説明

住宅用ガラス遮熱体験装置

【課題】本発明の目的は、住宅環境における夏季の日射遮蔽の重要性や冬季の日射熱取得の重要性をより現実に近似したかたちで容易に理解又は体験できる手軽な住宅用ガラス遮熱体験装置を提供することである。
【解決手段】2つ並べた筐体3に、遮熱性能の異なるガラス2を選択的に取り付け、或いは、前記ガラス2を選択的に取り付けると共に前記ガラス面への日射を遮る遮熱部材6を組み合わせて、光源4により擬似日射を行った際の、前記ガラス2による遮熱効果、或いは、前記ガラス2と前記遮熱部材6の組み合わせによる遮熱効果を、温度感知手段5を通して得た前記各筐体3内の温度により表現することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅に使用するガラスの遮熱性能の違いを体験することの可能な住宅用ガラス遮熱体験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅に使用するガラスの遮熱性を寒冷地または酷暑地の温度において体験させる装置としては、特開平10−20759号公報(以下、特許文献1と記す)に開示されている技術がある。この特許文献1には、寒冷地の温度を内部温度とした箱または酷暑地の温度を内部温度とした箱の表面に、遮熱性の高いガラスと通常のガラスを貼設し、前記内部温度に対して遮熱性の異なるガラスの外側表面温度を表示する表示装置が開示されている。すなわち、特許文献1に記載の装置は、遮熱性の異なるガラス自体の熱伝導測定装置である。
【0003】
【特許文献1】特開平10−20759号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
住宅では、窓(開口部)から入射する太陽光のエネルギーを活用するために、夏は前記太陽光による室内の明るさが極力減らない範囲で前記太陽光を遮蔽し、冬は前記太陽光を室内へ多く取り入れることが望ましい。
【0005】
ここで例えば、夏季に室内の温度を上げないように住宅に使用するガラスとして遮熱(断熱)ガラスを用いると、熱透過ガラスに比べて前記太陽光を遮蔽できるため、室内の温度上昇を抑制できる。しかしながら、逆に前記太陽光を室内に多く取り入れたい冬季にも前記太陽光を遮蔽して室内の温度上昇を抑制してしまうため、暖房機器による暖房エネルギー負荷が増えてしまう。
【0006】
一方、冬季に室内の温度を上げるために住宅に使用するガラスとして熱透過ガラスを用いた場合、遮熱ガラスに比べて前記太陽光が多く取り入れられるため、室内の温度上昇が増し、暖房機器による暖房エネルギー負荷を減らすことができる。しかしながら、逆に夏季にも前記太陽光を多く取り入れてしまうため、室内の温度が上昇してしまい、冷房機器による冷房エネルギー負荷が増えてしまう。
【0007】
すなわち、夏季の日射遮蔽を優先すると冬季の日射熱取得が犠牲になってしまい、一方、冬季の日射熱取得を優先すると夏季の日射遮蔽が犠牲になってしまう。このような状況において、例えば、種々ある住宅用ガラスの中から使用目的に応じたガラスを選ぶにあたって、手軽な情報提供手段の提供が望まれる。
【0008】
前述の情報提供手段の1つとしては、住宅展示場などの施設にある展示住宅が考えられ、この展示住宅の環境そのものの体験を通して情報を提供することができる。しかしながら、これでは情報提供手段としては大がかりであり、設置場所、コストなどの制約も多く、手軽な情報提供手段として好ましいとは言えない。
【0009】
一方、前述した特許文献1に記載の技術も1つの情報提供手段として考えられる。しかしながら、特許文献1に記載の技術は遮熱性の異なるガラスの外側表面の温度を表示するだけであるため、そのガラス単体の遮熱性能を見ることは可能であるが、様々な住宅環境に応じたガラス選び、及びそのガラスを使用した際の住宅室内の温度状況などを確認することは困難である。
【0010】
そこで本発明は、従来の技術を更に発展させたものであって、その主たる目的は、住宅に使用する遮熱性能の異なるガラスを選択的に使用した住宅室内の温度やその温度の比較により、また時間に対する温度変化の比較により、住宅環境における夏季の日射遮蔽の重要性や冬季の日射熱取得の重要性をより現実に近似したかたちで容易に理解又は体験できる手軽な住宅用ガラス遮熱体験装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明の代表的な構成は、住宅に使用する遮熱性能の異なる複数種のガラスと、前記ガラスが着脱可能に取り付けられる部屋を模擬した筐体と、前記筐体に取り付けられたガラス面に向けて光を照射することによって擬似的な日射を行う光源と、前記筐体に取り付けられたガラス面への擬似日射を遮ることによって遮熱を行う遮熱部材と、前記筐体内の温度を感知するための温度感知手段と、を有し、少なくとも2つ並べた筐体に、前記ガラスを選択的に取り付け、或いは、前記ガラスを選択的に取り付けると共に前記遮熱部材を組み合わせて、前記光源により擬似日射を行った際の、前記ガラスによる遮熱効果、或いは、前記ガラスと前記遮熱部材の組み合わせによる遮熱効果を、前記温度感知手段を通して得た前記各筐体内の温度により表現することを特徴とする。
【0012】
また前記遮熱部材は、前記ガラスを通して前記筐体内に入射する光を遮る遮蔽範囲が異なる遮熱部材、或いは、前記遮蔽範囲が調整可能な遮熱部材であり、これらの遮熱部材を、前記ガラスを選択的に取り付けた筐体に対して選択的に組み合わせることを特徴とする。
【0013】
また上記各構成において、前記光源による光の照射量又は前記遮熱部材による前記ガラス面への擬似日射を遮る範囲を変更することによって、前記光源による前記ガラス面に向けた擬似日射量を変更することを特徴とする。
【0014】
更に上記構成において、前記光源による光の照射時間を変更することによって、前記光源による前記ガラス面に向けた擬似日射時間を変更することを特徴とする。
【0015】
また、前記筐体は前記着脱可能に取り付けられたガラス面以外の面が断熱されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、住宅に使用する遮熱性能の異なるガラスによる遮熱効果を、前記ガラスを選択的に取り付けた筐体内の温度により確認することができる。また、住宅に使用する遮熱性能の異なるガラスと様々な遮熱部材との組み合わせによる遮熱効果を、前記ガラスを選択的に取り付けると共に前記遮熱部材を組み合わせた筐体内の温度により確認することができる。更に、少なくとも2つ並べた筐体に、前記ガラスを選択的に取り付け、或いは、前記ガラスを選択的に取り付けると共に前記遮熱部材を組み合わせることで、前記ガラスによる遮熱効果の違いや、前記ガラスと前記遮熱部材の組み合わせによる遮熱効果の違いを、前記各筐体内の温度の比較により確認することができる。
【0017】
また、部屋を模擬した筐体に、ガラスを選択的に取り付け、更にはこれに遮熱部材を組み合わせて、この筐体を少なくとも2つ並べて、光源を用いた照射により擬似日射を行うため、簡易かつ低コストな構成である。また、住宅に使用するガラスの選択やガラスと遮熱部材の組み合わせなど、顧客の要求に応じて前記ガラスや遮熱部材を利用した住宅環境を容易に再現することができる。更に、そのガラスや遮熱部材による遮熱効果の確認対象が、室内温度に相当する筐体内部の温度なので、擬似的に再現した環境ではあるものの、その住宅環境を把握する上で有用な情報を手軽に提供でき、その住宅環境における現実に近似した遮熱効果を容易に理解又は体験できる。また、省スペースでの手軽な情報提供が可能である。
【0018】
また前記ガラスを通して前記筐体内に入射する光を遮る遮蔽範囲が異なる遮熱部材、或いは、前記遮蔽範囲が調整可能な遮熱部材を、前記ガラスを選択的に取り付けた筐体に対して選択的に組み合わせることで、顧客の要求に応じた更に細かな対応が可能となり、また様々な利用法を情報提供することができる。
【0019】
このように本発明によれば、顧客が要求する現実的な環境に近似した環境の再現、或いは、顧客に勧めたい使用環境の再現が容易にでき、その環境での遮熱効果を筐体内の温度を通して顧客が容易に理解できるように情報提供することができる。そして、住宅に使用するガラスを選択的に取り付けた筐体内の温度や、前記ガラスを選択的に取り付け更に遮熱部材を組み合わせた筐体内の温度や、それら温度の比較を通して、住宅環境における夏季の日射遮蔽の重要性や冬季の日射熱取得の重要性の理解を深め、太陽光が住宅の室温にどのような影響を及ぼすのかを容易に体験できる。また太陽光の活用の仕方、遮熱部材による対策の効果をより現実的に体感することができ、顧客の賢い住まい方にもつなげることが可能となる。
【0020】
また、前記光源による前記ガラス面に対する擬似日射量を変更するにあたって、前記光源による光の照射量又は前記遮熱部材による前記ガラス面への擬似日射を遮る範囲を変更可能に構成することで、例えば、室内への日射量が異なる状況を、実際の使用状況を想定した、より現実に近似したかたちで擬似的に再現することができる。その上で更に、前述の室内への日射量が異なる状況における遮熱効果を前記筐体内の温度により確認することができ、前記遮熱効果の違いを前記筐体内の温度の比較により確認することができる。
【0021】
また前記各筐体内の温度を表現する温度感知手段を通して、時間に対する前記各筐体内の温度変化(すなわち時間に対する住宅室内の温度変化)をも理解することができる。よって、遮熱条件の異なる環境(ガラス、遮熱部材の選択及び組み合わせ)における各筐体内の温度上昇度合い及び温度上昇度合いの違いが容易に理解でき、遮熱効果及びその違いがより理解しやすい。
【0022】
前記温度感知手段としては、筐体内に配置した温度計、筐体内に配置した温度センサーと該温度センサーからの情報を表示する表示部とを組み合わせた温度計、または日射計であってもよい。あるいは筐体の面の一部を熱伝導部材にし、該熱伝導部材を通して筐体内の温度を表現するようにしてもよく、あるいは前記筐体の一部に開閉可能な蓋を設けて、前記筐体内空間の温度が体感可能な構成としてもよい。また温度感知手段をこれらの例示に限定されるものではなく、この温度感知手段を通して住宅の室内温度が確認できる構成であれば、その他の構成であってもよい。
【0023】
また前記筐体が着脱可能に取り付けられたガラス面以外の面が断熱されていることで、断熱性の高い住宅を擬似的に再現することができる。断熱性の高い住宅においては、窓(開口部)からの熱取得により室温が上昇し、そのまま高温を維持しやすいという特徴がある。このため、前記擬似的に再現した環境を用いて、その断熱性の高い住宅環境における前記遮熱効果及び遮熱効果の違いを容易に体験できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、それらの相対配置などは、本発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0025】
〔第1実施形態〕
第1実施形態に係る住宅用ガラス遮熱体験装置について説明する。
【0026】
本実施形態に係る住宅用ガラス遮熱体験装置は、住宅に使用するガラスの遮熱効果、前記ガラスと遮熱スクリーンなどの遮熱部材との組み合わせによる遮熱効果、及びこれらの遮熱効果の違いを、室内温度に相当する筐体内温度を通して擬似的に体験させるものである。
【0027】
図1に示すように、住宅用ガラス遮熱体験装置1は、ガラス2と、前記ガラス2が取り付けられる筐体3と、光を照射することによって擬似的な日射(以下、擬似日射という)を行う光源4と、前記擬似日射を遮ることによって遮熱を行う遮熱部材6と、前記筐体3内の温度を感知するための温度感知手段5と、を有している。
【0028】
前記筐体3は、前記ガラス2が着脱可能に取り付けられる部屋を模擬した筐体である。本実施形態では、筐体3として、図1に示すように、2つの筐体3A,3Bが一体に形成されたものを用いており、この一体形成された筐体3A,3Bは仕切り壁3cで仕切られている。各筐体3A,3Bは、それぞれ開口部を有している。この各筐体3A,3Bの開口部は、前記ガラス2(更には遮熱部材6)が着脱可能に取り付けられるようになっている。
【0029】
なお、本実施形態では、筐体3として、2つの筐体3A,3Bが一体形成されたものを例示しているが、これに限定されるものではなく、それぞれ別体の筐体を並べて配置した構成としても良い。
【0030】
前記筐体3に着脱可能に取り付けられるガラス2は、住宅に使用する遮熱性能の異なる複数種のガラスであり、本実施形態では、熱透過ガラス2a、遮熱ガラス2bを例示している。
【0031】
前記光源4は、前記筐体3に取り付けられたガラス2面に向けて光を照射することによって擬似日射を行うものである。本実施形態では各ガラス2a,2b毎に光源4,4を配置している。光源4は、空間8を隔てて、前記各筐体3A,3Bに取り付けられたガラス2面に向けて光を照射するように配置されている。本実施形態では、前記光源4,4を光源支持部材7で支持している。また本実施形態では光源4として、白熱灯を使用しているが、これに限定されるものではなく、例えば擬似日射のための光(擬似太陽光)が照射可能な光源であればその他の光源であっても良い。或いは、擬似日射と同様の熱を放射するヒーターなどの熱源であっても良い。
【0032】
前記遮熱部材6は、前記筐体3に取り付けられたガラス2面への擬似日射を遮ることによって遮熱を行うものである。この遮熱部材6としては、前記ガラス2を通して前記筐体3内に入射する光を遮る遮蔽範囲が異なる遮熱部材、或いは、前記遮蔽範囲が調整可能な遮熱部材がある。具体的には、遮蔽範囲が異なる遮熱部材としては、アウタースクリーンや面格子目隠しルーパーなどがある。このアウタースクリーン、面格子目隠しルーバーは、室外にあたる前記ガラス2の外側に着脱可能に取り付けられるものである。また遮蔽範囲が調整可能な遮熱部材としては、庇、オーニングテントなどがある。この庇、オーニングテントは、室外にあたる前記ガラス2の外側に引き出し収納可能に設けられ、更には角度調整可能に設けられるものである。
【0033】
また、前記遮熱部材6は前述したものに限定されるものではなく、遮蔽範囲が調整可能な遮熱部材として、室内にあたる前記ガラス2の内側に設けられるカーテン、ブラインドなどであってもよい。また、室外における遮熱部材6は、前述したガラス外側に設けられるものだけでなく、例えば実際の住宅と太陽との間に介在する周囲建物や樹木等を再現した模型などであってもよく、これら模型を前記筐体3と前記光源4との間に介在させて実際の使用環境を擬似的に再現することも考えられる。
【0034】
前記温度感知手段5は、図1に示すように、前記各筐体3A,3B毎に設けられている。本実施形態では、前記温度感知手段5として、筐体内に配置した温度センサー5aと前記温度センサー5aからの情報を表示する表示部5bとからなる温度計を用いている。なお、ここでは、温度センサー5aを室内に相当する各筐体3A,3B内の空間に1つずつ配置した場合を例示したが、これに限定されるものではなく、例えば、ガラス内側面、ガラス外側面、室外に相当する空間8などに適宜配置し、前記表示部に各センサー毎の温度を表示するように構成しても良い。
【0035】
そして本実施形態に係る住宅用ガラス遮熱体験装置1は、仕切られた2つの筐体3A,3Bに、前記ガラス2を選択的に取り付け、或いは、前記ガラス2を選択的に取り付けると共に前記遮熱部材6を組み合わせて、前記光源4により擬似日射を行った際の、前記ガラス2による遮熱効果、或いは、前記ガラス2と前記遮熱部材6の組み合わせによる遮熱効果を、前記温度感知手段5を通して得た前記各筐体3A,3B内の温度により表現するようにしている。以下、詳しく説明する。
【0036】
例えば、一方の筐体3Aに、複数種のガラス2の中から例えば熱透過ガラス2aを選んで取り付ける。また他方の筐体3Bに、複数種のガラス2の中から前記熱透過ガラス2aとは遮熱性能の異なる遮熱ガラス2bを取り付ける。取り付けられたガラス2a,2bによって閉塞された各筐体3A,3B内の空間に温度センサー5aを配する。そして、前記各ガラス2a,2b面に光を照射するように空間8を隔てて光源4,4(例えば300Wの白熱灯)を配する。そして、この横に並んでいる2つの筐体3A,3Bに対して、光源4,4を用いて同じ条件で擬似日射を行う。本実施形態では、この擬似日射を、ガラス面から同一の所定距離L(例えば3〜50cm)に配した同一出力の光源4,4を用いて、同一の所定時間T(例えば5分程度)だけ光を照射して行った。この擬似日射を行った際の室内に相当する各筐体3A,3B内の空間の温度を、各筐体3A,3B内の空間に配置した温度センサー5a,5aがそれぞれ検知し、その情報が装置外に配した各表示部5b,5bに表示される。この各表示部5b,5bに表示された温度により、各筐体3A,3Bに取り付けた各ガラス2a,2bによる遮熱効果を確認することができる。更に、前記各表示部5b,5bに表示された室内温度に相当する各筐体3A,3B内の温度の比較により、遮熱性能の異なるガラス2a,2bによる遮熱効果の違いも確認することができる。
【0037】
なお、本実施形態では、1つの筐体の大きさを1辺が約30〜50cm程度の直方体とし、この筐体に対して光源により擬似日射を行うようにしている。これは、遮熱性能の異なるガラス(熱透過ガラスと遮熱ガラス)の遮熱効果を比べる際に、短い時間でその遮熱効果の違いが結果(例えば照射時間約1分程度で数℃の室内温度差が生じる)として表れるので、筐体寸法として好適である。更に省スペースでの手軽な情報提供も可能となるため、筐体寸法として好適である。このように短時間での情報提供を可能とすることで、顧客が住宅の窓を選択するにあたって、より現実的な情報を素早く提供することができる。
【0038】
更に、前記熱透過ガラス2aを取り付けた一方の筐体3Aに、複数種ある遮熱部材6の中から例えばアウタースクリーン6aを選んで組み合わせる。そして、この一方の筐体3Aと前記遮熱ガラス2bを取り付けた他方の筐体3Bに対して、前述と同様に、光源4,4を用いて同じ条件で擬似日射を行う。この擬似日射を行った際の室内に相当する各筐体3A,3B内の空間の温度を、各筐体3A,3B内の空間に配置した温度センサー5a,5aがそれぞれ検知し、その情報が各表示部5b,5bに表示される。この各表示部5b,5bに表示された温度により、他方の筐体3Bに取り付けた遮熱ガラス2bによる遮熱効果、及び一方の筐体3Aに取り付けた熱透過ガラス2aとこれに組み合わせたアウタースクリーン6aとによる遮熱効果を確認することができる。更に、前記各表示部5b,5bに表示された各筐体3A,3B内の温度の比較により、他方の筐体3Bに取り付けた遮熱ガラス2bによる遮熱効果と、一方の筐体3Aに取り付けた熱透過ガラス2aとこれに組み合わせたアウタースクリーン6aとによる遮熱効果との違いも確認することができる。
【0039】
上記の比較において、冬季の日射量を再現する場合、光源4による照射時間Tを第1の時間T1(例えば5分)にし、これに対して夏季の日射量を再現する場合は、光源4による照射時間Tを前記第1の時間T1よりも長い第2の時間T2(例えば20分)にすることで、冬季及び夏季を擬似的に再現できる。例えば、上記比較において、遮熱性能の異なるガラス2a,2bの比較の際には冬季の擬似日射を行い、遮熱ガラス2aと熱透過ガラス2a+アウタースクリーン6aとの比較の際には夏季の擬似日射を行うことで、室内温度に相当する各筐体内温度を通して、冬季、夏季における遮熱効果及びその遮熱効果の違いを体験することができ、住宅環境における夏季の日射遮蔽の重要性や冬季の日射熱取得の重要性の理解を深めることができる。
【0040】
なお、前記ガラスの種類と前記遮熱部材の種類は様々であるため、必要に応じて、あるいは顧客の要求に応じて、適宜選択的でき、また組み合わせることができるものであり、前述の例示に限定されるものではない。
【0041】
このように、本実施形態によれば、住宅に使用する遮熱性能の異なる熱透過ガラス2a,遮熱ガラス2bによる遮熱効果を、前記ガラス2a,2bを選択的に取り付けた各筐体3A,3B内の温度により確認することができる。また、前記熱透過ガラス2aとアウタースクリーン6aとの組み合わせによる遮熱効果を、前記一方の筐体3A内の温度により確認することができる。更に、熱透過ガラス2aと遮熱ガラス2bとの遮熱効果の違いや、遮熱ガラス2bと熱透過ガラス2a+アウタースクリーン6aとの遮熱効果の違いを、前記各筐体3A,3B内の温度の比較により確認することができる。
【0042】
また、部屋を模擬した筐体3に、ガラス2a,2bを選択的に取り付け、更にはこれに遮熱部材6を組み合わせて、この筐体3を2つ並べて、光源4を用いた照射により擬似日射を行うため、簡易かつ低コストな構成である。また、住宅に使用するガラス2の選択やガラス2と遮熱部材6の組み合わせなど、顧客の要求に応じて前記ガラス2や遮熱部材6を利用した住宅環境を容易に再現することができる。更に、そのガラス2や遮熱部材6による遮熱効果の確認対象が、室内温度に相当する筐体3内部の温度なので、擬似的に再現した環境ではあるものの、その住宅環境を把握する上で有用な情報を手軽に提供でき、その住宅環境における現実に近似した遮熱効果を容易に理解又は体験できる。また、省スペースでの手軽な情報提供が可能である。
【0043】
また前記遮熱部材6としての、遮蔽範囲が異なる遮熱部材や遮蔽範囲が調整可能な遮熱部材を、前記ガラス2を選択的に取り付けた筐体3に対して選択的に組み合わせることで、顧客の要求に応じた更に細かな対応が可能となり、また様々な利用法を情報提供することができる。
【0044】
このように本実施形態によれば、顧客が要求する現実的な環境に近似した環境の再現、或いは、顧客に勧めたい使用環境の再現が容易にでき、その環境での遮熱効果を筐体内の温度を通して顧客が容易に理解できるように情報提供することができる。そして、住宅に使用するガラス2を選択的に取り付けた筐体3内の温度や、前記ガラス2を選択的に取り付け更に遮熱部材6を組み合わせた筐体3内の温度や、それら温度の比較を通して、住宅環境における夏季の日射遮蔽の重要性や冬季の日射熱取得の重要性の理解を深め、太陽光が住宅の室温にどのような影響を及ぼすのかを容易に体験できる。また太陽光の活用の仕方、遮熱部材による対策の効果をより現実的に体感することができ、顧客の賢い住まい方にもつなげることが可能となる。
【0045】
〔他の実施形態〕
前述した実施形態では、1つの光源支持部材で複数の光源を支持する構成を例示したが、これに限定されるものではなく、例えば1つの光源を1つの光源支持部材で支持する構成であっても良い。また筐体毎(開口部毎)に光源を配した構成を例示したが、1種のガラス(或いは1種のガラスと遮熱部材の組み合わせ)が取り付けられた1つの筐体に対する光源の数はこれに限定されるものではない。また、前述した実施形態では、筐体として開口部を有する中空の立方体を例示しているが、これに限定されるものではなく、例えば実際の住宅をスケールダウンして模擬したような筐体など、その他の筐体であっても良い。
【0046】
また前述した実施形態では、光源による擬似日射量について特に限定はしなかったが、この擬似日射量を変更可能な構成としても良い。
【0047】
前記光源4による前記筐体3に取り付けたガラス2面に対する擬似日射量を変更するにあたって、前記光源4による光の照射量又は前記遮熱部材による前記ガラス面への擬似日射を遮る範囲を変更可能に構成しても良い。なお、光源の照射量の変更は、出力調整が可能な光源を用いても良いし、或いは出力が異なる光源を選択的に利用するようにしても良い。この構成により、例えば、季節や天候など、室内への日射量が異なる状況を、実際の使用状況を想定した、より現実に近似したかたちで擬似的に再現することができる。その上で更に、前述の室内への日射量が異なる状況における遮熱効果を前記筐体3内の温度により確認することができ、前記遮熱効果の違いを前記筐体3内の温度の比較により確認することができる。
【0048】
また前記光源4による前記筐体3に取り付けたガラス2面に対する擬似日射量を変更するにあたって、前記筐体3に対する光源4の位置又は前記光源4に対する筐体3の位置を変更可能に構成しても良い。この構成により、例えば、室内への日射量の変化、住宅に対する太陽の位置、住宅の開口部の方位など、室内への日射の取り入れ方が異なる状況を、実際の使用状況を想定した、より現実に近似したかたちで擬似的に再現することができる。その上で更に、前述の室内への日射の取り入れ方が異なる状況における遮熱効果を前記筐体3内の温度により確認することができ、前記遮熱効果の違いを前記筐体3内の温度の比較により確認することができる。
【0049】
また前述した実施形態における筐体3が、着脱可能に取り付けられたガラス2面以外の面が断熱された構成としても良い。この構成により、断熱性の高い住宅を擬似的に再現することができる。断熱性の高い住宅においては、窓(開口部)からの熱取得により室温が上昇し、そのまま高温を維持しやすいという特徴がある。このため、前記擬似的に再現した環境を用いて、その断熱性の高い住宅環境における前記遮熱効果及び遮熱効果の違いを容易に体感させることができる。
【0050】
また前述した実施形態では筐体を2つ並べて各筐体内温度を比較するようにしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、3つ以上の筐体を並べてこれら各筐体内温度を比較するようにしても良い。例えば、3つの筐体を並べた場合、熱透過ガラス、遮熱ガラス、熱透過ガラス+アウタースクリーンの遮熱効果を、各筐体内温度を通して比較することができる。
【0051】
また前述した実施形態では筐体を横に並べた場合を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、筐体を縦に積み上げるように並べても良し、縦横に並べても良い。またこれらに向けて光を照射する光源の配置位置、個数は前述した実施形態の例示に限定されるものではなく、適宜必要に応じて設定すれば良い。
【0052】
また前述した実施形態では温度感知手段5として、筐体内に配置した温度センサー5aと該温度センサー5aからの情報を表示する表示部5bとからなる温度計を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、筐体内に配置した目視可能な温度計、或いは筐体内に配置した日射計であってもよい。また、前記筐体の面の一部を熱伝導部材にし、該熱伝導部材を通して筐体内の温度を感知するようにしてもよい。また、前記筐体の一部に開閉可能な蓋を設けて、前記筐体内空間の温度が体感可能な構成としてもよい。また温度感知手段はこれらの例示に限定されるものではなく、この温度感知手段を通して住宅の室内温度が確認できる構成であれば、その他の構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の活用例として、住宅以外にも、事務所ビル、公共建物等の他の建物において、ガラスやこれに組み合わせる遮熱部材の遮熱効果やその違いを把握するための情報提供に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係る住宅用ガラス遮熱体験装置の一形態を示す模式断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 …住宅用ガラス遮熱体験装置
2 …ガラス
2a …熱透過ガラス
2b …遮熱ガラス
3,3A,3B …筐体
3c …仕切り壁
4 …光源
5 …温度感知手段
5a …温度センサー
5b …表示部
6 …遮熱部材
6a …アウタースクリーン
7 …光源支持部材
8 …室外空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
住宅に使用する遮熱性能の異なる複数種のガラスと、
前記ガラスが着脱可能に取り付けられる部屋を模擬した筐体と、
前記筐体に取り付けられたガラス面に向けて光を照射することによって擬似的な日射を行う光源と、
前記筐体に取り付けられたガラス面への擬似日射を遮ることによって遮熱を行う遮熱部材と、
前記筐体内の温度を感知するための温度感知手段と、
を有し、
少なくとも2つ並べた筐体に、前記ガラスを選択的に取り付け、或いは、前記ガラスを選択的に取り付けると共に前記遮熱部材を組み合わせて、前記光源により擬似日射を行った際の、前記ガラスによる遮熱効果、或いは、前記ガラスと前記遮熱部材の組み合わせによる遮熱効果を、前記温度感知手段を通して得た前記各筐体内の温度により表現することを特徴とする住宅用ガラス遮熱体験装置。
【請求項2】
前記遮熱部材は、前記ガラスを通して前記筐体内に入射する光を遮る遮蔽範囲が異なる遮熱部材、或いは、前記遮蔽範囲が調整可能な遮熱部材であり、これらの遮熱部材を、前記ガラスを選択的に取り付けた筐体に対して選択的に組み合わせることを特徴とする請求項1に記載の住宅用ガラス遮熱体験装置。
【請求項3】
前記光源による光の照射量又は前記遮熱部材による前記ガラス面への擬似日射を遮る範囲を変更することによって、前記光源による前記ガラス面に向けた擬似日射量を変更することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の住宅用ガラス遮熱体験装置。
【請求項4】
前記筐体は前記着脱可能に取り付けられたガラス面以外の面が断熱されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の住宅用ガラス遮熱体験装置。

【図1】
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【公開番号】特開2006−227281(P2006−227281A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−40609(P2005−40609)
【出願日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(303046244)旭化成ホームズ株式会社 (703)
【Fターム(参考)】