説明

体幹運動装置

【課題】治療効果の届き難い体幹深部の関節及び筋肉運動を効率的に行い、慢性的なコリや痛みを解消する新規の運動方法及び装置を提供する。
【解決手段】外力発生部1とシャフト2と脚台3を有し、外力発生部1は外力を発生し、シャフト2は所定の周期を有する外力を生体に加えて当該生体の体幹部の共振運動を生じさせる外力供給手段を備えた体幹運動装置4からなる。脚台3は体幹の所定方向の運動を検出する。装置表面のパネルには、生体に加える外力の周期や運動時間等の運動条件を入力する操作部を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体幹部の固有振動数に共振する周波数の力を外部から生体に供給し、体幹の共振運動を生じさせ、体幹部を効率よく大きく運動させ、深部の関節運動も生じさせ、体深部の筋肉のこりや痛みを効果的に治療することのできる、新規の体幹運動法及び装置を提供することを目的とする。
【0002】
体幹運動には、左右側方向への運動、前後方向への運動、身長方向への伸縮運動、捻転運動があり、例えば、力を抜いた状態で体幹に左右方向の外力を加えると、体幹は左右方向の湾曲し、外力をある周期で与えると、体幹はその周期で湾曲を繰返す。本発明では、湾曲を繰返すことを振動としている。
体幹にその固有振動数に相当する周期の外力を加えると、体幹を共振させることができる。
上記4種類の運動に対する体幹部の固有振動数はそれぞれ異なる。
【0003】
後述のように、体幹深部の関節や筋機能の改善には当該部位の運動をおこなうことが効果的である。
対象者によっては、この中の一つの方向の運動をおこなわせたいこともあるし、いくつかの運動を同時に行わせる複合運動をおこなわせたい場合がある。
一つの運動をおこなわせたい場合は、その運動に対する体幹の固有周波数に合わせて外力を与えて、共振運動を生じさせればよい。
通常は、複数方向の運動をおこなわせたい場合が多いが、この場合、優先したい方向の運動の固有周波数に合わせて外力を作用させてもよいし、複合運動時の体幹全体の運動が最も大きくなるように外力を作用させてもよい。
【背景技術】
【0004】
人体は脊柱と脊柱近傍の脊柱傍筋等で立位を維持している。このため、脊柱及び脊柱傍筋には体重が負荷として常にかかり、これがストレスとなり、筋肉の過剰緊張が生じる。
筋緊張が持続すると、関節可動域が低下し、筋力低下を来たし、血流が不足して痛みが生じる。この痛み信号は脳に伝えられ、交感神経と体性(運動)神経が刺激され、血管と筋肉がさらに収縮する。同時に、副腎も刺激され、カテコラミンが分泌され、血管収縮が助長され、局所の血流と酸素欠乏がおこり、発痛物質が生成され痛みが増悪する。この状態を放置すると、脊髄で反射的に交感神経を刺激し痛みはさらに増加する。これを痛みの悪循環という。
このように、慢性の痛みには体性神経と自律神経が関与しており、痛みを治療するには、この両方の神経を対象にしなければならない。
筋緊張を解消し痛みを治療するには、温熱療法や低周波療法が効果的である。しかし、これらの治療法は体幹深部には効果が及びにくいため、慢性の痛みに悩まされることが多い。
【0005】
体幹深部の痛みには運動療法が効果的である。ただし、深部まで十分に運動させることが重要である。
本発明は効率よく体幹深部の関節及び筋肉運動を行い、効果的に深部の関節や筋肉の機能を回復し、血流を改善して、こりや痛みを治療するものである。
【0006】
本発明と類似の運動を行うものに金魚運動がある。これは、仰臥位になって、装置の脚受け部に下腿を乗せ、脚受け部を左右に往復運動させ、腰部の健康を維持するものである(例えば特許文献1参照)。
また、頭部を上方から支えておいて、下肢の一方に力を加え、強制的に脊柱を湾曲させる運動器もある(例えば特許文献2参照)
さらに、自転車運動器のサドルを左右に往復回転して、腰部に捻転運動を与えるものも発明されている(例えば特許文献3参照)。
以下に、図によりこれらの技術を説明する。
【0007】
特許文献1は、図3に示すように、仰臥位になって、足を台(図3(A)の4)に乗せ、図3(B)のような姿勢で、装置を作動させて台を左右に往復運動させ、図3(C)及び(D)のように、脚を左右に動かし、健康増進に役立てるというものである。
【0008】
特許文献2は、図4に示すように、頭部に圧力を加えて支えながら片方の脚を体幹側に押し付け、他方の脚を引き、骨盤に作用させ、骨盤の回転運動により脊柱を強制的に湾曲させ、脊柱の変位や歪みを整復しようとするものである。
【0009】
特許文献3は、図5に示すように、自転車運動器のサドルを左右に往復回転させ捻転運動を行い、健康増進を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3974343号
【特許文献2】特開平8−187261
【特許文献3】特開2007−61180
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は体幹固有振動数を有する力を加えて共振を生じさせ、効率よく体幹運動を生じさせ、深部の関節や筋肉運動を行い、痛みやコリ、関節機能、筋機能、及び血流を解消することを目的とする。
【0012】
これと似た技術が特許文献の1〜3に開示されている。
しかし、特許文献1の装置は主に下半身運動のみをおこない、体幹部の運動は左右側方向運動のみであり、体幹前後方向の運動、身長方向の伸縮運動、脊柱回りの捻転運動はできない。また、体幹の固有振動数を考慮していないため、効率的に体幹部を運動させることがでない。加えた外力は動きやすい表面部に逃げ、動き難い深部までは運動させることができない。
このため、深部の関節機能や筋機能を改善することはできず血流改善効果も低い。
【0013】
特許文献2は、頭部に圧力を加えながら片方の脚を体幹側に押し付け、他方の脚を引き、骨盤に作用させ、骨盤の回転運動により脊柱を強制的に湾曲させ、脊柱の変位や歪みを整復しようとするものである。
頭部に圧力を加えながら脚に力を加えるので、危険性が高い。
また、体幹部の運動は左右側方向運動のみであり、体幹前後方向の運動、身長方向の運動、脊柱回りの捻転運動はできない。また、体幹の固有振動数を考慮していないため、効率的に体幹部を運動させることができない。加えた外力は動きやすい表面部に逃げ、動き難い深部を運動させることができない。このため、深部の関節機能及び筋機能を改善することはできず血流改善効果も低い。
【0014】
特許文献3は、図5(A)に示すような自転車運動器であり、そのサドルを図5(B)のように左右に往復回転させながら自転車運動を行い、上半身と下半身の間で捻転運動を行い、健康増進を行うものである。
これも、特許文献1と同様、腰部を中心に運動するため、体幹部全体を効果的に運動することはできない。また、体幹の固有振動数を考慮しないで運動を行うため、効率的に体幹部を運動させることができない。加えた外力は動きやすい表面部に逃げ、動き難い深部を運動させることができない。このため、深部の関節機能及び筋機能を改善することはできず血流改善効果も低い。
【0015】
このように、体幹部には常にストレスがかかり、動き難くなって、痛みが生じることが多いため、これを治療するための方法が模索されている。この治療には運動が効果的であるため、体幹深部の関節や筋肉の運動をさせようというアイデアはあったが、効率よく、深部まで運動する方法は存在しなかった。
【課題を解決するための手段】
【0016】
これを解決するために、請求項1記載の発明では、体幹を運動させる方法において、所定の周期を有する外力を生体に加えて当該生体の体幹部の共振運動を生じさせる外力供給ステップを設けた。
【0017】
請求項2記載の発明では、請求項1記載の体幹運動方法において、体幹運動を検出する体幹運動検出ステップ1と、体幹運動の大きさが最大になるように生体に加える外力の周期を制御するステップ2を設け、体幹の固有振動数が変化したときはこれに追従して当該生体に加える外力の周期を変化させ、常に、体幹部の共振運動をおこなわせるようにした。
【0018】
請求項3記載の発明では、請求項1又は2記載の体幹運動方法において、
前記の生体に加える外力は、体幹の左右方向に作用する力成分、体幹の前後方向に作用する力成分、体幹の身長方向に作用する力成分、体幹を捻転させる力成分のうち、一つ以上の力成分を有するものとした。
【0019】
請求項4記載の発明では、請求項1から3のいずれかに記載した体幹運動方法において、前記外力の振幅を調節して、体幹部の共振運動が適切な値になるようにした。
【0020】
請求項5記載の発明では、請求項1から4のいずれかに記載した体幹運動方法において、仰臥位で脚を伸ばし開脚にして両脚を持ち上げた状態の被運動者の脚に左右交互に前記外力を加え、骨盤の挙上,下制をリズミカルに行わせるようにして当該生体の体幹部の共振運動を生じさせるステップを備えた。
【0021】
請求項6記載の発明では、体幹運動装置において、所定の周期を有する外力を生体に加えて当該生体の体幹部の共振運動を生じさせる外力供給手段を備えた。
【0022】
請求項7記載の発明では、請求項6記載の体幹運動装置において、体幹運動を検出する体幹運動検出手段と、体幹運動の大きさが最大になるように生体に加える外力の周期を制御する手段を設け、体幹の固有振動数が変化したときはこれを体幹運動検出手段で検出し、体幹運動検出手段の出力に応じて当該生体に加える外力の周期を変化させ、常に、体幹部の共振運動をおこなわせるようにした。
【0023】
請求項8記載の発明では、請求項6又は7記載の体幹運動装置において、前記の生体に加える外力は、体幹の左右方向に作用する力成分、体幹の前後方向に作用する力成分、体幹の身長方向に作用する力成分、体幹を捻転させる力成分のうち、一つ以上の力成分を有するものとした。
請求項9記載の発明では、請求項5から8のいずれかに記載した体幹運動装置において、前記の生体に加える外力の振幅を調節する外力振幅調節手段を設け、体幹部の共振運動が最大になるように外力振幅調節手段を制御するようにした。
【0024】
請求項10記載の発明では、請求項5から9のいずれかに記載した体幹運動装置において、外力発生部(1)と、
前記外力発生部(1)で発生させた外力を所定の周期と振幅で生体に供給するシャフト(2)と、
シャフト(2)に設けて脚を保持する脚台(3)と、
体幹の所定方向の運動を検出する運動検出部(4)と
を設け、
仰臥位で脚を伸ばして前記脚台(3)に脚を載せ、前記外力発生部(1)を制御し、当該脚に所定の周期と振幅の外力を作用させて体幹運動を生じさせる体幹運動装置において、
前記運動検出部(4)で体幹の運動を検出し、体幹運動が最大になるように、前記外力の周期と振幅のいずれか一方又は両方を調節して、常に体幹共振運動をさせるようにした。
【発明の効果】
【0025】
請求項1記載の発明では、体幹の固有振動数と同じ周期の力を生体に加えて共振させるため、効率的に深部まで大きな体幹運動を生じることができる。
【0026】
請求項2記載の発明では、請求項1記載の体幹運動方法において、運動によって体幹の固有振動数が変化しても、これを自動的に追従して周期を変化させ、常に、共振運動を起こして大きな体幹運動をおこなうことができる。
【0027】
請求項3記載の発明では、請求項1又は2記載の体幹運動方法において、体幹運動をさせたい方向の力を加え、その方向の固有振動数で共振運動をおこなわせるので、対象者に応じた効率的で効果的な運動をおこなうことができる。
【0028】
請求項4記載の発明では、項1から3のいずれかに記載した体幹運動方法において、前記外力の振幅を調節して、体幹部の共振運動が適正な値になるようにしたため、対象者の状態に応じて適切な強さの運動をおこなわせることができるので、より効果的な治療をおこなうことができる。
【0029】
請求項5記載の発明では、項1から4のいずれかに記載した体幹運動方法において、仰臥位の被運動者の両脚を開脚にして持ち上げ、脚長方向に力を左右交互に加え、骨盤の挙上,下制をリズミカルに行わせるようにしたので、骨盤運動を含めて、体幹運動を効率的に効果的に行うことができる。
【0030】
請求項6記載の発明では、体幹部の共振運動を生じさせる周期を有する外力を生体に加えて当該生体の体幹部の共振運動を生じさせる外力供給手段を備えたため、効率的に効果的に深部の関節や筋肉運動を生じることができ、深部の関節や筋肉の機能を改善し、血流を促進し、疼痛を緩和することができる。
【0031】
請求項7記載の発明では、請求項5又は6記載の体幹運動装置において、体幹運動を検出する体幹運動検出手段を設け、体幹運動が最大になるように、外力供給手段が発生する外力の周波数を制御するようにした。体幹深部運動をおこなうと、関節が動きやすくなり、筋緊張も緩和するため、体幹の固有振動数が変化するが、本請求項記載の発明により、この変化に対応して外力の周期を自動的に変化させ、常に、体幹の共振運動をおこなうことができるので、より効果的に、より確実に、深部の関節や筋肉の機能を改善し、血流を促進し、疼痛を緩和することができる。
【0032】
請求項8記載の発明では、請求項6又は7記載の体幹運動装置において、前記の生体に加える外力は、体幹の左右方向に作用する力成分、体幹の前後方向に作用する力成分、体幹の身長方向に作用する力成分、体幹を捻転させる力成分のうち、一つ以上の力成分を有するものとしたため、所望の方向の体幹の共振運動をおこなうことができる。
【0033】
請求項9記載の発明では、請求項6〜8のいずれかに記載した体幹運動装置において、
生体に供給する外力の振幅を調節して、体幹部の共振運動が適切な値になるようした。
このため、対象者の状態に応じて適切な強さの運動を簡単な装置で簡便におこなうことができる、より効果的に、より確実に、深部の関節や筋肉の機能を改善し、血流を促進し、疼痛を緩和することができる。
【0034】
請求項10記載の発明では、請求項6〜9のいずれかに記載した体幹運動装置に、
外力発生部(1)と、
前記外力発生部(1)で発生させた外力を所定の周期と振幅で生体に供給するシャフト(2)と、
シャフト(2)に設けて脚を保持する脚台(3)と、
体幹の所定方向の運動を検出する運動検出部(4)と
を設け、
仰臥位で脚を伸ばして前記脚台(3)に脚を載せ、前記外力発生部(1)を制御し、当該脚に所定の周期と振幅の外力を作用させて体幹運動を生じさせる体幹運動装置において、
前記運動検出部(4)で体幹の運動を検出し、体幹運動が最大になるように、前記外力の周期と振幅のいずれか一方又は両方を調節して、常に体幹共振運動をさせるようにした。
本請求項記載の発明により、簡単な構成で、効率的に体幹の共振運動をおこなうことができるため、効果的に、深部の関節や筋肉の機能を改善し、血流を促進し、疼痛を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】(A)と(B)は請求項5記載の発明における外力を作用させる方法の説明図で、(C)と(D)は外力を作用させたときの体幹部の振動の様子を示す。
【図2】請求項10記載の発明の実施例である。
【図3】特許文献1の実施例の図である。
【図4】特許文献2の実施例の図である。
【図5】特許文献3の実施例の図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
効率的に体幹を運動させ、効果的に深部の関節と筋肉の機能を回復させ、血流改善や疼痛緩和をおこなうという目的を、体幹の固有振動数と同じ周波数の外力を生体に加えることで実現した。
【実施例1】
【0037】
請求項1記載の発明は、所定の周期を有する外力を生体に加えて当該生体の体幹部の共振運動を生じさせる外力供給ステップを備えたことを特徴とする体幹運動方法である。
体幹部の共振運動を生じさせるので、少ない力で、安全に、効率よく、深部まで体幹運動をおこなうことができるため、従来は効果の及び難かった深部の関節運動と筋肉運動が効果的におこなえ、その機能回復が得られる。
【0038】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の体幹運動方法に、体幹運動を検出する体幹運動検出ステップ1と、体幹運動の大きさが最大になるように生体に加える外力の周期を制御するステップ2を設け、体幹の固有振動数が変化したときはこれに追従して当該生体に加える外力の周期を変化させ、常に、体幹部の共振運動をおこなわせるようにした。
体幹の共振運動をおこなうと、深部の関節及び筋肉を効果的に運動させることができるため、体幹の固有振動数は経時的に変化する。外力の周期を変更しないと共振運動ができなくなるが、本請求項記載の発明により、運動中に体幹の固有振動数が変動しても、これに追従して、常に共振運動ができるように、生体に加える外力の周期を調節するので、常に効率的な体幹運動をおこなうことができ、深部まで、関節及び筋肉機能を効果的に改善することができる。
【0039】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の体幹運動方法において、
前記の生体に加える外力は、体幹の左右方向に作用する力成分、体幹の前後方向に作用する力成分、体幹の身長方向に作用する力成分、体幹を捻転させる力成分のうち、一つ以上の力成分を有するようにするものである。
通常、体幹部の構成から、体幹の左右側方向、前後方向、身長方向、捻転方向の4つの方向の運動をやった方がよい。この場合は4方向成分を実現する力を作用させればよい。
しかし、運動対象者によっては、前述4方向の運動のうち、1つ又は2つ又は3つの運動を行えばよい場合もある。この場合、1つ又は2つ又は3つの運動を生じさせる外力を与えればよい。
【0040】
体幹の左右側方向の運動は、体幹に左右方向の外力を与えればよい。前後方向と身長方向の運動は、前後方向と身長方向の外力をそれぞれ与えればよい。
体幹の縦横の中心から外れた部位に前後方向の力を加えると、捻転運動を生じることができる。
【0041】
請求項4記載の発明は、請求項1から3のいずれかに記載した体幹運動方法において、
前記外力の振幅を調節して体幹運動の大きさを適正値にするようにするものである。
人によって体幹の固さや弾性等は異なるので、同じ強さの外力を与えても、その反応としての体幹運動の強さは異なる。このため、十分な大きさの体幹の共振運動を生じさせるためには、外力の振幅を変える必要がある。本請求項記載の発明により、外力の振幅を調節し、最適な強さの共振運動にすることができる。このため、より効果的に、深部の関節及び筋肉運動をおこなうことができる。
【0042】
請求項5記載の発明は、請求項1から4のいずれかに記載した体幹運動方法において、
仰臥位で脚を伸ばし開脚にして両脚を持ち上げた状態の被運動者の脚に左右交互に前記外力を加え、骨盤の挙上,下制をリズミカルに行わせるようにして当該生体の体幹部の共振運動を生じさせるステップを備えた体幹運動方法である。
【0043】
この様子を図1に示す。図1(A)及び(B)に示すように、仰臥位にし、脚を少し(床との角度は20から50度程度)持ち上げ、脚を少し開かせ(目的によるが、通常は肩幅程度でよい)、両脚の一方を押し、一方を引く。
外力FとF’は脚を介して体幹の骨盤に加えられる。Fお呼びF’には体幹の横方向の成分、前後方向の成分、身長方向の成分を含み、それぞれの方向に体幹を運動させることができる。また、Fお呼びF’が作用する部位は体幹の中心からずれているため、体幹に捻転運動を起こすことができる。
この外力FとF’を、左右の脚から交互に加えると、骨盤の挙上と下制をリズミカルに行い、体幹部の捻転運動をおこなうことができる。また、体幹の横方向、前後方向、身長方向の運動も同時に行うので、全ての体幹運動をおこなうことができる。
【0044】
このときに加える外力の周期が体幹の固有振動数と合致すると、図1(C),(D)のように、大きく波打って体幹が揺れる(振動する)。これはが体幹の固有振動数で力を加えたときに生じる共振現象である。図1(C),(D)は片メンズであるため、体幹側方方向のみの共振現象を記載しているが、生体に加える外力は体幹の横方向、前後方向、身長方向、捻転方向の成分を持つ合成力であるため、体幹運動もこれら全ての方向成分を有する。
【0045】
これによって、股関節や仙腸関節から、脊椎関節、体幹深部の関節運動をおこなうことができるし、このため、深部の脊柱傍筋なども効果的に運動(ストレッチ及びマッサージ)できる。
加える力の振幅(ストローク)は、通常は10〜20cm程度で良いが、この大きさは対象者に応じて調節すればよい。共振運動を十分に行えればよい。
【0046】
前述のように、従来も体幹部の運動をおこない、健康増進を図ろうとするものはあったが、体幹部の固有振動数に着目し、この周波数で共振を生じさせ、効率的な体幹運動を行うものは存在しなかった。また、体幹の横方向、前後方向、身長方向、捻転方向の中の1つまたは複数の運動の共振運動をおこなうものは存在しなかった。
【0047】
体幹の固有振動数に相当する周期の外力を加えると効率よく深部まで体幹運動をおこなうことができる。脊椎関節や仙腸関節など深部関節の運動を行うと、関節運動の制限に伴う疼痛等の疾患を改善することができる。また、脊柱傍筋などの深部筋を運動させることができるため、従来の方法では治療効果の及びにくい深部金のストレッチやマッサージをおこない、深部筋の筋スパズム(こり)を解消し、痛みの悪循環を断ち切ることができる。
【0048】
請求項6記載の発明は、所定の周期を有する外力を生体に加えて当該生体の体幹部の共振運動を生じさせる外力供給手段を備えたことを特徴とする体幹運動装置である。
本請求項記載の発明により、体幹部の共振運動を生じさせるので、少ない力で、安全に、効率よく、深部まで体幹運動をおこなうことができる。このため、従来は効果の及び難かった深部の関節運動と筋肉運動が効果的におこなえ、その機能回復が得られる。
【0049】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の体幹運動装置に、体幹運動を検出する体幹運動検出手段と、生体に加える外力の周期を制御する外力周期制御手段を設け、体幹の固有振動数が変化したときはこれに追従して当該生体に加える外力の周期を変化させ、常に、体幹部の共振運動をおこなわせるようにするものである。
体幹の共振運動をおこなうと、深部の関節及び筋肉を効果的に運動させることができるため、組織が柔軟になり、体幹の固有振動数は経時的に変化する。外力の周期を変更しないと共振運動ができなくなるが、本請求項記載の発明により、運動中に体幹の固有振動数が変動すると、外力の周期を変化させながら体幹運動検出手段の出力を見て、体幹運動検出手段の出力の大きさから現在の体幹の固有振動周波数を見出し、これと同じ周波数を外力の周期として決定し、この周期の外力を生体に加えるので、常に体幹部を共振運動させることができる。本請求項記載の発明はこれを自動制御する体幹運動装置である。
【0050】
外力の周期が固定であれば、最初は体幹を共振運動させることができても、運動が進むにつれて体幹の固有振動数が変化するので、共振しなくなる。体幹の共振運動ができないと、深部の関節や筋肉が動き難くなり、効果的な運動ができなくなる。本請求項記載の発明によると、自動的に外力の周期を調節して、常に体幹を共振運動させるため、このような不都合は無く、小さな力で効率的に、効果的に、体幹の深部まで運動させることができる。
このため、体幹深部まで、関節機能と筋機能を改善することができ、血流改善、疼痛緩和等の効果も得ることができる。
共振を起こすと、小さな力で大きな運動を生じることができるため、効率的な運動をおこなうことができる。
【0051】
請求項8は、請求項6又は7記載の体幹運動装置において、
生体に加える外力は、体幹の左右方向に作用する力成分、体幹の前後方向に作用する力成分、体幹の身長方向に作用する力成分、体幹を捻転させる力成分のうち、一つ以上の力成分を有するというものである。
通常は、体幹部の構成から、体幹の左右側方向、前後方向、身長方向、捻転方向の4つの全ての方向の運動をやった方がよい。この場合は4方向成分を実現する力を作用させればよい。
しかし、運動対象者によっては、前述4方向の運動のうち、1つ又は2つ又は3つの運動を行えばよい場合もある。この場合、1つ又は2つ又は3つの運動を生じさせる外力を与えればよい。
体幹の左右側方向の運動は、体幹に左右方向の外力を与えればよい。同様に、前後方向と身長方向の運動は、前後方向と身長方向の外力をそれぞれ与えればよい。
体幹の縦横の中心から外れた部位に前後方向の力を加えると、捻転運動を生じることができる。
本請求項記載の発明により、対象者の特性に応じた、最適な体幹運動をおこなうことができる。
【0052】
請求項9記載の発明は、請求項6から8のいずれかに記載した体幹運動装置において、
生体に加える外力の振幅を調節して体幹運動の大きさを適正値にするようにするものである。
人によって体幹の固さや弾性等は異なるので、同じ強さの外力を与えても、その反応としての体幹運動の強さは異なる。また、共振運動が小さすぎれば体幹運動の効果が得られないし、大きすぎれば障害を起こす危険性がある。
このため、適切な大きさの体幹の共振運動を生じさせるためには、外力の振幅を変える必要がある。
本請求項記載の発明により、外力の振幅を調節し、対象者に最適な強さの共振運動にすることができる。このため、より効果的に、深部の関節及び筋肉運動をおこなうことができる。
【0053】
請求項10記載の発明は
外力発生部1と、
前記外力発生部1で発生させた外力を所定の周期と振幅で生体に供給するシャフト2と、
シャフト2に設けて脚を保持する脚台3と、
体幹の所定方向の運動を検出する運動検出部4と
を設け、
仰臥位で脚を伸ばして左右の脚を脚台3に左右を載せ、前記外力発生部1を制御し、当該脚に所定の周期と振幅の外力を作用させて体幹運動を生じさせる体幹運動装置において、
体幹運動をおこなっているとき、前記運動検出部4で体幹の運動を検出し、体幹運動が最大になるように前記外力の周期を調節し、常に体幹共振運動をさせるようにした体幹運動装置である。
また、運動検出部(4)で体幹運動時の体幹の運動を検出し、体幹の運動強度が適切な値になるように生体に加える外力の振幅を調節する。
【0054】
本請求項記載の発明の実施例を図2に示す。図2(A)は装置の正面図で、(B)と(C)は図2(A)の装置を用いて運動しているときの側面図と平面図である。
装置は、図2(A)に示すように、外力発生部1とシャフト2と脚台3を有し、4は装置本体である。外力発生部1は外力を発生し、シャフト2は前記外力発生部1で発生させた外力を所定の周期と振幅で生体に供給する。脚台3は体幹の所定方向の運動を検出する。運動検出部4は体幹の所定方向の運動を検出する。図には記載していないが、装置表面のパネルには、生体に加える外力の周期や運動時間等の運動条件を入力する操作部を設けている。運動条件の入力は、オンラインや各種電子媒体など、どのような方法を用いてもよい。
また、図には記載していないが、体幹の動きを検出する体幹運動検出部4も用いる。体幹運動検出部4は体幹の所望の方向の運動量(変位量又は加速度)を測定する。請求項8で、所定方向の運動のみを見る場合は、その方向の運動量が測定できなければならないが、上半身の例えば肩辺りの体側方方向の運動を見ると、共振運動全体を把握することができる。ある方向の運動を見れば運動全体を把握できるので、1方向の運動を見てもよいし、複数方向の運動を見てもよい。
【0055】
生体に加える外力の周期はシャフト2の回転速度であり、設定された外力の周波数データを参照して、外力発生部1を制御して、シャフト2の回転速度を決定する。
生体に加える外力の振幅はシャフト2の回転半径rで決定される。体幹の共振運動量が最大になるように外力振幅調節手段によってシャフト2の回転半径rを自動制御してもよい。
この装置を用いて、外力F及びF‘を脚に作用させると、床面と垂直方向の力ft(図2(B)参照)、身長方向の力fh、体側方向に作用する力hw(図2(C)参照)が体幹に作用する。これらの力により、体幹の左右側方向、体幹の前後方向、体幹の身長方向、体幹の捻転方向の力が作用する。
このため、力FとF‘を、体幹の固有振動数と同じ周期で両脚から交互に与えると、図1(C)と(D)のように、体幹が共振運動を生じる。前述のように、図1(C)と(D)は平面図であり、体側方方向のみの共振現象を記載しているが(人体模式図の横のS字のラインは、体幹の湾曲を示す)、外力FとF’は体幹の側方方向、前後方向、身長方向の各成分を含み、脚を介して骨盤の端部に作用するため、実際には、体幹を、左右側方、前後方向、身長方向、捻転方向の全ての方向の共振運動である。
【0056】
開脚の程度、と脚と床のなす角度によって、つまり、対象者の体格とシャフト2の調節によって、外力Fの体幹左右(体側)方向の成分fs、前後方向の成分ft、身長方向の成分fh、捻転方向の成分frの大きさは異なる。これに対応するためには、シャフト2の床からの高さと脚台3の間隔を調節する必要があるが、実用上は外力の振幅(ストローク)は10〜20cm程度、床とのなす角度は20〜50度程度で良いため、厳密に調節することなく、大部分の人に適用できる。
【0057】
訓練対象者Mは、図2(B)のようにマット5に仰臥位になり、脚を伸ばして左右の脚台3の左右の脚を乗せる。
操作部のスイッチ類を操作して、加える外力の周期を設定する。外力の振幅は、シャフト2の長さを調節して、訓練対象者Mに適した値にする。
ただし、通常、体幹の固有振動数は50〜150Hz程度であるため、外力の周期は設定しないで、最初は50Hz程度に固定しておき、運動を開始すればよい。
シャフト2の長さrも10〜20cm程度に固定でよい。
【0058】
装置を作動させると、シャフト2はR方向(図2(B)参照)に回転し、所定の周期と振幅の外力を発生し、脚台3を介して脚に伝え、骨盤を介して生体を刺激し、体幹運動を生じさせる。
この段階では体幹の共振は生じないので、運動をおこないながら、体幹運動検出部4で体幹運動をモニタしながら、外力の周波数を変化させ、体幹運動が最も大きくなる(体幹運動検出部4の出力が最大になる)周波数にする。このとき体幹の共振運動が生じる。
このまま運動を続けると、前述のように、体幹の柔軟性が増し、体幹の固有振動数が変化し共振しなくなる。そこで本請求項記載の発明では、常に体幹運動検出部4の出力が最大になるように、外力の周波数を変化させ、共振点を探し、常に体幹を共振運動させるようにしている。体幹が共振運動をおこなうと、図1(B)と(C)に示すように、体幹全体が、左右側方向に大きく振動する。この図には平面図だけを示しているが、図2の装置を用いると、体幹の前後方向、身長方向、捻転方向にも大きく運動する。
このため、体幹の深部の関節や筋肉も大きく運動し、十分なストレッチとマッサージ効果を得ることができる。
【0059】
本発明の特徴は、共振現象を応用し、少ない力で効率よく体幹運動をおこなうことができる、体幹深部の運動し難く各種治療法の効果が及びにくい深部の関節と筋肉を十分に運動させることができる点にある。
これを可能にしたのは、独自の方法により、体幹の全運動を生じさせ、共振運動をさせ、共振運動を持続させる技術を開発したことにある。
【符号の説明】
【0060】
1:外力発生部
2:シャフト
3:脚台
4:装置本体
5:装置の台
F、F‘:生体に加える力
ft:生体に加える外力の体幹前後方向の力
fh:生体に加える外力の身長方向の力
fs:生体に加える外力の体幹左右方向の力
M:人
r:シャフトの回転半径
R:シャフトの回転方向
W:脚台間距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の周期を有する外力を生体に加えて当該生体の体幹部の共振運動を生じさせる外力供給ステップを備えたことを特徴とする体幹運動方法。
【請求項2】
体幹運動を検出する体幹運動検出ステップ1と、体幹運動の大きさが最大になるように生体に加える外力の周期を制御するステップ2を設け、体幹の固有振動数が変化したときはこれに追従して当該生体に加える外力の周期を変化させ、常に、体幹部の共振運動をおこなわせるようにしたことを特徴とする、請求項1記載の体幹運動方法。
【請求項3】
前記の生体に加える外力は、体幹の左右方向に作用する力成分、体幹の前後方向に作用する力成分、体幹の身長方向に作用する力成分、体幹を捻転させる力成分のうち、一つ以上の力成分を有することを特徴とする、請求項1又は2記載の体幹運動方法。
【請求項4】
前記外力の振幅を調節して体幹運動の大きさを適正値にするようにしたことを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載した体幹運動方法。
【請求項5】
仰臥位で脚を伸ばし開脚にして両脚を持ち上げた状態の被運動者の脚に左右交互に前記外力を加え、骨盤の挙上,下制をリズミカルに行わせるようにして当該生体の体幹部の共振運動を生じさせるステップを備えたことを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載した体幹運動方法。
【請求項6】
所定の周期を有する外力を生体に加えて当該生体の体幹部の共振運動を生じさせる外力供給手段を備えたことを特徴とする体幹運動装置。
【請求項7】
体幹運動を検出する体幹運動検出手段と、体幹運動の大きさが最大になるように生体に加える外力の周期を制御する外力周期制御手段を設け、体幹の固有振動数が変化したときはこれを体幹運動検出手段で検出し、体幹運動検出手段の出力に応じて当該生体に加える外力の周期を前記外力周期制御手段で変化させ、常に、体幹部の共振運動をおこなわせるようにしたことを特徴とする、請求項6記載の体幹運動装置。
【請求項8】
前記の生体に加える外力は、体幹の左右方向に作用する力成分、体幹の前後方向に作用する力成分、体幹の身長方向に作用する力成分、体幹を捻転させる力成分のうち、一つ以上の力成分を有することを特徴とする、請求項6又は7記載の体幹運動装置。
【請求項9】
前記の生体に加える外力の振幅を調節する外力振幅調節手段を設け、体幹部の共振運動が最大になるように外力振幅調節手段を制御することを特徴とする、請求項5から8のいずれかに記載した体幹運動装置。
【請求項10】
外力発生部(1)と、
前記外力発生部(1)で発生させた外力を所定の周期と振幅で生体に供給するシャフト(2)と、
シャフト(2)に設けて脚を保持する脚台(3)と、
体幹の所定方向の運動を検出する体幹運動検出部(4)と
を設け、
仰臥位で脚を伸ばして前記脚台(3)に脚を載せ、前記外力発生部(1)を制御し、当該脚に所定の周期と振幅の外力を作用させて体幹運動を生じさせる体幹運動装置において、
前記体幹運動検出部(4)で体幹の運動を検出し、体幹運動が最大になるように、前記外力の周期と振幅のいずれか一方又は両方を調節して、常に体幹共振運動をさせるようにしたことを特徴とする、請求項6から9のいずれかに記載した体幹運動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−297510(P2009−297510A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−136684(P2009−136684)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(000114190)ミナト医科学株式会社 (31)