説明

住宅模型及びその模型を用いた住宅建築支援システム

【課題】 施主が模型部品を選択して組み立てることにより設計した段階で、概算のコストが積算できるように構成し、使用した模型部品毎に、設計情報などの属性情報とともにコスト情報をも設定でき、住宅建築費用を積算して算出できることを課題とするものである。
【解決手段】 各部品を選択して自由に組み立てることができる住宅模型において、各部品毎にその部品に対応する建築相当金額を設定し、記憶した住宅模型とし、住宅模型の組み立て後、設定、記憶された部品の情報から、実際の住宅建築費用を積算することができる模型を用いた住宅建築支援システムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅の設計を施主が自ら模型を用いて行うことができ、出来上がった模型に対応する設計図ができ、建築コストが積算でき、模型のとおりの施工ができる住宅模型及びその模型を用いた住宅建築支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、戸建て住宅を設計建築する場合には、購入者は住宅展示場に足を運び、色々のタイプの既設の住宅を見ることにより、自分に適した住宅のイメージを得て、それに従い住宅メーカーの技術者に平面図を描かせていた。
【0003】
設計図だけでは専門家以外には完成後の建築物の全体像の感じが掴みにくいので、施主へのプレゼンテーションの手法として、斜視図やパースを作製する場合も多い。しかし、これらの方法では、立体感が乏しく空間的な拡がりは想像するしかない。
【0004】
そこで、立体的なイメージを施主につかんでもらうために住宅模型を製作し、施主により具体的なイメージを提供することも行われている。しかし、この模型の製作には時間が掛かり、また製作費用が嵩み、簡単な変更が出来ないという問題があった。
【0005】
また、模型の製作容易で、短時問に高精度の組み立てが可能な住宅等の模型の製法及び住宅等の模型の組み立てキットが提案されている。(特許文献1)
【0006】
また、近年では、コンピューターグラフィクスの発達に伴って、バーチャルリアリティーの手法で、各種センサー類を装着することで、あたかも実際の住居に入って行くかのような疑似体験を行うことも提案されている。
【0007】
しかし、この方法は、高価な高性能のコンピューターとソフトを必要とし、建築の専門家とは限らない施主が自在に使いこなすのは不可能である。従って、あくまでハウスメーカー等の設備の整った場所でのプレゼンテーションに使用されるものである。
【0008】
建築の設計資料に基づいて建物の立体模型の組立セットを容易かっ安価に提供し、立体模型によって建物の構造を正確に認識出来るようにする建物設計支援システムが提案されている。(特許文献2)
【0009】
建築業者の場合では、住宅展示場やモデルルーム等を設け、顧客に実際に使い勝手を体験させるなどして、その要望を採用するようにしていることも多く行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3820511号公報
【特許文献2】特開2002−312419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このように、図面やモデルルーム等によるイメージだけでは、実際に出来上がる建物の使い勝手について、顧客の要求を十分に満たすことができないため、後になって顧客から不満が出てくることが往々にしてある。
【0012】
また、住宅メーカーの技術者が描く平面図は、一般の住宅購入者(施主)には平面的に書かれた図面からのみでは、その立体感を把握することができず、特に内装や家具、キッチンなど、そのイメージを確実に把握することができず、出来上がった後に要望したものとは相違するとのクレームの発生となって表れることも少なくない。
【0013】
前記の特許第3820511号公報においては、精度が高く、製作時間少なく、ミスが生じにくい住宅模型キットを提供できるものであるが、あくまでも、出来上がった設計図面に基づく、模型製作であり、設計者のためのものであり、専門家ではない施主が取り扱えるものではない。
【0014】
また、前記の特開2002−312419号公報においても、建物の設計情報に基づいて、立体模型を組立てる部品のボード片のセットを製作できるようにしたものであり、手間時間を少なくして建物の立体模型を製作でき、建物の外観・内観をディスプレイ・紙の印刷ばかりでなく、立体的にリアルに視覚でき、設計と実際の建物の認識・印象のギャップを少なくでき、しかも、建物立体模型のセット製作費用が安価となるものであるが、やはり、専門家ではない施主が取り扱えるものではない。
【0015】
本発明は、特に空間のイメージを3次元的な、通常の作業空間として把握しながら施主自らが設計することが出来るように構成し、該住宅模型の模型部品を実際の建築に近い状態で組み立てていくことができることを課題のひとつとする。
【0016】
そして、施主が模型部品を選択して組み立てることにより設計した段階で、概算のコストが積算できるように構成し、使用した模型部品毎に、設計情報などの属性情報とともにコスト情報をも設定でき、住宅建築費用を積算して算出できることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は諸課題を解決するために、請求項1では、各部品を選択して自由に組み立てることができる住宅模型において、各部品毎にその部品に対応する建築相当金額が設定されていることを特徴とする住宅模型とするものである。
【0018】
住宅模型の部品は、基礎部材から、柱、梁、壁などの構造用部材、棚やキッチン、窓、ドアなどの建具や家具部材など、可能な限り実物に近い状態の模型部品を使用することが好ましい。
【0019】
尚、接続に関しては、組み合わせや接着剤を用いることが好ましい。
【0020】
部品の素材は、紙、樹脂、金属などいずれを使用しても良い。尚、部材の厚みの比率は現物に近いことが好ましい。
【0021】
そして、それらのひとつひとつの部品に対して、建築相当金額を設定させる。すなわち、部材の設計情報に加えて、部材単価、設計費用、施工費用、管理費用などのコスト情報が設定されるものである。
【0022】
設計費用や施工費用、管理費用などは、住宅全体の規模などから割合により算出されたものでも良い。
【0023】
また、設計業者や施工業者をランク分けして、そのランクに対応した比率を設定しても良い。
【0024】
請求項2では、前記の各部品において、部品に対応する建築相当金額を含む部品属性データが各部品に記憶されていることを特徴とする住宅模型とするものである。
【0025】
部品に対応する建築相当金額を含む部品属性情報をデータとして各部品に記憶するものである。
【0026】
部品に記録する手段としては、記憶素子を部品に埋め込むことができる。また、バーコードなどを部品の表面に印字することでも良い。
【0027】
請求項3では、前記の部品に対応する建築相当金額を含む部品属性データは、ICチップに記録されており、該ICチップ搭載媒体が各部品に埋め込まれていることを特徴とする住宅模型とするものである。
【0028】
ICチップは、半導体基板若しくは絶縁基板の表面又は半導体基板の内部に、半導体素子を含む素子で電子回路を構成している超小型のチップ状などの形状をなしたものである。
【0029】
このICチップは、従来から使用されているバーコードと比べて、(1)が保持する情報量が多い、(2)直接見えなくても認識することができる、(3)情報を書き換えることができる、などの特徴を有している。
【0030】
このICチップをそのままの状態で部品に埋め込むには困難であるほか、取り付けた場合でも基板若しくは電子回路などを破損させてしまう可能性があるため、ICチップを保護するために、媒体で保護することが好ましい。
【0031】
保護する媒体の材質はいずれの材質、形状であっても良く、たとえば、紙、繊維、木材、樹脂、金属、貝・角・皮などの天然素材などが挙げられる。
【0032】
また、形状は、部品に取り付けることができ、部品としての機能に影響しなければいずれの大きさ、形状であっても良い。
【0033】
請求項4では、前記のICチップ搭載媒体がICタグであることを特徴とする住宅模型とするものである。
【0034】
ICタグは、ICチップとアンテナとを備えたものであるが、ICチップと共にアンテナをも備えることにより、非接触による情報の伝達が可能となる。
【0035】
これにより、離れた距離でも、ICチップに記録された情報を読み取り、書き込みすることができる。なお、ICタグは、電池或いは電源の内臓の有無、電磁波の伝達方式、通信方式などを問わず、ICチップとアンテナとを備えた全てのものを含むものとする。
【0036】
請求項5では、前記の住宅模型の各部品毎に記録されている、各部品に対応する建築相当金額を含む部品属性データを用いて設計図を作成することを特徴とする模型を用いた住宅建築支援システムとするものである。
【0037】
各部品に記録されている建築相当金額を含む部品属性データを収集し、設計データに変換することで、CADソフトなどで簡単に設計図ができるものである。
【0038】
請求項6は前記の住宅模型の各部品毎に記録されている、各部品に対応する建築相当金額を含む部品属性データを用いて、住宅建築費用の積算ができることを特徴とする住宅建築支援システムとするものである。
【0039】
各部品に記録されている建築相当金額を含む部品属性データを収集し、積算データに変換することで、積算ソフトなどで簡単に住宅建築の積算ができるものである。
【発明の効果】
【0040】
本発明は以下の効果を奏する。
1)住宅模型を組み立てることにより、施主が直接に設計することができる。
【0041】
2)各部品毎にその部品に対応する建築相当金額が設定されているため、出来上がった住宅模型より、住宅建築費用を積算することができる。
【0042】
3)建築相当金額を含む部品属性データが部品に記録されていることにより、データとして入手し、コンピュータにより処理することができ、簡単に、設計情報や積算情報として活用できる。
【0043】
4)ICチップを使用することにより、部品に関する種々のデータを記録でき、制御することもでき、数百にもなる部品を分類して管理することもでき、部分的な改築費用なども算出可能である。
【0044】
5)ICタグを使用することにより、無線でICチップの情報を入手できる。
【0045】
6)部品の情報をデータとして入手できるため、設計データとして図面を簡単に製図することができる。
【0046】
7)部品の情報をデータとして入手できるため、積算データとして住宅建築に関する費用を簡単に積算することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明による模型を用いた住宅建築支援システムの実施例を示す概略図である。
【図2】本発明による模型を用いた住宅建築支援システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
図1は、本発明による模型を用いた住宅建築支援システムの実施例を示す概略図である。本実施例は、模型の各部品にICタグが埋め込まれているものである。
【0049】
あらかじめ、各部品には、ICチップにその部品に対応する建築相当金額が記録されている。
【0050】
建築相当金額は、以下のようなデータが記録される。
1)部品の部材属性
(1)部品名
(2)部品番号
(3)部品規格
(4)材質
(5)サイズ
(6)色
(7)部品特性
2)部品の単価
3)部品の設計費用
4)部品の施工費用
5)部品の管理費用
6)その他費用
【0051】
施主は、これらの情報が記録された部品を自由に選択して、自分の希望に沿った住宅を組み立てて行く。
【0052】
必要に応じて、部品を交換することもできる。
【0053】
また、組み立ての手順は、実際の施工と同様に、基礎から順次屋根まで、実施の工事のように順番に組み立てていく。
【0054】
組み立てる手順は、マニュアル、DVDなどで独自に行ってもよく、アドバイザーに指導してもらっても良い。
【0055】
図1は、組み立てた住宅模型の建築費用を積算する場合の使用例を示す。住宅模型1をICタグの情報を読み取るアンテナ板2の上に置き、その情報をパソコン3に送り処理する。
【0056】
模型1の部品に埋め込まれたICタグの無線機能により、ICチップに記録された情報は、アンテナ板2に載せるだけで、情報が読み取られ、パソコン3で処理され、積算されて、この模型1を実際に建築した場合にかかる費用が積算されて画面に表示される。
【0057】
図2は、本発明による模型を用いた住宅建築支援システムの構成を示すブロック図である。
【0058】
模型の部品に埋め込まれたICタグ4からアンテナ板2に無線で情報が取得され、コンピュータの制御部に送信され、情報が読み取られる。
【0059】
制御部では、ICチップの情報を入手すると、インターネットを介して模型部品のデータベースと接続して、部品のデータを照合し、部品DBから、詳細な情報を取得する。
【0060】
詳細な情報を元に、制御部では図面データと積算データを作成し、画面にこの住宅模型情報から作成される平面図を表示し、住宅に使用された部品を分類して表示し、建築費用を積算して表示する。
【0061】
尚、本実施例では、部品に対応する建築相当金額を含む部品属性データをICチップに記憶して埋め込んだが、データを埋め込めるものであればいずれでもよく、バーコードや磁気素子など他の記憶手段を用いても良いことは無論である。
【0062】
また、部品番号を印字して、部品番号から、部品データベースに接続して詳細情報を入手するものでも良い。
【0063】
また、部品データベースは、パソコンに記録されておいたものでもよく、DVDなどの記憶媒体を用いて読み込むようにしても良い。
【0064】
また、部品データベースは、建築業者が管理し、実際に建築する時期に応じた部材の供給状況や価格状況に即時に対応できるようにすることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
住宅模型に限らず、大型の建築物まで広く建築物全般に使用できる。また、部分的な改築の費用の見積もりにも使用できる。また、建築物以外でも模型化できるものであればいずれにも適用できる。
【符号の説明】
【0066】
1 住宅模型
2 アンテナ板
3 パソコン
4 ICタグ
5 制御部
6 積算データ
7 図面データ
8 表示部
9 インタネット回線
10 部品データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各部品を選択して自由に組み立てることができる住宅模型において、各部品毎にその部品に対応する建築相当金額が設定されていることを特徴とする住宅模型。
【請求項2】
前記の各部品において、部品に対応する建築相当金額を含む部品属性データが各部品に記憶されていることを特徴とする請求項1に記載の住宅模型。
【請求項3】
前記の部品に対応する建築相当金額を含む部品属性データは、ICチップに記録されており、該ICチップ搭載媒体が各部品に埋め込まれていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の住宅模型。
【請求項4】
前記のICチップ搭載媒体がICタグであることを特徴とする請求項3に記載の住宅模型。
【請求項5】
前記の住宅模型の各部品毎に記録されている、各部品に対応する建築相当金額を含む部品属性データを用いて設計図を作成することを特徴とする模型を用いた住宅建築支援システム。
【請求項6】
前記の住宅模型の各部品毎に記録されている、各部品に対応する建築相当金額を含む部品属性データを用いて、住宅建築費用の積算ができることを特徴とする住宅建築支援システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−217350(P2010−217350A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−62154(P2009−62154)
【出願日】平成21年3月15日(2009.3.15)
【出願人】(508334340)株式会社未来企画 (3)
【Fターム(参考)】