説明

作業機械

【課題】作業機械に関し、容易に輸送することができるようにする。
【解決手段】作業機械のキャノピが、運転席の設置される床壁としてのベースフレーム41と、運転席の上方を覆う天井壁としてのルーフ42と、ベースフレーム41に上下方向に延在するように立設されルーフ42を支持し、且つ、上下方向途中で切断されて上部支柱43Uと下部支柱43Lとの各部に分割可能に構成された支柱43とを備えるとともに、支柱43が各部43U,43Lに分割された分割状態と、支柱43の各部43U,43Lが結合された結合状態とのうちの何れかの状態で機体本体に設置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸送に適したホイールローダ等の作業機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、中型もしくは大型のホイールローダは、鉱山,港湾,プラント及びトンネル等の各種作業現場で使用されるものであるが、鉱山,港湾及びプラント等の作業現場で使用される場合には、一旦その作業現場に搬入されると同じ作業現場で使用され続け、一方、トンネル工事現場で使用される場合には、各トンネル工事現場及び整備工場間を車両輸送されるケースが少なからず発生しているのが実情である。
【0003】
ところで、ホイールローダは、トンネル仕様として、運転席の上方をルーフのみで覆うキャノピが装備されることが多い。
このようなキャノピが装備されたホイールローダをトレーラ台車に載せる等して輸送する際には、輸送規制高さの3.8mをクリアするために、例えば、タイヤの空気を抜いたり、もしくは、図5に示すように、キャノピ100のルーフ101を支える支柱102を前傾させ、キャノピ100を折りたたんだりする等の作業が行なわれている。なお、キャノピを折りたたむ技術については、例えば特許文献1の図1に開示されている。
【特許文献1】特開平11−189048号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、キャノピには、図5に示すような1本の支柱102でルーフ101を支える簡易な構造のものに限らず、6本の支柱でルーフを支えるROPS構造(転倒時保護構造)のものもあり、こうしたキャノピを折りたたむことは容易ではない。また、タイヤの空気を抜きタイヤ半径(タイヤ高さ)を低くして輸送する場合には、工事現場で空気の充填作業を行なうために、空気充填用コンプレッサ等の大掛かりな設備を工事現場へ搬入することが必要になるとともに、充填作業に手間がかかるという課題がある。また、機体の大きさ(車格)によっては、空気を抜くだけでは輸送規制高さをクリアできずに、タイヤを外す等の作業を強いられることもある。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みて案出されたもので、容易に輸送することができるようにした、作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1記載の本発明の作業機械は、キャノピが装備された作業機械であって、該キャノピは、運転席が設置される床壁としてのベースフレームと、該運転席の上方を覆う天井壁としてのルーフと、該ベースフレームに上下方向に延在するように立設され該ルーフを支持し、且つ、上下方向途中で切断されて上部支柱と下部支柱との各部に分割可能に構成された支柱とを備えるとともに、該支柱が該各部に分割された分割状態と、該支柱の該各部が結合された結合状態とのうちの何れかの状態で機体本体に設置されていることを特徴としている。
【0007】
請求項2記載の本発明の作業機械は、請求項1記載の作業機械において、該上部支柱の下端部と該下部支柱の上端部それぞれにフランジが形成されるとともに、該フランジにボルト孔が穿たれ、該支柱の結合状態では、該ボルト孔を介して該上部支柱と該下部支柱とがボルト締結されていることを特徴としている。
なお、本発明の作業機械はホイールローダであれば好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の作業機械によれば、キャノピの支柱が上下方向途中で2つに切断されるとともに、分割状態と結合状態とを取り得るように構成されているので、支柱の分割状態ではキャノピの上部を機体本体から切り離すことができ、簡素な構成で容易にキャノピの上部を切り離し、車両輸送時に車高を下げて輸送規制高さをクリアし、容易に輸送することができる。
【0009】
また、支柱の各部をボルト締結で結合するように構成すれば、トンネル工事現場等でのキャノピの組立作業も容易であるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面により、本発明の実施の形態について説明する。
[一実施形態]
本発明の一実施形態について説明する。図1〜図4は本発明の一実施形態に係る作業機械を模式的に示す図であって、図1はその要部を拡大して示す斜視図、図2はそのキャノピを拡大して示す側面図、図3は輸送時の作業機械全体を示す側面図、図4は輸送時でないとき(組立時)の作業機械全体を示す側面図である。
【0011】
<構成>
図4に示すように、ホイールローダ(作業機械)1は、前部車両10と後部車両20とに分割されるとともに、前部車両10と後部車両20とが連結部30を介して左右揺動自在に連結されて構成されている。前部車両10は、架台となるフロントフレーム11と前輪12と作業装置13とを備えており、後部車両20は、架台となるリヤフレーム21と後輪22とキャノピ40とエンジン(図示略)とを備えている。
【0012】
キャノピ40は、ROPS構造(転倒時保護構造)が装備されたものであって、図2に拡大して示すように、運転席50が設置される床壁としてのベースフレーム41と、ベースフレーム41の上方を覆う(すなわち、運転席50の上方を覆う)天井壁としてのルーフ42と、ベースフレーム41に立設されルーフ42を支える6本のピラー(支柱)43とを備えている(なお、図2,図4及び後述の図3は側面図であるので、3本のピラー43しか現われていない)。
【0013】
この6本のピラー43はそれぞれ、上下方向に延在する管状の柱材であり、その上下方向途中で切断され、上部ピラー43Uと下部ピラー43Lとの各部に2分割されている。そして、各ピラー43は、各部43U,43Lに2分割された分割状態(図3の状態)と、各部43U,43Lが結合された結合状態(図4の状態)とを取り得るように構成されており、各ピラー43の分割状態では、図3に示すように、キャノピ40の上部を機体本体から切り離すことができるようになっている。
【0014】
図1に1本のピラー43を図示し代表して説明すると(なお、他の5本のピラー43も、図1に図示されたものと同様の構造である)、上部ピラー43Uの上端部はルーフ42に固定され、一方、下部ピラー43Lの下端部はベースフレーム41に固定されている。また、上部ピラー43Uの下端部にはフランジ43Uが形成され、一方、下部ピラー43Lの上端部にもフランジ43Lが形成されている。また、これらフランジ43U,43Lにはそれぞれ、複数のボルト孔43UfB,43LfBが穿たれている。
【0015】
そして、上部ピラー43Uのボルト孔43UfBと下部ピラー43Lのボルト孔43LfBとを互いに合わせ、ボルト孔43UfB,43LfBを介してボルト44締結することで(なお、図1では、図の簡便化のため、1つのボルト44だけを図示する)、上部ピラー43Uと下部ピラー43Lとを結合することができるようになっている。
なお、キャノピ40のルーフ42には、図2に示すように、ランプ51,52やラジオ(図示略)やリヤビューミラー53等が備えられている。これらランプ51,52やラジオは、機体本体に設置された電源(例えばバッテリ)とハーネス(図示略)で接続され電気が供給されているものであるが、このハーネスもピラー43の切断に合わせて途中で切断されるとともに、ピラー43の結合時には、コネクタ等の接続手段で容易に接続することができるようになっている。
【0016】
<作用・効果>
本発明の一実施形態にかかる作業機械は上述のように構成されているので、以下のような作用・効果がある。
キャノピ40のピラー43が上下方向途中で切断され、分割状態と結合状態とを取り得るようになっているので、ピラー43の分割状態ではキャノピ40の上部を機体本体から切り離すことができ、簡素な構成で容易にキャノピ40の上部を切り離し、車両輸送時に車高を下げて輸送規制高さをクリアし、容易に輸送することができる。
【0017】
また、分割状態のピラー43はボルト44締結で結合することができるので、工事現場でのキャノピ40の組立作業も容易であるという利点がある。
また、車両輸送の機会が比較的多いホイールローダ1に適用しているので、その輸送上の利便性に大いに貢献することができる。
【0018】
[その他]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更することが可能である。
例えば、上記実施形態では、6本のピラー43を備えたキャノピ40について説明したが、キャノピの構造はこれに限らず、少なくとも1本のピラー43を備えたキャノピに対して、上述の図1に示すピラー43の構造が適用されていれば良い。
また、上記実施形態では、ホイールローダ1のキャノピ40について説明したが、油圧ショベルやクレーン等のその他の作業機械のキャノピに適用しても勿論良い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る作業機械の要部を拡大して示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る作業機械のキャノピを拡大して示す側面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る作業機械の輸送時の状態を示す側面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る作業機械の組立時の状態を示す側面図である。
【図5】従来技術に係る作業機械の輸送仕様を示す、キャノピの模式的な側面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 ホイールローダ(作業機械)
10 前部車両
20 後部車両
30 連結部
40 キャブ
41 ベースフレーム
42 ルーフ
43 ピラー(支柱)
43U 上部ピラー
43L 下部ピラー
43U,43L フランジ
43UfB,43LfB ボルト孔
44 ボルト
50 運転席

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャノピが装備された作業機械であって、
該キャノピは、
運転席が設置される床壁としてのベースフレームと、
該運転席の上方を覆う天井壁としてのルーフと、
該ベースフレームに上下方向に延在するように立設され該ルーフを支持し、且つ、上下方向途中で切断されて上部支柱と下部支柱との各部に分割可能に構成された支柱とを備えるとともに、
該支柱が該各部に分割された分割状態と、該支柱の該各部が結合された結合状態とのうちの何れかの状態で機体本体に設置されている
ことを特徴とする、作業機械。
【請求項2】
該上部支柱の下端部と該下部支柱の上端部それぞれにフランジが形成されるとともに、該フランジにボルト孔が穿たれ、
該支柱の結合状態では、該ボルト孔を介して該上部支柱と該下部支柱とがボルト締結されている
ことを特徴とする、請求項1記載の作業機械。
【請求項3】
ホイールローダである
ことを特徴とする、請求項1又は2記載の作業機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−138632(P2010−138632A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−317148(P2008−317148)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(000190297)キャタピラージャパン株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】