説明

体毛調整練習用人形

【課題】理髪練習にあたり、人間の頭部に即した理髪の練習を行うこと理髪練習用頭部人形を提供する。
【解決手段】板材11には、板面に沿う方向と所定の傾斜角を有する傾斜貫通孔11aが複数形成され、傾斜貫通孔11aには、体毛部材12が、板材11の表面から突出された状態に挿通されると共に、板材11の裏面から突出された状態に挿通され、板材11の裏面から突出する体毛部材12を固定可能な体毛部材固定手段14が設けられている体毛調整練習用人形10を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、所定の厚みを有する板材により、内部が中空で人間の頭部の形状に成形された体毛調整練習用人形に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、美容師、理容師は、年間100個位の「体毛調整練習用人形」である理髪練習用頭部人形を使用し、カット等の練習を行っているが、この理髪練習用頭部人形では、毛髪や髭等の生える方向を実物に近似したものに再現するために、体毛部材が理髪練習用頭部人形に対して手作業により植毛されていた。そのために、一度、カット練習を行うと、使い捨てとなるものであった。そのため、使い捨てとなる部分を極力少なくすることが求められる。
【0003】
このような要求に応えた発明として、特許文献1に記載されたようなものがある。特許文献1には、「ゴム等の弾性部材によって頭部毛髪面の少なくとも一部を型取った地肌皮膜を形成し、この地肌皮膜上には、該皮膜の表裏両面に突出延長させた状態で何れの面側にも引き出しできるように無数の毛髪を各別に装着して成ることを特徴とする理髪練習用カツラ。」が記載されている。
【0004】
これによれば、「近時多種多様化された髪形に対する理髪練習を行う場合でも、本カツラを1個用意しておけば、その両面を利用することによって何回でも使用することができ、モデルの不足乃至はカツラの無駄な消耗は完全に解消され、理髪練習を安直かつ経済的に行い得る利点があり、また構造はきわめて簡単であって容易安価に製作できるなど、その実用的価値は多大である。」と記載されている。
【特許文献1】実開昭53−155493号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された発明では、理髪練習用カツラに毛髪が無数に挿着されているが、地肌皮膜の裏面側に突出する毛髪の長さが短いので、練習できる理髪練習の回数が少なくならざるを得なかった。
【0006】
また、実際の人間の場合には、毛髪又は髭等が地肌に対して所定の角度を有していたり、頭部上で所定の流れがあったりするが、特許文献1に記載された発明では、そのような構成ではないので、実際の人間の毛髪又は髭等のカッティング練習には不充分であった。
【0007】
そこで、この発明は、理髪練習等の回数を増加させることができると共に、実際の人間の毛髪又は髭等のカッティング練習に対応させた体毛調整練習用人形を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を達成するために、請求項1に記載の発明は、所定の厚みを有する板材により、内部が中空で動物の形状に成形された体毛調整練習用人形であって、前記板材には、板面に沿う方向と所定の傾斜角を有する傾斜貫通孔が複数形成され、該傾斜貫通孔には、体毛部材が、前記板材の表面から突出された状態に挿通されると共に、前記板材の裏面から突出された状態に挿通され、前記板材の裏面から突出する前記体毛部材を固定可能な体毛部材固定手段が設けられている体毛調整練習用人形としたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記傾斜貫通孔は、前記板材の表面側に形成された表面開口と、前記板材の裏面側に形成された裏面開口とを有し、前記表面開口が、前記裏面開口よりも狭く形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の構成に加え、前記裏面開口の周縁部の一部又は全部には、アール部が形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、所定の厚みを有する板材により、内部が中空で動物の形状に成形された体毛調整練習用人形であって、前記板材には、貫通孔が複数形成され、該貫通孔には、体毛部材が、前記板材の表面から突出された状態に挿通されると共に、前記板材の裏面から突出された状態で挿通され、前記板材の裏面側には、前記板材の裏面から突出する前記体毛部材を固定可能な体毛部材固定手段が設けられ、前記板材の所定領域に形成された前記貫通孔に挿通された前記体毛部材が、前記板材の所定領域に対応して区画手段によって区画されたことを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の何れか一つに記載の構成に加え、前記板材が着脱可能で動物の形状に成形された骨組みが設けられ、前記板材が、複数の分割板材からなり、該各分割板材が、前記骨組みに対して着脱されることにより交換可能であることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の構成に加え、前記骨組みが、前記分割板材に対応する複数の分割枠からなり、隣接する前記分割枠同士を着脱することにより交換可能であることを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項5又は6に記載の構成に加え、前記区画手段が、前記板材に挿通された前記体毛部材を前記分割板材に挿通された束毎に区画すると共に、前記分割枠の裏側に設けられて各々の前記分割枠の形状に対応して区画する隔壁部であり、前記体毛部材固定手段が、前記隔壁部に設けられたことを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項5又は6に記載の構成に加え、前記区画手段が、前記板材に挿通された前記体毛部材を前記分割板材に挿通された束毎に区画すると共に、前記分割板材の周縁部から前記分割板材の裏面へ向けて延長される覆いであることを特徴とする。
【0016】
請求項9に記載の発明は、請求項5又は6に記載の構成に加え、前記区画手段が、前記板材に挿通された前記体毛部材を前記分割板材に挿通された束毎に区画すると共に、前記分割枠の裏側に設けられて各々の前記分割枠の形状に対応して区画する隔壁部と、前記板材に挿通された前記体毛部材を前記分割板材に挿通された束毎に区画すると共に、前記分割板材の周縁部から前記分割板材の裏面へ向けて延長される覆いとを有することを特徴とする。
【0017】
請求項10に記載の発明は、請求項5又は6に記載の構成に加え、前記区画手段が、前記分割板材の裏面に延びる前記体毛部材の束を収容可能な収容部屋であることを特徴とする。
【0018】
請求項11に記載の発明は、請求項1乃至4の何れか一つに記載の構成に加え、前記板材が着脱可能で動物の形状に成形された骨組みが設けられ、前記板材が、前記骨組みに被せられる大きさで前記骨組みの外形と略同形状で成形されると共に側部に切れ込み部が形成され、該切れ込み部を開閉して前記骨組みに対して着脱されることにより交換可能であることを特徴とする。
【0019】
請求項12に記載の発明は、請求項1乃至11の何れか一つに記載の構成に加え、前記板材の裏面には、該板材を所定の形状に保持すると共に前記体毛部材が挿通される裏面固定部材が設けられていることを特徴とする。
【0020】
請求項13に記載の発明は、請求項1乃至12の何れか一つに記載の構成に加え、前記板材と前記裏面固定部材との間には、吸水性を有する吸水部材が設けられることを特徴とする。
【0021】
請求項14に記載の発明は、請求項1乃至13の何れか一つに記載の構成に加え、前記吸水部材には、前記体毛部材が挿通される体毛挿通孔が形成され、前記板材に形成される前記傾斜貫通孔から水が流入した場合に、前記吸水部材が水を吸収して膨張し、前記体毛挿通孔が収縮して水が遮断されるように構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に記載の発明によれば、板材には、板面に沿う方向と所定の傾斜角を有する傾斜貫通孔が複数形成され、傾斜貫通孔には、体毛部材が、板材の表面から突出された状態に挿通されると共に、板材の裏面から突出された状態に挿通され、板材の裏面から突出する体毛部材を固定可能な体毛部材固定手段が設けられている。そのため、板材の表面から突出した体毛部材を引張れば、板材の裏面から突出して延設される体毛部材を、板材の表面側へと引張りだすことができる。従って、理髪その他体毛調整の練習の回数を従来よりも格段と増加させることができる。また、逆に、板材の表面から突出して延設される体毛部材を板材の裏面側へと引き込むことができる。従って、理髪その他の体毛調整の練習にあたり、体毛部材を切らずに体毛部材を所望の長さに調節して、理髪その他の体毛調整の練習をすることができる。
【0023】
また、体毛部材が傾斜貫通孔の表面から斜め方向に突出する構成となるので、理髪練習にあたり、人間の頭部に即した理髪その他動物の体に即した体毛調整の練習を行うことができる。従って、美容師又は理容師は、理髪その他体毛調整の練習による技術力の向上が図られる。
【0024】
請求項2に記載の発明によれば、傾斜貫通孔は、板材の表面側に形成された表面開口と、板材の裏面側に形成された裏面開口とを有し、表面開口が、裏面開口よりも狭く形成されている。そのため、体毛部材が傾斜貫通孔内で裏面開口側から表面開口側へと移動し易くすることができる。従って、体毛部材の移動によって、板材が傷み難くすることができる。
【0025】
また、表面開口の方が裏面開口よりも狭く形成されていることから、体毛部材が表面開口でぐらつき難くすることができる。従って、人間の毛髪又は髭等に対応した理髪その他動物の体毛に対応した体毛調整の練習を行うことができる。
【0026】
請求項3に記載の発明によれば、裏面開口の周縁部の一部又は全部には、アール部が形成されている。そのため、体毛部材が板材の表面から引出されるときに、体毛部材がアール部に引掛り難くすることができるので、体毛部材の表面開口からの長さを調節し易くすることができる。従って、体毛部材が傷み難くすることができる。
【0027】
また、裏面開口の周縁部にアール部が形成されていない場合には、体毛部材を引張ると裏面開口の周縁部によって削られ易くなると考えられるが、そのような体毛部材の削れ減少が生じ難くすることができる。
【0028】
請求項4に記載の発明によれば、板材には、貫通孔が複数形成され、貫通孔には、体毛部材が、板材の表面から突出された状態に挿通されると共に、板材の裏面から突出された状態で挿通され、板材の裏面側には、板材の裏面から突出する体毛部材を固定可能な体毛部材固定手段が設けられ、板材の所定領域に形成された貫通孔に挿通された体毛部材が、区画手段によって区画された。従って、板材の所定領域毎の体毛部材と、それに隣接する所定領域の体毛部材とが、互いに絡まり難くすることができる。従って、複数回に渡って理髪その他体毛調整の練習した場合であっても、快適に理髪その他の体毛調整の練習をすることができる。
【0029】
請求項5に記載の発明によれば、板材が着脱可能で人間の頭部の形状に成形された骨組みが設けられ、板材が、複数の分割板材からなり、各分割板材が、骨組みに対して着脱されることにより交換可能である。そのため、各分割板材によっては、体毛部材のカッティングによって体毛部材の無くなり方の激しい箇所があると考えられるが、そのような無くなり方の激しい箇所のみを交換することができる。従って、分割板材毎に交換可能であることから、経済性を向上させることができる。
【0030】
また、分割板材毎に傾斜貫通孔の傾斜方向が異なるものを使用したい場合には、所望の傾斜貫通孔を形成された分割板材に交換することができるので、美容師、理容師、又は、トリマーは、体毛の流れが異なる人の頭部その他動物の理髪その他体毛調整の練習を行うことができる。
【0031】
請求項6に記載の発明によれば、骨組みが、分割板材に対応する複数の分割枠からなり、隣接する分割枠同士を着脱することにより交換可能である。従って、各々の分割枠として、形状の異なるものを使用して、骨格自体が異なる体毛調整練習用人形を構成することで、骨格の異なる人間の理髪練習ができる。
【0032】
請求項7に記載の発明によれば、区画手段が、板材に挿通された体毛部材を分割板材に挿通された束毎に区画すると共に、分割枠の裏側に設けられて各々の分割枠の形状に対応して区画する隔壁部であり、体毛部材固定手段が、隔壁壁部に設けられた。従って、隣接する分割板材に挿通される体毛部材同士が、隔壁部によって隔てられるので、体毛部材同士が絡まないようにすることができる。
【0033】
請求項8に記載の発明によれば、区画手段が、板材に挿通された体毛部材を分割板材に挿通された束毎に区画すると共に、分割板材の周縁部から分割板材の裏面へ向けて延長される覆いである。従って、隣接する分割板材に挿通される体毛部材は、その各々が覆いで囲われているので、体毛部材同士が絡まないようにすることができる。
【0034】
請求項9に記載の発明によれば、分割枠の裏側に設けられて各々の分割枠の形状に対応して区画する隔壁部と、分割板材の周縁部から前記分割板材の裏面へ向けて延長される覆いとを有する。従って、隔壁部と覆いとで2重に体毛部材同士の絡み防止が図られる。
【0035】
請求項10に記載の発明によれば、区画手段が、分割板材の裏面に延びる体毛部材の束を収容可能な収容部屋である。従って、長い体毛部材の束を収容部屋に収容し、長い体毛部材の束が、理髪その他体毛調整の練習の邪魔にならないようにすることができる。
【0036】
請求項11に記載の発明によれば、板材が着脱可能で動物の形状に成形された骨組みが設けられ、板材が、骨組みに被せられる大きさで骨組みの外形と略同形状で成形されると共に側部に切れ込み部が形成され、切れ込み部を開閉して骨組みに対して着脱されることにより交換可能である。従って、板材が骨組みに簡単に被せることができる。
【0037】
請求項12に記載の発明によれば、板材の裏面には、板材を所定の形状に保持すると共に体毛部材が挿通される裏面固定部材が設けられている。従って、板材が軟性を示す物質であったとしても、体毛調整練習用人形の形状が維持され、理容師、美容師、トリマー等は、実物に近い状態の人形で、理容、美容、その他動物に対する体毛のカッティングを行うことができる。
【0038】
請求項13に記載の発明によれば、板材と裏面固定部材との間には、吸水性を有する吸水部材が設けられる。従って、体毛調整練習用人形の体毛部材を洗った場合であっても、その水が板材に残らず、理容師、美容師、トリマー等は、実物に近い状態の人形で、理容、美容、その他動物に対する体毛のカッティングを行うことができる。
【0039】
請求項14に記載の発明によれば、吸水部材には、体毛部材が挿通される体毛挿通孔が形成され、板材に形成される傾斜貫通孔から水が流入した場合に、吸水部材が水を吸収して膨張し、体毛挿通孔が収縮して水が遮断されるように構成された。従って、体毛調整練習用人形の体毛部材を洗った場合に、人形内に水が浸入しないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
[発明の実施の形態1]
以下、この発明の実施の形態1について説明する。
【0041】
図1乃至図9は、この発明の実施の形態1を示す。
【0042】
まず、構成を簡単に説明すると、「体毛調整練習用人形」である理髪練習用頭部人形10は、図1で示すように、所定の厚みを有する板材11により、内部が中空で人間の頭部の形状に成形されている。また、体毛部材12が板材を貫通しており、板材11の表面からは、体毛部材12が突出されており、板材11の裏面からは、体毛部材12が突出されて延びている。さらに、板材11の裏面からは、体毛部材12を囲う「区画手段」である覆い15が取付けられて延びている。また、覆い15は、ビニール等であり、体毛部材12の束が、他の体毛部材12の束に接触して絡むことがないようにするためのものであると共に、汚れることを防止するために設けられたものである。なお、覆い15は、体毛部材12の下端側が閉じて袋状になっていても良いし、開いていても構わない。
【0043】
また、板材11の裏面では、図2(a),図3(a)で示すように、板材11が着脱自在で人間の頭部の形状に形成された「骨組み」である骨格構造体13が形成されており、骨格構造体13は、各々が「骨組みの一部」としての「分割枠」である複数の右前頭頂枠21a,左前頭頂枠21b,前頭枠22,右側頭枠23a,左側頭枠23b,右もみあげ枠24a,左もみあげ枠24b,右下顎枠25a,左下顎枠25b,上顎前面枠26,下顎前面枠27,下顎下枠28,右眉毛枠29a,左眉毛枠29b,後頭枠31,襟足枠32,顔枠33から構成されている。
【0044】
板材11を構成する各板材21〜33は、人体の皮膚に触感や弾力性を酷似させた樹脂を表面に有する、例えば、軟質の塩化ビニールなどのプラスチック材料あるいはゴム材料等で成形され、図2(b)と図3(b)と図4(a),(b)で示すように、各々が「分割板材」である右前頭頂板材51a,左前頭頂板材51b,前頭板材52,右側頭板材53a,左側頭板材53b,右もみあげ板材54a,左もみあげ板材54b,右下顎板材55a,左下顎板材55b,上顎前面板材56,下顎前面板材57,下顎下板材58,右眉毛板材59a,左眉毛板材59b,後頭板材61,襟足板材62,顔板材63から構成され、各枠21a,21b,21c,21d,22,23a,23b,24a,24b,25a,25b,26,27,28,29a,29b,31,32,33に対応して着脱することができるようになっている。
【0045】
また、このような複数の板材51a,51b,51c,51d,52,53a,53b,54a,54b,55a,55b,56,57,58,59a,59b,61,62,63に分割されているのは、複数種類の板材51a,51b,51c,51d,52,53a,53b,54a,54b,55a,55b,56,57,58,59a,59b,61,62,63の各々が複数種類の形状のものがあり、それらの組合せを異ならせることによって、異なる人間の顔、髪、髭等に対応した理髪練習用頭部人形10を構成することができるようにするためである。
【0046】
各板材51a,51b,51c,51d,52,53a,53b,54a,54b,55a,55b,56,57,58,59a,59b,61,62,63は、図6(b)で示すように、板面に沿う方向と所定の傾斜角を有する傾斜貫通孔11aが複数形成され、傾斜貫通孔11aには、体毛部材12が、板材11の表面から突出された状態に挿通されると共に、板材11の裏面から突出された状態に挿通される。体毛部材12としては、例えば、毛髪用塩化ビニル等が使用される。
【0047】
図4では、これらの板材51a,51b,51c,51d,52,53a,53b,54a,54b,55a,55b,56,57,58,59a,59b,61,62,63を、理髪練習用頭部人形10の側面側から見た側面図と上方から見た平面図とを示している。特に、図4(b)で示すように、頭頂部位に関しては、4分割されており、体毛部材12が、4枚の板材51a,51b,51c,51dの取付けられる中央から周囲へと向けて流れるように設けられるようになっている。なお、この頭頂板材51a,51b,51c,51dは、一体的に成形して、より、人間の頭頂部の渦巻きに近似させて傾斜貫通孔11aを設けて成形することも可能である。
【0048】
板材11は、図5,図6(b)で示すように、傾斜貫通孔11aが複数形成され、各々の傾斜貫通孔11aに体毛部材12が挿通されている。なお、図5では、傾斜貫通孔11aの数が少ないが、これは説明のために簡略しただけであり、実際には、図6(a)で示すように、多数設けられている。傾斜貫通孔11aは、図6(b)で示すように、断面視で、傾斜上壁部位11bと傾斜下壁部位11cとから構成される。板材11は、板材11の表面側に形成された表面開口11dと、板材11の裏面側に形成された裏面開口11eとを有し、表面開口11dが、裏面開口11eよりも狭く形成されて漏斗状に成形されている。傾斜上壁部位11bは、板面から所定の角度を有して直線状に形成され、傾斜下壁部位11cは、表面開口11d側が板面から所定の角度を有して直線状に形成され、裏面開口11eの「周縁部の一部」である傾斜下壁部位11cの下端側が末広がりに広がってアール部11fが形成されている。なお、傾斜貫通孔11aの構成は、板材11を構成する全ての板材51a〜63についても同様である。
【0049】
また、傾斜貫通孔11aには、図6(b)で示すように、体毛部材12が1本挿通される構成としても良いし、又は、図6(c)で示すように、体毛部材12が複数挿通される構成としても良い。
【0050】
特に、傾斜貫通孔11aは、図5の左側頭板材53bで示すように、板材11が板面を上下方向に沿うように設けられた場合には、アール部11f(図6(b),(c)参照)が裏面開口11e側に向けて下向きに傾斜するように板材53bが配置される。この場合に、表面開口11d側で体毛部材12が下向きに垂れ下がり、裏面開口11e側で体毛部材12が下向きに垂れ下がり、表面開口11d側の体毛部材12を引張った場合であっても、アール部11fによって円滑な移動をすることができる利点がある。
【0051】
各板材11は、図6で示すように、板材11の「所定領域」である分割された板材51a,51b,51c,51d,52,53a,53b,54a,54b,55a,55b,56,57,58,59a,59b,61,62,63の傾斜貫通孔11aに挿通される体毛部材12毎に、板材11の周縁部から体毛部材12を囲う「区画手段」である覆い15が取付けられており、板材11の裏面側では、体毛部材12と覆い15とが長々と延びている。
【0052】
板材11の裏面側には、板材11の裏面から突出する体毛部材12を固定可能な体毛部材固定手段14が設けられている。体毛部材固定手段14は、固定鋏14aと、「区画手段」である隔壁71〜78と、固定リング14cとからなる。そして、図7で示すように、覆い15によって囲まれた体毛部材12が、図7及び図8で示される固定鋏14aで挟まれることにより固定できるようになっている。
【0053】
骨格構造体13の内部には、図7(a)で示すように、複数の隔壁71〜78によって仕切られており、隔壁71〜78で仕切られた空間に覆い15で囲われた体毛部材12が配置されるようになっている。また、各隔壁71〜77には、図8(c)で示すように、固定リング14bが取付けられており、この固定リング14b内に固定鋏14aが挿通されている。
【0054】
固定鋏14aは、図9で示すように、柱状部14x,14yを有し、柱状部14xの先端から柱状部14xと垂直方向に円弧形状の円弧状部14pが折曲されて設けられ、柱状部14yの先端から柱状部14yと垂直方向に円弧形状の円弧状部14qが折曲されて設けられている。円弧状部14qの先端側には、延長部14q−3が形成されており、固定鋏14aの円弧状部14p,14qから体毛部材12が外れないように構成されている。円弧状部14pと円弧状部14qとは、軸14rを中心として回動可能に構成されている。そして、円弧状部14pの内周側には、ラバー14p−1が取付けられ、ラバー14p−1の更に内周側に円弧状の凹部14p−2が形成されており、一方で、円弧状部14qの内周側には、ラバー14q−1が取付けられ、ラバー14q−1の更に内周側に円弧状の凹部14q−2が形成されている。柱状部14xの下端には、指挿入部14x−1が設けられており、柱状部14yの下端には、指挿入部14y−1が設けられている。
【0055】
また、柱状部14yには、円弧状部14bにおける円弧から中央に向けて突出する突起部14cが引っ掛って固定鋏14aが係止される凹部14sが形成されている。
【0056】
次に、この発明の実施の形態1に係る理髪練習用頭部人形10の使用方法について述べる。
【0057】
美容師又は理容師は、骨格構造体13から突出した体毛部材12を切り、理髪練習を終えると、理髪練習用頭部人形10は、体毛部材12が短い状態となる。この次に、理髪練習したい場合には、板材11の表面開口11dから突出する体毛部材12を引張り、体毛部材12を長い状態にして、体毛部材12を体毛部材固定手段14の固定鋏14aの凹部14p−2と凹部14q−2とで形成される開口内に挟み込んで移動しないように固定する。
【0058】
また、覆い15により包まれた体毛部材12が無くなる箇所毎に、板材51a,51b,51c,51d,52,53a,53b,54a,54b,55a,55b,56,57,58,59a,59b,61,62,63を交換して、体毛部材12の補充をする。
【0059】
また、右眉毛板材59a、左眉毛板材59b、並びに、上顎前面板材56、下顎前面板材57に挿通された体毛部材12に関しては、体毛部材12が、各板材59a,59b,56,57の裏面側から表面側へと押し込まれることにより、各板材59a,59b,56,57の表面で必要な長さだけ突出した状態にする。
【0060】
これらとは逆に、体毛部材12が、板材51a,51b,51c,51d,52,53a,53b,54a,54b,55a,55b,56,57,58,59a,59b,61,62,63表面から突出する長さが長い場合には、体毛部材12を固定鋏14で挟み、固定鋏14を下降させると、板材51a,51b,51c,51d,52,53a,53b,54a,54b,55a,55b,56,57,58,59a,59b,61,62,63の表面から突出する長さを短くする。
【0061】
このような理髪練習用頭部人形10の発明によれば、板材11には、板面に沿う方向と所定の傾斜角を有する傾斜貫通孔11aが複数形成され、傾斜貫通孔11aは、体毛部材12が、板材11の表面から突出された状態に挿通されると共に、板材11の裏面から突出された状態に挿通され、板材11の裏面から突出する体毛部材12を固定可能な体毛部材固定手段14が設けられている。そのため、板材11の表面から突出した体毛部材12を引張れば、板材11の裏面から突出した体毛部材12を板材11の表面側へと引張りだすことができる。従って、理髪練習の回数を従来よりも格段と増加させることができる。また、逆に、板材11の表面から突出して延設される体毛部材12を板材11の裏面側へと引き込むことができる。従って、理髪その他の体毛調整の練習にあたり、体毛部材12を切らずに体毛部材12を所望の長さに調節して、理髪その他の体毛調整の練習をすることができる。
【0062】
また、体毛部材12が傾斜貫通孔11aの表面から斜め方向に突出する構成となるので、理髪練習にあたり、人間の頭部に即した理髪練習を行うことができる。従って、美容師又は理容師は、理髪練習による技術力の向上が図られる。
【0063】
また、傾斜貫通孔11aは、板材11の表面側に形成された表面開口11dと、板材11の裏面側に形成された裏面開口11eとを有し、表面開口11dが、裏面開口11eよりも狭く形成されて漏斗状に成形されている。そのため、体毛部材12が傾斜貫通孔11a内で裏面開口11e側から表面開口11d側へと移動し易くすることができる。従って、体毛部材12の移動によって、板材11が傷み難くすることができる。
【0064】
また、表面開口11dの方が裏面開口11eよりも狭く形成されていることから、体毛部材12が表面開口11dでぐらつき難くすることができる。従って、人間の体毛に対応した理髪練習を行うことができる。
【0065】
さらに、「傾斜貫通孔の周縁部一部」である「傾斜貫通孔11aを構成する傾斜下壁部位11cの裏面開口11e側の部位」には、アール部11fが形成されている。そのため、体毛部材12が板材11の表面から引出されるときに、体毛部材12がアール部11f上を円滑に移動して、引掛り難くすることができるので、体毛部材12の表面開口11dからの長さを調節し易くすることができる。従って、体毛部材12が傷みがたくすることができる。
【0066】
また、裏面開口11eの周縁部にアール部11fが形成されていない場合には、体毛部材12を引張ると裏面開口11eの周縁部によって削られ易くなると考えられるが、そのような体毛部材12の削れ現象が生じ難くすることができる。
【0067】
さらに、アール部11fは、上下方向に沿って設けられた板材11に対しては、下向きに傾斜するように配置される。従って、板材11が上下方向に沿って設けられ、板材11の表面開口11dから体毛部材12が下向きに突出し、板材11の裏面開口11eから体毛部材12が下向きに突出して挿通されているときに、体毛部材12を板材11の表面側から引張ると、体毛部材12の移動方向が異なることから、アール部11fを設けずに角部を設けると、体毛部材12の移動の妨げになり易いが、アール部11fを設けることにより、そのような現象が生じ難くすることができる。
【0068】
また、板材11が着脱可能で人間の頭部の形状に成形された骨格構造体13が設けられ、板材11が、複数に分割された板材51a,51b,51c,51d,〜,63からなり、分割された各板材51a,51b,51c,51d,〜,63が、骨格構造体13の枠21a,21b,21c,21d,〜,33に対して着脱されることにより交換可能である。そのため、分割された各板材51a,51b,51c,51d,〜,63によっては、体毛部材12のカッティングによって体毛部材12の無くなり方の激しい箇所があると考えられるが、そのような無くなり方の激しい箇所のみを交換することができる。従って、分割された各板材51a,51b,51c,51d,〜,63毎に交換可能であることから、経済性を向上させることができる。
【0069】
また、分割された各板材51a,51b,51c,51d,〜,63毎に傾斜貫通孔11aの傾斜方向が異なるものを使用したい場合には、所望の傾斜貫通孔11aを形成された分割された各板材51a,51b,51c,51d,〜,63に交換することができるので、美容師又は理容師は、体毛の流れが異なる人の頭部の理髪練習を行うことができる。
【0070】
さらに、体毛部材12の種類には、ウェーブやニグロ、種類、色等で、実際の多種多様なお客様の毛髪又は髭等の質に対応できるように、複数種類用意しておくことで、1つの骨組みを使用して、色々なバリエーションのヘアイメージの練習をすることができる。顔板材63に関しても同様である。
【0071】
また、骨格構造体13が、分割板材板材51a,51b,51c,51d,〜,63に対応する複数の枠21a,21b,21c,21d,〜,33からなり、隣接する枠21a,21b,21c,21d,〜,33同士を着脱することにより交換可能である。従って、各々の枠21a,21b,21c,21d,〜,33として、形状の異なるものを使用して、骨格自体が異なる理髪練習用頭部人形10を構成することで、骨格の異なる人間の理髪練習ができる。
【0072】
さらに、隔壁部71〜77が、板材51a,51b,51c,51d,〜,63に挿通された体毛部材12を板材51a,51b,51c,51d,〜,63に挿通された束毎に区画すると共に、枠21a,21b,21c,21d,〜,33の裏側に設けられて各々の枠21a,21b,21c,21d,〜,33の形状に区画する隔壁部71〜77であり、体毛部材固定手段14が、隔壁部71〜78に設けられた。従って、隣接する板材51a,51b,51c,51d,〜,63に挿通される体毛部材12同士が、隔壁部71〜77によって隔てられるので、体毛部材12同士が絡まないようにすることができる。
【0073】
また、覆い15が、板材51a,51b,51c,51d,〜,63に挿通された体毛部材12を板材51a,51b,51c,51d,〜,63に挿通された束毎に区画すると共に、板材51a,51b,51c,51d,〜,63の周縁部から板材51a,51b,51c,51d,〜,63の裏面へ向けて延長される覆い15である。従って、隣接する板材51a,51b,51c,51d,〜,63に挿通される体毛部材12は、その各々が覆い15で囲われているので、体毛部材12同士が絡まないようにすることができる。
【0074】
なお、この発明の実施の形態1では、枠21a,21b,21c,21d,〜,33の交換する構成ではなかったが、枠21a,21b,21c,21d,〜,33として各々異なる形状のものを使用して、骨格自体が異なる理髪練習用頭部人形10を構成して、骨格の異なる人間の理髪練習をできるようにすることも可能である。
【0075】
また、この発明の実施の形態1では、裏面開口11eの周縁部としての傾斜下壁部位11cの下端側にのみアール部11fが形成されていたが、これに限定されるものではなく、傾斜上壁部位11bの下端側にもアール部11fが形成される構成として、裏面開口11eの周縁部の全部にアール部11fを形成する構成とすることも可能である。
【0076】
さらに、この発明の実施の形態1では、隔壁部71〜78(図8(a))の下部の形状が特定されていないが、上記実施の形態に限定されず、隔壁部71〜78の下部を封鎖して、板材51a,51b,51c,51d,〜,63の裏面に延びる体毛部材12の束を収容可能な収容部屋とすることも可能である。これによれば、長い体毛部材12の束を図示しない収容部屋に収容し、長い体毛部材12の束が、理髪練習の邪魔にならないようにすることができる。
【0077】
なお、この発明の実施の形態1では、板材11が複数に分割された板材51a〜63から構成されていたが、上記実施の形態に限定されず、分割されていない板材11とすることも可能である。
[発明の実施の形態2]
【0078】
以下、この発明の実施の形態2について説明する。
【0079】
図10(A),(B)は、この発明の実施の形態2を示す。なお、この発明の実施の形態1と同一の部材又は構成のものに関しては、この発明の実施の形態1で用いたものを用いるものし、同一符号を付して説明を省略する。
【0080】
この発明の実施の形態2が、この発明の実施の形態1と異なるのは、この発明の実施の形態1では、人間の頭部を模った理髪練習用頭部人形10であったが、この発明の実施の形態2では、図10(A)で示すように、体毛部材12を有する「体毛調整練習用人形」である動物人形110である点で異なる。
【0081】
体毛部材12を有する動物人形110は、図10(B)で示すように、複数の「分割板材」である小板材111〜119が表面で互いに隣接するように設けられ、各小板材111〜119は、この発明の実施の形態1と同様に、傾斜貫通孔11aが形成され、各傾斜貫通孔11aには、体毛部材12が挿通され、各小板材111〜119の裏面には、体毛部材12を覆う袋15が取付けられている。
【0082】
このような動物人形110によれば、例えば、トリマー等が、動物人形110によって、実際の動物で体毛のカッティング練習するのと同様な感触で、カッティング練習をすることができる。
[発明の実施の形態3]
【0083】
以下、この発明の実施の形態3について説明する。
【0084】
図11は、この発明の実施の形態3を示す。なお、この発明の実施の形態1と同一の部材又は構成のものに関しては、この発明の実施の形態1で用いたものを用いるものし、同一符号を付して説明を省略する。
【0085】
この発明の実施の形態3が、この発明の実施の形態1と異なるのは、この発明の実施の形態1では、板材51a〜63が、裏面に何らの部材が取付けられることなく、裏面が分割枠21a〜33に直接に固定される構成であったが、この発明の実施の形態3では、「裏面固定部材」である板材51a〜63の裏面には、各板材51a〜63に対応する位置に、右前頭頂裏面板71a、左前頭頂裏面板71b、右後頭頂裏面板71c、左後頭頂裏面板71d、前頭裏面板72、右側頭裏面板73a、左側頭裏面板73b、右もみあげ裏面板74a、左もみあげ裏面板74b、右下顎裏面板75a、左下顎裏面板75b、上顎前面裏面板76、下顎前面裏面板77、下顎下裏面板78、右眉裏面板79a、左眉裏面板79b、後頭裏面板81、えりあし裏面板82、顔裏面板83とが設けられている点である。
【0086】
また、その中で、例えば、左もみあげ板材54bでは、端部に配置される針の取付け位置54c−1〜54c−4に針121が取付けられている。針121では、基端側部121aの径の方が、先端側部121bの径よりも大きく形成されている。
【0087】
左もみあげ板材54bの裏面側には、左もみあげ裏面板74bが設けられる。左もみあげ裏面板74bは、前述した針121が貫通される貫通孔74c−1〜74c−4が形成されており、又、体毛部材12が挿通される複数の挿通孔74eが形成されている。各挿通孔74eは、板材54bに形成される傾斜貫通孔11aよりも径が大きく、板材11に形成される傾斜貫通孔11aの裏面開口11e側に設けられたアール部11fと同様な図示しないアール部が形成されている。また、左もみあげ裏面板74bの裏面に体毛部材12を覆う覆い15が取付けられている。なお、この発明の実施の形態3における左もみあげ板材54bの裏面には、体毛部材12を覆う覆い15が取付けられておらず、前述したように、左もみあげ裏面板74bの裏面に覆い15が取りけられている点では、この発明の実施の形態1の袋15と取付け位置が異なる。
【0088】
そして、左もみあげ板材54bに取付けられた針121は、基端側部121aが、左もみあげ裏面板74bに形成された貫通孔74c−1〜74c−4に挿嵌されて左もみあげ板材54bと左もみあげ裏面板74bとが積み重ねられ、先端側部121bのみが、枠24bに突き刺さって固定されるようになっている。
【0089】
前述したように、針121は、先端側部121bのみが枠24aに固定されるようになっているので、左もみあげ板材54bと左もみあげ裏面板74bとが重ね合わされて一緒に枠24bに固定されると、左もみあげ裏面板74bと枠24bとの間が離間するようになっている。従って、板材24bの端部側の体毛部材12は、板材24bの端部側が枠24bの上面に当接しないで離間しているので、左もみあげ裏面板74bと枠24bとで挟まれることなく、枠24bで囲まれた空間内で移動可能になっている。
【0090】
なお、ここでは、図11を用いながら、左もみあげ枠24b、左もみあげ板材54b、左もみあげ裏面板74bについてのみ説明したが、左もみあげ枠21a〜24b,25a〜33、左もみあげ板材51a〜54a,55a〜63、裏面板71a〜74b,75a〜83についても同様に構成されている。
【0091】
また、この発明の実施の形態3では、板材51a〜63と裏面板71a〜83との間には、何らの部材も挟まれることがなかったが、上記実施の形態に限定されない。すなわち、板材51a〜63と裏面板71a〜83との間には、図13(A)で示すように、吸水性を有する「吸水部材」の一つである第1吸水部材123が設けられる構成とすることも可能である。第1吸水部材123には、図13(C)で示すように、体毛部材12が挿通される体毛挿通孔123aが複数形成され、板材51a〜63に形成される傾斜貫通孔11から水が流入した場合に、第1吸水部材123が水を吸収して膨張し、体毛挿通孔123aが収縮して水が遮断されるように構成されている。なお、符号123b−1〜123b−4は、針121の基端側部121aが挿嵌される挿嵌孔である。
【0092】
これとは逆に、この吸水部材123は、乾燥すると、再び、体毛挿通孔123aが広がり、体毛部材12の出入が円滑に行えるようにすることができる。例えば、板材51a〜63の材質として、シリコン等を使用し、第1吸水部材123の材質として、吸水性ポリマー等の水を吸収すると直ちに膨張し、人形10内に水が浸入しない状態となるのに最適な素材と厚みを有するものを使用し、裏面板71a〜83の材質として、形状記憶用板を使用する。更に、例えば、吸水性ポリマーとして、ポリアクリル酸塩系樹脂を用いる。従って、理髪練習用頭部人形10の体毛部材12を洗った場合に、人形10内に水が浸入しないようにすることができる。
【0093】
また、第1吸水部材123と板材51a〜63との間には、「吸水部材」の一つである第2吸水部材124が更に挟まれ、積み重ねられている。第2吸水部材124にも、図13(D)で示すように、体毛部材12が挿通される体毛貫通孔124aが複数形成されている。第2吸水部材124の材質としては、フェルト等の直ぐに乾く素材と厚さのものを用いる。なお、符号124b−1〜124b−4は、針121の基端側部121aが挿嵌される挿嵌孔である。
【0094】
なお、この発明の実施の形態3の構成を、この発明の実施の形態2の動物人形110に適用することも可能である。
[発明の実施の形態4]
【0095】
以下、この発明の実施の形態4について説明する。
【0096】
図12は、この発明の実施の形態4を示す。なお、この発明の実施の形態1と同一の部材又は構成のものに関しては、この発明の実施の形態1で用いたものを用いるものし、同一符号を付して説明を省略する。
【0097】
この発明の実施の形態4が、この発明の実施の形態1と異なるのは、この発明の実施の形態4では、板材51a〜63の裏面には、何らの部材が取付けられることなく、分割枠21a〜33に直接に固定される構成であったが、この発明の実施の形態4では、板材51a〜63の裏面には、各板材51a〜63に対応する位置に、「裏面固定部材」である右前頭頂裏面網91a、左前頭頂裏面網91b、右後頭頂裏面網91c、左後頭頂裏面網91d、前頭裏面網92、右側頭裏面網93a、左側頭裏面網93b、右もみあげ裏面網94a、左もみあげ裏面網94b、右下顎裏面網95a、左下顎裏面網95b、上顎前面裏面網96、下顎前面裏面網97、下顎下裏面網98、右眉裏面網99a、左眉裏面網99b、後頭裏面網101、えりあし裏面網102、顔裏面網103とが設けられている点である。
【0098】
また、その中で、例えば、左もみあげ板材54bでは、端部に配置される針の取付け位置54c−1〜54c−4に針121が取付けられている。針121では、基端側部121aの径の方が、先端側部121bの径よりも大きく形成されている。
【0099】
左もみあげ板材54bの裏面側には、左もみあげ裏面網94bが設けられ、左もみあげ裏面網94bは、複数の針金122が格子状に交差されて組まれており、針金122で囲まれる各領域94eに体毛部材12が挿通されるようになっている。また、左もみあげ板材54bと左もみあげ裏面網94bとは、左もみあげ板材54bの四隅に形成された固定紐挿通孔54p−1〜54p−4に固定紐54q−1〜54q−4が挿通されて結ばれている。
【0100】
そして、左もみあげ板材54bに取付けられた針121は、基端側部121aが、左もみあげ裏面網94bにおける針金122が設けられていない部位を通されて、左もみあげ板材54bと左もみあげ網94bとが積み重ねられ、先端側部121bのみが、枠24bに突き刺さって固定されるようになっている。
【0101】
前述したように、針121は、先端側部121bのみが枠24aに固定されるようになっているので、左もみあげ板材54bと左もみあげ裏面網94bとが重ね合わされて一緒に枠24bに固定されると、左もみあげ裏面網94bと枠24bとの間が所定距離離間するようになっている。従って、板材24bの端部側の体毛部材12は、板材24bの端部側が枠24bの上面に当接しないで離間しているので、左もみあげ裏面網94bと枠24bとで挟まれることなく、枠24bで囲まれた空間内で移動可能になっている。
【0102】
なお、ここでは、図11を用いながら、左もみあげ枠24b、左もみあげ板材54b、左もみあげ裏面網94bについてのみ説明したが、左もみあげ枠21a〜24a,25a〜33、左もみあげ板材51a〜54a,55a〜63、裏面板71a〜94a,95a〜103についても同様に構成されている。
【0103】
また、この発明の実施の形態4では、板材51a〜63と裏面網91a〜103との間には、何らの部材も挟まれることがなかったが、上記実施の形態に限定されない。すなわち、板材51a〜63と裏面板91a〜103との間には、図13(B)で示すように、「吸水部材」の一つである吸水性を有する第1吸水部材123が設けられる構成とすることも可能である。第1吸水部材123には、体毛部材12が挿通される体毛挿通孔123aが形成され、板材51a〜63に形成される傾斜貫通孔11から水が流入した場合に、第1吸水部材123が水を吸収して膨張し、体毛挿通孔123aが収縮して水が遮断されるように構成されている。なお、符号123b−1〜123b−4は、針121の基端側部121aが挿嵌される挿嵌孔である。
【0104】
これとは逆に、この第1吸水部材123は、乾燥すると、再び、体毛挿通孔123aが広がり、体毛部材12の出入が円滑に行えるようにすることができる。例えば、板材51a〜63の材質として、シリコン等を使用し、第1吸水部材123の材質として、吸水性ポリマー等の水を吸収すると直ちに膨張し、人形10内に水が浸入しない状態となるのに最適な素材と厚みを有するものを使用し、裏面網91a〜103の材質として、形状記憶用板を使用する。更に、例えば、吸水性ポリマーとして、ポリアクリル酸塩系樹脂を用いる。従って、理髪練習用頭部人形10の体毛部材12を洗った場合に、人形10内に水が浸入しないようにすることができる。
【0105】
また、第1吸水部材123と板材51a〜63との間には、「吸水部材」の一つである第2吸水部材124が更に挟まれ、積み重ねられている。第2吸水部材124にも、図13(D)で示すように、体毛部材12が挿通される体毛貫通孔124aが複数形成されている。第2吸水部材124の材質としては、フェルト等の直ぐに乾く素材と厚さのものを用いる。また、符号124b−1〜124b−4は、基端側部121aが挿嵌される挿嵌孔である。
【0106】
なお、この発明の実施の形態4では、裏面網91a〜103を用いていたが、上記実施の形態に限定されず、格子状の孔を複数有し、各孔同士を隔てる隔壁部を有する裏面板を用いる構成も可能である。
【0107】
なお、この発明の実施の形態4の構成を、この発明の実施の形態2の動物人形110に適用することも可能である。
【0108】
[発明の実施の形態5]
【0109】
以下、この発明の実施の形態5について説明する。
【0110】
図14は、この発明の実施の形態5を示す。なお、この発明の実施の形態1と同一の部材又は構成のものに関しては、この発明の実施の形態1で用いたものを用いるものし、同一符号を付して説明を省略する。
【0111】
この発明の実施の形態5における理髪練習用頭部人形10は、図14(B)で示すように、板材11が分割された板材ではなく、人間頭部の形状をしており、中空形状である。
【0112】
また、図14(A)で示すように、板材11が着脱可能で人間の頭部の形状に成形された「骨組み」である骨格構造体13が設けられており、図14(B)で示すように、板材11が、この骨格構造体13に被せられる大きさで骨格構造体13の外形と略同形状で成形されると共に側部に切れ込み部13pが形成され、切れ込み部13pを開閉して骨格構造体13に対して着脱されることにより交換可能である。従って、板材11が骨格構造体13に簡単に被せることができる。なお、このような切れ込み部13pを設ける構成も、この発明の実施の形態2における動物人形110に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】この発明の実施の形態1に係る理髪練習用頭部人形の正面図である。
【図2】同実施の形態に係る理髪練習用頭部人形の図であり、(a)は、骨格構造体を示す正面図であり、(b)は、骨格構造体の分割枠に対して複数の分割板材を取付けた状態を示す正面図である。
【図3】同実施の形態に係る理髪練習用頭部人形の図であり、(a)は、骨格構造体を示す裏面図であり、(b)は、骨格構造体の分割枠に対して複数の分割板材を取付けた状態を示す裏面図である。
【図4】同実施の形態に係る骨格構造体に板材を取付けられた理髪練習用頭部人形の図であり、(a)は、理髪練習用頭部人形の側面図であり、(b)は、理髪練習用頭部人形の平面図である。
【図5】同実施の形態に係る体毛部材と板材との関係を示す理髪練習用頭部人形の断面図である。
【図6】同実施の形態に係る板材の構成を示す図であり、(a)は、板材と体毛部材と覆いの斜視図であり、(b)は、一つの傾斜貫通孔に一本の体毛部材を挿通させた板材の断面図であり、(c)は、一つの傾斜貫通孔に複数本の体毛部材を挿通させた板材の断面図である。
【図7】同実施の形態に係る体毛部材固定手段の構成を示す理髪練習用頭部人形の上方から見た断面図である。
【図8】同実施の形態に係る体毛部材固定手段の構成を示す図であり、(a)は、板材の裏面側に配設される体毛部材固定手段の斜視図であり、(b)は、固定鋏と固定リングとの係止状況を説明する概略図である。
【図9】同実施の形態に係る体毛部材固定手段を構成する固定鋏の拡大斜視図である。
【図10】この発明の実施の形態2に係る動物人形の斜視図であり、(A)は、体毛部材と動物人形の板材との関係を示す概略斜視図であり、(B)は、体毛部材と動物人形の板材との関係を示す概略断面図である。
【図11】この発明の実施の形態3に係る理髪練習用頭部人形における板材と裏面板と枠との関係を示し、(A)は、板材と裏面板とが離間した状態を示す斜視図であり、(B)は、板材と裏面板とが重ね合わされた状態を示す斜視図である。
【図12】この発明の実施の形態4に係る理髪練習用頭部人形における板材と裏面網と枠との関係を示し、(A)は、板材と裏面網とが離間した状態を示す斜視図であり、(B)は、板材と裏面網とが重ね合わされた状態を示す斜視図である。
【図13】(A)は、板材と裏面板との間に、第1吸水部材及び第2吸水部材が設けられた状態を示す構成図であり、(B)は、板材と裏面網との間に、第1吸水部材及び第2吸水部材が設けられた状態を示す構成図であり、(C)は、第1吸水部材の構成を示す斜視図であり、(D)は、第2吸水部材の構成を示す斜視図である。
【図14】この発明の実施の形態5に係る理髪練習用頭部人形の図であり、(A)は、理髪練習用頭部人形の骨格構造体の斜視図であり、(B)は、理髪練習用頭部人形の板材の斜視図である。
【符号の説明】
【0114】
10 理髪練習用頭部人形(体毛調整練習用人形)
11 板材
11a 傾斜貫通孔
11d 表面開口
11e 裏面開口
12 体毛部材
13 骨格構造体
14 体毛部材固定手段
15 覆い(区画手段)
71〜78 隔壁(区画手段)
110 動物人形(体毛調整練習用人形)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の厚みを有する板材により、内部が中空で動物の形状に成形された体毛調整練習用人形であって、
前記板材には、板面に沿う方向と所定の傾斜角を有する傾斜貫通孔が複数形成され、該傾斜貫通孔には、体毛部材が、前記板材の表面から突出された状態に挿通されると共に、前記板材の裏面から突出された状態に挿通され、
前記板材の裏面から突出する前記体毛部材を固定可能な体毛部材固定手段が設けられていることを特徴とする体毛調整練習用人形。
【請求項2】
前記傾斜貫通孔は、前記板材の表面側に形成された表面開口と、前記板材の裏面側に形成された裏面開口とを有し、前記表面開口が、前記裏面開口よりも狭く形成されていることを特徴とする請求項1に記載の体毛調整練習用人形。
【請求項3】
前記裏面開口の周縁部の一部又は全部には、アール部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の体毛調整練習用人形。
【請求項4】
所定の厚みを有する板材により、内部が中空で動物の形状に成形された体毛調整練習用人形であって、
前記板材には、貫通孔が複数形成され、該貫通孔には、体毛部材が、前記板材の表面から突出された状態に挿通されると共に、前記板材の裏面から突出された状態で挿通され、
前記板材の裏面側には、前記板材の裏面から突出する前記体毛部材を固定可能な体毛部材固定手段が設けられ、
前記板材の所定領域に形成された前記貫通孔に挿通された前記体毛部材が、前記板材の所定領域に対応して区画手段によって区画されたことを特徴とする体毛調整練習用人形。
【請求項5】
前記板材が着脱可能で動物の形状に成形された骨組みが設けられ、
前記板材が、複数の分割板材からなり、該各分割板材が、前記骨組みに対して着脱されることにより交換可能であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一つに記載の体毛調整練習用人形。
【請求項6】
前記骨組みが、前記分割板材に対応する複数の分割枠からなり、隣接する前記分割枠同士を着脱することにより交換可能であることを特徴とする請求項5に記載の体毛調整練習用人形。
【請求項7】
前記区画手段が、前記板材に挿通された前記体毛部材を前記分割板材に挿通された束毎に区画すると共に、前記分割枠の裏側に設けられて各々の前記分割枠の形状に対応して区画する隔壁部であり、前記体毛部材固定手段が、前記隔壁部に設けられたことを特徴とする請求項5又は6に記載の体毛調整練習用人形。
【請求項8】
前記区画手段が、前記板材に挿通された前記体毛部材を前記分割板材に挿通された束毎に区画すると共に、前記分割板材の周縁部から前記分割板材の裏面へ向けて延長される覆いであることを特徴とする請求項5又は6に記載の体毛調整練習用人形。
【請求項9】
前記区画手段が、前記板材に挿通された前記体毛部材を前記分割板材に挿通された束毎に区画すると共に、前記分割枠の裏側に設けられて各々の前記分割枠の形状に対応して区画する隔壁部と、前記板材に挿通された前記体毛部材を前記分割板材に挿通された束毎に区画すると共に、前記分割板材の周縁部から前記分割板材の裏面へ向けて延長される覆いとを有することを特徴とする請求項5又は6に記載の体毛調整練習用人形。
【請求項10】
前記区画手段が、前記分割板材の裏面に延びる前記体毛部材の束を収容可能な収容部屋であることを特徴とする請求項5又は6に記載の体毛調整練習用人形。
【請求項11】
前記板材が着脱可能で動物の形状に成形された骨組みが設けられ、
前記板材が、前記骨組みに被せられる大きさで前記骨組みの外形と略同形状で成形されると共に側部に切れ込み部が形成され、該切れ込み部を開閉して前記骨組みに対して着脱されることにより交換可能であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一つに記載の体毛調整練習用人形。
【請求項12】
前記板材の裏面には、該板材を所定の形状に保持すると共に前記体毛部材が挿通される裏面固定部材が設けられていることを特徴とする請求項1乃至11の何れか一つに記載の体毛調整練習用人形。
【請求項13】
前記板材と前記裏面固定部材との間には、吸水性を有する吸水部材が設けられることを特徴とする請求項1乃至12の何れか一つに記載の体毛調整練習用人形。
【請求項14】
前記吸水部材には、前記体毛部材が挿通される体毛挿通孔が形成され、前記板材に形成される前記傾斜貫通孔から水が流入した場合に、前記吸水部材が水を吸収して膨張し、前記体毛挿通孔が収縮して水が遮断されるように構成されたことを特徴とする請求項1乃至13の何れか一つに記載の体毛調整練習用人形。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−301306(P2007−301306A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−145969(P2006−145969)
【出願日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【出願人】(506100864)
【Fターム(参考)】