説明

体験型研修システム

【課題】言語や映像では伝達することが困難な内容の研修を行うことができる研修システムを提供すること。
【解決手段】研修システム1は、研修用の研修ルーム2と、研修システム1を制御する制御部14と、制御部14からの指示信号に基づいて、所定のにおいを発生させるにおい発生装置20と、研修ルーム2内でにおい発生装置20に所定のにおいを発生させる契機となるトリガ現象を認識するトリガ認識部143と、備え、制御部14は、トリガ認識部143がトリガ現象を認識したことに応じて指示信号をにおい発生装置20に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体験型研修システムに関する。
【背景技術】
【0002】
発電所等多数の機器で構成するプラント施設における現場管理では、施設の管理、監督あるいは作業に携わる関係者が異常兆候を早期に発見し、適切な対応を取ることが要求される。このため、施設の管理、監督あるいは作業に携わる関係者は、どのような状態が異常であるのか、またその兆候としてはどのようなものがあるのかを知ることが有効である。
【0003】
発電所等多数の機器で構成するプラント施設での異常は、各種センサが感知した異常値や、管理システムが検知した電子機器等の異常が管理システムにより報知されることで発見されうる。しかし現場では、これらの異常が生じる兆候となる現象を察知することも可能であることが多い。例えば、発電所等多数の機器で構成するプラント施設において、普段とは異なる音、におい及び振動等が生じていた場合、その施設では何らかの異常が発生又は発生しつつある場合が多い。
【0004】
このような異常の兆候を察知することは、早期発見という点で、何らかの異常が元となって生じる事故等を未然に防ぐため重要となる。このため、施設の管理、監督あるいは作業に携わる関係者は、異常の兆候がどのようなものかを知るようにし、タイムリーに兆候を察知できるようにする体制を整える必要がある。
【0005】
異常の兆候がどのようなものかを教授するものとして様々な研修が行われているが、これらは基本的に視覚や聴覚に訴えるものである。例えば、文章や写真、映像等で異常な状態を示すようなことが行われる。
また、体験型の研修システムとして、画像と音声により疑似体験することができるシステム(例えば、特許文献1)や、視覚や聴覚に加えて触覚に訴える体感装置による振動や、異音及び温度を体験できる装置(例えば、非特許文献1)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−112332号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「『模擬体感装置』による技術系社員研修 中国電力(株)島根原子力発電所」、電気現場技術、2006年9月号、P.61〜P.64
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載されたシステムでは、表示された画像内の対象物について、研修者が所定の箇所をクリックすることでこれに対応する画像が重ねて表示され、対象物のどの部分を点検すればよいのかを疑似体験することができる。また、非特許文献1に記載された装置は、所定の異常について実際にその現象を起こし、異音を聞いたり、振動を体感したりすることができる。
【0009】
しかし、特許文献1のシステムでは、研修者は、実物を触ることはできないため、画面上で点検箇所を確認するにとどまる。また、非特許文献1の体感装置においても、聴覚や触覚を主体とするものである。したがって、研修者は、対象物が現在どのような異常を有しているかについて、視覚、聴覚及び触覚以外の情報について疑似体験することができない。
【0010】
実際には、異常な状態又はその兆候が生じたときに見習いとして立ち会わせ、体験させることが最も効果的であるが、異常が生じるか否かは偶発的であり、実際の体験を計画的にさせることはできない。また、発電所等では安定運用が最優先となるため、研修のために意図的にその異常を起こすことも困難である。
【0011】
そこで、言語や映像等では伝達することが困難な、におい等も体験できる研修を行うことができる施設が求められている。
【0012】
本発明は、言語や映像では伝達することが困難な、においも体験できる研修を行うことができる研修システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)本発明による研修システムは、研修用の研修スペースを有し、当該研修システムを制御する制御手段と、前記制御手段からの指示信号に基づいて、所定のにおいを発生させるにおい発生手段と、前記研修スペース内で前記におい発生手段に前記所定のにおいを発生させる契機となるトリガ現象を認識するトリガ認識手段と、を備え、前記制御手段は、前記トリガ認識手段が前記トリガ現象を認識したことに応じて前記指示信号を前記におい発生手段に送信する。
【0014】
(2)本発明による研修システムは、さらに、音を収集する集音手段と、前記音の所定のパターンを記憶する音パターン記憶手段と、をさらに備え、前記トリガ認識手段は、前記集音手段が集音した音が、前記音パターン記憶手段に記憶された前記所定のパターンのいずれかと合致した場合に、前記トリガ現象として認識する。
【0015】
(3)本発明による研修システムは、さらに、撮像手段と、所定の動作パターンを記憶する動作パターン記憶手段と、前記撮像手段が撮像した画像から、所定のオブジェクトを認識する画像認識手段と、をさらに備え、前記トリガ認識手段は、前記画像認識手段が認識した前記所定のオブジェクトが行った動作が、前記動作パターン記憶手段に記憶された前記所定の動作パターンのいずれかと合致した場合に、前記トリガ現象として認識する。
【0016】
(4)本発明による研修システムは、さらに、前記におい発生手段は、におい成分が個別に格納された複数のにおい成分格納手段と、前記複数のにおい成分格納手段それぞれに設けられた開閉手段と、を有し、前記におい発生手段は、前記指示信号に基づいて、いずれかの前記複数のにおい成分格納手段に設けられた開閉手段を動作させ、一以上の前記におい成分を排出する。
【0017】
(5)本発明による研修システムは、さらに、消臭手段をさらに備え、前記制御手段は、前記におい発生手段が前記所定のにおいを発生させて所定時間経過後に前記消臭手段により消臭を開始する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、言語や映像では伝達することが困難な、においも体験できる研修を行うことができる研修システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る研修システムの構成を示す概念図である。
【図2】本発明の実施形態に係る研修システムの機能構成を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る動作パターン記憶部に記憶されるデータの例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る研修システムの音パターン記憶部に記憶されるデータの例を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る研修システムのにおい情報記憶部に記憶されるデータの例を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係る研修システムのイベント情報記憶部に記憶されるデータの例を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係る研修システムのにおい発生装置の構成を示した図である。
【図8】本発明の実施形態に係る研修システムの研修用制御装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、あくまでも一例であって、本発明の技術的範囲はこれに限られるものではない。
【0021】
図1及び図2を参照して本発明に係る研修システム1の構成について説明する。図1は研修システム1の構成を示す概念図である。図2は、研修システム1の機能構成を示す図である。
【0022】
研修システム1により提供される研修は、研修スペースとなる研修ルーム2で行われる。
研修システム1は、研修システム1全体を制御する制御手段としての研修用制御装置10と、におい発生手段としてのにおい発生装置20と、排気ファン31と、消臭手段としての消臭・脱臭装置32と、スピーカ33a,33bと、集音手段としてのマイク34と、撮像手段としてのカメラ35と、映写装置36と、で構成される。
【0023】
さらに、研修ルーム2には、研修用の机41及び椅子42が配置され、これらの前方に映写装置36から映写される画像を映し出すスクリーン37が配置される。
【0024】
研修ルーム2で行われる研修において、研修用制御装置10が研修中に生じた、においを発生させる契機であるトリガ現象を検知した場合、トリガ現象に応じたにおいを、におい発生装置20に発生させる。トリガ現象は、例えば、スクリーン37に映写された機器等の動きや研修ルーム2内で生じた音等が該当する。詳細は後述する。
【0025】
研修用制御装置10は、記憶部11と、入力部12と、表示部13と、制御部14と、により構成される。
【0026】
記憶部11は、ハードディスク装置や光磁気ディスク装置、フラッシュメモリ等の不揮発性のメモリや、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、あるいはこれらの組合せによるコンピュータ読み取り可能及び書き込み可能な記憶媒体により構成される。
また、記憶部11は、動作パターン記憶部111と、音パターン記憶部112と、におい情報記憶部113と、イベント情報記憶部114と、を少なくとも有する。
【0027】
動作パターン記憶部111は、後述のにおい発生装置20に、においを発生させる契機(トリガ現象)となる動作のパターンを記憶する。
【0028】
ここで、図3を参照して動作パターン記憶部111に記憶されるデータについて説明する。図3は、動作パターン記憶部111に記憶されるデータの例を示す図である。
動作パターン記憶部111には、動作IDと動作パターンのデータが、「動作ID」列と「動作パターン」列とにそれぞれ関連付けて記憶されている。
【0029】
動作IDは、動作パターンのデータを一意に示すものである。動作パターンは、カメラ35が撮影した画像に基づいて、後述のトリガ認識部143がトリガ現象として認識する動作のパターンを示すデータである。トリガ現象となる動作としては、例えば、映写装置36がスクリーン37に映した画像に示された機器等の動きや、カメラ35の撮影領域内に置かれたデモ用の器具(図示せず)等の所定の動きがある。
【0030】
図2に戻って、音パターン記憶部112は、後述のにおい発生装置20に、においを発生させる契機(トリガ現象)となる音のパターンを記憶する。
【0031】
ここで、図4を参照して音パターン記憶部112に記憶されるデータについて説明する。図4は、音パターン記憶部112に記憶されるデータの例を示す図である。
音パターン記憶部112には、音IDと音パターンのデータが、「音ID」列と「音パターン」列とにそれぞれ関連付けて記憶されている。
【0032】
音IDは、音パターンのデータを一意に示すものであり、数字、記号、文字又はこれらの組合せにより構成されたデータである。音パターンは、後述のトリガ認識部143がトリガ現象として認識する音のパターンに関するデータである。このデータは、例えば音声波形や音信号のスペクトル等を示すデータや、音声信号から言語を認識する場合の単語を示すデータ又は当該単語に対応する音声波形を示すデータである。
【0033】
図2に戻って、におい情報記憶部113は、におい発生装置20により発生させるにおいに関する情報が記憶される。
【0034】
ここで、図5を参照して、におい情報記憶部113に記憶されるデータについて説明する。図5は、におい情報記憶部113に記憶されるデータの例を示す図である。
におい情報記憶部113には、イベント名と、におい情報とがそれぞれ「イベント名」列と「におい情報」列とにそれぞれ関連付けて記憶されている。イベント名は、におい発生装置20がにおいを発生させるイベントの名称を示すデータである。
【0035】
におい情報は、におい発生装置20が発生させるにおいに関する情報である。具体的には、におい成分が収容されるにおい発生装置20のカートリッジ番号と混合割合で示される。例えば、図5の「におい情報」列に示す「1(100)」のうち、「1」はカートリッジ番号を示し、括弧内の数値は混合割合を示す。したがって、「1(100)」と示された場合は、におい発生装置20は、カートリッジ番号1番に収容されているにおい成分のみ(100%)を放出することを示す。
【0036】
同様に、「2(70)+3(30)」と示されている場合は、におい発生装置20は、カートリッジ番号2番に収容されているにおい成分と、カートリッジ番号3番に収容されているにおい成分とを、それぞれ70%と30%の割合で混合して放出することを示す。
【0037】
図2に戻って、イベント情報記憶部114は、イベントに関する情報を記憶する。このイベントとは、本実施形態では、研修用制御装置10があるトリガ現象を検知した場合に、当該トリガ現象に対応するにおいをにおい発生装置20に発生させることをいう。イベント情報記憶部114に記憶される情報は、研修を行う講師により、どのようなイベントを生じさせるかについて、予め設定され、記憶される。
【0038】
ここで、図6を参照して、イベント情報記憶部114に記憶されるデータについて説明する。図6は、イベント情報記憶部114に記憶されるデータの例を示す図である。
イベント情報記憶部114には、イベントを発生させるトリガの種類と、イベント名と、時間範囲とが「トリガ」列、「イベント名」列及び「時間範囲」列にそれぞれ格納されている。
【0039】
「トリガ」列には、図3又は図4で示す動作ID又は音IDといった研修用制御装置10がトリガ現象として認識する動作又は音の種類を示すデータが格納される。
「イベント名」列には、図5に示す「イベント名」列に格納されているイベントの名称が格納される。
【0040】
「時間範囲」には、当該イベント名で指定されたイベントを発生させる時間範囲が記憶される。例えば、時間範囲が「10:00〜11:00」となっていた場合、研修用制御装置10は、当該イベントのイベントを当該時間帯にのみ発生させる。したがって、図5の例でいうと、研修用制御装置10は、トリガ「A01」の動作等を10時から11時30分の時間範囲内に認識した場合にのみイベント「AAA」を発生させ、他の時間帯でトリガ「A01」と同じ動作等がなされたとしても、トリガ現象としては認識せず、イベント「AAA」を発生させない。
【0041】
図2に戻って、入力部12は、研修用制御装置10に対する入力の受け付けを行うものであり、キーボード及びマウス、タッチペン、タッチパネル、その他専用のボタン類等により構成される。本実施形態では、研修を行う講師が操作する操作用パネルである。
【0042】
表示部13は、研修ルーム2内の講師用ディスプレイである。表示部13は、研修を行う講師にデータの入力を受け付ける画面を表示したり、研修用制御装置10による演算処理結果の画面を表示したりするものであり、ブラウン管表示装置(CRT)、液晶表示装置(LCD)等のディスプレイ装置を含む。
【0043】
制御部14は、研修用制御装置10の各処理の実行を制御する。制御部14は、CPU(Central Processing Unit:中央処理演算装置)等により構成される。制御部14は、下記の各部の機能を実現するためのプログラムをメモリ(図示せず)に読み込んで実行することによりその機能を実現させるものであってもよいし、また、専用のハードウェアにより実現されるものであってもよい。
【0044】
制御部14は、画像認識部141と、音認識部142と、トリガ認識部143と、を少なくとも備える。
【0045】
画像認識部141は、所定のオブジェクトの動きを認識する。この所定のオブジェクトは、例えば、映写装置36がスクリーン37に映写した機器等の映像や、カメラ35の撮影領域内に配置された実験器具やデモ用装置等の特定の物体、若しくはその他の動きのあるもの等任意であってよい。本実施形態では、画像認識部141は、カメラ35の撮影領域において動きのあるものを認識する。
【0046】
動きを認識するには、既存の技術を任意に使用することができる。例えば、画像認識部141は、カメラ35が撮影した画像中のある瞬間のフレームとその次のフレームとを比較して、色相等が異なる画素により形成される領域を抽出し、フレーム間の動きベクトルを計算することによりオブジェクトの動きを認識する。
【0047】
音認識部142は、所定の音を認識する。本実施形態では、マイク34が集音した音を認識する。認識する音としては、スピーカ33a,33bから出力された音声を中心として、その他デモ用の装置等が何らかの動作をしたときに生じた音、講師の声等、任意に設定することができる。音認識部142は、言語を認識する場合は、音声信号の波形等の音響の情報から特徴量を抽出し、特徴量に基づく波形パターンと、所定の言語の波形パターンとを比較して、言語を認識する。また、音認識部142は、言語以外を認識する場合は、音を示す信号の波形パターンを認識する。
【0048】
トリガ認識部143は、画像認識部141が認識した所定の動作又は音認識部142が認識した所定の音がトリガ現象であるか否かを判別する。詳細には、トリガ認識部143は、画像認識部141が所定の動作を認識した場合、又は音認識部142が所定の音を認識した場合に、この動作又は音がトリガ現象である動作又は音であるか否かを判別する。さらに、トリガ認識部143は、動作又は音を認識した時刻が、イベントを発生させる所定の時間範囲内であるか否かを判別する。そして、所定の時間範囲内である場合、当該トリガ現象により発生させるにおいの情報をにおい発生装置20に送信する。
【0049】
におい発生装置20は、研修用制御装置10からの指示信号に基づいてにおいを発生させる装置である。ここで、図7を参照してにおい発生装置20の構成を説明する。図7は、におい発生装置20の構成を示した図である。
【0050】
におい発生装置20は、制御部21と、通信部22と、バルブ駆動回路23a,23b,23c,23d,23e(以下、総称する場合はバルブ駆動回路23とする)と、バルブ24a,24b,24c,24d,24e(以下,総称する場合はバルブ24とする)と、においカートリッジ25a,25b,25c,25d,25e(以下、総称する場合はにおいカートリッジ25とする)と、におい発生装置20を移動可能とするキャスター26と、を有する。
【0051】
制御部21は、通信部22が研修用制御装置10からの指示信号を受信したことに応じて、指示信号に対応するバルブ駆動回路23を介してバルブ24を駆動させ、においカートリッジ25に収容されるにおい成分を放出させることによりにおいを発生させる。
【0052】
においカートリッジ25は、発生させたにおいを発生させるにおい成分を収容する。このにおい成分は研修ルーム2で行われる研修に応じて選択され、においを発生させるにおい成分の元となる液体がにおいカートリッジ25に収容される。
【0053】
また、におい成分を発生させるものとしては、液体に限らず、気体又は固体であってもよい。におい成分を発生させるものが固体若しくは液体である場合には、加熱器をさらに備えることが好ましい(図示せず)。例えば、臭気を捕集して吸着させた吸着剤又はにおい成分を発生させる固体若しくは液体をにおいカートリッジ25内に収容しておき、制御部21は、研修用制御装置10からの指示信号に応じて指示信号に該当するにおいカートリッジ25を加熱器により加熱して、におい成分を気化させるようにしてもよい。
【0054】
排気ファン31は、研修ルーム2内の換気を行う。本実施形態では、排気ファン31は、研修用制御装置10からの指示信号により、消臭・脱臭装置32が稼働を開始するのに伴って作動する。なお、排気ファン31は、消臭・脱臭装置32と共に稼働を開始するのに限らず、研修用制御装置10からの指示信号により、適宜稼働を開始させて研修ルーム2内の換気を行うことが好ましい。換気のための適切な外気の取り入れを考慮することはいうまでもない。
【0055】
消臭・脱臭装置32は、研修ルーム2内の消臭を行う装置である。におい発生装置20がにおいを発生させた場合、消臭・脱臭装置32は、におい発生装置20が稼働してから所定時間経過後に研修用制御装置10からの指示信号により稼働を開始する。消臭・脱臭装置32は、消臭機能及び脱臭機能の両方を備えてもよく、いずれか一方を備えていてもよい。消臭・脱臭装置32が備える消臭機能は、例えば、フィトンチッド等の所定の成分やオゾンを放出する等、既存の方法を利用することができる。また、消臭・脱臭装置32が備える脱臭機能としては、光触媒による分解、活性炭や水等を利用したフィルターへの吸着等、既存の方法を利用することができる。
また、消臭・脱臭装置32は、におい発生装置20と同様に移動可能とするキャスター321を有する。
【0056】
スピーカ33a,33bは、音声を出力する出力装置であり、マイク34は、音声を集音し、電気信号に変換する入力装置である。マイク34は、研修を行う講師の体に付着させるイヤホンマイクを図示しているが、これに限らず、任意の場所に設置して、研修ルーム2内の音を集音するようにしてもよい。また、カメラ35は、画像認識部141が認識するための画像を撮影し、研修用制御装置10に入力する。カメラ35は主としてスクリーン37を中心とした領域を撮影するが、場合により特定の領域にズームインするようにしてもよい。
【0057】
映写装置36は、スクリーン37に向けて所定の画像を投影する。所定の画像は、研修用制御装置10が再生するビデオ等の映像でもよく、また電子データにより作成されたプレゼン用のデータを出力したものであってもよい。
【0058】
図8を参照して研修用制御装置10の処理について説明する。図8は、研修用制御装置10の処理の流れを示すフローチャートである。
【0059】
ステップS11では、研修用制御装置10の制御部14は、マイク34が集音した音声、及びカメラ35が撮影した画像それぞれについて、認識処理を行う。制御部14の画像認識部141は、カメラ35から画像データを受信したことに応じて画像の認識処理を行う。また、制御部14の音認識部142はマイク34から音信号を受信したことに応じて、入力された音を認識する。
【0060】
ステップS12では、研修用制御装置10の制御部14は、認識された動作又は音等の各種現象がトリガ現象であるか否かを判別する。制御部14のトリガ認識部143は、動作パターン記憶部111又は音パターン記憶部112を参照して、画像認識部141が認識した動作又は音認識部142が認識した音が、動作パターン記憶部111に記憶された動作パターン又は音パターン記憶部112に記憶された音パターンに該当するか否かを判別する。トリガ認識部143は、認識された動作又は音がトリガ現象であると判別した場合(ステップS12でYESの場合)には、ステップS13に処理を移す。また、トリガ認識部143は、認識された動作又は音声がトリガ現象ではないと判別した場合(ステップS13でNOの場合)には、処理を終了する。
【0061】
ステップS13では、研修用制御装置10の制御部14は、現在の時刻がイベントを発生させる時間範囲内か否かを判別する。具体的には、制御部14は、イベント情報記憶部114を参照して、現在の時刻が設定されたイベントを発生させる時間範囲内であるか否かを判別する。制御部14は、現在の時刻が設定されたイベントを発生させる時間範囲内であると判別した場合(ステップS13の判別でYESの場合)には、ステップS14に処理を移す。また、制御部14は、現在の時刻が設定されたイベントを発生させる時間範囲内ではないと判別した場合(ステップS13の判別でNOの場合)には、処理を終了する。
【0062】
ステップS14では、研修用制御装置10の制御部14は、におい発生装置20に指示信号を送信して、所定のにおいを発生させる。制御部14は、イベント情報記憶部114を参照して、トリガ現象に関連付けられたイベント名を読み出す。そして、制御部14は、におい情報記憶部113を参照し、該当するイベント名に関連付けられたにおい情報を読み出し、においを発生させる旨の指示信号と共に、におい発生装置20に送信する。
におい発生装置20は、研修用制御装置10から受信した指示信号に基づいてバルブ24を駆動させ、においカートリッジ25内のにおい成分を放出し、においを発生させる。
【0063】
ステップS15では、研修用制御装置10の制御部14は、においを発生させる旨の指示信号を送信してから所定時間経過したか否かを判別する。この所定時間は、研修を行う講師等が任意に設定可能である。制御部14は、所定時間経過したと判別した場合(ステップS15でYESの場合)はステップS16に処理を移す。また、制御部14は、所定時間経過していないと判別した場合(ステップS15でNOの場合)はステップS15の処理を再度行う。
【0064】
ステップS16では、研修用制御装置10の制御部14は、消臭を開始させる。詳細には、制御部14は、におい発生装置20に、においの発生を停止させる旨の指示信号を送信すると共に、消臭・脱臭装置32及び排気ファン31に稼働開始の指示信号を送信する。
【0065】
本実施形態によれば、におい発生手段としてのにおい発生装置20とトリガ認識手段としてトリガ認識部143を備えることにより、研修においてトリガ現象を認識し、トリガ現象に応じたにおいを発生させることができるため、嗅覚を利用した研修を提供することができる。
【0066】
また、本実施形態によれば、音認識部142が認識した音声や画像認識部141が認識した動作がトリガ現象として認識されるので、におい発生装置20や消臭・脱臭装置32等の操作により講義を中断させずにスムーズに研修を進めることができる。また、トリガ現象が所定の音声や動作であることにより、研修の参加者に気づかれないような現象等をトリガとしてにおいを発生させることができるので、偶発性を演出したり、急な状況に参加者が対応できるかを訓練したりする等、様々な方式の研修に応用することができる。
【0067】
また、本実施形態によれば、研修システム1は消臭・脱臭装置32及び排気ファン31を備えるため、におい発生装置20が発生させたにおいを迅速に消すことができる。このため、先に発生させたにおいと後に発生させたにおいとが混じるのを防止したり、不快なにおいを発生させた場合における人体への影響を低減させたりすることができる。
【0068】
また、本実施形態によれば、においを発生させるイベントには、イベントを発生させる時間範囲を定めることができるので、異なる時間帯にトリガとなる動作がなされたり、音声が発せられたりした場合でも、意図しないイベントが発生することを防止することができる。
【0069】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限るものではない。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0070】
上述の実施形態では、研修用制御装置10が発生させるイベントとして、におい発生装置20からにおいを発生するとしたがこれに限らない。例えば、研修ルーム2に配置された机41又は椅子42を振動させる振動装置を備え、研修用制御装置10の制御部14からの指示信号により振動を発生させるようにしてもよい。これにより、研修者は、においだけでなく、異常時に発生する振動も体感することができる。
【0071】
また、上述の実施形態では、研修システム1は、研修ルーム2の前方にスピーカ33a,33bを備えるとしたが、これに限らず、研修ルーム2内の配置された机41毎又は椅子42毎にスピーカを備えてもよい。音源が研修者の近くとなるため、より臨場感の高い体験を演出することができる。
【0072】
また、上述の実施形態では、消臭・脱臭装置32は、におい発生装置20が稼働してから所定時間経過後に研修用制御装置10からの指示信号により稼働を開始するとしたが、これに限らない。例えば、消臭・脱臭装置32は、におい発生装置20の稼働に関係なく、研修用制御装置10からの指示信号に応じて、稼働してもよい。研修用制御装置10は、例えば、研修前に一定時間消臭・脱臭装置32を稼働させて外乱臭気の除去を行うことができる。この場合、研修用制御装置10は、研修前の消臭・脱臭装置32の稼働について、所定のプログラムを記憶部11に記憶させておき、シーケンス化することが好ましい。さらには、研修用制御装置10は、排気ファン31を消臭・脱臭装置32と同時に稼働させたり、消臭・脱臭装置32の稼働後に、におい発生装置20により芳香を発生させたりするようにしてもよい。
【0073】
上述の実施形態では、研修システム1は、研修ルーム2内の前方に配置された、におい発生装置20を備えるとしたが、これに限らない。例えば、におい発生装置20は、研修ルーム2内に配置された机41毎又は席毎に設けるようにしてもよい。この場合、消臭・脱臭装置32も、机41毎又は席毎に設けられたにおい発生装置20に近くにそれぞれ配置することが好ましい。
これにより、席に着いている研修者に、においを感じさせるため高濃度のにおい成分を大量に放出させる必要がない。また、におい発生装置20がいわゆる悪臭を発生させる場合でも、低濃度のにおい成分を少量放出させればよいので、研修ルーム2内の換気や、発生させたにおいの消臭が容易となる。さらには、上述の実施形態におけるにおい発生装置20を併用して、机41毎又は席毎ににおいを発生させたり、研修ルーム2全体に、においを発生させたり等、研修を行う講師が状況によって合理的な運用を選択することが可能となる。
【0074】
上述の実施形態では、研修システム1は、研修ルーム2内に研修用制御装置10を備えるとしたがこれに限らない。例えば、研修ルーム2の外に専用の部屋を設け、その部屋内に設けるようにしてもよい。研修用制御装置10を配置した部屋に鍵をかける等して隔離することで、研修ルーム2内のトラブルによる故障や盗難等を防止することができる。
【符号の説明】
【0075】
1 研修システム
2 研修ルーム
10 研修用制御装置
11 記憶部
14 制御部
20 におい発生装置
23 バルブ駆動回路
24 バルブ
25 においカートリッジ
31 排気ファン
32 消臭・脱臭装置
34 マイク
35 カメラ
36 映写装置
111 動作パターン記憶部
112 音パターン記憶部
113 におい情報記憶部
114 イベント情報記憶部
141 画像認識部
142 音認識部
143 トリガ認識部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
研修用の研修スペースを有する研修システムであって、
当該研修システムを制御する制御手段と、
前記制御手段からの指示信号に基づいて、所定のにおいを発生させるにおい発生手段と、
前記研修スペース内で前記におい発生手段に前記所定のにおいを発生させる契機となるトリガ現象を認識するトリガ認識手段と、を備え、
前記制御手段は、前記トリガ認識手段が前記トリガ現象を認識したことに応じて前記指示信号を前記におい発生手段に送信する研修システム。
【請求項2】
請求項1に記載の研修システムであって、
音を収集する集音手段と、
前記音の所定のパターンを記憶する音パターン記憶手段と、をさらに備え、
前記トリガ認識手段は、前記集音手段が集音した音が、前記音パターン記憶手段に記憶された前記所定のパターンのいずれかと合致した場合に、前記トリガ現象として認識する研修システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の研修システムであって、
撮像手段と、
所定の動作パターンを記憶する動作パターン記憶手段と、
前記撮像手段が撮像した画像から、所定のオブジェクトを認識する画像認識手段と、をさらに備え、
前記トリガ認識手段は、前記画像認識手段が認識した前記所定のオブジェクトが行った動作が、前記動作パターン記憶手段に記憶された前記所定の動作パターンのいずれかと合致した場合に、前記トリガ現象として認識する研修システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の研修システムであって、
前記におい発生手段は、
におい成分が個別に格納された複数のにおい成分格納手段と、
前記複数のにおい成分格納手段それぞれに設けられた開閉手段と、を有し、
前記におい発生手段は、前記指示信号に基づいて、いずれかの前記複数のにおい成分格納手段に設けられた開閉手段を動作させ、一以上の前記におい成分を排出する研修システム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の研修システムであって、
消臭手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記におい発生手段が前記所定のにおいを発生させて所定時間経過後に前記消臭手段により消臭を開始する研修システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−203685(P2011−203685A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73430(P2010−73430)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)