説明

作業アタッチメントの取付組合わせ判別装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、超ロングフロントを装備した建設機械の安全装置における作業アタッチメントの取付組合わせ判別装置に関する。
【0002】
【従来の技術】図4は、従来技術の安全装置をそなえかつ作業アタッチメント1を装着した油圧ショベルの側面図である。図において、2は油圧ショベルの下部走行体、3は上部旋回体、4は上部旋回体3に配設されているコントローラ、5はロングブームであるメインブーム、6はインタブーム、7はアーム、8は作業工具である解体用破砕機、9はメインブーム5のうちの基端側ブーム、10は先端側ブーム、11は第1中継ぎブーム、12は第2中継ぎブーム、13はブーム用油圧シリンダ、14はインタブーム用油圧シリンダ、15はアーム用油圧シリンダ、16は破砕機用油圧シリンダ、17,18,19はそれぞれ角度検出器、L1 はメインブーム5の全長、L2 はインタブーム6の全長、L3 はアーム7の全長、0−0’は上部旋回体3の旋回中心、R1,R2はそれぞれ作業アタッチメント1を作動させたときに変化するアーム7先端部の作業半径を示す。
【0003】次に、従来技術の安全装置を図4について述べる。従来技術では、メインブーム5,インタブーム6,アーム7,破砕機8を油圧ショベルのフロント部に順次連結して超ロングの作業アタッチメント1を形成し、それぞれ油圧シリンダ13,14,15,16で前後方向に屈折回動できるようにし、またメインブーム5を基端側ブーム9と先端側ブーム10とに分割し、その基端側ブーム9と先端側ブーム10との間に第1中継ぎブーム11,第2中継ぎブーム12を所要に応じて取付組合わせできるようにしている。そして基端側ブーム9、先端側ブーム10,アーム7にそれぞれ角度検出器17,18,19を、また上部旋回体3にコントローラ4を設け、上記角度検出器17,18,19からの検出信号をコントローラ4に入力することにより、その検出信号にもとづきコントローラ4にて、上部旋回体3の旋回中心よりアーム7先端部までの水平距離を演算し、その演算結果にもとづきアーム7先端部が所定の作業可能半径より外側に出ようとする前に警報指令信号を警報器(図示しないがたとえばベルなど)に対して出力するようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】破砕機を装着した超ロングの作業アタッチメントでは、解体構築物たとえば解体するビル,煙突などの高さに応じて、メインブームの全長を調整する。すなわち、メインブームを最も短くするときには基端側ブームの先端部と先端側ブームの基端部とを直接連結し、メインブームを長くするときには基端側ブームと先端側ブームとの間に単数個内至複数個の中継ぎブームを取付操作する。図5は、基端側ブーム9と先端側ブーム10との間に第1中継ぎブーム11だけを取付けたメインブーム5’を示す側面図である。メインブーム5’の全長lはメインブーム5の全長L1 より第2中継ぎブーム12の長さだけ短くなるが、メインブーム5’を取付けた場合の作業可能最大半径(本実施例の場合には旋回中心よりアーム7までの水平距離をいう)rmax は、メインブーム5を取付けた場合の作業可能最大半径Rmax より大きくなる。上記のようにメインブームを構成するブームの取付組合わせを変えてメインブームの全長を調整するときには、その調整に対応して作業可能最大半径が変わるので、その都度コントローラに対してブームの取付組合わせ信号を入力する必要があった。この対応策として取付組合わせ信号用の切換えスイッチ(図示しない)を設けると、その構成が複雑となり、しかもブームの取付組合わせを行う度に切換えるのでその手間がわずらわしかった。また切換スイッチの操作忘れ、あるいは誤位置への切換えなどをおこし、安全上万全とは云えなかった。本発明は、上記の問題点を解決できる作業アタッチメントの取付組合わせ判別装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明では、基端側ブームと複数個の中継ぎブームに、各ブームの後端部から先端部に通じる電気信号回路をそれぞれ設け、上記各ブームをすべて連結するときにまたブームの取付組合わせを行うときにも接続可能なコネクタを各ブームの連結部付近にそれぞれ設け、またブームの取付組合わせ操作を行ったときコネクタを通過する電気信号の接続関係を変換できるように設定し、ブームの取付組合わせ操作を行ったときコネクタを接続して、その電気信号回路からの検出信号をコントローラに入力し、コントローラがその入力された信号入力にもとづきブームの取付組合わせ状態を判別するようにした。
【0006】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の取付組合わせ判別装置をそなえた作業アタッメチント1Aを示す図である。図において、従来技術と同一構成要素を使用するものに対しては同符号を付す。3Aは上部旋回体、4Aはコントローラ、5Aはメインブーム、9Aはメインブーム5Aの基端側ブーム、10Aは先端側ブーム、11Aは第1中継ぎブーム、12Aは第2中継ぎブーム、20,21,22,23はそれぞれ各ブームの連結部付近に設けたコネクタ、24,25はコントローラ4Aとコネクタ20とを接続している電気信号回路、26,27,28,29は電気信号回路である。なお電気信号回路は、信号を伝達する手段としてハーネス,光ファイバなどが用いられている。またコネクタ20,〜,23は、各ブームの連結を取外すとき、コネクタのオス方(刃部方)とメス方(刃受穴部方)との差込みを抜いて分離する。図2は、図1における第1中継ぎブーム11Aを取外したときの取付組合わせ判別装置の状態を示す図である。図において、5’Aはメインブーム、21’,23’はコネクタである。
【0007】次に、本発明の取付組合わせ判別装置の構成を図1及び図2について述べる。本発明では、基端側ブーム9Aと第1中継ぎブーム11Aと第2中継ぎブーム12Aに、各ブーム9A,11A,12Aの後端部から先端部に通じる電気信号回路26,27,28をそれぞれ設け、上記各ブームをすべて(先端側ブーム10Aも含む)を連結するときまたブームの取付組合わせを行うときにも接続可能なコネクタ21,22,23を各ブームの連結部付近にそれぞれ設け、またブームの取付組合わせを行ったときコネクタを通過する電気信号の接続関係を変換できるように設定した。そしてブームの取付組合わせ操作を行ったときコネクタを接続して、その電気信号回路からの検出信号をコントローラ4Aに入力し、コントローラ4Aがその入力された信号入力にもとづきブームの取付組合わせ状態を判別するように構成した。
【0008】次に、本発明の取付組合わせ判別装置の作用について述べる。まず図1のように、すべてのブーム9A,11A,12A,10Aを連結し、すべてのコネクタ21,22,23(コネクタ20はブームの取付組合わせ操作には関係がないので接続状態のままである)を接続した場合について述べる。この取付組合わせ操作を行ったときには、コントローラ4Aから通じる一方の信号回路は、通路24(電気信号回路24と同じ)、コネクタ20、電気信号回路26の通路イ、コネクタ21、電気信号回路27の通路ロを経て、コネクタ22で開放される。それにより、コントローラ4Aではその信号入力を開放と判断する。またコントローラ4Aから通じる他方の信号回路は、通路25(電気信号回路25と同じ)、コネクタ20、電気信号回路26の通路ハを経て、コネクタ21で開放される。それにより、コントローラ4Aではその信号入力を開放と判断する。上記信号入力がともに開放であるので、コントローラ4Aではすべてのブーム9A,11A,12A,10Aが連結状態と判別し、それにもとづきアーム7先端部の作業可能半径を演算する。
【0009】次に図2のように第1中継ぎブーム11Aを取外した場合、すなわち各ブーム9A,12A,10Aを連結し、コネクタ21’,23’を接続した場合について述べる。この組合わせ操作を行ったときには、コントローラ4Aから通じる一方の信号回路は、通路24、コネクタ20、電気信号回路26の通路イを経て、コネクタ21’で開放される。それにより、コントローラ4Aではその信号入力を開放と判断する。またコントローラ4Aから通じる他方の信号回路は、通路25、コネクタ20、電気信号回路26の通路ハ、コネクタ21’、電気信号回路28の通路ニ、コネクタ23’、電気信号回路29の通路ホ、コネクタ23’、電気信号回路28の通路ヘ、コネクタ21’、電気信号回路26の通路ト、コネクタ20、通路チを通じて接地される。それにより、コントローラ4Aではその信号入力を接地と判断する、上記信号入力のうち電気信号回路24側が開放で、電気信号回路25側が接地であるので、コントローラ4Aでは基端側ブーム9Aと第2中継ぎブーム12Aと先端側ブーム10が連結状態と判別し、それにもとづきアーム7先端部の作業可能半径を演算する。
【0010】図3は、メインブームの各ブームの取付組合わせ操作をしてコネクタを接続した場合、電気信号回路よりコントローラに入力される信号入力のパターンを示す図表である。図3において、電気信号回路24(図1R>1に示す)側の信号入力を信号入力α、電気信号回路25側の信号入力を信号入力βとする。なお電気信号回路のいずれかの部分で断線事故が発生したときには、その電気信号回路からの信号入力はコントローラ4Aにて開放と判断されるので、その時点のブームの連結個数と同じか又はそれより多くのブームを連結しているものと判別し、安全面ではより万全となるから断線による危険も防止できる。また本発明の実施例では、作業アタッチメントの取付組合わせ判別装置としてブームについて述べたが、アームを分割形としている作業アタッチメント(図示しない)に対しても適応させることができる。
【0011】
【発明の効果】超ロングの作業アタッチメントを装着した建設機械では、作業状況に応じてブームの取付組合わせを変更し、メインブームの全長を調整する。この調整に対応してアームの先端部の作業可能最大半径が変わるので、その都度コントローラに対してブームの取付組合わせ信号を入力する必要があった。従来技術の対応策として取付組合わせ信号用の切換スイッチを設けると、その構成が複雑となり、しかもブームの取付組合わせを行う度に切換えるのでその手間がわずらわしかった。また切換スイッチの操作忘れ、あるいは誤位置への切換えなどをおこし、安全上万全とは云えなかった。しかし本発明では、基端側ブームと複数個の中継ぎブームに、各ブームの後端部から先端部に通じる電気信号回路をそれぞれ設け、上記各ブームをすべて連結するときまたブームの取付組合わせを行うときにも接続可能なコネクタを各ブームの連結部付近にそれぞれ設け、またブームの取付組合わせ操作を行ったときコネクタを通過する電気信号の接続関係を変換できるように設定し、ブームの取付組合わせ操作をおこなったときコネクタを接続して、その電気信号回路からの検出信号をコントローラに入力するようにした。それにより単数個内至複数個のコネクタを連通している一方の電気信号回路が、コネクタの部分で開放あるいは接地される。また他方の電気信号回路が、上記コネクタの異なった部分で開放あるいは接地される。上記電気信号回路からの信号入力にもとづきコントローラではブームの取付組合わせ状態を判別し、その組合わせ状態に適応したアーム先端部の作業可能半径を演算することができる。したがって本発明の取付組合わせ判別装置をそなえた建設機械では、作業アタッチメントの取付組合わせ操作を行ったとき自動的にアーム先端部の作業可能半径をその取付組合わせ状態に適応調整できるので、従来技術におけるような切換忘れや誤位置への切換えを防止し、安全性を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の取付組合わせ判別装置をそなえた作業アタッチメントを示す図である。
【図2】図1における第1中継ぎブームを取外したときの取付組合わせ判別装置の状態を示す図である。
【図3】ブームの取付組合わせ操作をした場合電気信号回路よりコントローラに入力される信号入力のパターンを示す図表である。
【図4】超ロング作業アタッチメントを装着した従来技術の油圧ショベルの側面図である。
【図5】図4におけるメインブームを短く調整した状態を示す図である。
【符号の説明】
1,1A 作業アタッチメント
3,3A 上部旋回体
5,5’,5A,5’A メインブーム
9,9A 基端側ブーム
10,10A 先端側ブーム
11,11A 第1中継ぎブーム
12,12A 第2中継ぎブーム
20,21,22,23,21’,23’ コネクタ
24,〜,29 電気信号回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ロングブーム,アーム,作業工具を建設機械のフロント部に順次連結して超ロングの作業アタッチメントを形成し、それぞれ油圧シリンダで前後方向に屈折回動できるようにし、またロングブーム用のメインブームを基端側ブームと先端側ブームとに分割し、その基端側ブームと先端側ブームとの間に零個内至複数個の中継ぎブームを所要に応じて取付組合わせできるようにし、上記基端側ブーム,先端側ブーム,アームにそれぞれ角度検出器を、また機体にコントローラを設け、上記角度検出器からの検出信号をコントローラに入力することにより、その検出信号にもとづきコントローラにて、機体の旋回中心よりアーム先端部までの水平距離を演算し、その演算結果にもとづき警報を発するようにした安全装置において、基端側ブームと複数個の中継ぎブームに、各ブームの後端部から先端部に通じる電気信号回路をそれぞれ設け、上記各ブームをすべて連結するときまたブームの取付組合わせを行うときにも接続可能なコネクタを各ブームの連結部付近にそれぞれ設け、またブームの取付組み合わせ操作を行ったときコネクタを通過する電気信号の接続関係を変換できるように設定し、ブームの取付組合わせ操作を行ったときコネクタを接続して、その電気信号回路からの検出信号をコントローラに入力し、コントローラがその入力された信号入力にもとづきブームの取付組合わせ状態を判別するようにしたことを特徴とする作業アタッチメントの取付組合わせ判別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【特許番号】第2874158号
【登録日】平成11年(1999)1月14日
【発行日】平成11年(1999)3月24日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−282078
【出願日】平成3年(1991)10月1日
【公開番号】特開平6−88358
【公開日】平成6年(1994)3月29日
【審査請求日】平成10年(1998)10月1日
【出願人】(000246273)油谷重工株式会社 (644)
【参考文献】
【文献】特開 平5−17971(JP,A)
【文献】特開 平6−42014(JP,A)
【文献】特開 平5−17972(JP,A)