説明

作業車両の装置積載構造

【課題】一部のアクチュエータを電動化しながらも各種装置の劣化を低減することができる作業車両の装置積載構造を提供する。
【解決手段】エンジンEが設けられた走行体3と、走行体3に旋回自在に積載された旋回体5と、旋回体5を旋回させる電動モータ21と、エンジンEの駆動によって電力を発生させるとともに、この蓄えた電力を電動モータ21に供給する電力供給ユニット22〜24と、を備える。電力供給ユニット22〜24および電動モータ21は走行体3に積載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行体に旋回体が積載された作業車両の装置積載構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1,2に示されるように、走行体に旋回体が積載された作業車両が広く知られている。こうした作業車両においては、省エネ等の観点からエンジンの駆動によって電力を発生させるとともに、発生した電力によってアクチュエータを作動するものが普及しつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−328397号公報
【特許文献2】特開2000−289983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に示される作業車両においては、バッテリ等の電力供給ユニットが旋回体に設けられる一方で、この電力供給ユニットからの電力供給によって作動する電動アクチュエータが走行体に設けられている。また、これとは逆に、上記特許文献2に示される作業車両においては、電力供給ユニットが走行体に設けられる一方で、電動アクチュエータが旋回体に設けられている。
このように、電力供給ユニットと電動アクチュエータとが、走行体と旋回体とに別個に設けられることとなると、電動アクチュエータを駆動するための電力供給を、センタージョイントを介して行わなければならない。このとき、電動アクチュエータを駆動するためには大電流を供給する必要があるが、センタージョイントを介して大電流を供給しようとすると、センタージョイントの回転子の接点が消耗して劣化しやすくなってしまうという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、一部のアクチュエータを電動化しながらも各種装置の劣化を低減することができる作業車両の装置積載構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、エンジンが設けられた走行体と、前記走行体に旋回自在に積載された旋回体と、前記旋回体を旋回させる電動モータと、前記エンジンの駆動によって電力を発生させるとともに、この蓄えた電力を前記電動モータに供給する電力供給ユニットと、を備え、前記電力供給ユニットおよび電動モータは前記走行体に積載されていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、前記旋回体に設けられた作業用アクチュエータと、前記走行体に設けられ、前記エンジンの駆動によって作動油を吐出する油圧ポンプと、前記油圧ポンプから吐出された作動油を前記走行体側から旋回体側へ導くセンタージョイントと、をさらに備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、エンジン、電力供給ユニットおよび電動モータが全て走行体に設けられているので、走行体と旋回体との間で、モータを駆動するための大電流を流す必要がなくなる。これにより、一部のアクチュエータを電動化しながらも、大電流によって各種装置が劣化するおそれを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態のラフテレーンクレーンを示す斜視図である。
【図2】油圧回路および電気回路を概念的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1および図2を用いて、本発明をラフテレーンクレーンに適用した場合の実施形態について説明する。
図1に示すラフテレーンクレーン1は、車輪2を有する走行体3と、この走行体3に旋回機構4を介して旋回自在に設けられた旋回体5とによって構成されている。旋回体5には、車両の走行操作や作業に係る操作を行うキャビン6が設けられている。
上記の走行体3および旋回体5には、それぞれ種々の作業機械が設けられている。具体的には、走行体3には、車両の前方および後方のそれぞれに、アウトリガ7が格納および張り出し可能に設けられている。また、旋回体5には、起伏動作および伸縮動作が可能なブーム8と、このブーム8の先端から垂下するワイヤを繰り入れまたは繰り出しするウインチ9とが設けられている。
【0011】
次に、図2を用いて、作業機械を作動するための各種装置の積載構造について説明する。
図2に示すように、走行体3には、走行用のエンジンEが設けられている。このエンジンEには、メインポンプP1およびサブポンプP2が連結されており、エンジンEの出力によって両ポンプP1,P2が駆動するようになっている。
【0012】
メインポンプP1には下部メイン通路10aが接続されており、サブポンプP2には下部サブ通路11aが接続されている。これら両通路10a,11aは、旋回機構4の回転軸中心に設けられたセンタージョイント12に接続されている。また、旋回体5には、上部メイン通路10bおよび上部サブ通路11bが設けられている。これら両通路10b,11bもセンタージョイント12に接続されており、センタージョイント12を介してメイン通路10a,10bが互いに接続され、サブ通路11a,11bが互いに接続されるようになっている。
【0013】
上部メイン通路10bには、コントロールバルブCVを介して、旋回体5に設けられた各種の作業機械を作動するための作業用アクチュエータが接続されている。具体的には、上記ブーム8を伸縮させるブーム伸縮用シリンダ13、ブーム8を起伏させる起伏用シリンダ14および上記ウインチ9を作動する油圧モータ15が接続されている。
また、下部メイン通路10aには、アウトリガ用コントロールバルブCVが接続されている。このアウトリガ用コントロールバルブCVは、走行体3に設けられた上記アウトリガ7を格納または張り出しするアウトリガ用シリンダ17への作動油の給排を制御するものである。
【0014】
また、上部サブ通路11bにはステアリング18が接続されるとともに、このステアリング18と、走行体3に設けられたステアリング用シリンダ30とが、ステアリング通路31を介して接続されている。これにより、ステアリング18の操作によって、サブポンプP2からステアリング用シリンダ30への作動油の給排が制御されることとなる。
このように、走行体3と旋回体5との間においては、センタージョイント12を介して種々の油圧配管が接続されており、これによって、両ポンプP1,P2から吐出された作動油によって、各種のアクチュエータが作動するようになっている。
【0015】
なお、本実施形態のセンタージョイント12は、油圧配管の接続機能に加えて、信号回線の接続機能をも有している。すなわち、上記キャビン6には、走行操作や各種の作業に係る操作を受け付ける操作部19が設けられている。この操作部19が操作を受け付けると、操作信号がコントローラCに入力する。コントローラCは、入力した操作信号に基づいて、コントロールバルブCV等を切り換え制御したり、エンジンEを駆動または駆動停止したりする。そこで、コントローラCと各種装置とが信号回線20で接続されることとなるが、この信号回線20も上記の各油圧配管と同様に、センタージョイント12を介して走行体3と旋回体5との間で接続されることとなる。
【0016】
そして、本実施形態においては、旋回体5(旋回機構4)を旋回させる作業用アクチュエータとして旋回用電動モータ21が設けられている。この旋回用電動モータ21は、走行体3に積載されており、その出力軸21aが不図示の減速装置を介して旋回機構4に連結されている。この旋回用電動モータ21は、インバータ22を介してバッテリ23から供給される電力によって駆動するものであるが、このバッテリ23には、エンジンEの出力によって充電がなされるようになっている。
具体的には、エンジンEに連結されたサブポンプP2にはオルタネーター24が接続可能となっており、エンジンEの出力によって発電された電力がバッテリ23に充電されるようになっている。
【0017】
そして、インバータ22は、信号回線20を介してコントローラCに接続されており、コントローラCから制御信号が入力することにより、バッテリ23から旋回用電動モータ21への電力供給を許容する。このようにしてバッテリ23から旋回用電動モータ21に電力が供給されることにより、旋回用電動モータ21が駆動して旋回機構4および旋回体5が旋回することとなる。
【0018】
このとき、旋回用電動モータ21には大きな出力が要求されるため、バッテリ23から旋回用電動モータ21に流れる電流も大きくなる。本実施形態においては、インバータ22、バッテリ23およびオルタネーター24からなる電力供給ユニットと、旋回用電動モータ21とがいずれも走行体3に積載されている。これにより、センタージョイント12を介することなく、バッテリ23から旋回用電動モータ21に電流を流すことが可能となり、大電流によるセンタージョイント12の劣化を防止するばかりか、センタージョイント12の配管や配線の構造を簡素化することができる。
【0019】
なお、本実施形態においては、本発明をラフテレーンクレーンに適用した場合について説明したが、本発明はラフテレーンクレーンに限らず、走行体と旋回体とを有する作業車両に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0020】
3 走行体
4 旋回機構
5 旋回体
12 センタージョイント
19 操作部
21 旋回用電動モータ
22 インバータ
23 バッテリ
24 オルタネーター
E エンジン
P1 メインポンプ
P2 サブポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンが設けられた走行体と、
前記走行体に旋回自在に積載された旋回体と、
前記旋回体を旋回させる電動モータと、
前記エンジンの駆動によって電力を発生させるとともに、この蓄えた電力を前記電動モータに供給する電力供給ユニットと、を備え、
前記電力供給ユニットおよび電動モータは前記走行体に積載されていることを特徴とする作業車両の装置積載構造。
【請求項2】
前記旋回体に設けられた操作部と、
前記走行体に設けられ、前記エンジンの駆動によって作動油を吐出する油圧ポンプと、
前記油圧ポンプから吐出された作動油および前記操作部から出力される操作信号を前記走行体側と旋回体側との間で往来させるセンタージョイントと、をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の作業車両の装置積載構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−126473(P2012−126473A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277351(P2010−277351)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(000148759)株式会社タダノ (419)