懸濁液の状態において、約0℃〜約250℃の範囲、好ましくは約25℃〜約150℃の範囲の温度で実行できる。該開始剤は、典型的には、反応混合物の約0.005重量%〜約5重量%を占める。
【0028】
「配列」ブロック共重合体は、(1)単量体又は単量体の混合物をアルコキシアミンの存在下に約25℃〜約250℃の範囲の温度、好ましくは約25℃〜約150℃の範囲の温度で重合させ;(2)この温度を低下させ、そして、随意に残留単量体を蒸発させ;(3)該反応混合物に新たな単量体の混合物を導入し;続いて(4)この温度を上昇させてこの新たな単量体又は単量体の混合物を重合させることによって製造できる。この方法を繰り返して追加のブロックを形成させることができる。この方法によって作られた重合体は、ニトロキシド末端基を有するであろう。これらのものは、重合体鎖の末端上に残留してもよいし、又は追加の処理工程によって除去してもよい。
【0029】
本発明の一態様では、低表面エネルギーアルコキシアミンを使用して重合体を形成させることができる。該重合体は、単独重合体、ランダム共重合体、グラジエント共重合体又はブロック共重合体であることができる。本発明のこの態様において開始剤として有用なアルコキシアミンとしては、例えば、フルオルアルキル基を有するアルコキシアミン、例えば、SG1C(CH32CO2Hを部分弗素化アルキルアルコールでエステル化することによって形成されたエステルが挙げられる。好ましくは、これらのエステルは、長鎖(すなわち、≧C8)部分弗素化アルコール及びそれらの混合物、例えば1H,1H−ペルフルオルドデシルエステルSG1C(CH32CO2CH2(CF210CF3又は1H,1H,2H,2H−ペルフルオルドデシルエステルSG1C(CH32CO2(CH22(CF29CF3から形成される。一般構造:RfCH2CH2OH(ここで、Rfは、一般構造:−(CF2nFのフルオルアルキル基であり、nは、典型的には 2〜10の整数である。)の部分弗素化アルコール(フルオルアルキルエタノール)は、デュポン社(米国デラウェア州ウィルミントン)からZONYL(商標)BAフルオルアルキルアルコールとして市販されている。このようなアルコキシアミンを開始剤として使用して、低表面エネルギー官能基で末端官能化又は「末端化」された材料を製造することができる。低表面エネルギー基を含有する、アルコキシアミンの開始剤部分は、重合後に重合体鎖の末端上に残る。
【0030】
ニトロキシド末端基を有する重合体又は共重合体と非低表面エネルギー重合体、例えばポリプロピレンのようなポリオレフィンとを混合し、そして、例えば、溶融処理によって加熱する場合には、そのニトロキシド末端基は失われ、当該重合体又は共重合体は、非低表面エネルギー重合体にグラフトする。ニトロキシド末端基を有する重合体は、例えば、低表面エネルギー単量体を含有する重合体又はブロック共重合体及び低表面エネルギー官能基で末端官能化されていてもされていなくてもよい重合体又はブロック共重合体であることができる。
【0031】
低表面エネルギー単量体は、表面エネルギーの低い重合体を生成する単一の単量体又は単量体の混合物であることができる。このような単量体としては、例えば、弗素含有アクリレート及びメタクリレート単量体、珪素含有アクリレート及びメタクリレート単量体並びにそれらの混合物が挙げられる。アクリレート及び/又はメタクリレート単量体に加えて、アクリレート又はメタクリレート単量体ではない単量体を使用してもよいが、ただし、該第1単量体及び該第2単量体は、それぞれ、少なくとも1種のアクリレート又はメタクリレート単量体を含むことを条件とする。本発明の一態様では、第1単量体及び/又は第2単量体は、アクリレート又はメタクリレートのいずれかではないいかなる単量体も含有しない。
【0032】
弗素含有アクリレート及びメタクリレート単量体としては、例えば、アクリル酸2−フルオルエチル及びメタクリル酸2−フルオルエチル;アクリル酸1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオルイソプロピル及びメタクリル酸1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオルイソプロピル;一般構造:CF3(CF2nCH2OCOC(R)=CH2(式中、Rは水素又はメチルであり、nは典型的には0〜12である。)のアクリル酸1,1−ジヒドロペルフルオルアルキル及びメタクリル酸1,1−ジヒドロペルフルオルアルキル、例えば、アクリル酸2,2,2−トリフルオルエチル及びメタクリル酸2,2,2−トリフルオルエチル、アクリル酸2,2,3,3,3−ペンタフルオルプロピル及びメタクリル酸2,2,3,3,3−ペンタフルオルプロピル、アクリル酸1H,1H−ヘプタフルオルブチル及びメタクリル酸1H,1H−ヘプタフルオルブチル、アクリル酸1H,1H−ペルフルオルペンチル及びメタクリル酸1H,1H−ペルフルオルペンチル、アクリル酸1H,1H−ペルフルオルヘキシル及びメタクリル酸1H,1H−ペルフルオルヘキシル、アクリル酸1H,1H−ペルフルオルオクチル及びメタクリル酸1H,1H−ペルフルオルオクチル、アクリル酸1H,1H−ペルフルオルデシル及びメタクリル酸1H,1H−ペルフルオルデシル、アクリル酸1H,1H−ペルフルオルドデシル及びメタクリル酸1H,1H−ペルフルオルドデシル;一般構造:CF3(CF2n'(CH22OCOC(R)=CH2(式中、Rは水素又はメチルであり、n’は、典型的には、0〜11である。)のアクリル酸1,1,2,2−テトラヒドロペルフルオルアルキル及びメタクリル酸1,1,2,2−テトラヒドロペルフルオルアルキル、例えば、アクリル酸3,3,4,4,4−ペンタフルオルブチル及びメタクリル酸3,3,4,4,4−ペンタフルオルブチル、アクリル酸1H,1H,2H,2H−ペルフルオルヘキシル、メタクリル酸1H,1H,2H,2H−ペルフルオルヘキシル、アクリル酸1H,1H,2H,2H−ペルフルオルオクチル、メタクリル酸1H,1H,2H,2H−ペルフルオルオクチル、アクリル酸1H,1H,2H,2H−ペルフルオルデシル及びメタクリル酸1H,1H,2H,2H−ペルフルオルデシル、アクリル酸1H,1H,2H,2H−ペルフルオルドデシル及びメタクリル酸1H,1H,2H,2H−ペルフルオルドデシル;一般構造:CHF2(CF2n"(CH22OCOC(R)=CH2(式中、Rは水素又はメチルであり、n”は、典型的には、0〜12である。)のアクリル酸1,1,Ω−トリヒドロペルフルオルアルキル及びメタクリル酸1,1,Ω−トリヒドロペルフルオルアルキル、例えば、アクリル酸2,2,3,3−テトラフルオルプロピル及びメタクリル酸2,2,3,3−テトラフルオルプロピル、アクリル酸1H,1H,5H−ペルフルオルペンチル及びメタクリル酸1H,1H,5H−ペルフルオルペンチル、アクリル酸1H,1H,7H−ペルフルオルヘプチル及びメタクリル酸1H,1H,7H−ペルフルオルヘプチル、アクリル酸1H,1H,9H−ペルフルオルノニル及びメタクリル酸1H,1H,9H−ペルフルオルノニル、アクリル酸1H,1H,11H−ペルフルオルウンデシル及びメタクリル酸1H,1H,11H−ペルフルオルウンデシル;アクリル酸2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオルブチル及びメタクリル酸2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオルブチル、アクリル酸ペルフルオルシクロヘキシルメチル及びメタクリル酸ペルフルオルシクロヘキシルメチル、アクリル酸3−(トリフルオルメチル)ベンジル及びメタクリル酸3−(トリフルオルメチル)ベンジル、アクリル酸ペンタフルオルフェニル及びメタクリル酸ペンタフルオルフェニル;アクリル酸ペンタフルオルベンジル及びメタクリル酸ペンタフルオルベンジル;アクリル酸ペンタフルオルベンジル及びメタクリル酸ペンタフルオルベンジル;並びにそれらの混合物が挙げられる。アクリレート又はメタクリレート単量体ではない弗素含有単量体としては、例えば、弗素含有スチレン、例えば、2−フルオルスチレン、3−フルオルスチレン、4−フルオルスチレン、2−トリフルオルメチルスチレン、3−トリフルオルメチルスチレン、4−トリフルオルメチルスチレン及びペンタフルオルスチレン;並びにそれらの混合物が挙げられる。
【0033】
珪素含有アクリレート及びメタクリレート単量体としては、例えば、メタクリル酸(フェニルジメチルシリル)メチル(メタクリルオキシメチルフェニルジメチルシラン);一般構造:(R’)3Si(CH2mOCOC(R)=CH2(式中、Rは水素又はメチルであり、R’は1〜5個の炭素原子のアルキル基であり、mは0〜6である。)のアクリル酸トリアルキルシリル及びメタクリル酸トリアルキルシリル、例えば、アクリル酸トリメチルシリル(アクリルオキシトリメチルシラン)及びメタクリル酸トリメチルシリル(メタクリルオキシトリメチルシラン)、アクリル酸トリエチルシリル及びメタクリル酸トリエチルシリル、アクリル酸トリ(イソプロピル)シリル及びメタクリル酸トリ(イソプロピル)シリル、アクリル酸トリ−n−ブチルシリル及びメタクリル酸トリ−n−ブチルシリル、アクリル酸トリメチルシリルメチル(アクリルオキシメチルトリメチルシラン)及びメタクリル酸トリメチルシリルメチル(メタクリルオキシメチルトリメチルシラン)、アクリル酸トリ(イソプロピル)シリルメチル及びメタクリル酸トリ(イソプロピル)シリルメチル、アクリル酸トリ−n−ブチルシリルメチル及びメタクリル酸トリ−n−ブチルシリルメチル、アクリル酸2−(トリメチルシリル)エチル及びメタクリル酸2−(トリメチルシリル)エチル、アクリル酸3−(トリメチルシリル)プロピル及びメタクリル酸3−(トリメチルシリル)プロピル;一般構造:(R’O)3Si(CH2m'OCOC(R)=CH2(式中、Rは水素又はメチルであり、R”は1〜5個の炭素原子のアルキル基であり、m’は0〜6である。)のアクリル酸トリアルコキシシリル及びメタクリル酸トリアルコキシシリル、例えば、アクリル酸2−(トリメトキシシリル)エチル及びメタクリル酸2−(トリメトキシシリル)エチル、アクリル酸3−(トリメトキシシリル)プロピル及びメタクリル酸3−(トリメトキシシリル)プロピル、アクリル酸3−(トリエトキシシリル)プロピル及びメタクリル酸3−(トリメトキシシリル)プロピル、アクリル酸3−(トリ−n−プロポキシシリル)プロピル及びメタクリル酸3−(トリ−n−プロポキシシリル)プロピル、アクリル酸3−(トリイソプロポキシシリル)プロピル及びメタクリル酸3−(トリイソプロポキシシリル)プロピル、アクリル酸3−(トリ−n−ブトキシシリル)プロピル及びメタクリル酸3−(トリ−n−ブトキシシリル)プロピル、アクリル酸4−(トリメトキシシリル)ブチル及びメタクリル酸4−(トリメトキシシリル)ブチル、アクリル酸5−(トリメトキシシリル)ペンチル及びメタクリル酸5−(トリメトキシシリル)ペンチル、アクリル酸6−(トリメトキシシリル)ヘキシル及びメタクリル酸6−(トリメトキシシリル)ヘキシル;並びにそれらの混合物が挙げられる。珪素含有非アクリレート又はメタクリレート単量体としては、例えば、ビニルフェニルジメチルシラン、フェニルビニルジメトキシシラン、ビニル(トリフルオルメチル)ジメチルシラン、ビニルトリス−t−ブトキシシラン、ジメチルビニルメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニル−t−ブチルジメチルシラン、ビニルトリメトキシシラン及びビニル末端ポリ(ジメチルシロキサン);並びにそれらの混合物といったビニル化合物が挙げられる。
【0034】
低表面エネルギーブロックを形成させるためには、表面エネルギーの低い重合体を形成させる単量体(低表面エネルギー単量体)を単独で使用することができ、或いは、当該単量体を表面エネルギーの低い重合体を形成させる1種以上の他の単量体と混合することができ及び/又は非低表面エネルギーを有する重合体を形成させない1種以上の単量体(非低表面エネルギー単量体)、例えばニトロキシドが仲介する制御フリーラジカル重合によって重合でき、かつ、低い表面エネルギーを有する単独重合体を形成させない任意の単量体又は単量体の混合物と混合させることができる。この低表面エネルギーブロックは、少なくとも1種の低表面エネルギー単量体を重合形態で(すなわち、低表面エネルギー単量体から誘導される少なくとも1個の単位)含む。好ましくは、この低表面エネルギーブロックは、重合された形態で、約5重量%〜約100重量%の低表面エネルギー単量体、より好ましくは約10重量%〜約100重量%の低表面エネルギー単量体、さらに好ましくは約25重量%〜約100重量%の低表面エネルギー単量体、さらに好ましくは約50重量%〜約100重量%の低表面エネルギー単量体を含む。また、低表面エネルギーブロックは、約90重量%〜約100重量%の低表面エネルギー単量体又は約100重量%の低表面エネルギー単量体を含むこともできる。
【0035】
多数の非低表面エネルギー単量体が当業者に知られている。アクリレート及びメタクリレート単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、それらの塩、エステル、無水物及びアミド並びにそれらの混合物が挙げられる。当該塩は、コモンメタル、アンモニウム又は置換アンモニウム対イオン、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム及びテトラメチルアンモニウムのうち任意のものから誘導できる。エステルは、C1〜40直鎖、C3〜40分岐鎖又はC3〜40炭素環式アルコールから誘導できる;約2個〜約8個の炭素原子及び約2個〜約8個のヒドロキシル基を有する多価アルコール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン及び1,2,6−ヘキサントリオールから誘導できる;アミノアルコール、例えば、アミノエタノール、ジメチルアミノエタノール及びジエチルアミノエタノール並びにそれらの四級化誘導体から誘導できる;又はアルコールエーテル、例えば、メトキシエタノール及びエトキシエタノールから誘導できる。典型的なエステルとしては、例えば、アクリル酸メチル及びメタクリル酸メチル、アクリル酸エチル及びメタクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル及びメタクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル及びメタクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル及びメタクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル及びメタクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル及びメタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル及びメタクリル酸オクチル、アクリル酸デシル及びメタクリル酸デシルが挙げられる。典型的なヒドロキシル又はアルコキシ含有単量体としては、例えば、アクリル酸2−ヒドロキシエチル及びメタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル及びメタクリル酸ヒドロキシプロピル、グリセリルモノアクリレート及びグリセリンモノメタクリレート、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル及びメタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2,3−ジヒドロキシプロピル及びメタクリル酸2,3−ジヒドロキシプロピル、アクリル酸2−メトキシエチル及びメタクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸2−エトキシエチル及びメタクリル酸2−エトキシエチル並びにそれらの混合物が挙げられる。当該アミドは、非置換、N−アルキル若しくはN−アルキルアミノ一置換、又はN,N−ジアルキル若しくはN,N−ジアルキルアミノ二置換であることができ、ここで、当該アルキル又はアルキルアミノ基は、C1〜40(好ましくはC1〜10)直鎖、C3〜40分岐鎖又はC3〜40炭素環式基であることができる。さらに、アルキルアミノ基は、四級化されていてよい。典型的なアミドとしては、例えば、アクリルアミド及び メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド及びN−メチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド及びN,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジ−n−ブチルアクリルアミド及びN,N−ジ−n−ブチルメタクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド及びN−t−ブチルメタクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド及びN−フェニルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド及びN,N−ジメチルアミノエチルメタクリルアミドが挙げられる。典型的なスチレンとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩並びに様々な環置換スチレン、例えば、2−、3−及び4−メチルスチレン、2−、3−及び4−クロルスチレン及び4−ビニル安息香酸が挙げられる。典型的なビニル化合物としては、例えば、酢酸ビニル、酪酸ビニル、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、メチルビニルエーテル、メチルビニルケトン、ビニルピリジン、ビニルピリジン−N−オキシド、ビニルフラン、ビニルカプロラクタム、ビニルアセトアミド及びビニルホルムアミドが挙げられる。典型的な重合性ジエンとしては、例えば、ブタジエン及びイソプレンが挙げられる。典型的なアリル化合物としては、例えば、アリルアルコール、クエン酸アリル及び酒石酸アリルが挙げられる。他の単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、マレイン酸、マレイン酸無水物及びその半エステル、フマル酸、イタコン酸、イタコン酸無水物及びその半エステルが挙げられる。これらの非低表面エネルギー単量体を単独で使用して又は1種以上の他の非表面エネルギー単量体と混合して非低表面エネルギーブロックを形成させることができる。
【0036】
ニトロキシド仲介重合を使用して、ジブロック共重合体、トリブロック共重合体、マルチブロック共重合体、星形重合体、櫛形重合体、グラジエント重合体及びブロック状構造を有する他の重合体を含めたブロック共重合体を形成させることができる。マルチブロック及びトリブロック共重合体は、化学的に区別される2種のブロック、例えば、A−B−Aトリブロック又は式(A−B)nのマルチブロック(ここで、nは>1であり、A及びBは、化学的に区別可能なブロックを表す。)で表されるものからなることができる。或いは、これらのものは、化学的に区別可能な3種以上のブロック、例えば、A−B−Cトリブロック又はA−B−C−Dマルチブロック共重合体を含有することができる。星形重合体は、3〜12個のアーム、より好ましくは3〜8個のアームを含有することができ、また、これらのアームは、ジブロック、トリブロック又はマルチブロック共重合体からなることができる。それぞれのブロックは、単一の単量体から誘導される重合単量体単位(「ホモブロック」)、ランダムに分布した2種以上の単量体から誘導される重合単量体単位(「ランダムブロック」)又はブロック全体にわたって、一方の単位の濃度が増加しかつ他方の単位の濃度が減少した、2種以上の単量体から誘導される重合単量体単位(「グラジエントブロック」)を含むことができる。
【0037】
ブロック共重合体は、制御された分子量及び分子量分布を有する。好ましくは、この共重合体の重量平均分子量(Mw)は、1,000〜1,000,000g/mol、最も好ましくは5,000〜300,000g/molである。重量平均分子量対数平均分子量の比(Mw/Mn)によって測定されるときの分子量分布、すなわち多分散度は、一般に、4.0未満、好ましくは2.5以下、より好ましくは2.0以下である。本発明の方法により、1.5以下及び1.3以下の多分散度を得ることができる。
【0038】
さらに別の態様では、本発明は、フリーラジカル重合のマクロ開始剤として有用な低表面エネルギー重合体をニトロキシドの存在下で製造するための制御方法であり、ここで、当該重合体はニトロキシド末端基を含有するものである。低表面エネルギー単量体又は低表面エネルギー単量体の混合物の重合により、ニトロキシドを末端基とする低表面エネルギー重合体が生じる。当該単位の少なくとも約50重量%、好ましくは約90重量%、より好ましくは約100重量%が低表面エネルギー単量体から誘導される。この重合体は、フリーラジカル重合のマクロ開始剤として使用できる。他の単量体、例えば、非低表面エネルギー単量体は、マクロ開始剤としてこの重合体を使用して重合できる。アルコキシアミン開始剤は、部分弗素化アルキル基のような低表面エネルギー基を有することができるが、ただし、このことは必須ではない。好適には、当該マクロ開始剤は、少なくとも1,000g/mol、好ましくは少なくとも2,000g/mol、より好ましくは少なくとも4,000g/molの分子量(Mw)を有する。このマクロ開始剤を単離したり、「ワンポット」合成で使用したりすることができる。
【0039】
産業上の利用可能性
これらの共重合体は、添加量で使用したり、バルク材料として使用したりすることができる。低表面エネルギーブロックを含有する本発明のブロック共重合体は、様々な用途、例えば、相溶化剤、発泡剤、界面活性剤、低表面エネルギー添加剤(染色防止、汚損防止又は粘着防止用途、潤滑又は被覆用途及び防汚用途)、耐溶媒性又は耐化学性(被膜、フィルム、組立部材などの)、撥油表面及び撥水表面(プラスチック、織物、紙、木材、革などのような基材用の)、医療用具用の被膜、電子用途のための潤滑剤、添加剤及びバルク材料、熱可塑性エラストマー、衝撃改質剤、粘着剤、薬剤(又は医薬)送達、化粧用途及び当業者には明らかであろう他の多くの用途に使用できる。
【0040】
低表面エネルギーブロックを含有する本発明のブロック共重合体は、重合体、例えば、低表面エネルギー単量体又は低表面エネルギーブロックを有しないものの表面エネルギーを改質するのに有用である。バルク重合体に固有ではない特性、例えば耐汚染性を付与するために所定の添加量を様々なバルク重合体、特に非低表面エネルギー重合体に含めることができる。非低表面エネルギー重合体は、低表面エネルギー単量体から誘導される単位を本質的に含まず、かつ、例えば、縮合重合体又は付加重合体であることができる。非低表面エネルギー重合体としては、例えば、アクリレート及びメタクリレート重合体、例えばポリメタクリル酸メチル並びにメタクリル酸メチル及び/又はアクリル酸メチルと1種以上の他のアクリレート及び/又はメタクリレート単量体、例えば、メタクリル酸エチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル及びアクリル酸ブチル並びにポリエステルような非アクリレート重合体との共重合体;ナイロンのようなポリアミド、例えば、ナイロン6,6、ナイロン6及びナイロン12;ポリオレフィン、例えばポリエチレン及びポリプロピレン;ポリウレタン;ポリスチレン;並びにビニル重合体が挙げられる。用途としては、食品用途、織物、塗料、製薬、ペイント及び他の多くの産業が挙げられる。追加の用途としては、繊維,特にナイロンカーペット繊維が挙げられる。
【0041】
バルク重合体の表面特性を改質するために添加されるブロック共重合体の量(「添加量」)は、当該ブロック共重合体中における低表面エネルギー単量体から誘導される単位の量、非低表面エネルギー重合体(「バルク重合体」)の性質及び表面改質の所望量にある程度依存するであろう。典型的には、低表面エネルギーブロック共重合体の添加量は、重合体混合物の約0.1重量%〜約10重量%、さらに典型的には重合体混合物の約0.3重量%〜約5.0重量%、さらに典型的には重合体混合物の約0.5重量%〜2重量%である。
【0042】
低表面エネルギーブロック共重合体は、溶融処理中にバルク重合体に添加できる。当業者には周知であるように、ブロック共重合体のバルク重合体への添加は、まず共重合体の濃縮物を非低表面エネルギー重合体のようなキャリヤー樹脂で製造し、次いで、該バルク重合体に当該濃縮物の必要量を添加することによって従来通りに実施できる。溶融処理中に、当該低表面エネルギーブロック共重合体は、バルク重合体の表面に「移動(ブルーミング)」し得る。このブルーミング効果により、低表面エネルギーブロックが空気−重合体表面に優先的に位置し、低表面エネルギーブロックに固有の特性がバルク重合体の表面に与えられる。
【0043】
別法として、低表面エネルギーブロック共重合体は、塗料組成物に使用できる。低表面エネルギーブロック共重合体は、当業者に周知のバインダー樹脂及び他の従来の塗料組成物成分と共に塗料組成物の溶媒中に溶解又は懸濁される。典型的には、このバインダー樹脂は、当業者に周知のアクリル樹脂である。典型的には、他の慣用の塗料組成物成分は、1種以上の顔料、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料及び/又はカーボンブラックを含む。他の慣用成分の例としては、湿潤剤、中和剤、均染剤、消泡剤、光安定剤、酸化防止剤及び殺生物剤が挙げられる。塗料組成物を基材に塗布した後に、溶媒が蒸発して当該基材の表面上に被膜が残る。この被膜は、低表面エネルギーブロック共重合体と、バインダー樹脂と、非揮発性の他の成分とを含む混合物を有する。当該塗料組成物中に存在する低表面エネルギーブロック共重合体及び他の成分によっては、被膜の加熱又は硬化が必要かもしれないし、必要でないかもしれない。低表面エネルギーブロック共重合体は、当該被膜の表面に移動し、そしてエネルギーの低い表面の被膜を与える。通常、これによりこの被膜が汚れ及び染みに対してさらに抵抗性になる。
【0044】
例1に記載されるように、低表面エネルギーマクロ開始剤を開始剤として使用して上記のような多くの方法及び用途においてさらなる反応を実施することができる。例えば、当該マクロ開始剤を塗料処方物に処理加工の間に添加して共重合体をその場で形成させることができる。このときに、この共重合体は、上記発明において記載した予備形成ブロック共重合体と同様に作用するであろう。一具体例(例19参照)では、当該低表面エネルギーマクロ開始剤を溶融処理中にポリプロピレンに添加して共重合体をその場で形成させることができる。溶融温度では、ニトロキシド末端基は当該マクロ開始剤から脱離し、そのフリーラジカルがプリプロピレン骨格から水素原子を引き抜き、マトリックス相溶性低表面エネルギー含有グラフト共重合体を形成し、次いでこれが表面に移動することができる。
【0045】
本発明の有利な特性は、次の実施例を参照することによって認識できる。これらの実施例は例示であって、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0046】

用語解説
CYCAT(商標)500触媒:スルホン酸触媒(サイテックインダストリーズ社,米国ニュージャージー州ウェストパターソン)
CYMEL(商標)303:ヘキサメトキシメチルメラミン(サイテックインダストリーズ社,米国ウェストパターソン)
iBA−DEPN:[N−t−ブチル−N−(1−ジエチルホスホノ−2,2−ジメチルプロピル)アミノオキシ]イソ酪酸モノアルコキシアミン
LUPEROX(商標)575:ペルオキシ−2−エチルヘキサン酸t−アミル重合開始剤(アルケマ社,米国ペンシルバニア州フィラデルフィア)
ナイロン−6:Capron 8200NTナイロン6(BASF社,米国ニュージャージー州フローハムパーク)
PDMS:ポリ(ジメチルシロキサン)
PMMA:V825 ポリメタクリル酸メチル(アルケマ社,米国ペンシルバニア州フィラデルフィア)
PP:HB1602ポリプロピレン、12メルトフローインデックス(MFI)ポリプロピレン(BP社,米国イリノイ州ワーレンビル)
ZONYL(商標)TA−N:1H,1H,2H,2H−ペルフルオルアルキルアクリレートエステル、平均分子量569,bp(10mmhg)100−220℃,mp50−60℃の混合物(イー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー,米国デラウェア州ウィルミントン)。
【0047】
一般的手順
ブロック共重合体を次の一般的手順を使用して調製した。目標分子量は、[M]/[I]比を設定し、次いでその目標分子量に到達するのに必要な所望の転化率まで重合させることにより達成した。単量体の転化を、ガスクロマトグラフィー分析又は減圧下での単量体の瞬間揮発分除去によって従来通りに監視した。重合体の実施例は、そのままの状態で又は溶液の状態で実施した。使用される典型的な溶媒としては、トルエン、エチルベンゼン、3−エトキシプロピオン酸エチル及びメチルエチルケトンが挙げられる。重合は、周囲圧力で実施し又は窒素圧力下で実施した。重合は、標準的な重合器内で混合しながら及び混合なしで実施したが、ただし、適度の混合が好ましかった。表面張力は、液滴法(水、テトラデカン)及びダインペン(流体表面エネルギー:30〜56ダイン/cm)を使用して決定した。
【0048】
ブロック共重合体を、第1ブロックを形成させるために使用した単量体とは異なる単量体を添加することによって製造した。次いで、この第2単量体組成物を重合させた。第2単量体の重合が完了した後に、残留単量体を除去してもよいし、又はさらなる反応のために確保しておいてもよい。この手順を繰り返してマルチブロック共重合体を得ることができる。ランダムブロック共重合体及びグラジエントブロック共重合体は、2種以上の単量体の混合物を重合させることによって合成した。
【0049】
例1
この例は弗素化重合体の製造を例示する。この重合体は、ニトロキシド末端基を有するので、フリーラジカル重合のマクロ開始剤として機能することができる。
ZONYL(商標)TA−N(160.587g,297mmol)を100mLのジャケット付きガラス反応器に添加し、窒素雰囲気下で撹拌しながら55℃にまで加熱した(この場合、このものは液体になった)。iBA−DEPN(11.348g,29.7mmol)を添加し、そしてこの反応混合物を110℃で3時間加熱した。ガスクロマトグラフィーにより、単量体転化率は90%であることが示された。重合体及び残留単量体を含有する反応混合物は>90℃の融点を有する固形ワックスであった。転化率及び単量体対開始剤比を基準にした分子量は4.7kg/molであると推定された。多分散度は1.1〜1.2であると推定された。
【0050】
例2
この例は、弗素化マクロ開始剤から出発するA−Bジブロック共重合体の製造を例示するものである。
例1で形成されたマクロ開始剤100gに81.65gのアクリル酸ブチルを添加した。110℃で強い発熱が認められた。この反応を1時間後に停止させた。ガスクロマトグラフィーで測定したアクリル酸ブチルの転化率は65%であった。
【0051】
例3
この例は、弗素化マクロ開始剤から出発するA−Bジブロック共重合体の製造、その後の残留単量体の追跡を例示するものである。
40.475gの3−エトキシプロピオン酸エチルと、32.293gのメタクリル酸メチルと、27.593gのアクリル酸ブチルとの混合物に10分間にわたり窒素を吹き込み、これを例1で形成されたマクロ開始剤12.142gに添加した。この反応混合物を2時間にわたり110℃に加熱した。転化率は、メタクリル酸メチルが82%、アクリル酸ブチルが53%であった。残留単量体を除去するために、LUPEROX(商標)575及び30gの3−エトキシプロピオン酸エチルを添加し、そしてこの反応混合物を110℃で1時間加熱した。
【0052】
例4
この例は、弗素化マクロ開始剤から出発する、官能性単量体を含有するA−Bジブロック共重合体の製造を例示するものである。
43.428gの3−エトキシプロピオン酸エチルと、31.746gのメタクリル酸メチルと、26.315gのアクリル酸ブチルと、5.781gのメタクリル酸2−ヒドロキシエチルとの混合物に10分間にわたり窒素を吹き込み、例1で形成されたマクロ開始剤13.00gに添加した。この反応混合物を2時間にわたり110℃に加熱した。転化率は、メタクリル酸メチルが82%、アクリル酸ブチルが53%であった。メタクリル酸2−ヒドロキシエチルの転化率は約82%であると推定された。残留単量体を除去するために、LUPEROX(商標)575及び3−エトキシプロピオン酸エチルを添加し、そしてこの反応混合物を例3と同様に加熱した。
【0053】
例5
この例は、弗素化重合体を製造すること及び下塗りされたフィルム上において溶媒流延フィルムとしてその表面張力を測定することを例示するものである。この重合体は、ニトロキシド末端基を有するので、フリーラジカル重合のマクロ開始剤として機能することができる。
ZONYL(商標)TA−N単量体(16.267g)及び0.307gのiBA−DEPNを試験管に添加し、TEFLON(商標)フルオロ樹脂キャップで密閉し、撹拌しながら114℃で加熱した。この単量体は6分後に溶融し、そして、さらに4時間加熱を続行した。冷却により、この反応混合物は蝋状の固形物になった。Mn=3kg/mol。多分散度は1.1であった。この重合体を、下塗りされた鋼シート上に、テトラヒドロフラン溶媒流延した。
この鋼シートの表面張力は29.9ダイン/cmであった。この鋼シート上での該重合体の表面量力は11.0ダイン/cmであった。下塗りされた鋼シート上における水に対する接触角及びテトラデカンに対する接触角は、それぞれ82.5°及び31.4°であった。この鋼シート上の重合体における水に対する接触角及びテトラデカンに対する接触角は、それぞれ、109.5°及び78.8°であった。
【0054】
例6
この例は、弗素化マクロ開始剤から出発するA−Bジブロック共重合体の製造及び下塗り鋼シート及びアルミニウムシートの両方での溶媒流延フィルムとしてのその表面力の測定を例示するものである。
例5で形成されたマクロ開始剤2.21gに37.5gのメタクリル酸メチルを添加した。このマクロ開始剤はメタクリル酸メチルに不溶であった。この混合物を100mLガラス反応器に注ぎ、20mLのトルエンですすぎ、そして103℃で2時間加熱した。加熱の1.5時間後に、濁った混合物が透明になった。得られたブロック共重合体は、Mn=138kg/mol及び2.0の多分散度を有していた。このブロック共重合体を、下塗りされた鋼シート及びアルミニウムシート上にテトラヒドロフラン溶媒キャストした。この重合体の表面張力は、鋼シート上では11.0ダイン/cm、アルミニウムシート上では9.4ダイン/cmであった。この鋼シート上の重合体における水に対する接触角及びテトラデカンに対する接触角は115°及び75.4°であり、アルミニウムシート上では、それぞれ、114.5°及び83.7°であった。このブロック共重合体は、メタクリル酸メチルのブロック、すなわち非低表面エネルギー単量体を有するものではあるものの、その表面エネルギーは、非低表面エネルギー単量体を含有しない例5の重合体とほぼ同一である。これは、その表面で自己組織化が生じたことを示す。
【0055】
例7
この例は、弗素化重合体を製造すること及びアルミニウムシート上で溶融流延フィルムとしてその表面張力を測定することを例示するものである。この重合体は、ニトロキシド末端基を有するので、フリーラジカル重合のマクロ開始剤として機能することができる。
ZONYL(商標)TA−N単量体(8.6527g)及び0.6237gのiBA−DEPNを撹拌しながら112℃で加熱した。この単量体は6分後に溶融し、そして撹拌を110℃で15時間にわたり続行した。ガスクロマトグラフィーで測定される該単量体の転化率は90%であった。Mn=2.7kg/mol。多分散度は1.15であった。このブロック共重合体をアルミニウム上に溶融キャストした。この重合体の表面張力はアルミニウムシート上で9.4ダイン/cmであった。アルミニウムシート上での重合体における水に対する接触角及びテトラデカンに対する接触角は、それぞれ、114.5°及び87.3°であった。
【0056】
例8
この例は、弗素化マクロ開始剤から出発するA−Bジブロック共重合体の製造及びアルミニウムシート上における溶融流延フィルムとしてのその表面張力を例示するものである。
例7で形成されたマクロ開始剤2.032gに4.639gのアクリル酸ブチルを添加した。この反応混合物を118℃で3.75時間加熱した。この濁った混合物は、約0.25時間後に透明になった。ガスクロマトグラフィーで測定されたアクリル酸ブチルの転化率は73%であった。Mn=14.6kg/mol。多分散度は1.24であった。このブロック共重合体をアルミニウム上に溶融キャストした。この重合体の表面張力はアルミニウムシート上で6.8ダイン/cmであった。アルミニウムシート上での重合体における水に対する接触角及びテトラデカンに対する接触角は、それぞれ116°及び99.3°であった。
【0057】
例9
この例は、低表面エネルギーブロックを含有するA−Bジブロック共重合体の製造を例示するものである。
弗素化マクロ開始剤の形成
0.0348g(0.091mmol)のiBA−DEPNと2.0g(8.4mmol)のアクリル酸1H,1H−ペルフルオルブチルとの混合物を、100mLのジャケット付きガラス反応器に添加し、窒素でパージし、そして撹拌せずに118℃にまで加熱した。この反応混合物は数時間後に濃厚になった。アクリル酸1H,1H−ペルフルオルブチルの残留量をこの反応器から採取したアリコートのガスクロマトグラフィーにより決定した。その転化率に基づき、該重合体のMnが約10kg/molであると推定した。
【0058】
弗素化マクロ開始剤から出発するA−Bジブロック共重合体の形成
アクリル酸ブチル(21.3g,166mmol)をiBA−DEPN開始剤から誘導されたニトロキシドを末端基とする重合体1.7g(0.17mmol)を含有する反応混合物に添加した。この反応混合物を窒素雰囲気下で118℃にまで撹拌せずに3時間にわたり加熱した。アクリル酸ブチルの残留量をガスクロマトグラフィーで決定した。その転化率に基づき、アクリル酸ブチルブロックの数平均分子量(Mn)は、約65kg/molであると推定された。
【0059】
例10
この例は、ケイ素含有単量体を含むブロックを含有するA−Bジブロック共重合体の製造を例示するものである。
399.8gのアクリル酸ブチルと、14.4gのiBA−DEPNと、0.38gのDEPNとの混合物を1Lのジャケット付きステンレス鋼反応器中で窒素により脱ガスし、窒素雰囲気下で密閉した。この反応器を116℃で3時間加熱した。アクリル酸ブチルの転化率は70%であった。この反応媒体を70℃にまで冷却し、残留単量体を減圧下で除去した。232gのトリイソプロピルシリルアクリレートを110gのトルエンに溶解してなる溶液をこの反応器に添加し、そしてこの混合物を119℃で2.5時間加熱した。当該珪素含有単量体の転化率は約65%であった。
【0060】
例11
この例は、低表面エネルギー反応性A−Bジブロック共重合体を塗料処方物に使用することを例示するものである。
例4で製造されたブロック共重合体(18.690g)を75.860gの二塩基酸エステルに添加した。得られた混合物を高固形分塗料処方物におよそ5%の添加量で還元性溶媒を添加する間に添加した。アクリル酸高固形分塗料樹脂をCYMEL(商標)303架橋剤、CYCAT(商標)4040触媒(結合剤固形分を基にして0.4重量%)及び還元性溶媒と共に処方して55%非揮発性物質(NVM)溶液を達成した。アクリル酸高固形分塗料(HSC)樹脂:架橋剤比は75:25であった。次いで、アクリル酸トップコートを薄青色の金属下塗パネルに塗布し、140℃で30分間硬化させた。この金属パネル上の被膜の表面張力は15.8ダイン/cmであった。HSC樹脂単独の表面張力は、>31ダイン/cmであった。
【0061】
例12
この例は、低表面エネルギー非反応性A−Bジブロック共重合体を塗料処方物に使用することを例示するものである。
例3で製造されたブロック共重合体(20.121g)を80.414gの二塩基酸エステルに添加した。得られた混合物を高固形分塗料処方物におよそ5%の添加量で添加し、例11の通りに硬化させた。被膜の表面張力は14.6ダイン/cmであった。
【0062】
例13
この例は、PDMSブロックを含有するA−Bジブロック共重合体をPDMSマクロ開始剤により製造することを例示するものである。
iBA−DEPNのヒドロキシル末端PDMSへの結合
ヒドロキシル末端PDMS(28g,0.006mol)(Mn=4,670g/mol)(オールドリッチ社,米国ウィスコンシン州ミルウォーキー)、2.2g(0.006mol)のiBA−DEPN及び0.73g(0.006mol)の4−ジメチルアミノピリジンを無水及び不活性雰囲気条件下で機械撹拌器、温度プローブ、コンデンサー及び添加漏斗を備えた反応容器中において等量のトルエンに溶解させた。この撹拌器を始動させ、そして、反応器の内容物を0℃にまで冷却した。ジシクロヘキシルカルボジイミド(3.3g,0.016mol)のトルエン溶液を添加漏斗から添加した。この反応物を1時間にわたり0℃で撹拌し、室温にし、そしてさらに3時間撹拌した。iBA−DEPNにより末端がキャップされたPDMSをエタノールの添加により沈殿させ、その後ブフナー漏斗で単離した。
【0063】
ブロック共重合体の製造
iBA−DEPNで末端キャップされたPDMS30g(0.006mol)及びトルエンで50重量%にまで希釈されたメタクリル酸メチル100g(1mol)との混合物を70℃にまで1〜2時間にわたり加熱した。過剰のメタクリル酸メチル及び溶媒を減圧下で除除してブロック共重合体を生じさせる。
他の非低表面エネルギー単量体又は単量体の混合物、例えば上で列挙したものをメタクリル酸メチルの代わりに又はそれに加えて使用することができる。例えば、他のアクリレート及びメタクリレート単量体、スチレン及び置換スチレン、アクリロニトリル並びに他のフリーラジカル重合性単量体をメタクリル酸の代わりに又はそれに加えて使用してブロック共重合体を形成させることができる。
【0064】
例14
この例は、PDMSブロックを含有するA−Bジブロック共重合体の反応性鎖末端カップリングによる製造を例示するものである。
カルボン酸官能化ポリ(メタクリル酸メチル)ブロックの合成
100g(1mol)のメタクリル酸メチルと、0.762g(0.002mol)のiBA−DEPNと、46gのトルエンとの混合物を反応容器に添加し、そしてこの混合物に窒素を10分間散布した。この反応容器を強く撹拌しつつ70℃に加熱する。この温度を所望の転化率に達するまで維持する(0.5〜2時間)。得られたカルボン酸官能化ポリ(メタクリル酸メチル)ブロックを沈殿により回収し、又は残留単量体及び溶媒を減圧下で除去して固体重合体ブロックを生じさせる。
ブロック共重合体の製造
ヒドロキシル官能化PDMS及びカルボン酸官能化ポリ(メタクリル酸メチル)ブロックを反応性鎖カップリングによって結合させる。この鎖カップリングを、錫触媒を使用して塊の状態で実施する。或いは、鎖カップリングを、例13に記載した方法によってジシクロヘキシルカルボジイミドで実施する。
【0065】
例15
この例は、メタクリル酸メチルの骨格とPDMSのグラフトとを含有するグラフト共重合体の形成を例示するものである。
メタクリル酸メチル100g(1mol)と、5,000g/mol(0.002mol)のビニル末端PDMS10gと、iBA−DEPN0.762g(0.002mol)と、トルエン46gとの混合物を反応容器に添加する。この混合物に窒素を10分間散布し、次いで激しく撹拌しながら105℃に加熱する。この温度を所望の転化率に達するまで維持する(約2時間)。次いで、得られたグラフト共重合体を単離する。このビニル末端PDMSはメタクリル酸メチルと共重合してPDMSブロックがポリ(メタクリル酸メチル)骨格にグラフトした共重合体を生成する。
【0066】
例16
この例は、ニトロキシド末端基を有する弗素化オリゴマーの製造を例示するものである。このオリゴマーはニトロキシド末端基を有するので、フリーラジカル重合のマクロ開始剤として機能することができる。
3.8132g(0.010mol)のiBA−DEPNと11.0971g(0.020mol)のアクリル酸1H,1H−ペルフルオルデシルとの混合物及び撹拌棒を4ドラムの小瓶中で混合し、そしてドライバス中で80℃にまで加熱する。30分後、この温度を110℃にまで20分かけて上昇させた。ガスクロマトグラフィーにより、この単量体の転化率が95%であることが示された。この単量体転化率及び単量体対開始剤比から算出される分子量(Mn)は1.4kg/molであると推定された。
【0067】
例17
この例は、弗素化マクロ開始剤から出発するA−Bジブロック共重合体の製造を例示するものである。
例16で形成されたマクロ開始剤1.134gにメタクリル酸メチル30.384g及びトルエン11.82gを添加した。この混合物を、機械撹拌を備えた100mLのジャケット付きガラス反応器中に置き、そして還流温度(100〜101℃)にまで加熱した。この反応を1.5時間続行した。ガスクロマトグラフィーにより測定されたメタクリル酸メチルの転化率は45%であった。
【0068】
例18
この例は、弗素化マクロ開始剤から出発する、官能性単量体を含有するA−Bジブロック共重合体の製造を例示するものである。
弗素化マクロ開始剤の形成
1.1042g(2.90mmol)のiBA−DEPNと20.0473g(0.036mol)のアクリル酸1H,1H−ペルフルオルデシルとの混合物及び撹拌棒を4ドラムの小瓶中で混合し、窒素で脱ガスし、アルミニウム加熱ブロック内で110℃にまで加熱した。4時間後に、この温度を112℃にまで20分かけて上昇させた。ガスクロマトグラフィーにより測定されたアクリル酸1H,1H−ペルフルオルデシル単量体の転化率は72.8%であった。この転化率に基づき、オリゴマーのMnは、約5.4kg/molであると推定された。得られた弗素化オリゴマーはニトロキシド末端基を有し、しかも、フリーラジカル重合のマクロ開始剤として機能することができる。
弗素化マクロ開始剤から出発するA−Bジブロック共重合体の形成
メタクリル酸メチル(95.67g,0.954mol)及びメタクリル酸(4.33g,0.050mol)の混合物を、上で形成されたマクロ開始剤(5.424g,0.001mol)を含有する100mLのジャケット付きガラス反応器に添加し、窒素でパージし、そして103℃にまで1時間25分にわたり加熱した。ガスクロマトグラフィーにより測定されたメタクリル酸メチルの転化率は62.7%であった。この単量体転化率及び単量体対開始剤比から算出される分子量(Mn)は、68.0kg/molであると推定された。
【0069】
例19
この例は、低表面エネルギーA−Bジブロック共重合体IS−1〜S−7の濃縮物を製造するための手順を例示する。
ブロック共重合体試料の詳述
低表面エネルギーポリ(ZONYL(商標)TA−N−ブロック−メタクリル酸メチル)共重合体IS−1、IS−2及びIS−3は、それぞれ、Mn=112kg/mol、84kg/mol及び50kg/molを有しており、かつ、全て、Mn=4.7kg/mol(ZONYL(商標)TA−Nの転化率及び単量体対開始剤比から推定)を有するポリ(ZONYL(商標)TA−N)マクロ開始剤を使用して製造されたものである。試料IS−4は、ニトロキシドDEPNを末端基とするポリ(ZONYL(商標)TA−N)マクロ開始剤(Mn=4.7kg/mol)であった。試料IS−5は、ポリ(ZONYL(商標)TA−N)、ポリ(アクリル酸ブチル)及びポリ(メタクリル酸メチル)ブロックについてブロックのMnがそれぞれ4.7kg/mol、5kg/mol及び50kg/molであるポリ(ZONYL(商標)TA−N−ブロック−アクリル酸ブチル−ブロック-メタクリル酸メチル)共重合体から構成されるブロック共重合体であった。ブロック共重合体試料IS−6及びIS−7は、それぞれ、ポリ(アクリル酸1H,1H−ペルフルオルデシル−ブロック−メタクリル酸メチル)及びポリ(1H,1H−ペルフルオルオクチルアクリレート−ブロック−メタクリル酸メチル)から構成された。アクリル酸1H,1H−ペルフルオルデシルブロック及びアクリル酸1H,1H−ペルフルオルオクチルブロックは、それぞれ、Mn=1.4kg/mol及び1.2kg/molを有していた。それぞれの共重合体についてのポリ(メタクリル酸メチル)ブロックは、Mn=20kg/molを有していた。
【0070】
表1に示す複合材料の試料を次のプロトコールを使用して製造及び試験した。このブロック共重合体試料をポリプロピレン(PP)又はポリメタクリル酸メチル(PMMA)のいずれかであるキャリヤー樹脂に配合した。この樹脂(PP/PMMA)及びブロック共重合体をプラスチック袋中で一緒にし、そして乾式混合し、その後重力により、3ストランドダイを装着した27mm同時回転二軸押出器(アメリカン・レイストリッツ・エクストルダー・コーポレーション,米国ニュージャージー州サマービル)に供給した。全ての試料を150rpmのスクリュー速度で次の温度プロフィールを使用して処理した:区域1−2=150℃、区域3−4=160℃、区域5−6=180℃、区域7−8=190℃。その後、得られたストランドを水浴中で冷却し、およそ6.35mmのペレットにペレット化してブロック共重合体濃縮物を得た。製造された具体的な処方物を表1に与える。
【0071】
【表1】

【0072】
例20
この例は、低表面エネルギーA−Bジブロック共重合体IS−1〜IS−7を含有するフィルムを製造するための手順を例示するものである。
例19から濃縮物を様々な減少レベル(表2に与えるような)で樹脂に添加し、その後、次の手順を使用してフィルムに加工した。この樹脂(PP/PMMA)及びこのブロック共重合体濃縮物をプラスチック袋中で一緒にし、そして乾式混合し、その後重力により、インフレートフィルムダイとエアリングとテイクオフユニットとを設置した19mmの一軸押出器(C.W.ブラベンダー・コーポレーション,米国ニュージャージー州サウスハッケンサック)に供給した。全ての試料を50rpmのスクリュー速度で次の温度プロフィールを使用して処理加工した:区域1=150℃、区域2=180℃、区域3=200℃、ダイ=220℃。使用したフィルムダイは、0.064cmのギャップであった。ナイロン6の試料を50rpmのスクリュー速度で次の温度プロフィールを使用して処理加工した:区域1=200℃、区域2=220℃、区域3=240℃、ダイ=240℃。押出中に、ナイロン6フィルムを、3個のクロムロールフィルムテークオフユニット(米国ニュージャージー州サウスハッケンサックのC.W.ブラベンダー・コーポレーションから商業的に入手可能)を使用して急冷した。その後、得られたフィルムの全てを集め、次いで、試料について表面エネルギーを分析した。製造された具体的なフィルム処方物を表2に与える。
【0073】
【表2−1】

【0074】
【表2−2】

【0075】
例21
この例は、表2からのフィルム処方物CE1〜CE3及び1〜45の表面張力を決定するための手順を例示するものである。
処方物CE1、CE2、CE3及び1〜45(表2)から作られたフィルム試料の表面張力について、ダインペン(エネルコン・インダストリーズ,米国ウィスコンシン州メノミニーファール)を使用して試験した。特に、次の表面張力:30、32、35、38、41、44、48及び56ダイン/cmを示す流体を有するダインペンを使用して、それぞれのフィルム上に線を引いた。玉のようにならない均一な線が良好な表面湿潤を示す。表面張力の結果を表3に示す。
【0076】
【表3−1】

【0077】
【表3−2】

【0078】
例22
この例は、表2からのフィルム処方物CE1及び7〜9についてのXPS(X線光電子分光法)分析による表面化学判定の手順及びその結果を例示するものである。
表面元素分析をKratos HS−AXIS分光計により行った。次の条件を使用して検査スペクトルを得た:単色アルミニウムアノードを分析のために210Wで使用した(15mA、14kV)。ハイブリッドレンズモードを選択し、また、最終口径は600 ×300μmであった。2つの掃引(0〜1340eV)を1eVの段階、1,000msのドウェル及び160eVの通過エネルギーで取得した。
領域スペクトルを、次の条件を使用してO 1s、C 1s及びF 1sについて取得した:2つの掃引を0.1eVの段階、1,000msのドウェル及び40eVの通過エネルギーで集めた。この領域スペクトルの全てを、単色アルミニウムアノード(15mA、14kV)を用いて210Wで取得した。70%ガウスから30%ローレンツの関数を使用して全ての分解作用についてのピークをモデル化した。直線型のバックグラウンドを、定量化の問題に対して該バックグラウンドをモデル化するための詳細なスペクトルのために使用した。光電子シグナルについては平滑化を行わなかった。スペクトル線の基準は、Handbook of X−ray photoelectron spectroscopy(1992),パーキン・エルマーコーポレーションから得た。
フィルム表面での弗素原子(重量%)に関するXPS分析の結果を試料CE1及び7〜9(表2からのもの)について表4に示す。また、表4は、低表面エネルギーブロック共重合体の配合レベルに依存する、バルクフィルム中における計算弗素濃度も示している。試料7〜9全ての場合において、表面の弗素重量%は、バルク弗素濃度よりも高かったが、これは、低表面エネルギーブロック共重合体が表面に「ブルーミング」したことを示す。
【0079】
【表4】

【0080】
例23
この例は、SG1C(CH32CO2Hの弗素化エステルによる低表面エネルギー末端官能化重合体の製造を例示するものである。この重合体は、ニトロキシド末端基を有するので、フリーラジカル重合のマクロ開始剤として機能することができる。
1H,1H−ペルフルオルドデカノールによるiBA−DEPNの直接エステル化
アルコキシアミンiBA−DEPNを、例13に記載した方法により、ジシクロヘキシルカルボジイミドを使用して1H,1H−ペルフルオルドデカノールでエステル化する。別法として、米国特許出願公開第2005/065119(引用により含める)のExample 2に記載せされるように、まず、塩化チオニルを使用してiBA−DEPNをカルボン酸から酸塩化物に転化させ、その後、この酸塩化物生成物と1H,1H−ペルフルオルドデカノールとを反応させることができる。
1H,1H−ペルフルオルドデカノールによるiBA−DEPNの間接エステル化
iBA−DEPNアルコキシアミンを、アクリル酸メチルのようなアクリル酸エステルの1又は2単位にiBA開始剤をキャップすることによって、熱に対してさらに安定にした。31gエタノールで希釈された22.57g(0.262mol)のアクリル酸メチルの混合物を、機械撹拌を備えた100mLのジャケット付きガラス反応器内にある20.01g(0.052mol)のiBA−DEPNに添加し、窒素でパージし、そして70℃で2時間加熱した。ガスクロマトグラフィーで測定されたアクリル酸メチルの転化率は35.5%であったが、これは約1.8のアクリル酸メチル単位/iBA−DEPN分子に相当する。過剰のアクリル酸メチル及びエタノールを減圧下で除去した。得られた生成物を、上記例13又は米国特許出願公開第2005/065119(引用により含める)のEXAMPLE 2に記載された方法のいずれかにより1H,1H−ペルフルオルドデカノールでエステル化するためにさらに生成することなく使用する。
重合体の製造
トルエンで50重量%にまで希釈されたメタクリル酸メチルの混合物を、機械撹拌を備えた100mLのジャケット付きガラス反応器内にある、上で形成された反応生成物:(SG1−C(CH32CO2CH2(CF210CF3又はSG1−(CH2CHC(O)OCH32−(CH32CO2CH2(CF210CF3 )のいずれかに添加し、窒素でパージし、そして70℃で1〜2時間加熱する。過剰のメタクリル酸メチル及び溶媒を減圧下で除除して弗素化アルキル鎖末端基を有する重合体を生じさせる。
【0081】
本発明を説明してきたが、次の事項及びそれらの均等物を特許請求する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ブロックが第2ブロックに結合してなるブロック共重合体の製造方法であって、次の工程:
(a)該第1ブロックを、ニトロキシドの存在下で第1単量体を重合させることによって製造し;
(b)該第2ブロックを、ニトロキシドの存在下で第2単量体を重合させることによって製造すること
を含み、ここで、
該第1単量体及び該第2単量体が、それぞれ、アクリル酸単量体、メタクリル酸単量体又はそれらの混合物を含み;
該第1単量体若しくは該第2単量体のいずれかが低表面エネルギー単量体を含み、又は、該第1単量体及び該第2単量体の両方が低表面エネルギー単量体を含む、前記製造方法。
【請求項2】
前記ニトロキシドがニトロキシドの窒素原子に対してβ位に1価の基を有し、該1価の基が15を超える分子量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1価の基がホスホリル基を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ニトロキシドがN−t−ブチル−N−[1−ジエチルホスホノ−(2,2−ジメチルプロピル)]ニトロキシドである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記低表面エネルギー単量体がアクリル酸単量体、メタクリル酸単量体又はそれらの混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
該第1単量体及び該第2単量体の少なくとも一つが低表面エネルギー単量体を約50重量%〜約100重量%含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記低表面エネルギー単量体が弗素含有単量体及びそれらの混合物よりなる群から選択され、前記ブロック共重合体の多分散度が2.5以下である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記非低表面エネルギー単量体がヒドロキシル基、カルボン酸基、グリシジル基又はアミノ基を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1単量体及び前記第2単量体の少なくとも一つが低表面エネルギー単量体を約25重量%〜約100重量%含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記低表面エネルギー単量体が弗素含有単量体、珪素含有単量体及びそれらの混合物よりなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記低表面エネルギー単量体が弗素含有単量体及びそれらの混合物よりなる群から選択され、前記ブロック重合体の多分散度が2.5以下である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ニトロキシドがニトロキシドの窒素原子に対してβ位で1価の基を有し、該1価の基が15を超える分子量を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記1価の基がホスホリル基を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ニトロキシドがN−t−ブチル−N−[1−ジエチルホスホノ−(2,2−ジメチルプロピル)]ニトロキシドである、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記ブロック共重合体を非低表面エネルギー重合体に添加して重合体混合物を形成させる工程をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記重合体混合物を加熱する工程をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記低表面エネルギー単量体が弗素含有単量体及びそれらの混合物よりなる群から選択され、前記ブロック重合体の多分散度が2.5以下である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記ニトロキシドがN−t−ブチル−N−[1−ジエチルホスホノ−(2,2−ジメチルプロピル)]ニトロキシドである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
第1ブロックが第2ブロックに結合してなるブロック共重合体であって、次の工程:
(a)該第1ブロックを、ニトロキシドの存在下で第1単量体を重合させることによって製造し;
(b)該第2ブロックを、ニトロキシドの存在下で第2単量体を重合させることによって製造すること
を含む方法によって製造され、ここで、
該第1単量体及び該第2単量体が、それぞれ、アクリル酸単量体、メタクリル酸単量体又はそれらの混合物を含み;
該第1単量体若しくは該第2単量体のいずれかが低表面エネルギー単量体を含み、又は、該第1単量体及び該第2単量体の両方が低表面エネルギー単量体を含む、前記ブロック共重合体。
【請求項20】
前記第1単量体及び前記第2単量体の少なくとも一つが低表面エネルギー単量体を約50重量%〜約100重量%含む、請求項19に記載のブロック共重合体。
【請求項21】
前記低表面エネルギー単量体が弗素含有単量体及びそれらの混合物よりなる群から選択され、前記ブロック重合体の多分散度が2.5以下である、請求項20に記載のブロック共重合体。
【請求項22】
前記ニトロキシドがニトロキシドの窒素原子に対してβ位で1価の基を有し、該1価の基が15を超える分子量を有する、請求項21に記載のブロック共重合体。
【請求項23】
前記1価の基がホスホリル基を含む、請求項22に記載のブロック共重合体。
【請求項24】
前記ニトロキシドがN−t−ブチル−N−[1−ジエチルホスホノ−(2,2−ジメチルプロピル)]ニトロキシドである、請求項21に記載のブロック共重合体。
【請求項25】
第1ブロックが第2ブロックに結合してなるブロック共重合体であって、
該第1ブロック及び該第2ブロックのそれぞれが、アクリル酸単量体、メタクリル酸単量体又はそれらの混合物を、重合された形態で含み;
該第1ブロック又は該第2ブロックのいずれかが低表面エネルギー単量体を重合された形態で含み、又は、該第1ブロックと該第2ブロックの両方がそれぞれ低表面エネルギー単量体を重合された形態で含む、前記ブロック共重合体。
【請求項26】
前記第1ブロック及び前記第2ブロックの少なくとも一つが、低表面エネルギー単量体約50重量%〜約100重量%を重合された形態で含む、請求項25に記載のブロック共重合体。
【請求項27】
前記ブロック共重合体がニトロキシドを末端基とする、請求項26に記載のブロック共重合体。
【請求項28】
前記低表面エネルギー単量体が弗素含有単量体、珪素含有単量体及びそれらの混合物よりなる群から選択される、請求項27に記載のブロック共重合体。
【請求項29】
前記ブロック共重合体の多分散度が2.5未満である、請求項28に記載のブロック共重合体。
【請求項30】
前記ニトロキシドがニトロキシドの窒素原子に対してβ位で1価の基を有し、該1価の基が15を超える分子量を有する、請求項29に記載のブロック共重合体。
【請求項31】
前記1価の基がホスホリル基を含む、請求項30に記載のブロック共重合体。
【請求項32】
前記ニトロキシドがN−t−ブチル−N−[1−ジエチルホスホノ−(2,2−ジメチルプロピル)]ニトロキシドである、請求項29に記載のブロック共重合体。
【請求項33】
重合体混合物であって、
非低表面エネルギー重合体と、
第1ブロックと第2ブロックとが互いに結合してなるブロック共重合体の添加量と
を含み、ここで、
該第1ブロック及び該第2ブロックのそれぞれが、アクリル酸単量体、メタクリル酸単量体又はそれらの混合物を、重合された形態で含み;
該第1ブロック又は該第2ブロックのいずれかが低表面エネルギー単量体を重合された形態で含み、又は、該第1ブロックと該第2ブロックの両方がそれぞれ低表面エネルギー単量体を重合された形態で含み;しかも、
該第1ブロック及び該第2ブロックの少なくとも一つが、低表面エネルギー単量体約25重量%〜約100重量%を重合された形態で含む、前記重合体混合物。
【請求項34】
前記ブロック共重合体の濃度が該混合物の大部分よりも該重合体の表面で高い、請求項33に記載の重合体混合物。
【請求項35】
前記ブロック共重合体の添加量が前記重合体混合物の約0.3重量%〜約5.0重量%である、請求項34に記載の重合体混合物。
【請求項36】
前記低表面エネルギー単量体が弗素含有単量体及びそれらの混合物よりなる群から選択され、しかも前記ブロック共重合体の多分散度が2.5未満である、請求項35に記載の重合体混合物。
【請求項37】
重合体の製造方法であって、フリーラジカル重合性単量体をアルコキシアミン開始剤で重合させることを含み、ここで、該アルコキシアミンがフルオルアルキル基を有する、重合体の製造方法。
【請求項38】
前記アルコキシアミンが部分弗素化アルコールでエステル化されたiBA−DEPNである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記フリーラジカル重合性単量体が低表面エネルギー単量体を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
次の工程:
前記重合体の添加量と非低表面エネルギー重合体とを混合させ;及び
該混合物を加熱すること
をさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
前記非低表面エネルギー重合体がポリオレフィンである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
マクロ開始剤として有用な重合体であって、低表面エネルギー単量体を重合された形態で含み、ここで、
該重合体はニトロキシドを末端基とし;
該重合体は、少なくとも2,000g/molの分子量を有し;
該単位の少なくとも90重量%が低表面エネルギー単量体の重合によって誘導された、前記重合体。
【請求項43】
前記低表面エネルギー単量体が弗素化単量体又は弗素化単量体の混合物である、請求項42に記載の重合体。
【請求項44】
前記ニトロキシドがニトロキシドの窒素原子に対してβ位で1価の基を有し、該1価の基が15を超える分子量を有する請求項43に記載の重合体。
【請求項45】
前記1価の基がホスホリル基を含む、請求項44に記載の重合体。
【請求項46】
前記ニトロキシドがN−t−ブチル−N−[1−ジエチルホスホノ−(2,2−ジメチルプロピル)]ニトロキシドである、請求項43に記載の重合体。
【請求項47】
前記重合体が少なくとも4,000g/molの分子量を有する、請求項46に記載の重合体。
【請求項48】
重合体の製造方法において、次の工程:
(a)重合体混合物であって
非低表面エネルギー重合体、及び
第1ブロックと第2ブロックとが互いに結合してなるブロック共重合体
を含むものを製造し、ここで、
該第1ブロック及び該第2ブロックのそれぞれが、アクリル酸単量体、メタクリル酸単量体又はそれらの混合物を、重合された形態で含み;
該第1ブロック又は該第2ブロックのいずれかが低表面エネルギー単量体を重合された形態で含み、又は、該第1ブロックと該第2ブロックの両方がそれぞれ低表面エネルギー単量体を重合された形態で含み;しかも
該ブロック共重合体がニトロキシドを末端基とするものであり;
(b)該重合体混合物を加熱すること
を含む、重合体の製造方法。
【請求項49】
前記非低表面エネルギー重合体がポリオレフィンである、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記第1ブロック及び前記第2ブロックの少なくとも一つが、低表面エネルギー単量体約50重量%〜約100重量%を重合された形態で含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記低表面エネルギー単量体が弗素含有単量体、珪素含有単量体及びそれらの混合物よりなる群から選択される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記非低表面エネルギー重合体がポリプロピレンである、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記ニトロキシドがニトロキシドの窒素原子に対してβ位で1価の基を有し、該1価の基が15を超える分子量を有する、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記1価の基がホスホリル基を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記ニトロキシドがN−t−ブチル−N−[1−ジエチルホスホノ−(2,2−ジメチルプロピル)]ニトロキシドである、請求項52に記載の方法。

【公表番号】特表2009−520074(P2009−520074A)
【公表日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−545802(P2008−545802)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際出願番号】PCT/US2006/047685
【国際公開番号】WO2007/078819
【国際公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(500307340)アーケマ・インコーポレイテッド (119)
【Fターム(参考)】