説明

体重推定システム

【課題】 無自覚・無拘束・無操作で健康管理に有益な体重関連情報を家庭のトイレで実現しようとすることを可能とする。
【解決手段】 本発明では、被験者が入ることが可能な所定値の容積を有するブースと、
前記ブース内の空気を一定流率で排出する排気手段と、
所定量の外気を吸引する吸引口と、
前記ブース内の所定時間に対する圧力変化を計測する圧力測定手段と、
前記圧力変化によってブース内の被験者の体積を推定し、前記推定された体積より体重を推定演算することを特徴とすることにより、
被験者はトイレブース内に入室するだけで、無自覚・無拘束・無操作で健康管理に有益な体重関連情報を家庭で測定することを可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体重推定システムに関する発明である。 特に、特に無自覚・無拘束・無操作で健康管理に有益な体重関連情報を推定するが可能な体重測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の体重計は洗面所に置かれるケースが多いが、同一条件で、かつ継続的な測定を無自覚で行うことが難しく、無自覚・無拘束・無操作で体重測定を行うものとしては、便器及び便座に体重測定機能を配したものがある(例えば、特許文献1参照。)。
このような場合、一般的に陶器で製作される便器の平面度の問題で精度が悪かったり、便器または便座にだけ全ての体重を負荷するために、測定の度に被験者が足を上げる行為が必要であることから、使用者が無自覚で体重測定をすることはできないという問題があった。
【0003】
また、体重と同義の指標である体積を、ブース内の圧力変化を利用して測定しようとしているものもある(例えば、特許文献2参照。)。
しかし、この場合もブース内を密閉する必要があることから、その機能を家庭に持ち込むことは難しいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−172647号公報
【特許文献2】特表平05−508787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、本発明の課題は、無自覚・無拘束・無操作で健康管理に有益な体重関連情報を家庭のトイレで実現しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明によれば、被験者が入ることが可能な所定値の容積を有するブースと、前記ブース内の空気を一定流率で排出する排気手段と、所定量の外気を吸引する吸引口と、前記ブース内の所定時間に対する圧力変化を計測する圧力測定手段と、前記圧力変化によってブース内の被験者の体積を推定し、前記推定された体積より体重を推定演算することを特徴とすることにより、
被験者はトイレブース内に入室するだけで、無自覚・無拘束・無操作で健康管理に有益な体重関連情報を家庭で測定することを可能とした。
【0007】
また、請求項2記載の発明によれば、前記ブースをトイレとしたことを特徴とすることにより、起床時や就寝時など時間や服装などを含めて、毎日同じ条件で測定を行うことが容易であり、健康管理に有益な体重関連情報を信頼性高く測定し、測定結果の比較も容易とすることを可能とした。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、無自覚・無拘束・無操作で健康管理に有益な体重関連情報を推定するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の体重測定システムが組込まれたトイレブース示す斜視図である。
【図2】本発明の体重測定システム示すシステムブロック図である。
【図3】被験者(60kg)入室時のブース内圧力変化の測定事例グラフである。
【図4】被験者(60kg+30L)入室時のブース内圧力変化の測定事例グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の体重測定システムが組込まれたトイレブース示す斜視図である。図1を使用して各部の配置、および、使い方について詳説する。
体重計測定システム1は、主要な構成として、容積が所定値であるブース2と、前記ブース内の空気を一定流率で排出するモーターで駆動可能なファンを有する換気扇からなる排気手段3と、所定量の外気を一定流率ずつ吸引する吸引口5と、壁面のコントローラーに内蔵された圧力センサからなる圧力測定手段20とからなる。圧力センサとしては、圧力センサは、薄ゲージ式、半導体ストレインゲージ式、圧電式、光ファイバー式等の任意なものが適用できる。
図1では、起床時・就寝時に比較的類似の服装かつ同じような所定時間に使用されるトイレブース2を示している。トイレブース2の天井近傍には、被験者の快適性も配慮し、一定流率で排出する排気手段としての換気扇3が設けられている。トイレブース2の側面には被験者が出入りするための扉4が設けられており、トイレブース2と扉4の間には、所定量の外気を一定流率ずつ吸引する吸引口5が設けられている。なお吸引口5はトイレブース2全体として捉えるべきものであり、合わせ目隙間なども含まれる。即ち、外気の吸引は、上記した排気手段3の排気制御によって、一義的に決まってくるので、吸引口は、大きさや位置が変わらないものであれば、上記のように単なる隙間も含まれる。
使用者はトイレブースに入出して用を足す時に、後述の方法で被験者の体積が測定されることになる。
【0011】
図2は、本発明の体重測定システム示すシステムブロック図である。図2を使用して各部の構成について詳説する。
トイレブース1にて、トイレを使用するために被験者が入室する。その後、例えば、使用者が便器に着座することで、換気扇が駆動する。換気扇の駆動により、トイレブース内の空気は、トイレブース外に排出されるが、同時に、吸引口5からは、外気を吸引する。トイレブース1の内部は、換気扇3によって、排気と吸気がバランスする。この状態で、トイレブース内に設けられた圧力測定手段20が、被験者がトイレブースに入る前の状態から、被験者が入手したことによって変動した圧力変化を測定することになる。制御手段40は、圧力測定手段20、排気手段30を制御して、体重関連情報を推定するものであり、時刻情報を有する計時手段42と、例えば、事前に体重とそのときの体積の関係を測定して入力する所定値入力手段44の情報を利用して、体重推定手段46が演算を行っている。なお、事前入力する所定値として、体重の情報を入れておけば、体脂肪率などの情報も演算可能となる。
【0012】
図3は、被験者(60kg)入室時のブース内圧力変化の測定事例グラフである。半坪(0.9m×1.8m)のサンプルブースにおいて、換気扇を排出流率100m/hで排気動作させた場合、0.38m相当の負圧が発生したことを示している。図3に示されるように換気扇を動作させたのち約30秒後には、測定値は一定の値を示している。
【0013】
次に、図4は被験者(60kg+容積30Lコンテナ)入室時のブース内圧力変化の測定事例グラフである。圧力センサは、アルプス電気製の半導体微圧センサー(HSPPシリーズ)を利用して測定した。被験者(60kg)が容積30Lのコンテナと共に入室した場合、図3と比較して圧力変化(65m相当の負圧が発生)が異なることが測定されている。図3、図4の結果より、圧力変化を測定することで体積変化が測定できることが分かる。事前に体重とそのときの体積の関係を測定して入力しておけば、測定された体積変化から体重変化を推定できることになる。体積変化には衣服の影響が想定されるが、起床時・就寝時に比較的類似の服装かつ同じような所定時間に使用されるトイレブースを測定対象とすれば、衣服の影響は少なくなる。トイレで用を足した時に、無自覚・無拘束・無操作で健康管理に有益な体重関連情報を家庭で測定することができることになる。
【0014】
圧力変化の状態は、ブース内の空気を一定流率で排出する排気手段と、所定量の外気を一定流率ずつ吸引する吸引口のバランスによって変化するものであるため、設置時に定まった体積のものをブース内に入れて、所定の値が出力されるように所定値を入力する必要がある。その体積と所定値との関係を基準として、実測データから体積を類推することになる。
【0015】
本発明では体積変化を測定して、体重変化に換算する方法を示したが、体積変化を認知するだけでなく体積が違うことを利用して、大人、子供の識別のみならず、個人認証に使用することも可能である。
【0016】
ブース内の圧力変化を測定することで、体積変化が測定できることを物理的に詳説する。ブースを圧力p、容積V、温度Tとし、流率qで排気を行うものとする。圧力pは設置される圧力センサーの高さ位置によって変動するため、十分固定される位置に設けるべきである。下式の圧力は全て同一高さに設けられた圧力センサーの値の変化を示したものである。気体の状態方程式は、初期状態の添字を0とすると、下記の数1と表される。
数1でV0及びT0は一定とすると、数2で表せ、p0に対して展開すると数3となる。
【0017】
【数1】

【0018】
【数2】

【0019】
【数3】

【0020】
ここで空間から、気体を引いていくとする。その際、温度変化はしないとする。また、所定時間経過後の添字を1とし、その間の圧力変化は開始前の圧力をp0とする。所定時間に吸引される体積qを、モル数n1'で換算すると数4となる。所定時間経過後の圧力をp1、モル数をn1とすると、数5となり、変形すると、p1は容積Vと流率qによって数6のように表されることが分かる。
【0021】
【数4】

【0022】
【数5】

【0023】
【数6】

【符号の説明】
【0024】
1…体重計測定システム
2…トイレブース
3…換気扇
4…扉
5…吸引口
20…圧力測定手段
30…排気手段
40…制御手段
42…計時手段
44…所定値入力手段
46…体重推定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者が入ることが可能な所定値の容積を有するブースと、
前記ブース内の空気を一定流率で排出する排気手段と、
所定量の外気を吸引する吸引口と、
前記ブース内の所定時間に対する圧力変化を計測する圧力測定手段と、
前記圧力変化によってブース内の被験者の体積を推定し、前記推定された体積より体重を推定演算することを特徴とするブースにおける体重推定システム。
【請求項2】
前記ブースをトイレとしたことを特徴とする請求項1に記載のブースにおける体重推定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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