説明

体積型ホログラム記録用感光性組成物、及びこれを用いた体積型ホログラム記録媒体の製造方法

【課題】 極めて優れた屈折率変調能を有し、重合反応性が高く、体積収縮が極めて小さく、しかも多重記録において感度低下の起こりにくい体積型ホログラム記録用感光性組成物を提供する。
【解決手段】 本発明の体積型ホログラム記録用感光性組成物は、バインダーポリマー(A)と、光カチオン重合性化合物(B)と、光カチオン重合開始剤(C)と、チタノセン化合物(D)とを含有し、前記バインダーポリマー(A)がナフタレン環を有する重量平均分子量1万〜100万のポリマーであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体積型ホログラムの形成に用いられる体積型ホログラム記録用感光性組成物と、該体積型ホログラム記録用感光性組成物を用いた体積型ホログラム記録媒体の製造方法、及び該体積型ホログラム記録用感光性組成物を光カチオン重合することにより得られる硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
体積型ホログラムは、物体を3次元で表現でき、高い回折効率及び波長選択性を持つことや、高度な製造技術が必要であることなどから、意匠、セキュリティー、光学素子などの用途に幅広く利用されている。体積型ホログラムは、コヒーレンス性(可干渉性)が高く、波長が等しい物体光と参照光とを干渉させて、体積型ホログラム記録用材料に入射し、物体に関する3次元情報を材料内部に干渉縞として記録することにより作製されるものである。この干渉縞は干渉光の明暗部分に対応した屈折率変調として記録される。近年、体積型ホログラムの製造において湿式現像処理が不要で、量産可能な乾式タイプの体積型ホログラム記録用感光性組成物が注目されている。
【0003】
特許第2849021号公報には、屈折率変調が高く、かつ透明性に優れる体積型ホログラム用組成物が開示されている。この材料系は、高屈折率のラジカル重合性化合物としてジアリールフルオレン骨格を有するモノマー、カチオン重合性化合物、およびバインダー樹脂を主成分としたものである。しかし、このホログラム用感光性組成物では、光重合性官能基としてアクリレート、メタクリレートに代表される光ラジカル重合性基を有しているため、重合に伴う収縮が、特に寸法安定性が要求される光学素子やメモリーに応用する際の障害となっていた。
【0004】
特許第3075082号公報には、高屈折率カチオン重合性化合物として、グリシジル基を有するフルオレン誘導体オリゴマーと、当該オリゴマーと屈折率の異なる重合性モノマーと光開始剤、増感剤とからなる組成物が開示されている。この材料系では、エポキシオリゴマーがカチオン重合により架橋構造となるため屈折率が高くなり、屈折率変調が増強されるとともに、透明性、耐熱性に優れるホログラム用感光性記録媒体が得られる。しかし、このホログラム用感光性組成物では、カチオン重合性基であるエポキシ基を使用しており、光ラジカル重合における収縮は少ないものの、グリシジル基を有するフルオレン誘導体オリゴマーの反応性が低く感度に問題があった。
【0005】
特許第4142396号公報には、高屈折率カチオン重合性化合物として、オキセタニル基を有するジアリールフルオレン誘導体オリゴマーと、バインダー樹脂と、光重合開始剤と、増感色素とからなる組成物が開示されている。この材料系では、オキセタニル基の高い反応性を利用したカチオン重合により、架橋構造をとり、硬化収縮の少ない、透明性、耐熱性に優れるホログラム用感光性記録媒体が得られる。しかし、このホログラム用感光性組成物においても、光硬化前後での体積変化及び重合反応性等の点で必ずしも満足できるものではなかった。
【0006】
国際公開第2010/052851号パンフレットには、特定構造のバインダーポリマーと、光カチオン重合性化合物と、光重合開始剤と、増感色素とを含有する体積型ホログラム記録用感光性組成物が開示されている。この体積型ホログラム記録用感光性組成物は、優れた屈折率変調能を有し、重合反応性が高く、且つ体積収縮が極めて小さいという特性を有する。しかし、この感光性組成物では、カチオン硬化系において発生する酸により増感色素の吸収域が変化してしまい、優れた増感効果を得ることが難しいという問題がある。また、回折効率、硬化収縮率の点でも必ずしも充分というものではなかった。
【0007】
【特許文献1】特許第2849021号公報
【特許文献2】特許第3075082号公報
【特許文献3】特許第4142396号公報
【特許文献4】国際公開第2010/052851号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、極めて優れた屈折率変調能を有し、重合反応性が高く、体積収縮が極めて小さく、しかも多重記録において感度低下の起こりにくい体積型ホログラム記録用感光性組成物と、該体積型ホログラム記録用感光性組成物を用いた簡易で効率的な体積型ホログラム記録媒体の製造方法、並びに該体積型ホログラム記録用感光性樹脂組成物から得られる硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定構造のバインダーポリマーと、光カチオン重合性化合物と、光カチオン重合開始剤と、チタノセン化合物とを含有する体積型ホログラム記録用感光性組成物が、光カチオン重合反応性が高く、光硬化前後での体積変化が極めて小さく、優れた屈折率変調能を有するとともに、多重記録において感度低下が起こりにくいことを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、バインダーポリマー(A)と、光カチオン重合性化合物(B)と、光カチオン重合開始剤(C)と、チタノセン化合物(D)とを含有し、前記バインダーポリマー(A)がナフタレン環を有する重量平均分子量1万〜100万のポリマーであることを特徴とする体積型ホログラム記録用感光性組成物を提供する。
【0011】
前記光カチオン重合性化合物(B)としては、下記式(I)
【化1】

[式(I)中、nは0〜10の整数であり;Xは、−O−,−CH2−,−C(CH32−,−CBr2−,−C(CBr32−,−CF2−,−C(CF32−,−CCl2−,−C(CCl32−,及び−CH(C65)−からなる群から選択されるいずれか1種の2価の基であり、nが2以上の場合には2個以上のXは同一であっても異なっていてもよく;R1〜R18は、同一又は異なって、水素原子,ハロゲン原子,酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭化水素基,又は置換基を有していてもよいアルコキシ基である]
で表される脂環エポキシ化合物が好ましい。
【0012】
前記光カチオン重合性化合物(B)として、前記式(I)で表される脂環エポキシ化合物とともに、前記式(I)で表される脂環エポキシ化合物以外のエポキシ化合物、オキセタン化合物、及びビニルエーテル化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含有していてもよい。
【0013】
前記光カチオン重合開始剤(C)はオニウム塩であるのが好ましい。
【0014】
この体積型ホログラム記録用感光性組成物において、バインダーポリマー(A)の屈折率が光カチオン重合性化合物(B)の屈折率よりも大きく、且つバインダーポリマー(A)と光カチオン重合性化合物(B)の屈折率差が0.001〜0.3の範囲であるのが好ましい。
【0015】
また、ホログラム記録後における体積収縮率がホログラム記録前を基準として±0.5%の範囲内であるのが好ましい。
【0016】
本発明は、また、前記の体積型ホログラム記録用感光性組成物を基材又は基板上に塗布し、体積型ホログラム材料層を形成することを特徴とする体積型ホログラム記録媒体の製造方法を提供する。
【0017】
この体積型ホログラム記録媒体の製造方法においては、さらに、形成された又は形成途中の体積型ホログラム材料層を、体積型ホログラム記録用感光性組成物を塗布した基材又は基板と同一又は異種素材の基材又は基板で被覆する工程を含んでいてもよい。また、体積型ホログラム記録用感光性組成物を基材又は基板上に、体積型ホログラム材料層の厚みが10〜2000μmになるように塗布し、塗布層を、前記体積型ホログラム記録用感光性組成物を塗布した基材又は基板と同一又は異種素材の基材又は基板で被覆し、周辺部を封止した後に所定時間熟成させる工程を含んでいてもよい。
【0018】
本発明は、さらに、前記の体積型ホログラム記録用感光性組成物を光カチオン重合することにより得られる硬化物を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の体積型ホログラム記録用感光性組成物は、極めて優れた屈折率変調能を有し、重合反応性が高く、体積収縮が極めて小さく、しかも多重記録において感度低下が起こりにくい。そのため、回折効率、再現性等に非常に優れたホログラムを作製できる。また、本発明の体積型ホログラム記録媒体の製造方法によれば、回折効率,再現性等のホログラム特性に優れた体積型ホログラム記録媒体を、簡易に効率よく製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は実施例及び比較例において回折効率及び体積変化率、並びにダイナミックレンジ(M/♯)を求めるために用いた光学系を示す概略図である。
【図2】図2は実施例及び比較例において体積変化率を求める方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の体積型ホログラム記録用感光性組成物は、バインダーポリマー(A)、光カチオン重合性化合物(B)、光カチオン重合開始剤(C)及びチタノセン化合物(D)を含有している。
【0022】
[バインダーポリマー(A)]
本発明では、バインダーポリマー(A)として、ナフタレン環を有する重量平均分子量1万〜100万のポリマーを用いる。ナフタレン環を有するバインダーポリマーを用いることで、モノマーである光カチオン重合性化合物(B)との間に大きな屈折率差を得ることができる。バインダーポリマー(A)は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0023】
ナフタレン環を有するポリマーとして、例えば、ナフタレン環を有するモノマーの単独または共重合体、ナフタレン環を有するモノマーとナフタレン環を有しないモノマーとの共重合体が挙げられる。
【0024】
ナフタレン環を有するモノマーとしては、例えば、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、ナフタレン環を有する(メタ)アクリル酸エステル[例えば、1−ナフチル(メタ)アクリレート、2−ナフチル(メタ)アクリレート等]などが挙げられる。これらの中でも、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレンが好ましい。
【0025】
ナフタレン環を有しないモノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどのスチレン系モノマー;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル[(メタ)アクリル酸ナフチルを除く]、(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アラルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルなどの(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリロニトリル等のシアノ基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド;(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸等のカルボキシル基又は酸無水物基含有モノマー;塩化ビニル;酢酸ビニル等のビニルエステル;エチレン、プロピレン、イソブテンなどのオレフィン;ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエンなどが挙げられる。
【0026】
ナフタレン環を有するポリマーにおいて、ナフタレン環を有する繰り返し構造単位の割合は、ポリマーを構成する繰り返し単位の全量に対して、例えば30重量%以上、好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上である。
【0027】
ナフタレン環を有するポリマー[バインダーポリマー(A)]の代表的な例として、ポリ−1−ビニルナフタレン、ポリ−2−ビニルナフタレン、これらビニルナフタレンと(メタ)アクリル酸エステル[例えば、メタクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルなど]との共重合体などが挙げられる。
【0028】
バインダーポリマー(A)の重量平均分子量は1万〜100万であり、好ましくは4万〜30万程度である。
【0029】
バインダーポリマー(A)の屈折率は光カチオン重合性化合物(B)の屈折率よりも大きいのが好ましい。また、バインダーポリマー(A)としては、その屈折率と光カチオン重合性化合物(B)の屈折率との差が、例えば0.001〜0.3、特に0.1〜0.3の範囲であるものが好ましい。
【0030】
体積型ホログラム記録用感光性組成物中のバインダーポリマー(A)の配合量は、光カチオン重合性化合物(B)(総量)100重量部に対して、例えば10〜200重量部、好ましくは30〜150重量部の割合で使用される。
【0031】
[光カチオン重合性化合物(B)]
光カチオン重合性化合物(B)としては、光カチオン重合性基を有する化合物であれば特に限定されないが、分子内にエポキシ基、ビニルエーテル基及びオキセタニル基からなる群より選択された少なくとも1種以上のカチオン重合性基を有する化合物が好ましい。分子内のカチオン重合性基の数は1つであってもよく、2以上であってもよい。光カチオン重合性化合物(B)は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0032】
エポキシ基を有する化合物(エポキシ化合物)としては、分子内に環状脂肪族基とエポキシ基とを有する脂環エポキシ化合物、グリシジル基を有するエポキシ化合物などが挙げられる。これらの中でも脂環エポキシ化合物が好ましく、特に、環状脂肪族基を構成する隣接する2つの炭素原子を含んでエポキシ基(オキシラン環)が形成されている脂環エポキシ化合物が好ましい。エポキシ基を有する化合物は単官能エポキシ化合物及び多官能エポキシ化合物の何れでもよいが、多官能エポキシ化合物が好ましい。エポキシ基を有する化合物は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0033】
前記環状脂肪族基を構成する隣接する2つの炭素原子を含んでエポキシ基(オキシラン環)が形成されている脂環エポキシ化合物として、下記式(I)
【化2】

[式(I)中、nは0〜10の整数であり;Xは、−O−,−CH2−,−C(CH32−,−CBr2−,−C(CBr32−,−CF2−,−C(CF32−,−CCl2−,−C(CCl32−,及び−CH(C65)−からなる群から選択されるいずれか1種の2価の基であり、nが2以上の場合には2個以上のXは同一であっても異なっていてもよく;R1〜R18は、同一又は異なって、水素原子,ハロゲン原子,酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭化水素基,又は置換基を有していてもよいアルコキシ基である]
で表される脂環エポキシ化合物が挙げられる。
【0034】
前記「酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭化水素基」における「炭化水素基」としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル基等の炭素数1〜10程度のアルキル基;ビニル、アリル基等の炭素数2〜10程度のアルケニル基;エチニル基等の炭素数2〜10程度のアルキニル基;シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル基等の3〜12員のシクロアルキル基;シクロペンテニル、シクロヘキセニル基等の3〜12員のシクロアルケニル基;フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜15程度のアリール基;これらが2以上結合した基などが挙げられる。これらの中でも、例えば、メチル基等の炭素数1〜6の炭化水素基(特に、炭素数1〜4のアルキル基)が好ましい。
【0035】
また、前記「酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭化水素基」における「酸素原子を含む炭化水素基」としては、メトキシメチル、メトキシエチル、メトキシプロピル、エトキシメチル、エトキシエチル基等の炭素数2〜10(好ましくは、炭素数2〜4)程度のアルコキシアルキル基などが挙げられる。「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子,臭素原子等が挙げられる。「ハロゲン原子を含む炭化水素基」としては、例えば、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、2,2,2−トリフルオロエチル基等の炭素数1〜10(好ましくは、炭素数1〜4)程度のハロアルキル基などが挙げられる。
【0036】
前記「置換基を有していてもよいアルコキシ基」における「アルコキシ基」としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブチルオキシ、イソブチルオキシ、t−ブチルオキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ基などの炭素数1〜10(好ましくは、炭素数1〜4)程度のアルコキシ基が挙げられる。前記「置換基」としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子などが挙げられる。
【0037】
前記nとしては、好ましくは0〜4、さらに好ましくは0又は1、特に好ましくは0である。n=0の時、Xは単結合を示す。
【0038】
式(I)で表される脂環エポキシ化合物の代表的な例として、例えば、3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル、2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)メタン、1−[1,1−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)]エチルベンゼンなどが挙げられる。
【0039】
前記環状脂肪族基を構成する隣接する2つの炭素原子を含んでエポキシ基(オキシラン環)が形成されている脂環エポキシ化合物のうち、前記式(I)で表される化合物以外の化合物として、例えば、シクロヘキセンオキサイド、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、3,4−エポキシシクロへキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート、(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル)メチル(3,4−エポキシ)−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、エチレン−1,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸)エステル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアルコール、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、リモネンジエポキシドなどが挙げられる。脂環エポキシ化合物としては、上記のほか、環状脂肪族骨格とグリシジル基を有するグリシジルエーテル型エポキシ化合物(シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの水素添加物等)なども使用できる。
【0040】
脂環エポキシ化合物の市販品として、例えば、ダイセル化学工業社製の「セロキサイド2000」、「セロキサイド2021」、「セロキサイド3000」、「EHPE3150」;三井化学社製の「エポミックVG−3101」;油化シェルエポキシ社製の「E−1031S」;三菱ガス化学社製の「TETRAD―X」、「TETRAD−C」;日本曹達社製の「EPB−13」、「EPB−27」などを使用できる。
【0041】
ビニルエーテル基を有する化合物(ビニルエーテル化合物)としては、ビニルエーテル基を有する化合物であれば特に限定するものではなく、単官能ビニルエーテル化合物及び多官能ビニルエーテル化合物の何れであってもよいが、多官能ビニルエーテル化合物が好ましい。ビニルエーテル基を有する化合物は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0042】
ビニルエーテル基を有する化合物の代表的な例として、イソソルバイトジビニルエーテル、オキサノルボルネンジビニルエーテル等の環状エーテル型ビニルエーテル(オキシラン環、オキセタン環、オキソラン環等の環状エーテル基を有するビニルエーテル);フェニルビニルエーテル等のアリールビニルエーテル;n−ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル;シクロヘキシルビニルエーテル等のシクロアルキルビニルエーテル;ハイドロキノンジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル等の多官能ビニルエーテルなどが挙げられる。また、丸善石油化学社製の2−ヒドロキシエチルビニルエーテル(HEVE)、ジエチレングリコールモノビニルエーテル(DEGV)、2−ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)、トリエチレングリコールジビニルエーテル等を使用することもできる。また、α及び/又はβ位にアルキル基、アリル基等の置換基を有するビニルエーテル化合物も使用できる。
【0043】
オキセタニル基を有する化合物(オキセタン化合物)としては、オキセタニル基を有する化合物であれば特に限定するものではなく、単官能オキセタン化合物及び多官能オキセタン化合物の何れであってもよいが、多官能オキセタン化合物が好ましい。オキセタニル基を有する化合物は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0044】
オキセタニル基を有する化合物の代表的な例として、オキセタニル基とビニルエーテル基を持つ3,3−ジメタノールジビニルエーテルオキセタン、東亞合成社製の3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン(POX)、ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル(DOX)、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(EHOX)、3−エチル−3−{[3−(トリエトキシシリル)プロポキシ]メチル}オキセタン(TESOX)、オキセタニルシルセスキオキサン(OX−SQ)、フェノールノボラックオキセタン(PNOX−1009)等が挙げられる。
【0045】
光カチオン重合性化合物(B)としては、硬化時の体積収縮を防止する等の観点から、前記式(I)で表される脂環エポキシ化合物が好ましい。また、硬化時の体積の変動(膨張及び収縮)を極力小さくしたり、重合反応性をより向上させるため、光カチオン重合性化合物(B)として、前記式(I)で表される脂環エポキシ化合物と、式(I)で表される脂環エポキシ化合物以外のエポキシ化合物、オキセタン化合物、及びビニルエーテル化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物とを併用するのも好ましい。
【0046】
光カチオン重合性化合物(B)全体に占める前記式(I)で表される脂環エポキシ化合物の割合は、例えば5重量%以上、好ましくは20重量%以上、より好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上であり、80重量%以上(例えば、90重量%以上)であってもよい。
【0047】
また、前記式(I)で表される脂環エポキシ化合物と、式(I)で表される脂環エポキシ化合物以外のエポキシ化合物、オキセタン化合物、及びビニルエーテル化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物とを併用する場合、その比率は、例えば、前者/後者(重量比)=5/95〜98/2、好ましくは、前者/後者(重量比)=20/80〜95/5、さらに好ましくは、前者/後者(重量比)=50/50〜95/5、特に好ましくは、前者/後者=70/30〜95/5である。
【0048】
[光カチオン重合開始剤(C)]
光カチオン重合開始剤(C)としては、光カチオン重合を活性化する化合物であれば特に限定されず、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ホスホニウム塩、芳香族ビスムトニウム塩、混合配位子金属塩、例えば、(η6−ベンゼン)(η5−シクロペンタジエニル)鉄(II)、シラノール−アルミニウム錯体等が例示される。光カチオン重合開始剤(C)は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0049】
光カチオン重合開始剤(C)としては、チタノセン化合物(D)により可視光増感されやすい化合物が好ましい。このような観点から、光カチオン重合開始剤(C)として、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩(トリアリールスルホニウム塩等)、芳香族ホスホニウム塩、芳香族ビスムトニウム塩等のオニウム塩が好ましい。オニウム塩のアニオンとしては、特に限定されず、例えば、PF6-、SbF6-、B(C654-などの何れであってもよい。
【0050】
光カチオン重合開始剤(C)は、光カチオン重合性化合物(B)(総量)100重量部に対して、例えば0.1〜30重量部、好ましくは0.5〜20重量部の割合で使用される。また、光カチオン重合開始剤(C)は、記録されたホログラムの安定化の観点から、ホログラム記録後に反応活性を持たない物質に分解されるものが好ましい。
【0051】
[チタノセン化合物(D)]
チタノセン化合物(D)としては、光カチオン重合開始剤(C)を増感するものであれば特に限定されず、公知のチタノセン化合物を使用できる。例えば、特開昭59−152396号公報、特開昭61−151197号公報、特開昭63−41484号公報、特開平2−249号公報、特開平2−4705号公報に記載のチタノセン化合物が挙げられる。チタノセン化合物(D)の代表的な例として、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス[2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル]チタニウム、チタノセンビス(トリフルオロメタンスルホネート)、チタノセンジクロリド、(インデニル)チタン(IV)トリクロリド、(ペンタメチルシクロペンタジエニル)チタン(IV)トリクロリド、シクロペンタジエニルチタン(IV)トリクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)チタン(IV)ペンタスルフィド、(4R,5R)−クロロ−シクロペンタジエニル−[2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4,5−ビス(ジフェニルメトキシ)]チタン、(4S,5S)−クロロ−シクロペンタジエニル−[2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4,5−ビス(ジフェニルメトキシ)]チタンなどが挙げられる。チタノセン化合物(D)は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0052】
チタノセン化合物(D)は、光カチオン重合性化合物(B)(総量)100重量部に対して、例えば0.01〜20重量部、好ましくは0.01〜10重量部の割合で使用される。
【0053】
[溶剤]
本発明の体積型ホログラム記録用感光性組成物は、塗工性向上のため、溶剤を含んでいてもよい。溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;クロルベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジイソプロピルエーテル等のエーテル(環状エーテル、鎖状エーテル);メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル;1,2−ジクロロエタン、ジクロルメタン、クロロホルム等のハロゲン化脂肪族炭化水素;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール;これらの混合溶剤などが挙げられる。
【0054】
溶剤の使用量は、光カチオン重合性化合物(B)(総量)100重量部に対して、0〜500重量部(例えば、5〜500重量部)、好ましくは0〜100重量部(例えば、5〜100重量部)である。
【0055】
本発明の体積型ホログラム記録用感光性組成物は、必要に応じて、種々の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、通常使用されるものを用いることができる。添加剤の使用量は、光カチオン重合性化合物(B)(総量)100重量部に対して、例えば、20重量部以下であり、好ましくは10重量部以下である。
【0056】
本発明の体積型ホログラム記録用感光性組成物としては、ホログラム記録後における体積収縮率がホログラム記録前を基準として±0.5%の範囲内(特に、±0.39%の範囲内)となることが好ましい。すなわち、硬化前後における体積収縮率が±0.5%以内(特に、±0.39%以内)であるのが望ましい。
【0057】
[体積型ホログラム記録媒体の製造]
本発明の体積型ホログラム記録媒体の製造方法では、前記本発明の体積型ホログラム記録用感光性組成物を基材又は基板上に塗布し、体積型ホログラム材料層を形成することを特徴とする。体積型ホログラム記録用感光性組成物が溶剤を含む場合には、基材又は基板上に塗布した後、乾燥することにより体積型ホログラム材料層が形成される。
【0058】
体積型ホログラム記録用感光性組成物(塗工液)を塗布する基材又は基板としては、透明性を有するものであればよく、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリフッ化エチレン系フィルム、ポリフッ化ビニリデンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリアミドフィルム、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム等のプラスチックフィルム(シートを含む)、ポリカーボネートフィルム、COPフィルム(シクロオレフィンポリマー、例えば、ダイセル化学工業社製の「TOPAS」、日本ゼオン社製の「ゼオネックス」、JSR社製の「アートン」等);ガラス板などが挙げられる。
【0059】
前記基材又は基板の厚みは、例えば2〜2000μm、好ましくは10〜1000μmである。
【0060】
体積型ホログラム記録用感光性組成物(塗工液)の粘度が低い場合は、塗工液が基材又は基板の表面から流れ出ないように、ガラス板等の基材又は基板間に塗工液を挟み込んでガラス板の周囲を適当な封止用材料(例えば、エポキシ系やアクリル系の熱硬化性樹脂、又は光硬化性樹脂等)で封止するようにして体積型ホログラム記録用感光性媒体を作製することができる。また、必要に応じてスペーサーを用いることができる。
【0061】
塗工液を基材又は基板上に塗布する方法としては、公知の方法を採用でき、例えば、スピンコーター、グラビアコーター、コンマコーター、バーコーター、one-drop filling等の方法を用いることができる。
【0062】
塗工液の塗布量は、体積型ホログラム材料層の厚みが、例えば1〜2000μm、好ましくは10〜1000μmとなるような量が好ましい。
【0063】
また、乾燥後の体積型ホログラム材料層に粘着性がある場合、保護フィルムとして、上記例示の基材又は基板を被覆することができる。この場合、該被覆材料の体積型ホログラム材料層との接触面は、後から剥がしやすいように離型処理が施されていてもよい。
【0064】
本発明の製造方法では、形成された又は形成途中の体積型ホログラム材料層を、体積型ホログラム記録用感光性組成物を塗布した基材又は基板と同一又は異種素材の基材又は基板で被覆してもよい。この基材又は基板としては、透明性を有するものが好ましく、前記体積型ホログラム記録用感光性組成物を塗布する基材又は基板として例示したものと同様のものを使用できる。
【0065】
本発明の製造方法の好ましい態様では、体積型ホログラム記録用感光性組成物を基材又は基板上に、体積型ホログラム材料層の厚みが10〜2000μmになるように塗布し、必要に応じて乾燥した後、塗布層(形成途中の体積型ホログラム層)を、前記体積型ホログラム記録用感光性組成物を塗布した基材又は基板と同一又は異種素材の基材又は基板で被覆し、周辺部を封止した後に所定時間熟成させて体積型ホログラム材料層を形成し、体積型ホログラム記録媒体を作製する。
【0066】
なお、必要に応じて、厚み10〜2000μmのスペーサーを前記体積型ホログラム記録用感光性組成物を塗布する基材又は基板の表面周縁部に額縁状に設置してもよい。
【0067】
塗布層を被覆する基材又は基板としては、透明性を有するものが好ましく、前記体積型ホログラム記録用感光性組成物を塗布する基材又は基板として例示したものと同様のものを使用できる。
【0068】
熟成する際の温度は、例えば0〜50℃、好ましくは10〜40℃程度である。熟成は室温で行うことができる。熟成時間は、特に制限はないが、通常0.1〜48時間、好ましくは0.2〜10時間、さらに好ましくは0.5〜5時間程度である。熟成は遮光条件下で行うのが好ましい。この熟成により、平滑性のある体積型ホログラム記録層を構築でき、安定したホログラム特性を得ることができる。
【0069】
本発明の体積型ホログラム記録媒体にホログラムを記録する方法については、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、体積型ホログラム記録媒体のホログラム記録材料層に原版を密着させ、透明な基材フィルムの側から可視光、あるいは紫外光や電子線のような電離放射線を用いて干渉露光を行うことにより体積型ホログラムを記録する方法(密着露光方式)や、媒体がガラスやフィルムに挟まれている場合に、媒体側からレーザー光を入射し、原版からの反射レーザー光と入射レーザー光との干渉により記録する方法(1光束干渉)や、レーザー光を2方向に分割し、一方を感材に直接入射し、他方は記録したい情報を持つ物体を通した光(情報光)を入射することにより記録する方法(2光束干渉)、情報光と参照光を同軸から照射する方法(コリニア方式)などが挙げられる。
【0070】
なお、このようなホログラム記録には、可視レーザー光、例えば、アルゴンイオンレーザー(458nm、488nm、514.5nm)、クリプトンイオンレーザー(647.1nm)、ヘリウム−ネオンイオンレーザー(633nm)、半導体レーザー(405nm、532nm)等からのレーザー光を使用することができる。
【0071】
また、屈折率変調の促進、重合反応完結のために、干渉露光後、紫外線による全面露光や加熱等の処理を適宜行うことができる。
【0072】
このようにしてホログラムが記録されたものは、本発明の体積型ホログラム記録用感光性組成物を光硬化させた硬化物に該当する。
【0073】
本発明における体積型ホログラム記録用感光性組成物を用いたホログラムの記録メカニズムについて説明する。フィルム状に形成され体積型ホログラム記録用感光性組成物(体積型ホログラム材料層)をレーザーにより干渉露光すると、光が強い部分にてカチオン重合が開始され、それに伴い、光カチオン重合性化合物(B)の濃度勾配ができ、光が弱い部分から光が強い部分に光カチオン重合性化合物(B)の拡散移動が起こる。その結果、干渉縞の強弱に応じて、光カチオン重合性化合物(B)の疎密ができ、屈折率差として現れる。また、光カチオン重合性化合物(B)とバインダーポリマー(A)との屈折率差により、ホログラムが記録される。記録後に露光及び/又は加熱処理による定着を実施してもよい。
【0074】
また、記録時に加熱温度をバインダーポリマー(B)のガラス転移温度付近にすることにより、より光カチオン重合性化合物(A)の移動が促進され、屈折率変調量を増加させることができる。
【実施例】
【0075】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0076】
(光学系)
図1に実験で用いた光学系の概略図を示す。光源は532nm半導体レーザーを用い、ミラー(M)、スペーシャルフィルター(OL及びPh)、平凸レンズ(PCL)、波長板(PP)を介し、ビームスプリッター(BS)で2つの光に分けた。BSで分けられた2つの光をミラーを介し、サンプルに対してそれぞれ30°、30°で入射、干渉させた。回折光及び透過光の強度はパワーメーター(PM:株式会社エーディーシー社製)にてそれぞれ検出した。
【0077】
なお、回折効率及び体積変化率は以下の方法により求めた。
【0078】
<回折効率>
二光束干渉法で記録したホログラムの回折効率をパワーメーターを用いて測定した。口径5mmφの532nm半導体レーザーを30°の角度で入射し、透過光と回折光を検出した。ホログラム記録媒体を−5°〜5°の範囲で軸回転させ、回折光強度が最も高くなる位置で回折効率を算出した[式(1)]。なお、下記実施例及び比較例では、回折効率を百分率(%)で表示している。
η=L1/(L0+L1) … (式1)
(透過光強度:L0、回折光強度:L1
【0079】
<体積変化率(体積収縮率)>
ホログラム記録媒体を10°傾けて設置し、記録光と参照光の角度をそれぞれ20°と40°でホログラム記録を行った。その後、参照光を40°の角度で入射させ、最大回折効率を示す角度を検出した(θ1)。収縮がない場合には、その際に得られる最大回折効率の示す角度は40°であるが、収縮が起こることで40°からのずれが生じる(図2)。また、同様にして、記録光のみを20°の角度で入射させ、最大回折効率を示す角度(θ2)を検出した。これらの角度を用いて、以下の(式2)、(式3)より記録媒体の厚み方向のグレーティングベクトル(K1およびK2)を求め、(式4)より体積変化率(体積収縮率)を算出した。
1=(2π/λ){(n2−sin2θ11/2)−(n2−sin2θ21/2)}
… (式2)
(λ:記録波長、n:記録層の屈折率、θ1,θ2:記録前の入射角:40°,20°)
2=(2π/λ){(n2−sin2θ1'1/2)−(n2−sin2θ2'1/2)}
… (式3)
(λ:記録波長、n:記録層の屈折率、θ1',θ2':回折効率が最大となる入射角)
体積収縮率(%)=(K1−K2)/K1 × 100 … (式4)
(記録前:K1、記録後:K2
以下、硬化収縮は負の値で表し、硬化膨張の場合は正の値で表した。
【0080】
<ダイナミックレンジ(M/♯)>
ダイナミックレンジは、多重度の指針であり、多重記録を行った際に得られる各チャンネルの回折効率の平方根の和で表される(式5)。
【数1】

(η:回折効率、i、n:記録Ch数)
【0081】
実施例1
バインダーポリマー(A)としてポリ−2−ビニルナフタレン(Mw=93,000)を41.7重量部、カチオン重合性化合物として2官能の脂環エポキシ化合物である3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシルを46重量部、光重合開始剤(C)としてPI2074(Rhodia社製、下記式参照)を7重量部、チタノセン化合物(D)としてビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム(商品名「Irgacure784」、BASF社製)を4.6重量部準備し、これらを25重量部のシクロヘキサノンに溶解させたものを感光液1とした。この感光液1をガラス基板上に滴下し、溶剤乾燥後の膜厚が100μmとなるようにアプリケーターにて塗布し、オーブンにて溶剤を加熱除去した。その後、同ガラス板の表面周縁部に、感光液に触れないように、厚み100μmのPETフィルムを額縁状に設置した。その後、塗布層をポリカーボネートフィルムで覆い、室温で1時間遮光条件下で熟成させることでホログラム記録媒体1(ホログラム材料層の厚み100μm)を得た。このホログラム記録媒体1に対して、二光束光学系により、半導体レーザー(532nm、露光量100mJ/cm2)を用いて露光しホログラム記録を行った。その結果、回折効率は90%、体積変化率は+0.26%であった。また、多重記録におけるM/#は19.5(1mm換算)であった。
【化3】

【0082】
比較例1
バインダーポリマー(A)としてポリ−2−ビニルナフタレン(Mw=93,000)を42重量部、2官能の脂環式エポキシ化合物である3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル)と3,4−エポキシシクロへキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート(商品名「CEL2021P」、ダイセル化学工業社製)をモル比が6:1になるように混合したカチオン重合性化合物(B)を46重量部、光重合開始剤(C)としてPI2074(Rhodia社製,前記式参照)を7重量部、増感色素(E)としてクマリン系色素1(下記式で表される10-[3-[4-(Dimethylamino)phenyl]-1-oxo-2-propenyl]-2,3,6,7-tetrahydro-1,1,7,7-tetramethyl-1H,5H,11H-[1]benzopyrano[6,7,8-ij]quinolizine-11-one)を0.3重量部準備し、これらを25重量部のシクロヘキサノンに溶解させたものを感光液C1とした。この感光液C1を用い実施例1と同様にしてホログラム記録媒体C1(ホログラム材料層の厚み100μm)を得た。このホログラム記録媒体C1に対して、二光束光学系により、半導体レーザー(532nm、露光量300mJ/cm2)を用いて露光しホログラム記録を行った。その結果、回折効率は71%、体積変化率は−0.53%であった。また、多重記録におけるM/#は10.2(1mm換算)であった。
【化4】

【0083】
実施例2〜8、比較例2〜4
表1に示す配合にて種々のカチオン重合性化合物を用いて実施例1および比較例1と同様にして感光液2〜8、C2〜C4を調製した。なお、表において各組成の配合量は重量部で示した。
【0084】
実施例及び比較例の結果をまとめて表1に示す。
【0085】
【表1】

【0086】
以下に表1中の化合物を示す。
A−1:ポリ2−ビニルナフタレン
B−1:3,4,3’,4’−ジエポキシビシクロヘキシル
B−2:3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート(商品名「セロキサイド2021P」、ダイセル化学工業社製)
B−3:シクロヘキセンオキサイド(和光純薬社製)
B−4:ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル(DOX、東亞合成社製)
B−5:3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(EHOX、東亜合成社製)
B−6:シクロヘキシルビニルエーテル(和光純薬社製)
B−7:オキサノルボルネンジビニルエーテル
C−1:PI−2074(Rhodia社製,前記式参照)
D−1:商品名「Irgacure784」(BASF社製)
E−1:クマリン系色素1(前記式参照)
F−1:シクロヘキサノン(和光純薬社製)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダーポリマー(A)と、光カチオン重合性化合物(B)と、光カチオン重合開始剤(C)と、チタノセン化合物(D)とを含有し、前記バインダーポリマー(A)がナフタレン環を有する重量平均分子量1万〜100万のポリマーであることを特徴とする体積型ホログラム記録用感光性組成物。
【請求項2】
前記光カチオン重合性化合物(B)が、下記式(I)
【化1】

[式(I)中、nは0〜10の整数であり;Xは、−O−,−CH2−,−C(CH32−,−CBr2−,−C(CBr32−,−CF2−,−C(CF32−,−CCl2−,−C(CCl32−,及び−CH(C65)−からなる群から選択されるいずれか1種の2価の基であり、nが2以上の場合には2個以上のXは同一であっても異なっていてもよく;R1〜R18は、同一又は異なって、水素原子,ハロゲン原子,酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭化水素基,又は置換基を有していてもよいアルコキシ基である]
で表される脂環エポキシ化合物である請求項1記載の体積型ホログラム記録用感光性組成物。
【請求項3】
前記光カチオン重合性化合物(B)が、前記式(I)で表される脂環エポキシ化合物とともに、前記式(I)で表される脂環エポキシ化合物以外のエポキシ化合物、オキセタン化合物、及びビニルエーテル化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含む請求項2記載の体積型ホログラム記録用感光性組成物。
【請求項4】
前記光カチオン重合開始剤(C)がオニウム塩である請求項1〜3の何れか1項に記載の体積型ホログラム記録用感光性組成物。
【請求項5】
バインダーポリマー(A)の屈折率が光カチオン重合性化合物(B)の屈折率よりも大きく、且つバインダーポリマー(A)と光カチオン重合性化合物(B)の屈折率差が0.001〜0.3の範囲である請求項1〜4の何れか1項に記載の体積型ホログラム記録用感光性組成物。
【請求項6】
ホログラム記録後における体積収縮率がホログラム記録前を基準として±0.5%の範囲内である請求項1〜5の何れか1項に記載の体積型ホログラム記録用感光性組成物。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載の体積型ホログラム記録用感光性組成物を基材又は基板上に塗布し、体積型ホログラム材料層を形成することを特徴とする体積型ホログラム記録媒体の製造方法。
【請求項8】
さらに、形成された又は形成途中の体積型ホログラム材料層を、体積型ホログラム記録用感光性組成物を塗布した基材又は基板と同一又は異種素材の基材又は基板で被覆する工程を含む請求項7記載の体積型ホログラム記録媒体の製造方法。
【請求項9】
体積型ホログラム記録用感光性組成物を基材又は基板上に、体積型ホログラム材料層の厚みが10〜2000μmになるように塗布し、塗布層を、前記体積型ホログラム記録用感光性組成物を塗布した基材又は基板と同一又は異種素材の基材又は基板で被覆し、周辺部を封止した後に所定時間熟成させる工程を含む請求項7又は8記載の体積型ホログラム記録媒体の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜6の何れか1項に記載の体積型ホログラム記録用感光性組成物を光カチオン重合することにより得られる硬化物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−54280(P2013−54280A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193844(P2011−193844)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000002901)株式会社ダイセル (1,236)
【Fターム(参考)】