説明

作業機

【課題】地面の形状に柔軟に対応して刈取部を昇降可能な作業機を提供する。
【解決手段】作業機としてのコンバインは、穀稈を刈り取るための刈取部と、刈取部を昇降させるための刈取部昇降シリンダと、を備える。刈取部は、分草板80と、回転軸取付部83と、ポテンショメータ89と、ダンパ87と、を備える。分草板80は、機体の前部に配置され、穀稈を分ける。回転軸取付部83は、分草板80の後方に設置され、当該分草板80を回転させるための分草板回転軸93を取付可能である。ポテンショメータ89は、刈取部昇降シリンダを昇降させる制御のための信号を出力する。ダンパ87は、分草板80の後方に設置され、分草板80の分草板回転軸93に対する回転をポテンショメータ89に伝達する。そして、分草板回転軸93は、側面視において分草板80の中央部を通過するように水平方向に引いた仮想直線L1に対して、上方に位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈取部を昇降可能な作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンバイン等の作業機において、地面に対する刈取部の高さを超音波等によって検出する刈高さ検出センサを備え、当該刈取部が地面に対して所定の高さになるように昇降制御を行う構成が知られている。また、刈高さ検出センサに加えて、圃場の形状を検出するための接地式の検出センサ(検出片)としての機能を有する分草板を備え、当該分草板が圃場の凸部に突っ込むことを防止する構成の作業機も知られている。特許文献1及び特許文献2は、この種のコンバインを開示する。
【0003】
特許文献1及び特許文献2が開示するコンバインにおいて、分草板(分草具)は上下方向に回転可能に構成されている。この分草板が圃場の凸部に接触すると分草板が上方向に回転し、この回転に伴って、分草板の後部に接続されている摺動ロッド(検出桿)等が後方に動き、接地スイッチ(検出スイッチ)が押されるように構成されている。接地スイッチが押されると、刈取部(刈取装置)を上昇させる制御が行われる。このようにして、分草板が圃場の凸部を検出して刈取部を上昇させることで分草板の突込みを回避している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−269031号公報
【特許文献2】特許第3718562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1及び特許文献2の構成においても、圃場の凸部の形状によっては、分草板と凸部とが接触したときに分草板を回転させる方向に上手く力が掛からず、この分草板が凸部に突っ込んでしまうことがあった。
【0006】
分草板が圃場の凸部に突っ込むと、土を拾い上げて機体の後方へ搬送することから、土が刈刃に噛み込んで刃を傷めてしまうことがあった。更に、穀稈とともに土が搬送され易くなることから、搬送装置やカッタ等の耐久性を低下させてしまう原因となっていた。
【0007】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、地面の形状に柔軟に対応して刈取部を昇降可能な作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0009】
本発明の観点によれば、以下の構成の作業機が提供される。即ち、この作業機は、刈取部と、昇降装置と、を備える。前記刈取部は、穀稈を刈り取る。前記昇降装置は、前記刈取部を昇降させる。前記刈取部は、分草体と、回転軸取付部と、検出部と、伝達部と、を備える。前記分草体は、機体の前部に配置され、穀稈を分ける。前記回転軸取付部は、前記分草体の後方に設置され、当該分草体を上下方向に回転させるための分草板回転軸を取付可能である。前記検出部は、前記昇降装置を昇降させる制御のための信号を出力する。前記伝達部は、前記分草体の後方に設置され、前記分草体の前記分草板回転軸に対する回転を前記検出部に伝達する。前記分草板回転軸は、側面視において前記分草体の中央部を通過するように水平方向に引いた仮想直線に対して、上方に位置している。
【0010】
これにより、圃場に凸部又は凹部があった場合、分草体は、この凸部又は凹部に接触することで力を受けることにより上下方向に回転する。この分草体の回転方向及び回転量は伝達部を介して検出部によって検出可能であり、この検出内容から圃場の凸部及び凹部を検出することができる。従って、圃場の凹凸形状に柔軟に対応して刈取部を昇降させることが可能になる。特に、分草体の回転中心(分草体回転軸)が上方に位置しているため、分草体が凸部に接触したときに、分草体が突き刺さる方向の力よりも、分草体が回転する方向の力を受け易くなる。そのため、圃場の凸部及び凹部を精度良く検出することができるとともに、分草体が凸部に突っ込むことを防止することができる。
【0011】
前記の作業機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記検出部は、回転アームと、角度検出部と、を備える。前記回転アームは、前記伝達部と接続される。前記角度検出部は、前記回転アームが回転した角度を検出可能である。そして、前記回転アームの回転軸から前記伝達部の中心軸へ引いた垂線の長さが、前記分草板回転軸から前記伝達部の中心軸へ引いた垂線の長さよりも短くなっている。
【0012】
これにより、分草体が回転した角度が小さかった場合においても、検出部の回転アームを大きく回転させることができるため、分草体の回転を感度良く検出することができる。そのため、圃場の凹凸形状に精度良く対応して刈取部を昇降させることができる。
【0013】
前記の作業機においては、前記伝達部は、側面視において後上方に延びるように設置されていることが好ましい。
【0014】
これにより、伝達部が上記のように取り付けられることで伝達部が傾斜を有することになるため、チリ等を伝達部の上に溜まらせずにその下方へ落とすことができる。
【0015】
前記の作業機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この作業機は、前記分草体の下方に設置されたソリ状部材を備える。前記分草体が回転していない状態において、前記ソリ状部材の少なくとも後端部は、前記刈取部が有する刈取フレームの下方に位置する。
【0016】
これにより、ソリ状部材と刈取フレームとの間から藁等が入り込みにくくなるので、刈取フレーム等に藁が引っ掛かることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係るコンバインの全体的な構成を示した側面図。
【図2】コンバインの平面図。
【図3】分草板が回転する様子を示す側面図。
【図4】分草板及び回転検出機構の構成を示す底面図。
【図5】分草板及び回転検出機構の位置関係を示す側面図。
【図6】分草板の回転と回転アームの回転との幾何学的関係を示す説明図。
【図7】刈取部を昇降させる構成を説明するブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るコンバイン10の全体的な構成を示した側面図である。図2は、コンバイン10の平面図である。なお、以下の説明では、単に「左側」「右側」等というときは、コンバインの前方に向かって左側及び右側を意味するものとする。
【0019】
図1に示すように、本実施形態のコンバイン(作業機)10は、稲、麦等の株元を刈り取るための刈取部12を機体前部に備えるとともに、機体を走行させるためのクローラ部11を機体下部に備えて構成されている。図2に示すように、コンバイン10の左側の上部には、刈り取った穀稈を脱穀するための脱穀機14が備えられる。また、この脱穀機14と並設するように、グレンタンク15がコンバイン10の上部右側に備えられている。
【0020】
グレンタンク15の前方には、オペレータが搭乗するためのキャビン17が配置されている。このキャビン17の内部には、運転操作具及び運転座席等が設けられており、この運転操作具を操作することによって刈取りや走行等、コンバイン10の各種の操作を行うように構成されている。キャビン17の下方には、コンバイン10の駆動源としての図略のエンジンが配置されている。
【0021】
エンジンの動力は、エンジンの出力軸から、クローラ部11を駆動させるミッション装置、脱穀機14の各部、排出オーガ51及び刈取部12等にそれぞれ分岐して伝達される。
【0022】
図1に示すクローラ部11はコンバイン10の左右両側に配置されており、このクローラ部11が駆動することでコンバイン10を走行させるように構成されている。そして、この左右のクローラ部11の駆動の向き及び速度を走行ミッション装置によって変更することで、コンバイン10の走行方向及び速度の調節が可能になっている。
【0023】
刈取部12の後下側に取り付けられたシリンダ連結フレーム65は、刈取部支持軸62に回転可能に取り付けられる。そして、このシリンダ連結フレーム65には刈取部昇降シリンダ(昇降装置)63が接続されている。この刈取部昇降シリンダ63が伸縮することによって、シリンダ連結フレーム65が刈取部支持軸62を中心として回転し、刈取部12の位置が上下に変位する。
【0024】
刈取部12は、前処理部25と、刈刃部13と、掻込装置47と、図略の搬送部と、を備えている。
【0025】
前処理部25は、コンバイン10の機体の前方下部に配置されている。また、この前処理部25は、分草板(分草体)80と、引起装置46と、を主要な構成として備えている。引起装置46は図略のタインを備えており、倒伏した作物を拾い上げたり、穂先を一定の幅に収束させたりする引起し作業を行う。分草板80は、刈取部12によって作物を刈り取るべき幅を規定するためのものであり、また、倒伏した状態の稲等を当該分草板80がすくい上げることによって、引起装置46による前記引起し作業を容易にする。
【0026】
機体の右前方に位置する分草板80は、圃場の凹部及び凸部の形状に応じて上下方向に回転可能に構成されている。この回転量及び回転方向は、分草板80の取付基部に配置された回転検出機構100(図1及び図2には図示しない)において検出される。なお、分草板80及び回転検出機構100が圃場の凹部及び凸部を検出する構成の詳細は後述する。
【0027】
分草板80の後方には、超音波センサ等で構成された非接触式の刈高さセンサ69が配置されている。前記刈取部昇降シリンダ63は、この刈高さセンサ69による検出結果と、上記の分草板80及び回転検出機構100による検出結果と、に基づいて刈取部12の対地高さを調節している。
【0028】
刈刃部13は刈刃と受刃とを備えており、両者が左右に駆動されることによって作物の株元を切り取る。また、掻込装置47は刈刃部13の上方に配置されており、この掻込装置47は、刈刃部13によって切断された穀稈を掻き込み、図略の搬送部に受け渡す。この搬送部は搬送チェーン及び縦搬送チェーン等を備えており、脱穀機14のフィードチェーン16に作物の株元を搬送するよう構成されている。
【0029】
このフィードチェーン16は、穀稈を挟持しながら搬送して脱穀するように構成されている。穀稈の脱穀後、図略の選別装置によって穀粒が藁屑より選別分離されて、精粒は一番物として前記グレンタンク15に貯留される。藁屑は、コンバイン10後部に備えられる排藁カッタ48によって適宜の長さに切り刻まれ、機外へ排出される。
【0030】
次に、図3及び図4を参照して、分草板80及び回転検出機構100によって圃場の凹部及び凸部を検出する構成について説明する。図3は、分草板80が回転する様子を示す側面図である。図4は、分草板80及び回転検出機構100の構成を示す底面図である。なお、図3は、コンバイン10の右側から見た分草板80及び回転検出機構100を示している。
【0031】
分草板80の後方に位置する回転検出機構100は、基台81と、第1支持アーム82と、回転軸取付部83と、第2支持アーム84と、取付板85と、連結板86と、ダンパ(伝達部)87と、ダンパ支持部88と、ポテンショメータ(検出部)89と、を備えている。
【0032】
コンバイン10の刈取フレーム66の前側には、分草板80及び回転検出機構100を取り付けるための基台81が取り付けられている。この基台81には、第1支持アーム82及びダンパ支持部88が接続されている。
【0033】
第1支持アーム82は、前上方に湾曲しながら延びており、その先端において回転軸取付部83と接続されている。回転軸取付部83は、分草板80を回転可能にするための分草板回転軸93を有しており、この分草板回転軸93には、第2支持アーム84が接続されている。つまり、第2支持アーム84は、回転軸取付部83に対して回転可能に構成されている。この第2支持アーム84の先端は、取付板85の側面と接続されている。
【0034】
取付板85は、薄い板状の部材であり、その上方において分草板80と接続されている。また、取付板85には、分草板80以外にも、連結板86及びソリ状部材71が接続されている。
【0035】
連結板86は、取付板85の後方に位置している。また、この連結板86を後方から挟み込むようにしてU字状部材96が取り付けられている。連結板86とU字状部材96とには取付孔が形成されており、この取付孔に連結部材を用いることで、連結板86に対してU字状部材96が回転可能になるように構成されている。
【0036】
この構成により、取付板85が分草板80とともに回転すると、連結板86は取付板85から力を受けてともに回転する。そして、U字状部材96は、連結板86から力を受けて前方又は後方へ移動する。
【0037】
また、U字状部材96の後側の端部は、ダンパ87と接続されている。このダンパ87は、油圧を利用して衝撃を吸収する構成であり、雑草や藁の固まり等の比較的柔らかいものによって分草板80が回転しないようになっている。また、基台81に接続されたダンパ支持部88は、ダンパ87を回転可能に支持している。そのため、ダンパ87の荷重を支えつつ、ダンパ87の前後移動を妨げない構成となっている。そして、ダンパ87の後側の端部には、角度を検出可能なポテンショメータ89が接続されている。
【0038】
ポテンショメータ89は、回転アーム99と、図略の角度検出部と、を備えている。回転アーム99は、ダンパ87の後端と連結されており、ダンパ87が前方に動作すると、回転軸を中心に前方側に回転する。角度検出部は、回転アーム99が回転した角度を検出可能に構成されている。なお、ポテンショメータ89は、検出した角度である検出信号を後述の制御部へ送信するように構成されている。
【0039】
この構成により、圃場の凸部に接触することで分草板80が上方に回転すると、取付板85及び連結板86も一体的に上方に回転する。そして、連結板86が上方に回転することで、U字状部材96は前方に引っ張られるため、ダンパ87は前方へ移動する。それにより、ポテンショメータ89の回転アーム99は、図3における反時計回りに回転する。なお、図3において、通常時より下方に回転している分草板80を実線で示し、通常時より上方に回転している分草板を2点鎖線で示している。
【0040】
つまり、分草板80が回転することにより、回転アーム99も連動して回転する。ここで、分草板80の回転角と、回転アーム99の回転角と、の対応関係は、回転検出機構100の各部の長さ等に基づいて一意的に定まっている。そのため、ポテンショメータ89が検出した回転角から分草板80の回転角を求めることができる。なお、分草板80が圃場の凹部に接触することで下方に回転した場合は、回転検出機構100の各部は分草板80が凸部に接触した場合と逆方向に動作する。
【0041】
これにより、本実施形態のコンバイン10は、機体前方における地面の形状を検出することができる。
【0042】
取付板85の下方に取り付けられているソリ状部材71は、前傾斜部31と平坦部32と後傾斜部33とを有している。前傾斜部31は、図3に示すように、前上方に延びるように構成されている。そして、この前傾斜部31は、図4に示すように、先端部が2つに分かれた形状となっており、この2つの先端部で取付板85を挟み込むようにして接続されている。また、前傾斜部31の傾斜により、分草板80が圃場の凸部に接触したときに、当該分草板80が上方に回転し易くなっている。
【0043】
平坦部32は、取付板85の下面に位置しており、平坦部32の後方には後傾斜部33が形成されている。
【0044】
後傾斜部33は後上方に延びるように構成されており、当該後傾斜部33の後端部は刈取フレーム66の前端部よりも後方側に位置している。そのため、ソリ状部材71の下面に藁等があった場合においても、藁は後傾斜部33に沿って機体後方へ流れていき、藁が刈取フレーム66とソリ状部材71との間から侵入することがない。そのため、藁が引っ掛かることを防止できる構成になっている。
【0045】
次に、図5及び図6を参照して、分草板80及び回転検出機構100の位置関係について説明する。図5は、分草板80及び回転検出機構100の位置関係を示す側面図である。図6は、分草板80の回転と回転アーム99の回転との幾何学的関係を示す説明図である。なお、以下の説明では分草板の回転角が0°である位置(ソリ状部材71の平坦部32が水平である位置)を基準位置と称する。
【0046】
図5に示す仮想直線L1は、側面視において、基準位置にある分草板80の中央部を通過するように水平に引いた直線である。この中央部とは、分草板80の上下方向の寸法を2等分する高さの位置を意味する。図5に示すように、本実施形態の分草板回転軸93は、仮想直線L1よりも上方に位置している。
【0047】
このように分草板80の回転中心(分草板回転軸93)が上方に位置しているため、分草板80が圃場の凸部に接触した場合においても、分草板80には、当該分草板80を回転中心周りに回転させる方向の力が加わることが多くなる。つまり、分草板80が地面から受ける力の方向としては、分草板80を地面に突っ込ませる方向よりも、分草板80を回転させて逃がす方向が支配的になる。そのため、分草板80の圃場への突込みを抑制できるとともに、分草板80が圃場の凹凸を感度良く拾って回転するので、圃場の凸部及び凹部を精度良く検出することができる。
【0048】
また、図5に示す仮想直線L2は、分草板80が基準位置(図5に示す位置)にあるときに、分草板回転軸93からダンパ87の中心軸に引いた垂線である。仮想直線L3は、分草板80が基準位置にあるときに回転アーム99の回転軸からダンパ87の中心軸に引いた垂線である。
【0049】
前述のように、ダンパ87は後上方に傾斜するように構成されており、分草板80が下方向に回転すると、ダンパ87はその傾斜をほぼ保ちながら軸方向に後上方へ移動する。このとき、図6に示すように、ダンパ87の中心軸とL2との交点である点Aが点A’まで移動したとする。同様に、ダンパ87の中心軸とL3との交点である点Bが点B’まで移動したとする。そして、分草板80の回転角度(分草板回転軸93周りの回転角度)をα2とし、ポテンショメータ89側の回転アーム99の回転角度をα3とする。
【0050】
このとき、図6における線分A−A’の長さと線分B−B’の長さは、ダンパ87の伸縮及び傾斜角の変化等の影響を若干受けるが、実質的に等しいということができる。そのため、幾何学的な関係から、(仮想直線L2の長さ)×tanα2=(仮想直線L3の長さ)×tanα3の関係式がほぼ成立するので、(仮想直線L2の長さ):(仮想直線L3の長さ)=tanα3:tanα2となる。また、tanαは、−90°<α<90°の範囲において単調増加であり、α2及びα3は明らかにこの範囲の値しか取り得ないため、α2及びα3が大きくなるにつれてtanα2及びtanα3は大きくなる。以上から、(L2の長さ)>(L3の長さ)であれば、α2<α3が成立するということができる。
【0051】
そして、本実施形態においては、分草板回転軸93からダンパ87の中心軸に引いた垂線(L2)の長さが、回転アーム99の回転軸からダンパ87の中心軸に引いた垂線(L3)の長さよりも大きくなっているため、α2<α3の関係式が成立する。従って、ポテンショメータ89は、分草板80の回転角度の変化を機械的に増幅した形で検出することができるので、ポテンショメータ89が検出可能な角度範囲を有効に活用して、圃場の凹凸形状を精度良く検出することができる。
【0052】
次に、図7を参照して、昇降動作を行う制御について簡単に説明する。図7は、刈取部12を昇降させる構成を説明するブロック図である。
【0053】
コンバイン10は、各部の制御を行うためのマイクロコンピュータ式の制御部110を備えており、図7に示すように、この制御部110によって刈取部12を昇降させる構成になっている。
【0054】
この制御部110には、刈高さセンサ69及びポテンショメータ89の検出内容を示す信号が入力されている。また、制御部110は作動油の供給を調整する図略の装置に適宜の信号を送り、それにより刈取部昇降シリンダ63に対する作動油の供給量を制御可能になっている。この構成により、刈高さセンサ69及びポテンショメータ89が検出した高さに基づいて刈取部12の高さを調整することができる。
【0055】
この刈高さと分草板80の回転量とに基づいてどのように刈取部12の昇降量を決定するかは任意である。仮に、刈高さのみに基づいて昇降量を制御すると、圃場が平坦又は緩やかな傾斜である場合は確実に制御できる。しかし、実際の圃場は、施肥や薬剤の散布及び溝切り作業等で凹凸が生じており、刈高さセンサ69は分草板80の後方に位置しているため制御遅れが発生することから、分草板80が凸部に突っ込んでしまうことがある。その他にも、刈高さセンサ69が凹部を検出して刈取部12が下降すると分草板80が圃場に押し付けられることもある。
【0056】
そこで、通常は、刈高さセンサ69からの検出信号に比重をおいて刈取部12の昇降制御を行い、圃場の凹凸等の比較的大きな傾斜に対しては、ポテンショメータ89からの検出信号に比重をおいて昇降制御を行うことで上記の問題に対応することができる。
【0057】
以上に説明したように、本実施形態のコンバイン10は、刈取部12と、刈取部昇降シリンダ63と、を備える。刈取部12は、穀稈を刈り取る。刈取部昇降シリンダ63は、刈取部12を昇降させる。刈取部12は、分草板80と、回転軸取付部83と、ポテンショメータ89と、ダンパ87と、を備える。分草板80は、機体の前部に配置され、穀稈を分ける。回転軸取付部83は、分草板80の後方に設置され、当該分草板80を上下方向に回転させるための分草板回転軸93を取付可能である。ポテンショメータ89は、刈取部昇降シリンダ63を昇降させる制御のための信号を出力する。ダンパ87は、分草板80の後方に設置され、分草板80の分草板回転軸93に対する回転をポテンショメータ89に伝達する。分草板回転軸93は、側面視において分草板80の中央部を通過するように水平方向に引いた仮想直線L1に対して、上方に位置している。
【0058】
これにより、圃場に凸部又は凹部があった場合、分草板80は、この凸部又は凹部に接触することで力を受けることにより回転する。この分草板80の回転方向及び回転量はダンパ87を介してポテンショメータ89によって検出可能であり、この検出内容から圃場の凸部及び凹部を検出することができる。従って、圃場の凹凸形状に柔軟に対応して刈取部昇降シリンダ63に作動油を供給して刈取部12を昇降させることが可能になる。特に、分草板80の回転中心(分草板回転軸93)が上方に位置しているため、分草板80が凸部に接触したときに、分草板80が突き刺さる方向の力よりも、分草板80が回転する方向の力を受け易くなる。そのため、圃場の凸部及び凹部を精度良く検出することができるとともに、分草板80が凸部に突き刺さることを防止することができる。
【0059】
また、本実施形態のコンバイン10において、ポテンショメータ89は、回転アーム99と、角度検出部と、を備える。回転アーム99は、ダンパ87と接続される。角度検出部は、回転アーム99が回転した角度を検出可能である。そして、回転アーム99の回転軸からダンパ87の中心軸へ引いた仮想直線L3の長さが、分草板回転軸からダンパ87の中心軸へ引いた仮想直線L2の長さよりも短くなっている。
【0060】
これにより、分草板80が回転した角度が小さかった場合においても、ポテンショメータ89の回転アーム99を大きく回転させることができるため、分草板80の回転を感度良く検出することができる。そのため、圃場の凹凸形状に精度良く対応して刈取部昇降シリンダ63に作動油を供給して刈取部12を昇降させることができる。
【0061】
また、本実施形態のコンバイン10において、ダンパ87は、側面視において後上方に延びるように設置されている。
【0062】
これにより、ダンパ87が上記のように取り付けられることでダンパ87が傾斜を有することになるため、チリ等をダンパ87の上に溜まらせずにその下方へ落とすことができる。
【0063】
また、本実施形態のコンバイン10は、分草板80の下方に設置されたソリ状部材71を備える。分草板80が回転していない状態において、ソリ状部材71の少なくとも後傾斜部33は、刈取部12が有する刈取フレーム66の下方に位置している。
【0064】
これにより、ソリ状部材71と刈取フレーム66との間から藁等が入り込みにくくなるので、刈取フレーム66等に藁が引っ掛かることを防止できる。
【0065】
以上に本発明の好適な実施の形態について説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0066】
上記実施形態では、右側の分草板80の後方にのみ回転検出機構100を備える構成であるが、例えば、左側の分草板80の後方に回転検出機構100を備える構成にしても良い。
【0067】
上記実施形態では、伝達部としてダンパ87を用いたが、これに代えて弾性部材としてのバネ等を用いることもできる。更に、弾性部材でない棒状体を用いても良い。
【0068】
上記実施形態におけるポテンショメータ89は角度を検出する構成であるが、これに代えて、直線上の位置を検出する検出計を用いることができる。
【0069】
また、上記実施形態ではコンバイン10に本発明を適用しているが、本発明を適用できる作業機はコンバイン10に限定されない。例えば大根や人参等を収穫する自走式の根菜収穫機等の作業機に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0070】
10 コンバイン(作業機)
12 刈取部
63 刈取部昇降シリンダ(昇降装置)
66 刈取フレーム
80 分草板(分草体)
83 回転軸取付部
87 ダンパ(伝達部)
89 ポテンショメータ(検出部)
93 分草板回転軸
99 回転アーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀稈を刈り取る刈取部と、
前記刈取部を昇降させる昇降装置と、
を備え、
前記刈取部は、
機体の前部に配置され、穀稈を分けるための分草体と、
前記分草体の後方に設置され、当該分草体を上下方向に回転させるための分草板回転軸を取付可能な回転軸取付部と、
前記昇降装置を昇降させる制御のための信号を出力する検出部と、
前記分草体の後方に設置され、前記分草体の前記分草板回転軸に対する回転を前記検出部に伝達する伝達部と、
を備え、
前記分草板回転軸は、側面視において前記分草体の中央部を通過するように水平方向に引いた仮想直線に対して、上方に位置していることを特徴とする作業機。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機であって、
前記検出部は、
前記伝達部と接続される回転アームと、
前記回転アームが回転した角度を検出可能な角度検出部と、
を備え、
前記回転アームの回転軸から前記伝達部の中心軸へ引いた垂線の長さが、前記分草板回転軸から前記伝達部の中心軸へ引いた垂線の長さよりも短いことを特徴とする作業機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の作業機であって、
前記伝達部は、側面視において後上方に延びるように設置されていることを特徴とする作業機。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の作業機であって、
前記分草体の下方に設置されたソリ状部材を備え、
前記分草体が回転していない状態において、前記ソリ状部材の少なくとも後端部は、前記刈取部が有する刈取フレームの下方に位置することを特徴とする作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−120485(P2011−120485A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278532(P2009−278532)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】