説明

余長処理トレー

【課題】 コストダウンを図るとともに容易に小型化することのできる余長処理トレーを提供する。
【解決手段】 光通信に使用する光ファイバ11の余長部分11aを収納する余長処理トレーであって、板材20を切起こして光ファイバ11を巻回する周回経路21を形成した構成を有している。このため、余長処理トレー10の小型化が可能であるとともに、金型が不要になりコストダウンを図ることができる。なお、切起こし22は、切起こし22の平面が周回経路21に沿った例えば楕円の線上に配置するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信に使用する光ファイバの余長部分を収納する余長処理トレーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の余長処理トレーとしては、図4に示すようなものが開示されている(例えば特許文献1参照)。
この余長処理トレーのトレー本体101は、中央部に空間部102を有する略楕円状の底板103と、底板103の外周部に立設された外周壁104および空間部102の内周縁に沿って立設された内周壁105よりなり、外周壁104と内周壁105の間に、上面が開口した環状の光ファイバ収容室106が形成されている。トレー本体101の外周壁104には、長円側の両端にそれぞれ2個ずつ切欠き107a、107bが形成されている。これらの切欠き107a、107bにより光ファイバ108の余長部108aを光ファイバ収容室106へ導入したり、光ファイバ収容室106に収容されている光ファイバ108の余長部108aを光ファイバ収容室106から延出できるようになっている。
【0003】
光ファイバ収容室106の外側を囲む外周壁104の上部開口縁からは、光ファイバ収容室106方向へ複数の外側突出片109が、略水平に突設されている。一方、外周壁104と内周壁105に囲まれた光ファイバ収容室106では、内周壁105の上部開口縁から内側突出片110が略水平に突設されている。外側突出片109と内側突出片110とは互いに重なる長さとなっており、光ファイバ収容室106に収容されている光ファイバが上方へ突出しないようになっている。また、光ファイバ収容室106には、光ファイバ108に取付けられているアイソレータ111を収容するアイソレータ収容部112と、光ファイバ108に取り付けられているカプラ113を収容するカプラ収容部114が設けられている。
【特許文献1】特開2002−22970号公報(図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述した樹脂製の余長処理トレーの場合には、成型の際の金型が複雑になりコストアップを招くとともに、小型化が困難であるという問題があった。また、板材に光ファイバを留めるクランパを設けた余長処理トレーの場合には、部品点数が増えてコストアップを招くとともに、クランプ材の形状によっては小型化が困難であるという問題があった。
【0005】
本発明は、従来の問題を解決するためになされたもので、コストダウンを図るとともに容易に小型化することのできる余長処理トレーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の余長処理トレーは、光通信に使用する光ファイバの余長部分を収納する余長処理トレーであって、板材を切起こして前記光ファイバを巻回する周回経路を形成した構成を有している。
【0007】
この構成により、余長処理トレーを作成する際に板材を切起こして、光ファイバを巻回する周回経路を形成するため、小型化が可能であるとともに、金型が不要になりコストダウンを図ることができる。なお、切起こしは、切起こしの平面が周回経路に沿った例えば楕円の線上に位置するように配置する。
【0008】
また、本発明にかかる余長処理トレーは、前記板材が樹脂製である構成を有している。
【0009】
この構成により、板材を切起こす際に、金属の場合に生じるような光ファイバを傷付けるバリが生じないので、工数を削減することができる。また、絶縁性のある樹脂を用いているので、金属板を用いた場合のように絶縁に留意する必要がない。
なお、余長処理トレーの製造に用いる樹脂としては、ナイロン、PP、ゴム、ウレタン等を例示することができる。
【0010】
さらに、本発明にかかる余長処理トレーは、少なくとも一部の前記切起こしの上部が嵌合可能な切欠きを有し、前記板材に被せて前記周回経路に収容されている光ファイバを覆う蓋部材を有する構成を有している。
【0011】
この構成により、板材から切起こされた少なくとも一部の切起こしの上部が蓋部材の切欠きに嵌合するので、切起こしが戻るのを防止するとともに、収容されている光ファイバを覆うことができる。
【0012】
さらに、本発明にかかる余長処理トレーは、少なくとも一部の前記切起こしが、前記光ファイバを配線可能な内部空間を有するC字状である構成を有している。
【0013】
この構成により、板材から切起こされた少なくとも一部の切起こしが、C字状の内部空間を有しているので、この内部空間に光ファイバを通すことにより、確実に光ファイバを保持することができる。また、内部空間に配線された光ファイバが、切起こしが戻るのを防止することができる。なお、この場合の切起こしは、周回経路と直交する方向に設けるようにする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、板材を切起こして前記光ファイバを巻回する周回経路を形成することにより、小型化が可能であるとともに、金型が不要になりコストダウンを図ることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態の余長処理トレーについて、図面を用いて説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態の余長処理トレーの分解斜視図、図2は切起こしの正面図である。
図1において、余長処理トレー10は、光通信に使用する光ファイバ11の余長部分11aを収納するものであって、板材20を切起こして光ファイバ11を巻回する周回経路21を形成した構成である。
【0016】
板材20には、ナイロン、PP、ゴム、ウレタン等の樹脂を用いることができ、切起こし22部分の1辺を残して3辺に切込みを入れ、この1辺から曲げ上げて切起こし22を形成している。切起こし22は、楕円形状に沿った周回経路21を形成するように配置されており、周回経路21の内側および外側に切起こし22を設けている。なお、周回経路21の円弧部分21aに設けられている内側の切起こし22は、半径が光ファイバ11の最小曲げ半径よりも大きな例えば30mmとなるように配置されていて、光ファイバ11が最小曲げ半径よりも小さな半径で曲げられるのを防止している。また、外側の切起こし22は、光ファイバ11が真っ直ぐに戻ろうとするのを抑えて、周回経路21に沿って収容するようにしている。
【0017】
余長処理トレー10は、例えば携帯電話の基地局の通信機ラック等のスロットに挿入するためにカード状となっており、板材20はカード状の基板23に取付けられている。基板23の前端(図1中左端)には、通信機ラック等に実装したときにラックの蓋となる矩形状の前板24が取付けられている。前板24における基板23表面に対応する高さ位置には切欠き24aが設けられており、周回経路21に収容されている光ファイバ11の一端側が切欠き24aから余長処理トレー10の外部に導き出されている。なお、光ファイバ11の他端側は、基板23に接続されており、通信機ラック等に実装した際に通信機側に接続されるようになっている。
【0018】
板材20の上方には、少なくとも一部の切起こし22の上部が嵌合可能な切欠き31を有し、板材23に被せて周回経路21に収容されている光ファイバ11を覆う蓋部材30が設けられている。
従って、全ての切起こし22の上部が蓋部材30の切欠き31に係止されるようにしてもよいが、一部の切起こし22のみを係止するようにしてもよい。これにより、切起こし22の上端部を蓋部材30によって固定することができるので、切起こし22が元に戻ろうとするのを防止することができる。
【0019】
なお、図2に示すように、切起こし22の上端面からさらに上方に突出する取付部25を設けるとともに、蓋部材30に設ける切欠き31の大きさを取付部25の寸法に合わせて形成し、取付部25を切欠き31に貫通させて突出した部分を折り曲げるようにする。これにより、蓋部材30を板材20に取付けて脱落を防止することができる。
【0020】
以上、説明したような本発明の実施の形態の余長処理トレー10によれば、樹脂製の板材20を切起こして形成した切起こし22で光ファイバ11を巻回する周回経路21を形成することにより、余長処理トレー10の小型化が可能になるとともに、金型が不要になるのでコストダウンを図ることができる。
【0021】
なお、以上の説明では、切起こし22を周回経路21に沿って設けた場合について説明したが、これに限らず、少なくとも一部の切起こし22Aを周回経路21に直交する方向に設けるようにしてもよい。すなわち、図3に示すように、周回経路21に直交する方向に設ける切起こし22Aの形状を、光ファイバ11を配線可能な内部空間22aを有するC字状とする。従って、光ファイバ11を切起こし22Aの開口部22bから内部空間22aに押し込むことにより光ファイバ11を切起こし22Aに固定することができると同時に、光ファイバ11が切起こし22Aの変形を防止するので、前述した蓋部材30が設けられていない場合でも切起こし22が元に戻るのを防止することができる。また、切起こし22Aの上に取付部25(図2参照)を設けて、蓋部材30を取付けるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0022】
以上のように、本発明に係る余長処理トレーは、板材を切起こして前記光ファイバを巻回する周回経路を形成することにより、小型化が可能であるとともに、金型が不要になりコストダウンを図ることができるという効果を有し、光通信に使用する光ファイバの余長部分を収納する余長処理トレー等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態における余長処理トレーの分解斜視図
【図2】切起こしの拡大正面図
【図3】切起こしの別の例を示す正面図
【図4】従来の余長処理トレーの斜視図
【符号の説明】
【0024】
10 余長処理トレー
11 光ファイバ
11a 余長部分
20 板材
21 周回経路
22 切起こし
22a 内部空間
30 蓋部材
31 切欠き

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光通信に使用する光ファイバの余長部分を収納する余長処理トレーであって、
板材を切起こして前記光ファイバを巻回する周回経路を形成したことを特徴とする余長処理トレー。
【請求項2】
前記板材が樹脂製であることを特徴とする請求項1記載の余長処理トレー。
【請求項3】
少なくとも一部の前記切起こしの上部が嵌合可能な切欠きを有し、前記板材に被せて前記周回経路に収容されている光ファイバを覆う蓋部材を有することを特徴とする請求項1または2記載の余長処理トレー。
【請求項4】
少なくとも一部の前記切起こしが、前記光ファイバを配線可能な内部空間を有するC字状であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の余長処理トレー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−47535(P2006−47535A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−226408(P2004−226408)
【出願日】平成16年8月3日(2004.8.3)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】