説明

体積測定装置

【課題】様々な大きさの被測定物に対応でき、高精度に測定が可能な体積測定装置を提供する。
【解決手段】被測定物2を収めて密閉空間を形成可能な密閉空間形成手段3と、密閉空間の容積変化手段4と、密閉空間内の気体の圧力測定手段5と、密閉空間の容積変化の前後での圧力測定値を基に被測定物2の体積値を決定する体積決定部74とを備えた体積測定装置1であって、密閉空間内で被測定物2を載置する大きさの異なる複数の台座6a〜6cを具備し、台座6a〜6cの各体積データを記憶する台座体積データ記憶部80を備え、体積決定部74が被測定物2の大きさに応じて台座6a〜6cの中から選択して使用する台座6に対応した体積データを体積データ記憶部80より読み出して、圧力測定手段5による圧力測定値に加えて使用する台座6に対応した体積データを基に被測定物2の体積値を決定するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定物を入れた密閉容器の容積を変化させ、その際の内部の圧力変化を検出することで被測定物の体積を測定する体積測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、野菜や果物等の品質評価を行うための指標の一つとして密度が用いられている。こうした密度を測定するための方法として、被測定物を液体に浸けて浮力の程度を評価するアルキメデスの方法がある。
【0003】
しかしながら、この方法を用いる場合には、液体量の管理を行うため測定に時間がかかることや、測定後に被測定物の表面に付着した液体を拭き取るために手間がかかること、あるいは被測定物の種類によっては腐敗等の品質低下が生じやすくなること等が問題になる。
【0004】
そのため、液体を用いることなく密度を得るための手法として、被測定物の体積と質量を各々求めて密度を算出することが考えられる。例えば、下記特許文献1においては、液体を用いることなく、気体の圧力変化を利用して被測定物の体積を求める方法が開示されている。
【0005】
このものは、容積一定である測定容器内に存在する固体または液体の体積を測定するため、実質的に密閉状態で気体を測定容器内に挿入または除去することで生じる圧力変化に基づいて固体または液体の体積を測定する方法と、その方法を実現するための測定装置について述べたものである。この装置によれば、簡単な構成でありながら被測定物を液体に浸けることなく体積の測定が可能となり、別途重量を測定すれば密度を求めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−26906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1にかかる体積測定装置を現実に使用した場合、被測定物の大きさによっては、測定誤差が大きくなるとの欠点がある。
【0008】
具体的には、この体積測定装置は密閉空間内の容積を変化させることによって、当該密閉空間内で被測定物以外の部分が占める気体の体積を変化させ、その際の気体の圧力変化を測定することで、内部の被測定物の体積を算出するものであるために、密閉空間の容積に対して被測定物の占める容積がごく僅かである場合には、密閉空間の容積変化による気体の圧力変化が小さくなることから圧力差を検出することが困難となって、その結果、被測定物の体積値を算出した際の誤差が大きくなる傾向がある。
【0009】
こうした測定誤差を小さくするため、小さな被測定物に対応させようとして、容器を小さくすると、大きな被測定物を収めることができなくなるとの問題が生じる。
【0010】
本発明は、このような課題を有効に解決することを目的としており、具体的には、様々な大きさの被測定物に対応でき、大きさによる影響を受けることなく高精度に体積の測定が可能な体積測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0012】
すなわち、本発明の体積測定装置は、被測定物を内部に収めた状態で密閉空間を形成することが可能な密閉空間形成手段と、前記密閉空間の容積を変化させる容積変化手段と、前記密閉空間内の気体の圧力を測定する圧力測定手段と、前記容積変化手段による前記密閉空間の容積変化の前後で前記圧力測定手段によって得られる圧力測定値を基にして前記被測定物の体積値を決定する体積決定部とを備えた体積測定装置であって、前記密閉空間の内部で前記被測定物を載置するための大きさの異なる複数の台座を具備しているとともに、前記大きさの異なる複数の台座の各々の体積データを記憶しておく台座体積データ記憶部を備えており、前記体積決定部が前記被測定物の大きさに応じて前記大きさの異なる台座の中から選択して使用する台座に対応した体積データを前記体積データ記憶部より読み出して、前記圧力測定手段によって得られる圧力測定値に加えて前記選択して使用する台座に対応した体積データを基にして前記被測定物の体積値を決定するように構成されていることを特徴とする。
【0013】
このように構成すると、密閉空間内に存在する気体の量の割合を一定以下に設定することができるようになるとともに、体積値の決定のために必要なデータを簡単に入力して体積値を求めることができるようになる。そのため、簡単な操作のみで様々な大きさの被測定物の体積を高精度に測定することが可能となる。
【0014】
また、本発明の体積測定装置は、被測定物を内部に収めた状態で密閉空間を形成することが可能な密閉空間形成手段と、前記密閉空間の容積を変化させる容積変化手段と、前記密閉空間内の気体の圧力を測定する圧力測定手段と、前記容積変化手段による前記密閉空間の容積変化の前後で前記圧力測定手段によって得られる圧力測定値を基にして前記被測定物の体積値を決定する体積決定部とを備えた体積測定装置であって、前記密閉空間形成手段が開口部を形成された大きさの異なる複数の容器と、前記開口部をシール部材を介して閉止する閉止部材とを具備するものであり、前記大きさの異なる複数の容器の各々の内容積データを記憶しておく容器内容積データ記憶部を備えており、前記体積決定部が前記被測定物の大きさに応じて前記大きさの異なる容器の中から選択して使用する容器に対応した内容積データを前記容器内容積データ記憶部より読み出して、前記圧力測定手段によって得られる圧力測定値に加えて前記選択して使用する容器に対応した内容積データを基にして前記被測定物の体積値を決定するように構成されていることを特徴とする。
【0015】
このように構成した場合であっても、密閉空間内に存在する気体の量の割合を一定以下に設定することができるようになるとともに、体積値の決定のために必要なデータを簡単に入力して体積値を求めることができるようになる。そのため、簡単な操作のみで様々な大きさの被測定物の体積を高精度に測定することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明した本発明によれば、簡単な操作のみで様々な大きさの被測定物に対応して、高精度に体積を測定できる体積測定装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る体積測定装置のシステム構成図。
【図2】同体積測定装置を構成する容器の内部に被測定物を収める際の模式図。
【図3】同体積測定装置を用いて測定を行う際の動作を示す模式図。
【図4】同体積測定装置を用いて測定を行う際の容器内の気体の圧力変化の例を示したグラフ。
【図5】被測定物の体積と測定誤差との一般的な関係を示すグラフ。
【図6】図1の状態より被測定物の大きさに応じて異なる大きさの台座に変更した際の模式図。
【図7】本発明の第2実施形態に係る体積測定装置のシステム構成図。
【図8】図7の状態より被測定物の大きさに応じて異なる大きさの容器に変更した際の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
<第1実施形態>
【0019】
図1に示すように、この実施形態の体積測定装置1は、大きくは機器部11と、機器部11の動作を制御するとともに機器部11によって得られた測定データを基にして体積値の演算を行う制御部12から構成されている。また、制御部12には、測定者との間で情報を授受するための入力部70および表示部75が接続されている。
【0020】
そして、機器部11は、被測定物2を載置するための台座6と、被測定物2と台座6とを内部に収めた状態で密閉空間を形成する密閉空間形成手段3と、その密閉空間の内部の容積を変化させる容積変化手段4と、密閉空間内の気体である空気13の圧力を測定するための圧力測定手段5とから構成されている。
【0021】
この図においては、体積値Vsaを有する被測定物2aを台座6aに載せた状態で、密閉空間内に収める状態を記載してある。しかしながら、機器部11は台座6aに加えて、測定する被測定物2の大きさに応じて台座6aと代えて使用することが可能な、台座6aよりも僅かに大きな台座6bと、それよりもさらに大きな台座6cの3種類の台座を有している。台座6b、台座6cの体積は、それぞれVsb、Vscであり、これらの間にはVsa<Vsb<Vscの関係がある。
【0022】
また、密閉空間形成手段3は、プレート状に構成された閉止部材としてのベース32と、ベース32の上に設けられたシール部材33と、直方体状に構成され被測定物2に被せるようにして設けられた容器31とから構成される。
【0023】
図2に示したように、体積の測定のため被測定物2を機器部11の内部に収める際には、被測定物2をベース32の上面32aの上に置いた台座6の上に載置させた状態で、下側に開口部31aを形成された容器31を上側より被せていき、シール部材33を介してベース32の上面32aに当接させた状態とする。容器31には容積変化手段4および圧力測定手段5が連結するようにして設けられているために、これらは一体化された状態となって移動できるように構成されている。
【0024】
また、シール部材33はシリコンゴム等の弾性体によって形成されるとともに、容器31の開口部31aの全周に渡って密着できる形状とされていることで、ベース32と合わせて容器31の開口部31a全体を閉止することができるように構成されている。そのため、上記のようにして容器31をベース32の上面32aに、シール部材33を介して当接させるようにすることで、ベース32はシール部材33を介して容器31の開口部31aを閉止するための閉止部材として機能して、内部に気体としての空気13を閉じ込めた密閉空間が形成される。
【0025】
図1にもどって、機器部11の構成要素としての容積変化手段4は、シリンダ41と、そのシリンダ41を構成するピストンを往復動させるためのモータ42と、シリンダ41の内部と容器31の内部とを連通するシリンダ用配管43とから構成されている。モータ42にはステッピングモータが用いられ、制御部12からの指令によって動作し、シリンダ41のピストンを動かして細かくシリンダ41の内容積を変更することができるようになっている。シリンダ41はシリンダ用配管43を通じて容器31の内部と連通された状態となっているため、シリンダ41を動かすことによって、容器31の内部に空気13を送り込んだり、容器31の内部より空気13を吸引したりすることが可能となっている。
【0026】
さらに、機器部11の構成要素としての圧力測定手段5は圧力計51と、その圧力計51と容器31の内部とを連通する圧力計用配管52とから構成されている。圧力計51は容器31の内部の空気13の圧力を測定することができるように構成されており、図示しない電源部より電源を供給されるとともに、アナログもしくはデジタルの電気信号で圧力の測定値を制御部12に向けて出力できるようにされている。
【0027】
上述したように、容器31の開口部31a(図2参照)が閉止部材としてのベース32によって閉止されている状態となった場合に密閉空間が形成されるが、詳細には、ここでいう密閉空間とは容器31とベース32との間で形成される空間に、シリンダ41、シリンダ用配管43、圧力計51および圧力計用配管52の内容積を加えたものになる。これらのうちシリンダ用配管43、圧力計51および圧力計用配管52の内容積は、ほぼ一定値とみることができるが、シリンダ41の内容積は上記の通りピストンの動作によって変更されるものであるため、その分密閉空間の内容積は変更されることになる。
【0028】
なお、本発明において述べる密閉空間とは、上記のようにして形成される空間そのものをいい、完全に外部との遮断がなされて真の意味での密閉が実現できているか否かを問題とするものではない。
【0029】
本体積測定装置1は、上述のように容器31等によって形成された密閉空間の容積を、容積変化手段を構成するシリンダ41の動作によって変化させ、その容積変化の前後における容器31内部の空気13の圧力を測定することによって、内部の被測定物2の体積を測定しようとするものである。
【0030】
そのため、入力部70から与えられる測定者からの命令に基づいて、上記の機器部11を動作させるとともに、測定値から適宜演算を行った結果を出力するため、制御部12は次のように構成されている。
【0031】
まず制御部12と接続されている入力部70を通じて、適宜動作モード変更にかかる指令や、測定や演算に必要な情報および具体的な動作命令が基本指令部71に与えられる。基本指令部71では、入力部70より与えられた指令に基づき、校正モードまたは測定モードのいずれかの動作モードで、各部に対して動作命令や、測定値に基づく演算、表示を行わせる命令を与えるように構成されている。校正モードと測定モードの選択は測定者によって行い、入力部70を通じて指定することができるように構成されており、基本指令部71ではモードに応じた動作指令を各部に与える。
【0032】
校正モードとは、実際の体積測定に先駆けて、室温、大気圧、湿度、機器部11の経時変化等の要因による影響分を把握して、測定誤差を排除するためのものであり、圧力測定値と被測定物の体積値との関係を機器特性や環境に応じた所定の関係となるように補正を行うための校正用データを得るための動作モードということができる。
【0033】
この校正モードを使用する場合には、容器31の内部に被測定物2を入れない状態、あるいは、被測定物2の代わりに既知の体積値を有するアルミブロックで形成した校正用部材を入れた状態で、体積測定時と同様の動作および測定を行わせることによって校正用データを作成する。測定者は、内部に収容させる対象物がない場合にはその旨、校正用部材を収容させる場合には、その体積値を入力部70より入力する。なお、使用する校正用部材が限定されている場合には、それらの体積値を内部メモリに保存しておき、その中から選択して呼び出すようにして構成しても良い。
【0034】
測定モードにおける体積測定にあたっては、制御部12に接続されている入力部70を通じて、上述した3種類の台座6a〜6cのうちいずれの台座を使用するかを指定する。これらの台座6a〜6cの体積値は、あらかじめ台座体積データ記憶部80に記憶されているため、上記のように使用する台座を指定することによって、基本指令部71より、いずれの体積値データを使用して演算を行うかを選択して体積決定部74に出力させるようにしている。
【0035】
上記のように必要な情報の入力を終えた後、実際の測定を開始し、基本指令部71からは密閉空間内の容積を変化させるためにモータ制御部72に命令が出力される。モータ制御部72はその命令に合致するように具体的な指令値を定めてモータ42の動作を制御する。
【0036】
また、基本指令部71からは、圧力測定が必要となるタイミングでもって圧力測定部73に対して命令を出力し、圧力測定部73においてはその際に得られた圧力計51による圧力測定値を体積決定部74に対して出力できるようになっている。
【0037】
体積決定部74は、圧力測定部73より入力された圧力測定値に加えて、基本指令部71から与えられる容積変化量のデータ、校正用データ記憶部79に記憶された校正用データ、および上述した台座6の体積データを与えられて、被測定物2の体積値を演算して決定し、出力できるように構成されている。なお、演算を行わせることなく、圧力測定値に応じてデータテーブルから選択するようにして被測定物2の体積値を決定するように構成することも可能である。
【0038】
表示部75では、体積決定部74より得られる体積値や、基本指令部71からの得られる種々の動作状況を表示できるように構成されている。
【0039】
校正用データを取得する際には、入力部70より校正モード実行の命令が与えられ、基本指令部71よりそれに合致した命令が各部に出力されるとともに、校正用データ作成部78に対して必要なデータを取り込んで校正用データを作成するように命令される。この際にも、通常の体積測定と同様に、モータ制御部72によってモータ42を通じてシリンダ41が動作され、その時の圧力測定結果が圧力測定部73を通じて校正用データ作成部78に対して入力される。
【0040】
校正用データ作成部78は、基本指令部71から得られる校正用部材の体積データと、圧力測定部73を通じて得られた圧力測定値を基にして、校正用データを作成する。質量の異なる校正用部材を用いて同様の測定を繰り返すことによって、より精度の高い校正用データを作成する場合もある。
【0041】
上記のようにして作成された校正用データは校正用データ記憶部79に出力されて、ここで記憶される。校正用データは上述したように実際の体積測定の際に体積決定部74より呼び出されて使用されることで、より高精度に体積値を求めることができるようになっている。
【0042】
ここで、上記のように気体の圧力の変化を利用して、被測定物2の体積を測定する原理について説明する。
【0043】
まず、図3(a)のように内容積がV0である密閉空間の中に、体積Vxの被測定物2と体積Vsの台座を収容させた状態とする。このとき、密閉空間内に閉じ込められる空気13の体積は(V0−Vx−Vs)で表される。また、この際の密閉空間内の空気13の圧力はP0で表され、圧力計51によって測定される。
【0044】
この後、図3(b)のようにシリンダ41を動作させ密閉空間内の内容積をV1に増加させる。このとき、密閉空間内に閉じ込められる空気13の体積は(V1−Vx−Vs)で表される。このような内容積の変化によって、内部での気圧は図4のように減少する。図中のA点よりシリンダ41(図3(b)参照)を動作させ、B点でその動作が終わっている。B点に達した直後には多少気圧が変動するため、B点よりt1時間経過するのを待ち、安定した状態となってから気圧の測定を行うようにしている。この際の密閉空間内の空気13の圧力はP1で表される。
【0045】
このようにして、密閉空間内の容積が変化した際において、容器31の内部の密閉状態が完全に保たれて外部との空気の授受がないものであり、かつ、温度変化が無いとの条件では、一般によく知られているボイルの法則より次の関係が導かれる。
P0(V0−Vx−Vs)=P1(V1−Vx−Vs) ………………………数式(1)
【0046】
さらに、密閉空間内の容積の増加量は、シリンダ41の内容積の増加量ΔVaとしてモータ42を駆動することで正確に与えることができるため、
V1=V0+ΔVa …………………………………………………………………数式(2)
の関係がある。
【0047】
以上の数式(1)、数式(2)より、下記の関係式が得られる。
P0(V0−Vx−Vs)=P1(V0+ΔVa−Vx−Vs) ……………数式(3)
【0048】
これを変形することで次のようにして、Vxが求められる。
Vx=V0−ΔVa・P1/(P0−P1)−Vs ……………………………数式(4)
【0049】
なお、被測定物2の体積Vxを求めるにあたり、密閉空間内の容積を増加させつつ、その際の圧力変化を利用する手法について述べたが、原理的には密閉空間内と外部との遮断が十分にできている限りボイルの法則による関係は成立するため、密閉空間内の容積を減小させながら、同様にして被測定物2の体積Vxを求めることが可能である。
【0050】
なお、上述した校正モードによって校正用の計算式を事前に得ている場合には、V0、ΔVaのデータを入力することなく、さらに精度良く体積Vxを求めることが可能である。
【0051】
すなわち、理想状態の式である数式(4)を基にして、実際の気温、大気圧、湿度、密閉空間の内容積の誤差、シリンダ内容積の誤差、および各部の変形を考慮した現実の式として、次のように近似することができる。
Vx=a+b・P1/(P0−P1)−Vs ……………………………………数式(5)
ここで、aおよびbはそれぞれ、校正モードによって求めることが必要な係数である。
【0052】
上述したように、校正モードでは被測定物を挿入しない状態、あるいは、既知の体積値を有するアルミブロックで形成した校正用部材を被測定物のかわりに用いた状態で複数回測定動作を行わせて、数式(5)における係数a、bを求める。このようにして、事前にa、bの係数を求めておけば、同じ動作を再現させてP0、P1を測定するのみで、数式(5)により体積Vxを求めることが可能となる。
【0053】
また、数式(5)よりも、さらに精度が要求される際には、次のようにP1に比例する項を増やした近似式を用いることも考えられる。
Vx=a+b・P1/(P0−P1)+c・P1−Vs…………………………数式(6)
【0054】
ここで、a〜cは校正モードによって求めることが必要な係数である。
【0055】
この場合には、未知の係数が数式(5)の場合に比べて多いために、校正モードで要する時間が長くなるとの短所があるものの、係数a〜cが決定された後には、より精度の高い測定ができるとの長所がある。
【0056】
なお、上述の校正モードによる測定は、実際の測定と同じ動作とすることが高い精度を得るために必要である。そのため、実際の測定と同じ体積変化を行わせるためにシリンダ41への制御指令を同一にし、圧力値の測定タイミングも同じようにすることが肝要である。
【0057】
上記のようにして、図1におけるシリンダ41の内容積を変化させて、これによる体積変化の前後における密閉容器内の圧力をそれぞれ測定して、その圧力測定値を用いた演算を行うことで精度良く被測定物2の体積Vxを求めることができる。
【0058】
以上のような原理、方法によって求める被測定物2の体積値Vxは、被測定物2の大きさによって測定誤差の大きさが異なることになる。
【0059】
図5に、台座6(図1参照)を用いることなく、被測定物2(図1参照)の体積を同じ原理を利用して求めた場合の結果を示す。同図において、V0とは密閉空間内の容積であり、Vxとは被測定物2の体積を示している。このグラフから明らかなように、密閉空間内の容積に対する被測定物2の体積の割合が小さいときには圧力差が小さくしか得られないことから測定誤差が大きくなり、被測定物の体積の割合が大きいときには圧力差が大きく得られるために測定誤差が小さくなることがわかる。
【0060】
さらに、同図から分かるように、台座6(図1参照)を用いない場合にはVxを0.2・V0以上としたときに十分高い測定精度を得られることになる。これを逆に言うと、V0を5・Vx以下とすることが高い測定精度を維持するために必要な条件といえる。
【0061】
この知見を生かし、図1に示す本実施形態の体積測定装置1では、台座6を用いて、基準となる密閉空間内の容積を調整できるようにしている。すなわち、台座6の体積をVsとしたとき、密閉空間内の容積は(V0―Vs)となっていると考えることができる。そして、(V0−Vs)≦5・Vxとすれば、高い測定精度を得ることができる。さらに、この関係はVs≧V0−5・Vxと置き換えることができる。
【0062】
以上の知見より、台座6として大きさの異なるものを複数個準備しておき、その中より被測定物2の大きさに応じて、上記の関係を満たすもの、つまりはVs≧V0−5・Vxの関係を満たす体積値Vsを有する台座6を選択するようにすればよいことになる。
【0063】
そのため、本実施形態に係る体積測定装置1では上述したように、Vsaの体積を有する台座6a、Vsbの体積を有する台座6b、Vscの体積を有する台座6cを備えており、被測定物2の大きさに応じて選択して使用するようにしている。
【0064】
図1では、比較的大きな体積値Vxaを有する被測定物2aを密閉空間の内部に収めた状態を示しており、被測定物2aに対応して比較的小さな体積値Vsaを有する台座6aを用いている。
【0065】
さらに、図6(a)に示すように、被測定物2a(図1参照)よりも僅かに大きな体積値Vsbを有する被測定物2bの測定を行う場合には、被測定物2bに対応した体積値Vsbを有する台座6bを用いる。同様に、図6(b)に示すように、比較的小さな体積値Vscを有する被測定物2cの測定を行う場合には、被測定物2cに対応した大きな体積値Vscを有する台座6cを用いる。
【0066】
さらに、図1に示したように、これらの体積値Vsa、Vsb、Vscは台座体積データ記憶部80の中に記憶されているために、使用する台座6の種類に応じて、被測定物2の体積値を計算する際に用いる台座の体積値をVsa、Vsb、Vscの中から選択して読み出し、体積決定部74において適切に計算を行うことができるようになっている。
【0067】
上記のように、台座の選択を行う場合には、被測定物2の体積値Vxは未知であるが、上述したVs≧V0−5・Vxの関係は許容範囲が十分に広いために、目分量のみで台座6を選択することでほぼこの関係を満たすようにすることができる。なお、このようにして測定を行った結果、予想外にVxが小さく上記の関係が満たされているかについて疑問がもたれる場合には、台座6を大きくして再度測定を行うようにすればよい。
【0068】
また、図1に示したように台座6は、中央部を凹ませて被測定物2を載せやすい形状としている。このようにすることで、ミカン、リンゴなど球形に近く転がりやすいものも、ほうれん草、白菜など外側に広がりやすい性質を有するものも、簡単に収納させて測定することができる。
【0069】
さらに、本体積測定装置1を被測定物2の搬送ラインの途中に設ける場合には、被測定物2を台座6とセットで搬送させつつ、体積測定を行う箇所で、被測定物2を台座6とともに密閉空間形成手段内に収めて測定を行うように構成することも可能である。
【0070】
以上のように、本実施形態の体積測定装置1は、被測定物2を内部に収めた状態で密閉空間を形成することが可能な密閉空間形成手段3と、前記密閉空間の容積を変化させる容積変化手段4と、前記密閉空間内の気体の圧力を測定する圧力測定手段5と、前記容積変化手段4による前記密閉空間の容積変化の前後で前記圧力測定手段5によって得られる圧力測定値を基にして前記被測定物2の体積値を決定する体積決定部74とを備えたものであって、前記密閉空間の内部で前記被測定物2を載置するための大きさの異なる複数の台座6a〜6cを具備しているとともに、前記大きさの異なる複数の台座6a〜6cの各々の体積データを記憶しておく台座体積データ記憶部80を備えており、前記体積決定部74が前記被測定物2の大きさに応じて前記大きさの異なる台座6a〜6cの中から選択して使用する台座6に対応した体積データを前記体積データ記憶部80より読み出して、前記圧力測定手段5によって得られる圧力測定値に加えて前記選択して使用する台座6に対応した体積データを基にして前記被測定物2の体積値を決定するように構成されていることを特徴とするものである。
【0071】
このように構成されているため、基準となる密閉空間内の容積を台座6の体積分減少させるよう調整することで、これに対する被測定物2の体積値を一定の割合以上にすることができるため、容積変化手段4によって容積を変化させたときの圧力変化を一定以上に大きく保つことができる。こうした圧力変化を基にすることで、被測定物2の体積測定を高精度で行うことが可能となる。
<第2実施形態>
【0072】
第2実施形態における体積測定装置を図7に示す。上述した第1実施形態の体積測定装置1と共通する部分については同じ符号を付して説明を省略する。
【0073】
本実施形態では、第1実施形態の場合と異なり、台座6(図1参照)を使用しておらず、被測定物2の大きさに応じて選択して使用するための複数の容器231a〜231cを備えている。複数の容器231a〜231cはいずれも第1実施形態のものと同様に矩形状に形成されており、下面は開口部として開放されている。
【0074】
被測定物2は複数の容器231a〜231cのいずれかと、ベース232と、これらの間に設けられたシール部材233からなる密閉空間形成手段203の内部に収められる。
【0075】
また、容器231a〜231cの交換にかかわらず、同一の容積変化手段204を用いることができるようになっており、当該容積変化手段204はシリンダ241と、これを駆動するモータ242と、シリンダ241の内容積と密閉空間内とをベース232の内部を通って連通させる配管243とから形成されている。同様に、圧力測定手段205も、圧力計251と、この圧力計251と密閉空間内とをベース232の内部を通って連通させる配管252とから形成されている。
【0076】
複数の容器231a〜231cは、それぞれ大きさが異なり、容器231aを用いた場合に、ベース232等との間で形成される密閉空間の容積はV0aとなるとともに、図8(a)、(b)のように容器231b、231cを用いた場合に、ベース232等との間で形成される密閉空間の容積はそれぞれV0b、V0cとなる。ここで各容器231a〜231cを用いて形成される密閉空間の容積にはV0a>V0b>V0cの関係がある。
【0077】
さらには、各容器231a〜231cの基準となる内容積はそれぞれ、容器内容積データ記憶部280に記憶されており、使用する容器231a〜231cに応じて選択して読み出されて密閉空間の容積が計算され、これを基にして体積決定部74において被測定物2の体積値の計算が行われるようになっている。
【0078】
この実施形態においては、被測定物2の大きさに応じて大きさの異なる複数の容器231a〜231cの中より適切なものを選択することによって、上述したように密閉空間内の容積V0を5・Vx以下とすることが可能となるために、第1実施形態の場合と同様に高い測定精度を得ることができる。
【0079】
以上のように、本実施形態の体積測定装置201は、被測定物2を内部に収めた状態で密閉空間を形成することが可能な密閉空間形成手段203と、前記密閉空間の容積を変化させる容積変化手段204と、前記密閉空間内の気体の圧力を測定する圧力測定手段205と、前記容積変化手段204による前記密閉空間の容積変化の前後で前記圧力測定手段205によって得られる圧力測定値を基にして前記被測定物2の体積値を決定する体積決定部74とを備えたものであって、前記密閉空間形成手段203が開口部を形成された大きさの異なる複数の容器231a〜231cと、前記開口部をシール部材233を介して閉止する閉止部材232とを具備するものであり、前記大きさの異なる複数の容器231a〜231cの各々の内容積データを記憶しておく容器内容積データ記憶部280を備えており、前記体積決定部74が前記被測定物2の大きさに応じて前記大きさの異なる容器231a〜231cの中から選択して使用する容器231a〜231cに対応した内容積データを前記容器内容積データ記憶部280より読み出して、前記圧力測定手段205によって得られる圧力測定値に加えて前記選択して使用する容器に対応した内容積データを基にして前記被測定物2の体積値を決定するように構成されていることを特徴とするものである。
【0080】
このように構成した場合においても、密閉空間内の容積に対する被測定物2の体積値を一定の割合以上にすることができるため、容積変化手段204によって容積を変化させたときの圧力変化を一定以上に大きく保つことができる。こうした圧力変化を基にすることで、被測定物2の体積測定を高精度で行うことが可能となる。
【0081】
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0082】
例えば、本発明が意図する効果は、上述したような密閉空間内の容積を増加させつつ圧力測定を行い、その圧力測定値の変化より体積値を決定する場合のみには限定されず、密閉空間内の容積を減少させつつ圧力測定を行い、その圧力測定値の変化を基にして体積値を決定する場合であっても変わらずに得ることができる。
【0083】
また、上述のいずれの実施形態においても、被測定物2の大きさに応じて密閉空間内の容積を3段階で調整するように構成していたが、さらに多段階に調整できるようにすることも可能である。そのためには、第1実施形態においては台座6a〜6cを、第2実施形態においては容器231a〜231cの種類をさらに増やすようにすれば良く、こうすることでより幅広い体積の被測定物2を精度良く測定することが可能となる。
【0084】
また、上述の実施形態においては、使用する台座6a〜6cまたは容器231a〜231cの種類を測定者が入力部70を通じて入力することで、対応するデータが体積決定部74に読み込まれて計算がされるようにしていたが、台座6a〜6cまたは容器231a〜231cの種類を自動的に特定するためのセンサを有しており、当該センサからの信号によって、自動的に対応するデータを選択して体積決定部74によって計算が行われるように構成しても良い。
【0085】
さらには、複数の台座6a〜6cの体積データおよび容器231a〜231c内容積データはあらかじめ記憶させておかなくても、別途測定者が入力部70を通じて入力するなどして必要なデータを体積決定部74に与えるようにすれば、上記と同様に精度良く体積計算を行わせることも可能である。このようにすることで、台座体積データ記憶部80または容器内容積データ記憶部280にデータが記憶されている台座や容器だけではなく、任意の形状の台座や容器をその都度使用することにより測定を行うことも可能である。
【0086】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0087】
1…体積測定装置
2…被測定物
3…密閉空間形成手段
4…容積変化手段
5…圧力測定手段
6、6a〜6c…台座
11…機器部
12…制御部
31…容器
32…ベース(閉止部材)
33…シール部材
41…シリンダ
42…モータ
43…シリンダ用配管
51…圧力計
52…圧力計用配管
231a〜231c…容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物を内部に収めた状態で密閉空間を形成することが可能な密閉空間形成手段と、
前記密閉空間の容積を変化させる容積変化手段と、
前記密閉空間内の気体の圧力を測定する圧力測定手段と、
前記容積変化手段による前記密閉空間の容積変化の前後で前記圧力測定手段によって得られる圧力測定値を基にして前記被測定物の体積値を決定する体積決定部とを備えた体積測定装置であって、
前記密閉空間の内部で前記被測定物を載置するための大きさの異なる複数の台座を具備しているとともに、
前記大きさの異なる複数の台座の各々の体積データを記憶しておく台座体積データ記憶部を備えており、
前記体積決定部が前記被測定物の大きさに応じて前記大きさの異なる台座の中から選択して使用する台座に対応した体積データを前記体積データ記憶部より読み出して、
前記圧力測定手段によって得られる圧力測定値に加えて前記選択して使用する台座に対応した体積データを基にして前記被測定物の体積値を決定するように構成されていることを特徴とする体積測定装置。
【請求項2】
被測定物を内部に収めた状態で密閉空間を形成することが可能な密閉空間形成手段と、
前記密閉空間の容積を変化させる容積変化手段と、
前記密閉空間内の気体の圧力を測定する圧力測定手段と、
前記容積変化手段による前記密閉空間の容積変化の前後で前記圧力測定手段によって得られる圧力測定値を基にして前記被測定物の体積値を決定する体積決定部とを備えた体積測定装置であって、
前記密閉空間形成手段が開口部を形成された大きさの異なる複数の容器と、前記開口部をシール部材を介して閉止する閉止部材とを具備するものであり、
前記大きさの異なる複数の容器の各々の内容積データを記憶しておく容器内容積データ記憶部を備えており、
前記体積決定部が前記被測定物の大きさに応じて前記大きさの異なる容器の中から選択して使用する容器に対応した内容積データを前記容器内容積データ記憶部より読み出して、前記圧力測定手段によって得られる圧力測定値に加えて前記選択して使用する容器に対応した内容積データを基にして前記被測定物の体積値を決定するように
構成されていることを特徴とする体積測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−36753(P2013−36753A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170377(P2011−170377)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)