説明

作業車両

【課題】原動部を覆う左右のサイドカバー及びフロントグリルを、車体側に設置された固定部材側に取付固定した作業車両において、サイドカバー及びフロントグリルの設置作業の手間が軽減されるとともに、部品点数の減少を容易に抑えることが可能な作業車両を提供する。
【解決手段】エンジン8及びラジエータ9を有する原動部11を、上方側のボンネットフード6と、左右のサイドカバー4と、前方のフロントグリル3によって覆い、該左右のサイドカバー4及びフロントグリル3を、車体側に設置された固定部材17側に取付固定した作業車両であって、固定具18によって、サイドカバー4の取付部33及びフロントグリル3の取付部38を固定部材17側に共締めする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エンジン及びラジエータを有する原動部を、上方側のボンネットフードと、左右のサイドカバーと、前方のフロントグリルによって覆った作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン及びラジエータを有する原動部を、上方側のボンネットフードと、左右のサイドカバーと、前方のフロントグリルによって覆い、該左右のサイドカバー及びフロントグリルを、車体側に設置された固定部材側に取付固定した特許文献1に示す作業車両が公知になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−253741号公報(第4−8図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記文献の作業車両は、サイドカバーの取付部と、フロントグリルの取付部とが、固定具によって各別に固定部材側に取付固定されるため、サイドカバーとフロントグリルは、互いの位置を微調整する位置決め調整が必要になる他、固定具が各別に必要になるため、部品点数が増加してコストを低く抑えることが難しくなる。
【0005】
本発明は、原動部を覆う左右のサイドカバー及びフロントグリルを、車体側に設置された固定部材側に取付固定した作業車両において、サイドカバー及びフロントグリルの設置作業の手間が軽減されるとともに、部品点数の増加を容易に抑えることが可能な作業車両を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、第1に、エンジン8及びラジエータ9を有する原動部11を、上方側のボンネットフード6と、左右のサイドカバー4,4と、前方のフロントグリル3によって覆い、該左右のサイドカバー4,4及びフロントグリル3を、車体側に設置された固定部材17側に取付固定した作業車両であって、固定具18によって、サイドカバー4の取付部33及びフロントグリル3の取付部38を固定部材17側に共締めしたことを特徴としている。
【0007】
第2に、前記固定具18を緩めて固定部材17側からフロントグリル3の取付部33を離脱可能なように、該取付部33に後方が開放された切欠き状部33aを形成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
上記構成によれば、フロントグリル及びサイドカバーの両部材は、共締めによりまとめて位置決め固定されるので、互いの位置決め調整を行う手間が省けるとともに、フロントグリルの取付部及びサイドカバーの取付部を固定部材に取付固定する固定具を個別に用意する必要が無いため、部品点数を減少させてコストを低く抑えることが可能になる。
【0009】
また、前記固定具を緩めて固定部材側からフロントグリルの取付部を離脱可能なように、該取付部に後方が開放された切欠き状部を形成すれば、固定具を緩めることのみにより、フロントグリルを、固定部材側から取外すことが可能であるため、利便性も高い。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の作業車両を適用した農業用トラクタの前部側の構成を示す斜視図であり、(A)はボンネットフードを閉めた状態を示し、(B)はボンネットフードを開けた状態を示している。
【図2】トラクタ前部の分解斜視図である。
【図3】トラクタ前部の分解側面図である。
【図4】図3からフロントグリル及びサイドカバーを省いた状態を示す側面図である。
【図5】(A)はフロントグリル及びサイドカバーの側面図であり、(B)は(A)の要部側面図である。
【図6】(A),(B)は、図1(B)の要部斜視図及び要部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の作業車両を適用した農業用トラクタの前部側の構成を示す斜視図であり、(A)はボンネットフードを閉めた状態を示し、(B)はボンネットフードを開けた状態を示している。図示するトラクタは、図示しない4つの車輪を有する走行機体1と、該走行機体1の後部に昇降自在に連結されたロータリ耕耘装置等の作業機(図示しない)とを備え、圃場において、走行機体1を前進走行させながら、作業機によって、耕耘作業等の各種作業を行う。
【0012】
走行機体1は、前後方向に延びる金属製の車台2を備え、前方を金属製のフロントグリル3、左右側方を金属製のサイドカバー4,4、上方を金属製のボンネットフード(ボンネット)6によってそれぞれ覆ったエンジンルーム7を、車台2上の前半部に形成し、エンジン8及びラジエータ9からなる原動部11を該エンジンルーム7内に収容し、車台2上におけるエンジンルーム7の後方位置にオペレータが乗込む操縦部12を設置している。ボンネットフード6は、後端部を支点に上下揺動自在に走行機体1に取付支持されており、このボンネットフード6の上下揺動によって、エンジンルーム7の上方側か開閉される。
【0013】
図2,3は、トラクタ前部の分解斜視図及び分解側面図であり、図4は、図3からフロントグリル及びサイドカバーを省いた状態を示す側面図である。車台2は、前後方向に形成された左右一対の縦フレーム13,13と、左右の縦フレーム13,13の前端部に溶接等で取付固定された単一の左右方向のバンパー14と、バンパー14後方に位置して左右の縦フレーム13,13の前部の間に載置状態で架設固定された水平板状の支持台(支持部材)16とを備えている。
【0014】
エンジン8は、平面視支持台14の後方に配置され、該エンジン8の真正面側近傍には、正面視方形状をなして前後長が短い直方体状のラジエータ9が位置しており、このラジエータ9の真正面側近傍には、支持台16の後端部から上方側に延出された固定部材17が配置されている。この固定部材17に、左右方向のノブ付ボルト(固定具)18を介して、サイドカバー4及びフロントグリル3が共締め固定されるとともに、ラジエータ9が連結固定される他、該固定部材17の上面側に閉状態のボンネットフード6の下面側が受止められるが、詳細は後述する。
【0015】
走行機体1の前進走行中、前後方向に通気性を有する前記フロントグリル3を介して、エンジンルーム7内に導入されたエアは、エンジン動力によって駆動される図示しない冷却ファン等によって、ラジエータ9の図示しないコア部側に吸気され、ラジエータ9内を流れる冷却水を冷却した後、サイドカバー4に穿設された多数の通気孔4a等からエンジンルーム7外に排気される。ちなみに、ラジエータ9側で冷却された冷却水は、エンジン8に戻され、該エンジン8を冷却した後、再びエジエータ9側に送られ、このサイクルが繰返される。
【0016】
最初に、図2乃至4に基づき、固定部材17の構成について説明する。
固定部材17は、上下方向の延びる左右一対の縦プレート19,19と、左右の縦プレート19,19の上端部間に架設固定される左右方向の横プレート21とを備え、これによって、固定部材17の全体形状は、正面視ゲート状に成形されている。
【0017】
各縦プレート19は、厚み方向が左右方向を向くように姿勢が定められ、横プレート21は厚み方向が上下方向を向くように姿勢が定められており、各縦フレーム19は、その下部が下方向かって左右内側に傾斜するように屈曲され、さらに下方側の下端部が鉛直方向を向くように、左右外側に屈曲されている。このため、左右の縦プレート19,19間の距離は、下部に対して上部及び中途部が長く設定されている。この他、左右一方側(図示する例では右側)の縦プレート19の下端は、支持台16の上面に溶接等で溶着固定され、他方側の縦プレート19の下端部は、支持台16を貫通して縦フレーム13側に臨んでおり、この他方側の縦フレーム19の下端部を、該縦フレーム13にボルト固定している。
【0018】
このようにして、車体側に高い強度で取付固定された起立状態の固定部材17の上面側(具体的には、横プレート21の上面側)には、ボンネットフード6を受止めてロックするロック機構22と、左右のサイドカバー4,4及びフロントグリル3が取付けられるように側面視方形状をなすプレート状の左右一対の被取付部23,23とが設けられている。左右の被取付部23,23は、左右の縦プレート19,19の上端部を横プレート21に挿通して上方突出することにより、構成してもよいし、或いは、縦プレート19とは別体で、左右一対の板状部材を横フレーム21の上面側に溶接等することにより形成してもよいが、図示する例では、前者の手段によって、各被取付部23を形成している。
【0019】
左右の被取付部23,23の間に固設されるロック機構22は、固定部材17にボルト固定される側面視L字状のロック側ブラケット24と、ロック側ブラケット24の前面側に左右回動自在に支持された正面視フック状をなすロック部材26とを備えている。ロック部材26は、フック状部分がロック側ブラケットに近づくように、引張スプリング等の弾性部材27によって、弾性的に付勢されている。
【0020】
開状態のボンネットフード6を下方揺動させると、ボンネットフード6下面側に設けられた図示しないストライカが、ロック部材26の上端側に形成された傾斜部26aに接当し、上記弾性部材27の弾性力に抗して、ロック側ブラケット24からフック状部分が遠ざかる側に前記ロック部材26を回動作動させる。
【0021】
続いて、ボンネットフード6をさらに下方位置に揺動させると、ストライカが、正面視で、ロック側ブラケット24と、ロック部材26との間のスペースに落込むことにより、傾斜部26aとストライカとの当接が解除され、弾性部材27の弾性力によって、ロック部材26のフック状部分がロック側ブラケット24に近づくように、該ロック部材26が回動作動され、これによって、ストライカが、ロック部材26のフック状部分に係止され、上方側への移動が規制された状態になり、これによって、ボンネットフード6が閉状態でロックされる。
【0022】
一方、ボンネットフード6が閉状態でロックされている際に、ワイヤ等の連係機構28によって、ロック部材26のフック状部分がロック側ブラケット24から遠ざかるように、該ロック部材26を回動操作すると、ロックが解除され、ボンネットフード6を上方揺動させることが可能になり、これによって、ボンネットフード6を開状態とすることができる。
【0023】
また、ラジエータ9の左右両側部は、前後方向に延びるプレート状の取付ブラケット29によって、固定部材17の左右の側面にそれぞれ取付固定されている。ラジエータ9及び固定部材17の左右両端側にそれぞれ配置される左右の各取付ブラケット29は、ラジエータ9よりも左右幅が狭い固定部材17に対応して、その前後中途部が、左右内側に曲げ形成される。そして、取付ブラケット29の後端部をラジエータ9の枠体9a側面にボルト固定する一方で、前端部を固定部材17の縦プレート19の外側面にボルト固定することにより、ラジエータ9の側部が、固定部材17の側部に連結固定される。
【0024】
ラジエータ9の正面と、固定部材17の後端との間に形成された隙間には、左右の取付ブラケットの間に位置し且つ正面視方形状をなす板状の防塵ネット31が挿入される。このようにして、防塵ネット31は、ラジエータ9の正面側近傍に位置決め固定され、エジエータ9のコア部等への埃等の侵入を防止する。
【0025】
次に、図2乃至6に基づき、フロントグリル3及び左右のサイドカバー4,4の構成について説明する。
図5(A)はフロントグリル及びサイドカバーの側面図であり、(B)は(A)の要部側面図であり、図6(A),(B)は、図1(B)の要部斜視図及び要部平面図である。フロントグリル3及びサイドカバー4は、車体側の前記支持台16上に係止状態で載置支持されるとともに固定部材17側に取付固定される。
【0026】
上記左右の各サイドカバー4は、側面視前後方向に長い方形状をなすプレート状部材であって、正面視外側方に向かって円弧状に膨出した形状を有している。このサイドカバー4における前後方向に延びる上縁部全体と、上下方向に延びる前縁部全体とは、それぞれ他の部分に比べて左右内側に位置する段差部4b,4cとなっている。
【0027】
サイドカバー4の段差部4cを構成する前縁部内側面の下端側には、側面視上下方向に長い方向状をなす金属製の係止片(係止部)32が、下方に突出した状態で、一体的に設けられる一方で、サイドカバー4の内側面の上端部には、該サイドカバー4から前方側に突出する金属製の取付具(取付部)33が一体的に取付固定されている。この他、サイドカバー4の内側面の後端部には、上下一対の金属製の係止具34が設置されている。
【0028】
係止片32は、下方に向かって左右内側に傾斜形成され、その下端部が鉛直方向に延びている。取付具33は、サイドカバー4の内側面に固定される基端部に対して先端部が前方且つ左右内側に位置するように、中途部の複数個所が曲げ形成されており、この取付具33の先端部は、側面視方形状に形成さている。係止具34は、側面視前後方向に長い方形状プレートの後部を左右内側に屈曲させることによりことにより平面視L字状に形成されており、該係止具34の屈曲された部分に被係止孔34aが穿設されている。
【0029】
これらの係止片32、取付具33及び係止具34は、それぞれ、自身を局部的に窪ませることにより形成される一又は複数の凸部P1を、サイドカバー4に形成された凹状又は孔状の挿入部P2に、挿入又は挿通することにより、位置決めし、該箇所をスポット溶接することによって、サイドカバー4に一体的に取付固定される。
【0030】
そして、エンジンルーム7の後壁から前方側に一体的に突出形成された複数の各係止棒36が、対応する各係止具34の被係止孔34aに挿通されるようにして、左右の各サイドカバー4の係止片32下端部を、支持台16後端部の左右にそれぞれ穿設されたサイドカバー側係止孔(係止部)16a,16aに挿入又は挿通させ、左右の各サイドカバー4を、支持台16上に位置決め載置すると、左右の各サイドカバー4の各取付具33の先端部が、近い側の前記被取付部23の側面(さらに具体的には外側面)近傍に位置した状態になる。
【0031】
上記フロントグリル3は、平面視後方が開放されたU字状に湾曲成形され、このフロントグリル3の正面側等には、メッシュ状部3a(図1参照)が形成され、前後方向の通気性が確保される他、フロントグリル3の左右両側部には、前方を照らす作業灯37(図1参照)がそれぞれ設置される。このフロントグリル3の上端部には金属製の取付具(取付部)38が左右一対で固設されるとともに、フロントグリル3の下端面は、支持台16の上面に沿うフラットな被支持側面3bとなり、該被支持側面3bは、フロントグリル3の平面視形状に沿うように、底面視後方が開放されたU字状に形成されている。
【0032】
左右の各取付具38は、上方斜め後方に延びる前部及び中途部に対して、後部が下方に折れ曲がって真後ろ方向に延出されており、この取付具38の後端部には、後方が開放された切欠き状部38aが形成されている。
【0033】
また、被支持側面3bには、上下方向の複数の突起部39が下方に向かって一体的に突出形成されている。具体的には、被支持側面3bにおける前側位置となる左右方向中央部に、上記突起部39が左右一対で設けられているとともに、被支持側面3bの左右の後端部にも、上記突起部39がそれぞれ設けられている。
【0034】
この複数の突起部39を、それぞれ支持台16に穿設された複数のフロントグリル側係止孔(係止部)16bに、挿入又は挿通(図示する例では挿通)させ、該フロントグリル3を係止状態で位置決め載置すると、フロントグリル3の各取付具38の後端部が、近い側の前記被取付部23の側面(さらに具体的には外側面)近傍に位置した状態になる。
【0035】
この際、フロントグリル3の左右の各取付具38は、近い側のサイドカバー4の取付具33と、近い側の被取付部23との間に位置させ、このフロントグリル3の取付具38と、サイドカバー4の取付具33とを、ナット41及び上述した左右方向のノブ付ボルト18によって、共締め状態で、締着固定させる。
【0036】
以上のようにして、固定部材17に共締めされた状態では、左右のサイドカバー4,4の前縁部が、フロントグリル3における左右の後端部内側面にそれぞれ差込まれるため、係止片32を含めた各サイドカバー4の前縁部外側面側は、フロントグリル3の後端部にカバーされて保護される。また、これによって、フロントグリル3の左右の側面と、左右のサイドカバー4,4の外側面とは、一体的に連接される。
【0037】
これに加えて、ボンネットフード6が閉塞されると、左右のサイドカバー4,4の上縁部が、ボンネットフード6の下端部内面側に位置し、これによって、各サイドカバー4の上縁部の外側面が、ボンネットフード6によってカバー保護される。また、これによって、ボンネットフード6の左右の側部と、左右のサイドカバー4,4の外側面とが一体的に連接される。
【0038】
一方、フロントグリル3とサイドカバー4の共締め固定時、フロントグリル3側では、後方が開放した切欠き状部38aに、ノブ付ボルト18が挿通されるので、左右の各ノブ付ボルト18を緩めて、フロントグリル3を前方側に移動又は傾斜させれば、ノブ付ボルト18を被取付部23から取外すこと無く、フロントグリル3の左右の取付具38,38を、固定部材17側(さらに具体的には左右の被取付部23,23及びノブ付ボルト18,18)から取外す(離脱させる)ことが可能になるため、着脱作業の手間が軽減される。
【符号の説明】
【0039】
3 フロントグリル
4 サイドカバー
6 ボンネットフード(ボンネット)
8 エンジン
9 ラジエータ
11 原動部
17 固定部材
18 ノブ付ボルト(固定具,ボルト)
33 取付具(取付部)
33a 切欠き状部
38 取付具(取付部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(8)及びラジエータ(9)を有する原動部(11)を、上方側のボンネットフード(6)と、左右のサイドカバー(4),(4)と、前方のフロントグリル(3)によって覆い、該左右のサイドカバー(4),(4)及びフロントグリル(3)を、車体側に設置された固定部材(17)側に取付固定した作業車両であって、固定具(18)によって、サイドカバー(4)の取付部(33)及びフロントグリル(3)の取付部(38)を固定部材(17)側に共締めした作業車両。
【請求項2】
前記固定具(18)を緩めて固定部材(17)側からフロントグリル(3)の取付部(33)を離脱可能なように、該取付部(33)に後方が開放された切欠き状部(33a)を形成した請求項1に記載の作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−140096(P2012−140096A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−294577(P2010−294577)
【出願日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)