説明

余長収容トレーユニット及び融着ユニット

【課題】製造コストを上昇させることなく、ユニット全体の厚さを薄くする。
【解決手段】上下の余長収容トレー5をヒンジ6によって連結して各段毎に開閉可能にした余長収容トレーユニット1であって、余長収容トレーは、表側面5aに設けられ、接続部を係止すると共に、裏面5b側に突出して接続部を収容するスペースを確保する係止部11と、表側面に設けられ、余長部の進入を防止して干渉回避領域12を形成する干渉回避部13と、前後の中央位置にそれぞれ設けられた上段用ヒンジ支点部18及び下段用ヒンジ支点部19とを備えており、係止部11と干渉回避部は余長収容トレーの前後の向きを変えた場合に対応する位置に設けられており、前側のヒンジ支点部と後側のヒンジ支点部とは余長収容トレーの前後の向きを変えても同一形状になるように形成されており、同じ型を用いて成型した余長収容トレーをその前後方向を互い違いにしながら積層したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバの接続部と余長部を収容する余長収容トレーを複数積層し、上下の余長収容トレーをヒンジによって連結した余長収容トレーユニット、及びこれを使用する融着ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバの心線の接続部は余長収容トレーに収容される。この余長収容トレーを複数積層すると共に、上下の余長収容トレーをヒンジによって連結し、各段毎に開閉可能にした余長収容トレーユニットがある(特許文献1)。図8及び図9に余長収容トレーユニット101を示す。上下の余長収容トレー102は片側に設けられたヒンジ103,103によって連結され、各段毎に開閉可能になっている。
【0003】
光ファイバの接続部を係止する接続部収納部104は、余長収容トレー102の上下両面に設けられている。ここで、余長収容トレー102の上面の接続部収納部104は図9中右側に寄せて設けられおり、下面の接続部収納部104は図9中左側に寄せて設けられている。このように、接続部収納部104の位置をずらすことで、余長収容トレー102を積層した場合に上段の下面の接続部収納部104と下段の上面の接続部収納部104とが直接対向しないようにしており、サイズの大きな接続部への対応を容易にしている。作業者は、所望の段の余長収容トレー102を持ち上げてトレー内を露出させて作業を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−235272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の余長収容トレーユニット101では、ユニット全体で見た場合、各段の同じ位置に接続部収納部104が連続して配置されている。接続部収納部104は光ファイバの接続部を収容しており、この部分のトレー厚さを薄くすることができない。そのため、上述の余長収容トレーユニット101では、トレー厚さを薄くすることができない部分が上下に連続することになり、ユニット全体の厚さが厚くなってしまう。
【0006】
ここで、形状が異なる2種類のトレーを準備し、2種類のトレーを交互に積層することでユニット全体の厚さを薄くすることも考えられる。しかしながら、この場合にはトレーの種類が増えてしまい、製造コストが高くなる。
【0007】
本発明は、製造コストを上昇させることなくユニット全体の厚さを薄くすることができる余長収容トレーユニットと、これを使用した融着ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために、請求項1記載の発明は、光ファイバの接続部及び余長部を収容する余長収容トレーを複数積層すると共に、上下の余長収容トレーをヒンジによって連結して各段毎に開閉可能にした余長収容トレーユニットにおいて、余長収容トレーは、表側面に設けられ、接続部を係止すると共に、裏面側に突出して接続部を収容するスペースを確保する係止部と、表側面に設けられ、前記余長部の進入を防止して干渉回避領域を形成する干渉回避部と、前後の中央位置にそれぞれ設けられた上段用ヒンジ支点部及び下段用ヒンジ支点部とを備えており、係止部と干渉回避部は余長収容トレーの前後の向きを変えた場合に対応する位置に設けられており、前側の上段用ヒンジ支点部及び下段用ヒンジ支点部と後側の上段用ヒンジ支点部及び下段用ヒンジ支点部とは余長収容トレーの前後の向きを変えても同一形状になるように形成されており、同じ型を用いて成型した余長収容トレーをその前後方向を互い違いにしながら積層したものである。
【0009】
したがって、各段の余長収容トレーを同じ型を利用して成型することができる。各余長収容トレーをその前後方向を互い違いにしながら積層すると、下段の余長収容トレーの干渉回避部に上段の余長収容トレーの係止部が対向し、下段の干渉回避部に向けて上段の係止部を突出させることができる。
【0010】
この場合、請求項2記載の余長収容トレーユニットのように、余長収容トレーの厚さを接続部の直径よりも薄くすることが好ましい。
【0011】
また、請求項3記載の融着ユニットは、請求項1又は2記載の余長収容トレーユニットを引き出しトレー上に取り付けたものである。したがって、引き出しトレーを引き出すと余長収容トレーユニットが露出し、作業を行うことができる。作業終了後、引き出しトレーを押し戻すと、余長収容トレーユニットを収容することができる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の余長収容トレーユニットでは、各段の余長収容トレーを同じ型を使用して製造することができるので、製造コストを安く抑えることができる。また、下段の干渉回避部に向けて上段の係止部を突出させることができるので、謂わば、接続部の収容のために厚くなる部分(係止部)に薄くできる部分(干渉回避部)を組み合わせることができ、多段にしてもユニット全体を薄くすることができる。
【0013】
ここで、請求項2記載の余長収容トレーユニットのように、余長収容トレーの厚さを接続部の直径よりも薄くすることが好ましい。この場合には、ユニット全体をさらに薄くすることができる。
【0014】
また、請求項3記載の融着ユニットでは、請求項1又は2に記載の余長収容トレーユニットを引き出しトレー上に取り付けているので、引き出しトレーを引き出すことで余長収容トレーユニットが露出し、作業を行うことができる。また、作業終了後に引き出しトレーを戻すことで、余長収容トレーユニットを収容することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の余長収容トレーユニットの実施形態の一例を示し、1段目と2段目の間を開いた状態の斜視図である。
【図2】複数の余長収容トレーを積層した場合に係止部と干渉回避部とが対向する様子を示す断面図である。
【図3】ヒンジを構成する下段用ヒンジ支点部と上段用ヒンジ支点部の各対向面を展開して示し、(A)は係合手段が相手側の対向面に係合していない状態を示す展開図、(B)は係合手段が相手側の対向面に係合している状態を示す展開図である。
【図4】余長収容トレーの斜視図である。
【図5】図4のV−V線に沿う余長収容トレーの断面図である。
【図6】本発明の融着ユニットの実施形態の一例を示し、引き出しトレーを収容した状態の斜視図である。
【図7】本発明の融着ユニットの実施形態の一例を示し、引き出しトレーを引き出した状態の斜視図である。
【図8】従来の余長収容トレーユニットを示す斜視図である。
【図9】従来の余長収容トレーユニットを一部切り欠いて示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の構成を図面に示す形態に基づいて詳細に説明する。
【0017】
図1〜図5に、本発明の余長収容トレーユニットの実施形態の一例を示す。余長収容トレーユニット1は、光ファイバ2の接続部3及び余長部4を収容する余長収容トレー5を複数積層すると共に、上下の余長収容トレー5をヒンジ6によって連結して各段毎に開閉可能にしたものである。
【0018】
まず最初に、余長収容トレー5について説明する。本実施形態では、余長収容トレー5の前後の仕切り壁7F,7Rは直線状に形成され、左右の側壁8L,8Rは両端が内側に進入する円弧状に形成されている。前後の仕切り壁7F,7Rと左右の側壁8L,8Rには心線係止片9が一体成型されている。本実施形態では、前後の仕切り壁7F,7Rに2つの心線係止片9を、左右の側壁8L,8Rに2つの心線係止片9をそれぞれ設けている。ただし、心線係止片9の数はこれに限るものではなく、適宜設定可能である。余長収容トレー5の四隅、即ち仕切り壁7F,7Rと側壁8L,8Rの間には心線導入部10となる隙間が設けられている。余長収容トレー5は、樹脂により一体成型される。
【0019】
余長収容トレー5には、その表側面5aに設けられ、接続部3を係止すると共に、裏面5b側に突出して接続部3を収容するスペースを確保するスリーブ係止部(係止部)11と、表側面5aに設けられ、余長部4の進入を防止して干渉回避領域12を形成する干渉回避部13が設けられている。スリーブ係止部11と干渉回避部13は余長収容トレー5の前後の向きを変えた場合に対応する位置、即ち、前後の向きを変えて重ねた場合に対向する位置に設けられている(図2)。
【0020】
本実施形態の光ファイバ2の接続部3では心線同士を融着し、補強スリーブ14によって補強している。ただし、これに限るものではなく、光コネクタ、光カプラ等を使用して心線同士を接続しても良い。これらの場合には係止部11によって光コネクタ、光カプラを係止する。
【0021】
本実施形態のスリーブ係止部11は溝形状を成しており、補強スリーブ14を横にした状態で収容する。余長収容トレー5の裏面5b側に突出している溝の底板にはスリット15が設けられており、溝の両脇には補強スリーブ14の脱落を防止する凸片16が一体成型されている。両脇の凸片16の間隔は補強スリーブ14の直径よりも若干広く設定されており、一方の脇の凸片16に一体成型されたスプリングアーム17で補強スリーブ14を反対側の脇の凸片16に押し付けることで、補強スリーブ14を係止する。スプリングアーム17を弾性変形させることで、補強スリーブ14を簡単に取り付けたり、取り外したりすることができると共に、繰り返しの使用が可能になる。
【0022】
本実施形態では、最大2本の補強スリーブ14を同時に係止することができるように、上述の溝及び凸片16を2組設けている。即ち、本実施形態のスリーブ係止部11は2本の平行な溝を有し、中央の凸片16を挟んで両側に凸片16を設けている。つまり、3枚の凸片16が並んで設けられている。また、3枚の凸片16は間隔をあけて2箇所に設けられている。スプリングアーム17は各溝毎に設けられており、凸片16に一体成型されている。
【0023】
干渉回避部13は、少なくともスリーブ係止部11の裏面5b側への突出部分11aに対向する領域を干渉回避領域12とするもので、本実施形態では、連続した周壁を余長収容トレー5の表側面5aに一体成型し、周壁に囲まれた領域を干渉回避領域12としている。ただし、心線(余長部4)の進入を防ぐ為の壁としては必ずしも連続した壁に限られるものではなく、間隔をおいて間欠的に並べられた凸部(壁)等でも良い。この場合にも、心線の進入を防いで干渉回避領域12を形成することができる。
【0024】
スリーブ係止部11の突出部分11aの突出量は、積層した場合に下段の余長収容トレー5の表側面5aに当たらない量に設定されている。スリーブ係止部11を裏面5b側に突出させることで、スリーブ係止部11に余長収容トレー5の厚さよりも太い補強スリーブ14を収容可能となる。換言すると、余長収容トレー5の厚さを補強スリーブ14の直径よりも薄くすることができる。本実施形態では、余長収容トレー5の厚さ(図5の符号t):3.5mm、補強スリーブ14の直径:4.0mmとしている。
【0025】
余長収容トレー5には上段用ヒンジ支点部18と下段用ヒンジ支点部19が設けられている。本実施形態では、同一形状の余長収容トレー5を1段ずつ前後の向きを変えながら積層しても同じ位置に上段用ヒンジ支点部18と下段用ヒンジ支点部19が存在するように、余長収容トレー5の前後の中央位置、即ち前後の仕切り壁7F,7Rの外側面中央位置に上段用ヒンジ支点部18及び下段用ヒンジ支点部19をそれぞれ設けている。前後の上段用ヒンジ支点部18及び下段用ヒンジ支点部19は、前後の向きが異なる上下段の余長収容トレー5を連結するために、余長収容トレー5の前後の向きを変えた場合にも同一形状になるように形成されている。即ち、前側の各ヒンジ支点部18,19と後側の各ヒンジ支点部18,19とは、余長収容トレー5の中心を通る垂線C(図4)を中心にした回転対称(180度の回転対称)に設けられている。本実施形態では、前後の仕切り壁7F,7Rの外側から見て、即ち、前側のヒンジ支点部18,19については前方から見て、後側のヒンジ支点部18,19については後方から見て、右側に上段用ヒンジ支点部18、左側に下段用ヒンジ支点部19がそれぞれ設けられている。各ヒンジ支点部18,19は前後の仕切り壁7F,7Rの外側に一体成型されている。
【0026】
各ヒンジ支点部18,19は仕切り壁7F,7Rに沿う中心軸を有する円筒形状を成し、上段用ヒンジ支点部18の上側半部は仕切り壁7F,7Rの上方に突出し、下段用ヒンジ支点部19の下側半部は仕切り壁7F,7Rの下方に突出している。余長収容トレー5を重ね合わせると、上段の余長収容トレー5の下段用ヒンジ支点部19と下段の余長収容トレー5の上段用ヒンジ支点部18とが同軸上に並ぶ。この状態で、各ヒンジ支点部18,19にヒンジピン22を挿入することで、上下の段を開閉可能に連結するヒンジ6が構成される。
【0027】
同一のヒンジ6を構成する下段用ヒンジ支点部19と上段用ヒンジ支点部18との間には、上段の余長収容トレー5を作業時の角度まで開いた状態でスプリング20の付勢力によって係合し上段の余長収容トレー5を開いた状態に維持する係合手段21が設けられている。
【0028】
スプリング20は下段用ヒンジ支点部19と上段用ヒンジ支点部18との各対向面43,43を互いに押し付け合う力を発揮するものである。本実施形態のスプリング20はコイルスプリングであり、ヒンジピン22が挿入され、下段用ヒンジ支点部19とヒンジピン22の端部に係止されたスナップリング23(片方のみ図示)との間に縮めた状態で設けられている。
【0029】
係合手段1は、下段用ヒンジ支点部19と上段用ヒンジ支点部18との各対向面43,43のうち、少なくといずれか一方に設けられ、スプリング20の付勢力によって相手側の対向面43に押し付けられて上段の余長収容トレー5を開く方向の力F(図3(B))を発生させるカム面(以下、カム面21という)である。本実施形態では、上段用ヒンジ支点部18にカム面21を設けているが、下段用ヒンジ支点部19にカム面21を設けても良く、あるいは上段用ヒンジ支点部18と下段用ヒンジ支点部19の両方にカム面21を設けても良い。
【0030】
本実施形態では、余長収容トレー5の四隅に外向き軸部24、内向き軸部25、貫通軸受け部26、貫通軸受け部27が設けられており、ユニット化した場合の開閉中心軸と同軸上に嵌め込み式の軸受け28を形成している。外向き軸部24、内向き軸部25、貫通軸受け部26、貫通軸受け部27は前後の仕切り壁7F,7Rの外側面に一体成型されている。本実施形態では、前側の仕切り壁7Fの左端に内向き軸部25が、前側の仕切り壁7Fの右端に貫通軸受け部27が、後側の仕切り壁7Rの左端に外向き軸部24が、後側の仕切り壁7Rの右端に貫通軸受け部26がそれぞれ設けられている。複数の余長収容トレー5をその前後を交互に入れ替えながら積層する際、下段の内向き軸部25を上段の貫通軸受け部26で受けることで(第1の組み合わせ)、または下段の貫通軸受け部27で上段の外向き軸部24を受けることで(第2の組み合わせ)、ヒンジ6と回転中心軸と同軸の嵌め込み式の軸受け28が構成される。第1の組み合わせの嵌め込み式の軸受け28と第2の組み合わせの嵌め込み式の軸受け28は段毎に交互に構成される。ただし、嵌め込み式の軸受け28を省略しても良い。
【0031】
本実施形態では、余長収容トレー5の四隅近傍に爪部29及び凸部30が設けられており、ユニット化した場合に上下段の余長収容トレー5の開きを防止する開き防止手段31が設けられている。爪部29及び凸部30は前後の仕切り壁7F,7Rの外側面に一体成型されている。本実施形態では、前側の仕切り壁7Fの左端近傍及び後側の仕切り壁7Rの左端近傍に爪部29が、前側の仕切り壁7Fの右端近傍及び後側の仕切り壁7Rの右端近傍に凸部30がそれぞれ設けられている。複数の余長収容トレー5をその前後を交互に入れ替えながら積層した場合、下段の爪部29を上段の凸部30に引っ掛けることで、意図しない余長収容トレー5の開きを防止することができる。爪部29,29を余長収容トレー5の左側に設け、凸部30,30を右側に設けているので、ユニット化した場合に上下の段で爪部29と凸部30との組み合わせの位置が左右交互になり、各段の組み合わせが干渉しないようになっている。
【0032】
次に、余長収容トレーユニット1について説明する。余長収容トレーユニット1は、上述の余長収容トレー5をその前後方向を互い違いにしながら積層して形成される。即ち、同じ型を用いて成型した余長収容トレー5を積層することで形成される。そのため、各段の余長収容トレー5を同じ型を使用して製造することができ、製造コストを安く抑えることができる。本実施形態の余長収容トレーユニット1は光ファイバ2として4心テープ心線用のものであり、5枚(=心線2aの本数分+1枚)の余長収容トレー5を積層している。即ち、各心線2a毎に1枚の余長収容トレー5を使用すると共に、各心線2aが1本に纏められている光ファイバ2から各心線2aへの分割用に1枚の余長収容トレー5を使用している。ただし、必ずしもこの構成に限られるものではなく、例えば心線2a分割用の余長収容トレー5を省略しても良い。また、2本の心線2aに対して1枚の余長収容トレー5を使用しても良い。心線2a分割用の余長収容トレー5を使用することで、各心線2aに分割する部分での光ファイバ2の取り扱いが容易になる。
【0033】
余長収容トレー5をその前後方向を互い違いにしながら重ねると、下段の余長収容トレー5に設けられている上段用ヒンジ支点部18と上段の余長収容トレー5に設けられている下段用ヒンジ支点部19が同軸上に対向して配置される。この状態でヒンジピン22を挿入し、スプリング20を入れてヒンジピン22の両端をスナップリング23で止めることで、ヒンジ6が形成される。
【0034】
なお、上段用ヒンジ支点部18と下段用ヒンジ支点部19は余長収容トレー5の前後に設けられており、複数の余長収容トレー5を積層するとユニットの前後両方に上段用ヒンジ支点部18と下段用ヒンジ支点部19の列が形成されることになるが、片方の列についてヒンジ6を形成する。したがって、余長収容トレー5のヒンジ6とは反対側を持ち上げることで、余長収容トレー5を開くことができる。
【0035】
また、余長収容トレー5をその前後方向を互い違いにしながら重ねると、ヒンジ6と同軸上に嵌め込み式軸受け28が形成される。なお、ヒンジ6の反対側にも内向き軸部25と貫通軸受け部26との組み合わせ、又は貫通軸受け部27と外向き軸部24との組み合わせが形成されることになるが、これらの組み合わせの軸部24,25を予めカットしておくことで、これらの組み合わせが嵌め込み式軸受けとなるのを防止し、余長収容トレー5の開閉に影響を与えないようにする。
【0036】
余長収容トレー5を閉じている状態では、下段の余長収容トレー5の爪部29が上段の余長収容トレー5の凸部30を係止しており、外力を受けた場合の各段のがたつきや意図しない開きが防止されている。
【0037】
この状態で、爪部29を凸部30から外して余長収容トレー5を持ち上げることで、余長収容トレー5を開くことができる。例えば、図1に示すように、一番下の段(以下、1段目という)の余長収容トレー5と下から2番目の段(以下、2段目という。以下、他の段についても同様。)の余長収容トレー5との間を開く場合には、2段目の余長収容トレー5を持ち上げる。2段目から5段目の余長収容トレー5は各段毎に爪部29と凸部30から成る開き防止手段31によって係止されており、一緒に持ち上がる。2段目の余長収容トレー5は1段目の余長収容トレー5との間に設けられたヒンジ6と嵌め込み式軸受け28を中心に回転し、持ち上げられる。
【0038】
そして、1段目の余長収容トレー(下段の余長収容トレー)5について作業を行うのに十分な角度まで2段目の余長収容トレー(上段の余長収容トレー)5が持ち上げられると、上段の余長収容トレー5は係合手段21によって開いた状態に維持される。即ち、スプリング20によってヒンジ6のカム面21が相手側の対向面43に押し付けられることで上段の余長収容トレー5を開状態に維持する力(上段の余長収容トレー5を開く方向の力F。以下、開き力Fという。)が発生する(図3(B))。作業者はこの状態で下段の余長収容トレー5について作業を行うことができる。本実施形態では、上段の余長収容トレー5を下段の余長収容トレー5に対して約90度持ち上げると、カム面21が相手側の対向面43に接触し、開き力Fを発生させる。
【0039】
作業終了後、スプリング20の付勢力に抗して係合手段21による係止を解除することで、上段の余長収容トレー5を閉じることができる。即ち、開き力Fに抗して上段の余長収容トレー5を閉じる(降ろす)と、カム面21が相手側の対向面43に対して摺動する。そして、カム面21が相手側の対向面43から外れると、開き力Fが消滅し、係合手段21による係止が解除される(図3(A))。つまり、上段の余長収容トレー5をある程度まで閉じることで、係合が解除される。
【0040】
上段の余長収容トレー5を下段の余長収容トレー5に重ね合わせると、下段の爪部29が上段の凸部30を係止する(開き防止手段31)。これにより、他の段と同様に、外力を受けた場合のがたつきや意図しない開きが防止される。
【0041】
本実施形態では、余長収容トレーユニット1を図1,図6,図7に示すように横置きにして使用するが、必ずしも横置きの使用に限られるものではなく、縦置きの使用でも良く、あるいは斜めにした状態で使用しても良い。
【0042】
本発明の余長収容トレーユニット1では、各段の余長収容トレー5を同じ型を使用して製造することができるので、製造コストを安く抑えることができる。
【0043】
また、下段の余長収容トレー5の干渉回避部13に向けて上段の余長収容トレー5のスリーブ係止部11を突出させており、接続部3の収容のために厚くなる部分(スリーブ係止部11)に薄くできる部分(干渉回避部13)を組み合わせることで、余長収容トレー5の厚さtを薄くしても補強スリーブ14の収容が可能になる。即ち、余長収容トレー5の厚さtを薄くすることができ、余長収容トレー5の厚さtを補強スリーブ14の直径よりも薄くすることができる。そのため、多段にしてもユニット全体を薄くすることができる。
【0044】
また、本発明の余長収容トレーユニット1では、作業者が余長収容トレー5を開くと、その余長収容トレー5は係合手段21によって開いた状態に止められる。そのため、作業を行う段の余長収容トレー5の内側を露出させた状態で作業を行うことができ、作業者が余長収容トレー5を支えながら作業を行う必要がないので、作業性に優れている。また、余長収容トレー5を開くだけで止めることができると共に、余長収容トレー5をスプリング20の付勢力に抗して閉じるだけで係合を解除することができるので、係合及び係合解除のために特別な操作を行う必要がなく、この点からも作業性に優れており、また、使い勝手も良好である。
【0045】
また、本実施形態では、係合手段21としてカム面を利用しているので、構造が簡単で製造コストの上昇を抑えることができると共に、繰り返し使用しても確実に開き力Fを発生させることができ、信頼性,耐久性に優れている。
【0046】
次に、余長収容トレーユニット1を使用した融着ユニットについて説明する。図6及び図7に、本発明の融着ユニットを示す。融着ユニット32は、ベース板33、引き出しトレー34、サブトレー35より構成されている。
【0047】
ベース板33の背面部には左右一対の取付用折り曲げ部33aが、前面部には左右一対の折り曲げ部33bが、底面部には左右一対の引き出しガイド用レール36がそれぞれ設けられている。図示しないパネルに左右の取付用折り曲げ部33aを例えばねじ止めすることで、融着ユニット32は当該パネルに取り付けられる。また、左右の折り曲げ部33bには、引き出しトレー34の係止片例えば収納時固定用ナイラッチ37を嵌め込む孔38が設けられている。
【0048】
左右の引き出しガイド用レール36は、サブトレー35の両端を案内することで引き出しトレー34の引き出し・収容のためのスライドを可能にするもので、サブトレー35の幅とほぼ同じ間隔をあけて設けられ、サブトレー35の厚さよりも若干厚いスペーサプレート39の上に重ねるようにしてベース板33に例えばねじ止めされている。スペーサプレート39はガイド用レール36よりも幅が狭く、外側縁をガイド用レール36の外側縁に揃えて重ね合わせることで内側にサブトレー35の端部を案内するガイド空間が形成される。また、スペーサプレート39の手前側端にはサブトレー35のストッパとなる段部(以下、ストッパ段部という)39aが設けられており、サブトレー35の脱落が防止されている。サブトレー35の両端の奥側には引き出しトレー34を引き出した場合にストッパ段部39aに当たる段部35aが設けられている。
【0049】
また、ベース板33の両側部の手前側端には、光ファイバ2を融着ユニット32内に導くコードクランプ42が設けられている。
【0050】
引き出しトレー34の奥側縁には左右一対の連結片34aが設けられており、左右の連結片34aはサブトレー35の手前側縁に設けられた凸片35bの両端の連結片35cに回転自在に連結されている。これにより、引き出しトレー34を引き出した場合に下に揺動させて傾斜させることができる。引き出しトレー34を所定の角度まで傾斜させると、引き出しトレー34の左右の連結片34aの角部が凸片35bに当たり、引き出しトレー34の傾斜を維持する。即ち、凸片35bがストッパとなり、引き出しトレー34の傾斜角度を作業し易い角度に維持する。
【0051】
引き出しトレー34の手前側縁には折り曲げ部34bが設けられており、折り曲げ部34bの両端部には、ベース板33の各折り曲げ部33bに設けられた孔38に係合する収納時固定用ナイラッチ37が設けられている。
【0052】
引き出しトレー34の中央には、余長収容トレーユニット1がそのヒンジ6の列を奥側に向けた状態で取り付けられている。したがって、開き防止手段31を外して余長収容トレー5の手前側を持ち上げることで余長収容トレー5を開くことができる。余長収容トレーユニット1は薄型であり、融着ユニット32内に収容することができる。また、引き出しトレー34の左右両側の中央位置にはコードガイド用アールガイド40が、左右のコードガイド用アールガイド40の奥側位置にはコード固定用クランプ41がそれぞれ設けられている。
【0053】
引き出しトレー34の両端部は引き出しガイド用レール36のガイド空間に挿入されている。
【0054】
4心テープ心線(光ファイバ)2は、まず最初に1段目の余長収容トレー5に導かれて4心に分割され、2〜5段目の余長収容トレー5に1本ずつ導かれる。融着ユニット32の両側から4心テープ心線2がそれぞれ導かれ、対応する心線2a毎に2〜5段目の余長収容トレー5内で接続される。
【0055】
4心テープ心線2はベース板33に設けられたコードクランプ42から融着ユニット32内に引き込まれ、引き出しトレー34に設けられた固定用クランプ41によって把持される。4心テープ心線2の固定用クランプ41による把持部分よりも先端側は外被が除去される。外被が除去された4心テープ心線2は、1段目の余長収容トレー5内に奥側の心線導入部10から引き込まれ、仕切り壁7Fの内側→側壁8L又は側壁8Rの内側→仕切り壁7Rの内側を引き回され、余長部4が形成されながら余長収容トレー5内を半周した後、手前側の心線導入部10から引き出される(図7)。4心テープ心線2は余長収容トレー5内で4心に分割される。そして、分割された各心線2aはコードガイド用アールガイド40の内側を引き回されて2〜5段目の余長収容トレー5内に引き込まれる。
【0056】
例えば、5段目の余長収容トレー5内に奥側の心線導入部10から引き込まれた心線2aは、仕切り壁7Fの内側→側壁8L又は側壁8Rの内側→干渉回避部13の内側→側壁8R又は側壁8Lの内側を引き回されて余長部4が形成され、もう1本の心線2aに接続される(図6)。心線2a同士の接続部分を補強する補強スリーブ14はスリーブ係止部11によって係止される。なお、2〜4段目の余長収容トレー5については図示しないが5段目の余長収容トレー5と同様に処理される。
【0057】
各段の余長収容トレー5について作業を行う場合には、左右のナイラッチ37を孔38から外して引き出しトレー34をベース板33から引き出す。サブトレー35の段部35aがスペーサプレート39のストッパ段部39aに当たるまで引き出しトレー34を引き出すと、引き出しトレー34がベース板33の前方に突出して傾斜可能になる。そして、引き出しトレー34を傾斜させると、連結片34aが凸片35bに当たり、引き出しトレー34が作業し易い角度で止まる。
【0058】
この状態では、5段目即ち最上段の余長収容トレー5が露出しているので、5段目の余長収容トレー5について作業を行う場合には、この状態で行う。
【0059】
一方、1〜4段目の余長収容トレー5について作業を行う場合には、作業段の上の段の余長収容トレー5を持ち上げる。例えば、1段目の余長収容トレー5について作業を行う場合には、1段目の余長収容トレー5の爪部29を2段目の余長収容トレー5の凸部30から外し、2段目の余長収容トレー5を持ち上げる。2〜5段目の余長収容トレー5が一体になって持ち上がる。所定の角度まで持ち上げられた2段目の余長収容トレー5は係合手段21によって係止され、作業者が2段目の余長収容トレー5から手を離しても開いた状態を維持される(図7)。作業者はこの状態で1段目の余長収容トレー5について作業を行うことができるので、両手を使用して作業を行うことができる。また、2〜5段目の余長収容トレー5が閉じて作業の邪魔になることもない。これらのため、作業性に優れている。
【0060】
作業終了後、2〜5段目の余長収容トレー5を閉じ、引き出しトレー34を持ち上げてベース板33内に押し戻し、ナイラッチ37を孔38に嵌め込むことで、余長収容トレーユニット1が融着ユニット32内に収容される(図6)。
【0061】
この余長収容トレーユニット1では、1組の心線2aを1段の余長収容トレー5で取り扱うようにしているので、心線2aの取り間違いを防止することができ、安全性に優れている。例えば、電力保安用のケーブル、設備や装置類の制御線等の重要な心線2aを取り扱う場合に適している。
【0062】
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、上述の説明では、余長収容トレー5の厚さtを補強スリーブ14の直径よりも薄くしていたが、必ずしもこれに限られるものではなく、余長収容トレー5の厚さtを補強スリーブ14の直径と同じにしても良く、あるいは余長収容トレー5の厚さtを補強スリーブ14の直径よりも若干厚くしても良い。これらの場合にも、余長収容トレーユニット1をある程度薄型にすることができる。著しい薄型化が要求されない場合等に使用することができる。
【0063】
また、上述の説明では、ヒンジ6に係合手段21を設けていたが、係合手段21を省略しても良い。この場合には、スプリング20の付勢力を利用して余長収容トレー5を持ち上げた状態で止めることはできないが、余長収容トレーユニット1の薄型化を目的とする場合等には適用することができる。
【0064】
また、上述の説明では、余長収容トレーユニット1を融着ユニット32に使用していたが、例えば光クロージャ内に設けるようにしても良い。
【符号の説明】
【0065】
1 余長収容トレーユニット
2 光ファイバ
3 接続部
4 余長部
5 余長収容トレー
5a 余長収容トレーの表側面
5b 余長収容トレーの裏面
6 ヒンジ
11 スリーブ係止部(係止部)
12 干渉回避領域
13 干渉回避部
18 上段用ヒンジ支点部
19 下段用ヒンジ支点部
32 融着ユニット
34 引き出しトレー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバの接続部及び余長部を収容する余長収容トレーを複数積層すると共に、上下の余長収容トレーをヒンジによって連結して各段毎に開閉可能にした余長収容トレーユニットにおいて、前記余長収容トレーは、表側面に設けられ、前記接続部を係止すると共に、裏面側に突出して前記接続部を収容するスペースを確保する係止部と、前記表側面に設けられ、前記余長部の進入を防止して干渉回避領域を形成する干渉回避部と、前後の中央位置にそれぞれ設けられた上段用ヒンジ支点部及び下段用ヒンジ支点部とを備えており、前記係止部と前記干渉回避部は前記余長収容トレーの前後の向きを変えた場合に対応する位置に設けられており、前記前側の上段用ヒンジ支点部及び下段用ヒンジ支点部と前記後側の上段用ヒンジ支点部及び下段用ヒンジ支点部とは前記余長収容トレーの前後の向きを変えても同一形状になるように形成されており、同じ型を用いて成型した前記余長収容トレーをその前後方向を互い違いにしながら積層したことを特徴とする余長収容トレーユニット。
【請求項2】
前記余長収容トレーの厚さは、前記接続部の直径よりも薄いことを特徴とする請求項1記載の余長収容トレーユニット。
【請求項3】
請求項1又は2記載の余長収容トレーユニットを引き出しトレー上に取り付けたことを特徴とする融着ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−41044(P2013−41044A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176995(P2011−176995)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(591236172)株式会社ハタ研削 (20)
【Fターム(参考)】