説明

作業機械

【課題】半導体素子を含む電子制御機器の放射線からの保護を実現できるようにした。
【解決手段】本発明に係る油圧ショベルは、半導体素子23が収納される車体コントローラ12の収納容器22を、一面22aが開口部20aに対向するように、かつ、他の全ての面がカウンタウエイト8の壁面8aに当接するようにして、カウンタウエイト8に形成した空間部22に収納してある。また本発明は、収納容器22の一面22aの上に放射線を遮蔽可能な無数の鉛粒25を充填してあり、これらの鉛粒25を覆うように蓋21を配置してある。さらに本発明は、収納容器22の一面22aを除く他の全ての面に当接するカウンタウエイト8の壁面8aが含まれる部分のそれぞれの厚さ寸法を、放射線を遮蔽可能な厚さ寸法に設定してある。このように構成したことにより、本発明は、放射線が発生する作業環境における優れた作業性及び耐久性を確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子を有する電子制御機器を備えた油圧ショベル等の作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の作業機械として特許文献1に示されるものがある。この従来技術は油圧ショベルであり、この油圧ショベルは、走行体と、この走行体の上に配置される旋回体と、この旋回体に上下方向の回動可能に取り付けられるフロント作業機、すなわち作業装置とを備えている。旋回体上には、前側位置に運転室が設けられ、後側位置には作業装置との重量バランスを確保するカウンタウエイトが設けられ、カウンタウエイトと運転室との間には、エンジン及びこのエンジンによって駆動する油圧ポンプが収納されたエンジン室が設けられている。
【0003】
また、この従来技術は、カウンタウエイトの表面に連通する開口部を有し、カウンタウエイトの内部に設けられて蓄電装置を収容する空間部と、この空間部の上述した開口部を覆う蓋とを備えた構成となっている。なお、特許文献1には記載されていないが、上述のようにして構成される油圧ショベルは一般に、運転室内に各種情報を表示可能なモニタを備えている。また、モニタへの各種情報の表示制御、エンジンの駆動制御、及び油圧ポンプの駆動制御を行う車体コントローラを備え、この車体コントローラが運転室内に配置されている。また、遠隔操作される油圧ショベルにあっては、遠隔基地から送信される操作信号を受信可能な受信機を備えている。上述の車体コントローラや受信機は、収納容器と、この収納容器に収納される半導体素子を含む電子制御機器を構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−127762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した特許文献1に示されるような油圧ショベルが、放射線を多量に発生する作業環境で作業を行うことがある。このような放射線が発生する作業環境では、車体コントローラや受信機等の電子制御機器に電力が供給されて、この電子制御機器が作動している状態において電子制御機器に含まれる半導体素子に放射線が照射されると、半導体素子の電子配列に乱れを生じ、データが書き換えられるなどの現象が発生する。このために電子制御機器が誤動作する虞がある。
【0006】
このようなことから、放射線が発生する作業環境に対応させるために、上述した特許文献1に示される技術を採用して、半導体素子を含む電子制御機器をカウンタウエイトに設けた空間部内に収容し、空間部の開口部を蓋で覆うようにすることが考えられる。しかし、このように構成しても、蓋は比較的薄く形成されがちであることから、蓋の部分から放射線が空間部内に侵入し、空間部内に配置された電子制御機器の半導体素子が放射線に照射されてしまうことが懸念される。
【0007】
また、カウンタウエイトに形成される空間部内に電子制御機器を収納した場合、電子制御機器の周囲に空気が存在する空間が形成されると、電子制御機器の作動によってその空気が温められて加熱され、この空気の温度上昇によって電子制御機器に含まれる半導体素子が熱暴走し、これによって電子制御機器が動作を停止する虞がある。
【0008】
本発明は、上述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、半導体素子を含む電子制御機器の放射線からの保護を実現させることができる作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために、本発明は、旋回体と、この旋回体に取り付けられる作業装置と、上記旋回体に設けられ、上記作業装置との重量バランスを確保するカウンタウエイトとを備え、上記カウンタウエイトの表面に連通する開口部を有し、上記カウンタウエイトの内部に設けられて所定の収容物を収容する空間部と、上記空間部の上記開口部を覆う蓋とを備えた作業機械において、上記所定の収容物が、収納容器と、この収納容器に収納される半導体素子とを含む電子制御機器から成り、上記収納容器は、その一面が上記開口部に対向するように、かつ、上記一面を除く他の全ての面が上記空間部を形成するカウンタウエイトの内壁面に当接するようにして、上記空間部内に収納してあり、上記収納容器の上記一面と上記開口部との間に位置する上記空間部の部分を充填し、上記カウンタウエイトの外部からの放射線を遮蔽可能な充填物を設け、上記蓋を上記充填物を覆うように配置し、上記収納容器の上記一面を除く上記他の全ての面に当接する上記カウンタウエイトの内壁面が含まれる部分のそれぞれの厚さ寸法を、上記放射線を遮蔽可能な寸法に設定したことを特徴している。
【0010】
このように構成した本発明は、カウンタウエイトに設けた空間部内に収容される電子制御機器の半導体素子が収納される収納容器は、空間部の開口部に対向する一面が放射線を遮蔽可能な充填物で覆われ、また、上述の一面を除く他の全ての面が、放射線の遮蔽が可能な厚さ寸法に設定したカウンタウエイトの部分の内壁面で覆われるので、収納容器に収納された半導体素子にカウンタウエイトの外部からの放射線が照射されることを防ぐことができる。
【0011】
また本発明は、電子制御機器の収納容器の一面を充填物で塞ぎ、上述の一面を除く他の全ての面をカウンタウエイトの空間部を形成する内壁面に当接させてあるので、収納容器の周囲に存在する空気を極めて少なくすることができ、すなわち収納容器の周囲に存在する空気が放射線により分解して硝酸や亜硝酸などの窒素酸化物を生成して、電子制御機器を腐食させる虞を低減することができる。また、電子制御機器の作動によって発生した熱を熱伝導率の低い空気ではなく、カウンタウエイトを介して放熱させカウンタウエイトを放熱手段として活用させることができる。したがって、放射線による窒素酸化物の生成による電子制御機器の腐食、及び電子制御機器の作動に伴う温度上昇による半導体素子の熱暴走を防ぐことができる。
【0012】
また、上記目的を達成するために本発明は、旋回体と、この旋回体に取り付けられる作業装置と、上記旋回体に設けられ、上記作業装置との重量バランスを確保するカウンタウエイトとを備え、上記カウンタウエイトの表面に連通する開口部を有し、上記カウンタウエイトの内部に設けられて所定の収容物を収容する空間部と、上記空間部の上記開口部を覆う蓋とを備えた作業機械において、上記所定の収容物が、収納容器と、この収納容器に収納される半導体素子とを含む電子制御機器から成り、上記収納容器は、その一面が上記開口部に対向するようにして、上記空間部内に収納してあり、上記収納容器の上記一面と上記開口部との間に位置する上記空間部の部分に、及び上記一面を除く他の全ての面のうちの少なくとも1つの面と、この少なくとも1つの面に対向する上記カウンタウエイトの内壁面との間に形成される隙間にそれぞれ充填され、上記カウンタウエイトの外部からの放射線を遮蔽可能な充填物を設け、上記蓋を上記充填物を覆うように配置し、上記収納容器の上記一面を除く上記他の全ての面に対向する上記カウンタウエイトの内壁面が含まれる部分のそれぞれの厚さ寸法を、上記放射線を遮蔽可能な寸法に設定した構成にしてある。
【0013】
このように構成した本発明は、カウンタウエイトに設けた空間部内に収容される電子制御機器の半導体素子が収納される収納容器は、空間部の開口部に対向する一面が放射線を遮蔽可能な充填物で覆われ、また、また、一面を除く他の全ての面のうちの少なくとも1つの面が、この少なくとも1つの面に対向するカウンタウエイトの内壁面との間に形成される隙間に充填した放射線の遮蔽が可能な充填物で覆われ、開口部に対向する一面を除く他の全ての面が、放射線の遮蔽が可能な厚さ寸法に設定した対向するカウンタウエイト部分の内壁面で覆われるので、収納容器に収納された半導体素子にカウンタウエイトの外部からの放射線が照射されることを防ぐことができる。
【0014】
また、電子制御機器の収納容器の一面を充填物で塞ぎ、上述の一面を除く他の全ての面のうちの少なくとも1つの面と、対向するカウンタウエイトの内壁面との間に形成される隙間を充填物で塞ぐようにしてあるので、収納容器の周囲に存在する空気を極めて少なくすることができる。またカウンタウエイトを放熱手段として活用させることができる。したがって、放射線による空気の分解と窒素酸化物による電子制御機器の腐食、及び電子制御機器の作動に伴う温度上昇による収納容器内の半導体素子の熱暴走を防ぐことができる。
【0015】
すなわち本発明は、半導体素子を含む電子制御機器の放射線からの保護を実現でき、放射線の照射による電子制御機器の誤動作を防止できるとともに、放射線からの遮蔽を考慮して電子制御機器をカウンタウエイトの空間部内に収容することに伴って生じる温度上昇による電子制御機器の動作停止を防止することができる。
【0016】
また本発明は、上記発明において、当該作業機械が、上記旋回体の前側部分に配置され、各種情報を表示可能なモニタが内部に配置された運転室と、上記旋回体の上記カウンタウエイトと上記運転室との間に配置され、エンジン及びこのエンジンによって駆動する油圧ポンプが収納されたエンジン室と、上記モニタへの各種情報の表示制御、上記エンジンの駆動制御、及び上記油圧ポンプの駆動制御を行う車体コントローラとを備えた油圧ショベルから成り、上記電子制御機器が、上記車体コントローラを含むことを特徴としている。このように構成した本発明は、放射線による車体コントローラの誤動作を防止することができ、放射線が生じる作業環境にあって、モニタへの各種情報の表示制御、エンジンの駆動制御、及び油圧ポンプの駆動制御を精度良く行うことができる。
【0017】
また本発明は、上記発明において、上記車体コントローラの上記収納容器内に生じた熱を上記カウンタウエイトの外部に放熱するヒートパイプを設けたことを特徴としている。このように構成した本発明は、車体コントローラの作動に伴って収納容器に生じた熱を、ヒートパイプによってもカウンタウエイトの外部に放熱させることができる。
【0018】
また本発明は、上記発明において、遠隔操作信号を受信可能な受信機を備え、上記電子制御機器が上記受信機を含むことを特徴としている。このように構成した本発明は、放射線による受信機の誤動作を防止することができ、当該作業機械の遠隔制御による作業を精度良く実施させることができる。
【0019】
また本発明は、上記発明において、上記受信機の上記収納容器内に生じた熱を上記カウンタウエイトの外部に放熱するとともに、上記受信機のアンテナを兼ねるヒートパイプを設けたことを特徴としている。このように構成した本発明は、受信機の作動に伴って収納容器内に生じた熱をヒートパイプによってもカウンタウエイトの外部に放熱させることができる。また、ヒートパイプがアンテナを兼ねることから、ヒートパイプとアンテナを個別に設けることに比べて部品数を少なく抑えることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、カウンタウエイトに形成した空間部に収容される所定の収容物が、収納容器と、この収納容器に収納される半導体素子とを含む電子制御機器から成り、収納容器は、その一面が開口部に対向するように、かつ、一面を除く他の全ての面が空間部を形成するカウンタウエイトの壁面に当接するようにして、空間部内に収納してあり、収納容器の一面と開口部との間に位置する空間部の部分を充填し、カウンタウエイトの外部からの放射線を遮蔽可能な充填物を設け、蓋を充填物を覆うように配置し、収納容器の一面を除く他の全ての面に当接するカウンタウエイトの壁面が含まれる部分のそれぞれの厚さ寸法を、放射線を遮蔽可能な寸法に設定した構成にしてある。
【0021】
また本発明は、カウンタウエイトに形成した空間部に収容される所定の収容物が、収納容器と、この収納容器に収納される半導体素子とを含む電子制御機器から成り、収納容器は、その一面が開口部に対向するようにして、空間部内に収納してあり、収納容器の一面と開口部との間に位置する空間部の部分に、及び一面を除く他の全ての面のうちの少なくとも1つの面と、この少なくとも1つの面に対向するカウンタウエイトの内壁面との間に形成される隙間にそれぞれ充填され、カウンタウエイトの外部からの放射線を遮蔽可能な充填物を設け、蓋を充填物を覆うように配置し、収納容器の一面を除く他の全ての面に対向するカウンタウエイトの内壁面が含まれる部分のそれぞれの厚さ寸法を、放射線を遮蔽可能な寸法に設定した構成にしてある。
【0022】
これらの構成により本発明は、電子制御機器に含まれる半導体素子に対する放射線の照射を阻止することができ、また電子制御機器の作動に伴う温度上昇による半導体素子の熱暴走を防止することができる。すなわち本発明は、半導体素子を含む電子制御機器の放射線からの保護を実現でき、従来懸念されていた放射線が発生する作業環境における放射線による電子制御機器の誤動作あるいは動作停止を防ぐことができる。これにより本発明は、放射線が発生する作業環境における優れた作業性と、耐久性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る作業機械の第1実施形態を構成する油圧ショベルの側面図である。
【図2】図1に示す油圧ショベルのカウンタウエイト部分の要部拡大平面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態を構成する油圧ショベルに備えられるカウンタウエイト部分の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る作業機械の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0025】
第1実施形態に係る作業機械は例えば、図1に示す油圧ショベルである。この油圧ショベルは、走行体1と、この走行体1上に配置される旋回体2と、この旋回体2に上下方向の回動可能に取り付けられる作業装置3とを備えている。作業装置3は、旋回体2に取り付けられるブーム4と、このブーム4の先端に取り付けられるアーム5と、このアーム5の先端に取り付けられるバケット6とを含んでいる。作業装置3を作動させることにより土砂の掘削作業等を行うことができる。旋回体2の前側位置には後述の所定の収容物を構成する電子制御機器、例えば車体コントローラ12が収容されるカウンタウエイト8を配置してある。カウンタウエイト8と運転室7との間には、エンジン10及びこのエンジン10によって駆動する油圧ポンプ11が収容されるエンジン室9を配置してある。
【0026】
第1実施形態は、図2,3に示すように、カウンタウエイト8の表面、例えば上面部に連通する開口部20aを有し、カウンタウエイト8の内部に設けられ、上述した所定の収容物を構成する電子制御機器である車体コントローラ12を収容する空間部20を設けてある。また、この空間部20の開口部20aを塞ぐように蓋21を設け、この蓋21をボルト27によってカウンタウエイト8の上面部に着脱可能に設けてある。
【0027】
車体コントローラ12は、収納容器22と、この収納容器22に収納される半導体素子23とを含んでいる。この車体コントローラ12は、運転室7内に配置したモニタ7aへの各種情報の表示制御、エンジン10の駆動制御、及び油圧ポンプ11の駆動制御を行う。この車体コントローラ12に接続されるハーネス24aは、空間部20の内部からカウンタウエイト8の上面に沿って配置される管状体24内に収納させてある。
【0028】
上述した車体コントローラ12の収納容器22は、例えば上面を形成する一面22aが開口部20aに対向するように、かつ、一面22aを除く他の全ての面が空間部20を形成するカウンタウエイト8の内壁面8aに当接するようにして空間部20に収納してある。カウンタウエイト20の収納容器12の一面12aと開口部20aの間に位置する空間部20の部分には、放射線を遮蔽可能な充填物、例えば無数の鉛粒25で充填してある。この鉛粒25の上部を覆うように上述の蓋21を配置してある。
【0029】
また本実施形態は、上述した収納容器22の一面22aを除く他の全ての面に当接するカウンタウエイト8の内壁面8aが含まれる部分の厚さ寸法を、放射線を半導体素子23が正常に動作するレベルまで遮蔽可能な厚さ寸法に設定してある。
【0030】
また本実施形態は、一端26aが車体コントローラ12の収納容器22内に挿入されて例えば半導体素子23に当接するように配置され、この一端26aに連設される長尺部26bが無数の鉛粒25の間を挿通するようにして上方に向かって延設され、長尺部20bに連設される他端26cが開口部20aを経て蓋21からカウンタウエイト8の外部、例えば上方に突出するように配置され、収納容器22内に生じた熱をカウンタウエイト8の外部に放熱するヒートパイプ26を備えている。ヒートパイプ26は、半導体素子23に直接当接しており、半導体素子23が発生した熱を効率よくカウンタウエイト8の外部に伝達できる。カウンタウエイト8の外部まで伝達された熱は、ヒートパイプ26に備えられたフィンにより効率よく空気に放出されるので、振動や落下物により破損しやすい電動ファンを必要とすることなく、半導体素子23を冷却でき、車体コントローラ12を安定に動作させることができる。
【0031】
上述した蓋21は、図2に示すように、ヒートパイプ26を挟むように2分割して配置される分割板21a,21bから成っている。これらの分割板21a,21bが上述のボルト27によってカウンタウエイト8の上面に着脱可能になっている。
【0032】
このように構成した第1実施形態にあっては、カウンタウエイト8に設けた空間部20内に収納した車体コントローラ12の収納容器22は、空間部20の開口部20aに対向する一面22aが放射線を遮蔽可能な無数の鉛粒25で覆われ、また、一面22aを除く他の全ての面が放射線の遮蔽が可能な厚さ寸法に設定したカウンタウエイト8の部分の内壁面8aで覆われるので、収納容器22に収納された半導体素子23にカウンタウエイト8の外部からの放射線が照射されることを防ぐことができる。
【0033】
また第1実施形態は、車体コントローラ12の収納容器22の一面22aが無数の鉛粒25で塞がれ、この収納容器22の一面22aを除く他の全ての面がカウンタウエイト8の内壁面8aに当接するので、収納容器22の周囲に存在する空気を極めて少なくすることができ、すなわち収納容器22の周囲に存在する空気が放射線により分解して硝酸や亜硝酸などの窒素酸化物を生成して、車体コントローラ12を腐食させる虞を低減することができる。また、車体コントローラ12の作動によって発生した熱を熱伝導率の低い空気ではなく、カウンタウエイト8を介して放熱させカウンタウエイト8を放熱手段として活用させることができる。また、上述のように車体コントローラ12の作動に伴って発生した熱を、車体コントローラ12に接続させたヒートパイプ26を介しても放熱させることができる。したがって、放射線による空気の分解と窒素酸化物の生成による車体コントローラ12の腐食、及び車体コントローラ12の作動に伴う温度上昇による収納容器22内の半導体素子23の熱暴走を防ぐことができる。
【0034】
このように第1実施形態によれば、半導体素子23を含む車体コントローラ12の放射線からの保護を実現でき、放射線の照射による車体コントローラ12の誤動作を防止できるとともに、放射線からの遮蔽を考慮して車体コントローラ12をカウンタウエイト8内に収容することに伴う温度上昇による車体コントローラ12の動作停止を防止することができる。これにより本発明は、放射線が発生する作業環境における優れた作業性と、耐久性を確保することができる。
【0035】
また第1実施形態は、放射線による車体コントローラ12の誤動作を防止できることから、放射線が生じる作業環境にあって、車体コントローラ12によるモニタ7aへの各種情報の表示制御、エンジン10の駆動制御、及び油圧ポンプ12の駆動制御を精度良くおこなうことができる。
【0036】
なお、上記第1実施形態において、収納容器22を、その一面22aが開口部20aに対向するようにして空間部20内に収納させる際に、一面22aを除く他の全ての面のうちの少なくとも1つの面と、この少なくとも1つの面に対向するカウンタウエイト8の内壁面8aとの間に隙間を形成し、その隙間にも放射線を遮蔽可能な充填物、例えば鉛粒25を充填させるように構成し、一面22aを除く他の全ての面に対向するカウンタウエイト8の内壁面8aが含まれる部分の厚さ寸法を、放射線を遮蔽可能な寸法に構成してもよい。
【0037】
このように構成したものも、カウンタウエイト8に設けた空間部20内に収納した車体コントローラ12の収納容器22は、空間部20の開口部20aに対向する一面22が放射線を遮蔽可能な無数の鉛粒25で覆われ、また、一面22aを除く他の全ての面のうちの少なくとも1つの面が、この少なくとも1つの面に対向するカウンタウエイト8の内壁面8aとの間に形成される隙間に充填した放射線の遮蔽が可能な鉛粒25で覆われ、一面22aを除く全ての面が、放射線の遮蔽が可能な厚さ寸法に設定した対向するカウンタウエイト8の部分の内壁面8aで覆われるので、収納容器22に収納された半導体素子23にカウンタウエイト8の外部からの放射線が照射されることを防ぐことができる。
【0038】
また、先の第1実施形態と同様に、車体コントローラ12の収納容器22の一面22aが無数の鉛粒25で塞がれ、収納容器22の一面22aを除く他の面の周囲に形成された隙間が鉛粒25で塞がれるので、収納容器22の周囲に存在する空気を極めて少なくすることができる。また、カウンタウエイト8をヒートパイプ26とともに放熱手段として活用することができる。このように構成したものも、放射線による窒素酸化物の生成による車体コントローラ12の腐食、及び車体コントローラ12の作動に伴う温度上昇による収納容器22内の半導体素子23の熱暴走を防ぐことができる。
【0039】
したがって、このように車体コントローラ12の収納容器22の一面22aを除く他の面のうちの少なくとも1つの面がカウンタウエイト8の内壁面8aに当接しない構成であっても、先の第1実施形態と同等の作用効果を得ることができる。
【0040】
また、上記第1実施形態では、ヒートパイプ26を設けた構成にしてあるが、カウンタウエイト8によって十分な放熱を見込める場合には、このヒートパイプ26を省いた構成とすることもできる。
【0041】
図4は第2実施形態の要部断面図である。この図4に示す第2実施形態は、空間部20に収容される電子制御機器が、遠隔操作信号を受信する受信機30から成っている。この受信機30は、収納容器31と、この収納容器31に収納される半導体素子32を含んでいる。また、一端33aが受信機30に接続され、この一端33aに連設される長尺部33bが無数の鉛粒25の間を挿通するように延設され、長尺部33bに連設される他端33cが開口部20aを経て蓋28からカウンタウエイト8の外部、例えば上部に突出するように配置され、アンテナとしても機能するヒートパイプ33を設けた構成にしてある。ヒートパイプ33は、半導体素子32に直接触れることなく収納容器22内に生じた熱をカウンタウエイト8の外部に放熱するように、収容容器22内部にも熱を吸収するフィンを備えている。このため、落石など外部からの力がヒートパイプに伝わっても、破損しやすい半導体素子に力が伝達されることなく、熱を外部に放出することができる。なお、蓋28は、第1実施形態と同様にヒートパイプ33を挟むように配置される分割板28a,28bから成っている。その他の構成は第1実施形態と同等である。
【0042】
このように構成した第2実施形態は、半導体素子32を含む受信機30の放射線からの保護を実現させることができ、放射線の照射による受信機30の誤動作を防止することができる。したがって、放射線が発生する作業環境における優れた遠隔操作による作業性と、耐久性を確保することができる。また、ヒートパイプ32をアンテナとしても有効活用させることができる。
【0043】
なお、上記第1実施形態ではカウンタウエイト8に形成した空間部20に車体コントローラ12を収納させる構成にし、第2実施形態では空間部20に受信機30を収納させる構成にしてあるが、本発明はこのように構成することには限られず、カウンタウエイト8の空間部20に車体コントローラ12と受信機30の双方を収納させる構成にしてもよい。また、カウンタウエイト8の空間部20に収納する電子制御機器として第1実施形態では車体コントローラ12を設け、第2実施形態では受信機30を設けた構成にしてあるが、本発明は、電子制御機器として車体コントローラ12や受信機30を設けることには限定されない。要するに収納容器と、この収納容器に収納される半導体素子を含むものであれば、収納対象の電子制御機器となり得る。
【0044】
また、上記各実施形態では、カウンタウエイト8に形成する空間部20の開口部20aをカウンタウエイト8の上面部に設けてあるが、この開口部20aを、カウンタウエイト8の側面部に、あるいは作業装置3の反対側に位置するカウンタウエイト8の背面部に形成してもよい。
【0045】
また、上記各実施形態では、収納容器22,31の上に配置される充填物として、無数の鉛粒25を設けたが、これらの鉛粒25に代えて鉛板を設けた構成にしてもよい。またカウンタウエイト8の主要構成部材を鉛として放射線をより遮蔽する構成にしてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 走行体
2 旋回体
3 作業装置
7 運転室
7a モニタ
8 カウンタウエイト
8a 内壁面
9 エンジン室
10 エンジン
11 油圧ポンプ
12 車体コントローラ(電子制御機器)〔所定の収容物〕
20 空間部
20a 開口部
21 蓋
22 収納容器
22a 一面
23 半導体素子
25 鉛粒(充填物)
26 ヒートパイプ
26a 一端
26b 長尺部
26c 他端
28 蓋
30 受信機(電子制御機器)〔所定の収容物〕
31 収納容器
31a 一面
32 半導体素子
33 ヒートパイプ
33a 一端
33b 長尺部
33c 他端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回体と、この旋回体に取り付けられる作業装置と、上記旋回体に設けられ、上記作業装置との重量バランスを確保するカウンタウエイトとを備え、
上記カウンタウエイトの表面に連通する開口部を有し、上記カウンタウエイトの内部に設けられて所定の収容物を収容する空間部と、上記空間部の上記開口部を覆う蓋とを備えた作業機械において、
上記所定の収容物が、収納容器と、この収納容器に収納される半導体素子とを含む電子制御機器から成り、
上記収納容器は、その一面が上記開口部に対向するように、かつ、上記一面を除く他の全ての面が上記空間部を形成するカウンタウエイトの内壁面に当接するようにして、上記空間部内に収納してあり、
上記収納容器の上記一面と上記開口部との間に位置する上記空間部の部分を充填し、上記カウンタウエイトの外部からの放射線を遮蔽可能な充填物を設け、上記蓋を上記充填物を覆うように配置し、
上記収納容器の上記一面を除く上記他の全ての面に当接する上記カウンタウエイトの内壁面が含まれる部分のそれぞれの厚さ寸法を、上記放射線を遮蔽可能な寸法に設定したことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
旋回体と、この旋回体に取り付けられる作業装置と、上記旋回体に設けられ、上記作業装置との重量バランスを確保するカウンタウエイトとを備え、
上記カウンタウエイトの表面に連通する開口部を有し、上記カウンタウエイトの内部に設けられて所定の収容物を収容する空間部と、上記空間部の上記開口部を覆う蓋とを備えた作業機械において、
上記所定の収容物が、収納容器と、この収納容器に収納される半導体素子とを含む電子制御機器から成り、
上記収納容器は、その一面が上記開口部に対向するようにして、上記空間部内に収納してあり、
上記収納容器の上記一面と上記開口部との間に位置する上記空間部の部分に、及び上記一面を除く他の全ての面のうちの少なくとも1つの面と、この少なくとも1つの面に対向する上記カウンタウエイトの内壁面との間に形成される隙間にそれぞれ充填され、上記カウンタウエイトの外部からの放射線を遮蔽可能な充填物を設け、上記蓋を上記充填物を覆うように配置し、
上記収納容器の上記一面を除く上記他の全ての面に対向する上記カウンタウエイトの内壁面が含まれる部分のそれぞれの厚さ寸法を、上記放射線を遮蔽可能な寸法に設定したことを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項1または2に記載の作業機械において、
当該作業機械が、上記旋回体の前側部分に配置され、各種情報を表示可能なモニタが内部に配置された運転室と、上記旋回体の上記カウンタウエイトと上記運転室との間に配置され、エンジン及びこのエンジンによって駆動する油圧ポンプが収納されたエンジン室と、上記モニタへの各種情報の表示制御、上記エンジンの駆動制御、及び上記油圧ポンプの駆動制御を行う車体コントローラとを備えた油圧ショベルから成り、
上記電子制御機器が、上記車体コントローラを含むことを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項3に記載の作業機械において、
上記車体コントローラの上記収納容器内に生じた熱を上記カウンタウエイトの外部に放熱するヒートパイプを設けたことを特徴とする作業機械。
【請求項5】
請求項1または2に記載の作業機械において、
遠隔操作信号を受信可能な受信機を備え、上記電子制御機器が上記受信機を含むことを特徴とする作業機械。
【請求項6】
請求項5に記載の作業機械において、
上記受信機の上記収納容器内に生じた熱を上記カウンタウエイトの外部に放熱するとともに、上記受信機のアンテナを兼ねるヒートパイプを設けたことを特徴とする作業機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−87475(P2013−87475A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228031(P2011−228031)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】