説明

体重計

【課題】被験者の身体の左右の荷重及び重心位置を正確に検出でき、被験者の身体の状態を判定できる体重計を提供する。
【解決手段】支持部材と、離間配置される第1及び第2載置部と、支持部材と第1載置部との間に配されて、第1載置部への荷重を3点以上で測定可能な複数のロードセルからなる第1ロードセル群と、支持部材と第2載置部との間に配されて、第2載置部への荷重を3点以上で測定可能な複数のロードセルからなる第2ロードセル群と、第1及び第2ロードセル群からの荷重データに基づいて、被験者が第1及び第2載置部に対してかけた荷重を演算する制御手段と、を有し、制御手段は、所定時間間隔ごとに、各ロードセルが検知した各荷重データを取得すると共に、第1及び第2載置部への荷重の重心位置を演算して、第1載置部への荷重の重心位置の移動軌跡及び第2載置部への荷重の重心位置の移動軌跡を取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体重計に関し、特に被験者の身体の左側及び右側の状態を判定できる体重計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、被験者の脳や神経系の機能を検査するために多点式体重計が用いられている。従来の多点式体重計は、複数(例えば4つ)のロードセルを備え、被験者が立位の姿勢で載置部に載り、左右の足の荷重に基づき重心位置を検出し、左右の足の荷重差を検出する(特許文献1及び非特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−056010号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】大藤晃義、外3名、「重心動揺計における左右足の位置関係の検討」、日本カイロプラクティック徒手医学会誌、Vol.3(2002)、p.3−10
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の多点式体重計では、総てのロードセルに対して単一の載置台が用いられる。そのため、例えば、左足側に大きい荷重がかけられると、載置部の左足接触側が沈むことにより、相対的に載置部の右足接触側が浮きがってしまい、右足側の荷重の正確な測定ができなくなる。これとは反対に、右足に大きい荷重がかけられると、左足側の荷重の正確な測定ができない。このように、総てのロードセルに対して単一の載置台を設けた従来の多点式体重計では、載置部に左足側の荷重及び右足側の荷重が互いに干渉することなるため、左足側の荷重及び右足側の荷重のそれぞれを正確に検知すること、左足側の荷重及び右足側の荷重のそれぞれの重心位置を測定すること、左右足の筋肉や関節等の差異を正確に検出することが困難であった。
【0006】
そこで、本発明は、被験者の身体の左側による荷重及び右側による荷重、並びに、左側の荷重の重心位置及び右側の荷重の重心位置、をそれぞれ正確に測定でき、その検出結果に基づいて、被験者の身体の状態(例えば、足の筋肉や関節の状態)を判定できる体重計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の体重計は、支持部材と、前記支持部材上に離間配置される第1載置部及び第2載置部と、前記支持部材と前記第1載置部との間に配されて、前記第1載置部への荷重を3点以上で測定可能な複数のロードセルからなる第1ロードセル群と、前記支持部材と前記第2載置部との間に配されて、前記第2載置部への荷重を3点以上で測定可能な複数のロードセルからなる第2ロードセル群と、前記第1ロードセル群及び前記第2ロードセル群からの荷重データに基づいて、被験者が前記第1載置部及び前記第2載置部に対してかけた荷重を演算する制御手段と、を有し、前記制御手段は、所定時間間隔ごとに、前記第1ロードセル群及び前記第2ロードセル群を構成する各ロードセルが検知した各荷重データを取得すると共に、前記第1載置部への荷重の重心位置及び前記第2載置部への荷重の重心位置を演算して、前記第1載置部への荷重の重心位置の移動軌跡及び前記第2載置部への荷重の重心位置の移動軌跡を取得することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の体重計によれば、前記制御手段は、前記所定時間間隔ごとに、前記第1ロードセル群及び前記第2ロードセル群を構成する各ロードセルが検知した前記各荷重データを、同時に取得することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の体重計によれば、前記制御手段は、前記第1載置部への荷重の重心位置の移動軌跡と、前記第2載置部への荷重の重心位置の移動軌跡と、を表示手段に出力することを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明の体重計によれば、前記制御手段による前記表示手段に対する、前記第1載置部への荷重の重心位置の移動軌跡及び前記第2載置部への荷重の重心位置の移動軌跡の出力は、前記所定時間間隔ごとに前記表示手段の表示画面に随時プロットされるように実施されることを特徴とする。
【0011】
本発明の体重計によれば、前記制御手段は、前記第1載置部への荷重の重心位置の前記移動軌跡から演算された近似線を第1基準線として取得し、前記第2載置部への荷重の重心位置の前記移動軌跡から演算された近似線を第2基準線として取得し、前記第1基準線と前記第2基準線とでなす角度を演算することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の体重計によれば、前記制御手段は、前記被験者が、前記第1載置部へ左足を載せ、前記第2載置部へ右足を載せて、前記第1載置部及び前記第2載置部に対してかけた荷重に関して、前記第1基準線と前記第2基準線とでなす角度を、前記被験者の足の開き角度として表示手段に出力することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の体重計によれば、前記制御手段は、前記所定時間間隔ごとに、前記第1載置部への荷重と前記第2載置部への荷重、及び/又は、前記第1載置部への荷重と前記第2載置部への荷重との比較結果、を表示手段に出力することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の体重計によれば、前記制御手段は、前記第1載置部への荷重の重心位置の移動軌跡及び前記第2載置部への荷重の重心位置の移動軌跡が所定範囲で安定した時に、前記第1載置部への荷重と前記第2載置部への荷重とを表示手段に出力することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の体重計によれば、前記制御手段は、前記所定時間間隔ごとに、前記第1載置部及び前記第2載置部への全荷重の重心位置を演算して、前記第1載置部及び前記第2載置部への全荷重の重心位置の移動軌跡を取得することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の体重計によれば、前記制御手段は、前記全荷重の重心位置の移動軌跡と、前記全荷重の重心位置を誘導する誘導領域と、前記全荷重の重心位置を前記誘導領域に沿って動かす動作を前記被験者が行なうべき指示と、を表示手段に出力した後に、前記第1載置部への荷重の重心位置の移動軌跡及び前記第2載置部への荷重の重心位置の移動軌跡を取得することを特徴とする。
【0017】
また、本発明の体重計によれば、前記制御手段は、前記被験者が、前記第1載置部へ左足を載せ、前記第2載置部へ右足を載せて、前記第1載置部及び前記第2載置部に対してかけた荷重に関して取得された前記第1載置部への荷重の重心位置の移動軌跡及び前記第2載置部への荷重の重心位置の移動軌跡に基づいて、前記被験者の左足及び右足の関節の柔軟性を判定することを特徴とする。
【0018】
また、本発明の体重計によれば、前記制御手段は、前記第1載置部への荷重の重心位置及び前記第2載置部への荷重の重心位置を取得して第1測定点として設定し、一定時間が経過した後の前記第1載置部への荷重の重心位置及び前記第2載置部への荷重の重心位置を取得して第2測定点として設定するとともに、前記第1測定点としての前記第1載置部への荷重の重心位置と前記第2載置部への荷重の重心位置とを結ぶ第1線を設定し、前記第2測定点としての前記第1載置部への荷重の重心位置と前記第2載置部への荷重の重心位置とを結ぶ第2線を設定し、前記第1線と前記第2線とでなす角度を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の体重計によれば、第1載置部と第2載置部とが互いに離間しており、第1載置部への荷重及び第2載置部への荷重が互いに干渉しない載置部を設けることにより、第1載置部への荷重及び第2載置部への荷重のそれぞれを正確に測定できる。従って、被験者の体全体の体重とその重心位置の外、左足側の荷重とその重心位置、右足側の荷重とその重心位置をもそれぞれ精度よく測定できる。また、第1載置部及び第2載置部は、共に支持部材上に配置されるため、第1載置部への荷重及び第2載置部への荷重を、それぞれ同じ状態乃至条件で測定することが可能であり、より高精度の測定が可能となると共に、体重計を使用する際の設置(セッティング)も容易化する。さらに、これらの測定結果に基づいて、被験者の身体の状態(例えば、足の筋肉や関節の状態)を判定でき、さまざまなシーンで利用可能な、より付加価値の高い体重計を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る体重計の平面図である。
【図2】図1に示される体重計の内部構成の要部を模式的に示す分解斜視図である。
【図3】図1のIII−III線に沿った断面図である。
【図4】図1の体重計に用いることができるロードセルの平面図である。
【図5】図1に示される体重計の制御系のブロック図である。
【図6】実施例1に係る体重計の制御工程のフローを示すフローチャートである。
【図7】体重計の載置部を含む面の位置関係を規定するXY座標系を説明する図である。
【図8】実施例2に係る体重計の制御工程のフローを示すフローチャートである。
【図9】PC等の外部モニタに被験者の重心の移動軌跡等の情報を表示する例を示す図である。
【図10】実施例3に係る体重計の制御工程のフローを示すフローチャートである。
【図11】実施例4に係る体重計の制御工程のフローを示すフローチャートである。
【図12】PC等の外部モニタに誘導領域を表示する例を示す図である。
【図13】実施例5に係る体重計の載置部を含む面の位置関係を規定するXY座標系を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
〔体重計〕
以下、本発明による体重計の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の実施形態に係る体重計1の平面図、図2は、図1に示される体重計1の内部構成の要部を模式的に示す分解斜視図、図3は、図1のIII−III線に沿った断面図、図4は、図1の体重計1に用いることができるロードセル7の平面図、図5は、図1に示される体重計1の制御系のブロック図である。
【0022】
図1及び図3に示すように、体重計1は、床面17に置いて利用される。体重計1は、主として、支持部材11と、第1載置部としての左載置部3及び第2載置部としての右載置部5と、複数のロードセル7からなる第1ロードセル群及び第2ロードセル群と、制御手段としての制御回路基板15(図5参照)と、を備える。
【0023】
左載置部3及び右載置部5は、一例として、平面視で略四角形状で同寸法の板状部材で構成する。左載置部3と右載置部5とは、支持部材11上に互いに離間して配置されることにより、左載置部3に掛かる荷重(左足側の荷重)は、右載置部5に影響を及ぼさず、右載置部5に掛かる荷重(右足側の荷重)は、左載置部3に影響を及ぼさないようになっている。これにより左足側の荷重及び右足側の荷重が互いに干渉しない載置部が構成される。図1等においては、左載置部3及び右載置部5は、平面視で略矩形状に構成されているが、ロードセルの個数及び配置箇所等に応じて、正方形や三角形としてもよく、特に限定されるものではない。
【0024】
ロードセル7は、荷重を測定するために用いられる重量測定手段である。本実施形態では、左載置部3への荷重を左載置部3の四隅(4点)で測定可能な4つのロードセル7(No.1〜4)からなる第1ロードセル群、右載置部5への荷重を右載置部5の四隅(4点)で測定可能な4つのロードセル7(No.5〜8)からなる第2ロードセル群を有し、計8つのロードセルを備えている。ロードセル7の個数は、例えば左載置部3及び右載置部5に3つずつ配し、計6個のロードセルを備える構成としてもよい。すなわち、左載置部3、右載置部5のそれぞれにかかる荷重の重心位置を前後左右方向で検出するためのロードセルの個数は、左載置部3で3つ以上、右載置部5で3つ以上であり、適宜変更可能である。第1ロードセル群は、左載置部3への荷重を3点以上で測定可能な複数のロードセルからなり、第2ロードセル群は、右載置部5への荷重を3点以上で測定可能な複数のロードセルから構成されればよい。なお、本実施形態では、総てのロードセル7(No.1〜8)は、同形状、同寸法であり、同一特性を有する。
【0025】
体重計1に適用可能なロードセル7の一例を、図4を参照して説明する。ロードセル7は、起歪体47と、歪みゲージ48と、を有する。起歪体47は、左載置部3又は右載置部5からの負荷を受ける可動端部47aと、支持部材11に対してスペーサ(図に示さず)を介して固定される固定端部47bと、負荷を受けたときに変形(伸縮)を生ずる起歪部47cと、を有する。より具体的には、可動端部47a及び固定端部47bは平面視で略C字形状とし、起歪部47cは可動端部47aと固定端部47bとを連結する帯形状として構成すればよい。歪みゲージ48は起歪部47cに貼られている。歪みゲージ48は、例えば4つの抵抗体R1〜R4を有し、抵抗体R1〜R4によってホイートストンブリッジ回路が構成される。ホイートストンブリッジ回路は、ロードセル7にかかる荷重をそれぞれ個別に測定できるように構成する。例えば、ホイートストンブリッジ回路は、ロードセル7の1つごとに1つずつ構成し、本実施形態のように、計8つのロードセル7を設ける場合には、ホイートストンブリッジ回路も8つ構成すればよい。被験者が左載置部3、右載置部5に載ると、荷重(被験者の体重)がロードセル7の可動端部47aに伝達され、その荷重に応じて起歪部47cが変形(伸縮)する。起歪部47cの伸縮に伴い歪みゲージ48が伸縮すると、抵抗体R1〜R4の抵抗値が変化する。この抵抗値の変化の前後で測定される電圧値の差分に基づいて、ロードセル7のそれぞれに加わる荷重を、ロードセル7ごとに測定することができるようになっている。なお、起歪体47の形状、寸法は、上記の構成に限られるものでは無い。
【0026】
図1乃至図3に示すように、支持部材11は、例えば、左載置部3及び右載置部5の両方を支持可能な大きさを有し、平面視で略矩形状の板状部材として構成する。前記第1ロードセル群は支持部材11と左載置部3との間に配され、前記第2ロードセル群は、支持部材11と右載置部5との間に配される。具体的には、支持部材11の上面には、ロードセル7の起歪体47の固定端部47bが、スペーサ(図に示さず)を介して固定される。すなわち、総てのロードセル7の固定端部47bは、支持部材11の上面という同一平面上に固定される一方、可動端部47aは、左載置部3又は右載置部5のいずれか一方からの負荷を受ける。これにより、ロードセル7は、支持部材11と、左載置部3又は右載置部5と、の間でたわみ張りを構成する(図3参照)。このように、左載置部3及び右載置部5は、共に、共通のベースとなる支持部材11上に配置されるため、左載置部3への荷重及び右載置部5への荷重を、それぞれ同じ状態乃至条件で測定することが可能であり、より高精度の測定が可能となると共に、体重計を使用する際の設置(セッティング)も容易化する。
【0027】
支持部材11の下面(すなわち、ロードセル7の固定端部47bが固定される面と反対側の面)には、脚部13の一端部が四隅に装着されている。脚部13の他端部が床面17に接地することで、体重計1が床面17に安定して載置される。
【0028】
支持部材11には、ロードセル7(前記第1ロードセル群及び前記第2ロードセル群)により検知される荷重データ(検知結果)に基づいて、被験者の荷重、重心位置を演算するための制御手段として、制御回路基板15が配置されている(図3参照)。図5に示されるように、制御回路基板15は、メイン基板15aと、AD基板15bと、から構成される。メイン基板15aには、表示手段としての表示部21、体重計1を操作するための操作部22、メインマイコン33、PC等の外部装置との間で所望のデータ転送を行うためのケーブル37(図3参照)が連結される出力端子35、が配置される。また、AD基板15bには、各ロードセル7からの荷重データをデジタル化するためのAD変換部やその他の処理回路等が配置されている。表示部21としては、一例としてフルドットLCD(Liquid Crystal Display)の液晶を用いることができ、また、表示部21と操作部22の代わりに、タッチパネル機能を備えた液晶を用いることもできる。
【0029】
本実施形態では、8個のロードセル7のそれぞれに、同一構成のAD基板15bが設けられている。すなわち、AD基板15bは、8個設けられている(No.1〜No.8)。AD基板15bは、PWM制御方式によりAD変換を行うために、ロードセル7からの荷重データを増幅するアンプ51、所定の周波数成分を取り出すフィルタ52、及び、PWM積分器55を備える。さらに、AD基板15bには、ロードセル7のいわゆるゼロ点(基準値となる荷重データ)を設定するためのゼロ点調整部57、体重計1の動作プログラムを格納するためのメモリであるEEPROM59、環境温度を測定するための温度センサである温度計61、及びA/D変換、動作プログラムの実行、温度検出等を行うサブマイコン63、が組み込まれている。
【0030】
メインマイコン33とサブマイコン63とは、IICバス64を構成するシリアルデータ線65(SDA)及びシリアルクロック線67(SCL)により連結され、メインマイコン33及びサブマイコン63は相互間でデータ及び指令の転送が行われる。また、IICバスを用いることにより、メイン基板15aとAD基板15bとの間の通信線の数を抑えることができる。
【0031】
上記構成の制御回路基板15では、メインマイコン33から各PMW積分器55へ出力されるキャリア同期信号に基づいて、複数のロードセル7からの荷重データが同期して(同時に)PWM積分され、その積分値に応じたデジタル信号へ変換される。デジタル化された各ロードセルからの荷重データに基づき、メインマイコン33により被験者の荷重、左右の足の荷重等が演算され、表示部21(表示手段)や、出力端子35を介してPC等の外部モニタ53(図9、図12参照)(表示手段)に表示される。
【0032】
〔体重計の制御〕
上記構成の体重計1は、操作部22によりスイッチがONされ、被験者が左足を左載置部3に、右足を右載置部5にそれぞれ載せて体重計1に荷重(体重)をかけると、各ロードセル7の起歪部47cが変形し、この起歪部47cの変形により、歪みゲージ48の抵抗値に変化が生じる。
【0033】
メインマイコン33は、荷重がかかる前のロードセル7の出力電圧(ゼロ点)と、荷重がかかった後のロードセル7の出力電圧との差分をそれぞれ測定することにより、所定のプログラムに従って、各ロードセル7にかかる荷重のそれぞれを同時に演算する。ここで、例えば8つのロードセルからの荷重データをNo.1からNo.8まで順番に取得して、それぞれの荷重を順次演算する処理を行うと、No.1の荷重データによる荷重の演算時から、No.8の荷重データによる荷重の演算時までの間に時間が経過してしまう。そのため、順次取得されたNo.1の荷重データ乃至No.8の荷重データに基づいて、左載置部3への荷重や右載置部5への荷重、それらの重心位置を演算したとしても、同一時点で取得された荷重データに基づく値とはならないため、正確な測定が実現されない。本実施形態によれば、所定時間間隔ごとに、各ロードセル7が検知した各荷重データを一斉に同時に取得して、各ロードセル7にかかる荷重のそれぞれを同時に演算し、これに基づいて左載置部3への荷重及びその重心位置、右載置部5への荷重及びその重心位置、さらには全荷重及びその重心位置、をそれぞれ演算する。これにより、データ取得のタイミングにタイムラグがなく、正確な測定が可能となる。
【0034】
また、メインマイコン33は、この荷重の演算を、一定回数(所定目的のための任意の回数)、所定時間間隔(例えば、100ms)で連続的に行う。さらに、演算された荷重は、表示部21や、出力端子35を介してPC等の外部モニタ53(図9、図12参照)に表示される。
【0035】
前記の様に、各ロードセル7が検知した各荷重データを、一斉に同時に取得して荷重を同時演算するのが好適ではあるが、高速処理が可能なAD変換器を用いることにより、前記所定時間間隔に対して十分に短い時間(例えば、数ms)内に、各ロードセル7からの荷重データをNo.1からNo.8まで順番に取得して、それぞれの荷重を演算する処理としてもよい。このような高速処理を行い得るAD変換器を用いれば、内部基板における部品点数を減らすことが出来るため、コストを低減させることが可能となる。
【0036】
上記の実施形態においては、支持部材11を設ける構成としているが、左載置部3及び右載置部5の下面に、ロードセル7の起歪体47の固定端部47bを(スペーサを介す等して)固定し、可動端部47aには脚部を取り付ける等して、支持部材11を有しない構成とすることも考えられる。すなわち、左載置部3と、第1ロードセル群と、第1ロードセル群の各ロードセル7に取り付けた脚部と、からなる第1載置部ユニットを構成し、同様に、右載置部5と、第2ロードセル群と、第2ロードセル群の各ロードセル7に取り付けた脚部と、からなる第2載置部ユニットを構成する。このように構成する場合において、第1載置部ユニットと第2載置部ユニットとを配置する際に位置ずれがあると、測定精度に影響を及ぼし、誤差の要因となってしまう。そのため、第1載置部ユニットと第2載置部ユニットとを所定位置に設置するため、床面に対するマーキングを行うとよい。
【0037】
また、前記のような測定誤差を生じさせないためには、第1載置部ユニットと第2載置部ユニットとを床面に置いたとき、第1載置部ユニットにおける各ロードセル7に取り付けた脚部の総てと、第2載置部ユニットにおける各ロードセル7に取り付けた脚部の総てとが、床面に対して同じ荷重で接地する必要がある。すなわち、第1載置部ユニット及び第2載置部ユニットが、床面に対してガタつきのない状態で設置されることが必要である。そのため、床面に対して各脚部が同じ荷重で接地しているかを検出可能な検出手段(例えば、圧力センサなど)を備える構成とすればよい。さらに、測定精度を高めるためには、第1載置部ユニット及び第2載置部ユニットが、それぞれ水平に設置させる必要がある。そのため、第1載置部ユニット及び第2載置部ユニットのそれぞれに、水平か否かを検知可能な水平検知手段(例えば、水準器など)を備え、さらには、その検知結果に基づいて脚部の高さを調節することが可能な調整脚機構を備えるのが好適である。
【0038】
以下に、種々の身体情報を検査又は評価するために実行される体重計1の制御工程の実施例について説明する。
【0039】
〔実施例1〕
実施例1は、主として被験者の足の開き角度を検出する制御工程を行う体重計1である。人が自然な状態で立位している時の、足(つま先)の開き角度や左右の足の間隔は、脚力の成長過程のモニタリングを行うときの重要な指標となる。また、例えば、ゴルフクラブのスイング時の足の開き角度や間隔によって打球の方向や飛距離に影響があることから、足の開き角度や左右の足の間隔は、スポーツを行う場合のフォーム等の確認にも有用な指標となる。その他、足首等に怪我をした後のリハビリテーションの効果確認など、足の開き角度や左右の足の間隔は、さまざまなシーンで有効に利用され得るものである。
【0040】
従来、前記のような立位時における被験者の足の開き角度(つま先の開き角度)の計測は、素足で紙等の上に立って筆記具で足の形状(アウトライン)を描いたり、載置部上に格子状に多数並べて配置された押圧スイッチや圧力センサの上に立ってセンサのON/OFFを検知して足の形状を取得して、各足ごとに、任意の指(例えば人差し指)とかかととを結ぶラインを求め、左右間の足(つま先)の開き角度や、中心線からの開き角度を計測していた。しかしながら、上記のような従来の計測は、手作業を伴うために手間がかかったり、多数のセンサを必要とするために構造が複雑でコストがかかるものであった。そこで、本実施例では、低コストで、より簡易な作業による足の開き角度を求めることが可能な体重計を説明する。
【0041】
本実施例について図6及び図7を参照しつつ説明する。図6は、実施例1に係る体重計1の制御工程のフローを示すフローチャート、図7は、体重計1の載置部3、5を含む面の位置関係を規定するXY座標系を説明する図である。
【0042】
ここで、開き角度は、本実施例では、左足の踵と人差し指とを結ぶ基準線Lと、右足の踵と人差し指とを結ぶ基準線Rと、が成す角度αとして説明する。開き角度αの検出は、人が自然な状態で立位した姿勢では、前後左右の身体のバランスが主に足首や膝等の関節を動かすことで維持されるということと、立位時に足首や膝の関節が動く方向は、基準線L、Rが延びる方向とほぼ同じである、という事実を利用することで取得する。従って、左足側の荷重及び右足側の荷重のそれぞれの測定結果に基づいて、少なくとも左右足の重心位置PL、PRの情報をそれぞれ異なる2点以上取得すれば、左足の重心位置PLの移動軌跡を表す線分を基準線Lとし、右足の重心位置PRの移動軌跡を表す線分を基準線Rとして、それらが成す開き角度αを取得することができる。
【0043】
メインマイコン33は、被験者の足の開き角度の算出が必要か否かを識別する(ステップS1)。例えば、体重計1を起動直後、足の開き角度を算出するか否かのメッセージを表示部21等に示し、被験者がその要否について操作部22を操作して選択できるようにすればよく、メインマイコン33は、被験者による操作部22の操作に応じて、足の開き角度の算出の要求がされているか否かを識別すればよい。足の開き角度の情報が要求されていることが識別されると(ステップS1でYes)、ステップS2へ移行する。
【0044】
次に、サブマイコン63は、被験者が左載置部3及び右載置部5に載った後、各ロードセル7が検知した荷重データ(data1〜data8)を取得する(ステップS2)。
【0045】
メインマイコン33は、サブマイコン63が取得した荷重データ(data1〜data8)に基づき、左足側の荷重(左足側にかかる体重)、右足側の荷重(右足側にかかる体重)、被験者の全荷重(全体重)、のそれぞれを演算し、メインマイコン33の記憶部(RAM、ROM等)に保存する(ステップS3)。
【0046】
さらに、メインマイコン33は、荷重データ(data1〜data8)に基づき、左足側の荷重の重心位置PL及び右足側の荷重の重心位置PRを演算し保存する(ステップS4)。第1ロードセル群からの荷重データ(data1〜data4)に基づき、左足側の荷重の重心位置PLを演算し、第2ロードセル群からの荷重データ(data5〜data8)に基づき、右足側の荷重の重心位置PRを演算する。
【0047】
重心位置PL、PRは、以下のように規定する。図7に示されるように、体重計1の左載置部3及び右載置部5の面上に、互いに直交するXY座標系を設定する。X軸とY軸とが交わる点を原点O、その座標を(0,0)とする。ロードセル7の位置を、それぞれ、PL1(x1,y1)、PL2(x2,y2)、PL3(x3,y3)、PL4(x4,y4)、PR5(x5,y5)、PR6(x6,y6)、PR7(x7,y7)、PR8(x8,y8)と定める。例えば、左載置部3に掛かる左足側の荷重の重心位置をPL(xL、yL)とすると、X軸方向のモーメントのつり合い式と、Y軸方向のモーメントつり合い式と、PL1〜PL4に加わる分力の和が、点PLに掛かる全荷重であることを示す関係式と、から、近似的に重心位置PLを求めることができる。
【0048】
具体的には、左載置部3に掛かる左足側の荷重がWL、また、PL1、PL2、PL3、PL4のロードセル7(第1ロードセル群)で測定される荷重がそれぞれW1、W2、W3、W4の場合、原点Oを中心とするX軸方向のモーメントつり合い式は、−WL・xL=−x1・W1−x2・W2−x3・W3−x4・W4となる。また、原点Oを中心とするY軸方向のモーメントつり合い式は、−WL・yL=y1・W1+y2・W2−y3・W3−y4・W4となる。さらに、WL=W1+W2+W3+W4の関係が成り立つ。上記式から、左載置部3に掛かる左足側の荷重WLの重心位置PL(xL,yL)を求めることができる。同様にして、右載置部5に掛かる右足側の荷重WRの重心位置PR(xR、yR)を求めることができる。なお,被験者の全荷重Wは、W=WL+WRで求めることができる。このようにして取得された重心位置PL、PRのデータは、メインマイコン33の記憶部(RAM、ROM等)に保存される。
【0049】
被験者の足の開き角度αは、重心位置PL、PRに基づいて演算して取得できる(ステップS7)。左足側の荷重WLの重心位置PLの異なる座標データが2点取得すれば、その2点を結ぶ線分を、左足側の基準線L(第1基準線)と規定することができる。基準線R(第2基準線)についても同様である。さらに、基準線L、Rを規定できれば、それぞれのX軸に対する角度θL、θRを取得できる。その角度θLは、arctan{(yL1―yL2)/(xL1―xL2)}で表すことができる。ここで、(xL1,yL1)、(xL2,yL2)は、それぞれPLの座標である。結果として、開き角度αは、π−(θL+θR)となる。
【0050】
このように、重心位置PL、PRのデータをそれぞれ2点ずつ用いて基準線L、Rを求め、開き角度αを演算することも可能であるが、重心位置PL、PRについてより多くのデータを取得して基準線L、Rを求めても良い。即ち、重心位置PL、PRについて取得したデータを、記憶部内で管理される座標上に順次プロットするなどして多数蓄積し、これらの多数のデータから近似線を左右それぞれについて求め、この近似線を基準線L(第1基準線)、基準線R(第2基準線)として規定し、上記と同様にして開き角度αを演算すれば、より精度の高い正確な開き角度を取得することが可能となる(ステップS7)。そこで、ステップS7における足の開き角度の演算に先立って、以下のようなステップS5及びステップS6の処理を行うのが好適である。
【0051】
メインマイコン33は、左足側の荷重の重心位置PLの座標データ、及び、右足側の荷重の重心位置PRの座標データについて、それぞれ任意の数のデータを取得するため、記憶部に保存された重心位置PL、PRの座標データの数が、所定数に達しているかを判断する(ステップS5)。重心位置PL、PRの座標データの数が、所定数に達していない場合は(ステップS5でNo)、メインマイコン33は、最新の荷重データを取得した時(ステップS2)からの所定時間間隔(例えば、100ms)が経過しているかを計時回路(図に示さず)により判断し(ステップS6)、所定時間間隔の経過を監視する(ステップS6でNo)。所定時間間隔が経過すれば(ステップS6でYes)、改めて、ステップS2へ戻り、所定数のデータの取得が完了するまで(ステップS5でYesになるまで)、同様の処理を繰り返す。左足側の荷重の重心位置PLの座標データ、及び、右足側の荷重の重心位置PRの座標データについて、それぞれのデータ数が所定数に達すれば(ステップS5でYes)、ステップS7へ進み、メインマイコン33は、足の開き角度αの演算を行う。
【0052】
ステップS7で開き角度の演算が完了すると、メインマイコン33は、被験者の足の開き角度α及び全荷重(体重)を表示部21や外部モニタ53に表示させる(ステップS8)。足の開き角度αの外部モニタ53への表示方法は特に限定されず、一例としては、左足右足間の開き角度として「開き角度:○○度」と表示したり、センターライン(Y軸)からの左右足それぞれの開き角度として「左足開き角度:○○度、右足開き角度:○○度」のように表示しても良い。また、蓄積されている重心位置PLの座標データ及び重心位置PRの座標データがプロットされた座標や、重心位置PL、PRの軌跡や全荷重の重心位置PTの軌跡を表示した座標上に、足の開き角度αを、足型や基準線L、Rとともに図示するように表示しても良い(図7参照)。
【0053】
一方、ステップS1で、足の開き角αが要求されていないと識別されると、ステップS9に移行する。即ち、サブマイコン63は、各ロードセル7が検知した荷重データ(data1〜data8)を取得する(ステップS9)。サブマイコン63で取得された荷重データ(data1〜data8)に基づき、メインマイコン33は、被験者の全荷重(体重)を演算する(ステップS10)。最後に、メインマイコン33は、被験者の体重を外部モニタ53に表示させる(ステップS11)。
【0054】
なお、足の開き角度の算出の要求がされているか否か(ステップS1)にかかわらず、ステップS2又はステップS9で、各ロードセル7が検知した荷重データ(data1〜data8)が取得されるため、被験者の全荷重(体重)Wのみならず、左足側の荷重WL及び右足側の荷重WRについても演算することは可能である。従って、ステップS8やステップS11においては、左足側の荷重WL及び右足側の荷重WRをも表示するようにしてもよい。
【0055】
本実施例によれば、被験者が自然な状態で立位の姿勢でいる時の僅かな体の揺動、即ち、足首や膝の移動方向に基づいて、足の向きを識別するので、両足のつま先が閉じた状態や開いた状態に拘わりなく、足の情報を正確に取得することができる。
【0056】
本実施例の体重計において、左足の重心位置PLと右足の重心位置PRとの距離を演算、取得するようにしてもよい。人は、幼児から成人へ成長するに従い、身体を立位の姿勢に保つ際、左右の足の間隔を狭くし、つま先の開き角度を広げるようになる(非特許文献1参照)。従って、足の開き角度及び左右の足の重心位置の間隔を測定することにより、被験者の脚部の成長をモニタリングしたり、利き足を評価するなど、被験者の身体の状態を判定することができる。また、このような目的に応じて、モニタリングの結果や評価内容を、外部モニタ53に表示させても良い。さらに、体重計1に被験者の足の形状を測定するための検知手段として光センサ等を組み合わせることにより、左右足の基準線をより正確に識別する構成とすることも可能である。
【0057】
〔実施例2〕
実施例2は、被験者の左足側の荷重と右足側の荷重とのバランス、即ち、体重バランスを検出する制御工程を行う体重計1である。本実施例の体重計1によれば、左足及び右足に対応して、互いに離間しており、左足側の荷重及び右足側の荷重が互いに干渉しない載置部を有するので、左足側の荷重及び右足側の荷重のそれぞれを正確に測定できる結果、左足側の荷重と右足側の荷重とを正確に対比でき、左足側の荷重と右足側の荷重とのバランス、即ち、体重バランスを精度よく取得することができる。
【0058】
本実施例について図8を参照しつつ説明する。図8は、実施例2に係る体重計1の制御工程のフローを示すフローチャートである。ここで、体重バランスとは、左載置部3への荷重と右載置部5への荷重との比較結果であって、一例としては、体重計1に掛かる被験者の全荷重に対する、左載置部3に掛かる左足側の荷重の割合(%)、及び、右載置部5に掛かる右足側の荷重の割合(%)である。
【0059】
サブマイコン63は、被験者が左載置部3及び右載置部5に載った後、各ロードセル7が検知した荷重データ(data1〜data8)を取得する(ステップS1)。次に、メインマイコン33は、被験者の体重バランスの表示が必要か否かを識別する(ステップS2)。例えば、体重バランスを表示するか否かのメッセージを表示部21等に示し、被験者がその要否について操作部22を操作して選択できるようにすればよく、メインマイコン33は、被験者による操作部22の操作に応じて、体重バランスの表示が必要か否かを識別すればよい。なお、ステップS1とステップS2との順序を逆にしてもよい。ステップS2で、体重バランスの表示が要求されていることが識別されると(ステップS2でYes)、ステップS3へ移行する。
【0060】
メインマイコン33は、サブマイコン63が取得した荷重データ(data1〜data8)に基づき、左足側の荷重及び右足側の荷重をそれぞれ演算し取得する(ステップS3)。さらに、メインマイコン33は、荷重データ(data1〜data8)に基づき、被験者の全荷重と、体重バランス(左載置部3に掛かる左足側の荷重の割合(%)、及び、右載置部5に掛かる右足側の荷重の割合(%))と、を演算し(ステップS4)、左足側の荷重及び右足側の荷重、体重バランスのうち何れか1以上を、表示部21等へ表示される(ステップS5)。被験者の体重を表示してもよいことはいうまでもない。
【0061】
一方、ステップS2で、体重バランス表示が要求されていないと識別されると、ステップS6に移行する。メインマイコン33は、サブマイコン63で取得された荷重データ(data1〜data8)に基づき、被験者の全荷重が演算され(ステップS6)、被験者の体重が表示される(ステップS7)。
【0062】
なお、本実施例では、左足側の荷重の重心位置PL、及び、右足側の荷重の重心位置PRを必ずしも求めなくてもよいが、前記実施例1と同様にして、重心位置PL及び重心位置PRを所定時間間隔で所定数求めることで、次のような処理を行ってもよい。被験者が自然な状態で立位の姿勢で左載置部3及び右載置部5に載っている時(特に載った直後)は、体が揺動するため、ロードセル7が検知する荷重データは安定しない。そのため、そのような状態でのロードセル7が検知した荷重データに基づいて、前記のような体重バランス等を演算しても精度がよくない。そこで、メインマイコン33は、重心位置PL及び重心位置PRを所定時間間隔で繰り返し求めて、重心位置PL及び重心位置PRの移動軌跡を取得して、その変化が所定範囲で安定したかを判断し、安定したと判断した時のロードセル7が検知した荷重データに基づいて演算した、被験者の全荷重、左足側の荷重、右足側の荷重、体重バランスを、表示部21等へ出力するようにしてもよい。
【0063】
〔実施例3〕
本実施例3は、左足側の荷重の重心位置PL、右足側の荷重の重心位置PR、全荷重の重心位置PTの移動軌跡を検出する制御工程を行う体重計1である。従来、被験者が自然な状態で立位の姿勢でいる時の僅かな体の揺動を検査するため、被験者の全荷重(体重)の重心位置の変化と、左足側の荷重と右足側の荷重との重量配分(左右バランス)とを求めて、検知することが行われている。しかしながら、左足側の荷重の重心位置の変化や、右足側の荷重の重心位置の変化を反映していないため、被験者の身体の揺動を正確に検知することができなかった。例えば、左足側の荷重と右足側の荷重との重量配分(左右バランス)が等しい状態で、左足側の荷重の重心位置が前方に所定距離だけ変化し、かつ、右足側の荷重の重心位置が後方に同じ距離だけ変化した場合には、被験者の全荷重(体重)の重心位置は殆ど変化しないため、左足側の荷重の重心位置や右足側の荷重の重心位置が変化していることを判断することが出来ないものであった。そこで、本実施例では、左足側の荷重の重心位置と、右足側の荷重の重心位置と、これらから求めた全体の重心位置と、を連続的に多数取得して、それぞれの重心位置の移動軌跡を求めることにより、被験者が自然な状態で立位の姿勢でいる時の僅かな体の揺動を的確に検査することが可能な体重計を説明する。
【0064】
本実施例について図9、図10を参照しつつ説明する。図9は、PC等の外部モニタ53に重心位置の移動軌跡等の情報を表示する例を示す図、図10は、実施例3に係る体重計1の制御工程のフローを示すフローチャートである。
【0065】
なお、図9(後述の図12も同様)に示す外部モニタ53は、外部モニタ53の左側に、左足側の荷重の重心位置PLを示す領域Aと、外部モニタ53の右側に、右足側の重心位置PRを示す領域Bと、領域A及び領域Bの下側に、被験者の全荷重の重心位置PTを示す領域Cと、を備える。領域A及びBのそれぞれには、その中心を原点Oとする、X軸及びY軸が示されている。原点Oは、左載置部3、右載置部5のそれぞれの平面視における中心位置に対応しており、外部モニタ53には、左載置部3、右載置部5の実際の位置に対応して、領域A、B上に重心位置PL、PRの軌跡が表示される。
【0066】
また、領域Cに示されるXY座標軸は、前述の図7に示すXY座標軸に対応して示されている。従って、領域Cに示される重心位置(PT)は、体重計1の左載置部3及び右載置部5からなる載置部の面全体に対する実際の重心位置に対応して、外部モニタ53に表示される。さらに、外部モニタ53には、全荷重(体重)、左足側の荷重、右足側の荷重が表示される領域が設けられている。
【0067】
前記した実施例と同様、図10に示ように、サブマイコン63は、各ロードセル7が検知した荷重データ(data1〜data8)を取得する(ステップS1)。
【0068】
次に、メインマイコン33は、サブマイコン63が取得した荷重データ(data1〜data8)が、左足側のデータであるか否か、すなわち、左載置部3側のロードセル7(第1ロードセル群)に関連する荷重データ(data1〜data4)であるか否か識別される(ステップS2)。サブマイコン63が取得した荷重データ(data1〜data8)のうち、左足側の荷重データ(data1〜data4)(ステップS2でYes)に基づいて、左足側の荷重及びその重心位置が演算され、メインマイコン33の記憶部(RAM、ROM等)に保存される(ステップS3)。また、左足側の荷重は、外部モニタ53の左足側の荷重の表示領域に表示され、かつ、左足側の荷重の重心位置PLは、外部モニタ53に領域Aに表示(プロット)される(ステップS4)。
【0069】
一方、サブマイコン63が取得した荷重データ(data1〜data8)のうち、右足側のデータ(data5〜data8)は(ステップS2でNo)に基づいて、右足側の荷重及びその重心位置の座標データが演算され、メインマイコン33の記憶部(RAM、ROM等)に保存される(ステップS5)。また、右足側の荷重は、外部モニタ53の右足側の荷重の表示領域に表示され、右足側の荷重の重心位置PRは、外部モニタ53に領域Bに表示(プロット)される(ステップS6)。
【0070】
メインマイコン33は、左足側の荷重の重心位置PLの座標データ、及び、右足側の荷重の重心位置PRの座標データのそれぞれについて、重心位置の移動軌跡を表示するのに必要な任意の所定数のデータを取得するため、記憶部に保存された重心位置PL、PRの座標データの数が、所定数に達しているかを識別する(ステップS7)。重心位置PL、PRの座標データの数が、所定数に達していない場合は(ステップS7でNo)、メインマイコン33は、最新の荷重データを取得した時(ステップS1)からの所定時間間隔(例えば、100ms)が経過しているかを計時回路(図に示さず)により判断し(ステップS8)、所定時間間隔の経過を監視する(ステップS8でNo)。所定時間間隔が経過すれば(ステップS8でYes)、改めて、ステップS1へ戻り、所定数のデータの取得が完了するまで(ステップS7でYesになるまで)、同様の処理を繰り返す。これによって、被験者が自然な状態で立位の姿勢でいる時の僅かな体の揺動をも捉えて、前記所定時間間隔ごとに、左右各々の重心位置の表示(プロット)が外部モニタ53上に随時追加されていくため、左右各々の重心位置の移動軌跡となって表示されることになる。左足側の荷重の重心位置PLの座標データ、及び、右足側の荷重の重心位置PRの座標データについて、それぞれのデータ数が所定数に達すれば(ステップS5でYes)、ステップS9に移行する。
【0071】
メインマイコン33は、ステップS4及びS6で保存された所定数の左足側の荷重及び右足側の荷重、重心位置PL、PRのデータに基づき、被験者の全荷重(体重)と、その重心位置PTの座標データとを演算し(ステップS9)、外部モニタ53の全荷重の表示領域に被験者の体重を表示し、外部モニタ53の表示領域Cに体重の重心位置を表示する(ステップS10)。なお、本実施例での重心位置や重心の移動軌跡の詳細な演算手法は、実施例1と同じであるので、ここでは説明を割愛する。
【0072】
本実施例に掛かる体重計1は、上記のような構成とすることにより、左載置部3、右載置部5に掛かる荷重を独立してそれぞれ測定するとともに、それぞれの重心位置とその移動軌跡を取得できるため、被験者が自然な状態で立位の姿勢でいる時の僅かな体の揺動を的確に検査することができる。
【0073】
本実施例の体重計において、左足の重心位置PLと右足の重心位置PRとを結ぶ直線や、重心位置PLと重心位置PRとを結ぶ直線と左右方向を表すX軸方向とでなす角度θを、外部モニタ53に表示するようにしてもよい。前記角度θは、被験者が自然な状態で立位の姿勢でいる時の僅かな体の揺動に応じて絶えず変化する。従って、前記角度θを取得することにより、被験者が自然な状態で立位の姿勢でいる時の僅かな体の揺動を更に精度よく検査することができる。
【0074】
〔実施例4〕
実施例4は、重心位置の移動軌跡、ヒストグラム等の種々の身体情報を取得するための制御工程を行う体重計1である。被験者の体重の重心位置は、下肢の怪我や、関節の左右差などにより、中心から外れている場合がある。換言すれば、身体状態を判断するための指標として、被験者の体重の重心位置は有用なデータとなり得るものである。従来は、被験者の左足側の荷重と右足側の荷重とをそれぞれ測定し、それらの荷重差のみから評価を行うものが一般的であった。しかしながら、左足側の荷重の重心位置の変化や、右足側の荷重の重心位置の変化を反映していないため、前記のような荷重差のみに基づく評価では、身体の状態を的確に判断することはできなかった。そこで、本実施例では、左足側の荷重の重心位置と、右足側の荷重の重心位置と、これらから求めた全体の重心位置と、を連続的に多数取得して、それぞれの重心位置の移動軌跡を求めて、左右の足の関節の可動範囲などの身体状態を的確に取得することが可能な体重計を説明する。
【0075】
本実施例について図11及び図12を参照しつつ説明する。図11は、実施例4に係る体重計1の制御工程のフローを示すフローチャート、図12は、PC等の外部モニタ53に誘導領域100を表示する例を示す図である。
【0076】
左右の足の関節の可動範囲や、膝や足首の柔軟性を検出するために、被験者の全体荷重の重心位置PTを誘導するための誘導領域100が、体重計1に連結されているPC等の外部モニタ53に表示される(ステップS1)。図12では、誘導領域100は、リング状に表示する例を示しているが、形状は特に限定されるものではない。メインマイコン33は、全荷重の重心位置PTを誘導領域100に沿って動かす動作を被験者が行うべき指示を、外部モニタ53に表示させる(ステップS2)。例えば、本実施例では、被験者の体重の重心位置PTを、誘導領域100内で時計回り(又は反時計回り)で移動させるように、両足を左載置部3及び右載置部5に接触したまま身体(主として腰や脚)を動作する旨を指示する。但し、検査乃至評価をしたい身体状態(目的)に即して、誘導領域100の形状や動作の指示を適宜変更しても良い。被験者は、このような指示に従い、体重計1の左載置部3、右載置部5に載って、外部モニタ53の領域Cに表示される重心位置PTと誘導領域100とを見ながら、腰、脚を動かす。
【0077】
前記した実施例と同様、サブマイコン63は、被験者が左載置部3及び右載置部5に載った後、各ロードセル7が検知した荷重データ(data1〜data8)を取得する(ステップS3)。メインマイコン33は、サブマイコン63が取得した荷重データ(data1〜data8)に基づき、左足側の荷重の重心位置PL、右足側の荷重の重心位置PR、全荷重の重心位置PT、左足側の荷重、右足側の荷重、全荷重のそれぞれを演算する(ステップS4)。
【0078】
さらに、メインマイコン33は、左足側の荷重の重心位置PL、右足側の荷重の重心位置PR、全荷重の重心位置PT、左足側の荷重、右足側の荷重、全荷重のそれぞれを外部モニタ53に表示させる(ステップS5)。すなわち、左足側の荷重は、外部モニタ53の左足側の荷重の表示領域に表示され、左足側の荷重の重心位置PLは、領域Aに表示(プロット)される。右足側の荷重は、外部モニタ53の右足側の荷重の表示領域に表示され、右足側の荷重の重心位置PRは、領域Bに表示(プロット)される。全荷重(体重)は、外部モニタ53の全荷重の表示領域に表示され、全荷重の受信位置PTは、領域Cに表示(プロット)される。
【0079】
次に、メインマイコン33は、ステップS4で取得・保存された被験者の全荷重の重心位置PTが、所定寸法の内径及び外径を有するリング状の誘導領域100内であるか否かを識別する(ステップS6)。重心位置PTが含まれていない場合には(ステップS6でNo)、ステップS4で取得された重心位置PL、PR、PT、左足側の荷重、右足側の荷重、全荷重のデータ群は利用せず、ステップS11に移行する。メインマイコン33は、最新の荷重データを取得した時(ステップS3)からの所定時間間隔(例えば、100ms)が経過しているかを計時回路(図に示さず)により判断し(ステップS11)、所定時間間隔の経過を監視する(ステップS11でNo)。所定時間間隔が経過すれば(ステップS11でYes)、ステップS3へ戻り、ステップS6の条件を満たすまで同様の処理を繰り返す。
【0080】
誘導領域100内に、重心位置PTが含まれている場合には(ステップS6でYes)、メインマイコン33は、前記データ群を記憶部に保存し(ステップS7)、この保存された前記データ群が、今回の測定で最初に保存されたデータであるか否かを識別する(ステップS8)。前記データ群が最初に保存されたものである場合には(ステップS8でYes)、ステップS11に移行する。メインマイコン33は、所定時間間隔が経過しているかを判断し(ステップS11)、所定時間間隔の経過を監視する(ステップS11でNo)。所定時間間隔が経過すれば(ステップS11でYes)、ステップS3に戻り、ステップS7までの工程を繰り返す。少なくとも2回分のデータ群が保存されている場合には(ステップS8でNo)、今回取得・保存された重心位置PL2と前回取得・保存された重心位置PL1とから、両位置間のX成分、Y成分及び重心移動距離DL(前回の重心位置から今回の重心位置までの軌跡の長さ)を演算し、保存する(ステップS9)。例えば、前回の重心位置PL1が座標(x1,y1)、今回の重心位置PL2が座標(x2,y2)である場合、重心移動距離DL=√{(x1−x2)+(y1−y2)}の関係が成立する。右足側についても同様に重心移動距離DRを演算し、保存する。このように、ステップS7で保存されている重心位置のデータを用いて、左右それぞれの前回の重心位置から今回の重心位置までの軌跡の長さが演算され、記憶部に保存される。
【0081】
メインマイコン33は、前記重心移動距離DL、DRのデータの数が所定回数(有効回数)分に達しているか否かを識別する(ステップS10)。本実施例は、重心移動距離DLとDRについて、ヒストグラムを作成し、左右どちらの足をより動かしているかを判断することを一の目的とする。従って、重心移動距離DL、DRの分布状態を評価するにはある程度の数のデータが必要である。従って、データ数が所定数に達するまで、上述した工程を繰り返す。
【0082】
必要なデータの数が所定数に達していることがメインマイコン33で識別されると(ステップS10でYes)、ステップS7、S9で保存されている重心移動距離DL、DRのX成分、Y成分、重心移動距離DL、DRの最大値、最小値、及び平均値、並びにヒストグラムを表示する(ステップS12)。ヒストグラムは、例えばその縦軸が頻度を示し、横軸が重心移動距離を示すグラフとすることができる。
【0083】
ステップS13では、ステップS12で表示されている種々の情報を用いて左右の足首や膝の柔軟性について検査や評価(比較)がなされる。例えば、重心移動距離の閾値を予め設定しておき、その閾値以上の場合には、足首及び膝の一方又は両方が柔軟であり、閾値未満の場合には、足首及び膝の一方又は両方が硬いといった判定を行うことができる。これは、足首や膝の柔軟性が低いと、足首や膝の可動範囲が狭くなり、重心移動距離が短くなる、という事実に基づいている。
【0084】
図12に示す例では、領域Aに表示されている左足側の荷重の重心位置PLの軌跡は、略楕円状を呈し、重心移動距離DLが長い一方、領域Bに表示されている右足側の荷重の重心位置PRの軌跡は略線状を呈し、重心移動距離DRが短い。これは、重心移動距離DLが長いということは、左足側の足首及び/又は膝の関節は柔軟であり、可動範囲が広い、一方、重心移動距離DRが短いということは、右足側の足首及び/又は膝の関節が硬く、可動範囲が狭い、ということがいえる。足首や膝について、怪我(捻挫や骨折など)をした経緯がある場合には、関節が硬くなったり、一定以上曲げると痛みを伴うために動かす範囲を無意識に少なくしたりすることがある。換言すれば、本実施例の体重計1を用いれば、施術所等において、過去の怪我等が被験者の身体にどの程度影響を及ぼしているかを検査・評価することができたり、また、治療やリハビリテーションの経過や効果の確認をしたりすることが可能となる。
【0085】
〔実施例4の変形例1〕
被験者の足の状態によっては、実施例4のように、被験者の荷重の重心位置PTをリング形状の誘導領域100に沿って移動させることが難しい場合がある。このような場合には、図11に示すフローチャートのステップS1の誘導領域表示においては、リング形状の誘導領域100に替えて、Y軸に沿った直線帯状の誘導領域及び/又はX軸に沿った誘導領域を表示させてもよい。
【0086】
被験者は、Y軸に沿って延在する誘導領域に沿って全荷重の重心位置PTを前後方向(図12のY軸方向)に動くようにのみ身体を動かしたり、X軸に沿って延在する誘導領域に沿って全荷重の重心位置PTを左右方向(図12のX軸方向)に動くようにのみ身体を動かす。図11のステップS1以降の工程における重心位置、重心移動距離DL、DR等の取得は、実施例4と同様に実行できる。このように、被験者の身体の状態に合わせて誘導範囲を変更することで、体重計の使用用途を広げることができる。さらに、誘導領域は、体重計の目的、用途に合わせて種々の形状に変更できることは言うまでもない。
【0087】
〔実施例4の変形例2〕
上述した実施例1乃至実施例4及び実施例4の変形例1では、左載置部3と右載置部5とが、図7のX軸方向に沿って左右に隣り合うように配置されていたが、本変形例2では、2つの載置部が図7のY軸方向に沿って前後に隣り合うように配置される構成としてもよい。この構成によれば、両足を直線状に両載置部に載せた状態で、被験者の荷重全体の重心位置や、左右足の荷重位置の均衡、不均衡を検出することができる。
【0088】
〔実施例5〕
実施例5は、被験者が、一定時間、静止した状態で立位の姿勢をとっている時の、身体状態の変化を取得するための制御工程を行う体重計1である。足の筋肉や関節の状態は、利き足や怪我の有無その他の事情に応じて、左右の足で異なっている。従って、人が両足で立位の姿勢をとる場合に、最初は意識的に両足に均等に体重をかける姿勢をとっていても、時間の経過と共に、無意識のうちに徐々に楽な姿勢をとるようになる。その結果、左足側の荷重及びその重心位置、右足側の荷重及びその重心位置、のそれぞれに変化を生じ、ひいては全荷重の重心位置にも変化が生ずる。この点、従来は、被験者の左足側の荷重と右足側の荷重とをそれぞれ測定し、それらの荷重差のみから評価を行うのが一般的であった。しかしながら、左足側の荷重の重心位置の変化や、右足側の荷重の重心位置の変化を反映していないため、前記のような荷重差のみに基づく評価では、前記のような変化を正確に捉えることは出来なかった。そこで、本実施例では、被験者が、一定時間、静止した状態で立位の姿勢をとっている時の、身体状態の変化を的確に取得することが可能な体重計を説明する。
【0089】
本実施例について図13を参照しつつ説明する。図13は、実施例5に係る体重計の載置部を含む面の位置関係を規定するXY座標系を説明する図である。
【0090】
前記した実施例と同様、サブマイコン63は、被験者が左載置部3及び右載置部5に載った後、各ロードセル7が検知した荷重データ(data1〜data8)を取得する。メインマイコン33は、サブマイコン63が取得した荷重データ(data1〜data8)に基づき、左足側の荷重の重心位置PL、右足側の荷重の重心位置PR、全荷重の重心位置PT、左足側の荷重、右足側の荷重、全荷重のそれぞれの演算を開始する。被験者が自然な状態で立位の姿勢で左載置部3及び右載置部5に載っている時(特に載った直後)は、体が揺動するため、ロードセル7が検知する荷重データは安定しない。そのため、メインマイコン33は、重心位置PL、PR、PT、左足側の荷重、右足側の荷重、全荷重を所定時間間隔(例えば、100ms)で繰り返し求めて、これらの値の変化が所定範囲で安定したかを判断し、安定したと判断した時のロードセル7が検知した荷重データに基づいて演算した、重心位置PL、PR、PT、左足側の荷重、右足側の荷重、全荷重のうち、少なくとも重心位置PL、PRを、第1測定点として設定し、記憶する。
【0091】
サブマイコン63は、その後も所定時間間隔で繰り返し荷重データ(data1〜data8)を取得し、メインマイコン33は、重心位置PL、PR、PT、左足側の荷重、右足側の荷重、全荷重を演算する。メインマイコン33は、第1測定点を設定したときから一定時間(例えば、30秒)が経過した時のロードセル7が検知した荷重データに基づいて演算した、重心位置PL、PR、PT、左足側の荷重、右足側の荷重、全荷重のうち、少なくとも重心位置PL、PRを、第2測定点として設定し、記憶する。なお、第2測定点の設定に際しても、第1測定点と同様にして、安定した値を設定する。
【0092】
メインマイコン33は、第1測定点としての重心位置PLと重心位置PRとを結ぶ第1線Aを設定し、同様に、第2測定点としての重心位置PLと重心位置PRとを結ぶ第2線Bを設定する。さらに、メインマイコン33は、第1線Aと第2線Bとでなす角度βを算出し、表示手段としての表示部21や外部モニタ53に出力する。
【0093】
このように、第5実施例では、測定開始時に取得した第1測定点としての重心位置PLと重心位置PRとを結ぶ第1線Aと、一定時間を経過後に取得した第2測定点としての重心位置PLと重心位置PRとを結ぶ第2線Bと、を取得できるので、所定時間の経過とともに現れる被験者の身体の変化(身体の回転)を示す指標として、角度βを算出することが可能である。この角度βに基づいて、被験者の身体の変化の変化を判定乃至評価することができる。すなわち、付加価値のより高い体重計を提供することができる。
【0094】
なお、上記実施例1乃至実施例5(変形例を含む。)においては、立位した状態で足の情報を取得する構成としたが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、膝を曲げ、腰を少し屈めた状態又はしゃがんだ状態における足の情報を取得する構成とすることも可能である。
【0095】
さらに、本発明は、被験者が静止した状態又は所定の動きをする状態における足の情報を取得する構成に限定されず、例えば、被験者が立位の静止状態から、身体を前後方向(図7のY軸方向)又は左右方向(図7のX軸方向)等に動かす状態へ移行する際の、足の情報を取得することも可能である。例えば、被験者が怪我をしている場合に、静止した状態では、左右足の重心位置の不均衡が見られない場合であっても、その怪我による痛みのために足の動作を開始する際に生じる左右の足の荷重バランスの不均衡を検出することができる。
【0096】
また、被験者は、立位で静止した姿勢から、腰を左右に(被験者の胸が図7のY軸方向に向いている状態からX軸方向に向くように)ひねる動作を行いつつ、左右の足の荷重バランス、左右の足の重心位置を検出することにより、脚や腰の身体情報の取得することも可能である。
【0097】
また、上記実施例1乃至実施例5(変形例を含む。)においては、被験者の身体情報のうち、主として足(特に足首や膝の関節)の情報を検出するものを説明したが、これと同様にして、手や腕(特に手首、肘、肩の関節)の情報を検出するように用いることも可能である。例えば、左手を左載置部3へ、右手を右載置部5へ置き、腕立て伏せや倒立(逆立ち)を行う要領で体を動かす状態における、被験者の手や腕(特に手首、肘、肩の関節)の情報を取得することも可能である。
【0098】
本実施形態では、一般家庭で使用される表示部と測定部が一体構造の体重計を用いて説明したが、業務用に使用される表示部と測定部とが別体構造の体重計に本発明が適用できることは言うまでもない。
【0099】
上記の実施例1乃至実施例5(変形例を含む。)の1以上を適宜組み合わせた体重計1を構成してもよいことは言うまでもない。
【0100】
この発明は、その本質的特性から逸脱することなく数多くの形式のものとして具体化することができる。よって、上述した実施形態は専ら説明上のものであり、本発明を制限するものではないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0101】
1 体重計
3 左載置部(第1載置部)
5 右載置部(第2載置部)
7 ロードセル
11 支持部材(支持部材)
13 脚部
15 制御回路基板(制御手段)
17 床面
21 表示部(表示手段)
22 操作部
33 メインマイコン
35 出力端子
37 ケーブル
47 起歪体
48 歪みゲージ
51 アンプ
52 フィルタ
53 外部モニタ(表示手段)
55 PWM積分器
57 ゼロ点調整部
59 EEPROM
61 温度計
63 サブマイコン
64 IICバス
100 誘導領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部材と、
前記支持部材上に離間配置される第1載置部及び第2載置部と、
前記支持部材と前記第1載置部との間に配されて、前記第1載置部への荷重を3点以上で測定可能な複数のロードセルからなる第1ロードセル群と、
前記支持部材と前記第2載置部との間に配されて、前記第2載置部への荷重を3点以上で測定可能な複数のロードセルからなる第2ロードセル群と、
前記第1ロードセル群及び前記第2ロードセル群からの荷重データに基づいて、被験者が前記第1載置部及び前記第2載置部に対してかけた荷重を演算する制御手段と、を有し、
前記制御手段は、所定時間間隔ごとに、前記第1ロードセル群及び前記第2ロードセル群を構成する各ロードセルが検知した各荷重データを取得すると共に、前記第1載置部への荷重の重心位置及び前記第2載置部への荷重の重心位置を演算して、前記第1載置部への荷重の重心位置の移動軌跡及び前記第2載置部への荷重の重心位置の移動軌跡を取得すること
を特徴とする体重計。
【請求項2】
前記制御手段は、前記所定時間間隔ごとに、前記第1ロードセル群及び前記第2ロードセル群を構成する各ロードセルが検知した前記各荷重データを、同時に取得することを特徴とする請求項1に記載の体重計。
【請求項3】
前記制御手段は、前記第1載置部への荷重の重心位置の移動軌跡と、前記第2載置部への荷重の重心位置の移動軌跡と、を表示手段に出力することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の体重計。
【請求項4】
前記制御手段による前記表示手段に対する、前記第1載置部への荷重の重心位置の移動軌跡及び前記第2載置部への荷重の重心位置の移動軌跡の出力は、前記所定時間間隔ごとに前記表示手段の表示画面に随時プロットされるように実施されることを特徴とする請求項3に記載の体重計。
【請求項5】
前記制御手段は、前記第1載置部への荷重の重心位置の前記移動軌跡から演算された近似線を第1基準線として取得し、前記第2載置部への荷重の重心位置の前記移動軌跡から演算された近似線を第2基準線として取得し、前記第1基準線と前記第2基準線とでなす角度を演算することを特徴とする請求項1乃至請求項4のうち、いずれか1に記載の体重計。
【請求項6】
前記制御手段は、前記被験者が、前記第1載置部へ左足を載せ、前記第2載置部へ右足を載せて、前記第1載置部及び前記第2載置部に対してかけた荷重に関して、前記第1基準線と前記第2基準線とでなす角度を、前記被験者の足の開き角度として表示手段に出力することを特徴とする請求項5に記載の体重計。
【請求項7】
前記制御手段は、前記所定時間間隔ごとに、前記第1載置部への荷重と前記第2載置部への荷重、及び/又は、前記第1載置部への荷重と前記第2載置部への荷重との比較結果、を表示手段に出力することを特徴とする請求項1乃至請求項6のうち、いずれか1に記載の体重計。
【請求項8】
前記制御手段は、前記第1載置部への荷重の重心位置の移動軌跡及び前記第2載置部への荷重の重心位置の移動軌跡が所定範囲で安定した時に、前記第1載置部への荷重と前記第2載置部への荷重とを表示手段に出力することを特徴とする請求項1乃至請求項6のうち、いずれか1に記載の体重計。
【請求項9】
前記制御手段は、前記所定時間間隔ごとに、前記第1載置部及び前記第2載置部への全荷重の重心位置を演算して、前記第1載置部及び前記第2載置部への全荷重の重心位置の移動軌跡を取得することを特徴とする請求項1乃至請求項8のうち、いずれか1に記載の体重計。
【請求項10】
前記制御手段は、前記全荷重の重心位置の移動軌跡と、前記全荷重の重心位置を誘導する誘導領域と、前記全荷重の重心位置を前記誘導領域に沿って動かす動作を前記被験者が行なうべき指示と、を表示手段に出力した後に、前記第1載置部への荷重の重心位置の移動軌跡及び前記第2載置部への荷重の重心位置の移動軌跡を取得することを特徴とする請求項9に記載の体重計。
【請求項11】
前記制御手段は、前記被験者が、前記第1載置部へ左足を載せ、前記第2載置部へ右足を載せて、前記第1載置部及び前記第2載置部に対してかけた荷重に関して取得された前記第1載置部への荷重の重心位置の移動軌跡及び前記第2載置部への荷重の重心位置の移動軌跡に基づいて、前記被験者の左足及び右足の関節の柔軟性を判定することを特徴とする請求項10に記載の体重計。
【請求項12】
前記制御手段は、前記第1載置部への荷重の重心位置及び前記第2載置部への荷重の重心位置を取得して第1測定点として設定し、一定時間が経過した後の前記第1載置部への荷重の重心位置及び前記第2載置部への荷重の重心位置を取得して第2測定点として設定するとともに、前記第1測定点としての前記第1載置部への荷重の重心位置と前記第2載置部への荷重の重心位置とを結ぶ第1線を設定し、前記第2測定点としての前記第1載置部への荷重の重心位置と前記第2載置部への荷重の重心位置とを結ぶ第2線を設定し、前記第1線と前記第2線とでなす角度を算出することを特徴とする請求項1乃至請求項11のうち、いずれか1に記載の体重計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−163452(P2012−163452A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24382(P2011−24382)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000133179)株式会社タニタ (303)