説明

体温計および体温測定システム

【課題】精度良く深部体温を測定可能な体温計を実現する。
【解決手段】無線式体温計10は、高い熱抵抗率を有する断熱体130を備える。断熱体130の表面には、水晶振動子111が配置されている。断熱体130の表面(外気面)には、平面視して水晶振動子111を囲むように、巻回形のアンテナ120が形成されており、水晶振動子111に接続している。断熱体130の裏面(被検温体面)には、水晶振動子112が配置されている。水晶振動子111,112は、断熱体130の厚み方向を貫通し、熱抵抗が被検温体の熱抵抗と略同じ線状導体211,212で接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検温体の体温を測定する体温計および当該体温計を備えた体温測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、深部体温を測定する装置が各種考案されており、その一つとして、特許文献1に示す装置がある。特許文献1に示す装置は、被検温体の表面の装着される体温計本体と、表示装置とを備える。体温計本体と表示装置との間では、無線通信が可能な構成となっている。
【0003】
特許文献1の体温計本体は、体表面側温度センサと外気側温度センサとを一つの組として備える。体表面側温度センサと外気側温度センサとは、所定の熱抵抗を有する断熱材を介在するように配置されている。そして、体温計本体は、体表面側温度センサが被検温体の表面に当接するように、被検温体に対して設置される。体表面側温度センサの温度検出結果と、外気側温度センサの温度検出結果とは、無線通信により、表示装置へ送信される。
【0004】
特許文献1の表示装置は、体表面側温度センサの温度検出結果、外気側温度センサの温度検出結果、および、体表面側温度センサと外気側温度センサとの間の断熱材の熱抵抗に基づいて、深部体温を算出して表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−308538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1に示す体温測定装置では、体表面から体表面側温度センサ、外気側温度センサを介して、外気に熱が伝導する際に、断熱材と、センサ間を導通する導電性の電極パターンの二つの経路を介して熱伝導してしまう。これにより、深部体温の算出結果の精度が低下してしまう。
【0007】
この発明の目的は、精度良く深部体温を測定可能な体温計および体温測定システムを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、被検温体の温度を測定するための体温計に関する。体温計は、感知温度に応じた第1検出信号を出力する第1温度検出手段と、感知温度に応じた第2検出信号を出力する第2温度検出手段と、第1温度検出手段と第2温度検出手段とを導通する導通手段と、を備える。導通手段は、被検温体の深部から表面までの熱抵抗と略同じ熱抵抗になるように形成されている。
【0009】
この構成では、被検温体から外気へ熱が伝搬される際に、第2温度検出手段と第1温度検出手段との間では導通手段のみを伝搬する。これにより、当該導通手段の熱抵抗を予め設定して記憶しておけば、詳細な算出方法は後述するが、第1温度検出手段の第1検出信号と第2温度検出手段の第2検出信号とから、被検温体の体温(深部体温)を精度良く測定することが可能になる。
【0010】
また、この発明の体温計は、次の構成であることが好ましい。体温計は、被検温体の熱抵抗率よりも大幅に高い熱抵抗率を有する媒質からなる断熱体を備える。第1温度検出手段は断熱体の外気側に配置されており、第2温度検出手段は断熱体の被検温体側に配置されている。導通手段は断熱体内に配置されている。
【0011】
この構成では、被検温体から外気へ熱が伝搬される際に、第2温度検出手段と第1温度検出手段との間では、断熱体を伝搬することなく、当該断熱体内に配置された導通手段のみを伝搬する。
【0012】
また、この発明の体温計は、第1温度検出手段と第2温度検出手段と導通手段との組を断熱体に対して複数組備えていることが好ましい。
【0013】
この構成では、体温測定が複数組で行われるので、これらの体温測定結果を平均値処理する等により、より精度良く体温を測定できる。
【0014】
また、この発明の体温計の複数組の導通手段は、熱抵抗が異なるように形成されていることが好ましい。
【0015】
この構成では、各組で異なる熱伝搬系が構成されるので、異なる熱伝搬系による体温測定結果が得られる。これによっても、より精度良く体温を測定できる。
【0016】
また、この発明の体温計では、複数組の導通手段は、同じ材質であって、異なる太さまたは長さで形成することが可能である。
【0017】
この構成では、同じ材質を用いて、それぞれに異なる複数の熱伝搬系を実現できる。これにより、体温計を構成する材料の種類数が増加することを防止できる。
【0018】
また、この発明の体温計は、第1主面に形成され、第1検出信号および第2検出信号を送信するアンテナを備えることが好ましい。
【0019】
この構成では、被検温体から離れている親機に対して、第1温度検出手段と第2温度検出手段による検温結果を、無線により送信できる。
【0020】
また、この発明の体温計の第1温度検出手段および第2温度検出手段は、アンテナで受信した信号によって駆動して、第1検出信号および第2検出信号をそれぞれに出力する温度センサ素子であることが好ましい。
【0021】
この構成では、第1、第2温度検出手段である温度センサ素子が、外部からの信号によって検温を行う。これにより、体温計に電池を備える必要が無い。
【0022】
また、この発明の体温計の温度センサ素子は圧電共振子で実現できる。また、この発明の体温計の温度センサ素子は水晶振動子で実現できる。水晶振動子等の圧電共振子は、外部からの信号入力により、感知した温度に準じた周波数で共振して、共振信号を発生する。この性質を利用することで、簡素な構造からなる温度センサ素子を実現できる。
【0023】
また、この発明は、上述のいずれかに記載の体温計と、体温計に対して第1の温度検出手段および第2の温度検出手段に与える信号の送信し、第1検出信号および第2検出信号の受信する親機と、を備える。体温計は被検温体の表面に装着されている。親機は、体温計と無線通信する親機側アンテナ部と、第1検出信号および第2検出信号に基づいて、被検温体の深部体温の計測を行う計測用処理部と、を備える。
【0024】
この構成では、上述の体温計を含む体温測定システムについて示している。このように上述の体温計を用いることで、深部体温を精度良く測定することができる。
【発明の効果】
【0025】
この発明によれば、精度良く深部体温を測定可能な体温計を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1の実施形態に係る無線式体温計10の構成を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係る無線式体温測定システム1の実施状況を示す図である。
【図3】第1の実施形態に係る無線式体温測定システム1の主要回路構成を示すブロック図である。
【図4】第2の実施形態に係る無線式体温計10Aの構成を示す図である。
【図5】第3の実施形態に係る無線式体温計10Bの構成を示す図である。
【図6】第4の実施形態に係る無線式体温計10Cの構成を示す図である。
【図7】第5の実施形態に係る無線式体温計10Dの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の第1の実施形態に係る体温計および体温測定システムについて、図を参照して説明する。本実施形態では、磁界結合により無線式体温計10と携帯型親端末20とで通信を行う場合を示す。なお、通信様式は、磁界結合に限らず、電界結合や電波等、その他の無線通信方式によるものであってもよい。図1は本実施形態に係る無線式体温計10の構成を示す図である。図1(A)は高熱伝導体層141を省略した状態での上面図、図1(B)はA−A’断面図、図1(C)は高熱伝導体層142を省略した状態での下面図である。
【0028】
無線式体温計10は、可撓性、絶縁性を有するとともに、所定の熱抵抗率ρを有する断熱体130を備える。断熱体130は、平面視して(上面側もしくは下面側から見て)円形であり、所定の厚みDを有する。断熱体130は、被検温体の熱抵抗率と比較して大幅に高い熱抵抗率ρの材質を用いている。言い換えれば、熱伝導率が被検温体に対して大幅に低い材質を用いている。例えば、ポリウレタン等の発泡系材料のように、人の皮膚の熱抵抗率に対して、異なる桁の値となる材質を用いるとよい。
【0029】
断熱体130の表面(第1主面)には、略全面に亘る領域に対して、巻回状のループ電極121が形成されている。ループ電極121は、無線式体温計10と携帯型親端末20との間で磁界結合による通信を行う第1、第2共振周波数および後述するパルス信号の周波数に応じた形状で形成されている。ループ電極121の内周端には、表面の中心方向へ延びる形状の引き回し電極1221が接続されている。ループ電極121の外周端には、表面の中心方向へ延びる形状の引き回し電極1222が接続されている。これらループ電極121、引き回し電極1221,1222により、アンテナ120が構成される。
【0030】
断熱体130の表面におけるループ電極121の巻回形を平面視した略中心には、水晶振動子111が配設されている。水晶振動子111の一対の入出力端子2011,2012は、それぞれ引き回し電極1221,1222に接続されている。
【0031】
水晶振動子111は、感知温度に応じて所定の共振周波数fp1で共振する素子である。この水晶振動子111が本発明の第1温度検出手段に相当する。
【0032】
断熱体130の表面には、水晶振動子111と同じ高さからなる絶縁性の高熱伝導体層141が形成されている。高熱伝導体層141は例えばフェライトシートからなる。アンテナ120のループ電極121は高熱伝導体層141の表面に形成されている。アンテナ120の引き回し電極1221,1222は断熱体130側に形成される。そして、ループ電極121と引き回し電極1221,1222は、図示しないビア電極により接続される。このように絶縁性の高熱伝導体層141を形成することで、アンテナ120の磁界結合度を向上させることができる。
【0033】
断熱体130の裏面(第2主面)には、平面視した略中心に、水晶振動子112が配設されている。この際、水晶振動子112は、平面視して水晶振動子111と略重なり合う位置に配置される。
【0034】
水晶振動子112は、感知温度に応じて上述の水晶振動子111とは異なる所定の共振周波数fp2で共振する素子である。特に、本実施形態の無線式体温計10では、当該無線式体温計10で検出する温度範囲において、水晶振動子111が取り得る周波数帯域と水晶振動子112が取り得る周波数帯域とが異なるように、水晶振動子111、112を選択する。この水晶振動子112が本発明の第2温度検出手段に相当する。
【0035】
断熱体130の裏面には、水晶振動子112と同じ高さからなる高熱伝導体層142が形成されている。この高熱伝導体層142の被検温体側の面は粘着性を有するとよりよい。
【0036】
断熱体130内には、線状導体211,212が配設されている。線状導体211は、水晶振動子111の入出力端子2011と、水晶振動子112の一対の入出力端子2021とを接続する。線状導体212は、水晶振動子111の一対の入出力端子2012と、水晶振動子112の一対の入出力端子2022とを接続する。線状導体211,212は高い導電性を有する材質からなり、例えば、アルミニウム(Al)や銅(Cu)等の金属ワイヤを用いる。
【0037】
このように、本実施形態の無線式体温計10では、アンテナ120に対して、表面側の水晶振動子111と裏面側の水晶振動子112とが並列に接続された構成となる。
【0038】
線状導体211,212の熱抵抗Rは、被検知体である人体の熱抵抗Rと略同じになるように設定する。
【0039】
検温体である人体の熱伝導率をku[W/m・K]、人体低温層厚みをD[m]、裏面側の高熱伝導体層142の直径をL[m]、線状導体211,212の熱伝導率をkt[W/m・K]、線状導体211,212の配線長をh[m]、線状導体211,212の径をr[m]、とする。
【0040】
例えば、線状導体211,212の配線長hと人体低温層厚みDを同じとし、線状導体211,212にアルミニウムを用いると、人体の熱伝導率をku=0.4、線状導体211,212の熱伝導率kt=200となる。この条件で、線状導体211,212の熱抵抗Rと人体の熱抵抗Rとが同じ(R=R)である条件を満たすには、高熱伝導体層142の直径Lと線状導体211,212の径rの比L/r=(500)1/2となる。断熱体130すなわち無線式体温計10が直径4[cm]であれば、線状導体211,212の径rを1.79mmとすればよい。
【0041】
このような構成とすることで、断熱体130に対して、線状導体211,212の熱抵抗率が大幅に低いので、被検知体である人の皮膚から外部へ熱が伝搬される過程における水晶振動子112から水晶振動子111へ熱が伝搬される経路を、線状導体211,212のみにすることができる。
【0042】
以上のような構成の無線式体温計10を、図2、図3に示すような無線式体温測定システム1に利用する。図2は本実施形態に係る無線式体温測定システム1の実施状況を示す図である。図3は本実施形態に係る無線式体温測定システム1の主要回路構成を示すブロック図である。
【0043】
まず、水晶振動子112が配設された無線式体温計10の裏面を、被検温体である人900の腕900Aに装着する。なお、本実施形態では、腕に装着する場合を示したが、検温したい箇所(例えば人900の胸部等)に装着すればよい。
【0044】
このように人900に装着された無線式体温計10に対して、携帯型親端末20からパルス信号SpLを送信する。この際、携帯型親端末20を、無線式体温計10のアンテナ120との間で磁界結合による通信が可能な距離に近づけてパルス信号SpLを送信する。
【0045】
パルス信号SpLは、アンテナ120で受信され、水晶振動子111,112へ印加される。水晶振動子111は、パルス信号SpLによって共振し、第1共振信号Sfp1を出力する。この第1共振信号Sfp1が本発明の第1検出信号に相当する。第1共振信号Sfp1はアンテナ120に伝送される。アンテナ120に伝送された第1共振信号Sfp1は、磁界結合により携帯型親端末20へ送信される。
【0046】
ここで、第1共振信号Sfp1の周波数fp1は水晶振動子111の感知する温度によって変化し、一つの共振周波数に対して一意に温度が決まっている。具体的には、共振周波数fp1は、検温部である人900の腕900Aの体温が熱抵抗率ρで長さh、径rからなる線状導体211,212を介して外気側へ熱伝導された温度に応じて一意に決まり、当該第1共振周波数fp1の第1共振信号Sfp1が出力される。
【0047】
水晶振動子112は、パルス信号SpLによって共振し、第2共振信号Sfp2を出力する。この第2共振信号Sfp2が本発明の第2検出信号に相当する。第2共振信号Sfp2はアンテナ120に伝送される。アンテナ120に伝送された第2共振信号Sfp2は、磁界結合により携帯型親端末20へ送信される。
【0048】
ここで、第2共振信号Sfp2の周波数fp2は水晶振動子112の感知する温度によって変化し、一つの共振周波数に対して一意に温度が決まっている。具体的には、共振周波数fp2は、検温部である人900の腕900Aの体温に応じて一意に決まり、当該第2共振周波数fp2の第2共振信号Sfp2が出力される。
【0049】
携帯型親端末20は、制御部21、送信信号生成部22、送受信部23、親機側アンテナ24、計測部25、表示部26、および操作部27を備える。制御部21は、携帯型親端末20の全体制御を行う。また、制御部21は、操作部27からの操作入力に応じて各種の制御処理を実行する。例えば、操作部27から体温測定の操作入力を受けると、送信信号生成部22へパルス信号SpLの生成制御を行う。
【0050】
送信信号生成部22は、パルス信号SpLの生成制御を受けると、所定周波数の搬送波からなるパルス信号SpLを生成し、送受信部23へ与える。具体的には、パルス信号SpLの周波数成分が、当該無線式体温計10で検出される温度範囲において、水晶振動子111,112が取り得る周波数帯域と略同じになるように、搬送波周波数は、水晶振動子111の共振周波数に近い周波数に設定され、かつ帯域幅を決定するパルス幅(バースト時間)は適当な値に設定されている。
【0051】
送受信部23は、パルス信号SpLを親機側アンテナ24に出力する。親機側アンテナ24は、無線式体温計10のアンテナ部12と同様の構造からなり、パルス信号SpLを放射する。
【0052】
親機側アンテナ24は、無線式体温計10のアンテナ120から放射された第1共振信号Sfp1と第2共振信号Sfp2を順次受信し、送受信部23へ出力する。送受信部23は、第1共振信号Sfp1を計測部25へ出力する。
【0053】
計測部25は、周波数変換部251、温度検出部252、および体温算出部253を備える。周波数変換部251は、FFT処理等により、時間軸の第1共振信号Sfp1および第2共振信号Sfp2からそれぞれ周波数スペクトルを取得する。なお、本実施形態では第1共振信号Sfp1と第2共振信号Sfp2を別々に読み取る場合を示した。しかしながら、当該無線式体温計10で検出する温度範囲において、水晶振動子111が取り得る周波数帯域と水晶振動子112が取り得る周波数帯域をできるだけ近づけておき、かつ、2つの周波数帯域を含む広い周波数成分を持ったパルス信号を送信すれば、一回の送受信で、第1共振信号Sfp1と第2共振信号Sfp2を同時に測定することができる。
【0054】
温度検出部252には、第1共振信号Sfp1の周波数と温度との関係、および第2共振信号Sfp2の周波数と温度との関係が予め記憶されている。
【0055】
温度検出部252は、第1共振信号Sfp1の周波数スペクトルピークを検出し、当該ピーク周波数fp1に関連付けられた温度を、外気側温度Tsとして出力する。温度検出部252は、第2共振信号Sfp2の周波数スペクトルピークを検出し、当該ピーク周波数fp2に関連付けられた温度を、体表面温度Tbとして出力する。
【0056】
体温算出部253は、外気側温度Ts、体表面温度Tb、水晶振動子111、水晶振動子112間の線状導体211,212の熱抵抗Rと、あらかじめ記憶している皮下組織の熱抵抗Rとに基づいて、次式から被検温体の深部体温Tdを算出する。
【0057】
Td=Ts+(R+R)・(Tb−Ts)/R −(A)
算出された深部体温Tdは、表示部26および記憶部(図示せず)へ出力される。表示部26は深部体温測定結果を表示する。
【0058】
以上のような構成により、携帯型親端末20により、遠隔で体温検出トリガを与えるだけで、人900の深部体温を測定することができる。
【0059】
そして、本実施形態の構成を用いることで、体温が外気へ放射されるまでの過程における、体表面温度Tbを検知する水晶振動子112と外気側温度Tsを検知する水晶振動子111との間の熱の伝搬は、線状導体211,212のみを介する。したがって、上述の深部体温Tdの算出式(A)の元となる熱伝搬モデルと正確に一致するので、深部体温Tdを精度よく算出することができる。
【0060】
また、上述のように水晶振動子を用いれば、電池を必要としないので、体温計10を小型化することができる。
【0061】
次に、本発明の第2の実施形態に係る体温計について、図を参照して説明する。図4は本実施形態に係る無線式体温計10Aの構成を示す図である。図4(A)は高熱伝導体層141を省略した状態での上面図、図4(B)はB−B’断面図、図4(C)は高熱伝導体層142を省略した状態での下面図である。
【0062】
本実施形態の無線式体温計10Aは、断熱体130Aの構造が第1の実施形態に示した無線式体温計10と異なり、他の構成は同じである。したがって、異なる箇所のみを説明する。
【0063】
断熱体130Aには、内部に空洞300が形成されている。そして、この空洞300を突き抜けるように、接続導体211,212が配設されている。空洞300内には空気が充填されており、これにより、高い熱抵抗を実現している。したがって、このような構成であっても、第1の実施形態と同様に、精度良い体温測定が可能になる。
【0064】
なお、本実施形態では空洞300に空気を充填する例を示したが、断熱体130Aの材質を変更する等して、空洞300内を真空状態にしてもよい。
【0065】
次に、第3の実施形態に係る体温計について、図を参照して説明する。図5は本実施形態に係る無線式体温計10Bの構成を示す図である。図5(A)は高熱伝導体層141Bを省略した状態での上面図、図5(B)はC−C’断面図、図5(C)は高熱伝導体層142Bを省略した状態での下面図である。
【0066】
上述の各実施形態の無線式体温計は、表面側(外気側)の水晶振動子と裏面側(体表面側)の水晶振動子の組を一組だけ設けたものであったが、本実施形態の無線式体温計10Bは水晶振動子の組を二組設けたものである。
【0067】
無線式体温計10Bの断熱体130Bは、第1の実施形態に示した断熱体130と同じ材質からなり、二つのアンテナ120A,120Bが所定距離離間して配設できる面積に形成されている。
【0068】
断熱体130Bの表面(第1主面)には、第1の実施形態のループ電極121と略同じ形状からなる巻回状のループ電極121A,121Bが形成されている。なお、ループ電極121A,121Bは、送受信する周波数帯域の中心周波数に応じて、若干異なる形状からなる。
【0069】
ループ電極121Aは、無線式体温計10Bと携帯型親端末との間で磁界結合による通信を行う第1、第2共振周波数および親機から送信される第1パルス信号の周波数に応じた形状で形成されている。
【0070】
ループ電極121Aの内周端には、表面の中心方向へ延びる形状の引き回し電極1221Aが接続されている。ループ電極121Aの外周端には、表面の中心方向へ延びる形状の引き回し電極1222Aが接続されている。これらループ電極121A、引き回し電極1221A,1222Aにより、アンテナ120Aが構成される。
【0071】
断熱体130Bの表面におけるループ電極121Aの巻回形を平面視した略中心には、水晶振動子111が配設されている。水晶振動子111の一対の入出力端子2011A,2012Aは、それぞれ引き回し電極1221A,1222Aに接続されている。
【0072】
水晶振動子111は、感知温度に応じて所定の第1共振周波数fp1で共振する素子である。この水晶振動子111が本発明の第1温度検出手段に相当する。
【0073】
断熱体130Bの裏面(第2主面)には、平面視した略中心に、水晶振動子112が配設されている。この際、水晶振動子112は、平面視して水晶振動子111と略重なり合う位置に配置される。
【0074】
水晶振動子112は、感知温度に応じて上述の水晶振動子111とは異なる所定の第2共振周波数fp2で共振する素子である。この水晶振動子112が本発明の第2温度検出手段に相当する。
【0075】
ループ電極121Bは、無線式体温計10Bと携帯型親端末との間で磁界結合による通信を行う第3、第4共振周波数および親機から送信される第2パルス信号の周波数に応じた形状で形成されている。
【0076】
ループ電極121Bの内周端には、表面の中心方向へ延びる形状の引き回し電極1221Bが接続されている。ループ電極121Bの外周端には、表面の中心方向へ延びる形状の引き回し電極1222Bが接続されている。これらループ電極121B、引き回し電極1221B,1222Bにより、アンテナ120Bが構成される。
【0077】
断熱体130Bの表面におけるループ電極121Bの巻回形を平面視した略中心には、水晶振動子113が配設されている。水晶振動子113の一対の入出力端子2011B,2012Bは、それぞれ引き回し電極1221B,1222Bに接続されている。
【0078】
水晶振動子113は、感知温度に応じて上述の水晶振動子111、112と異なる所定の第3共振周波数fp3で共振する素子である。この水晶振動子113も、水晶振動子111と同様に本発明の第1温度検出手段に相当する。
【0079】
断熱体130Bの裏面(第2主面)には、平面視した略中心に、水晶振動子114が配設されている。この際、水晶振動子114は、平面視して水晶振動子113と略重なり合う位置に配置される。
【0080】
水晶振動子114は、感知温度に応じて上述の水晶振動子111,112,113とは異なる所定の第4共振周波数fp4で共振する素子である。この水晶振動子114も水晶振動子112と同様に本発明の第2温度検出手段に相当する。
【0081】
断熱体130Bの表面には、水晶振動子111,113と同じ高さからなる絶縁性の高熱伝導体層141Bが形成されている。高熱伝導体層141Bは第1の実施形態に示した高熱伝導体層141と同じ材質からなる。そして、アンテナ120A,120Bの配線も、第1の実施形態に示したアンテナ120と同じように、ビア電極を用いている。
【0082】
断熱体130Bの裏面には、水晶振動子112,114と同じ高さからなる高熱伝導体層142が形成されている。この高熱伝導体層142の被検温体側の面は粘着性を有するとよりよい。
【0083】
断熱体130内には、線状導体211A,212Aが配設されている。線状導体211Aは、水晶振動子111の入出力端子2011Aと、水晶振動子112の一対の入出力端子2021Aとを接続する。線状導体212Aは、水晶振動子111の一対の入出力端子2012Aと、水晶振動子112の一対の入出力端子2022Aとを接続する。線状導体211A,212Aは高い導電性を有する材質からなり、例えば、アルミニウム(Al)や銅(Cu)等の金属ワイヤを用いる。
【0084】
断熱体130内には、線状導体211B,212Bが配設されている。線状導体211Bは、水晶振動子113の入出力端子2011Bと、水晶振動子114の一対の入出力端子2021Aとを接続する。線状導体212Bは、水晶振動子113の一対の入出力端子2012Bと、水晶振動子114の一対の入出力端子2022Bとを接続する。線状導体211A,212Aは高い導電性を有する材質からなり、例えば、アルミニウム(Al)や銅(Cu)等の金属ワイヤを用いる。
【0085】
そして、線状導体211A,212Aと、線状導体211B,212Bは、図5に示すように、異なる径で形成されている。これにより、線状導体211A,212Aと線状導体211B,212Bを同じ材質で形成しても、線状導体211A,212Aの熱抵抗と線状導体211B,212Bの熱抵抗を異ならせることができる。したがって、水晶振動子111,112間の熱抵抗と水晶振動子113,114間の熱抵抗を異ならせることができる。このような構成とすることで、二つの異なる熱伝達経路での温度検知結果を得られる。
【0086】
親機は、図示しないが、上述の第1共振周波数信号、第2共振周波数信号に近接する周波数の第1パルス信号を送信し、第1共振周波数信号、第2共振周波数信号を受信する。さらに、上述の第3共振周波数信号、第4共振周波数信号に近接する周波数の第2パルス信号を送信し、第3共振周波数信号、第4共振周波数信号を受信する。
【0087】
このような構成とすれば、親機は、二つの異なる熱伝達経路での温度検知結果による深部体温を算出することができる。これにより、より信頼性の高い深部体温を測定することができる。
【0088】
次に、第4の実施形態に係る体温計について、図を参照して説明する。図6は第4の実施形態に係る無線式体温計10Cの構成を示す図であり、側面断面図である。
【0089】
本実施形態の無線式体温計10Cは、線状導体211C,212Cの形状が異なるのみで他の構成は、第3の実施形態に示した無線式体温計10Bと同じである。
【0090】
線状導体211C,212Cは、線状導体211A,212Aと同じ材質であるが、水晶振動子間を接続する長さが異なる。このような構成であっても、第3の実施形態と同様に、二つの異なる熱伝達経路での温度検知結果を得られ、より信頼性の高い深部体温を測定することができる。
【0091】
なお、第3実施形態の構成と第4実施形態の構成を組み合わせて、水晶振動子の組毎の熱抵抗を異ならせてもよい。すなわち、水晶振動子111,112間の線状導体と水晶振動子113,114間の線状導体を同じ材質で形成し、径と長さを異ならせてもよい。また、同じ形状であって、異なる材質を用いてもよい。
【0092】
次に、第5の実施形態に係る体温計について、図を参照して説明する。図7は第4の実施形態に係る無線式体温計10Dの構成を示す図である。図7(A)は高熱伝導体層141Dを省略した状態での上面図、図7(B)はD−D’断面図、図7(C)はE−E’断面図、である。
【0093】
本実施形態の無線式体温計10Dは、水晶振動子111,112,113,114を単一のアンテナに接続したものであり、他の構成は第3の実施形態に示した無線式体温計10Bと同じである。
【0094】
アンテナ120Dを構成するループ電極121Dは、断熱体130Dの表面(第1主面)の略全面に亘る領域に対して、巻回状に形成されている。ループ電極121Dは、第3、第4の実施形態で示した第1、第2、第3、第4共振周波数および後述する第1のパルス信号、第2のパルス信号の周波数を通信できるような形状で形成されている。
【0095】
ループ電極121Dの内周端には、表面の中心方向へ延びる形状の引き回し電極1221Dが接続されている。ループ電極121Dの外周端には、表面の中心方向へ延びる形状の引き回し電極1222Dが接続されている。引き回し電極1221D,1222Dは、水晶振動子111に接続するとともに、線状導体211D,212Dを介して水晶振動子112に接続されている。
【0096】
引き回し電極1221Eは引き回し電極1221Dに接続し、引き回し電極1222Eは引き回し電極1222Dに接続している。引き回し電極1221E,1222Eは、水晶振動子113に接続するとともに、線状導体211E,212Eを介して水晶振動子114に接続されている。
【0097】
このような構成であっても、上述の第3、第4の実施形態と同様に、二つの異なる熱伝達経路での温度検知結果を得られ、より信頼性の高い深部体温を測定することができる。さらに、本実施形態の構成であれば、アンテナが一つとなるので、無線式体温計10Dの構成要素を簡素化することができる。
【0098】
なお、上述の各実施形態に示した高熱伝導体層は省略することも可能である。
【0099】
また、第3、第4、第5実施形態では水晶振動子の組を二組設ける例を示したが、三組以上であってもよい。この場合、組毎に接続導体の熱抵抗を異ならせるとよい。
【0100】
また、上述第3、第4、第5実施形態では水晶振動子の組毎に線状導体の熱抵抗を異ならせたが、全て同じであってもよい。この場合、同じ熱抵抗を有する複数の熱伝達経路による深部体温を得られ、これらを平均値処理しても信頼性の高い深部体温を得ることができる。
【0101】
また、上述の各実施形態では、無線式体温計を例に説明したが、例えば表面(外気面)のアンテナ(ループ電極)を省略して引き回し電極に接続する小型ICと表示器を設け、親機の機能を当該小型ICと表示器に行わせてもよい。
【符号の説明】
【0102】
10,10’,10A,10B,10C,10D:無線式体温計、20:携帯型親端末、21:制御部、22:送信信号生成部、23:送受信部、24:親機側アンテナ、25:計測部、251:周波数変換部、252:温度検出部、253:体温算出部、26:表示部、27:操作部、
111,112,113,114−水晶振動子、
120:アンテナ、121,121A,121B,121D:ループ電極、
1221,1222,1221A,1222A,1221B,1222B,1221D,1222D,1221E,1222E:引き回し電極、
130,130A,130B,130C,130D:断熱体、
211,212,211A,212A,211B,212B,211C,212C,211D,212D,211E,212E:線状導体、
300:空洞、
141,142,141B,142B,141C,142C,141D,142D:高熱伝導体層、
2011,2012,2011A,2012A,2011B,2012B,2011D,2012D,2011E,2012E,2021,2022,2021A,2022A,2021B,2022B,2021D,2022D,2021E,2022E:入出力端子、
900−人、900A−腕

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感知温度に応じた第1検出信号を出力する第1温度検出手段と、
感知温度に応じた第2検出信号を出力する第2温度検出手段と、
前記第1温度検出手段と前記第2温度検出手段とを導通する導通手段と、を備え、
該導通手段は、被検温体の深部から表面までの熱抵抗と略同じ熱抵抗になるように形成されている、体温計。
【請求項2】
被検温体の熱抵抗率よりも大幅に高い熱抵抗率を有する媒質からなる断熱体を備え、
前記第1温度検出手段は前記断熱体の外気側に配置されており、
前記第2温度検出手段は前記断熱体の前記被検温体側に配置されており、
前記導通手段は前記断熱体内に配置されている、請求項1に記載の体温計。
【請求項3】
前記第1温度検出手段と前記第2温度検出手段と前記導通手段との組が、前記断熱体に複数組備えられている、請求項1または請求項2に記載の体温計。
【請求項4】
前記複数組の導通手段は、それらの熱抵抗が異なるように形成されている、請求項3に記載の体温計。
【請求項5】
前記複数組の導通手段は、同じ材質であって、異なる太さまたは長さで形成されている、請求項4に記載の体温計。
【請求項6】
前記第1主面に形成され、前記第1検出信号および前記第2検出信号を送信するアンテナを備えた、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の体温計。
【請求項7】
前記第1温度検出手段および前記第2温度検出手段は、前記アンテナで受信した信号によって駆動して、前記第1検出信号および前記第2検出信号をそれぞれに出力する温度センサ素子である、請求項6に記載の体温計。
【請求項8】
前記温度センサ素子は圧電共振子である請求項7に記載の体温計。
【請求項9】
前記温度センサ素子は水晶振動子である請求項8に記載の体温計。
【請求項10】
請求項6乃至請求項9のいずれか一項に記載の体温計と、
該体温計に対して、前記第1の温度検出手段および前記第2の温度検出手段に与える信号の送信し、前記第1検出信号および前記第2検出信号の受信する親機と、を備え、
前記体温計は被検温体の表面に装着され、
前記親機は、前記体温計と無線通信する親機側アンテナ部と、
前記第1検出信号および前記第2検出信号に基づいて、前記被検温体の深部体温の計測を行う計測用処理部と、を備える、体温測定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−207943(P2012−207943A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71820(P2011−71820)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】