説明

体部用固定具

【課題】簡単な操作により組み立て、分解することができ、使い捨てに適した廉価な体部用固定具を提案すること。
【解決手段】患者の体動を抑制するため等に用いる体部用固定具1は、強化段ボール製の長方形のベース板2を備えている。放射線治療台10に乗せたベース板2の表面21の矩形凹部22における両側の左側板3、右側板4を起立させ、これらの間に強化段ボール製の矩形の嵌め込み板5を嵌め込む。ベース板2の前側差込溝23、後側差込溝24に、山形に折り曲げた強化段ボール製の膝支持板6の前側縁部61、後側縁部62を差し込み、膝支持板6をベース板2に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線治療、CTスキャナなどによる患部撮影、治療等において、患者あるいは被験者の体動を抑制するため等に用いる体部用固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線治療などにおいては放射線照射中に患者の体動を拘束するために体部用固定具を使用して患者を治療台に固定するようにしている。体部用固定具は、患者の固定位置精度(照射位置精度)の向上、固定位置再現性(照射位置再現性)の向上にも不可欠である。特許文献1には、このような目的のために用いられる位置決め装置が開示されている。
【0003】
ここで、患者の体動拘束用の体部用固定具としては、カーボン製の長方形のベースプレートの表面において、その左右にサイドプレートを取り付けた構成のものが知られている。この場合には、ベースプレートにおける左右のサイドプレートの間に、患者を下側から固定するための下側固定具、例えば、吸引式固定バッグ(商品名、エンジニアリングシステム株式会社製)を敷き、この上に患者を例えば仰臥姿勢で乗せる。吸引式固定バッグは、細かなスチレンビーズが気密性の可撓性プラスチックフィルムからなるバッグに収納され、バッグに空気抜き用の吸引口が取り付けられている。患者を乗せた後に吸引式固定バッグの吸引口から空気を吸引すると、吸引式固定バッグは患者の体型に沿った形状に型取りされ、吸引口を封鎖することにより、型取り状態が維持される。次に、患者の上に熱可塑性樹脂フィルムからなる固定シェル(商品名、エンジニアリングシステム株式会社製)を加熱して柔軟な状態にして被せて締め付け、この状態で、固定シェルの両端を左右のサイドプレートに固定する。固定シェルが患者の体型に沿った形状に型取りされた状態で硬化する。この結果、型取りされた下側の吸引式固定バッグと上側の固定シェルによって患者の体が固定される。このように患者を拘束した状態でベースプレートを放射線治療用の移動式の治療台に乗せて放射線治療などが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05−253311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記構成のベースプレートおよびサイドプレートを備えた体部用固定具、並びに、吸引式固定バッグおよび固定シェルを用いる場合には、患者の体型を型取りした吸引式固定バッグおよび固定シェルを用いて患者が固定されるので、確実に患者の体動を拘束でき、また、そのための操作も容易であるという利点がある。
【0006】
本発明の課題は、この種の体部用固定具を、更に簡単な操作により組み立て・分解を行うことができ、しかも、廉価に構成できるようにすることにある。
【0007】
特に、本発明の課題は、極めて簡単な操作により組み立て・分解を行うことができ、しかも、使い捨てに適した廉価な体部用固定具を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の体部用固定具は次のように構成したことを特徴としている。なお、括弧書きで付した符号は後述の実施の形態における対応部位を示すものであり、理解を容易にするために付したものであり、本発明を実施の形態に限定することを意図したものではない。
【0009】
すなわち、本発明の体部用固定具(1)は、
幅方向よりも前後方向に長い輪郭形状をしたベース板(2)と、
左側板(3)および右側板(4)と、
嵌め込み板(5)とを有しており、
前記ベース板(2)の表面(21)には一定深さの凹部(22)が形成されており、
前記左側板(3)および前記右側板(4)は、前記凹部(22)の底面(22c)に倒れた収納位置(3A、4A)から前記凹部(22)における前記幅方向の左右の内周側面(22a、22b)に沿って起立した起立位置(3B、4B)に立ち上げ可能な状態で、前記ベース板(2)に取り付けられており、
前記嵌め込み板(5)は、前記左側板(3)および前記右側板(4)を前記起立位置(3B、4B)に立ち上げた状態において、これらの間に取外し可能に嵌め込み固定可能であり、
前記嵌め込み板(5)が嵌め込まれた状態において、前記凹部(22)における前記嵌め込み板(5)の前後に、下側固定具位置決め用の前側位置決め用凹部(51)および後側位置決め用凹部(52)が残るように、前記嵌め込み板(5)の前後方向の寸法が設定されており、
前記ベース板(2)の前記表面(21)における前記凹部(22)の後側の部位には、膝部支持板取り付け用の前後方向に一定の間隔を開けた位置に、前側差込溝(23)および後側差込溝(24)が形成されていることを特徴としている。
【0010】
本発明の体部用固定具では、ベース板に取り付けられている左右の左側板および右側板を凹部の底から起立位置に立ち上げ、しかる後に、これらの間に嵌め込み板を嵌め込むことにより、左側板および右側板が起立位置に固定された状態になる。使用後においては、嵌め込み板を外すことによって、左側板、右側板を収納位置に戻すことができる。よって、ベース板に左側板、右側板をボルト・ナットなどの固定用金具を用いて固定する操作、これらを取り外す操作が不要となり、嵌め込み板を嵌め込むだけでよいので、組み立て作業、分解作業が極めて簡単になる。また、固定用金具が不要になるので廉価に構成できる。
【0011】
さらに、嵌め込み板を嵌め込んだ状態において、その前後には凹部の前後の部分が前側位置決め用凹部および後側位置決め用凹部として残る。したがって、この上に、下側固定具、例えば、吸引式固定バッグを敷き、その上に患者を乗せ、吸引式固定バッグから空気を吸引すると、前後の位置決め用凹部が型取りされて、吸引式固定バッグには、これらに対応する位置決め用凸部が形成される。よって、吸引式固定バッグが移動することなくベース板の表面に位置決め固定された状態が形成される。また、型取りした後の吸引式固定バッグをベース板から取り外した後に、再度、取り付ける際の位置決めとしても利用できる。
【0012】
ここで、前記ベース板、前記左側板、前記右側板、および前記嵌め込み板は、それぞれ、段ボール製の板材から形成することが望ましい。例えば、多層化して強化した段ボール素材から形成することが望ましい。このようにすれば、各板材を廉価に製造できるので、使い捨てに適した廉価な体部用固定具を製造することが可能になる。
【0013】
次に、本発明において、仰臥位状態の患者の骨盤部を確実に拘束できるようにするためには、膝支持板(6)を有していることが望ましい。この場合には、膝支持板(6)を、前記前側差込溝(23)に着脱可能に差込固定される前端縁部(61)と、前記後側差込溝(24)に着脱可能に差込固定される後端縁部(62)と、これら前端縁部(61)および後端縁部(62)の間の部位において、これらが接近する方向に折り曲げ可能な折り曲げ線部(63)と、一対の貫通穴(64、65)とを備えた構成とすることができる。前記一対の貫通穴(64、65)は、前記膝支持板(6)における前記折り曲げ線部(63)に沿って一定の間隔を開けた部位において、当該折り曲げ線部(63)を含む領域を切り取る状態に形成しておけばよい。
【0014】
平板状の膝支持板をその折り曲げ線部に沿って山形に折り曲げ、しかる後に、その前端縁部および後端縁部を、ベース板の前側差込溝および後側差込溝に差込固定することにより、膝支持板がベース板に固定された状態になる。この状態では、山形に折り曲げられている尾根の部分の一対の貫通穴が二つに折れ曲がり、患者の左右の膝を支持するための一対の溝が形成される。
【0015】
この構成によれば、膝支持板の取り付け、取り外しを、固定金具などを用いることなく簡単な操作により行うことができると共に、固定金具などが不要であるので廉価に構成できる。
【0016】
また、前記膝支持板も段ボール製の板材から形成すれば、当該部品も廉価に製造でき、使い捨てに適した廉価な体部用固定具の部品として用いるのに適している。
【0017】
一般的には前記ベース板は前後に長い長方形輪郭の板であり、この場合には、ベース板の取り扱いが容易となるように、当該ベース板の前後の四隅には把手部を形成しておくことが望ましい。
【0018】
次に、本発明の体部用固定具キットは、
上記構成の体部用固定具(1)と、
前記体部用固定具(1)に乗せる患者の下に敷いて用いる下側固定具(11)と、
前記体部用固定具(1)に乗せる患者を上側から固定するために用いる上側固定具(12)とを有し、
前記下側固定具(11)は、気密性の可撓性バッグ本体(11a)と、この可撓性バッグ本体(11a)に収納されている合成樹脂製のビーズ(11b)と、前記可撓性バッグ本体(11a)から空気を抜くための封鎖可能な吸引口(11c)とを備えており、
前記ベース板(2)の表面における前記嵌め込み板(5)を配置した前記矩形凹部(22)の部分に前記下側固定具(11)を乗せ、この上に患者(P)を乗せ、この状態で前記吸引口(11c)から空気を抜くことにより、当該患者(P)の型取りを行うことができ、同時に、前記前側位置決め用凹部(51)および前記後側位置決め用凹部(52)によって、当該下側固定具(11)には位置決め用凸部を形成可能であり、
前記上側固定具(12)は、前記左側板(3)および前記右側板(4)に左端縁部および右端縁部を着脱可能に固定可能な熱可塑性樹脂製の可撓性シートからなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明の体部用固定具は、固定金具などを用いることなく、簡単な操作によって、ベース板に、上側固定具取り付け用の左側板および右側板を配置でき、また、下側固定具の位置決め用凹部を形成することができる。よって、廉価な体部用固定具を得ることができる。特に、ベース板、左側板および右側板、嵌め込み板を段ボール素材から製造した場合には、使い捨てに適した廉価な体部用固定具を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を適用した体部用固定具の分解斜視図である。
【図2】(a)〜(f)は、図1の体部用固定具を示す平面図、左側面図、右側面図、正面図、背面図および底面図である。
【図3】(a)〜(d)は、体部用固定具キットに含まれる用具を示す説明図である。
【図4】(a)〜(c)は、図1の体部用固定具の組み立て手順を示す説明図である。
【図5】(a)〜(c)は、組み立てた体部用固定具に患者を固定する作業を示す説明図である。
【図6】吸引式固定バッグの裏面を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図面を参照して本発明を適用した体部用固定具キットの実施の形態を説明する。
【0022】
図1は本実施の形態に係る体部用固定具を示す分解斜視図であり、図2は組み立てた状態の体部用固定具を示す平面図、左側面図、右側面図、正面図、背面図および底面図である。体部用固定具1は、例えば、治療中の患者の体動を抑制するために用いる画像誘導放射線治療用の患者固定具であり、幅方向よりも前後方向に長い長方形輪郭をした一定厚さのベース板2、このベース板2に取り付けられている細長い長方形の左側板3および右側板4、矩形の嵌め込み板5、並びに、膝支持板6を備えている。
【0023】
ベース板2は例えば三層強化段ボール素材から形成されたものである。ベース板2の表面21における前後方向の中程の部位には、一定深さの矩形凹部22が形成されている。矩形凹部22には、その左右の垂直な内周側面22a、22bに沿って、細長い長方形の左側板3および右側板4が取り付けられている。
【0024】
左側板3はその厚さ寸法分だけ、左側の内周側面22aから離れた位置において当該内周側面22aに沿って平行に配置されており、矩形凹部22の底面22cの側に倒れた収納位置3Aから想像線で示すように内周側面22aに押し付けられた状態で垂直に起立した起立位置3Bに起こすことが可能な状態で、ベース板2に取り付けられている。右側板4も同様な状態でベース板2に取り付けられており、矩形凹部22の底面22cの側に倒れた収納位置4Aから想像線で示す垂直に起立した起立位置4Bに起こすことが可能である。これら左側板3および右側板4も強化段ボール素材から形成されている。
【0025】
矩形の嵌め込み板5は、起立させた左側板3および右側板4を起立状態に固定するために用いるものであり、左側板3および右側板4を起立させ、これらの間に上側から嵌め込むことが可能な幅寸法を備えている。また、嵌め込み板5の前後方向の寸法は、矩形凹部22の前後方向の寸法よりも短い。したがって、左側板3、右側板4の間に嵌め込んだ状態において、矩形凹部22の前後には、後述のように、幅方向に延びる一定幅の前側位置決め用凹部および後側位置決め用凹部が残った状態になる。この嵌め込み板5も強化段ボール素材から形成されている。
【0026】
次に、ベース板2の表面21おいて、矩形凹部22よりも後側の部位には、前後方向に一定の間隔を開けて幅方向に直線状に延びる一定幅の前側差込溝23および後側差込溝24が形成されている。これら前側差込溝23、後側差込溝24には、膝支持板6が取外し可能な状態で差込固定できるようになっている。
【0027】
膝支持板6は矩形輪郭の板であり、前側差込溝23に取外し可能に差込固定される前端縁部61と、後側差込溝24に取外し可能に差込固定される後端縁部62と、これら前端縁部61および後端縁部62の間の部位において幅方向に直線状に延びる山折り用の折り曲げ線部63とを備えている。また、膝支持板6には左右一対の円形の貫通穴64、65が形成されており、これらの貫通穴64、65は、膝支持板6における折り曲げ線部63に沿って左右対称の位置に形成されており、当該折り曲げ線部63上に中心が位置する円形の貫通穴である。
【0028】
この構成の膝支持板6は図1において想像線で示すように平板状のものであり、折り曲げ線部63に沿って図1において実線で示すように山折りにして、前後の縁部61、62を前後の差込溝23、24に差込固定することが可能となっている。膝支持板6も強化段ボール素材から形成されている。
【0029】
なお、本例においては、ベース板2における四隅には把手部が形成されている。本例では、ベース板2の四隅に前後方向に長い長円形の把手用貫通穴25〜28が形成されている。これらの貫通穴25〜28に指を掛けてベース板2の移動などを簡単に行うことができるようになっている。貫通穴の代わりに、ベース板2の裏面の四隅に指を掛けることのできる凹部などを形成しておいてもよい。
【0030】
この構成の体部用固定具1は一般に図3に示す各固定用具と一緒に用いられ、これらが体部用固定具キットとして用意される。すなわち、体部用固定具キットには、上記の体部用固定具1と、図3に示す下側固定具11、複数の上側固定具12、滑り止めシート13および複数枚のファスナーテープ14が含まれている。これら以外の部品を含むことも勿論可能である。
【0031】
下側固定具11は、体部用固定具1に乗せる患者の下に敷いて患者を固定するために用いるものであり、本例では、吸引式固定バッグ(商品名)を使用しており、気密性の可撓性バッグ本体11aと、この可撓性バッグ本体に収納されている合成樹脂製のビーズ11bと、可撓性バッグ本体11aから空気を抜くための封鎖可能な吸引口11cとを備えている。可撓性バッグ本体11aは例えばポリウレタンシートであり、ビーズ11bは例えばスチロールビーズである。下側固定具11としては各種のものを用いることができる。例えば、水硬化性樹脂とビーズを利用したモールドケア(商品名、アルケア株式会社製)を用いることができる。また、熱可塑性のシートを患者の下に敷いて成形して用いることもできる。
【0032】
上側固定具12は、体部用固定具1に乗せる患者を上側から固定するために用いるものであり、本例では、固定シェル(商品名)を使用しており、体部用固定具1の左側板3、右側板4にそれぞれファスナーテープ14によって取外し可能な状態で固定される左側固定枠板12aおよび右側固定枠板12bと、これらの間に架け渡されている矩形の多孔シート12cとを備えている。多孔シート12cは、ポリカプロラクトンなどの熱可塑性樹脂製の可撓性シートからなり、加熱して患者の体型に沿った形状となるように成形可能なものである。
【0033】
なお、滑り止めシート13は、ベース板2と、これを乗せる放射線治療台の天面との間に敷いて用いるものである。滑り止めシート13を配置することにより、ベース板2と放射線治療台の天面との間の隙間を微調整することができ、ベース板2をガタ付きなく放射線治療台に設置することができる。
【0034】
(体部用固定具の組み立て手順)
図4は体部用固定具1の組み立て手順を示す説明図である。まず、図4(a)に示すように、放射線治療台10にベース板2を乗せる。次に、図4(b)に示すように、膝支持板6を折り曲げ線部63に沿って山形に折り曲げ、その前側縁部61および後側縁部62を、それぞれ、ベース板2の側の前側差込溝23および後側差込溝24に差し込む。この後は、図4(c)に示すように、ベース板2における左側板3および右側板4を収納位置3A、4Aから起立位置3B、4Bに起こし、これらの間に上側から嵌め込み板5を嵌め込む。これにより、左側板3、右側板4が起立位置に固定される。また、嵌め込み板5は、その前後の縁が矩形凹部22の前後の内周側面から離れた状態に嵌め込まれる。この結果、矩形凹部22の前後には、一定幅の前側位置決め用凹部51、後側位置決め用凹部52が残った状態になる。
【0035】
(患者を固定する作業)
このようにして体部用固定具1を組み立てた後は、図5(a)に示すように、下側固定具11(吸引式固定バッグ)をベース板2における膝支持板6の前側の部分に敷き、ベース板2の表面に押し付ける。次に、図5(b)に示すように、下側固定具11の上に患者Pを乗せる。例えば、仰臥位で乗せて、吸引式固定バッグ11の吸引口11cから空気を吸引して、患者Pの型取りを行う。ここで、ベース板2の側には前側位置決め用凹部51、後側位置決め用凹部52が形成されているので、図6に示すように、下側固定具11の裏面11dには、これらの凹部51、52に対応する前後の位置決め用凸部11e、11fが形成され、下側固定具11が定まった位置に保持される。
【0036】
この後は、図5(c)に示すように、左側板3および右側板4の間に、加熱して柔軟になった状態の上側固定具12(固定シェル)を架け渡して、患者Pの胴部、骨盤を含む下腹部などの患部あるいは治療部位を締め付ける。上側固定具12が固まって、患者Pは体動が拘束された状態になる。このようにして、患者Pが固定された後に、放射線治療などが行われる。
【0037】
(その他の実施の形態)
上記の体部用固定具1は強化段ボール素材から形成されているが、それ以外の素材から形成することも可能である。段ボール素材を用いることにより廉価に製造できるので使い捨てに適した体部用固定具が得られるが、繰り返して使用する場合には、耐久性のある素材、例えば、金属、プラスチックなどの素材から各構成部品を製造すればよい。
【0038】
なお、上記の例は仰臥位による固定の場合であるが、腹臥位による固定も同様に行うことができる。また、膝支持板は、胸部・上腹部(仰臥位)の固定の場合などにおいては使用されず、この代わりに、患者の頭部および両腕を支持するための支持具が取り付けられる。
【符号の説明】
【0039】
1 体部用固定具
2 ベース板
3 左側板
4 右側板
3A、4A 収納位置
3B、4B 起立位置
5 嵌め込み板
6 膝支持板
10 放射線治療台
11 下側固定具
11a 可撓性バッグ本体
11b ビーズ
11c 吸引口
12 上側固定具
12a、12b 固定枠板
12c 多孔シート
13 滑り止めシート
14 ファスナーテープ
21 表面
22 矩形凹部
22a、22b 内周側面
22c 底面
23 前側差込溝
24 後側差込溝
25〜28 把手用貫通穴
51、52 位置決め用凹部
61 前側縁部
62 後側縁部
63 折り曲げ線部
64、65 貫通穴
P 患者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向よりも前後方向に長い輪郭形状をしたベース板(2)と、
左側板(3)および右側板(4)と、
嵌め込み板(5)とを有しており、
前記ベース板(2)の表面(21)には一定深さの凹部(22)が形成されており、
前記左側板(3)および前記右側板(4)は、前記凹部(22)の底面(22c)に倒れた収納位置(3A、4A)から前記凹部(22)における前記幅方向の左右の内周側面(22a、22b)に沿って起立した起立位置(3B、4B)に立ち上げ可能な状態で、前記ベース板(2)に取り付けられており、
前記嵌め込み板(5)は、前記左側板(3)および前記右側板(4)を前記起立位置(3B、4B)に立ち上げた状態において、これらの間に取外し可能に嵌め込み固定可能であり、
前記嵌め込み板(5)が嵌め込まれた状態において、前記凹部(22)における前記嵌め込み板(5)の前後に、下側固定具位置決め用の前側位置決め用凹部(51)および後側位置決め用凹部(52)が残るように、前記嵌め込み板(5)の前後方向の寸法が設定されており、
前記ベース板(2)の前記表面(21)における前記凹部(22)の後側の部位には、膝部支持板取り付け用の前後方向に一定の間隔を開けた位置に、前側差込溝(23)および後側差込溝(24)が形成されていることを特徴とする体部用固定具(1)。
【請求項2】
請求項1において、
前記ベース板(2)、前記左側板(3)、前記右側板(4)、および前記嵌め込み板(5)は、それぞれ、段ボール製の板材から形成されていることを特徴とする体部用固定具(1)。
【請求項3】
請求項1または2において、
膝支持板(6)を有しており、
当該膝支持板(6)は、前記前側差込溝(23)に着脱可能に差込固定される前端縁部(61)と、前記後側差込溝(24)に着脱可能に差込固定される後端縁部(62)と、これら前端縁部(61)および後端縁部(62)の間の部位において、これらが接近する方向に折り曲げ可能な折り曲げ線部(63)と、一対の貫通穴(64、65)とを備えており、
前記一対の貫通穴(64、65)は、前記膝支持板(6)における前記折り曲げ線部(63)に沿って一定の間隔を開けた部位において、当該折り曲げ線部(63)を含む領域を切り取る状態に形成されていることを特徴とする体部用固定具(1)。
【請求項4】
請求項3において、
前記膝支持板(6)は段ボール製の板材から形成されていることを特徴とする体部用固定具(1)。
【請求項5】
請求項1ないし4のうちのいずれかの項において、
前記ベース板(2)における前端部の左右の部位、および、その後端部の左右の部位には、それぞれ、把手部(25〜28)が形成されていることを特徴とする体部用固定具(1)。
【請求項6】
請求項1ないし5のうちのいずれかの項に記載の体部用固定具(1)と、
前記体部用固定具(1)に乗せる患者の下に敷いて用いる下側固定具(11)と、
前記体部用固定具(1)に乗せる患者を上側から固定するために用いる上側固定具(12)とを有し、
前記下側固定具(11)は、気密性の可撓性バッグ本体(11a)と、この可撓性バッグ本体(11a)に収納されている合成樹脂製のビーズ(11b)と、前記可撓性バッグ本体(11a)から空気を抜くための封鎖可能な吸引口(11c)とを備えており、
前記ベース板(2)の表面における前記嵌め込み板(5)を配置した前記矩形凹部(22)の部分に前記下側固定具(11)を乗せ、この上に患者(P)を乗せ、この状態で前記吸引口(11c)から空気を抜くことにより、当該患者(P)の型取りを行うことができ、同時に、前記前側位置決め用凹部(51)および前記後側位置決め用凹部(52)によって、当該下側固定具(11)には位置決め用凸部を形成可能であり、
前記上側固定具(12)は、前記左側板(3)および前記右側板(4)に左端縁部および右端縁部を着脱可能に固定可能な熱可塑性樹脂製の可撓性シートからなることを特徴とする体部用固定具キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−115419(P2011−115419A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276187(P2009−276187)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 掲載年月日:平成21年7月1日 http://www.engineeringsystem.co.jp/ http://esform.com/products/body/nb_board.html http://esform.com/resources/pdf/nb_board_manual.pdf
【出願人】(591189812)エンジニアリングシステム株式会社 (15)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【出願人】(509334675)IMARI株式会社 (1)
【Fターム(参考)】