作業用手袋
【目的】手及び手首の作業動作の容易化・疲労の軽減化・能力向上を可能にする作業用手袋を提供する。
【構成】作業用手袋は、それに備える面状接触部を作業動作の容易化・疲労の軽減化・能力向上等を寄与する配置(指部に配置する面状接触部を手の中間位若しくはその近似の位置で手袋により同一対象物をつかむ・つまむ・にぎるの把握動作をする際に対象物と接触する手袋の親指・人指し指・中指の領域に限定する等)と特性にして、それによって、作業の容易化、作業能力の維持・向上、手及び手首の疲労が軽減されている。
【構成】作業用手袋は、それに備える面状接触部を作業動作の容易化・疲労の軽減化・能力向上等を寄与する配置(指部に配置する面状接触部を手の中間位若しくはその近似の位置で手袋により同一対象物をつかむ・つまむ・にぎるの把握動作をする際に対象物と接触する手袋の親指・人指し指・中指の領域に限定する等)と特性にして、それによって、作業の容易化、作業能力の維持・向上、手及び手首の疲労が軽減されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手袋装着による日常的作業等において、作業の容易化・作業能率向上が得られて、手の能力維持・能力低下防止等に有効な刺激が得られる作業用手袋に関する。
本発明は、具体的には、人間工学の実験から体系的に見出された事実を基礎とする作業用手袋に関する。
【背景技術】
【0002】
医療及び一般的作業に用いる作業用手袋に関する提案は、実質的に殆どが、部材の特性(例えば、弾性等)及び形状による効果をそのまま作業用手袋に付加するものである。
例えば、弾性層帯を貼付けて、その弾性によりフィット感・離脱防止・快適な装着感を付与する作業用手袋に関する提案(例えば、特許文献1等を参照)、開口内側端部の帯状水吸収体を設けてゴム手袋内部への水の浸入を防止する水作業用ゴム手袋に関する提案(例えば、特許文献2等を参照)、手の腱鞘炎の発症容易な指の手甲側の手袋の対応箇所を伸縮性材にして腱鞘炎の発症予防性を医療用手袋に付与する提案(例えば、特許文献3等を参照)等である。
また、スポーツに用いる作業用手袋に関する提案も、部材の特性(例えば、弾性等)等をそのまま作業用手袋に付加する点は同様である(例えば、特許文献4、5等を参照)。
一方、身体能力は、能力測定法のルール化及び測定装置普及によって測定が容易になって(例えば、非特許文献1等を参照)、手の能力に関して各種測定データが公表されて、加齢による能力低下が明らかになっている。表1は、男女の手の握力の加齢による変化を測定したデータである(例えば、非特許文献2を参照)。
【0003】
【表1】
【0004】
表1によれば、女性の握力は、60歳時で10歳時に近似の状態になって、以降の加齢によって著しく低下する(すなわち、60歳以降の女性の握力が、幼児のそれに近い状態になる)。握力以外の手、手首及び腕能力も加齢によって低下して、日常的作業にも支障をきたす者が激増するという現実が存在する(例えば、非特許文献2、3を参照)。
一方、手及び手首の作業能力は、身体的特性(例えば、形状、寸法、骨格及び筋肉等の特性)、能力特性(例えば、力、作業能力、動作能力等の特性)、感覚特性(例えば、皮膚感覚、視覚、聴覚等の特性)及び神経特性等の多くの身体上の因子が関係する複雑系であるところから、手の作業能力を簡便な方法により維持・回復させるという発想及び提案が存在しなかった。
【0005】
特許文献1 特許第3586855号公報
特許文献2 特許第2873177号公報
特許文献3 特公平7−51140号公報
特許文献4 特許第2922437号公報
特許文献5 特許第3202946号公報
【0006】
非特許文献1 加藤象次郎・大久保尭夫編著「初学者のための生体機能の測り方」株式会社日本出版サービス発行、 1999年発行
非特許文献2 社団法人:人間生活工学研究センター〔平成11年度 経済産業省 高齢者特性計測機器開発委託 成果報告書「高齢者特性の類型化手法の開発報告書」平成13年3月発行
非特許文献3 社団法人:人間生活工学研究センター〔平成10度即効的知的基盤整備委託調査研究「人間の動作等に係る動的特性の計測評価」(関節特性計測) 調査報告書〕平成12年3月発行
非特許文献4 佐藤方彦、勝浦哲夫「環境人間工学」株式会社朝倉
書店発行 1993年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、手及び手首の運動能力・作業能力に関連する因子相互間の関係の検討・実験での多くの事例の積み重ねから、把握動作での親指指向性の配置になる数本の指からの継続的刺激の感受が、手の複合動作(手の動作の多くは、複数動作の組み合わせ)での能力改善に有効であること等が本発明者により見出されて、以下の(イ)〜(ホ)を目的とする本発明が創案されている。
(イ)本発明は、手の動作の容易及び高効率での遂行、手及び手首への負担の回避及び疲労の軽減という、一般的には、相反する方向の目的の実現を可能にする作業用手袋を提供すること、を目的とする。
(ロ)本発明は、繰り返し使用によって、手及び手首の能力の維持・向上に役立つ作業用手袋を提供すること、をも目的とする。
(ハ)本発明は、繰り返し使用によって、手及び手首についてリハビリテーション効果を享受可能な作業用手袋を提供すること、をも目的とする。
(ニ)本発明は、作業の種類・対象物に対応する接触刺激感受性の制御が容易である作業用手袋を提供すること、をも目的とする。
(ホ)本発明は、握力が低下する等の手の能力が低下した身体的能力であっても使用に負担を生じさせない作業用手袋を提供すること、をも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第一の本発明(請求項1に記載の本発明)による作業用手袋は、面状接触部が下記(A)の配置条件と下記(B)の特性条件で手袋に設けられていること、を特徴とする。
(A)面状接触部の配置条件
(1)手の中間位若しくはその近似の位置で手袋により同一対象物をつかむ・つまむ・にぎるの把握動作をする際に対象物と接触する手袋の親指・人指し指・中指の領域に配置される指部の面状接触部と、
(2)手袋の親指・人指し指・中指に囲まれる手のひら領域若しくはそれを含む領域に配置される手のひら部の面状接触部とからなる。
(B)面状接触部の特性条件
指部の面状接触部が、把握対象物との接触刺激を手に感受にさせる面又は/及び構造になっている。
第二の本発明(請求項2に記載の本発明)による作業用手袋は、面状接触部が下記(A)の配置条件と下記(B)の特性条件で手袋に設けられていること、を特徴とする。
(イ)面状接触部の配置条件
(i)手の中間位若しくはその近似の位置で手袋により同一対象物をつかむ・つまむ・にぎるの把握動作する際に手袋の親指・人指し指・中指が対象物と接触する領域に配置される指部の面状接触部と、
(ii)手袋の親指の面状接触部と人指し指及び中指の面状接触部との間を連続する領域に配置される手のひら部の面状接触部とからなる。
(ロ)面状接触部の特性条件
指部及び手のひら部の面状接触部が、把握対象物との接触刺激を手に感受させる面又は/及び構造になっている。
【発明の効果】
【0009】
本発明(第一及び第二の本発明)の手袋の装着・使用によって、下記(i)〜(viii)等に代表される効果が得られる。
(i)手による作業が容易になって、手袋の継続使用によって手の動作能力の維持・向上が可能になって、手及び手首の疲労が軽減する。
(ii)手の動作の多くを占める複合動作(200種以上存する)を容易に行うことが可能になる。
(iii)手の能力が低下した年長者(特に、女性の年長者)による日常的作業が容易、かつ、効率的に行えるようになる。
(iv)作業の種類・把持対象物の大きさ・形状に合わせて作業が容易で、、手袋の継続使用によって手の動作能力の維持・向上が可能な手袋にすることが容易である。
(v)手袋の繰り返し使用よって、リハビリテーション効果に近似の効果が得られる。
(vi)医療及びスポーツ等の広範囲の作業に使用して同様の効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
第一及び第二の本発明による手袋を、図1〜図15に基づいて具体的に説明する。なお、以下に図示する手袋は、本発明の最良の具体的形態ではあるが、本発明に包含される多くの具体的形態の一部の例示である。
なお、以下の各図において、同一付与を付したものは、同一若しくは同等のものを示している。なお、以下の説明において、単に「手袋」という場合は、特に言及しない限り、作業用手袋の意味で使用している。
【0011】
〔本発明の手袋の概要〕:
本発明の手袋は、面状接触を本発明の条件で備えて、それによって、本発明による効果の享受が可能にされている。
図1は、本発明の手袋の一具体例を示す説明図であって、手袋1には、親指・人指し指・中指に配置の接触刺激を手に感受させる面状接触部2、3、4からなる指部の面状接触部と、手のひら部の面状接触部5とが手の動作に与える効果と、指部の面状接触部2、3、4からの接触刺激が手に与える生理学的効果が享受される。
図2は、手袋1を装着して対象物を把持する場合に、手の指部及び手のひら部での面状接触部に対応する配置を示す説明図である。
【0012】
〔面状接触部の配置条件〕:
以下に、指部の配置条件と、手のひら領域の配置条件を分説する。
【0013】
<指部の配置条件>:
第一の条件は、指部への配置を手袋の親指・人指し指・中指の手のひら側の領域に限定することで、第二の条件は、手を中間位若しくはその近似の位置にして手袋で対象物を把握する際に手袋の指が対象物に接触する領域であることで、第三の条件は、手袋で対象物を把握する動作が、同一対象物をつかむ・つまむ・にぎるに限定することである。
第一条件は、対象物を把握する際の指を、親指と対向配置の二本の指に限定すると、年長者が手袋を装着して動作するのが容易になって、手及び手首の負担・疲労が小さくなり、指部の面状接触部から感受する日常的動作での接触刺激を手の能力改善に有効であるからである(後記実施例を参照)。
【0014】
第二の条件は、手のひらを横に向けて手を自然に休めた状態(すなわち、手の中間位若しくはその近似の位置で、腕を回旋しないでいる状態)を基準にして指に面状接触部を配置すると、手袋による作業が著しく容易になって、疲労の軽減が著しく、しかも、そのような状態で行う日常的動作において、面状接触部からの接触刺激の感受効果が大きいことが本発明で見出されたからである(後記実施例を参照)。
【0015】
図2は、手の中間位の位置を示す説明図であって、前腕の長軸と中指の長軸が一致する手の位置である正常位より約12度程度に尺側に偏位した位置で、手のひらを横に向けて手を自然に休めた状態の位置である(図2については、例えば、非特許文献4等を参照)。
本発明が、図2に示す手の中間位の位置だけでなく、その近似の位置としたのは、近似の位置でも他のひらを横に向けて手を自然に近い状態で休めることが可能になる。
なお、図2において、手を中間位の位置から前腕を回旋して手のひらを伏せる動作を回内と称されて(図2の右図を参照)、手を中間位の位置から前腕を回旋して手のひらを上に向ける動作が回外と称される(図2の左図を参照)。
【0016】
第三の条件は、把握動作を同一対象物をつかむ・つまむ・にぎるの動作に限定することである。この3種の把握動作を基準にしても、手の200種以上にも及ぶ複合動作で同様の効果が得られることが本発明で見出されているからである。
なお、把握動作の対象物は、「つまむ」ことが可能な立体状物で、手袋の使用分野で近時の形態が存在する対象物(耐えば、球体、短い太径の棒状体、日常品としての容器等である)であるのが適している。
図4、図5及び図6は、把握動作での基本動作において親指指向性(親指が他の指と向き合う手の機能)の形になる指の三つの形である「つかむ」・「つまむ」・「にぎる」の説明図である。
なお、把握動作での基本動作の指の形には、図7に示す「かぎかた」も存在するが、本発明での検討によれば、同一対象物を「つかむ」・「つまむ」・「にぎる」の三つの形の動作に限定して面状接触部の配置を設定しても、手の動作容易、疲労低減及び刺激による手の能力回復について最適な効果等の本発明の効果を最大に享受することが可能になるかである。
【0017】
<手のひら部の配置条件>:
手袋は、親指・人指し指・中指に囲まれる手のひら領域(請求項1に記載の本発明)若しくは親指の面状接触部と人指し指及び中指の面状接触部との間を連続する領域(請求項2に記載の本発明)に配置される。手のひら部の面状接触部5(図1を参照)は、対象物の把握を容易にして、指の面状接触部と協働して作業能率向上・疲労軽減に有効である。
しかし、把握動作で親指と人指し指・中指とに囲まれる手のひら領域を超えて広がると、把握動作での負荷が増大して指部の面状接触部2、3、4の刺激効果を減少させ得る場合が生ずる(後記実施例を参照)。
ただし、手袋の作業の対象は、多様であるところから、親指・人指し指・中指に囲まれる手のひら領域を把握動作での負荷が増えない範囲で拡大することも可能である。図1に示す手のひら部の面状接触部5は、厳密には、親指・人指し指・中指に囲まれる手のひら領域を少し拡大した領域になっていて、第一の本発明(請求項1の本発明)の「それを含む領域」はそのような領域を示している。
第二の本発明(請求項2の本発明)の「手袋の親指の面状接触部と人指し指及び中指の面状接触部との間を連続する領域」は、例えば、親指と他の2指との間が面状接触部により連続していれば、帯状そのその他のいずれの形態であってもよいことを意味していて、本発明の効果享受には、指部の面状接触部の寄与が大きいことを意味している。
【0018】
〔面状接触部の特性〕:
面状接触部は、少なくとも、指部の面状接触部が把握に際して対象物との接触刺激を手に感受にさせる面又は/及び構造になっている。本発明での実験・観察を主体とする検討から、面状接触部の接触刺激の感受は、対象物との接触面の形態からの刺激感受であっても、面状接触部の構造由来の特性(例えば、特有の弾性変形等)からの刺激感受であっても、年長者が手の能力の維持・向上等に役立て得ることが見出されている。また、手袋の手のひら部の面状接触部の接触刺激を感受しても、手の能力の維持・向上等に有効になる場合が見出されている。
【0019】
図8〜図14は、面状接触部の特性を示す説明図であっ。図8は対象物との接触面に横方向線状の凹凸を配設の指部の面状接触部を示す説明図である。図9は、図8に示す横方向線状の凹凸の説明図である。図10は対象物との接触面に点状の凹凸を配設の指部の面状接触部を示す説明図である。
図11は、図10に示す点状の凹凸の説明図である。図12は対象物との接触面に斜め方向の凹凸を配設の指部の面状接触部を示す説明図である。図13は、図12の斜め方向の凹凸の説明図である。図14は、対象物との接触面を対象物の形状に対応させて把持容易な形態にされている手袋の指部若しくは手のひら部の面状接触部の断面形状を示す断面図である。
【0020】
手袋は、その素材において任意であって、例えば、ゴム、プラスチック、天然素材(綿、絹等)から作成することが可能であるが、ゴム手袋である場合に本発明の効果の享受が容易である。手袋の素材・厚み・等は、作業目的・手の動作条件等との関係から決めることができる。
【0021】
〈本発明の他の最良の形態〉:
なお、本発明には、他の多様な最良の形態が含まれる。以下にその一部を例示する。
(1)図15は、手袋の他の一具体的形態を示す説明図であって、中指の付け根から親指の付け根に直線を引いた領域が親指・人指し指・中指に囲まれる手のひら領域にされている。
(2)指部の面状接触部は、接触刺激の強度を指毎に変えることが可能で、親指の接触刺激の他の指のそれよりも強度を大きくすると、接触刺激感受による手の機能が向上する。
【0022】
なお、本発明においては、本発明の目的に沿うものであって、本発明の効果を特に害さない限りにおいては、改変あるいは部分的な変更及び付加は任意であって、いずれも本発明の範囲である。
本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、実施例は例示であって本発明を拘束するものではない。
【実施例】
【0023】
<実施例1>実験用手袋
被験者が装着使用する実験用の手袋A〜Eを同じゴム手袋から作成した。手袋Aは面状接触部を図1の配置で手袋に設けた。手袋Bは面状接触部を図16の配置で手袋に設けた。手袋Cは面状接触部を図1の指にのみ配設けた。手袋Dは面状接触部を親指〜小指の全指にのみ設けた。手袋Eは面状接触部を親指〜小指の全指と手のひら部全域に設けた。
面状接触部は、手袋を装着した手を図2の程度に湾曲させて、球体(対象物)をつかむ・つまむ・にぎるの把握動作での接触領域から設定領域が決められた。面状接触部は、屈曲自在のプラスチック弾性体で接触面が図8及び図9のような凹凸面であった。
【0024】
<実施例2>被験者
被験者は、50代及び60代の女性からなるグループから構成し、グループは測定値に対する個人間変動を小さくする構成員から編成した。被験者Xグループは、平均年齢が54.5歳の専業主婦10名から構成されて、構成員の殆どが平均年齢の2歳前後であった。被験者Yグループは、平均年齢が65.4歳の専業主婦10名から構成されて、殆どが平均年齢の2歳前後であった。被験者X及び被験者Yのグループは、身長・体重・体力・健康度及び日常生活行動ができるだけ似ていて、しかも、日常の作業内容もできるだけ似ている女性から構成された。
【0025】
<実施例3>調査項目及び調査方法
装着感、使用感及び快適性により体性感覚を調査し、かつ、手及び手首の疲労感及び機能性の維持・回復を逐次的に調査した。調査は、各調査項目について調査用紙を用意した。手及び手首の疲労感については、日本産業衛生学会産業疲労研究会の自覚疲労症状しらべ調査用紙等も参考にして手及び手首の疲労感用の調査用紙を作成した。
調査は、各調査項目毎に調査用紙を用意し、決めた時間を厳守して調査用紙の該当項目に丸印をして貰った。
【0026】
<実施例4>体性感覚の調査
手袋装着感、手袋使用感及び快適性から手袋の装着使用時の体性感覚を3週間の経時で調査した。表2が被験者Xグループの調査結果である。体性感覚の評価は、良好、変わらず、不満、不快、不良、不可にランク分けした。なお、表2の「良好―良好―良好」は、手袋装着感が良好、手袋使用感が良好、快適性が良好を意味している。「不満―不満―不良」は、手袋装着感が不満、手袋使用感が不満、快適性が不良を意味している。
【0027】
【表2】
【0028】
表3は、被験者Yグループの調査結果である。表内の表示は表2と同様である。
【0029】
【表3】
【0030】
<実施例5>疲労感の調査
手袋の装着使用時の手の疲労感を3週間の経時で調査した。表4が被験者Xグループの調査結果で、表5が被験者Yグループの調査結果である。なお、疲労感は、だるい、けだるい、疲労感、いたい、意欲低下、無変化により評価した。最も疲労感のある状態が「だるい」で、その反対が「無変化」である。
【0031】
【表4】
【0032】
【表5】
【0033】
<実施例6>手の機能の維持・回復の調査
手の機能の維持・回復を6ケ月にわたって追跡調査した。表6が被験者Xグループの調査結果で、表7が被験者Yグループの調査結果である。なお、手の機能の維持・回復は、手が軽い、楽である、うっとしくない、痛くない、意欲がある、無変化により評価した。手の機能が最も回復した状態が「手が軽い」で、その反対が「無変化」である。
【0034】
【表6】
【0035】
【表7】
【0036】
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の手袋によれば、手の能力が低下した年長者(特に、女性の年長者)であっても、作業が容易になって、手袋の継続使用によって手の動作能力の維持・向上が可能になって、手及び手首の疲労が軽減し、手袋の繰り返し使用によって、リハビリテーション効果に近似の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】手袋の一具体的形態を示す説明図である。
【図2】手袋により対象物を把持時間に、手の指部及び手のひら部での面状接触部に対応する配置を示す説明図である。
【図3】中間位の手を示す説明図である。
【図4】つかむの指の形を示す説明図である。
【図5】つまむの指の形を示す説明図である。
【図6】にぎるの指の形を示す説明図である。
【図7】かぎかたの指の形を示す説明図である。
【図8】面状接触部の接触面の横方向線状凹凸を示す説明図である。
【図9】図8に示す横方向線状の凹凸の説明図である。
【図10】面状接触部の接触面の点状凹凸を示す説明図である。
【図11】図10に示す点状の凹凸の説明図である。
【図12】面状接触部の接触面の斜め方向凹凸を示す説明図である。
【図13】図12の斜め方向の凹凸の説明図である。
【図14】面状接触部の側断面を示す説明図である。
【図15】手袋の他の一具体的形態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0039】
1 手袋
2 親指の面状接触部
3 人指し指の面状接触部
4 中指の面状接触部
5 手のひら部の面状接触部
【技術分野】
【0001】
本発明は、手袋装着による日常的作業等において、作業の容易化・作業能率向上が得られて、手の能力維持・能力低下防止等に有効な刺激が得られる作業用手袋に関する。
本発明は、具体的には、人間工学の実験から体系的に見出された事実を基礎とする作業用手袋に関する。
【背景技術】
【0002】
医療及び一般的作業に用いる作業用手袋に関する提案は、実質的に殆どが、部材の特性(例えば、弾性等)及び形状による効果をそのまま作業用手袋に付加するものである。
例えば、弾性層帯を貼付けて、その弾性によりフィット感・離脱防止・快適な装着感を付与する作業用手袋に関する提案(例えば、特許文献1等を参照)、開口内側端部の帯状水吸収体を設けてゴム手袋内部への水の浸入を防止する水作業用ゴム手袋に関する提案(例えば、特許文献2等を参照)、手の腱鞘炎の発症容易な指の手甲側の手袋の対応箇所を伸縮性材にして腱鞘炎の発症予防性を医療用手袋に付与する提案(例えば、特許文献3等を参照)等である。
また、スポーツに用いる作業用手袋に関する提案も、部材の特性(例えば、弾性等)等をそのまま作業用手袋に付加する点は同様である(例えば、特許文献4、5等を参照)。
一方、身体能力は、能力測定法のルール化及び測定装置普及によって測定が容易になって(例えば、非特許文献1等を参照)、手の能力に関して各種測定データが公表されて、加齢による能力低下が明らかになっている。表1は、男女の手の握力の加齢による変化を測定したデータである(例えば、非特許文献2を参照)。
【0003】
【表1】
【0004】
表1によれば、女性の握力は、60歳時で10歳時に近似の状態になって、以降の加齢によって著しく低下する(すなわち、60歳以降の女性の握力が、幼児のそれに近い状態になる)。握力以外の手、手首及び腕能力も加齢によって低下して、日常的作業にも支障をきたす者が激増するという現実が存在する(例えば、非特許文献2、3を参照)。
一方、手及び手首の作業能力は、身体的特性(例えば、形状、寸法、骨格及び筋肉等の特性)、能力特性(例えば、力、作業能力、動作能力等の特性)、感覚特性(例えば、皮膚感覚、視覚、聴覚等の特性)及び神経特性等の多くの身体上の因子が関係する複雑系であるところから、手の作業能力を簡便な方法により維持・回復させるという発想及び提案が存在しなかった。
【0005】
特許文献1 特許第3586855号公報
特許文献2 特許第2873177号公報
特許文献3 特公平7−51140号公報
特許文献4 特許第2922437号公報
特許文献5 特許第3202946号公報
【0006】
非特許文献1 加藤象次郎・大久保尭夫編著「初学者のための生体機能の測り方」株式会社日本出版サービス発行、 1999年発行
非特許文献2 社団法人:人間生活工学研究センター〔平成11年度 経済産業省 高齢者特性計測機器開発委託 成果報告書「高齢者特性の類型化手法の開発報告書」平成13年3月発行
非特許文献3 社団法人:人間生活工学研究センター〔平成10度即効的知的基盤整備委託調査研究「人間の動作等に係る動的特性の計測評価」(関節特性計測) 調査報告書〕平成12年3月発行
非特許文献4 佐藤方彦、勝浦哲夫「環境人間工学」株式会社朝倉
書店発行 1993年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、手及び手首の運動能力・作業能力に関連する因子相互間の関係の検討・実験での多くの事例の積み重ねから、把握動作での親指指向性の配置になる数本の指からの継続的刺激の感受が、手の複合動作(手の動作の多くは、複数動作の組み合わせ)での能力改善に有効であること等が本発明者により見出されて、以下の(イ)〜(ホ)を目的とする本発明が創案されている。
(イ)本発明は、手の動作の容易及び高効率での遂行、手及び手首への負担の回避及び疲労の軽減という、一般的には、相反する方向の目的の実現を可能にする作業用手袋を提供すること、を目的とする。
(ロ)本発明は、繰り返し使用によって、手及び手首の能力の維持・向上に役立つ作業用手袋を提供すること、をも目的とする。
(ハ)本発明は、繰り返し使用によって、手及び手首についてリハビリテーション効果を享受可能な作業用手袋を提供すること、をも目的とする。
(ニ)本発明は、作業の種類・対象物に対応する接触刺激感受性の制御が容易である作業用手袋を提供すること、をも目的とする。
(ホ)本発明は、握力が低下する等の手の能力が低下した身体的能力であっても使用に負担を生じさせない作業用手袋を提供すること、をも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第一の本発明(請求項1に記載の本発明)による作業用手袋は、面状接触部が下記(A)の配置条件と下記(B)の特性条件で手袋に設けられていること、を特徴とする。
(A)面状接触部の配置条件
(1)手の中間位若しくはその近似の位置で手袋により同一対象物をつかむ・つまむ・にぎるの把握動作をする際に対象物と接触する手袋の親指・人指し指・中指の領域に配置される指部の面状接触部と、
(2)手袋の親指・人指し指・中指に囲まれる手のひら領域若しくはそれを含む領域に配置される手のひら部の面状接触部とからなる。
(B)面状接触部の特性条件
指部の面状接触部が、把握対象物との接触刺激を手に感受にさせる面又は/及び構造になっている。
第二の本発明(請求項2に記載の本発明)による作業用手袋は、面状接触部が下記(A)の配置条件と下記(B)の特性条件で手袋に設けられていること、を特徴とする。
(イ)面状接触部の配置条件
(i)手の中間位若しくはその近似の位置で手袋により同一対象物をつかむ・つまむ・にぎるの把握動作する際に手袋の親指・人指し指・中指が対象物と接触する領域に配置される指部の面状接触部と、
(ii)手袋の親指の面状接触部と人指し指及び中指の面状接触部との間を連続する領域に配置される手のひら部の面状接触部とからなる。
(ロ)面状接触部の特性条件
指部及び手のひら部の面状接触部が、把握対象物との接触刺激を手に感受させる面又は/及び構造になっている。
【発明の効果】
【0009】
本発明(第一及び第二の本発明)の手袋の装着・使用によって、下記(i)〜(viii)等に代表される効果が得られる。
(i)手による作業が容易になって、手袋の継続使用によって手の動作能力の維持・向上が可能になって、手及び手首の疲労が軽減する。
(ii)手の動作の多くを占める複合動作(200種以上存する)を容易に行うことが可能になる。
(iii)手の能力が低下した年長者(特に、女性の年長者)による日常的作業が容易、かつ、効率的に行えるようになる。
(iv)作業の種類・把持対象物の大きさ・形状に合わせて作業が容易で、、手袋の継続使用によって手の動作能力の維持・向上が可能な手袋にすることが容易である。
(v)手袋の繰り返し使用よって、リハビリテーション効果に近似の効果が得られる。
(vi)医療及びスポーツ等の広範囲の作業に使用して同様の効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
第一及び第二の本発明による手袋を、図1〜図15に基づいて具体的に説明する。なお、以下に図示する手袋は、本発明の最良の具体的形態ではあるが、本発明に包含される多くの具体的形態の一部の例示である。
なお、以下の各図において、同一付与を付したものは、同一若しくは同等のものを示している。なお、以下の説明において、単に「手袋」という場合は、特に言及しない限り、作業用手袋の意味で使用している。
【0011】
〔本発明の手袋の概要〕:
本発明の手袋は、面状接触を本発明の条件で備えて、それによって、本発明による効果の享受が可能にされている。
図1は、本発明の手袋の一具体例を示す説明図であって、手袋1には、親指・人指し指・中指に配置の接触刺激を手に感受させる面状接触部2、3、4からなる指部の面状接触部と、手のひら部の面状接触部5とが手の動作に与える効果と、指部の面状接触部2、3、4からの接触刺激が手に与える生理学的効果が享受される。
図2は、手袋1を装着して対象物を把持する場合に、手の指部及び手のひら部での面状接触部に対応する配置を示す説明図である。
【0012】
〔面状接触部の配置条件〕:
以下に、指部の配置条件と、手のひら領域の配置条件を分説する。
【0013】
<指部の配置条件>:
第一の条件は、指部への配置を手袋の親指・人指し指・中指の手のひら側の領域に限定することで、第二の条件は、手を中間位若しくはその近似の位置にして手袋で対象物を把握する際に手袋の指が対象物に接触する領域であることで、第三の条件は、手袋で対象物を把握する動作が、同一対象物をつかむ・つまむ・にぎるに限定することである。
第一条件は、対象物を把握する際の指を、親指と対向配置の二本の指に限定すると、年長者が手袋を装着して動作するのが容易になって、手及び手首の負担・疲労が小さくなり、指部の面状接触部から感受する日常的動作での接触刺激を手の能力改善に有効であるからである(後記実施例を参照)。
【0014】
第二の条件は、手のひらを横に向けて手を自然に休めた状態(すなわち、手の中間位若しくはその近似の位置で、腕を回旋しないでいる状態)を基準にして指に面状接触部を配置すると、手袋による作業が著しく容易になって、疲労の軽減が著しく、しかも、そのような状態で行う日常的動作において、面状接触部からの接触刺激の感受効果が大きいことが本発明で見出されたからである(後記実施例を参照)。
【0015】
図2は、手の中間位の位置を示す説明図であって、前腕の長軸と中指の長軸が一致する手の位置である正常位より約12度程度に尺側に偏位した位置で、手のひらを横に向けて手を自然に休めた状態の位置である(図2については、例えば、非特許文献4等を参照)。
本発明が、図2に示す手の中間位の位置だけでなく、その近似の位置としたのは、近似の位置でも他のひらを横に向けて手を自然に近い状態で休めることが可能になる。
なお、図2において、手を中間位の位置から前腕を回旋して手のひらを伏せる動作を回内と称されて(図2の右図を参照)、手を中間位の位置から前腕を回旋して手のひらを上に向ける動作が回外と称される(図2の左図を参照)。
【0016】
第三の条件は、把握動作を同一対象物をつかむ・つまむ・にぎるの動作に限定することである。この3種の把握動作を基準にしても、手の200種以上にも及ぶ複合動作で同様の効果が得られることが本発明で見出されているからである。
なお、把握動作の対象物は、「つまむ」ことが可能な立体状物で、手袋の使用分野で近時の形態が存在する対象物(耐えば、球体、短い太径の棒状体、日常品としての容器等である)であるのが適している。
図4、図5及び図6は、把握動作での基本動作において親指指向性(親指が他の指と向き合う手の機能)の形になる指の三つの形である「つかむ」・「つまむ」・「にぎる」の説明図である。
なお、把握動作での基本動作の指の形には、図7に示す「かぎかた」も存在するが、本発明での検討によれば、同一対象物を「つかむ」・「つまむ」・「にぎる」の三つの形の動作に限定して面状接触部の配置を設定しても、手の動作容易、疲労低減及び刺激による手の能力回復について最適な効果等の本発明の効果を最大に享受することが可能になるかである。
【0017】
<手のひら部の配置条件>:
手袋は、親指・人指し指・中指に囲まれる手のひら領域(請求項1に記載の本発明)若しくは親指の面状接触部と人指し指及び中指の面状接触部との間を連続する領域(請求項2に記載の本発明)に配置される。手のひら部の面状接触部5(図1を参照)は、対象物の把握を容易にして、指の面状接触部と協働して作業能率向上・疲労軽減に有効である。
しかし、把握動作で親指と人指し指・中指とに囲まれる手のひら領域を超えて広がると、把握動作での負荷が増大して指部の面状接触部2、3、4の刺激効果を減少させ得る場合が生ずる(後記実施例を参照)。
ただし、手袋の作業の対象は、多様であるところから、親指・人指し指・中指に囲まれる手のひら領域を把握動作での負荷が増えない範囲で拡大することも可能である。図1に示す手のひら部の面状接触部5は、厳密には、親指・人指し指・中指に囲まれる手のひら領域を少し拡大した領域になっていて、第一の本発明(請求項1の本発明)の「それを含む領域」はそのような領域を示している。
第二の本発明(請求項2の本発明)の「手袋の親指の面状接触部と人指し指及び中指の面状接触部との間を連続する領域」は、例えば、親指と他の2指との間が面状接触部により連続していれば、帯状そのその他のいずれの形態であってもよいことを意味していて、本発明の効果享受には、指部の面状接触部の寄与が大きいことを意味している。
【0018】
〔面状接触部の特性〕:
面状接触部は、少なくとも、指部の面状接触部が把握に際して対象物との接触刺激を手に感受にさせる面又は/及び構造になっている。本発明での実験・観察を主体とする検討から、面状接触部の接触刺激の感受は、対象物との接触面の形態からの刺激感受であっても、面状接触部の構造由来の特性(例えば、特有の弾性変形等)からの刺激感受であっても、年長者が手の能力の維持・向上等に役立て得ることが見出されている。また、手袋の手のひら部の面状接触部の接触刺激を感受しても、手の能力の維持・向上等に有効になる場合が見出されている。
【0019】
図8〜図14は、面状接触部の特性を示す説明図であっ。図8は対象物との接触面に横方向線状の凹凸を配設の指部の面状接触部を示す説明図である。図9は、図8に示す横方向線状の凹凸の説明図である。図10は対象物との接触面に点状の凹凸を配設の指部の面状接触部を示す説明図である。
図11は、図10に示す点状の凹凸の説明図である。図12は対象物との接触面に斜め方向の凹凸を配設の指部の面状接触部を示す説明図である。図13は、図12の斜め方向の凹凸の説明図である。図14は、対象物との接触面を対象物の形状に対応させて把持容易な形態にされている手袋の指部若しくは手のひら部の面状接触部の断面形状を示す断面図である。
【0020】
手袋は、その素材において任意であって、例えば、ゴム、プラスチック、天然素材(綿、絹等)から作成することが可能であるが、ゴム手袋である場合に本発明の効果の享受が容易である。手袋の素材・厚み・等は、作業目的・手の動作条件等との関係から決めることができる。
【0021】
〈本発明の他の最良の形態〉:
なお、本発明には、他の多様な最良の形態が含まれる。以下にその一部を例示する。
(1)図15は、手袋の他の一具体的形態を示す説明図であって、中指の付け根から親指の付け根に直線を引いた領域が親指・人指し指・中指に囲まれる手のひら領域にされている。
(2)指部の面状接触部は、接触刺激の強度を指毎に変えることが可能で、親指の接触刺激の他の指のそれよりも強度を大きくすると、接触刺激感受による手の機能が向上する。
【0022】
なお、本発明においては、本発明の目的に沿うものであって、本発明の効果を特に害さない限りにおいては、改変あるいは部分的な変更及び付加は任意であって、いずれも本発明の範囲である。
本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、実施例は例示であって本発明を拘束するものではない。
【実施例】
【0023】
<実施例1>実験用手袋
被験者が装着使用する実験用の手袋A〜Eを同じゴム手袋から作成した。手袋Aは面状接触部を図1の配置で手袋に設けた。手袋Bは面状接触部を図16の配置で手袋に設けた。手袋Cは面状接触部を図1の指にのみ配設けた。手袋Dは面状接触部を親指〜小指の全指にのみ設けた。手袋Eは面状接触部を親指〜小指の全指と手のひら部全域に設けた。
面状接触部は、手袋を装着した手を図2の程度に湾曲させて、球体(対象物)をつかむ・つまむ・にぎるの把握動作での接触領域から設定領域が決められた。面状接触部は、屈曲自在のプラスチック弾性体で接触面が図8及び図9のような凹凸面であった。
【0024】
<実施例2>被験者
被験者は、50代及び60代の女性からなるグループから構成し、グループは測定値に対する個人間変動を小さくする構成員から編成した。被験者Xグループは、平均年齢が54.5歳の専業主婦10名から構成されて、構成員の殆どが平均年齢の2歳前後であった。被験者Yグループは、平均年齢が65.4歳の専業主婦10名から構成されて、殆どが平均年齢の2歳前後であった。被験者X及び被験者Yのグループは、身長・体重・体力・健康度及び日常生活行動ができるだけ似ていて、しかも、日常の作業内容もできるだけ似ている女性から構成された。
【0025】
<実施例3>調査項目及び調査方法
装着感、使用感及び快適性により体性感覚を調査し、かつ、手及び手首の疲労感及び機能性の維持・回復を逐次的に調査した。調査は、各調査項目について調査用紙を用意した。手及び手首の疲労感については、日本産業衛生学会産業疲労研究会の自覚疲労症状しらべ調査用紙等も参考にして手及び手首の疲労感用の調査用紙を作成した。
調査は、各調査項目毎に調査用紙を用意し、決めた時間を厳守して調査用紙の該当項目に丸印をして貰った。
【0026】
<実施例4>体性感覚の調査
手袋装着感、手袋使用感及び快適性から手袋の装着使用時の体性感覚を3週間の経時で調査した。表2が被験者Xグループの調査結果である。体性感覚の評価は、良好、変わらず、不満、不快、不良、不可にランク分けした。なお、表2の「良好―良好―良好」は、手袋装着感が良好、手袋使用感が良好、快適性が良好を意味している。「不満―不満―不良」は、手袋装着感が不満、手袋使用感が不満、快適性が不良を意味している。
【0027】
【表2】
【0028】
表3は、被験者Yグループの調査結果である。表内の表示は表2と同様である。
【0029】
【表3】
【0030】
<実施例5>疲労感の調査
手袋の装着使用時の手の疲労感を3週間の経時で調査した。表4が被験者Xグループの調査結果で、表5が被験者Yグループの調査結果である。なお、疲労感は、だるい、けだるい、疲労感、いたい、意欲低下、無変化により評価した。最も疲労感のある状態が「だるい」で、その反対が「無変化」である。
【0031】
【表4】
【0032】
【表5】
【0033】
<実施例6>手の機能の維持・回復の調査
手の機能の維持・回復を6ケ月にわたって追跡調査した。表6が被験者Xグループの調査結果で、表7が被験者Yグループの調査結果である。なお、手の機能の維持・回復は、手が軽い、楽である、うっとしくない、痛くない、意欲がある、無変化により評価した。手の機能が最も回復した状態が「手が軽い」で、その反対が「無変化」である。
【0034】
【表6】
【0035】
【表7】
【0036】
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の手袋によれば、手の能力が低下した年長者(特に、女性の年長者)であっても、作業が容易になって、手袋の継続使用によって手の動作能力の維持・向上が可能になって、手及び手首の疲労が軽減し、手袋の繰り返し使用によって、リハビリテーション効果に近似の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】手袋の一具体的形態を示す説明図である。
【図2】手袋により対象物を把持時間に、手の指部及び手のひら部での面状接触部に対応する配置を示す説明図である。
【図3】中間位の手を示す説明図である。
【図4】つかむの指の形を示す説明図である。
【図5】つまむの指の形を示す説明図である。
【図6】にぎるの指の形を示す説明図である。
【図7】かぎかたの指の形を示す説明図である。
【図8】面状接触部の接触面の横方向線状凹凸を示す説明図である。
【図9】図8に示す横方向線状の凹凸の説明図である。
【図10】面状接触部の接触面の点状凹凸を示す説明図である。
【図11】図10に示す点状の凹凸の説明図である。
【図12】面状接触部の接触面の斜め方向凹凸を示す説明図である。
【図13】図12の斜め方向の凹凸の説明図である。
【図14】面状接触部の側断面を示す説明図である。
【図15】手袋の他の一具体的形態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0039】
1 手袋
2 親指の面状接触部
3 人指し指の面状接触部
4 中指の面状接触部
5 手のひら部の面状接触部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
面状接触部が下記(A)の配置条件と下記(B)の特性条件で手袋に設けられていること、を特徴とする作業用手袋。
(A)面状接触部の配置条件
(1)手の中間位若しくはその近似の位置で手袋により同一対象物をつかむ・つまむ・にぎるの把握動作をする際に対象物と接触する手袋の親指・人指し指・中指の領域に配置される指部の面状接触部と、
(2)手袋の親指・人指し指・中指に囲まれる手のひら領域若しくはそれを含む領域に配置される手のひら部の面状接触部とからなる。
(B)面状接触部の特性条件
手袋の指部の面状接触部が、把握対象物との接触刺激を手に感受させる面又は/及び構造になっている。
【請求項2】
面状接触部が下記(A)の配置条件と下記(B)の特性条件で手袋に設けられていること、を特徴とする作業用手袋。
(イ)面状接触部の配置条件
(i)手の中間位若しくはその近似の位置で手袋により同一対象物をつかむ・つまむ・にぎるの把握動作する際に手袋の親指・人指し指・中指が対象物と接触する領域に配置される指部の面状接触部と、
(ii)手袋の親指の面状接触部と人指し指及び中指の面状接触部との間を連続する領域に配置される手のひら部の面状接触部とからなる。
(ロ)面状接触部の特性条件
指部の面状接触部及び手のひら部の面状接触部が把握対象物との接触刺激を手に感受させる面又は/及び構造になっている。
【請求項3】
下記(1)〜(8)の特徴の一つ若しくは複数を備えること、を特徴とする請求項1若しくは請求項2に記載の作業用手袋。
(1)前記手袋は、撥水性及び柔軟性の素材からなる。
(2)前記面状接触部の対象物との接触刺激を手に感受させる面は、表面形状の変化により接触刺激を感受させる面になっている。
(3)前記面状接触部は、取り付け・取り外し可能に手袋に配置されている。
(4)前記面状接触部は、対象物の把握により弾性変形可能な接触面になっている。
(5)前記作業用手袋は、一般的作業、医療若しくはスポーツに用いられる手袋からなる。
(6)前記面状接触部は、対象物との接触面が把握容易な形態になっている。
(7)前記面状接触部は、対象物の把握が容易な弾性及び形状の接触面にされている。
(8)前記指部の面状接触部は、親指の面状接触部が人指し指及び中指の面状接触部よりも、大きい接触刺激を手に感受させる面又は/及び構造になっている。
【請求項1】
面状接触部が下記(A)の配置条件と下記(B)の特性条件で手袋に設けられていること、を特徴とする作業用手袋。
(A)面状接触部の配置条件
(1)手の中間位若しくはその近似の位置で手袋により同一対象物をつかむ・つまむ・にぎるの把握動作をする際に対象物と接触する手袋の親指・人指し指・中指の領域に配置される指部の面状接触部と、
(2)手袋の親指・人指し指・中指に囲まれる手のひら領域若しくはそれを含む領域に配置される手のひら部の面状接触部とからなる。
(B)面状接触部の特性条件
手袋の指部の面状接触部が、把握対象物との接触刺激を手に感受させる面又は/及び構造になっている。
【請求項2】
面状接触部が下記(A)の配置条件と下記(B)の特性条件で手袋に設けられていること、を特徴とする作業用手袋。
(イ)面状接触部の配置条件
(i)手の中間位若しくはその近似の位置で手袋により同一対象物をつかむ・つまむ・にぎるの把握動作する際に手袋の親指・人指し指・中指が対象物と接触する領域に配置される指部の面状接触部と、
(ii)手袋の親指の面状接触部と人指し指及び中指の面状接触部との間を連続する領域に配置される手のひら部の面状接触部とからなる。
(ロ)面状接触部の特性条件
指部の面状接触部及び手のひら部の面状接触部が把握対象物との接触刺激を手に感受させる面又は/及び構造になっている。
【請求項3】
下記(1)〜(8)の特徴の一つ若しくは複数を備えること、を特徴とする請求項1若しくは請求項2に記載の作業用手袋。
(1)前記手袋は、撥水性及び柔軟性の素材からなる。
(2)前記面状接触部の対象物との接触刺激を手に感受させる面は、表面形状の変化により接触刺激を感受させる面になっている。
(3)前記面状接触部は、取り付け・取り外し可能に手袋に配置されている。
(4)前記面状接触部は、対象物の把握により弾性変形可能な接触面になっている。
(5)前記作業用手袋は、一般的作業、医療若しくはスポーツに用いられる手袋からなる。
(6)前記面状接触部は、対象物との接触面が把握容易な形態になっている。
(7)前記面状接触部は、対象物の把握が容易な弾性及び形状の接触面にされている。
(8)前記指部の面状接触部は、親指の面状接触部が人指し指及び中指の面状接触部よりも、大きい接触刺激を手に感受させる面又は/及び構造になっている。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2006−241619(P2006−241619A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−56967(P2005−56967)
【出願日】平成17年3月2日(2005.3.2)
【出願人】(501248921)株式会社黒沢総研 (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月2日(2005.3.2)
【出願人】(501248921)株式会社黒沢総研 (2)
【Fターム(参考)】
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