説明

体積ホログラム記録用感光性組成物、それから得られる記録媒体、その製造法ならびにそれを用いた記録方法

【課題】優れた屈折率変調能を有し、体積収縮が極めて小さく、回折効率の高い体積ホログラム記録用感光性組成物を提供する。
【解決手段】下記式(I)で表される構造を有する非エステル系の脂環エポキシ化合物と熱酸発生剤とを含有する三次元架橋ポリマーマトリックス前駆体材料と、ラジカル重合性化合物と、ラジカル重合開始剤とを含有する体積ホログラム記録用感光性組成物。


[式(I)中、nは0〜10の整数であり;Xは、酸素原子,−CH2−,−C(CH32−,−CBr2−,−C(CBr32−,−CF2−,−C(CF32−,−CCl2−,−C(CCl32−,及び−CH(C65)−からなる群から選択されるいずれか1種の2価の基である。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化収縮が抑制され、耐湿性、熱安定性に優れた体積ホログラム記録用感光性組成物、該組成物から得られる体積ホログラム記録媒体、該記録媒体の製造方法、ならびに該記録媒体を用いたホログラム記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
情報をホログラムとして記録するホログラフィックメモリーは、大容量かつ高速転送が可能な次世代情報記録媒体として注目されている。ホログラム記録媒体としては、例えばラジカル重合性モノマー、熱可塑性バインダー樹脂、光ラジカル重合開始剤および増感色素を主成分とするものが広く知られている。
【0003】
ホログラム記録用感光性組成物をフィルム状にし、干渉光露光を行うことによって情報が記録される。光が強く照射された部分で、ラジカル重合性モノマーが重合し、光が弱く照射された部分から光が強く照射された部分に向かってラジカル重合性モノマーが拡散して、濃度勾配が発生する。これにより、光の強弱に応じた屈折率差が生じ、ホログラムが形成される。
【0004】
従来技術として、三次元架橋エポキシマトリックス中に重合性モノマーを分散させた媒体が提案されている。このような媒体では、ある程度の硬さを有することが必要とされるが、マトリックスを硬くすると光重合性モノマーが拡散できうるマトリックス中の自由空間が十分に得られず、十分な屈折率差を得ることができない。また、マトリックスを柔らかくし、マトリックス中の自由空間を大きくすると重合性モノマーの重合に伴って、記録層が局所的に収縮し、記録データの正確な再生が困難になるという問題があった。
【0005】
従来、エステル型の脂環エポキシ化合物を用いた三次元架橋マトリックスポリマー系の記録材料が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、エステル型の脂環エポキシ化合物を用いる必要性があるため、耐湿性、熱安定性などに問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−152170号公報
【特許文献2】特開2006−30661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、非エステル型の三次元架橋ポリマーマトリックス前駆体材料として非エステル系の脂環エポキシ化合物と熱酸発生剤とを用いることで優れた耐湿性、熱安定性を有し、さらに、ラジカル重合型ホログラム記録媒体の問題となる硬化収縮が抑制された体積ホログラム記録用感光性組成物を得ることにある。
また、本発明の他の目的は、上記組成物を用いて、優れた耐湿性、熱安定性を有し、さらに、硬化収縮が抑制された体積ホログラム記録媒体を得ることにある。
さらに、本発明の他の目的は、上記記録媒体の製造法ならびに上記記録媒体を用いた記録方法を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、下記式(I)で表される構造を有する非エステル系の脂環エポキシ化合物と熱酸発生剤とを含有する三次元架橋ポリマーマトリックス前駆体材料と、ラジカル重合性化合物と、ラジカル重合開始剤とを含有する体積ホログラム記録用感光性組成物を提供する。
【化1】

式(I)中、nは0〜10の整数であり;Xは、酸素原子,−CH2−,−C(CH32−,−CBr2−,−C(CBr32−,−CF2−,−C(CF32−,−CCl2−,−C(CCl32−,及び−CH(C65)−からなる群から選択されるいずれか1種の2価の基であり、nが2以上の場合には2個以上のXは同一であっても異なっていてもよく;R1〜R18はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子,ハロゲン原子,酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでよい炭化水素基,又は置換基を有してもよいアルコキシ基である。なお、式(I)において、n=0の時は、Xは単結合を表す。本発明の体積ホログラム記録用感光性組成物は、好ましくは、さらに、増感色素を含有する。
【0009】
前記三次元架橋ポリマーマトリックス前駆体材料は、好ましくは、さらに式(I)で表される以外のエポキシ化合物、オキセタン化合物、ビニルエーテル化合物からなる群から選択されるいずれか1種または2種以上の化合物を含有する。また、前記増感色素は、好ましくは、加熱又は紫外線若しくは可視光を照射する事により分解し無色透明になる。
【0010】
また、本発明は、上記体積ホログラム記録用感光性組成物を加熱処理することにより得られる三次元架橋ポリマーマトリックス、ラジカル重合性化合物、およびラジカル重合開始剤を含有する体積ホログラム記録用感光性組成物を提供する。
【0011】
また、本発明は、上記体積ホログラム記録用感光性組成物を加熱処理及び一定時間熟成させることにより得られる三次元架橋ポリマーマトリックス、ラジカル重合性化合物、およびラジカル重合開始剤を含有する体積ホログラム記録用感光性組成物を提供する。
【0012】
また、本発明は、基板と、該基板間に挟持された上記体積ホログラム記録用感光性組成物からなる体積ホログラム記録層とを有する体積ホログラム記録媒体を提供する。上記体積ホログラム記録媒体は、好ましくは、レーザー光を照射させて前記体積ホログラム記録用感光性組成物中のラジカル重合性化合物を重合させてホログラムを記録した後の透過率が80%以上である。
【0013】
さらに、本発明は、上記体積ホログラム記録用感光性組成物を基板で挟み込み、加熱処理することを特徴とする体積ホログラム記録媒体の製造方法を提供する。
またさらに、本発明は、上記体積ホログラム記録用感光性組成物を基板で挟み込み、加熱処理及び一定時間熟成させることを特徴とする体積ホログラム記録媒体の製造方法を提供する。
さらにまた、本発明は、上記体積ホログラム記録媒体にレーザー光を照射させて上記体積ホログラム記録用感光性組成物中のラジカル重合性化合物を重合させることを特徴とするホログラム記録方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の体積ホログラム記録用感光性組成物は、三次元架橋ポリマーマトリックス前駆体材料が式(I)で表される構造を有する非エステル系の脂環エポキシ化合物と熱酸発生剤とを含有するため、該組成物を、加熱処理、又は加熱処理及び熟成することによって得られる三次元架橋ポリマーマトリックスが、少なくとも非エステル型の脂環エポキシ化合物(式(I)で表される化合物)を含有するカチオン重合性化合物を含む。このため、マトリックスの硬さを有したまま、マトリックス中の自由空間を大きくすることができ、耐湿性、熱安定性を向上させることができる。本発明の体積ホログラム記録用感光性組成物を用いることにより、高記録容量、高屈折率変調かつ光照射による体積変化の少ないホログラム記録媒体ならびにそれを用いたホログラム記録方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例及び比較例において回折効率及び硬化収縮率、並びにダイナミックレンジ(M/#)を求めるために用いた光学系を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[体積ホログラム記録用感光性組成物]
本発明の体積ホログラム記録用感光性組成物は、下記式(I)
【化2】

[式(I)中、nは0〜10の整数であり;Xは、酸素原子,−CH2−,−C(CH32−,−CBr2−,−C(CBr32−,−CF2−,−C(CF32−,−CCl2−,−C(CCl32−,及び−CH(C65)−からなる群から選択されるいずれか1種の2価の基であり、nが2以上の場合には2個以上のXは同一であっても異なっていてもよく;R1〜R18はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子,ハロゲン原子,酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでよい炭化水素基,又は置換基を有してもよいアルコキシ基である。]
で表される構造を有する非エステル系の脂環エポキシ化合物と熱酸発生剤とを含有する三次元架橋ポリマーマトリックス前駆体材料と、ラジカル重合性化合物と、ラジカル重合開始剤とを含有する。なお、式(I)において、n=0の時は、Xは単結合を表す。式(I)において、炭化水素基およびアルコキシ基の炭素数は1〜5であることが好ましい。また、上記R1〜R18としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子などが挙げられる。また、上記R1〜R18としての酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでよい炭化水素基としては、メトキシエチル基等のアルコキシアルキル基、トリフッ化メチル基等のハロアルキル基などが挙げられる。
さらに、本発明の体積ホログラム記録用感光性組成物は、必要に応じて、増感剤(増感色素)、可塑剤を含んでいてもよい。
【0017】
式(I)で表される構造を有する非エステル系の脂環エポキシ化合物としては、3,4,3’,4’−ジエポキシビシクロヘキシル、2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)−1,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)メタン、1−[1,1−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)]エチルベンゼンが好ましい。
【0018】
[三次元架橋ポリマーマトリックス前駆体材料]
三次元架橋ポリマーマトリックス前駆体材料は、上記式(I)で表される構造を有する非エステル系の脂環エポキシ化合物を必須成分とし、単独で又は1種以上のカチオン重合性化合物と組み合わせたものを含んでいてもよい。上記式(I)で表される構造を有する非エステル系の脂環エポキシ化合物と組み合わせるカチオン重合性化合物としては、カチオン重合性基を有する化合物であれば特に限定されないが、分子内にエポキシ基、ビニルエーテル基及びオキセタニル基からなる群より選択された少なくとも1種以上のカチオン重合性基を有する化合物が好ましい。
【0019】
上記式(I)で表される構造を有する非エステル系の脂環エポキシ化合物と、該化合物と組み合わせるカチオン重合性化合物との割合は、重量比で、例えば、前者/後者=5/95〜95/5、好ましくは、前者/後者=20/80〜80/20、さらに好ましくは、前者/後者=25/75〜75/25、特に好ましくは、前者/後者=40/60〜60/40である。
【0020】
エポキシ基を有する化合物(エポキシ化合物)としては、上記式(I)で表される構造を有する非エステル系の脂環エポキシ化合物以外のエポキシ化合物で、分子内に環状脂肪族基とエポキシ基とを有する脂環式エポキシ樹脂、グリシジル基を有するエポキシ樹脂などが挙げられる。これらの中でも脂環式エポキシ樹脂が好ましく、特に、環状脂肪族基を構成する隣接する2つの炭素原子を含んでエポキシ基(オキシラン環)が形成されている化合物が好ましい。エポキシ基を有する化合物は単官能エポキシ化合物及び多官能エポキシ化合物の何れでもよいが、多官能エポキシ化合物が好ましい。エポキシ基を有する化合物は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0021】
上記脂環式エポキシ樹脂としては、例えば、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、3,4−エポキシシクロへキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル)メチル−3’,4’−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、エチレン−1,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸)エステル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアルコール、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシランなどが挙げられる。脂環式エポキシ樹脂の市販品として、例えば、ダイセル化学工業社製のセロキサイド2000、セロキサイド2021、セロキサイド3000、EHPE3150;三井化学社製のエポミックVG−3101;油化シェルエポキシ社製のE−1031S;三菱ガス化学社製のTETRAD―X、TETRAD−C;日本曹達社製のEPB−13、EPB−27などを使用できる。
【0022】
ビニルエーテル基を有する化合物(ビニルエーテル化合物)としては、ビニルエーテル基を有する化合物であれば特に限定するものではなく、単官能ビニルエーテル化合物及び多官能ビニルエーテル化合物の何れであってもよいが、多官能ビニルエーテル化合物が好ましい。ビニルエーテル基を有する化合物は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0023】
ビニルエーテル基を有する化合物の代表的な例として、イソソルバイトジビニルエーテル、オキサノルボルネンジビニルエーテル等の環状エーテル型ビニルエーテル(オキシラン環、オキセタン環、オキソラン環等の環状エーテル基を有するビニルエーテル);フェニルビニルエーテル等のアリールビニルエーテル;n−ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル;シクロヘキシルビニルエーテル等のシクロアルキルビニルエーテル;ハイドロキノンジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル等の多官能ビニルエーテルなどが挙げられる。また、丸善石油化学社製の2−ヒドロキシエチルビニルエーテル(HEVE)、ジエチレングリコールモノビニルエーテル(DEGV)、2−ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)、トリエチレングリコールジビニルエーテル等を使用することもできる。また、α及び/又はβ位にアルキル基、アリル基等の置換基を有するビニルエーテル化合物も使用できる。
【0024】
オキセタニル基を有する化合物(オキセタン化合物)としては、オキセタニル基を有する化合物であれば特に限定するものではなく、単官能オキセタン化合物及び多官能オキセタン化合物の何れであってもよいが、多官能オキセタン化合物が好ましい。オキセタニル基を有する化合物は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0025】
オキセタニル基を有する化合物の代表的な例として、東亞合成社製の3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン(POX)、ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル(DOX)、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(EHOX)、3−エチル−3−{[3−(トリエトキシシリル)プロポキシ]メチル}オキセタン(TESOX)、オキセタニルシルセスキオキサン(OX−SQ)、フェノールノボラックオキセタン(PNOX−1009)等が挙げられる。また、オキセタニル基とビニルエーテル基を持つ3,3−ジメタノールジビニルエーテルオキセタンのような異種カチオン重合性基を分子内に有する化合物も使用できる。
【0026】
上記式(I)で表される構造を有する非エステル系の脂環エポキシ化合物と組み合わせるカチオン重合性化合物は、単独で、又は、同一若しくは異なるカチオン重合性基を有する化合物を2種以上組み合わせて使用できる。上記カチオン重合性化合物としては、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物及びそれらの混合物などが好ましい。
【0027】
[熱酸発生剤]
熱酸発生剤としては、熱カチオン重合を活性化する化合物であれば特に限定されず、例えば、サンエイドSI−60L、サンエイドSI−80L、サンエイドSI−100L、サンエイドSI−110L、サンエイドSI−150L(三新化学社製)などの芳香族スルホニウム塩を用いることができる。熱酸発生剤は、カチオン重合性化合物(総量)100重量部に対して、例えば0.1〜30重量部、好ましくは0.5〜10重量部の割合で使用される。
【0028】
[ラジカル重合性化合物]
ラジカル重合性化合物は、例えば、アクリレート、メタクリレート、ビニル化合物等のラジカル重合性基を有するラジカル重合可能な不飽和二重結合を持つ化合物を、1種又は2種以上組み合わせたものである。ラジカル重合性化合物としては、例えば、光ラジカル重合性化合物が用いられ、光ラジカル重合性基を有する化合物であれば特に限定されないが、少なくとも1つ(好ましくは2以上の)付加重合可能なエチレン性不飽和二重結合を有する化合物が挙げられる。例えば、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の塩、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコールとのエステル化合物、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド化合物などが好ましく用いられる。光ラジカル重合性化合物は単独で又は2種以上を組み合わせても良く、光カチオン重合性化合物と組み合わせて使用することもできる。光ラジカル重合性化合物の代表的な例を以下に示す。
【0029】
例えば、スチレン、2−クロロスチレン、2−ブロモスチレン、メトキシスチレン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、2−フェノキシエチルアクリレート、o−フェニルフェノールアクリレート、ビスフェノールAエチレングリコールモノアクリレート、トリエチレングリコールモノアクリレート、1,3−ブタンジオールモノアクリレート、テトラメチレングリコールモノアクリレート、プロピレングリコールモノアクリレート、ネオペンチルグリコールモノアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ビスフェノールAエチレングリコールジアクリレート、2−フェノキシエチルメタクリレート、エチレングリコールモノメタクリレート、トリエチレングリコールモノメタクリレート、1,3−ブタンジオールモノメタクリレート、テトラメチレングリコールモノメタクリレート、プロピレングリコールモノメタクリレート、ネオペンチルグリコールモノメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、テトラメチレングリコールメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ビスフェノールAエチレングリコールジメタクリレートなどが挙げられる。
【0030】
体積ホログラム記録用感光性組成物中のラジカル重合性化合物は、カチオン重合性化合物(上記式(I)で表される構造を有する非エステル系の脂環エポキシ化合物と、該化合物と組み合わせるカチオン重合性化合物との総量)100重量部に対して、例えば10〜500重量部、好ましくは25〜300重量部の割合で使用される。
【0031】
[ラジカル重合開始剤]
ラジカル重合開始剤としては特に限定されないが、ラジカル重合性化合物として光ラジカル重合性化合物を使用する場合には、光ラジカル重合開始剤が用いられる。光ラジカル重合開始剤としては、光ラジカル重合を活性化する化合物であれば特に限定されず、例えば、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン(製品名「BTTB」、日本油脂社製)、3,3’−ジ(t−ブチルパーオキシカルボニル)−4,4’−ジ(メトキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’−ジ(メトキシカルボニル)−4,4’−ジ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4’−ジ(t−ブチルパーオキシカルボニル)−3’,4−ジ(メトキシカルボニル)ベンゾフェノンの位置異性体混合物、t−ブチルペルオキシベンゾエート(商品名:「パーブチルZ」、日本油脂社製)などの過酸化エステル類;t−ブチルヒドロペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシドなどの過酸化物類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾイン・ベンゾインアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オンなどのアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノンなどのアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−イソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなどのケタール類;ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類;キサントン類;1,7−ビス(9−アクリジニル)ヘプタン;Irgacure784(CIBA社製)などのチタノセン化合物;芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩;などの公知の光重合開始剤を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
ラジカル重合開始剤は、ラジカル重合性化合物(総量)100重量部に対して、例えば0.1〜30重量部、好ましくは1〜20重量部の割合で使用され、光ラジカル重合開始剤は、光ラジカル重合性化合物(総量)100重量部に対して、例えば0.1〜30重量部の割合で使用される。
【0033】
[ラジカル重合禁止剤]
ラジカル重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン等のハイドロキノン類;ベンゾキノン、メチル−p−ベンゾキノン等のベンゾキノン類;t−ブチルカテコール等のカテコール類;2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、4−メトキシフェノール、p−メトキシフェノール等のフェノール類;フェノチアジン等が挙げられる。本発明においては、なかでも、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン等のハイドロキノン類、特にメチルハイドロキノンが好適に使用される。ラジカル重合禁止剤の使用量としては、光ラジカル重合性化合物(総量)100重量部に対して、例えば、0〜1重量部程度、好ましくは0.05〜0.5重量部程度である。ラジカル重合禁止剤は使用しなくてもよい。
【0034】
[増感色素]
増感色素としては、ホログラム記録に用いる光源の光を吸収し、上記ラジカル重合開始剤を増感するものであれば特に限定されず、公知のものを使用できる。増感色素として、例えば、チオピリリウム塩系色素、メロシアニン系色素、キノリン系色素、スチリルキノリン系色素、ケトクマリン系色素、チオキサンテン系色素、キサンテン系色素、オキソノール系色素、シアニン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム塩系色素等が例示される。可視光増感色素は、光学素子のような高透明性が要求される場合には、ホログラム記録後の後工程、加熱や紫外線若しくは可視光を照射することにより分解し無色透明になるものが好ましい。増感色素は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。なかでも、シアニン系色素が好ましく用いられる。
【0035】
[体積ホログラム記録媒体]
本発明の体積ホログラム記録媒体は、上記体積ホログラム記録用感光性組成物を、加熱処理することにより、又は加熱処理及び一定時間熟成することにより、体積ホログラム記録層内に三次元架橋ポリマーマトリックスを形成させたものである。本発明の体積ホログラム記録媒体は、例えば、透過型体積ホログラム記録媒体である。本発明の体積ホログラム記録媒体は、基板と、体積ホログラム記録用感光性組成物を該基板で挟み込み、加熱処理することにより、又は加熱処理又は一定時間の熟成させることによって得られる三次元架橋ポリマーマトリックスを含む体積ホログラム記録層とを有する。
【0036】
[体積ホログラム記録層]
本発明の体積ホログラム記録媒体に含まれる体積ホログラム記録層は、上記体積ホログラム記録用感光性組成物により構成され、例えば、体積ホログラム記録用感光性組成物を基板で挟み込み、加熱処理することにより、又は加熱処理及び一定時間熟成させて形成する。加熱処理の時間、又は加熱処理及び一定時間熟成の時間は、系内の三次元ポリマーマトリックス前駆体材料の構成成分の硬化反応が終了する時間とすることができ、加熱処理後に熟成することにより、優れた耐湿性、熱安定性を有し、さらに硬化収縮が抑制された体積ホログラム記録層を得ることができる。熟成はしなくてもよい。
【0037】
上記体積ホログラム記録層は、ホログラム記録前に、加熱処理工程、又は加熱処理工程及び熟成工程を含むことにより三次元架橋ポリマーマトリックスを系内で形成させて形成する。加熱処理工程は、遮光下でオーブンにて行うことができる。40℃以上300℃以下で行うことが好ましく、特に40℃以上150℃以下で行うことがより好ましい。加熱時間は、例えば、10分〜5時間であり、好ましくは10分〜3時間である。加熱時間が10分より短いと、後の熟成工程を施しても硬化反応が終了しないので、好ましくない。加熱時間が5時間を超えると、ラジカル重合性化合物の反応が進行することがあり、十分なホログラム特性を得ることができない。
【0038】
熟成工程は、例えば、−15℃以上40℃未満、好ましくは、0℃以上35℃以下(室温)にて、遮光条件下でカチオン重合反応性化合物を暗反応させ、媒体中での反応を落ち着かせる工程である。また、加熱処理で硬化が不十分な場合には、体積ホログラム記録層の硬化反応を終了させることができる。本願において硬化反応の終了は、例えば、形成された膜を、赤外スペクトル測定器(IR)やDSC等を用いて評価することにより、マトリックスの硬化状態を確認することができる。また、熟成工程は、加熱処理後の体積ホログラム記録媒体を十分に室温まで戻す工程も含む。加熱後、体積ホログラム記録媒体を十分に室温まで戻すことにより、安定したホログラム特性を得ることができる。
【0039】
熟成時間は、上記の硬化反応が終了するのに要する時間により定められ、0分〜1週間程度、好ましくは、10分〜4日間程度、より好ましくは、30分〜48時間程度である。加熱処理及び熟成時間は、感光性組成物の組成によりエポキシ基を完全硬化させる時間が異なるため、感光性組成物毎に適当な時間を選択する。
【0040】
体積ホログラム記録層の厚みは、例えば、1〜2000μm、好ましくは10〜1000μmである。一般に、この厚みが薄すぎると、角度選択性の低いホログラムになりやすく、逆に厚い場合には、角度選択性が高いホログラムが得られる。
【0041】
[基材(基板)]
基材(基板)としては、可視光に対して透明性を有するものであればよく、例えば、ガラス板;シクロオレフィン系ポリマーフィルム(例えば、ダイセル化学工業社製の「TOPAS」等)、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリフッ化エチレン系フィルム、ポリフッ化ビニリデンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、ポリカーボネート(PC)フィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリアミドフィルム、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム等のプラスチックフィルム(シートを含む)などが挙げられ、これらの基材は、同一、又は異種の組合せで用いることができる。
【0042】
[ホログラム記録方法]
本発明の体積ホログラム記録媒体にホログラムを記録する方法については、公知の方法を用いることができる。例えば、体積ホログラム記録媒体の体積ホログラム記録材料層に原版を密着させ、透明な基材フィルムの側から可視光、あるいは紫外光や電子線のような電離放射線を用いて干渉露光を行うことにより体積ホログラムを記録する方法(密着露光方式)や、媒体がガラスやフィルムに挟まれている場合に、媒体側からレーザー光を入射し、原版からの反射レーザー光と入射レーザー光との干渉により記録する方法(1光束干渉)や、レーザー光を2方向に分割し、一方を感材に直接入射し、他方は記録したい情報を持つ物体を通した光(情報光)を入射することにより記録する方法(2光束干渉)、情報光と参照光を同軸から照射する方法(コリニア方式)などが挙げられる。
【0043】
なお、このようなホログラム記録には、可視レーザー光、例えば、アルゴンイオンレーザー(458nm、488nm、514.5nm)、クリプトンイオンレーザー(647.1nm)、ヘリウム−ネオンイオンレーザー(633nm)、YAGレーザー(532nm)等からのレーザー光を使用することができる。
【0044】
また、屈折率変調の促進、重合反応完結のために、干渉露光後、紫外線による全面露光や加熱等の処理を適宜行うことができる。
【0045】
体積ホログラム記録用感光性組成物を用いたホログラムの記録メカニズムは、以下のように説明される。すなわち、フィルム状に形成された当該感光性組成物(体積ホログラム記録層)をレーザーにより干渉露光すると、光が強い部分にて光硬化性化合物の重合が開始され、それに伴い、光重合性化合物の濃度勾配ができ、光が弱い部分から光が強い部分に当該光重合性化合物の拡散移動が起こる。その結果、干渉縞の強弱に応じて、光重合性化合物の疎密ができ、屈折率差として現れる。その屈折率差により、ホログラムが記録される。
【0046】
なお、体積ホログラム記録用感光性組成物中にモノマーの流動性を抑制するためにマトリックスポリマーを用いることができる。マトリックスポリマーは、感光性組成物中に反応性の異なる化合物を入れておき、記録媒体を作製する段階において、三次元架橋させることにより作製することができる。例えば、カチオン硬化系においては、ラジカル重合を用いてマトリックスポリマーを記録媒体中に作製することができる。一方、ラジカル硬化系においては、カチオン重合を用いてマトリックスポリマーを記録媒体中に作製することができる。光重合性化合物とマトリックスポリマーの屈折率差により、ホログラムが記録される。レーザーによる干渉露光後の加熱により屈折率変調を促進することができるが、特に、マトリックスポリマーを含有する場合には、加熱温度をマトリックスポリマーのガラス転移温度付近にすることにより、よりモノマー移動が促進され、屈折率変調量を増加させることができる。
【0047】
本発明の体積ホログラム記録媒体は、式(I)で表される構造を有する非エステル系の脂環エポキシ化合物を用いて三次元架橋ポリマーマトリックスを形成させることにより、回折効率が10%以上、好ましくは50%以上、特に80%以上で得ることができる。さらに、硬化収縮は1.5%以下、好ましくは0.5%以下、特に0.3%以下の低硬化収縮な体積ホログラム記録媒体を得ることができる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0049】
(光学系)
図1に実験で用いた光学系の概略図を示す。光源は532nm半導体レーザーを用い、ミラー(M)、スペーシャルフィルター(OL及びPh)、平凸レンズ(PCL)、波長板(PP)を介し、ビームスプリッター(BS)で2つの光に分けた。BSで分けられた2つの光をミラーを介し、サンプルに対してそれぞれ30°、30°で入射、干渉させた。回折光及び透過光の強度はパワーメーター(PM:株式会社エーディーシー社製)にてそれぞれ検出した。
【0050】
なお、回折効率及び二次回折光の一次回折光に対する割合は以下の方法により求めた。
(回折効率)
二光束干渉法で記録したホログラムの回折効率をパワーメーターを用いて測定した。口径5φの532nm半導体レーザーを30°の角度で入射し、透過光と回折光を検出した。体積ホログラム記録媒体を−5°〜5°の範囲で軸回転させ、回折光強度が最も高くなる位置で回折効率ηを下記(式1)を用いて算出した。
η=L1/(L0+L1) (式1)
(透過光強度:L0、回折光強度:L1
【0051】
(硬化収縮)
体積ホログラム記録媒体を10°傾けて設置し、記録光と参照光の角度をそれぞれ20°と40°でホログラム記録を行った。その後、参照光を40°の角度で入射させ、最大回折効率を示す角度を検出した(θ1)。収縮がない場合には、その際に得られる最大回折効率の示す角度は40°であるが、収縮が起こることで40°からのずれが生じる。また、同様にして、記録光のみを20°の角度で入射させ、最大回折効率を示す角度(θ2)を検出した。これらの角度を用いて、以下の(式2)、(式3)より記録媒体の厚み方向のグレーティングベクトル(K1およびK2)を求め、(式4)より収縮率を算出した。
1=(2π/λ){(n2−sin2θ11/2)−(n2−sin2θ21/2)}
… (式2)
(λ:記録波長、n:記録層の屈折率、θ1,θ2:記録前の入射角:40°,20°)
2=(2π/λ){(n2−sin2θ1'1/2)−(n2−sin2θ2'1/2)}
… (式3)
(λ:記録波長、n:記録層の屈折率、θ1',θ2':回折効率が最大となる入射角)
収縮率(%)=(K1−K2)/K1 × 100 … (式4)
(記録前:K1、記録後:K2
【0052】
(ダイナミックレンジ:M/#)
ダイナミックレンジは、多重度の指針であり、多重記録を行った際に得られる各チャンネルの回折効率の平方根の和で表される(式5)。
【数1】

(η:回折効率、i、n:記録Ch数)
【0053】
<実施例1>
ラジカル重合性化合物として3官能のアクリレート化合物であるペンタエリスリトールトリアクリレート(新中村化学社製)を50重量部、カチオン重合性化合物として2官能の脂環式エポキシ化合物(3,4,3’,4’−ジエポキシビシクロヘキシル)を50重量部、光ラジカル重合開始剤として3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンをラジカル重合性化合物100重量部に対して10重量部、熱酸発生剤としてトリフェニルスルホニウム塩(商品名「サンエイドSI−60L」、三新化学社製)をカチオン重合性化合物100重量部に対して1重量部、増感色素として下記のシアニン色素1を0.1重量部を室温下で攪拌、溶解させたものを感光液1(体積ホログラム記録用感光性組成物1)とした。
【0054】
この感光液1を2枚の3×3cmの1mm厚ガラス基板で25μm厚のスペーサーフィルム(PET)とともに挟み込み、周囲を封止した後、80℃のオーブンにて0.5時間加熱し、加熱後、オーブンから取り出して、室温(r.t.:25℃程度)で1時間熟成させることで体積ホログラム記録媒体1を得た。この体積ホログラム記録媒体1に対して、半導体レーザーを用いて透過型ホログラムを記録した結果、最大回折効率は20%、硬化収縮率は0.1%であった。(532nm、光強度:1mW/cm2、露光量100mJ/cm2)また、100μm厚のスペーサーフィルムを用いた以外は、上記方法と同様にして体積ホログラム記録媒体2を得た。この体積ホログラム記録媒体2を用いて多重記録を行った結果、ダイナミックレンジ(M/#)は、1.7であった。(532nm、光強度:1mW/cm2、全露光量100mJ/cm2
シアニン色素1
3-Ethyl-2-[3-(3-ethyl-5-phenyl-2-benzoxazolinylidene)propenyl]-5-phenylbenzoxazolium bromide
【0055】
<実施例2〜10、比較例1、2>
表1に示す配合量の種々のラジカル重合性化合物、およびカチオン重合性化合物と、光ラジカル重合開始剤、熱酸発生剤、増感色素を用い、実施例1と同様にして体積ホログラム記録媒体を作成し、ホログラム特性の評価を実施した。加熱条件および熟成条件、並びに評価結果を表1に示した。なお、表1において、各化合物の配合量は、重量部で示した。
【0056】
<実施例11>
ラジカル重合性化合物として3官能のアクリレート化合物であるペンタエリスリトールトリアクリレート(新中村化学社製)を50重量部、カチオン重合性化合物として2官能の脂環式エポキシ化合物である3,4,3’,4’−ジエポキシビシクロヘキシルを25重量部、光ラジカル重合開始剤として3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンをラジカル重合性化合物100重量部に対して10重量部、熱酸発生剤としてトリフェニルスルホニウム塩(商品名「サンエイドSI−60L」、三新化学社製)をカチオン重合性化合物100重量部に対して1重量部、増感色素としてシアニン色素1を0.1重量部、可塑剤としてセバシン酸ジエチルを25重量部を室温下で攪拌、溶解させたものを感光液2(体積ホログラム記録用感光性組成物2)とした。
【0057】
この感光液2を用い、加熱時間を2時間、熟成時間を24時間にした以外は実施例1と同様に感光層[スペーサーフィルム(PET)]の厚みを25μmとして体積ホログラム記録媒体3を得、この体積ホログラム記録媒体3に対して、実施例1と同様にして透過型ホログラムを記録すると、最大回折効率90%、硬化収縮率0.1%であった(532nm、光強度:1mW/cm2、露光量100mJ/cm2)。また、加熱時間を2時間、熟成時間を24時間にした以外は実施例1と同様に感光層の厚みを100μmとして体積ホログラム記録媒体4を得、実施例1と同様に多重記録を行った結果、ダイナミックレンジ(M/#)は、3.0であった(532nm、光強度:1mW/cm2、全露光量100mJ/cm2)。
【0058】
<実施例12〜22、比較例3>
表2に示す配合量の種々のラジカル重合性化合物、およびカチオン重合性化合物と、光ラジカル重合開始剤、可塑剤、熱酸発生剤、増感色素を用い、実施例11と同様にして体積ホログラム記録媒体を作成し、ホログラム特性の評価を実施した。加熱条件および熟成条件、並びに評価結果を表2に示した。なお、表2において、各化合物の配合量は、重量部で示した。
【0059】
<実施例23>
ラジカル重合性化合物として3官能のアクリレート化合物であるペンタエリスリトールトリアクリレート(新中村化学社製)を23重量部、カチオン重合性化合物として2官能の脂環式エポキシ化合物である3,4,3’,4’−ジエポキシビシクロヘキシルを21重量部、単官能のn−ブチルビニルエーテル(和光純薬社製)を56重量部、光ラジカル重合開始剤として3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンを6重量部、熱酸発生剤としてトリフェニルスルホニウム塩(商品名「サンエイドSI−60L」、三新化学社製)を0.5重量部、増感色素としてシアニン色素1を0.03重量部、及びラジカル重合禁止剤としてp−メトキシフェノール(和光純薬社製)0.06重量部を室温下で攪拌、溶解させたものを感光液3(体積ホログラム記録用感光性組成物3)とした。
【0060】
この感光液3を用い、加熱温度を90℃、加熱時間を0.5時間、熟成時間を0時間にした以外は実施例1と同様に感光層[スペーサーフィルム(PET)]の厚みを100μmとして体積ホログラム記録媒体5を得、この体積ホログラム記録媒体5に対して、実施例1と同様にして透過型ホログラムを記録すると、最大回折効率31%、硬化収縮率0.1%であった(532nm、光強度:1mW/cm2、露光量100mJ/cm2)。また、この体積ホログラム記録媒体5に対して、実施例1と同様に多重記録を行った結果、ダイナミックレンジ(M/#)は、1.7であった(532nm、光強度:1mW/cm2、全露光量100mJ/cm2)。
【0061】
<実施例24〜28>
表3に示す配合量の種々のラジカル重合性化合物、およびカチオン重合性化合物と、光ラジカル重合開始剤、可塑剤、熱酸発生剤、増感色素、ラジカル重合禁止剤を用い、実施例23と同様にして体積ホログラム記録媒体を作成し、ホログラム特性の評価を実施した。加熱条件並びに評価結果を表3に示した。なお、表3において、各化合物の配合量は、重量部で示した。なお、これらの実施例においても熟成時間は0時間である。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】

【0064】
【表3】

【0065】
以下に、表1〜表3中の化合物を示す。
A−1:ペンタエリスリトールトリアクリレート(新中村化学社製)
A−2:2−フェノキシエチルアクリレート(和光純薬社製)
A−3:ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(商品名「SR399」、SARTMER社製)
A−4:トリメチロールプロパントリアクリレート(大阪有機化学社製)
A−5:エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート(商品名「SR349」、SARTOMER社製)
A−6:スチレン(和光純薬社製)
A−7:2−ビニルナフタレン(Aldrich社製)
A−8:ジビニルベンゼン(和光純薬社製)
A−9:o-フェニルフェノールアクリレート(A-LEN-10:新中村化学社製)

B−1:3,4,3’,4’−ジエポキシビシクロヘキシル
B−2:2,2−ジ(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロパン
B−3:2,2−ジ(3,4−エポキシシクロヘキシル)−1,3−ヘキサフルオロプロパン
B−4:ジ(3,4−エポキシシクロヘキシル)メタン
B−5:1−[1,1−ジ(3,4−エポキシシクロヘキシル)]エチルベンゼン
B−6:3,4−エポキシシクロヘキシルメチルー3’、4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(商品名「セロキサイド2021P」、ダイセル化学工業社製)
B−7:シクロヘキセンオキサイド(和光純薬社製)
B−8:オキサノルボルネンジビニルエーテル
B−9:ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル(商品名「DOX」、東亞合成社製)
B−10:n−ブチルビニルエーテル(和光純薬社製)
B−11:シクロヘキシルビニルエーテル(和光純薬社製)

C−1:セバシン酸ジエチル(和光純薬社製)
D−1:3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン
(商品名「BTTB」、日本油脂社製)
E−1:サンエイドSI−60L(三新化学社製)
F−1:シアニン色素1
G−1:p−メトキシフェノール(和光純薬社製)
【0066】
[保存安定性]
実施例1、実施例6、及び、実施例11において、恒温恒湿機を用いて、温度60℃、湿度80%下で60日間保存した結果、回折効率の変化は起こらなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表される構造を有する非エステル系の脂環エポキシ化合物と熱酸発生剤とを含有する三次元架橋ポリマーマトリックス前駆体材料と、ラジカル重合性化合物と、ラジカル重合開始剤とを含有する体積ホログラム記録用感光性組成物。
【化1】

[式(I)中、nは0〜10の整数であり;Xは、酸素原子,−CH2−,−C(CH32−,−CBr2−,−C(CBr32−,−CF2−,−C(CF32−,−CCl2−,−C(CCl32−,及び−CH(C65)−からなる群から選択されるいずれか1種の2価の基であり、nが2以上の場合には2個以上のXは同一であっても異なっていてもよく;R1〜R18はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子,ハロゲン原子,酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでよい炭化水素基,又は置換基を有してもよいアルコキシ基である。]
【請求項2】
さらに、増感色素を含有する請求項1記載の体積ホログラム記録用感光性組成物。
【請求項3】
前記三次元架橋ポリマーマトリックス前駆体材料が、さらに式(I)で表される以外のエポキシ化合物、オキセタン化合物、ビニルエーテル化合物からなる群から選択されるいずれか1種または2種以上の化合物を含有する請求項1又は2記載の体積ホログラム記録用感光性組成物。
【請求項4】
前記増感色素が、加熱又は紫外線若しくは可視光の照射により分解し無色透明になる増感色素である請求項2〜3のいずれか1項に記載の体積ホログラム記録用感光性組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の体積ホログラム記録用感光性組成物を加熱処理することにより得られる三次元架橋ポリマーマトリックス、ラジカル重合性化合物、およびラジカル重合開始剤を含有する体積ホログラム記録用感光性組成物。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の体積ホログラム記録用感光性組成物を加熱処理及び一定時間熟成させることにより得られる三次元架橋ポリマーマトリックス、ラジカル重合性化合物、およびラジカル重合開始剤を含有する体積ホログラム記録用感光性組成物。
【請求項7】
基板と、該基板間に挟持された請求項5又は6記載の体積ホログラム記録用感光性組成物からなる体積ホログラム記録層とを有する体積ホログラム記録媒体。
【請求項8】
レーザー光を照射させて前記体積ホログラム記録用感光性組成物中のラジカル重合性化合物を重合させてホログラムを記録した後の透過率が80%以上である請求項7記載の体積ホログラム記録媒体。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の体積ホログラム記録用感光性組成物を基板で挟み込み、加熱処理することを特徴とする体積ホログラム記録媒体の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の体積ホログラム記録用感光性組成物を基板で挟み込み、加熱処理及び一定時間熟成させることを特徴とする体積ホログラム記録媒体の製造方法。
【請求項11】
請求項7記載の体積ホログラム記録媒体にレーザー光を照射させて前記体積ホログラム記録用感光性組成物中のラジカル重合性化合物を重合させることを特徴とするホログラム記録方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−118363(P2011−118363A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229493(P2010−229493)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】