説明

作業機械

【課題】過酷な外気温度環境下でも断熱箱内の機器を規定温度範囲内に保持できる温度調整手段を有する作業機械を提供する。
【解決手段】自走式で内部に高温または低温から保護すべき機器を収容してなる断熱箱19を有する。断熱箱19に、換気用の開閉可能な窓27を少なくとも2つ設ける。窓27は作業機械に搭載されたコントローラにより開閉される窓開閉用アクチュエータ28を有する。基準温度以上の高温になるか、または基準温度未満の低温になると、窓27を閉じて断熱箱19内の機器を保護する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火山や高炉等のように高熱を伴う対象物を観測する観測機械や、冷凍庫に出入りする運搬機のように、過酷な温度条件で作業する作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、例えば高炉のような高温雰囲気で作動する撮像装置等を高温から保護するため、ハウジングの内部にカメラを収容し、そのハウジングの前面に撮像のための透明ガラスを設置し、ハウジングの内部にその背面から冷却空気を取り込み、下面等から排出してカメラを高温から保護するものが開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、電子機器等の発熱体を収容する発熱体用筐体を有し、その発熱体を冷却するため、筐体の内部に発熱体が流路の途中に存在するように空気の循環流路を形成し、その循環流路にファンと外気との熱交換器を設けたものが開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平6−105198号公報
【特許文献2】特開平9−260879公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のように、通風によりハウジング内部の温度上昇を防止する構成にすると、外気温度が上昇して内部機器に障害を起こすレベルになった場合にはハウジング内部を機器保護のための規定温度以下に維持できないという問題点がある。
【0006】
また、特許文献2に記載のように、外気温度が筐体内部の温度より高い時は、熱交換器の放熱ができなくなり、筐体内を規定温度以下にできなくなるという問題点がある。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑み、過酷な外気温度環境下でも断熱箱内の機器を規定温度範囲内に保持できる温度調整手段を有する作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の作業機械は、自走式で内部に高温または低温から保護すべき機器を収容してなる断熱箱を有する作業機械において、
前記断熱箱に、換気用の開閉可能な窓を少なくとも2つ設け、
前記窓は作業機械に搭載されたコントローラにより開閉される窓開閉用アクチュエータを有することを特徴とする。
【0009】
請求項2の作業機械は、請求項1において、
前記作業機械は断熱箱内の機器が損傷または正常な動作が不能となるような高温となる雰囲気で使用される遠隔式のものであって、
前記断熱箱内には発熱機器を収容し、
前記作業機械は外気温度センサを備え、
前記外気温度センサにより検出される外気温度が基準温度以上になると前記コントローラにより前記窓開閉用アクチュエータを駆動して前記窓を閉じ、基準温度未満になると前記コントローラにより前記窓開閉用アクチュエータを駆動して前記窓を開ける保護装置を設けたことを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の作業機械は、請求項1において、
前記作業機械は断熱箱内の機器が損傷または正常な動作が不能となるような高温となる雰囲気で使用される遠隔式のものであって、
前記断熱箱内には発熱機器を収容し、
前記作業機械は外気温度センサを備え、
前記外気温度センサにより検出される外気温度が基準温度以上になると前記コントローラにより前記窓開閉用アクチュエータを駆動して前記窓を一定時間閉じる保護装置を設けたことを特徴とする。
【0011】
請求項4の作業機械は、請求項1において、
前記作業機械は断熱箱内の機器が損傷または正常な動作が不能となるような低温となる雰囲気で使用されるものであって、
前記断熱箱内には発熱機器を収容し、
前記外気温度センサにより検出される外気温度が基準温度以下になると前記コントローラにより前記窓開閉用アクチュエータを駆動して前記窓を閉じ、基準温度を超えると前記コントローラにより前記窓開閉用アクチュエータを駆動して前記窓を開ける保護装置を設けたことを特徴とする。
【0012】
請求項5の作業機械は、請求項1から4までのいずれかに記載の作業機械において、
前記断熱箱内に、前記断熱箱内に収容した電子機器および前記アクチュエータのための電源を前記断熱箱内に収容したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、例えば火山や高炉等のように高温となることのある外気環境下において作業する観測機械の場合、外気温度が基準温度以上になると窓を閉じることにより、断熱箱内の機器は高温から保護することができる。また、作業機械が冷凍庫に出入りする運搬機の場合、冷凍庫内に運搬機が入る間は窓を閉じておくことにより、断熱箱内の機器を低温から保護することができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、前記外気温度センサにより検出される外気温度が基準温度以上になると前記コントローラは前記窓開閉用アクチュエータを駆動して前記窓を閉じると共に、基準温度未満になると前記コントローラは前記窓開閉用アクチュエータを駆動して前記窓を開けるため、断熱箱内の機器を高温から保護することができ、高温雰囲気が無くなるかあるいは作業機械を高温の外気雰囲気から退避させることにより、断熱箱内の機器の破損を防止することができる。また、外気温度が基準温度以下になっていれば窓が開くため、少なくとも1つの窓を外気の取り入れ口とし、他の窓を排出口として外気を断熱箱内に取り入れることができ、発熱機器の熱を外部に放出することができる。
【0015】
請求項3の発明によれば、前記外気温度センサにより検出される外気温度が基準温度以上になると前記コントローラは前記窓開閉用アクチュエータを駆動して前記窓を一定時間閉じるため、その一定時間を断熱作用によって温度上昇が遅れる時間に設定しておくことにより、断熱箱内の機器を高温から保護することができる。また、一定時間経過後外気温度が基準温度以下になっていれば窓が開くため、少なくとも1つの窓を外気の取り入れ口とし、他の窓を排出口として外気を断熱箱内に取り入れることができ、発熱機器の熱を外部に放出することができる。
【0016】
請求項4の発明によれば、作業機械が冷凍庫に出入りする運搬機である場合、冷凍庫内にいる間は断熱箱内の機器を低温から保護することができる。
【0017】
請求項5の発明によれば、前記断熱箱内に収容した電子機器および前記アクチュエータのための電源を前記断熱箱内に収容したので、駆動源としての電源が異常高温や異常低温から保護され、断熱箱や窓開閉用のアクチュエータの動作が確保される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は本発明の作業機械の一実施の形態を示す側面図である。この実施の形態は火山における自然現象の観測を行なう遠隔式観測機械について示す。この火山における自然現象の観測とは、火山爆発における火砕流の温度変化、衝撃圧力、圧力変化の測定である。図1において、1はクローラ式走行体、2はこの走行体1上に旋回装置3を介して設置した旋回体である。
【0019】
前記旋回体2の前部には水平揺動装置5を介して作業用フロント6を取付ける。この実施の形態の作業用フロント6は多関節構造であり、この作業用フロント6は、ブームシリンダ7により水平揺動装置5に起伏可能に取付けられるブーム8と、ブーム8にアームシリンダ9により上下回動可能に取付けられるアーム10とからなる。
【0020】
この作業用フロント6の先端には、フォーク11が、フォーク回動用シリンダ12により回動自在に取付けられる。前記フォーク11は、アーム10の先端に前記シリンダ12により回動可能に取付けられたブラケット13と、そのブラケット13に取付けられた旋回装置14と、ホーク本体15、フォーク本体15の開閉装置16等とからなる。
【0021】
前記旋回体2上には、遠隔操作のための外気温度、衝撃波、圧力をそれぞれ測定するセンサ類17と断熱箱19とを搭載する。また、旋回体2の前方、後方にはそれぞれ前方カメラ20と後方カメラ21を搭載し、アーム10にも作業状態監視カメラ22を取付ける。前方カメラ20は、観測機械の前方の作業状態や周囲の状況を監視するものである。後方カメラ21は、観測機械全体の状況と周囲の状況を監視するものである。また、アーム10に取付けた作業状態監視カメラ22は、フォーク11による作業状態を監視するものである。
【0022】
図2(A)、(B)に示すように、断熱箱19は、断熱材24を内外の板材25間に設けて構成されたものである。走行体1,旋回装置3,水平揺動装置5,シリンダ7,9、フォーク11の旋回装置14,開閉装置16等の各アクチュエータは全て電動式のものであり、断熱箱19内にはこれらのアクチュエータに電力を供給する電源(バッテリー)32を収容する。断熱箱19には、アクチュエータのパイロット装置、データ格納装置、各種センサにつながる電子機器、操作系受信機、カメラ用無線受信機を収容し、電源はこれらの機器(これらは図2(A)において符号33でまとめて示される。)にも電力を供給する。
【0023】
図2(C)はこの作業機械(観測機械)の断熱箱19内の保護装置のブロック図である。30は作業機械から離れた位置にある送信機(図示せず)からの無線信号を受けて観測機械の制御を行なうための受信機である。前述のごとくこの受信機30は断熱箱19内に設置される。17は外気温度、衝撃波、圧力をそれぞれ検出するセンサ類である。32は断熱箱19内に収容されたバッテリー、34は走行体1,旋回装置3,水平揺動装置5,作業用フロント6、フォーク11のアクチュエータ群である。35はアクチュエータ群34よび電動シリンダでなる窓開閉用シリンダ28のコントローラである。36は前記受信機30からの制御信号によりコントローラ35を制御するパイロット装置である。
【0024】
断熱箱19には少なくとも2カ所に開閉可能な窓27を設ける。この窓27は断熱箱19の開口部29を開放、閉塞するもので、窓開閉用シリンダ28によって開閉されるものである。
【0025】
断熱箱19内には、前記各種機器が占有する空間の残りのスペース26として一定以上の容積を形成することにより、外気温度上昇によって窓27を閉じた状態においても、内部機器の発熱により所定時間、規定温度以下を維持できるようにする。
【0026】
この作業機械を用いて火山の観測を行なう場合は、オペレータが火口から離れた危険のない場所にいて送信機により受信機30に操作信号を送り、受信機30で受信信号に基づき、パオロット装置36はコントローラ35を制御して走行体1、旋回装置3,作業用フロント6,フォーク11の各アクチュエータを駆動し、外気温度、衝撃波、圧力の測定を行なう。
【0027】
この測定作業において、断熱箱19内の機器は例えば50℃以下に保つことが望まれ、内蔵機器の発熱による機器の損傷または正常な動作が不能になることを防止するため、窓27を開放しておく。例えば断熱箱19内の温度が30℃である場合、400〜500℃の火砕流の雰囲気にあっても、窓27を閉じていれば50℃に達するまで30分を要する構成である。
【0028】
図3は前記窓開閉用シリンダ28を作動するためにパイロット装置36に設ける操作手段の一例を示すブロック図である。この操作手段は温度比較手段37を有し、温度比較手段37は、外気温度センサ17aにより検出される外気温度T1が、基準温度設定手段39により予め設定されている基準温度T0以上である(T1≧T0)ことを検出すると、コントローラ35を操作して窓開閉用シリンダ28を窓閉じ方向に作動させて窓27を閉じる。反対に前記外気温度T1が基準温度T0未満である(T1<T0)と、コントローラ35を操作して窓開閉用シリンダ28を窓開放方向に作動させて窓27を開放する。
【0029】
このように外気温度が高温になると窓27を閉じるようにすれば、断熱箱19内の機器を高温から保護することができる。また、外気温度が基準温度未満になっていれば窓27が開くため、少なくとも1つの窓27を外気の取り入れ口とし、他の窓27を排出口として外気を断熱箱19内に取り入れることができ、発熱機器の熱を外部に放出することができる。なお、前記窓27を開閉する基準温度T0は40〜45℃程度に設定することが好ましい。
【0030】
図4は前記窓開閉用シリンダ28を開閉するためにパイロット装置36に設ける操作手段の他の例を示すブロック図である。この操作手段は温度比較手段37とタイマ40とを有し、温度比較手段37が、外気温度センサ17aにより検出される外気温度T1が、予め設定された基準温度T0より高いことを検出すると、タイマ40を起動し、コントローラ35を操作して窓開閉用シリンダ28を一定時間閉じた後、開放する。
【0031】
このように、前記外気温度センサ17aにより検出される外気温度T1が基準温度T0以上になると一定時間閉じるようにし、その一定時間を断熱作用によって温度上昇が遅れる時間に設定しておくことにより、断熱箱19内の機器を高温から保護することができ、断熱箱内の機器の破損を防止することができる。また、一般的に、火山における火砕流やガスの噴出は一時的なものであり、一定時間経過すれば、外気温度が基準温度以下になるので、一定時間後に窓が開くことにより、少なくとも1つの窓27を外気の取り入れ口とし、他の窓27を排出口として外気を断熱箱19内に取り入れることができ、発熱機器の熱を外部に放出することができる。
【0032】
本発明は、高炉におけるスラグ処理機や焼却炉のスラグ取り機あるいは転炉のはつり機等にも用いることができる。転炉のはつり機は比較的周囲温度の高い範囲が広く、最高700℃となる。現在、転炉の温度を150℃程度に下げて人力によりはつり作業を行なっているが、本発明の作業機械を使用して、比較的大きな断熱箱19に無線機を積めば、500℃の雰囲気でも無線操作で作業を行なうことができ、炉の停止時間を短くすることができ、効率向上と安全性の向上が図れる。
【0033】
また、走行、旋回、フロント駆動等に用いるアクチュエータを電動式とすることにより、エンジン駆動の液圧式にした場合のように、エンジンが高温によって損傷、停止する事故を防ぐことができる。
【0034】
本発明による作業機械が冷凍庫内で作業する運搬機として用いられるものである場合、外気温度が基準温度以下になると窓27を閉じ、基準温度を超えると窓27を開放する構成にすることにより、断熱箱19内の機器が低温によって故障することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明による作業機械の一実施の形態を示す側面図である。
【図2】(A)は図1の作業機械の断熱箱を示す平面図、(B)はその側面断面図、(C)は本実施の形態の作業機械の保護装置の一例を示すブロック図である。
【図3】本実施の形態における断熱箱の窓開閉のための装置の一例を示すブロック図である。
【図4】本実施の形態における断熱箱の窓開閉のための装置の他の例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0036】
1:走行体、2:旋回体、3:旋回装置、5:水平揺動装置、6:作業用フロント、7:ブームシリンダ、8:ブーム、9:アームシリンダ、10:アーム、11:フォーク、12:フォーク回動用シリンダ、13:ブラケット、14:旋回装置、15:ホーク本体、16:開閉装置、17:センサ類、17a:外気温度センサ、19:断熱箱、20:前方カメラ、21:後方カメラ、22:作業状態監視カメラ、24:断熱材,25:板材、27:窓、28:窓開閉用シリンダ、29:開口部、30:受信機、32:電源(バッテリー)、34:アクチュエータ群、35:コントローラ、36:パイロット装置、37:比較手段、39:基準温度設定手段、40:タイマ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走式で内部に高温または低温から保護すべき機器を収容してなる断熱箱を有する作業機械において、
前記断熱箱に、換気用の開閉可能な窓を少なくとも2つ設け、
前記窓は作業機械に搭載されたコントローラにより開閉される窓開閉用アクチュエータを有することを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、
前記作業機械は断熱箱内の機器が損傷または正常な動作が不能となるような高温となる雰囲気で使用される遠隔式のものであって、
前記断熱箱内には発熱機器を収容し、
前記作業機械は外気温度センサを備え、
前記外気温度センサにより検出される外気温度が基準温度以上になると前記コントローラにより前記窓開閉用アクチュエータを駆動して前記窓を閉じ、基準温度未満になると前記コントローラにより前記窓開閉用アクチュエータを駆動して前記窓を開ける保護装置を設けたことを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項1に記載の作業機械において、
前記作業機械は断熱箱内の機器が損傷または正常な動作が不能となるような高温となる雰囲気で使用される遠隔式のものであって、
前記断熱箱内には発熱機器を収容し、
前記作業機械は外気温度センサを備え、
前記外気温度センサにより検出される外気温度が基準温度以上になると前記コントローラにより前記窓開閉用アクチュエータを駆動して前記窓を一定時間閉じる保護装置を設けたことを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項1に記載の作業機械において、
前記作業機械は断熱箱内の機器が損傷または正常な動作が不能となるような低温となる雰囲気で使用されるものであって、
前記作業機械は外気温度センサを備え、
前記外気温度センサにより検出される外気温度が基準温度以下になると前記コントローラにより前記窓開閉用アクチュエータを駆動して前記窓を閉じ、基準温度を超えると前記コントローラにより前記窓窓開閉用アクチュエータを駆動して前記窓を開ける保護装置を設けたことを特徴とする作業機械。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれかに記載の作業機械において、
前記断熱箱内に、前記断熱箱内に収容した機器および前記窓開閉用アクチュエータのための電源を前記断熱箱内に収容したことを特徴とする作業機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−339543(P2006−339543A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−164904(P2005−164904)
【出願日】平成17年6月6日(2005.6.6)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】