説明

作業機械用の制御装置

【課題】書き込み可能な不揮発性の記憶手段の個数の削減によって構成の簡素化を図りコスト低減を図ることが可能となる作業機械用の制御装置を提供する。
【解決手段】通信手段TUを介して互いに通信可能な複数の制御部が機械各部に分散配備され、複数の制御部のうちのいずれかの制御部が書き込み可能な不揮発性の記憶手段を備える情報管理用の制御部H1として構成され、情報管理用の制御部H1が、電源投入により起動した後に、通信手段TUを介して記憶手段50に記憶している制御管理用情報を記憶対象制御部H2〜H6に送信する制御管理用情報分配処理を実行するように構成され、記憶対象制御部H2〜H6の夫々が、電源投入により起動した後に、情報管理用の制御部H1から通信手段TUを介して送信される自己についての制御管理用情報を受信する制御管理用情報取得処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信手段を介して互いに通信可能な複数の制御部が機械各部に分散配備され、前記複数の制御部が、自己に備えられた情報入力手段により入力される入力情報、他の制御部から通信される制御用情報、及び、制御管理用情報に基づいて、自己が担当する制御対象の作動を制御するように構成されている作業機械用の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記作業機械用の制御装置は、複数の制御部が各別に自己が担当する制御対象の作動を制御するものであるが、1つの制御部に備えられる情報入力手段により入力される入力情報や制御対象の制御状態を示す情報等の諸々の情報が他の制御部における制御に利用されることがあり、そのような情報が前記1つの制御部から前記他の制御部に前記制御用情報として通信手段により送信される構成となっている。又、前記制御部が自己が担当する制御対象の作動制御を実行するにあたり前記制御管理用情報が用いられる。この制御管理用情報としては、例えば次のようなものがある。すなわち、制御部が、被操作体を移動操作自在な前記制御対象としてのアクチュエータと、前記被操作体の操作位置を検出するポテンショメータ式の検出センサとを備える場合に、アクチュエータにて操作される被操作体が基準位置に操作されたときの前記検出センサの検出値の個体差を調整するための微調節データ等がある。
【0003】
そして、このような作業機械用の制御装置の従来例として、前記複数の制御部の夫々に、各制御部において使用される前記制御管理用情報を記憶する書き込み可能な不揮発性の記憶手段(EEPROM)が各別に備えられる構成のものがあった(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
説明を加えると、上述したような微調節データ等の制御管理用情報は、一般に、作業機械が工場から出荷される際に予め計測して記憶手段に記憶させることが行われ、そして、作業機械の使用に伴って検出センサやアクチュエータ等が故障してそれらを修理交換等のメンテナンス作業が行われたような場合にも、再度計測して記憶手段に記憶させることが行われる。そこで、制御管理用情報を書き換え可能な状態で且つ電源供給が停止されても記憶情報が消去されない状態で記憶することが可能なように、前記制御管理用情報を書き込み可能な不揮発性の記憶手段に記憶するようにしたものである。
【0005】
【特許文献1】特開2005―59773号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来構成においては、複数の制御部の夫々に前記制御管理用情報を記憶するための書き込み可能な不揮発性の記憶手段が各別に備えられており、複数の制御部の夫々は、自己が担当する制御対象の作動を適正な状態で制御することが可能となるのであるが、上記したように、複数の制御部の夫々に前記記憶手段が各別に備えられるものであるから、このような書き込み可能な不揮発性の記憶手段の個数が多く必要であり、全体構成が複雑になる不利があった。
【0007】
本発明の目的は、複数の制御部の夫々が自己の担当する制御対象を適正な状態で制御することが可能なものでありながら、書き込み可能な不揮発性の記憶手段の個数の削減によって構成の簡素化を図りコスト低減を図ることが可能となる作業機械用の制御装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る作業車用の制御装置は、通信手段を介して互いに通信可能な複数の制御部が機械各部に分散配備され、前記複数の制御部が、自己に備えられた情報入力手段により入力される入力情報、他の制御部から通信される制御用情報、及び、制御管理用情報に基づいて、自己が担当する制御対象の作動を制御するように構成されているものであって、その第1特徴構成は、前記複数の制御部のうちのいずれかの制御部が、前記複数の制御部のうちの自己以外の全ての制御部を記憶対象制御部として又は自己以外の全ての制御部のうちの一部の制御部を記憶対象制御部として、その複数の記憶対象制御部の前記制御管理用情報並びに自己の前記制御管理用情報を記憶する書き込み可能な不揮発性の記憶手段を備える情報管理用の制御部として構成され、
前記情報管理用の制御部が、電源投入により起動した後に、前記通信手段を介して前記記憶手段に記憶している前記制御管理用情報を前記記憶対象制御部に送信する制御管理用情報分配処理を実行するように構成され、
前記記憶対象制御部の夫々が、電源投入により起動した後に、前記情報管理用の制御部から前記通信手段を介して送信される自己についての前記制御管理用情報を受信する制御管理用情報取得処理を実行するように構成されている点にある。
【0009】
すなわち、前記複数の制御部のうちのいずれかの制御部が、情報管理用の制御部として、前記制御管理用情報を記憶する書き込み可能な不揮発性の記憶手段を備えて構成され、その記憶手段は、記憶対象制御部としての、複数の制御部のうちの情報管理用の制御部以外の全ての制御部又は情報管理用の制御部以外の全ての制御部のうちの一部の制御部の前記制御管理用情報並びに情報管理用の制御部の制御管理用情報を記憶することになる。
【0010】
そして、前記情報管理用の制御部は、電源投入により起動した後に記憶手段に記憶している制御管理用情報を記憶対象制御部に送信するのであり、記憶対象制御部の夫々は、電源投入により起動した後に情報管理用の制御部から通信手段を介して送信される自己についての制御管理用情報を受信することになる。
【0011】
つまり、複数の制御部のうちのいずれかの制御部に備えられる書き込み可能な不揮発性の記憶手段に、記憶対象制御部としての複数の制御部の制御管理用情報を記憶することができ、複数の制御部の全てに各別に書き込み可能な不揮発性の記憶手段を備える必要がなく、それだけ装置全体として、書き込み可能な不揮発性の記憶手段の個数を減らすことができる。しかも、記憶対象制御部の夫々は、電源投入により起動したのちは自己が必要とする制御管理用情報を取得することができるから、取得した制御管理用情報を用いて自己が担当する制御対象を適正な状態で制御することが可能となる。
【0012】
従って、第1特徴構成によれば、複数の制御部の夫々が自己が担当する制御対象の作動を適正な状態で制御することが可能なものでありながら、書き込み可能な不揮発性の記憶手段の個数の削減によって構成の簡素化を図りコスト低減を図ることが可能となる作業機械用の制御装置を提供できるに至った。
【0013】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成に加えて、前記情報管理用の制御部が、電源投入により起動してから管理用設定時間が経過するまでの間は前記制御管理用情報分配処理を実行し、且つ、前記管理用設定時間が経過すると前記制御用情報を送受信する制御用情報通信処理を実行するように構成され、
前記記憶対象制御部の夫々が、電源投入により起動してから前記管理用設定時間が経過するまでの間は前記制御管理用情報取得処理を実行し、且つ、前記管理用設定時間が経過すると前記制御用情報を送受信する制御用情報通信処理を実行するように構成されている点にある。
【0014】
すなわち、前記情報管理用の制御部が電源投入により起動してから前記管理用設定時間が経過するまでの間は前記制御管理用情報分配処理を実行し、且つ、前記記憶対象制御部の夫々が電源投入により起動してから前記管理用設定時間が経過するまでの間は前記制御管理用情報取得処理を実行することになるから、前記各制御部が電源投入により起動してから前記管理用設定時間が経過するまでの間に制御管理用情報を集中して通信することができ、前記管理用設定時間が経過した後は、前記記憶対象制御部の夫々が適正に制御管理用情報を取得した状態で前記制御用情報通信処理を実行することができる。
【0015】
従って、電源投入した直後の時間を利用して制御管理用情報を集中して通信することができ、装置全体として制御処理を良好に行うことが可能な作業機械用の制御装置を提供できるに至った。
【0016】
本発明の第3特徴構成は、第2特徴構成に加えて、前記制御管理用情報として複数種の制御管理用情報があり、
前記記憶対象制御部が、前記制御管理用情報取得処理として、複数種の制御管理用情報の夫々を要求する複数種の要求情報を予め定めた順序で且つ順番が先である種類の制御管理用情報を受信すると次の順番の種類の制御管理用情報についての前記要求情報を送信する形態で送信するように構成され、
前記情報管理用の制御部が、前記制御管理用情報分配処理として、複数種の制御管理用情報を予め定めた順序で且つ順番が先である種類の制御管理用情報を送信しているときに複数の前記記憶対象制御部のいずれのものもその種類の制御管理用情報を要求する前記要求情報を送信しない状態になると次の順番の種類の制御管理用情報を送信する形態で送信するように構成されている点にある。
【0017】
すなわち、複数種の制御管理用情報を通信するにあたり、前記記憶対象制御部が、先ず順番が最も先である種類の制御管理用情報を要求する要求情報を送信し、情報管理用の制御部は先ず順番が最も先である種類の制御管理用情報を送信する。記憶対象制御部は要求していた情報を受信すると次の順番の種類の制御管理用情報についての前記要求情報を送信することになるが、情報管理用の制御部は、複数の記憶対象制御部のいずれかのものがその種類の制御管理用情報を要求しているとその種類の制御管理用情報の送信を行い、複数の記憶対象制御部のいずれかのものがその種類の制御管理用情報を要求する要求情報を送信しない状態になると、次の順番の種類の制御管理用情報を送信することになる。
【0018】
そして、このような処理を繰り返し行うことで、いずれかの記憶対象制御部が複数種の制御管理用情報のうちのいずれかの種類の制御管理用情報を受信していないときは、情報管理用の制御部からその種類の制御管理用情報の送信が行われるので、複数の記憶対象制御部は自己が要求している制御管理用情報を受信することができ、全ての記憶対象制御部は複数種の制御管理用情報の夫々を受信することができる。
【0019】
従って、第3特徴構成によれば、複数種の制御管理用情報の夫々を複数の記憶対象制御部に対して確実に通信することが可能な作業機械用の制御装置を提供できるに至った。
【0020】
本発明の第4特徴構成は、第3特徴構成に加えて、前記記憶対象制御部の夫々が、前記制御管理用情報取得処理において、要求する種類の前記制御管理用情報を受信しなければ、その種類の制御管理用情報に対応する前記要求情報を設定単位時間が経過する毎に繰り返し送信するように構成されている点にある。
【0021】
すなわち、記憶対象制御部の夫々が、要求する種類の制御管理用情報を受信しなければ前記要求情報を設定単位時間が経過する毎に繰り返し送信するので、情報管理用の制御部は、複数の記憶対象制御部がどの種類の制御管理用情報を要求しているかを設定単位時間毎に繰り返し判断することができるから、送信漏れを起こすおそれが少ない状態で確実に複数種の制御管理用情報を送信することが可能となる。その結果、複数の記憶対象制御部が複数種の制御管理用情報の夫々を確実に受信することが可能となる。
【0022】
従って、第4特徴構成によれば、情報管理用の制御部が確実に複数種の制御管理用情報を送信することが可能となり、複数の記憶対象制御部が複数種の制御管理用情報の夫々を確実に受信することが可能となる作業機械用の制御装置を提供できるに至った。
【0023】
本発明の第5特徴構成は、第2特徴構成〜第4特徴構成のいずれかに加えて、前記記憶対象制御部が、代替用の制御管理用情報を記憶する読み出し専用の記憶手段を備えて、前記管理用設定時間が経過しても前記情報管理用の制御部から送信される自己についての前記制御管理用情報を受信できないときは、前記読み出し専用の記憶手段に記憶している代替用の制御管理用情報に基づいて自己が担当する制御対象の作動を制御するように構成されている点にある。
【0024】
すなわち、記憶対象制御部が、前記管理用設定時間が経過しても自己についての制御管理用情報を受信できないときは、自己に備えられた読み出し専用の記憶手段に記憶している代替用の制御管理用情報に基づいて自己が担当する制御対象の作動を制御するように構成されているから、例えば、通信手段が故障したり通信ミスが発生する等の通常異常があっても、記憶対象制御部は、制御管理用情報を取得できない状態のまま自己が担当する制御対象の作動を制御する状態に移行することを回避でき、代替用の制御管理用情報に基づいて自己が担当する制御対象の作動を制御することができる。
前記代替用の制御管理用情報について説明を加えると、制御管理用情報の一例として例えば微調節データの場合であれば、複数の作業機械毎の個体差によるバラつきの範囲の中間的な値である標準値を代替用の制御管理用情報として用いる場合がある。
【0025】
従って、第5特徴構成によれば、通信異常があっても記憶対象制御部が制御管理用情報を用いて自己が担当する制御対象の作動制御を行うことが可能となる作業機械用の制御装置を提供できるに至った。
【0026】
本発明の第6特徴構成は、第2特徴構成〜第4特徴構成のいずれかに加えて、前記記憶対象制御部のうちの特定の記憶対象制御部が、自己についての前記制御管理用情報を記憶する書き込み可能な特定制御部用の不揮発性の記憶手段を備えて構成され、
前記特定の記憶対象制御部が、前記制御管理用情報取得処理により受信した自己についての前記制御管理用情報を前記特定制御部用の不揮発性の記憶手段に記憶するように構成され、且つ、前記管理用設定時間が経過しても前記情報管理用の制御部から送信される自己についての前記制御管理用情報を受信できないときは、前記特定制御部用の不揮発性の記憶手段に記憶している制御管理用情報に基づいて自己が担当する制御対象の作動を制御するように構成されている点にある。
【0027】
すなわち、特定の記憶対象制御部は、前記制御管理用情報取得処理により受信した自己についての制御管理用情報を特定制御部用の不揮発性の記憶手段に記憶することになる。このように制御管理用情報を記憶したのちは、その後前記制御管理用情報取得処理が行われたときに管理用設定時間が経過しても情報管理用の制御部から送信される自己についての制御管理用情報を受信できないときは、特定制御部用の不揮発性の記憶手段に記憶している制御管理用情報に基づいて自己が担当する制御対象の作動を制御することになるから、例えば、通信手段が故障したり通信ミスが発生する等の通常異常があっても、記憶手段に記憶している制御管理用情報に基づいて自己が担当する制御対象の作動を適正に制御することが可能となる。
【0028】
つまり、複数の制御部のうちで特に重要となる制御を担当する制御部を特定の記憶対象制御部として、特定制御部用の不揮発性の記憶手段に制御管理用情報を記憶するように構成することで、制御管理用情報を、前記情報管理用の制御部に備えた不揮発性の記憶手段及び前記特定制御部用の不揮発性の記憶手段の夫々に重複して記憶することができ、例えば、通信異常等により情報管理用の制御部からの通信が行えないような場合には、特定制御部用の不揮発性の記憶手段の記憶内容を利用して適正な制御管理用情報を得ることができ、自己が担当する制御対象の作動制御を良好に行うことができるものとなる。
【0029】
従って、第6特徴構成によれば、通信手段の通信異常が発生したような場合であっても、制御管理用情報を自己に備えた特定制御部用の不揮発性の記憶手段に記憶しておくことで制御対象の作動を適正に制御することが可能な作業機械用の制御装置を提供できるに至った。
【0030】
本発明の第7特徴構成は、第6特徴構成に加えて、前記特定の記憶対象制御部が、代替用の制御管理用情報を記憶する読み出し専用の記憶手段を備えて、前記特定制御部用の不揮発性の記憶手段に自己についての制御用管理情報が記憶されていない場合において前記管理用設定時間が経過しても前記情報管理用の制御部から送信される自己についての前記制御管理用情報を受信できないときは、前記読み出し専用の記憶手段に記憶している代替用の制御管理用情報に基づいて自己が担当する制御対象の作動を制御するように構成されている点にある。
【0031】
すなわち、前記特定の記憶対象制御部は、前記特定制御部用の不揮発性の記憶手段に自己についての制御用管理情報が記憶されていない場合に、前記管理用設定時間が経過しても情報管理用の制御部から自己についての制御管理用情報を受信できないときは、読み出し専用の記憶手段に記憶している代替用の制御管理用情報に基づいて自己が担当する制御対象の作動を制御するように構成されているから、前記特定制御部用の不揮発性の記憶手段に自己についての制御用管理情報が記憶されていないにもかかわらず、通信手段が故障したり通信ミスが発生する等の通常異常があっても、代替用の制御管理用情報に基づいて自己が担当する制御対象の作動を制御することが可能となる。
【0032】
従って、第7特徴構成によれば、特定の記憶対象制御部は、特定制御部用の不揮発性の記憶手段に制御用管理情報を記憶することと、読み出し専用の記憶手段に制御用管理情報を記憶することという二重の安全対策を採ることで、通信手段の通信異常が発生したような場合であっても、制御対象の作動を制御することをより一層確実に行うことが可能な作業機械用の制御装置を提供できるに至った。
【0033】
本発明の第8特徴構成は、第1特徴構成〜第7特徴構成のいずれかに加えて、前記制御管理用情報が、作業機械の機種型式についての情報を含むものである点にある。
【0034】
すなわち、前記制御管理用情報が作業機械の機種型式についての情報を含むものであるから、複数の記憶対象制御部の夫々は、搭載される作業機械の機種型式に対応させて適切な制御を行うことが可能となる。
説明を加えると、作業機械に備えられる複数の制御部が実行する制御の内容としては、基本となる制御内容は機種型式が異なっても同じであり、その基本となる内容に追加される付随的な制御内容が機種型式に応じて種々異なる場合が多い。そこで、複数の制御部が複数の機種型式の作業機械に対応可能なように付随的な制御内容を複数種備えておき、その機種型式の情報を不揮発性の記憶手段に記憶しておくことで、機種型式情報が与えられると、その機種型式に対応した制御を行えるようにすることができる。
【0035】
又、前記機種型式の情報について前記代替用の制御管理用情報として記憶する場合には、上記したような基本となる制御内容に対応する情報だけを記憶しておくことで、いずれの機種型式の作業機械に対しても共用することが可能なものにできる。
【0036】
従って、第8特徴構成によれば、機種型式が互いに異なる複数種の作業機械に対して共用して用いることでコストの低減を図ることが可能な作業機械用の制御装置を提供できるに至った。
【0037】
本発明の第9特徴構成は、第1特徴構成〜第8特徴構成のいずれかに加えて、前記機械各部が、被操作体を移動操作自在な前記制御対象としてのアクチュエータと、前記被操作体の操作位置を検出する前記情報入力手段としてのポテンショメータ式の検出センサとを備えて構成され、
前記記憶対象制御部が、前記検出センサの検出情報に基づいて前記アクチュエータの作動を制御するように構成され、且つ、前記アクチュエータにて前記被操作体が基準位置に操作されたときの前記検出センサの検出値の個体差を調整するための微調節データを前記制御管理用情報として前記情報管理用の制御部に通信するように構成されている点にある。
【0038】
すなわち、前記制御管理用情報として、アクチュエータにて被操作体が基準位置に操作されたときの検出センサの検出値の個体差を調整するための微調節データを不揮発性の記憶手段に記憶させることができ、記憶対象制御部は、アクチュエータにて被操作体の移動操作を行うにあたり、情報管理用の制御部から通信される微調節データを用いて、被操作体の操作位置を上述したような個体差を考慮した適切な値として検出センサにより検出することが可能となる。
【0039】
従って、第9特徴構成によれば、記憶対象制御部が検出センサの検出情報に基づくアクチュエータによる作動制御を適切な状態で行うことが可能となる作業機械用の制御装置を提供できるに至った。
【0040】
本発明の第10特徴構成は、第9特徴構成のいずれかに加えて、前記記憶対象制御部が、前記微調節データを更新するための微調節データ取得処理を実行可能に構成され、この微調節データ取得処理にて更新用の微調節データを取得したときは、その微調節データを前記情報管理用の制御部に通信するように構成されている点にある。
【0041】
すなわち、前記記憶対象制御部が前記微調節データ取得処理を実行することにより更新用の微調節データを取得することができる。例えば、制御管理用情報を検出するための検出センサ等が故障して修理交換が行われたような場合等に、その修理交換が行われた後の検出状態に対応する新たな微調節データを求めることが可能となる。そして、この微調節データ取得処理にて新たな微調節データを取得したときは、その微調節データを前記情報管理用の制御部に通信することにより前記書き込み可能な不揮発性の記憶手段に記憶させることができる。このように新たな微調節データを記憶させた後は、前記記憶対象制御部は、前記情報管理用の制御部から前記新たな微調節データを通信にて受け取ることができる。
【0042】
従って、第10特徴構成によれば、前記検出センサ等が故障して修理交換が行われたような場合であっても、前記記憶対象制御部は、前記情報管理用の制御部から適切な微調節データを通信にて受け取ることができ、前記検出センサの検出情報に基づくアクチュエータの作動制御を適正に行うことが可能となる作業機械用の制御装置を提供できるに至った。
【0043】
本発明の第11特徴構成は、第1特徴構成〜第10特徴構成のいずれかに加えて、作業機械である作業車に搭載されたエンジンの作動を制御するエンジン制御部が、前記情報管理用の制御部及び前記記憶対象制御部とは異なる制御部として備えられ、
前記情報管理用の制御部から前記エンジン制御部に、前記制御用情報として、制御切り換え指令情報、目標回転速度の情報、及び、アクセル操作量の情報が通信されるように構成され、
前記エンジン制御部が、前記情報管理用の制御部から通信される前記制御切り換え指令情報に基づいて、前記エンジンの出力回転速度を前記目標回転速度に維持するアイソクロナス制御を実行する状態と、前記エンジンの出力回転速度を前記アクセル操作量に対応する速度に調整するドループ制御を実行する状態とに切り換え可能に構成されている点にある。
【0044】
すなわち、前記情報管理用の制御部から前記エンジン制御部に、制御切り換え指令情報、目標回転速度の情報、及び、アクセル操作量の情報が通信される。そして、エンジン制御部は、制御切り換え指令情報に基づいて、前記アイソクロナス制御を実行する状態と前記ドループ制御を実行する状態とに切り換えられることになる。
【0045】
前記アイソクロナス制御を実行する状態では、前記エンジン制御部は、エンジンの出力回転速度が情報管理用の制御部から通信される目標回転速度に維持されるようにエンジンの作動を制御する。このようにエンジンが目標回転速度に維持されることで、作業装置を駆動して作業を行う場合に、安定した回転速度で作業を良好に行うことが可能となる。例えば、作業機械としてコンバインに適用した場合であれば、刈取作業を安定した回転速度で作業を良好に行うことができる。
【0046】
前記ドループ制御を実行する状態では、前記エンジン制御部は、エンジンの出力回転速度が情報管理用の制御部から通信されるアクセル操作量に対応する速度になるようにエンジンの作動を制御する。このようにアクセル操作量に対応する速度になることで、操縦者の意思に対応する回転速度でエンジンを作動することができる。例えば、作業機械としてコンバインに適用した場合であれば、路上走行時などにおいて手動操作により調整した適切な回転速度で移動走行することができる。
【0047】
従って、第11特徴構成によれば、作業機械の使用状態に応じて適切な回転速度になるようにエンジンの作動を制御することが可能な作業機械用の制御装置を提供できるに至った。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
以下、本発明の実施の形態を作業機械の一例として作業車であるコンバインに適用した場合について図面に基づいて説明する。
図1に示すように、コンバインは、左右一対のクローラ式の走行装置1R,1Lを備える機体Vの前部に、アクチュエータとしての刈取昇降シリンダCY1により横軸心P1周りに上下揺動操作自在な状態で刈取部2が付設され、その刈取部2の後方に、操縦部3、刈取穀稈を脱穀・選別する脱穀部4、脱穀部4から供給される穀粒を貯留するグレンタンク5、このグレンタンク5内の穀粒を排出するための穀粒排出用のアンローダ6、脱穀済みの排ワラを所定量ずつ結束して機外に放出する結束装置7等が搭載されて構成されている。
【0049】
刈取部2は、先端部に付設された分草具8、穀稈の引き起こし装置9、引き起こした穀稈の株元を切断する刈刃10、及び、先端側で刈取穀稈を受け取って脱穀部4まで搬送する搬送装置11を備えている。刈取部2の機体Vに対する昇降位置を横軸芯P1周りでの揺動角度によって検出するポテンショメータ形式の刈取昇降位置センサS1が設けられている。
【0050】
又、刈取部2には、図10に示すように、刈取部2の地面からの高さを検出する接地式の刈高センサS2と、穀稈が触れるとオン作動して刈取り作業中であることを検出する株元センサS3とが設けられ、操縦部3には目標刈高さを設定する刈高さ設定器12が設けられている。これらの情報は、刈高センサS2にて検出される刈取部2の地面からの高さの情報は穀稈を刈り取るときの刈高制御に用いられる。つまり、刈取部2の機体Vに対する昇降位置が設定位置より低いことを条件に刈高制御が開始すると、前記刈高センサS2の検出値が刈高さ設定器12にて設定された目標刈高さになるように刈取昇降シリンダC1が制御されることになる。
【0051】
図1に示すように、前記操縦部3には、刈取部2を手動で昇降操作する刈取昇降レバーと走行機体Vを手動で左右に旋回操作するステアリングレバーとに兼用構成された十字操作式の刈高操向レバー13が設けられ、この刈高操向レバー13を後方側に揺動操作すると上昇スイッチ14(図10参照)がオンして刈取部2が上昇し、前方側に揺動操作すると下降スイッチ15(図10参照)がオンして刈取部2が下降するようになっている。
【0052】
図3に示すように、前記搬送装置11は、その搬送終端側に位置する搬送部11aを縦軸芯周りで揺動自在に支持して、アクチュエータとしての扱深さモータM1によって揺動調節自在に設けられている。又、前記搬送装置11にて株元側を挟持されている搬送穀稈の穂先位置を検出するための穂先側穀稈センサS4と株元側穀稈センサS5とが稈長方向に位置を異ならせて設けられ、これら2つのセンサS4、S5の間に搬送穀稈の穂先が位置する適正状態となるように、搬送部11aによる脱穀部4への受け渡し箇所が稈長方向に変更することで脱穀部4での扱深さが調節でき、脱穀部4における扱深さを適正状態に維持することができるように構成されている。又、上記扱深さモータM1による扱深さ調節位置を検出する回転式のポテンショメータに構成された扱深さ位置センサS6(図10参照)が設けられている。
【0053】
左側の走行装置1Lには、図4に示すように、車体Vを構成する前後向き姿勢の主フレーム16の前端側には駆動スプロケット17が回転自在に支持され、複数個の遊転輪体18を前後方向に並べた状態で枢支し、且つ、後端部にクローラベルトBを緊張するためのテンション輪体19を支持したトラックフレーム20が、前ベルクランク21aと後ベルクランク21bとにより、主フレーム16に対して上下動可能に枢支連結されている。すなわち、前ベルクランク21aの下方側端部がトラックフレーム20の前部側箇所に枢支連結され、後ベルクランク21bの下方側端部はトラックフレーム20の後部側箇所に枢支連結されている。一方、前後ベルクランク21a,21bの夫々の上方側端部には、夫々、シリンダ本体側が主フレーム16に枢支連結された一対の油圧シリンダCY2,CY3のシリンダロッドが連動連結されている。一方、右側の走行装置1Rも同様な構成となっている。
【0054】
従って、左側の走行装置1Lの前部側を昇降操作する左前シリンダCY2、左側の走行装置1Lの後部側を昇降操作する左後シリンダCY3、右側の走行装置1Rの前部側を昇降操作する右前シリンダCY4、右側の走行装置1Rの後部側を昇降操作する左後シリンダCY5の4つの油圧シリンダがアクチュエータとして備えられ、それら4つの油圧シリンダCY2〜CY5を伸縮作動させることで、機体Vの地面に対する前後傾斜角及び左右傾斜角を変更させることができる。そして、前記各シリンダCY2〜CY5による昇降操作量を夫々検出するための4つのポテンショメータ式のストロークセンサS7〜10が設けられている。
【0055】
つまり、図4及び図5に示すように、例えば左前シリンダCY2と右前シリンダCY4とを停止して、左後シリンダCY3と右後シリンダCY5を同時に伸縮させると機体の接地面に対する前後傾斜角が変化することになる。又、図6に示すように、右前シリンダCY4と右後シリンダCY5とを停止して、左前シリンダCY2と左後シリンダCY3を同時に伸縮させると機体の接地面に対する左右傾斜角が変化することになる。
【0056】
そして、機体Vには、図10に示すように、水平面に対する機体の左右方向での傾きを検出する左右傾斜角センサS11、及び、水平面に対する機体の前後方向での傾きを検出する前後傾斜角センサS12が設けられ、前記操縦部3に設けられた制御用操作パネル部22には、姿勢制御の実行及び停止を指令する姿勢制御入切スイッチSW1、目標傾斜角を水平状態に設定する水平復帰スイッチSW2、刈高制御の実行及び停止を指令する刈取制御入切スイッチSW15、手動操作にて機体の姿勢を変更させる機能と姿勢制御中の目標傾斜角を変更させる機能を備える4つの手動操作用スイッチ、つまり、前上げスイッチSW3、後上げスイッチSW4、左上げスイッチSW5、右上げスイッチSW6等が設けられている。
【0057】
脱穀部4は、図2に示すように、扱胴23を収納する扱室24、刈取部2から供給される穀稈を搬送するフィードチェーン25、トウミ26と揺動選別板27とからなる選別装置28、穀粒回収用の一番口29、及び、穀粒と藁屑との混合物を回収するための二番口30等を備えている。そして、扱室24で脱穀された処理物のうち単粒化したものは、扱室24の下部に設けられた受網31から選別装置28に漏下し、それ以外の処理物は受網31の後端部より選別装置28に落下するように構成されている。
【0058】
選別装置28の揺動選別板27は、トウミ26の上方に位置して扱室24から漏下した処理物を機体後方側に移送するグレンパン32、そのグレンパン32の後方側に位置して処理物の粗選別を行うチャフシーブ33、そのチャフシーブ33の下方に位置して処理物の精選別を行うグレンシーブ34等を備えている。チャフシーブ33は、処理物移送方向に並置された複数個の帯板状部材からなり、その隣接する帯板状部材の間隔(チャフ開度)がアクチュエータとしてのチャフ開度調節モータM2によって変更されるように構成されている。このチャフ開度を検出するポテンショメータ利用のチャフ開度センサS13(図10参照)が設けられている。
【0059】
トウミ26は、揺動選別板27上の藁屑を吹き飛ばすためのものであり、後方側のファンケースカバー26aをアクチュエータとしてのトウミ風力調節用モータM3にて開閉操作することにより、その開度が大きいほど前方側への風力が小さくなるように、揺動選別板27上の処理物に及ぼす風力(トウミ風力という)が変更され、このファンケースカバー26aの開度状態を検出して、トウミ風力を検出するポテンショメータ利用のトウミ風力センサS14(図10参照)が設けられている。又、この揺動選別板27上の処理物の層厚を検出するシーブセンサS15が設けられている。
【0060】
図1に示すように、前記アンローダ6は、先端部に下向き姿勢の排出口6aを備え、基端側が横軸芯P2周りにアンローダ昇降シリンダCY6によって上下揺動操作自在な状態で支持部35に支持され、その支持部35が、アンローダ旋回モータM4によって縦軸芯Y周りに旋回操作自在な状態で機体Vに枢支されている。そして、支持部35の旋回位置を検出するポテンショメータにて構成されたアンローダ位置センサS16と、アンローダ6が上限位置にあることを検出するアンローダ上限センサS17とが備えられている(図10参照)。
【0061】
又、図10に示すように、操縦部3に備えられたアンローダ用操作パネル部36には、アンローダ6を外方に張り出した排出用位置に移動させる張り出しスイッチSW7、アンローダ6をホーム位置に移動させる格納スイッチSW8、手動により右旋回を指令する右旋回指令スイッチSW9、手動により左旋回を指令する左旋回指令スイッチSW10、手動により上昇操作を指令する上昇指令スイッチSW11、手動により下降操作を指令する下降指令スイッチSW12、モミ排出クラッチの入切を指令するモミ排出スイッチSW13等が設けられている。
【0062】
次に、動力伝達機構について簡単に説明すると、図9に示すように、エンジンEの出力は、脱穀クラッチ37を介して脱穀部4に伝達されるとともに、主クラッチ38を介してミッション部39に伝えられる。前記ミッション部39には、変速操作具40の操作に応じて変速される無段変速装置41(HST)が設けられ、又、一方の走行装置を他方の走行装置より低速で駆動する緩旋回状態、一方の走行装置1を停止状態にするブレーキ旋回状態、一方の走行装置を他方の走行装置と逆向き状態に駆動する逆転旋回状態の夫々に切り換え自在な周知構成の旋回状態切換機構42が備えられている。この旋回状態切換機構42については詳述はしないが、緩旋回状態に切り換えるための緩旋回用の油圧クラッチ、ブレーキ旋回状態に切り換えるためのブレーキ旋回用の油圧クラッチ、逆転旋回状態に切り換えるための逆転旋回用の油圧クラッチ等が備えられ、それらの各油圧クラッチに対する圧油状態を切り換えるための複数の油圧制御弁を備えた油圧操作部43が備えられている。又、前記脱穀クラッチ37の入切状態を検出するための脱穀クラッチセンサS18(図10参照)が設けられている。
【0063】
前記旋回状態切換機構42の切り換え操作は、操縦部3に設けられた刈高操向レバー13の左右揺動操作により行われる構成となっている。つまり、刈高操向レバー13の左右方向の揺動操作量を検出するポテンショメータ式の操向レバーセンサS19(図10参照)が設けられ、刈高操向レバー13の操作により旋回状態切換機構42が切り換わるように構成されている。
【0064】
前記結束装置7は、図7及び図8に示すように、脱穀部4から排ワラ搬送装置7Aにより排出される排ワラを所定量ずつ束ねて結束する結束機44と、排ワラの株端を叩いて揃える株揃え機構45と、その株揃え機構45の排ワラの稈長方向での位置を変更調整自在なネジ送り式の位置調節機構46と、排ワラの株端位置が結束機44に対して適正な位置にあるか否かを検出する一対の排ワラ検知センサS20、S21とが備えられ、又、この結束装置7には、株揃え機構45の排ワラ稈長方向の位置を検出するポテンショメータ式の株揃え位置検出センサS22が設けられ、詳述はしないが、この株揃え位置検出センサS22の情報に基づいて、結束位置が適切な位置になるように排ワラ搬送装置7Aの搬送終端位置を変更する構成となっている。
【0065】
そして、通信手段TUを介して互いに通信可能な複数の制御部が機械各部に分散配備され、前記複数の制御部が、自己に備えられた情報入力手段により入力される入力情報、他の制御部から通信される制御用情報、及び、制御管理用情報に基づいて、自己が担当する制御対象の作動を制御するように構成されている。
例えば、刈取昇降シリンダC1等の作動を制御するメイン制御部H1が刈取部2の近傍に配備され、アンローダ6の作動を制御する本機制御部H2がグレンタンク5の近傍に配備され、姿勢制御用の油圧シリンダ配設箇所の近傍に姿勢制御部H3が配備され、脱穀部3を制御する脱穀制御部H4が脱穀部3が設けられる箇所に配備され、結束装置7の近傍に結束制御部H6が配備される等、自己が担当する制御対象の近くに位置させて複数の制御部が分散配備されることになる。
【0066】
具体的には、図10に示すように、複数の制御部Hとして、メイン制御部H1、本機制御部H2、姿勢制御部H3、脱穀制御部H4、走行制御部H5、結束制御部H6、エンジン制御部H7が夫々設けられ、それらの各制御部は、夫々マイクロコンピュータを備えて構成され、且つ、図示はしていないが各制御部に対応して夫々備えられる通信装置、及び、その通信装置に接続されている通信用バスライン47からなる、CAN(Controller Area Network)形式の通信手段TUを介して情報を通信可能に構成されている。又、操縦部3に設けられた前記制御用操作パネル部22、アンローダ用操作パネル部36、及び、各種の情報を表示するための表示パネル部48が、通信手段TUを介して情報を通信可能に設けられている。
【0067】
前記通信手段TUを介して通信される通信用データについて簡単に説明を加えると、この通信用データとしては、送信すべき相手側を特定するための相手側アドレス情報、処理すべき制御内容を示すための制御内容情報、及び、具体的な制御用のデータ(数値データ等)を含む複数のビット列のデータである。
【0068】
以下、各制御部について説明する。
前記メイン制御部H1は、前記制御用操作パネル部22に備えられた刈高制御入切スイッチSW15が入操作され且つ刈取昇降位置センサS1にて検出される刈取部2の高さが設定高さよりも低い位置になることを起動条件として刈高制御を実行するように構成されている。つまり、情報入力手段としての刈高センサS2の情報に基づいて刈取部2の刈高さが目標設定高さに維持されるように制御対象としての刈取昇降シリンダC1の作動を制御する。又、上昇スイッチ14がオンすると刈取部2を上昇させ、下降スイッチ15がオンすると刈取部2を下降させるように刈取昇降シリンダC1の作動を制御することになる。上昇スイッチ14及び下降スイッチ15の検出情報は、図10に示すように、本機制御部H2に入力される構成となっており、これらの検出情報が前記制御用情報としてメイン制御部H1に通信されることになる。
【0069】
前記本機制御部H2は、前記制御用操作パネル部22に備えられた扱深さ自動スイッチSW14がオン操作され且つ株元センサS3がオンすることを起動条件として扱深さ制御を実行するように構成されている。すなわち、情報入力手段としての前記穂先側穀稈センサS4と前記株元側穀稈センサS5との情報に基づいて、搬送穀稈の穂先位置が前記各センサS4、S5の間に位置する適正状態となるようにアクチュエータとしての扱深さモータM1を制御対象として制御する。
【0070】
又、本機制御部H2は、前記扱深さ制御以外にも、アンローダ6の作動制御を実行するように構成されている。すなわち、アンローダ用操作パネル部36に備えられた各操作スイッチの操作指令に対応するアンローダ6の操作、例えば旋回操作、昇降操作、格納操作等を行うよう構成されている。すなわち、情報入力手段としてのアンローダ位置センサS16やアンローダ上限センサS17の検出情報に基づいて、被操作体としてのアンローダ6を移動操作するアクチュエータとしてのアンローダ昇降シリンダCY6やアンローダ旋回モータM4を制御対象としてその作動を制御することになる。
【0071】
前記姿勢制御部H3は、前記制御用操作パネル部22に備えられた姿勢制御入切スイッチSW1が入状態に操作されることにより姿勢制御の実行が指令されると、情報入力手段としての左右傾斜角センサS11及び前後傾斜角センサS12の情報に基づいて、機体Vの前後傾斜角及び左右傾斜角が夫々目標傾斜角になるように被操作体としての機体Vを姿勢変更するアクチュエータとしての4つの油圧シリンダC2〜C5を制御対象として作動を制御する姿勢制御を実行するように構成されている。又、姿勢制御入切スイッチSW1が切の状態でいずれかの手動操作用スイッチSW3〜SW6を操作すると、操作されている間指令された方向に姿勢が変化するようにいずれかの油圧シリンダを作動させ、姿勢制御を実行しているときに、いずれかの手動操作用スイッチSW3〜SW6を操作すると、操作されている間指令された方向に姿勢が変化するが、操作が停止されたときの姿勢を目標傾斜角として新たに設定することができる。
【0072】
前記脱穀制御部H4は、脱穀クラッチ37が入り状態となり、株元センサS3がオン状態となることを条件として脱穀制御を実行するように構成され、この脱穀制御として、情報入力手段としてのシーブセンサS15の情報に基づいて、適正な層厚になるようにアクチュエータとしてのチャフ開度調節モータM2及びトウミ風力調節モータM3を制御対象としてその作動を制御するように構成されている。前記株元センサS3の検出情報は、図10に示すようにメイン制御部H1に入力されるが、その検出情報が制御用情報として脱穀制御部H4に通信されることになる。
【0073】
前記走行制御部H5は、情報入力手段としての操向レバーセンサS19の情報に基づいて、直進が指令されると旋回状態切換機構42を直進状態に切り換え、旋回が指令されると旋回状態切換機構42を旋回状態に切り換え、且つ、操向レバーセンサ13の情報に基づいて指令される旋回状態に対応する旋回力になるように旋回状態切換機構42が切り換わるように制御対象である油圧制御部43の作動を制御する。
【0074】
前記結束制御部H6は、排ワラの株端位置が適正な位置になる状態、すなわち、一対の排ワラ検知センサS20、S21のうちの穀稈存在側の位置する排ワラ検知センサS20だけが排ワラの存在を検知する状態になるように位置調節機構46を制御する結束制御を実行するように構成されている。又、株揃え位置検出センサS22の情報に基づいて排ワラ搬送装置7Aの搬送終端位置を変更調節する制御も合わせて行われる。
【0075】
前記エンジン制御部H7は、メイン制御部H1から前記制御用情報として制御切り換え指令情報、目標回転速度の情報、及び、アクセル操作量の情報が通信されるように構成され、制御切り換え指令情報に基づいて、エンジンEの出力回転速度を目標回転速度に維持するアイソクロナス制御を実行する状態と、エンジンEの出力回転速度をアクセル操作量に対応する速度に調整するドループ制御を実行する状態とに切り換え可能に構成されている。又、エンジン制御部H7は、後述するような機種型式データや微調節データ等の制御管理用情報がメイン制御部H1から通信されることはなく、それらの情報は図示しないエンジン用の記憶手段に記憶される構成となっている。
【0076】
説明を加えると、メイン制御部H1には、手動操作により変更設定されるポテンショメータ式のアクセル設定器49の検出情報と脱穀クラッチセンサS18の検出情報とが入力されており、それらの情報を制御用情報としてエンジン制御部H7に通信するよう構成され、且つ、脱穀クラッチセンサS18がクラッチ入状態を検出していると前記アイソクロナス制御を実行する状態を指令し、脱穀クラッチセンサS18がクラッチ切状態を検出していると、前記ドループ制御を実行する状態を指令するようになっている。
【0077】
前記エンジン制御部H7には、エンジンEの回転速度を検出する回転速度センサS23の検出情報が入力され、メイン制御部H1から通信される制御切り換え指令情報としてアイソクロナス制御を実行する状態が指令されると、エンジンEの出力回転速度を予め作業に適した値に設定されている目標回転速度に維持するようにエンジンEの作動を制御する。具体的には、電子ガバナ55による燃料供給量を調整制御する。又、制御切り換え指令情報としてドループ制御を実行する状態を指令するが指令されると、エンジンEの出力回転速度をアクセル操作量に対応する速度に調整するように電子ガバナ55による燃料供給量を調整制御する。
【0078】
他の制御部から通信される制御用情報としては、上記したようなメイン制御部H1に入力される株元センサS3の情報が通信手段を介して脱穀制御部H4に通信される構成の他にも、1つの制御部の制御状態を他の制御部が制御するための情報として通信するものもある。例えば、姿勢制御部H3は機体の左右傾斜角を目標傾斜角にするように姿勢制御を実行するが、機体の左右方向での目標傾斜角が手動操作により変更されて、水平姿勢に対して設定角以上いずれかに傾斜した目標傾斜角が設定されたような場合には、その情報が制御用情報としてメイン制御部H1に通信され、メイン制御部H1は、目標刈高さを刈高さ設定器12により設定されている値よりも設定量だけ高い値に補正する目標刈高さ補正処理を実行するようになっている。又、このような情報以外にも種々の情報が制御用情報として通信される。
【0079】
そして、前記メイン制御部H1が、複数の制御部のうちの自己以外の全ての制御部のうちの一部の制御部、つまり、本機制御部H2、姿勢制御部H3、脱穀制御部H4、走行制御部H5、結束制御部H6を記憶対象制御部として、それらの各制御部の制御管理用情報並びに自己の制御管理用情報を記憶する書き込み可能な不揮発性の記憶手段としての不揮発性メモリ50を備える情報管理用の制御部として構成されており、このメイン制御部H1が、電源投入により起動した後に、通信手段TUを介して不揮発性メモリ50に記憶している前記制御管理用情報を前記記憶対象制御部に送信する制御管理用情報分配処理を実行するように構成され、前記記憶対象制御部の夫々が、電源投入により起動した後に、メイン制御部H1から通信手段TUを介して送信される自己についての前記制御管理用情報を受信する制御管理用情報取得処理を実行するように構成されている。前記不揮発性メモリ50は、電気的に書き込み並びに消去可能なEEPROM又はフラッシュメモリ等にて構成される。
【0080】
そして、前記不揮発性メモリ50に記憶される制御管理用情報としては、機種型式についての情報である機種型式データ、及び、アクチュエータにより操作される被操作体が基準位置に操作されたときの検出センサの検出値の個体差を調整するための情報である微調節データ、予め設定される制御実行時の制御不感帯の幅等の制御用設定データがある。
【0081】
説明を加えると、メイン制御部H1は、微調節データとして、刈取部2を上限位置に上昇させたときの刈取昇降位置センサS1の検出値を不揮発性メモリ50に記憶する構成となっている。又、制御用設定データとして、制御不感帯の幅の情報を不揮発性メモリ50に記憶する構成となっている。
【0082】
前記本機制御部H2は、微調節データの一例として、扱深さモータM1を作動させて被操作体としての搬送装置11を最深扱き位置及び最浅扱き位置に操作したときの前記扱深さ位置センサS6の検出値や、アンローダ6をホーム位置に旋回させたときのアンローダ位置センサS16の検出値等をメイン制御部H1に通信して不揮発性メモリ50に記憶させる構成となっている。
【0083】
前記姿勢制御部H3は、微調節データの一例として、制御対象である前記各シリンダを最大上昇位置及び最大下降位置に操作したときの各ストロークセンサS7〜S10の検出値をメイン制御部H1に通信して不揮発性メモリ50に記憶させる構成となっている。又、制御用設定データとして、姿勢制御を実行するときの制御不感帯の幅の情報をメイン制御部H1に通信して不揮発性メモリ50に記憶させる構成となっている。
【0084】
前記脱穀制御部H4は、微調節データの一例として、チャフシーブ33を基準位置として全開位置及び全閉位置に操作した夫々の状態におけるチャフ開度センサS13の検出値をメイン制御部H1に通信して不揮発性メモリ50に記憶させる構成となっている。
【0085】
前記走行制御部H5は、微調節データの一例として、刈高操向レバー13を基準位置として最大旋回操作位置に操作したとき及び直進状態に相当する位置の夫々における操向レバーセンサS19の検出値をメイン制御部H1に通信して不揮発性メモリ50に記憶させる構成となっている。制御用設定データとして、直進状態を維持する中立状態での制御不感帯の幅の情報をメイン制御部H1に通信して不揮発性メモリ50に記憶させる構成となっている。
【0086】
前記結束制御部H6は、微調節データの一例として、前記株揃え機構45が基準位置としての排ワラの稈長方向両側の端部にあるときの前記株揃え位置検出センサS22の検出値をメイン制御部H1に通信して不揮発性メモリ50に記憶させる構成となっている。
【0087】
さらに説明を加えると、記憶対象制御部(H2〜H6)は、前記微調節データを更新するための微調節データ取得処理を実行可能に構成され、この微調節データ取得処理にて更新用の新たな微調節データを取得したときは、その微調節データを前記情報管理用の制御部に通信するように構成されている。すなわち、コンバインが使用されるに伴って、情報入力手段としての上記した各種の検出センサ類のいずれかが故障して修理交換が行われたような場合等において、記憶対象制御部(H2〜H6)は、微調節データ取得処理を実行することにより、微調節データを新たな取得するのである。
【0088】
図示はしていないが、前記微調節データ取得処理について説明を加えると、記憶対象制御部は、例えばメンテナンス用のスイッチ等を操作しながら電源投入が行われる等の特殊な入力操作で微調節データ取得用の制御モードに切り換わる。そして、その制御モードにて微調節検出用の作動状態になるようにアクチュエータ類(油圧シリンダや電動モータ等)を操作して、修理交換が行われた新たな検出センサを用いて被操作体を基準位置に操作したときの検出値を更新用の微調節データとして求めて取得するのである。そして、そのように更新用の微調節データを取得したときは、その更新用の微調節データをメイン制御部H1に通信して不揮発性メモリ50に記憶させるのである。
【0089】
前記記憶対象制御部(H2〜H6)は、上述したように微調節データをメイン制御部H1に通信して不揮発性メモリ50に記憶させるのであるが、通信手段TUによる通信が適切に行われない場合には微調節データを取得することができないおそれがある。そこで、代替用の制御管理用情報を記憶する読み出し専用の記憶手段を備えて、電源が投入されて起動してから管理用設定時間が経過してもメイン制御部H1から送信される自己についての制御管理用情報を受信できないときは、前記読み出し専用の記憶手段に記憶している代替用の制御管理用情報に基づいて自己が担当する制御対象の作動を制御するように構成されている。
【0090】
前記記憶対象制御部(H2〜H6)だけでなく、メイン制御部H1にも代替用の制御管理用情報を記憶する読み出し専用の記憶手段を備えられ、不揮発性メモリ50から得られない場合には、前記読み出し専用の記憶手段に記憶している代替用の制御管理用情報に基づいて自己が担当する制御対象の作動を制御するように構成されている。
【0091】
前記読み出し専用の記憶手段としては、自己が担当する制御対象の作動を制御するための制御プログラムが格納されている読み出し専用メモリ(ROM)52を利用する構成となっており、その読み出し専用メモリ52に予め自己についての制御管理用情報が書き込み記憶されている。前記読み出し専用メモリ52としては、マスクROMやPROM等が用いられる。
【0092】
ちなみに、上記したような微調節データとしては、上述した各種の情報は一例であってこれらの情報に限定されるものではなく、又、それ以外にも種々の情報が記憶される場合がある。又、上述したような微調節データは、工場出荷時に予め記憶されるが、修理や部品交換等のメンテナンス作業が行われたときにも適宜行われることになる。すなわち、記憶対象制御部(H2〜H6)は、上記した微調節データ取得処理にて更新用の微調節データを取得したときは、その微調節データをメイン制御部H1に通信して不揮発性メモリ50に記憶させように構成されている。
又、機種型式データはコンバインが工場から出荷される工場出荷前に予め不揮発性メモリ50に記憶されることになる。
【0093】
又、前記各制御部のうち、走行制御部H5が特定の記憶対象制御部に対応している。例えば、刈高操向レバー13を直進状態に相当する操作位置の検出値が個々の機体に対応した適正な値として記憶されていないと、刈高操向レバー13を直進状態に操作しても車体が直進走行できず走行が適正に行えない場合がある。そこで、この走行制御部H5は、自己についての制御管理用情報を記憶する書き込み可能な特定制御部用の不揮発性の記憶手段としての不揮発性メモリ51を備えるように構成され、この不揮発性メモリ51に、メイン制御部H1から送信される制御管理用情報を記憶するように構成されている。このメモリ51は、電気的に書き込み並びに消去可能なEEPROM又はフラッシュメモリ等にて構成される。
【0094】
前記メイン制御部H1が、電源投入により起動してから管理用設定時間(例えば、1.5秒間)が経過するまでの間は、前記通信手段TUを介して前記不揮発性メモリ50に記憶している前記制御管理用情報を前記記憶対象制御部に送信する制御管理用情報分配処理を実行し、且つ、前記管理用設定時間が経過すると他の制御部へ前記制御用情報を送受信する制御用情報通信処理を実行するように構成されている。又、前記記憶対象制御部(H2〜H6)の夫々が、電源投入により起動してから前記管理用設定時間が経過するまでの間は、メイン制御部H1から通信手段TUを介して送信される自己についての前記制御管理用情報を受信する制御管理用情報取得処理を実行し、且つ、前記管理用設定時間が経過すると前記制御用情報を送受信する制御用情報通信処理を実行するように構成されている。
【0095】
さらに、前記記憶対象制御部(H2〜H6)が、前記制御管理用情報取得処理として、複数種の制御管理用情報の夫々を要求する複数種の要求情報を予め定めた順序で且つ順番が先である種類の制御管理用情報を受信すると次の順番の種類の制御管理用情報についての前記要求情報を送信する形態で送信するように構成され、メイン制御部H1が、前記制御管理用情報分配処理として、複数種の制御管理用情報を予め定めた順序で且つ順番が先である種類の制御管理用情報を送信しているときに複数の記憶対象制御部のいずれのものもその種類の制御管理用情報を要求する前記要求情報を送信しない状態になると次の順番の種類の制御管理用情報を送信する形態で送信するように構成されている。
【0096】
又、前記記憶対象制御部の夫々が、前記制御管理用情報取得処理において、要求する種類の前記制御管理用情報を受信しなければ、その種類の制御管理用情報に対応する前記要求情報を設定単位時間が経過する毎に繰り返し送信するように構成されている。
【0097】
以下、メイン制御部H1、及び、記憶対象制御部の電源投入後の制御処理について具体的に説明する。
先ず、メイン制御部H1の制御内容について説明する。このメイン制御部H1は、図11に示すように、電源投入されて起動すると、起動してから管理用設定時間(1.5秒間)が経過するまでの間は制御管理用情報分配処理を実行し(ステップ1、2)、起動してから管理用設定時間(1.5秒間)が経過すると、電源がオフするまで制御用情報受信処理及び自己が担当する制御対象(刈取昇降シリンダC1等)を制御する作動制御を実行する(ステップ3、4、5)。尚、制御用情報受信処理においては上記したデータ受信処理と同様な処理を実行することになる。そして、電源をオフするときは、後述するような更新すべきデータがあるときは制御管理用情報の不揮発性メモリ50への更新処理を実行する(ステップ6、7)。
【0098】
次に、前記制御管理用情報分配処理について説明する。
図12に示すように、制御管理用情報分配処理を開始すると、データ受信処理並びにデータ送信処理を実行する(ステップ100、101、102)。データ受信処理については後で説明する。データ送信処理は、送信バッファにセットされているデータを通信バスライン47上に送信する処理である。
【0099】
そして、設定単位時間(10msec)が経過する毎に、複数の記憶対象制御部が要求しているデータを送信するための処理を行う。すなわち、いずれかの記憶対象制御部が機種型式データを要求する要求データを送信しているときは、不揮発性メモリ50に記憶している機種型式データの送信準備をする(ステップ103、104)。この送信準備について説明すると、送信すべきデータ(機種型式データ)を送信バッファ内にセットする処理である。このように送信バッファにセットしておくと、ステップ3のデータ送信処理にてそのデータを通信バスライン47上に送信することになる。以下の送信準備においても同様な処理を行う。
【0100】
複数の記憶対象制御部のいずれも機種型式データを要求する機種型式要求データを送信しておらず、しかも、いずれかが微調節データを要求する微調節要求データを送信しているときは、不揮発性メモリ50に記憶している微調節データの送信準備をする(ステップ107、108)。複数の記憶対象制御部のうちのいずれも、微調節要求データを送信していないときは、制御用設定データの送信準備をする(ステップ109)。この制御用設定データの送信準備は、いずれの記憶対象制御部から要求がなくても設定単位時間(10msec)が経過する毎に繰り返し行われることになる。
【0101】
次に、前記データ受信処理について説明する。
図13に示すように、受信したデータが制御管理用情報の送信を要求するデータであり(ステップ200、201)、その受信データが本機制御部H2からの受信データであるときは、本機制御部H2に対応するデータ更新処理を実行する(ステップ202、203)。このデータ更新処理は、図14に示すように行われる。つまり、本機制御部H2がどのデータを要求しているかを判別して(ステップ300)、微調節実行結果の転送が要求されていれば、データ中に含まれる微調節更新データの種類を表すデータが正常であり、且つ、微調節データを示すデータが正常である(ゼロでない)ときは、更新すべき微調節データを不揮発性メモリ50に書き込むための準備をする(ステップ301、302、303)。つまり、書き込み用バッファにデータをセットする。このような更新処理を実行すると、上述したように、電源をオフする前に制御管理用情報の不揮発メモリ50への更新処理を実行することになる(ステップ4、5)。
【0102】
そして、このような微調節データの更新処理を、他の記憶対象制御部、つまり、姿勢制御部H3、脱穀制御部H4、走行制御部H5、結束制御部H6から受信するデータについて夫々実行する(ステップ204〜210)。
【0103】
このメイン制御部H1は、制御用情報受信処理において前記不揮発性メモリ50から自己の制御管理用情報を受信できないときは、適切な制御が行えないので、そのときは、読み出し専用メモリ(ROM)52に記憶されているデータを制御管理用情報として設定して自己が担当する制御対象(刈取昇降シリンダC1等)を制御する作動制御を実行することになる。
【0104】
次に、記憶対象制御部(H2〜H6)における制御内容について説明する。
図15に示すように、電源投入されて起動すると、起動してから管理用設定時間(1.5秒間)が経過するまでの間は制御管理用情報取得処理を実行し(ステップ21、22)、起動してから管理用設定時間(1.5秒間)が経過しても、制御管理用情報が取得できていないか、又は、取得した制御管理用情報が許容範囲を超えており明らかに異常な値であるときは、適切な制御が行えないので、そのときは、読み出し専用メモリ(ROM)52に記憶されているデータを制御管理用情報として設定する(ステップ23、24、25)。そして、その後は、電源がオフされるまで制御用情報を他の制御部に通信する処理を行い、自己の制御対象(扱深さモータM1等)の作動制御を実行する(ステップ26、27、28)。
【0105】
次に、前記制御管理用情報取得処理について説明する。
図16に示すように、制御が開始されると、データ受信処理並びにデータ送信処理を実行する(ステップ30、31、32)。データ受信処理については後で説明する。データ送信処理は、送信バッファにセットされているデータを通信バスライン47上に送信する処理である。
【0106】
そして、設定単位時間(10msec)が経過する毎に、次のような必要な情報を要求するための要求情報の送信処理を行う。すなわち、メイン制御部H1から機種型式データを受信していなければ、機種型式データを要求する要求情報としての機種型式要求データの送信準備をする(ステップ33、34)。機種型式データを受信していれば、次の順番の制御管理用情報としての微調節データをメイン制御部H1から受信しているか否かを判別し、受信していなければ微調節データを要求するための要求情報としての微調節要求データの送信準備をする(ステップ39、40)。微調節更新データを受信していれば制御用設定データをメイン制御部H1から受信しているか否かを判別し、制御用設定データを受信していなければ制御用設定データを要求する要求情報としての制御用設定情報要求データの送信準備をし、制御用設定データを受信していれば空データ(データ領域が全て零である送信データ)の送信準備をする(ステップ41、42、43)。
【0107】
従って、記憶対象制御部は、要求する種類の制御管理用情報を受信しなければ、その種類の制御管理用情報に対応する要求情報を設定単位時間(10msec)が経過する毎に繰り返し送信するように構成されている。
【0108】
次に、前記データ受信処理について説明するが、走行制御部H5と、それ以外の記憶対象制御部(H2、H3、H4、H6)とは処理の内容が一部異なるので、先に、走行制御部H5以外の記憶対象制御部(H2、H3、H4、H6)のデータ受信処理について説明する。
すなわち、図17に示すように、受信データがメイン制御部H1からの制御管理用情報の送信データであるときは(ステップ400〜403)、その送信されてきたデータが機種型式データであればその機種型式データとして識別可能な状態で受信する(ステップ404、405)。送信されてきたデータが微調節データであれば、そのデータを微調節データとして識別可能な状態で受信する(ステップ406、407)。送信されてきたデータが制御用設定データであればそのデータを制御用設定データとして識別可能な状態で受信する(ステップ408、409)。
【0109】
次に、走行制御部H5のデータ受信処理について説明する。
この走行制御部H5には、上述したように、自己の制御管理用情報を記憶するための不揮発性メモリ51が備えられており、この不揮発性メモリ51に対しては、メイン制御部H1に備えられた不揮発性メモリ50に予め書き込む際に併行して同じ内容が書き込み記憶されることになる。又、上記したように読み出し専用メモリ52も併せて備えられ、代替用の制御管理用情報が書き込み記憶される構成となっている。
【0110】
この走行制御部H5は、図18に示すように、電源投入されて制御を開始すると、不揮発性メモリ51への更新処理以外は他の記憶対象制御部の処理と同じ処理を実行する(ステップ400〜409)。同じ処理については説明は省略し、異なる処理についてのみ以下に説明する。
前記メイン制御部H1から送信される制御管理用情報(微調節データ)が、不揮発性メモリ51に記憶しているデータとは異なり変化しているものであり、しかも、その制御管理用情報が予め設定されている許容範囲内にあって異常な値でない場合には、その取得したデータを不揮発性メモリ51に書き込みその内容を更新する(ステップ407a、407b、407c)。つまり、メイン制御部H1から送信される制御管理用情報(微調節データ)が現在記憶しているデータと同じ変化していない場合や制御管理用情報が許容範囲を超えて明らかに異常である場合には、更新処理を実行しないようになっている。
データが変化していない場合に更新処理を実行しないことにより、無用な書き換えによる不揮発性メモリ51の寿命低下を防止することができる。
【0111】
特定の記憶対象制御部としての走行制御部H5は、メイン制御部H1から送信される自己についての制御管理用情報を受信できない場合、及び、制御管理用情報を受信してもその値が許容範囲を超えて明らかに異常である場合には、自己が備える不揮発性メモリ51への更新処理は行わないようになっている。
ちなみに、メイン制御部H1から制御管理用情報が取得できていないか、又は、取得した制御管理用情報が許容範囲を超えており明らかに異常な値であるときは、読み出し専用メモリ(ROM)52に記憶されているデータを制御管理用情報として設定することになり(ステップ23、24、25)、そのデータを用いて自己の制御対象(油圧制御部43等)の作動制御を実行することになる。
【0112】
そして、上述したように、このコンバインでは、走行制御部H5とエンジン制御部H7は、メイン制御部H1からの制御管理用情報が通信されなくても独自で自己が担当する制御対象の制御を良好に行うことが可能となるのであり、圃場内で通信異常が発生したような場合であっても、車体を走行させて圃場から脱出したのち畦等の修理作業に適した安全な場所まで移動走行させることが可能となる。
【0113】
〔別実施形態〕
以下、別実施形態を列記する。
【0114】
(1)上記実施形態では、前記情報管理用の制御部が、電源投入により起動してから管理用設定時間が経過するまでの間は前記制御管理用情報分配処理を実行し、前記記憶対象制御部の夫々が、電源投入により起動してから前記管理用設定時間が経過するまでの間は前記制御管理用情報取得処理を実行する構成としたが、このような構成に代えて、前記情報管理用の制御部が記憶対象制御部から要求がある限り前記制御管理用情報分配処理を実行するようにしたり、前記記憶対象制御部の夫々が確実に受信するまで前記制御管理用情報取得処理を実行するようにしてもよい。
【0115】
(2)上記実施形態では、前記情報管理用の制御部が、複数種の制御管理用情報を予め定めた順序で且つ順番が先である種類の制御管理用情報を送信しているときに複数の前記記憶対象制御部のいずれのものもその種類の制御管理用情報を要求する前記要求情報を送信しない状態になると次の順番の種類の制御管理用情報を送信する形態で送信するように構成したが、このような構成に代えて、複数種の制御管理用情報の全てのものを纏めて一挙に通信するようにしてもよく、通信方法は種々変更可能である。
【0116】
(3)上記実施形態では、前記記憶対象制御部が、代替用の制御管理用情報を記憶する読み出し専用の記憶手段を備える構成としたが、このような読み出し専用の記憶手段を備えない構成としてもよい。
【0117】
(4)上記実施形態では、前記特定の記憶対象制御部が、特定制御部用の不揮発性の記憶手段と読み出し専用の記憶手段を備える構成としたが、特定制御部用の不揮発性の記憶手段だけを備える構成としてもよく、読み出し専用の記憶手段だけを備える構成としてもよい。
【0118】
(5)上記実施形態では、前記記憶手段に、前記制御管理用情報として、機種型式データ、微調節データ、制御用設定データを記憶するようにしたが、これらのうちのいずれか1つ又は2つ以上のものを記憶するようにしてもよく、又、これらのデータ以外の他の種類のデータを記憶するようにしてもよい。
【0119】
(6)上記実施形態では、記憶対象制御部として、本機制御部H2、姿勢制御部H3、脱穀制御部H4、走行制御部H5、結束制御部H6を備えるものを例示したが、これらのうちの一部の制御部を備えない構成や他の種類の制御部を備える構成など、種々の構成の作業機械に適用できる。
【0120】
(7)上記実施形態では、作業機械としてコンバインを例示したが、コンバインに限らず他の種類の作業車であってもよく、作業車に限らず定置式の作業機械であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】コンバインの全体側面図
【図2】脱穀装置の構成を示す図
【図3】コンバイン前部の側面図
【図4】走行装置の側面図
【図5】走行装置の側面図
【図6】走行装置の側面図
【図7】結束装置の平面図
【図8】結束装置の後面図
【図9】伝動構造を示す図
【図10】制御ブロック図
【図11】制御動作のフローチャート
【図12】制御動作のフローチャート
【図13】制御動作のフローチャート
【図14】制御動作のフローチャート
【図15】制御動作のフローチャート
【図16】制御動作のフローチャート
【図17】制御動作のフローチャート
【図18】制御動作のフローチャート
【符号の説明】
【0122】
H1 情報管理用の制御部
H2〜H6 記憶対象制御部
H5 特定の記憶対象制御部
50、51 不揮発性の記憶手段
52 読み出し専用の記憶手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信手段を介して互いに通信可能な複数の制御部が機械各部に分散配備され、
前記複数の制御部が、自己に備えられた情報入力手段により入力される入力情報、他の制御部から通信される制御用情報、及び、制御管理用情報に基づいて、自己が担当する制御対象の作動を制御するように構成されている作業機械用の制御装置であって、
前記複数の制御部のうちのいずれかの制御部が、前記複数の制御部のうちの自己以外の全ての制御部を記憶対象制御部として又は自己以外の全ての制御部のうちの一部の制御部を記憶対象制御部として、その複数の記憶対象制御部の前記制御管理用情報並びに自己の前記制御管理用情報を記憶する書き込み可能な不揮発性の記憶手段を備える情報管理用の制御部として構成され、
前記情報管理用の制御部が、電源投入により起動した後に、前記通信手段を介して前記記憶手段に記憶している前記制御管理用情報を前記記憶対象制御部に送信する制御管理用情報分配処理を実行するように構成され、
前記記憶対象制御部の夫々が、電源投入により起動した後に、前記情報管理用の制御部から前記通信手段を介して送信される自己についての前記制御管理用情報を受信する制御管理用情報取得処理を実行するように構成されている作業機械用の制御装置。
【請求項2】
前記情報管理用の制御部が、電源投入により起動してから管理用設定時間が経過するまでの間は前記制御管理用情報分配処理を実行し、且つ、前記管理用設定時間が経過すると前記制御用情報を送受信する制御用情報通信処理を実行するように構成され、
前記記憶対象制御部の夫々が、電源投入により起動してから前記管理用設定時間が経過するまでの間は前記制御管理用情報取得処理を実行し、且つ、前記管理用設定時間が経過すると前記制御用情報を送受信する制御用情報通信処理を実行するように構成されている請求項1記載の作業機械用の制御装置。
【請求項3】
前記制御管理用情報として複数種の制御管理用情報があり、
前記記憶対象制御部が、前記制御管理用情報取得処理として、複数種の制御管理用情報の夫々を要求する複数種の要求情報を予め定めた順序で且つ順番が先である種類の制御管理用情報を受信すると次の順番の種類の制御管理用情報についての前記要求情報を送信する形態で送信するように構成され、
前記情報管理用の制御部が、前記制御管理用情報分配処理として、複数種の制御管理用情報を予め定めた順序で且つ順番が先である種類の制御管理用情報を送信しているときに複数の前記記憶対象制御部のいずれのものもその種類の制御管理用情報を要求する前記要求情報を送信しない状態になると次の順番の種類の制御管理用情報を送信する形態で送信するように構成されている請求項2記載の作業機械用の制御装置。
【請求項4】
前記記憶対象制御部の夫々が、前記制御管理用情報取得処理において、要求する種類の前記制御管理用情報を受信しなければ、その種類の制御管理用情報に対応する前記要求情報を設定単位時間が経過する毎に繰り返し送信するように構成されている請求項3記載の作業機械用の制御装置。
【請求項5】
前記記憶対象制御部が、代替用の制御管理用情報を記憶する読み出し専用の記憶手段を備えて、前記管理用設定時間が経過しても前記情報管理用の制御部から送信される自己についての前記制御管理用情報を受信できないときは、前記読み出し専用の記憶手段に記憶している代替用の制御管理用情報に基づいて自己が担当する制御対象の作動を制御するように構成されている請求項2〜4のいずれか1項に記載の作業機械用の制御装置。
【請求項6】
前記記憶対象制御部のうちの特定の記憶対象制御部が、自己についての前記制御管理用情報を記憶する書き込み可能な特定制御部用の不揮発性の記憶手段を備えて構成され、
前記特定の記憶対象制御部が、前記制御管理用情報取得処理により受信した自己についての前記制御管理用情報を前記特定制御部用の不揮発性の記憶手段に記憶するように構成され、且つ、前記管理用設定時間が経過しても前記情報管理用の制御部から送信される自己についての前記制御管理用情報を受信できないときは、前記特定制御部用の不揮発性の記憶手段に記憶している制御管理用情報に基づいて自己が担当する制御対象の作動を制御するように構成されている請求項2〜4のいずれか1項に記載の作業機械用の制御装置。
【請求項7】
前記特定の記憶対象制御部が、代替用の制御管理用情報を記憶する読み出し専用の記憶手段を備えて、前記特定制御部用の不揮発性の記憶手段に自己についての制御用管理情報が記憶されていない場合において前記管理用設定時間が経過しても前記情報管理用の制御部から送信される自己についての前記制御管理用情報を受信できないときは、前記読み出し専用の記憶手段に記憶している代替用の制御管理用情報に基づいて自己が担当する制御対象の作動を制御するように構成されている請求項6に記載の作業機械用の制御装置。
【請求項8】
前記制御管理用情報が、作業機械の機種型式についての情報を含むものである請求項1〜7のいずれか1項に記載の作業機械用の制御装置。
【請求項9】
前記機械各部が、被操作体を移動操作自在な前記制御対象としてのアクチュエータと、前記被操作体の操作位置を検出する前記情報入力手段としてのポテンショメータ式の検出センサとを備えて構成され、
前記記憶対象制御部が、前記検出センサの検出情報に基づいて前記アクチュエータの作動を制御するように構成され、且つ、前記アクチュエータにて前記被操作体が基準位置に操作されたときの前記検出センサの検出値の個体差を調整するための微調節データを前記制御管理用情報として前記情報管理用の制御部に通信するように構成されている請求項1〜8のいずれか1項に記載の作業機械用の制御装置。
【請求項10】
前記記憶対象制御部が、前記微調節データを更新するための微調節データ取得処理を実行可能に構成され、この微調節データ取得処理にて更新用の微調節データを取得したときは、その微調節データを前記情報管理用の制御部に通信するように構成されている請求項9記載の作業機械用の制御装置。
【請求項11】
作業機械である作業車に搭載されたエンジンの作動を制御するエンジン制御部が、前記情報管理用の制御部及び前記記憶対象制御部とは異なる制御部として備えられ、
前記情報管理用の制御部から前記エンジン制御部に、前記制御用情報として、制御切り換え指令情報、目標回転速度の情報、及び、アクセル操作量の情報が通信されるように構成され、
前記エンジン制御部が、前記情報管理用の制御部から通信される前記制御切り換え指令情報に基づいて、前記エンジンの出力回転速度を前記目標回転速度に維持するアイソクロナス制御を実行する状態と、前記エンジンの出力回転速度を前記アクセル操作量に対応する速度に調整するドループ制御を実行する状態とに切り換え可能に構成されている請求項1〜10のいずれか1項に記載の作業機械用の制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2009−284871(P2009−284871A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−143280(P2008−143280)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】