説明

体表面用貼付材

【課題】 皮膚への密着性及び追従性が良好で、貼付時に適度な粘着性及び透湿性を示し、且つ剥離時に皮膚刺激を与えず、基材と粘着剤層とが剥離し難い体表面用貼付材を、安価に提供する。
【解決手段】 ポリエステルエラストマーを主成分とする基材とその少なくとも一方の面に形成された付加反応型シリコーンを含有してなる粘着剤層とからなる体表面用貼付材。ポリエステルエラストマーが、ポリエーテル・ポリエステルブロック共重合体及び/又はポリエステル・ポリエステルブロック共重合体を主成分とするものであることが好ましい。粘着剤層の付加反応型シリコーンがビニル基置換ポリジメチルシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの付加反応物を含有してなることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体表面用貼付材に関する。更に詳しくは、医療分野において医療材料の皮膚への固定、皮膚や傷の保護又は治療等に用いる体表面用貼付材に関する。また、本発明の体表面用貼付材は、家庭用、スポーツ用、美容用等として、皮膚やその他の体表面に貼付して使用することが可能なものである。
【背景技術】
【0002】
疾患の治療に用いるチューブ、ガーゼ、包帯等の医療材料の体表面への固定、傷や皮膚等の治療や保護、美容等のために、シート状又はロール状の貼付材が使用されている。
この貼付材は、基材とその基材の表面を被覆する粘着剤とから構成されており、皮膚の凹凸や伸展に追従できる柔軟性及び伸縮性を有することが必要で、更には、発汗や不感蒸泄等の皮膚生理機能を阻害しないことが要求される。
【0003】
このような要求性能を満足させるべく、これまで、粘着剤及び基材について種々の検討がなされている。
粘着剤の種類としては、アクリル系やゴム系の粘着剤が多く使用されている。しかしながら、これらの粘着剤は、皮膚等の被着体に対する粘着力が高すぎて剥離時に皮膚角層が過度に剥離されたり、毛が引っ張られたりして、痛みや不快感を与える場合があった。
これに対して、粘着剤としてシリコーン系粘着剤を使用する貼付材も知られている。シリコーン系粘着剤は、皮膚への高い密着性並びに貼付時の適度な粘着性及び透湿性を示し、剥離時の皮膚に対する刺激や不快感をアクリル系やゴム系の粘着剤よりも少なくすることができる。このため、処置の必要性や清潔性維持のために皮膚の同一部位に複数回貼付することが多い医療用や家庭用の貼付材の粘着剤としては、シリコーン系粘着剤は好適な粘着剤と考えられる。
【0004】
例えば、特許文献1には、ポリウレタンフィルム表面にオルガノポリシロキサン樹脂及び少なくとも一種のアルキルアリールポリシロキサン生ゴムを含有する混合物の相互縮合生成物からなる粘着剤層を形成した極薄感圧粘着テープが開示されている。この粘着テープは、伸縮性及び通気性を有し、耐寒性、耐水性、耐熱性等に優れていると記載されている。
しかしながら、本発明者らの検討によれば、この粘着テープは、粘着剤の種類によっては、粘着剤層が基材に十分接着しない場合があり、皮膚等の被着体から貼付材を剥離する際に、被着体表面に粘着剤が残ってしまうことがあった。
【0005】
他方、特許文献2には、外傷に向ける面を有するシリコーンゲルシートを備えた外科用包帯であって、このシートの他方の表面にシリコーンエラストマーフィルムを積層してなる外科用包帯が開示されている。
この外科用包帯においては、ゲルシート及びエラストマーフィルムが同種の化合物から成ることから、両者間の接着性は、良好である。
しかしながら、処置や清潔のために、適宜廃棄更新する必要性が高い医療用や家庭用の貼付材の粘着剤としては、シリコーンエラストマーフィルムは、安価とは言い難い。
【0006】
【特許文献1】特開昭62−176839号公報
【特許文献2】特開平1−34370号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、皮膚への密着性及び追従性が良好で、貼付時に適度な粘着性及び透湿性を示し、且つ剥離時に皮膚刺激を与えず、基材と粘着剤層とが剥離し難い体表面用貼付材を、安価に提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意研究を進めた結果、特定の基材に特定のポリマーからなる粘着剤層を形成すればよいことを見出し、この知見に基いて本発明を完成するに至った。
かくして本発明によれば、ポリエステルエラストマーを主成分とする基材とその少なくとも一方の面に形成された付加反応型シリコーンを含有してなる粘着剤層とからなる体表面用貼付材が提供される。
本発明の体表面用貼付材において、ポリエステルエラストマーが、ポリエーテル・ポリエステルブロック共重合体及び/又はポリエステル・ポリエステルブロック共重合体を主成分とするものであることが好ましい。
本発明の体表面用貼付材において、ポリエステルエラストマーを主成分とする基材は、ポリエステルエラストマーフィルムであってもよく、ポリエステルエラストマーフィルムと他の材料との積層基材であってもよい。
本発明の体表面用貼付材において、ポリエステルエラストマーを主成分とする基材が液体不透過性であることが好ましい。
本発明の体表面用貼付材において、粘着剤層に含有される付加反応型シリコーンがビニル基置換ポリジメチルシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの付加反応物を含有してなることが好ましい。
【0009】
本発明の体表面用貼付材において、粘着剤層中の付加反応型シリコーン含有量が20〜100重量%であることが好ましい。
本発明の体表面用貼付材において、粘着剤層は薬剤を含有していてもよい。
本発明の体表面用貼付材において、好適には、粘着剤層の表面硬度(A)は1以下である。
本発明の体表面用貼付材は、好適には、40〜1,500%の伸び率を有する。
本発明の体表面用貼付材は、好適には、1.0〜10.0N/25mmの40%変位時引張荷重を有する。
本発明の体表面用貼付材は、好適には、300g/m・24時間以上の透湿度を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の体表面用貼付材は、皮膚等の体表面に対する密着性及び追従性に優れ、更に貼付部位から剥離する際に刺激や不快感を与えず、また、安価であるので、体表面の貼付材として非常に好適である。また、基材と粘着剤層との接着性が良く基材と粘着剤層とが剥離し難いため、貼付材を被着体から除去した後に被着体に粘着剤層が残留することがない。
また、本発明で使用する粘着剤は、長期間貼付しても刺激が少ないため、本発明の体表面用貼付材は、特に、薬剤徐放性貼付材として好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】

本発明の体表面用貼付材は、ポリエステルエラストマーを主成分とする基材とその少なくとも一方の面に形成された付加反応型シリコーンを含有する粘着剤層とからなることを特徴とする。
【0012】
基材は、ポリエステルエラストマーを主成分とすることが必要である。
ポリエステルエラストマーは、特に限定されないが、ポリエーテル及び/又はポリエステルをソフトセグメントとし、結晶性を有するポリエステルをハードセグメントとするブロック共重合体を好適に使用できる。中でも、ポリエーテル・ポリエステルブロック共重合体及び/又はポリエステル・ポリエステルブロック共重合体を主成分とする共重合体が好適である。
【0013】
ポリエステルエラストマーのソフトセグメントを構成するポリエーテルは、特に限定されないが、その具体例としては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシトリメチレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール及びこれらの共重合体等のポリオキシアルキレングリコールを挙げることができる。
【0014】
また、ポリエステルエラストマーのソフトセグメントを構成するポリエステルも、特に限定されないが、その具体例としては、低結晶ないしは非晶性のもの、例えば、ジカルボン酸とジオールとから構成されるポリエステルや、ヒドロキシカルボン酸誘導体から構成されるポリエステルを挙げることができる。
ジカルボン酸は、脂肪族ジカルボン酸でも芳香族ジカルボン酸でもよく、その具体例としては、コハク酸、アジピン酸、スべリン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、ダイマー酸、シクロヘキサンジカルボン酸、イソフタル酸等が挙げられる。
【0015】
ジオールは、特に限定されず、その具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3−ジメチル−1,5−ペンタンジオール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、ドデカメチレングリコール等の脂肪族ジオールを挙げることができるが、芳香族ジオールであってもよい。
ヒドロキシカルボン酸誘導体の具体例としては、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトン、乳酸、グリコール酸等が挙げられる。
【0016】
ポリエステルエラストマーのハードセグメントを構成するポリエステルは、特に限定されないが、そのハードセグメント単独でポリマーを構成した際の融点が200℃以上、ガラス転移温度が90℃以下、ΔTcgが80℃以下であることが耐薬品性、耐溶剤性等を良好とする上で好ましい。
ポリエステルの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンシクロヘキサンジカルボキシレートが挙げられる。中でもテレフタル酸残基を有しているものが、良好な耐久性を発揮するので好ましい。
【0017】

ポリエステルエラストマーにおけるソフトセグメントとハードセグメントとの比率は、ソフトセグメントとハードセグメントとの合計量に対して、ソフトセグメントが50〜90重量%であり、ハードセグメントが50〜10重量%であることが好ましい。ソフトセグメントの比率が50重量%より小さいと基材の伸縮性が低下する恐れがあり、90重量%より高いと基材の耐久性が低下する恐れがある。
基材中のポリエステルエラストマーの含有量は、60〜100重量%であることが好ましく、75〜100重量%であることが更に好ましい。
【0018】
ポリエステルエラストマーを主成分とする基材には、その他の合成樹脂材料を添加してもよい。
その他の合成樹脂材料の具体例としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン及びオレフィン系熱可塑性エラストマー;エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン・メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン・メチルメタクリレート共重合体(EMMA)、エチレン・メタクリル酸重合体(EMAA)、エチレン・アクリル酸共重合体(EAA)等のオレフィン系共重合体;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド;ポリスチレン及びスチレン系熱可塑性エラストマー;シリコーン;等を挙げることができる。これらの材料は、単一で使用してもよく、二種類以上を混合して使用してもよい。
【0019】
また、ポリエステルエラストマーを主成分とする基材に、酸化防止剤、帯電防止剤、無機充填剤、滑剤、顔料、染料等を本発明の目的を損なわない程度において添加することができる。
【0020】
本発明で使用する基材の形状は、特に限定されないが、フィルム状又はシート状であることが好ましい。
ポリエステルエラストマーを主成分とする基材は、ポリエステルエラストマーフィルムであってもよく、ポリエステルエラストマーフィルムと他の材料との積層体であってもよい。基材としてフィルムを使用すると、塗工厚を制御し易いので好ましい。
また、本発明で使用する基材は、ポリエステルエラストマー布帛単独であってもよい。布帛としては、不織布、編布及び織布のいずれでもよいが、不織布が好ましい。
【0021】
積層体を構成する他の材料としては、ポリエステルエラストマーフィルム以外のフィルム、布帛、発泡シート等が挙げられる。
ポリエステルエラストマーフィルム以外のフィルムとしては、エーテル系ポリウレタンフィルム、エステル系のポリウレタンフィルム、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体やエチレン・メチルアクリレート共重合体等のオレフィン系共重合体フィルム等が挙げられる。 布帛としては、ポリオレフィン系繊維、ポリアミド系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリウレタン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維等から形成した不織布、編布、又は織布が挙げられる。

発泡シートとしては、ポリウレタン、ポリオレフィン、天然又は合成ゴム、アクリル等から形成した独立気泡又は連続気泡の発泡シートが挙げられる。
ポリエステルエラストマーフィルムを含む積層基材としては、ポリエステルエラストマーフィルムと布帛との積層基材が好ましい。とりわけ、粘着剤層と反対側の表面に布帛を配置するように貼付材を構成すれば、貼付中に肌触りの良い貼付材が得られる。
【0022】
基材は液体不透過性であることが好ましい。液体不透過性の基材を使用することにより、硬化前の粘度が低い付加反応型シリコーンを使用する場合でも、塗工面の反対側に付加反応型シリコーンが滲みだしてしまうことを防ぐことができる。
【0023】
本発明で使用する基材は、厚さが15〜1,000μmであることが好ましい。ポリエステルエラストマーフィルムを単独で用いる場合は、厚さは15〜150μmが好ましく、20〜100μmが更に好ましい。
【0024】
本発明の体表面用貼付材に使用する基材は、40〜1,500%の伸び率を有することが好ましい。基材の伸び率が上記下限未満であると、基材が皮膚の伸展に追従し難くなり貼付中に違和感が生じる恐れがあり、また外部や皮膚からの応力に対する緩衝性も低下する恐れがある。他方、基材の伸び率が前記上限より大きいと、使用中に基材に皺やよれが発生し易くなる恐れがある。
【0025】
本発明の体表面用貼付材に使用する基材は、40%変位時の引張荷重が10.0N/25mm以下であることが好ましい。40%変位時の引張荷重が10.0N/25mm以下であることにより、基材は、皮膚の伸展によく追従し、皮膚への貼付中に違和感や物理的刺激を与えることがない。
【0026】
本発明の体表面用貼付材に使用する基材は、10〜150g/mの目付けを有するものが好ましく、10〜100g/mの目付けを有するものが更に好ましい。目付けが10g/mより低いと、基材の強度が十分でなく、使用時に繰り返しの摩擦によって破れる可能性がある。他方、目付けが150g/mより高いと、嵩高になり皮膚に貼付したときに違和感が生じ、曲面部位への追従性が悪くなる可能性がある。
また、基材は、皮膚の生理機能を妨げないように、透湿性及び伸縮性のあるものが好ましい。
【0027】
本発明の体表面用貼付材は、基材の少なくとも一方の面に、付加反応型シリコーンを含有してなる粘着剤層を有する。付加反応型シリコーンを含有してなる粘着剤層は、付加反応型シリコーンからなる粘着剤を含有してなる粘着剤層である。
本発明の体表面用貼付材を製造するに際して、基材上に形成した粘着剤を架橋させる必要があるが、付加反応型シリコーンは、架橋のための反応装置として開放型及び密閉型のいずれもが使用でき、また、常温硬化及び加熱硬化のいずれもが可能であり、更に反応後に副生成物が発生しないので医療用として特に有用である。
シリコーンには、付加反応型のほかに、過酸化反応型のもの及び縮合反応型のものがあるが、過酸化反応型のものは、架橋点となるような官能基が不要であるメリットはあるものの、反応性が乏しいため等モル以上の架橋剤添加を要したり、加圧、密閉系の反応装置を要したりするデメリットがある。一方、縮合反応型のものは、常温で反応が進行し、特別な反応装置は不要であるものの、反応後に皮膚刺激のリスクを高めると考えられるアルコール類やカルボン酸類が副生成物として発生してしまうので、医療用として好ましくない。
【0028】
本発明において使用する付加反応型シリコーンは、ビニル基置換ポリジメチルシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの付加反応物であることが好ましい。
ビニル基置換ポリジメチルシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの付加反応は、ビニル基置換ポリジメチルシロキサンのビニルシリル基(Si−CH=CH)とオルガノハイドロジェンポリシロキサンのヒドロシリル基(Si−H)との架橋反応であり、好ましくは、白金化合物が反応触媒として用いられる。
本発明で使用する付加反応型シリコーンは、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの量や、オルガノハイドロジェンポリシロキサン分子内のヒドロシリル基(Si−H)の量を変化させることによって、架橋密度を調整し、粘着剤層の硬度や粘弾性を容易に調整することができる。
【0029】
粘着剤層中の付加反応型シリコーンの含有量は、好ましくは20〜100重量%、より好ましくは50〜100重量%、特に好ましくは80〜100重量%である。
【0030】
また、本発明で使用する粘着剤は、付加反応型シリコーンのほかに、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤等の付加反応型シリコーン以外の粘着剤成分を含有していてもよい。
【0031】
また、本発明の体表面用貼付材において、粘着剤層は、可塑剤、充填剤等を含有していてもよい。特に、低分子量ジメチルポリシロキサン等のシリコーンオイル、シリカ等を含有しているとき、粘着剤層の硬度や粘弾性の調整が容易である。
更に、粘着剤層には、薬剤、界面活性剤、粉体、吸水性高分子、pH調整剤、防腐剤、抗菌剤、着色剤等のその他の調整剤を本発明の目的を損なわない程度において適宜配合することができる。
薬剤としては、保湿、老化防止、美白等の目的で皮膚の生理機能を調整する物質や、傷の治癒を促進する物質等を含むものを使用することができる。その具体例としては、ヒアルロン酸ナトリウム、アミノ酸、加水分解ペプチド、尿素、セラミド、ビタミン類、コエンザイムQ10、大豆イソフラボン、ポリフェノール等を挙げることができる。
【0032】
本発明の体表面用貼付材において、基材の両面に付加反応型シリコーンを含有してなる粘着剤層を形成してもよい。両面に粘着剤層を設けた体表面用貼付材は、例えば、カテーテル等のチューブを皮膚上に固定する場合に利用することができる。この場合、粘着剤層の一方の面を皮膚に貼付し、他方の面にチューブを載せ、このチューブの上から片面に粘着剤層を設けた貼付材を被覆すれば、チューブを強固に固定することができる。
【0033】
基材の表面に粘着剤層を形成するには、付加反応型シリコーンからなる粘着剤及び所望により他の成分を含有する粘着剤(組成物)を基材に直接塗工し、これを硬化させればよい。
塗工は、付加反応型シリコーンを含有する粘着剤(組成物)をそのまま塗工してもよく、ヘキサン等の適当な溶媒で希釈して塗工してもよい。
粘着剤層の塗工に際し、コンマダイレクト、ナイフコーター、グラビアダイレクト等の公知の塗工方式を利用して、塗工パターンや厚さを制御することができる。
【0034】
また、粘着剤層は、付加反応型シリコーンを含有する粘着剤(組成物)をシリコーン剥離紙等の剥離紙に塗工して、これが硬化する前に基材に転写することによって形成してもよい。
【0035】
粘着剤層の塗工パターンとしては、基材の表面を部分的に被覆してもよいし、全面を被覆してもよく、フィルム状、格子状、ネット状、粒状、唐草模様等の任意の形態を選択できる。
【0036】
粘着剤層は、その厚さが10〜2,000μmであることが好ましく、10〜900μmであることが更に好ましい。粘着剤層の厚さがこの範囲内にあることにより、被着体であるポリエステルエラストマーを主成分とする基材に対する良好な密着性及び追従性が得られる。
【0037】
本発明の体表面用貼付材において、粘着剤層の表面硬度(A)は、1以下であることが好ましい。粘着剤層の表面硬度(A)が1以下であることにより、体表面用貼付材が皮膚の伸展によく追従し、皮膚への貼付中に違和感や物理的刺激を与えることがない。また、体表面用貼付材の剥離時に痛みや不快感が生じることがない。
【0038】
本発明の体表面用貼付材においては、基材と付加反応型シリコーンを含有してなる粘着剤層との接着性を向上させるために、基材に表面処理又はプライマー処理を施すことができる。
基材の表面処理としては、例えば、エンボス加工、サンドマット加工、コロナ放電処理、プラズマ処理、アルカリ処理等が挙げられる。
プライマーとしては、ビニル基置換ポリジメチルシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンと白金の化合物又は白金錯化合物等の反応触媒とを主成分とする組成物を好適に使用できる。このプライマー組成物は、好ましくは硬化後に非粘着性となるものであり、そのままで直接基材に塗工することができる。このプライマー組成物は、ヘキサン等の溶媒で希釈して塗工すると、好適な厚さの層を得やすい。プライマーの層は、厚さが0.05〜20μmであることが好ましく、0.05〜10μmであることが更に好ましい。
【0039】
本発明の体表面用貼付材は、伸び率が40〜1,500%であることが好ましい。この伸び率が上記下限以上であると、皮膚の伸展によく追従し、貼付中に違和感が生じることがなく、また、外部や皮膚からの応力に対する緩衝性が良好に保たれる。更に、伸び率が上記上限以下であると、元の形状に容易に復元するので、体表面用貼付材が貼付位置からずれることがなく、体表面用貼付材に変形が生じることがない。
【0040】
本発明の体表面用貼付材は、40%変位時の引張荷重が10.0N/25mm以下であることが好ましく、1.0〜10.0N/25mmの範囲であることが特に好ましい。40%変位時の引張荷重が10.0N/25mm以下にあることにより、本発明の体表面用貼付材は、皮膚の伸展によく追従し、皮膚への貼付中に違和感や物理的刺激を与えることがない。1.0N/25mm未満であると、体表面用貼付材は皺がよりやすくなり、貼付時に取扱いにくくなる場合がある。
【0041】
本発明の体表面用貼付材は、300g/m・24時間以上の透湿度を有することが好ましい。透湿度がこの範囲内にあることにより、皮膚の生理機能が好適に保持される。
【0042】
本発明の体表面用貼付材は、0.05〜1.00N/25mmの粘着力を有することが好ましい。粘着力がこの範囲内にあることにより、剥離時に角層の過度な剥離や、毛の引張り等を引き起こさず、痛みや不快感を与えることがない。
【0043】
本発明の体表面用貼付材の形態は、特に限定されず、具体的には、三角形、四角形、菱形等の多角形や、円形、楕円形、又はこれらの形状を適宜組み合わせたシート状の形態や、特定の方向に連続的に製造したロール状の形態が利用できる。
また、所望により、粘着剤層を保護するために、粘着剤層の表面に剥離可能な保護層を設けてもよい。保護層としては、ポリエステル、ポリエチレンやポリプロピレン等のフィルムや、フッ素又はフッ素化合物等による剥離処理をしたフィルムや紙を使用できる。また、これらの保護フィルムにエンボス等の凹凸を設けても良い。
また、保護層を設けなくとも、連続的に製造した貼付材の粘着剤層を基材背面(基材の粘着剤層が存在する側とは反対側の面)に剥離可能に仮着し、ロール状の形態にすることもできる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、各例中の部及び%は特に断りのない限り、質量基準である。また、体表面用貼付材の各特性は、以下の方法により測定した。
【0045】
〔基材の液体不透過性〕 直径1.5cmのシリンダーに水を10g入れ、シリンダーの口を覆うように、基材をシリンダーの口に固定する。シリンダーを逆さまにして、1分間垂直状態で静置する。1分経過後にシリンダー内の水が基材を通過せず、基材の表面に水が滲み出ない場合は「不透過」とし、水が基材を通過して基材の表面に水が滲み出る場合は「透過」とする。
【0046】
〔表面硬度(A)〕
粘着剤層を形成するための粘着剤(組成物)から、厚さ6.0mm以上の試験片を作成し、JIS K 6253−1997「デュロメータ硬さ試験」に準じ、タイプAデュロメーターを使用して測定する。
【0047】
〔伸び率〕
体表面用貼付材から幅25mm×長さ100mmの試験片を作成し、引張試験機(島津製作所社製、商品名「オートグラフAG−I」)のつかみに、つかみ間隔50mmで試験片を取り付ける。その後、引張速度100mm/minで引張り、切断時の伸びE(mm)を測定し、次式により伸び率を算出する。
S=(E/L)×100
S:伸び率(%)、E:切断時の伸び(mm)、L:つかみ間隔(=50mm)
【0048】
〔40%変位時の引張荷重〕
JIS Z 0237「引張強さ及び伸び」に準じて測定したときの体表面用貼付材の40%変位時の荷重(N/25mm)を測定する。
【0049】
〔透湿度〕
JIS L 1099−1993 A−2「ウォーター法」に準じて測定したときの体表面用貼付材の透湿度を測定する。なお、測定の際は、体表面用貼付材の粘着剤層を透湿カップの水側に向けて設置する。
【0050】
〔粘着力〕
JIS Z 0237−2000「180度引きはがし粘着力」に準じて測定したときの体表面用貼付材の粘着力を測定する。被着体としては、フェノール−アルデヒド樹脂板を使用する。
【0051】
〔基材と粘着剤層の剥がれ難さ〕
体表面用貼付材から、幅25mm、長さ75mmの大きさの試験片を作成する。平滑面としてフェノール−アルデヒド樹脂板、粗面として上質紙をそれぞれ被着体として選択し、試験片をこの2種類の被着体に貼付し5分間室温で放置する。その後、試験片を被着体から剥離して、基材と粘着剤層との剥がれ難さを次の3段階で評価する。
○:平滑面と粗面のいずれにおいても基材から粘着剤層が剥がれない。
△:平滑面では基材から粘着剤層が剥がれないが、粗面では粘着剤層が基材から剥がれる。
×:平滑面と粗面のいずれにおいても粘着剤層が基材から剥がれる。
【0052】
〔実施例1〕 ビニル基置換ポリジメチルシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン、補強用シリカ及び白金触媒を主体とする2成分型シリコーン(ダウコーニング社製、商品名「DOW CORNING Class VI Elastomer(C6−540)」)の2液を混合して粘着剤を得た。得られた粘着剤を、目付け70g/mの、ポリオキシアルキレングリコールを主成分とするソフトセグメントとポリブチレンテレフタレートを主成分とするハードセグメントとからなるポリエーテル・ポリエステルブロック共重合体から構成されるポリエステルエラストマーフィルムとポリオキシアルキレングリコールを主成分とするソフトセグメントとポリブチレンテレフタレートを主成分とするハードセグメントとからなるポリエーテル・ポリエステルブロック共重合体から構成されるポリエステルエラストマー不織布との積層基材のフィルム側に直接塗工し、120℃で5分間加熱して硬化させ、厚さ3μmのプライマー層を形成した。
次いで、ビニル基置換ポリジメチルシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン及び白金触媒を主体とする2成分型シリコーン(ダウコーニング社製、商品名「DOW CORNING 7−9800」)の2液を混合した。得られた混合液を、プライマー層の表面に直接塗工し、120℃で5分間加熱して硬化させ、厚さ50μmの粘着剤層を形成し、体表面用貼付材を得た。この体表面用貼付材について、各特性を評価した結果を表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
〔実施例2〕
ビニル基置換ポリジメチルシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン及び白金触媒を主体とする2成分型シリコーン(ダウコーニング社製、商品名「DOW CORNING 7−9800」)の2液を混合した。得られた混合液に、混合液の全重量に対し0.05重量%のセラミドを添加混合して粘着剤を得た。得られた粘着剤を、目付け70g/mの、ポリオキシアルキレングリコールを主成分とするソフトセグメントとポリブチレンテレフタレートを主成分とするハードセグメントとからなるポリエーテル・ポリエステルブロック共重合体から構成されるポリエステルエラストマーフィルムとポリオキシアルキレングリコールを主成分とするソフトセグメントとポリブチレンテレフタレートを主成分とするハードセグメントとからなるポリエーテル・ポリエステルブロック共重合体から構成されるポリエステルエラストマー不織布との積層基材の不織布側に直接塗工し、120℃で5分間加熱して硬化させ、厚さ50μmの粘着剤層を形成し、体表面用貼付材を得た。この体表面用貼付材について、各特性を評価した結果を表1に示す。
【0055】
〔実施例3〕
基材を目付け20g/mの、ポリオキシアルキレングリコールを主成分とするソフトセグメントとポリブチレンテレフタレートを主成分とするハードセグメントとからなるポリエーテル・ポリエステルブロック共重合体から構成されるポリエステルエラストマーフィルムに変える以外は、実施例1と同様にして体表面用貼付材を得た。この体表面用貼付材について、各特性を評価した結果を表1に示す。
【0056】
〔実施例4〕
ビニル基置換ポリジメチルシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン及び白金触媒を主体とする2成分型シリコーン(ダウコーニング社製、商品名「DOW CORNING 7−9800」)の2液を混合して粘着剤を得た。得られた粘着剤を、シリコーン剥離紙上に塗工し、粘着剤が硬化する前に、目付け50g/mの、ポリオキシアルキレングリコールを主成分とするソフトセグメントとポリブチレンテレフタレートを主成分とするハードセグメントとからなるポリエーテル・ポリエステルブロック共重合体から構成されるポリエステルエラストマー不織布に転写し、120℃で5分間加熱して硬化させ、厚さ50μmの粘着剤層を形成し、体表面用貼付材を得た。この体表面用貼付材について、各特性を評価した結果を表1に示す。
【0057】
〔実施例5〕
目付け70g/mの、ポリエステル・ポリエステルブロック共重合体から構成されるポリエステルエラストマーフィルムとポリエステル・ポリエステルブロック共重合体から構成されるポリエステルエラストマー不織布との積層基材のフィルム側に、実施例1と同様のプライマー層を形成した。
ビニル基置換ポリジメチルシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン及び白金触媒を主体とする2成分型シリコーン(ダウコーニング社製、商品名「DOW CORNING 7−9800」)の2液を混合して得られた混合液に、更に混合液の全重量に対し液状イソプレンゴムを5重量%添加混合して粘着剤を得た。この粘着剤をプライマー層の表面に直接塗工し、120℃で5分間加熱して硬化させ、厚さ50μmの粘着剤層を形成し、体表面用貼付材を得た。この体表面用貼付材について、各特性を評価した結果を表1に示す。
【0058】
〔比較例1〕
実施例1と同様にして、ビニル基置換ポリジメチルシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン、補強用シリカ及び白金触媒を主体とする2成分型シリコーン(ダウコーニング社製、商品名「DOW CORNING Class VI Elastomer(C6−540)」)の2液を混合した。得られた混合液を、目付け21g/mのポリウレタンフィルムに直接塗工し、120℃で5分間加熱して硬化させ、厚さ3μmのプライマー層を形成した。
次いで、実施例1と同様にして調製したビニル基置換ポリジメチルシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン及び白金触媒を主体とする2成分型シリコーン(ダウコーニング社製、商品名「DOW CORNING 7−9800」)の2液混合液を、プライマー層の表面に塗工し、120℃で5分間加熱して硬化させ、厚さ50μmの粘着剤層を形成し、体表面用貼付材を得た。この体表面用貼付材について、各特性を評価した結果を表1に示す。
【0059】
〔比較例2〕
プライマー層を形成しなかったほかは、比較例1と同様の方法で体表面用貼付材を得た。この体表面用貼付材について、各特性を評価した結果を表1に示す。
【0060】
表1の結果から、次のことが言える。
基材としてポリウレタンフィルムを用い且つシリコーンプライマー層を設けた体表面用貼付材(比較例1)は、これを平滑面被着体に貼付したときは粘着剤層が基材から剥がれないものの、粗面被着体に貼付したときは粘着剤層が基材から容易に剥がれしまうことが分かる。
基材としてポリウレタンフィルムを用い且つシリコーンプライマー層を設けなかった体表面用貼付材(比較例2)の場合は、平滑面被着体に貼付したときでさえも粘着剤層が基材から剥がれてしまうことが分かる。
また、これらの比較例において、40%変位時の引張荷重が小さい。これから、これらの体表面用貼付材はカールしやすく取り扱いにくいことが分かる。
【0061】
これに対して、本発明実施例の体表面用貼付材は、被着体として粗面のものを用いても平滑面のものを用いても、基材と粘着剤層との剥離がないことが分かる。
また、全ての実施例において、40%変位時の引張荷重が比較例に比べて大きい。これから、本発明の体表面用貼付材は皮膚の伸展によく追従し、且つ貼付時に皺やカールが発生しにくく、取扱い易いことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルエラストマーを主成分とする基材とその少なくとも一方の面に形成された付加反応型シリコーンを含有してなる粘着剤層とからなる体表面用貼付材。
【請求項2】
ポリエステルエラストマーが、ポリエーテル・ポリエステルブロック共重合体及び/又はポリエステル・ポリエステルブロック共重合体を主成分とするものである請求項1に記載の体表面用貼付材。
【請求項3】
ポリエステルエラストマーを主成分とする基材がポリエステルエラストマーフィルムであるか又はポリエステルエラストマーフィルムと他の材料との積層基材である請求項1又は2に記載の体表面用貼付材。
【請求項4】
ポリエステルエラストマーを主成分とする基材が液体不透過性である請求項1〜3のいずれかに記載の体表面用貼付材。
【請求項5】
粘着剤層に含有される付加反応型シリコーンがビニル基置換ポリジメチルシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの付加反応物を含有してなるものである請求項1〜4のいずれか1項に記載の体表面用貼付材。
【請求項6】
粘着剤層中の付加反応型シリコーン含有量が20〜100重量%である請求項1〜5のいずれか1項に記載の体表面用貼付材。
【請求項7】
粘着剤層が薬剤を含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の体表面用貼付材。
【請求項8】
粘着剤層の表面硬度(A)が1以下である請求項1〜7のいずれか1項に記載の体表面用貼付材。
【請求項9】
伸び率が40〜1,500%である請求項1〜8のいずれか1項に記載の体表面用貼付材。
【請求項10】
40%変位時引張荷重が1.0〜10.0N/25mmである請求項1〜9のいずれか1項に記載の体表面用貼付材。
【請求項11】
透湿度が300g/m・24時間以上である請求項1〜10のいずれか1項に記載の体表面用貼付材。

【公開番号】特開2007−135673(P2007−135673A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−330002(P2005−330002)
【出願日】平成17年11月15日(2005.11.15)
【出願人】(000151380)アルケア株式会社 (88)
【Fターム(参考)】