作業車両
【課題】走行電力供給システムの一部に異常が発生した場合にも、走行動作を継続可能な作業車両を提供すること。
【解決手段】蓄電装置11と、インバータ装置7,10と、インバータ装置7,10が接続された回路の電圧を変換するコンバータ装置12と、インバータ装置7からの交流電流によって油圧ポンプ4を駆動する発電電動機6と、インバータ装置10からの交流電流によって車輪61を駆動する電動機9と、インバータ装置7,10を制御するための制御装置200とを備え、制御装置200において、電動機9に電流を供給するために必要な装置に異常が発生したときには、当該異常が発生した装置が異常発生前に実行していた処理に相当する他の処理を他の正常な装置で実行することで電動機9を駆動する。
【解決手段】蓄電装置11と、インバータ装置7,10と、インバータ装置7,10が接続された回路の電圧を変換するコンバータ装置12と、インバータ装置7からの交流電流によって油圧ポンプ4を駆動する発電電動機6と、インバータ装置10からの交流電流によって車輪61を駆動する電動機9と、インバータ装置7,10を制御するための制御装置200とを備え、制御装置200において、電動機9に電流を供給するために必要な装置に異常が発生したときには、当該異常が発生した装置が異常発生前に実行していた処理に相当する他の処理を他の正常な装置で実行することで電動機9を駆動する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は動力源としてエンジン及び蓄電装置を備えるハイブリッド式の作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題、原油価格高騰などの点から、各工業製品に対して省エネ志向が強まっている。これまでディーゼルエンジンによる油圧駆動システムが中心であった建設車両、作業用車両等の分野においても、その傾向にあり、電動化による高効率化、省エネルギー化の事例が増加してきている。例えば、前述の建設車両や作業用車両の駆動部分を電動化、すなわち駆動源を電動機(電気モータ)にした場合、排気ガスの低減のほか、エンジンの高効率駆動(ハイブリッド機種の場合)、動力伝達効率の向上、回生電力の回収など多くの省エネルギー効果が期待できる。このような建設車両・作業用車両分野では、フォークリフトの電動化が最も進んでおり、バッテリの電力を用いてモータを駆動する、いわゆる「バッテリーフォークリフト」が他車両に先駆けて実用化されており、小型フォークリフトを中心にかなり普及している。また最近では、これに引き続いて、油圧ショベル、エンジン式フォークリフトなどにおいて、ディーゼルエンジンと電気モータを組み合わせた「ハイブリッド車両」が製品化され始めている。
【0003】
ところで、上記のように電動化による環境対応・省エネルギー化が進む建設車両・作業用車両の中で、ハイブリッド化した場合に比較的大きな燃費低減効果が見込まれる車両としてホイールローダがある。従来のホイールローダは、例えば、トルクコンバータ(トルコン)およびトランスミッション(T/M)を介してエンジンの動力を車輪に伝えて走行を行いながら、車両前方に取り付けられた作業装置のバケット部分で土砂等を掘削・運搬する作業用車両である。このようなホイールローダの走行駆動部分を電動化すると、トルコン及びトランスミッション部分における動力伝達効率を電気による動力伝達効率まで向上させることが可能となる。さらにホイールローダでは、作業中、頻繁に発進・停止の走行動作を繰り返すため、走行駆動部分を電動化した場合には、走行用の電動機から制動時の回生電力回収が見込める。
【0004】
ハイブリッド式のホイールローダとしては、走行部分を電動化した構成、すなわち、シリーズ型ハイブリッドシステムがある。この種のシステムでは走行部を完全に電動化しているため、当該走行部の駆動源である走行用電動機に電力を供給するためのシステム(走行電力供給システム)の一部に故障等の異常が発生した場合には、その後の走行動作が実施できなくなるおそれがある。ホイールローダなどの車輪を有する作業車両は公道を走行する場合や作業現場内を走りまわる場合があり、故障により走行不能となった際には、その場で立ち往生することも考えられる。そこで、走行電力供給システムの一部に異常が発生した場合でも、車両の走行動作を継続可能とする機能が求められる。
【0005】
このような故障時の非常運転方法については、例えば特開2010−133235号公報に示されたものがある。この技術によれば、ショベルなどのハイブリッド型建設機械において、発電電動機(M/G)または電動作業要素(旋回モータ等)の制御系の異常が検出された場合に、昇降圧コンバータ(DCDCコンバータ)によるDCバスの昇降圧制御を継続するとの記載がある。これにより、電動発電機(M/G)または電動作業要素の制御系が故障した場合においても正常な蓄電系を利用した駆動の継続が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−133235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記技術では、発電電動機または電動作業要素の制御系に異常が発生した場合において、正常な蓄電系の電力により電動作業部の駆動を継続するため、図3の蓄電装置がバッテリに比べ容量の小さいキャパシタであった場合や、発電系とは反対に蓄電系側が故障した場合では、車両を動作させることが困難となる可能性が考えられる。
【0008】
そこで、本発明の目的は、走行駆動部を電動化した作業車両において、走行電力供給システムの一部に異常が発生した場合にも、走行動作を継続できる作業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、エンジンと、前記エンジンによって駆動され、油圧アクチュエータを駆動するための油圧ポンプと、直流電力を蓄えるための蓄電装置と、直流電流と交流電流の変換を行う第1及び第2インバータ装置と、前記第1及び第2インバータ装置が接続された回路の電圧を変換するコンバータ装置と、前記第1インバータ装置からの交流電流によって前記油圧ポンプの駆動トルクを発生する発電電動機と、前記第2インバータ装置からの交流電流によって車両の駆動トルクを発生する電動機と、前記第1及び第2インバータ装置を制御するための制御装置とを備え、前記制御装置は、前記回路に接続され前記電動機に電流を供給するために必要な各種装置に異常が発生したときには、当該異常が発生した装置が異常発生前に実行していた処理と同一又は当該処理に相当する他の処理を他の正常な装置で実行することで、前記第2インバータ装置を介して前記電動機を駆動するものとする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、走行部を電動化した作業車両において、走行電力供給システムに異常が発生した場合にも、その場に立ち往生することなく支障の無い場所に走行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係るハイブリッド式ホイールローダのシステム構成図。
【図2】従来のホイールローダの代表的な構成例を示す図。
【図3】本発明の実施の形態に係る走行電力供給システムの構成図。
【図4】本発明の実施の形態に係る制御装置200の構成図。
【図5】本発明の実施の形態に係る非常運転管理部30の構成を示す図。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係るインバータ制御装置23で実行されるインバータ装置7(発電電動機6)の制御処理に係るブロック図。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係るインバータ制御装置23で実行されるインバータ装置10(走行用電動機9)の制御処理に係るブロック図。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係るホイールローダにおいて第1駆動方式から第2駆動方式に移行する際に実行される処理のフローチャート。
【図9】本発明の第1の実施の形態の変形例に係るホイールローダにおいて第1駆動方式から第2駆動方式に移行する際に実行される処理のフローチャート。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係るコンバータ制御装置24で実行されるDCDCコンバータ装置12の制御処理に係るブロック図。
【図11】本発明の第2の実施の形態に係るホイールローダにおいて第1駆動方式から第2駆動方式に移行する際に実行される処理のフローチャート。
【図12】本発明の第1の実施の形態の他の変形例に係るホイールローダにおいて第1駆動方式から第2駆動方式に移行する際に実行される処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。図1は本発明の実施の形態に係るハイブリッド式ホイールローダのシステム構成図である。
【0013】
この図に示すホイールローダは、バケット及びリフトアーム(図示せず)を有し車体前方に取り付けられた作業装置50と、ディーゼルエンジン(内燃機関)1と、エンジン1によって駆動され、油圧アクチュエータ(バケットシリンダ51、リフトシリンダ52及びステアリングシリンダ53)を駆動するための油圧ポンプ4と、油圧ポンプ4から油圧アクチュエータ51,52,53に供給される圧油を制御するためのコントロールバルブ55と、直流電力を蓄えるための蓄電装置11と、直流電流と交流電流の変換を行うためのインバータ装置7,11と、インバータ装置7,11が接続された電気回路の電圧(インバータ装置7,11間のDCバス電圧)を変換するためのDCDCコンバータ装置12と、インバータ装置7からの交流電流によって油圧ポンプ4の駆動トルクを発生してエンジン1をアシストする発電電動機(モータ/ジェネレータ(M/G))6と、インバータ装置11からの交流電流によって車両(走行体60)の駆動トルクを発生する走行用電動機9と、油圧アクチュエータ51,52,53を駆動するための操作信号を操作量に応じて出力する操作装置(操作レバー56及びステアリングホイール(図示せず))と、インバータ装置7,11及びコンバータ装置12等を制御するための制御装置200を備えている。
【0014】
発電電動機6は、さらにエンジン1と接続されており、エンジン1によって駆動されることで発電機としても動作する。発電電動機6によって発生された電力は、走行用電動機6に供給されたり、蓄電装置11に蓄えられたりする。発電電動機6の力行運転(エンジンアシスト)と発電運転の切り換えは、制御装置200においてエンジン1の負荷に応じて行われる。
【0015】
走行体60は、ディファレンシャルギア(Dif)及びファイナルギア(G)を介してプロペラシャフト8に適宜取り付けられた4つの車輪61を有しており、プロペラシャフト8の軸上に取り付けられた走行用電動機9の駆動トルクによって各車輪61が回転駆動される。
【0016】
バケットシリンダ51及びリフトシリンダ52は、キャブ内に設置された操作レバー56の操作量に応じて出力される操作信号(油圧信号)に基づいて駆動される。リフトシリンダ52は、車体前方に回動可能に固定されたリフトアームに取り付けられており、操作レバー56からの操作信号に基づいて伸縮してリフトアームを上下に回動させる。バケットシリンダ51は、リフトアームの先端に回動可能に固定されたバケットに取り付けられており、操作レバー56からの操作信号に基づいて伸縮してバケットを上下に回動させる。ステアリングシリンダ53は、キャブ内に設置されたステアリングホイール(図示せず)の操舵量に応じて出力される操作信号(油圧信号)に基づいて駆動される。ステアリングシリンダ53は、各車輪61に連結されており、ステアリングホイールからの操作信号に基づいて伸縮して車輪61の舵角を変更する。
【0017】
蓄電装置11はDCDCコンバータ装置12を介してインバータ装置7,10と電気的に接続されており、インバータ装置7,10の間で直流電力の収受を行う構成となっている。なお、蓄電装置11は、比較的大電力の出し入れが高速に実施できるものであれば特に種類は限定されないが、リチウム電池等の二次電池又は大容量電気二重層キャパシタを用いることが好適である。そこで、ここでは、蓄電装置11は大容量電気二重層キャパシタであるものとして説明する。
【0018】
上記のように構成されるハイブリッドホイールローダでは、土砂などの掘削作業を行うための作業装置50に油圧ポンプ4によって適宜油圧を供給することで目的に応じた作業を実施する。また、走行体60の走行動作は、蓄電装置11とDCDCコンバータ装置12によってシステム電圧(各インバータ間7,10のDCバス電圧)を所定の値に制御しながら、主にエンジン1で発電電動機6を駆動し、これによって発電された電力で走行用電動機9を駆動することにより行う。その際、蓄電装置11では、車両制動時に走行用電動機9が発生する回生電力を吸収したり、発電電動機6又は走行用電動機9に蓄電電力を供給することでエンジン1に対する出力アシストを行ったりすることで、車両の消費エネルギー低減に寄与する。
【0019】
なお、本発明が対象とするハイブリッドシステムは、図1の構成例に限られるものではなく、走行部パラレル型等の多様なシステム構成にも適用可能である。
【0020】
図2は従来のホイールローダの代表的な構成例を示す図である。なお、先の図と同じ部分には同じ符号を付して説明は省略する(後の図も同様とする)。この図に示した従来のホイールローダは、主な駆動部として走行体60と作業装置50(リフト/バケット部分)を備えており、トルクコンバータ(トルコン)2およびトランスミッション(T/M)3を介してエンジン1の動力を車輪61に伝えて走行を行い、さらに油圧ポンプ4によって駆動される作業装置50で土砂等を掘削・運搬する。トルコンの動力伝達効率は電気による動力伝達効率より劣るため、図2に示したホイールローダの走行駆動部分を電動化(パラレル式ハイブリッド構成も含む)すると、エンジン1からの動力伝達効率を向上させることが可能となる。さらに、作業中のホイールローダでは頻繁に発進・停止の走行動作が繰り返されるため、上記のように走行駆動部分を電動化した場合には走行用電動機9から制動時の回生電力の回収が見込めるようになる。このようにホイールローダの駆動装置の一部を電動化してハイブリッド化すると、一般に燃料消費量を数10%程度低減することができる。
【0021】
ところで、本実施の形態に係るホイールローダは、走行用電動機9に電流を供給するために必要な種々の装置から構成される走行電力供給システムを備えている。このシステムを構成する各装置は、走行用電動機9を制御するためのインバータ装置10が接続された電気回路に接続されており、図1に示した例では、蓄電装置11と、DCDCコンバータ12と、発電電動機6と、インバータ装置7が該当する。
【0022】
図3は本発明の実施の形態に係る走行電力供給システムの構成図である。この図に示す走行電力供給システムは、蓄電装置11と、DCDCコンバータ装置12と、発電電動機6を制御するためのインバータ装置7と、走行用電動機9を制御するためのインバータ装置10と、平滑コンデンサ41を備えており、これらはDCバス40を介して適宜接続されている。
【0023】
制御装置200は、蓄電装置11と、DCDCコンバータ装置12と、インバータ装置7と、インバータ装置10と、車内パネル(表示装置)65と、非常運転スイッチ66に接続されている。
【0024】
表示パネル65は、走行電力供給システムを構成する各装置の状態(異常が発生しているか否か)を表示するためのもので、ホイールローダのキャブ内に設置されている。非常運転スイッチ66は、制御装置200による非常運転(後述)の実行を許可するか否かを指示するための装置(指示装置)であり、ホイールローダのキャブ内に設置されている。
【0025】
DCDCコンバータ装置12から制御装置200にはコンバータ電流が入力されており、制御装置200からDCDCコンバータ装置12にはコンバータ電圧指令が入力されている。インバータ装置7から制御装置200には発電電動機6の電流値(モータ電流)が入力されており、制御装置200からインバータ装置7には発電電動機6の電圧指令(モータ電圧指令)が入力されている。インバータ装置1から制御装置200には走行用電動機9の電流値(モータ電流)が入力されており、制御装置200からインバータ装置10には走行用電動機9の電圧指令(モータ電圧指令)が入力されている。DCバス40に取り付けられた検出器(図示せず)から制御装置200にはDCバス40の電圧(Vdc)が入力されている。また、制御装置200から車内パネル65には表示指令が入力されており、非常運転スイッチ66から制御装置200にはスイッチ指令が入力されている。
【0026】
また、制御装置200には、発電電動機6および走行用電動機9のトルク及び回転数、オペレータによって操作される操作レバー56及びペダル類(図示せず)の操作量並びに車速などの車両情報や、蓄電装置11の電流値及び電圧値等が入力されている。また、制御装置200は、上記各入力信号に基づいて、発電電動機6および走行用電動機9へのトルク指令を計算する機能も備えている。
【0027】
上記のように構成される走行電力供給システムにおいて、当該システムを構成する各装置に異常が発生していないときには、蓄電装置11及びDCDCコンバータ装置12によってシステム電圧(各インバータ間7,10のDCバス電圧)を所定の値に制御しながら、発電電動機6又は蓄電装置11からの電流をインバータ装置10を介して走行用電動機9に供給する。これにより走行用電動機6が駆動される。以下では、このように走行用電動機6を駆動する方式を第1駆動方式と称することがある。
【0028】
図4は本発明の実施の形態に係る制御装置200の構成図である。この図に示すように、本実施の形態に係るホイールローダ(車両)には、制御装置200として、図1に示したハイブリッドシステム全体のエネルギーフローやパワーフロー等の制御を行うコントローラであるハイブリッド制御装置20と、コントロールバルブ(C/V)55や油圧ポンプ4を制御するための油圧制御装置21と、エンジン1の制御を行うためのエンジン制御装置22と、インバータ装置7,10を制御するためのインバータ制御装置23と、DCDCコンバータ装置12を制御するためのコンバータ制御装置24が搭載されている。
【0029】
各制御装置20,21,22,23,24は、処理内容や処理結果が記憶される記憶装置(RAM、ROM等)(図示せず)と、当該記憶装置に記憶された処理を実行する処理装置(CPU等)(図示せず)を備えている。また、各制御装置20,21,22,23,24は、CAN(Controller Area Network)を介して互いに接続されており、相互に各機器の指令値及び状態量を送受信している。ハイブリッド制御装置20は、図4に示すように、油圧制御装置21、エンジン制御装置22、インバータ制御装置23及びコンバータ制御装置24の各コントローラの上位に位置し、システム全体の制御を行っており、システム全体が最高の作業性能を発揮するように他の各制御装置21〜24に具体的動作の指令を与える。
【0030】
なお、図4に示した各制御装置20〜24は、図1に示すハイブリッドシステムの各駆動部分を制御するために必要なコントローラのみを示している。実際車両を成立させる上では、その他にモニタや情報系のコントローラが必要となってくるが、それらは図示していない。また、各制御装置20〜24は、図4に示すように他の制御装置と別体である必要はなく、ある1つの制御装置に2つ以上の制御機能を実装しても構わない。
【0031】
ところで、本発明で対象としているホイールローダにはいくつかの基本的動作パターンがあり、ハイブリッド制御装置20はその各動作に応じて車両を最適に稼働させる。たとえば、最も代表的な作業パターンとしてはVサイクル掘削作業がある。Vサイクル掘削作業は実際のホイールローダの作業全体に対して、約7割以上を占める主動作パターンである。ホイールローダはこのとき、まず砂利山などの掘削対象物に対して前進し、砂利山の掘削対象物に突っ込むような形で砂利等の運搬物をバケット内に積み込む。その後、後進して元の位置に戻り、ステアリングホイールを操作しながら、かつリフトアーム及びバケットを上昇させながらダンプトラック等の運搬車両に向かって前進する。そして、バケットをダンプさせて運搬車両に運搬物を積み込んで(放土して)再び後進し、車両は元の位置に戻る。車両は以上の説明のようにV字軌跡を描きながらこの作業を繰り返し行う。このような動作を図1に示すホイールローダで行う際は、ハイブリッド制御装置20により、ハイブリッドシステム全体で最も燃費および作業効率が高くなるように、エンジン1および蓄電装置11からの出力を作業装置50および走行用電動機9に配分する。
【0032】
また、ホイールローダは上記の様な基本的作業パターンであるVサイクル掘削作業の他、作業現場から別の現場に移動するために公道も走行できるようになっている。ここで、上記のような公道走行とVサイクル掘削作業に共通して必要となる機能に非常運転機能が挙げられる。非常運転とは、システムのある一部分が故障して本来の機能が失われた場合においても、その他の正常な部分で最小限必要の動作を継続することを意味する。
【0033】
例えば、公道走行時において、走行電力供給システムが故障して走行用電動機への電力供給が遮断されることで走行不能になった場合には、車両を安全な場所に速やかに移動する必要がある。走行不能になった場所が交差点の真ん中であったり、踏切上であったりした場合には、車両移動の重要性はさらに高まる。また、作業現場内においてもVサイクル掘削作業時に走行電力供給システムが故障し走行不能になった場合、その場に立ち往生してしまうと掘削作業自体が滞ってしまうことが考えられる。すなわち、この場合も速やかに作業の支障とならない場所に移動する必要が生じる。よって、そのような場合においては上記の非常運転機能が必要となるが、ハイブリッド式のホイールローダを含め、走行用電動機で走行するホイールローダの従来の制御機能では、走行電力供給システムの一部が故障した場合には、車両の走行動作を継続することは困難であった。
【0034】
そこで、本発明では、上記の非常運転機能を発揮するために、制御装置200内に非常運転管理部(非常運転管理手段)30を備えることとした。これにより、本実施の形態に係る制御装置200は、走行用電動機6の駆動方式として、走行電力供給システムを構成する各装置に異常が発生していないとき(通常時)に利用する方式(第1駆動方式(上述))に加えて、当該システムを構成する装置のいずれかに異常が発生したときに利用する方式(第2駆動方式)を実装した。ハイブリッド駆動制御装置20は、ハイブリッドシステムの各駆動部分を制御する制御装置群(制御装置21,22,23,24)の制御上の上位に位置しているため、各駆動部分の状態を統括的に把握することが可能であり、走行電力供給システムを構成する各装置に異常が生じた場合、適切な構成で非常運転に移行することができる。なお、ここでは、ハイブリッド駆動制御装置20内に非常運転管理部30を備えた場合について説明するが、他の制御装置20,21,22,23,24から独立した制御装置として制御装置200内に設けても良い。
【0035】
図5は本発明の実施の形態に係る非常運転管理部30の構成を示す図である。この図に示す非常運転管理部30は、非常運転判定部31と、非常運転制御部32を備えている。
【0036】
非常運転判定部31は、走行電力供給システムを構成する各装置に異常が発生しているか否かを判定し、異常が発生している装置が存在する場合には、さらに当該異常が発生している装置を除外した非常運転の実行が可能か否かを判定する処理を実行する部分である。異常の発生の有無の判定は、走行電力供給システムに係る各装置を制御する各制御装置から入力される異常状態の情報に基づいて行う。
【0037】
非常運転制御部32は、非常運転判定部31において非常運転の実行が可能であると判定されたときに、異常が発生した装置が実行していた処理と同一又は当該処理に相当する他の処理を他の正常な装置で実行するための処理を実行する部分である。これにより、走行電力供給システムに係る正常な装置によって走行用電動機9に電流が供給されるので、非常運転が実行される。これにより、走行電力供給システムを構成する装置に故障等の異常が発生しても、当該装置を除外した構成による走行用電動機9への電力供給が確保されるので、支障の無い場所へ作業車両を移動することができる。このように非常運転監視部30によって実行される具体的な制御処理は、異常が発生した装置ごとに設定されており、以下の各実施の形態の説明ではこれらの制御処理について説明する。
【0038】
まず、本発明の第1の実施の形態について説明する。ここでは、走行電力供給システムにおける蓄電装置11又はDCDCコンバータ装置12に異常が発生した場合の非常運転について説明する。
【0039】
図3に示した電力供給システムは、ハイブリッドシステムの中で車両性能を左右する最も重要なサブシステムであり、エンジン1で駆動される発電電動機6で発電された電力Pgを主電力にして、走行用電動機9に電力Pdを供給しながら車両を駆動している。また、発電電動機6用のインバータ装置7と走行用電動機9用のインバータ装置10とを接続するDCバス40は、平滑コンデンサ41を介しているのみである。そのため、電力Pgと電力Pdに若干の電力差ΔPが発生すると、DCバス40の電圧は大きく変動してしまい、その後の走行用電動機9の駆動が困難となることがある。そこで、DCバス40に並列接続しているDCDCコンバータ装置12を用いて、DCバス40部の電圧を応答性良く制御している。この際、DCDCコンバータ装置12の電力源となるのが蓄電装置11である。DCDCコンバータ12は蓄電装置11の電力を用いてDCバス40部分に生じる電力差ΔP(すなわちDCバス40部の電圧変動)を抑制する。
【0040】
また、DCDCコンバータ装置12と蓄電装置11は、DCバス40部分の電圧変動を抑制するのみならず、走行用電動機9が制動時に発生する回生電力の回収、エンジン1のパワー不足時のアシスト等、ハイブリッド車両特有の機能を発揮する重要な電機駆動システムの一部分である。よって、DCDCコンバータ12又は蓄電装置11が故障した場合には、その後の車両の走行駆動が困難となってくる。例えば、これらの故障が生じた場所が公道であった場合や作業現場であった場合は、支障の無い場所へ車両を速やかに移動させる必要がある。そのため、電機駆動システム故障時の非常運転機能が必要となってくる。以下では、異常発生時の非常運転として、通常走行時に比べて機能を制限しながら最小限の性能で走行を継続する場合について主に説明する。
【0041】
図6は本発明の第1の実施の形態に係るインバータ制御装置23で実行されるインバータ装置7(発電電動機6)の制御処理に係るブロック図を示す。この図におけるスイッチ62の切替位置は、蓄電装置11又はコンバータ装置12に異常が発生しているか否か(すなわち、どの駆動方式が利用されているか)に応じて変更される。図示の状態はこれら装置に異常が発生して第2駆動方式が利用されている状態を示す。
【0042】
この図に示すように、インバータ制御装置23は、走行用電動機9の駆動制御に際して第1駆動方式が利用されている場合(通常時)には、図6の下側に記載されたルートに従ってインバータ装置7を制御する。すなわち、インバータ制御装置23は、上位のハイブリッド駆動制御装置20から入力される発電電動機6のトルク指令を電流変換器63で電流指令に変換し、当該電流指令に基づいて発電電動機6の電圧指令(モータ電圧指令)を制御器64で生成する。なお、本実施の形態に係る制御器64には、電流指令の他にモータ電流の実測値が入力されており、電流の指令値と実測値の偏差がゼロに近づくように電圧指令を生成するフィードバック制御が行われている。
【0043】
一方、第2駆動方式が利用されている場合(蓄電装置11又はコンバータ装置12の異常時)には、図6の上側に記載されたルートのように、通常時にコンバータ装置12が実行していた電圧変換処理を実行するためのDCバス電圧制御系45が追加される。すなわち、DCバス電圧制御系45の制御器61において、ハイブリッド駆動制御装置20から入力されるDCバス電圧指令(Vdc指令)に基づいてトルク指令を生成し、当該トルク指令を電流指令変換器63に出力する。なお、本実施の形態に係る制御器61には、Vdc指令の他にDCバス電圧の実測値(Vdc)が入力されており、DCバス電圧の指令値と実測値の偏差がゼロに近づくようにトルク指令を生成するフィードバック制御が行われている。電流指令変換器63より以後の処理は第1駆動方式と同じものが行われる。
【0044】
図7は本発明の第1の実施の形態に係るインバータ制御装置23で実行されるインバータ装置10(走行用電動機9)の制御処理に係るブロック図を示す。
【0045】
この図に示すブロック図はトルク応答制限部46を備えている。トルク応答制限部46は、第2駆動方式が利用されている場合には、第1駆動方式が利用されている場合(主として、蓄電装置11の電力を利用して走行用電動機9を駆動し、停止状態の車両を発進する場合)と比較してトルク応答性を制限する。すなわち、第2駆動方式のときには走行用電動機9のトルク応答速度が第1駆動方式のときよりも低減される。これは、停止状態の車両を発進する場合において、蓄電装置11及びDCDCコンバータ装置12が正常なときにはトルク応答性の良い蓄電装置11の電力を一般的に用いるが、これらに異常が発生している場合には出力応答性に劣るエンジン1で駆動して得られる発電電動機6の電力を用いる必要があるからである。なお、図7におけるトルク応答制限部46内のグラフ中に示した実線73aは第1駆動方式のトルク応答性の一例を示したものであり、破線73bは第2駆動方式のトルク応答性の一例を示したものである。
【0046】
なお、第2駆動方式のときのトルク応答速度は、エンジン1の出力応答速度に近づくように設定することが好ましい。これは、第2駆動方式のときは、エンジン1で発電電動機6を駆動して得られる電力で走行用電動機9を駆動することになるが、このときの発電電動機6の出力応答性はエンジン1の出力応答性に依存するため、走行用電動機9のトルク指令も同様にエンジン1の出力応答性に近づけることが好ましいからである。
【0047】
図7に示すように、インバータ制御装置23は、上位のハイブリッド駆動制御装置20から入力される走行用電動機9のトルク指令をトルク応答制限部46で所定の値に低減して電流指令変換器71に出力する。そして、当該トルク指令を電流指令変換器71で電流指令に変換し、当該電流指令に基づいて走行用電動機9の電圧指令(モータ電圧指令)を制御器72で生成する。なお、本実施の形態に係る制御器72には、電流指令の他にモータ電流の実測値が入力されており、電流の指令値と実測値の偏差がゼロに近づくように電圧指令を生成するフィードバック制御が行われている。
【0048】
図8は本発明の第1の実施の形態に係るホイールローダにおいて第1駆動方式から第2駆動方式に移行する際に実行される処理のフローチャートである。
【0049】
この図に示す各処理は非常運転管理部30によって実行される。この図に示す処理が開始されると、非常運転判定部31は、走行電力供給システムを構成する各装置に係る異常情報を各制御装置21,22,23,24から入力する(S100)。そして、S100で入力した異常情報に基づいて蓄電装置11又はDCDCコンバータ装置12に異常が発生したか否かを判定する(S101)。S101において、これら装置11,12に異常が無ければ、S100に戻って異常が発生するまで処理を繰り返す。一方、S101において装置11,12に異常が発生したと判定した場合には、非常運転の実行を決定する(S102)。なお、S100からS102までの処理は、非常運転判定部31によって実行される。
【0050】
S102が終了したら、次は、S103以降の処理を非常運転制御部32によって実行する。まず、非常運動制御部32は、インバータ制御装置23で実行される発電電動機6の制御処理において、DCバス電圧制御系45(図6参照)を起動する(S103)。これにより、第1駆動方式ではDCDCコンバータ装置12によって実行されていた電圧変換処理に相当する処理がインバータ装置7で実行される。これによりエンジン1によって駆動された発電電動機6が発生した電力が、DCバス40を介してインバータ装置10に供給される。
【0051】
さらに、非常運転制御部32は、インバータ制御装置23で実行される走行用電動機9の制御処理に際して、トルク応答制限部46(図7参照)において破線73bのトルク応答性を選択する(S104)。S104が完了したら、非常運転を開始する(S105)。これにより第1駆動方式よりも走行用電動機9のトルク応答性を制限して、エンジン1の出力応答性に近づけることができる。S105が終了したら、S100に戻ってS100以降の処理を繰り返す。
【0052】
上記のように、本実施の形態によれば、蓄電装置11又はDCDCコンバータ装置12に異常が発生した場合でも、非常運転管理部30において、DCバス電圧制御系45を正常な発電電動機6の制御系で起動することができ、さらに走行用電動機9のトルク応答性をエンジン1の出力応答性に近づけることができるので、ホイールローダの走行を継続することが可能となる。なお、第1の実施の形態の場合は、後述する第2の実施の形態の場合とは異なり、走行に必要な大きさの出力はエンジン1(発電電動機6)から供給可能であるため、走行用電動機9のトルクの応答性能のみを制限すればよい。
【0053】
ところで、上記で説明したホイールローダは、走行用電動機9による走行に加えて、車両前方に設置された作業装置50による作業が可能な車両である。したがって、前述のように蓄電装置11やDCDCコンバータ装置12に異常が発生した場合にも、作業装置50の動作の継続が必要なこともある。しかしこの場合には、蓄電装置11やDCDCコンバータに異常が発生しているため、発電電動機6による電気的なパワーアシストが得られず、所望の作業が実行できないおそれがある。次に、この点を鑑みた制御処理を第1の実施形態の変形例として説明する。
【0054】
図9は本発明の第1の実施の形態の変形例に係るホイールローダにおいて第1駆動方式から第2駆動方式に移行する際に実行される処理のフローチャートである。この変形例では、上記点を鑑み、油圧ポンプ4によってパワーが要求されているときには、エンジン1のパワーを油圧ポンプ4に優先的に供給するものとする。すなわち、作業装置50が要求するパワー(油圧パワー:Poil)を油圧制御装置21で演算し、ハイブリッド駆動制御装置20において、エンジン1の出力の上限(エンジン最大パワー:Pengmax)から油圧パワーPoilを減じた値(走行パワー制限値:Psub)以下で走行用電動機の出力(走行パワー:Prun)が制限されるように制御するものとする。
【0055】
図9に示したフローチャートは、S104の処理の代わりにS401,402,403の処理を実行する点で図8のものと異なる。また、図8のフローチャートと同じ処理については同じ符号を付して説明は省略する。
【0056】
図9に示すフローチャートにおいて、S103が終了したら、油圧制御装置21で演算された油圧パワーPoilと、ハイブリッド駆動制御装置20から出力されるエンジン最大パワーPengmaxが非常運転制御部32に入力される(S401)。そして、非常運転制御部32は、エンジン最大パワーPengmaxから油圧パワーPoilを減じることで、非常運転時の走行パワー制限値Psubを演算する処理を実行する(S402)。
【0057】
次に、非常運転制御部32は、インバータ制御装置23で実行される走行用電動機9の制御処理に際して、トルク応答制限部46において破線73bのトルク応答性を選択することで走行用電動機9のトルクの応答性の制限をするとともに、走行用電動機9のパワーPrunの上限値が走行パワー制限値Psub以下に保持されるように走行用電動機9のパワーPrunを制限する(S403)。S403において走行パワーPrunをPsub以下に保持する方法としては、トルク応答制限部46において、走行用電動機9のトルクの最大値を制限値Psubに基づいて設定するものがある。これにより蓄電装置11又はDCDCコンバータ装置12に異常が発生した場合にも、作業装置50による作業を優先させることができ、さらに、それでも電力に余剰が生じる場合には作業をしながら走行することができる。
【0058】
なお、上記の例では、作業装置50の要求出力を優先する方式について説明したが、ホイールローダの動作によっては、走行用電動機9の要求出力を優先する場合もある。このときは、エンジン最大パワーPengmaxから走行パワーPrunを差し引いた残りのパワーで作業装置50を駆動することになる。
【0059】
次に本発明の第2の実施の形態について説明する。ここでは、走行電力供給システムにおける発電電動機6又はインバータ装置7に異常が発生した場合の非常運転について説明する。
【0060】
正常時には、車両の走行に必要な電力のほとんどを発電電動機6及びインバータ装置7を利用して発電供給している。そのため、これらに異常が生じた場合には、発電電動機6からの電力供給が遮断されたり、少なくなったりするので、車両走行は基本的に困難となる。しかしながら、第1の実施の形態でも述べたように、このような異常が生じた場所が公道であった場合や作業現場であった場合は、車両を速やかに移動させる必要がある。そのため、第1の実施の形態と同様に非常運転機能が重要となる。そこで、本実施の形態では、主に蓄電装置11の電力に依存して車両を走行させることにする。
【0061】
図10は本発明の第2の実施の形態に係るコンバータ制御装置24で実行されるDCDCコンバータ装置12の制御処理に係るブロック図を示す。この図に示すブロック図は電力供給制限部47を備えている。電力供給制限部47は、第1駆動方式が利用されている場合(通常時)には、DCバス電圧の応答性を優先させて、蓄電装置11の過放電による劣化を抑制するための電力供給制限のみを行う。一方、発電電動機6又はインバータ装置7の異常発生時(第2駆動方式が利用されている場合)には、通常時よりも電力供給制限量を大きくする。具体的には、走行用電動機9に供給可能な電力量等に基づいて電力供給制限量を決定し(後述)、当該電力供給制限量に基づいて走行用電動機9への電力供給を制限する。これにより、車両走行に最低限必要な電力が確保されるとともに、結果的に走行用電動機9のトルク制限が実施される。
【0062】
図10に示すように、コンバータ制御装置24は、上位のハイブリッド駆動制御装置20から入力されるDCバス電圧指令(Vdc指令)に基づいてコンバータ電流指令を制御器81で生成し、当該コンバータ電流指令を電力供給制限部47に出力する。制御器81では、Vdc指令の他にDCバス電圧の実測値Vdcが入力されており、DCバス電圧の指令値と実測値の偏差がゼロに近づくように電流指令を生成するフィードバック制御が行われている。
【0063】
電力供給制限部47では、制御器81から入力されるコンバータ電流指令を所定の値に低減して制御器82に出力する。そして、制御器82では、電力供給制限部47からのコンバータ電流指令に基づいてコンバータ電圧指令を生成する。制御器82では、コンバータ電流指令の他にコンバータ電流の実測値が入力されており、コンバータ電流の指令値と実測値の偏差がゼロに近づくようにコンバータ電圧指令を生成するフィードバック制御が行われている。
【0064】
上記の処理により、発電電動機6又はインバータ装置7に異常が発生した場合にも、DCバス40の電圧が所定の値に制御され、さらに走行用電動機9に対して所定の電力が供給される。
【0065】
図11は本発明の第2の実施の形態に係るホイールローダにおいて第1駆動方式から第2駆動方式に移行する際に実行される処理のフローチャートである。
【0066】
この図に示す処理が開始されると、非常運転判定部31は、走行電力供給システムを構成する各装置に係る異常情報を各制御装置21,22,23,24から入力する(S200)。そして、S200で入力した異常情報に基づいて発電電動機6又はインバータ装置7に異常が発生したか否かを判定する(S201)。S201において、これら装置6,7に異常が無ければ、S200に戻って異常が発生するまで処理を繰り返す。一方、S201において装置6,7に異常が発生したと判定した場合には、非常運転の実行を決定する(S202)。
【0067】
S202で非常運転の実行を決定したら、非常運転判定部31は、エンジン1で発電電動機6を駆動したときにインバータ装置7で整流発電動作が可能かどうかを判定する(S203)。本実施の形態では発電電動機6によって三相交流電流を発生するが、その中の少なくとも1つの交流電流が整流可能であれば、インバータ装置7での整流発電動作が可能であると判定してS204に進む。一方、S203でインバータ装置7内のダイオード部の異常等で発電電動機6の整流発電動作が困難であると判定した場合にはS206に進む。なお、S200からS203までの処理は、非常運転判定部31によって実行される。
【0068】
S203において整流発電動作が可能であると判定された場合には、回避運転制御部32は、エンジン1を所定の回転数で一定速駆動を行う(S204)。これにより発電電動機6によって所定の電力が発生する。そして、回避運転制御部32は、蓄電装置11の残容量及び発電電動機6の発電量に基づいて、電力供給制限部47(図10参照)における電力供給制限量を決定する(S205)。この電力供給制限量の決定方法としては、車両の走行に最低限必要な電力と、当該必要最低電力を出力する時間(すなわち、非常運転時に担保する最小走行距離)に基づいて算出すればよい。その際、蓄電装置11の残容量及び発電電動機6の発電量と、前記必要最低電力とから推定走行可能距離を算出し、当該算出結果を車内パネル65に表示しても良い。電力供給制限量が決定したらS207に進む。
【0069】
一方、S203において整流発電動作が困難であると判定された場合には、回避運転制御部32は、蓄電装置11の残容量に基づいて電力供給制限部47における電力供給制限量を決定する(S206)。電力供給制限量の決定方法はS205での考え方と同じであり、推定走行可能距離を車内パネル65に適宜表示しても良い。電力供給制限量が決定したらS207に進む。
【0070】
S207では、非常運動制御部32は、コンバータ制御装置24で実行されるDCDCコンバータ装置12の制御処理において、S205又はS206で決定した電力供給制限量に基づいて電力供給制限部47を稼働させる。これにより、走行用電動機9に供給される電力が制限される。さらに、第1の実施の形態で説明したS104の処理と同様に、インバータ制御装置23内に構成される走行用電動機9の制御部でトルク指令応答制限部46(図7参照)を起動する(S208)。なお、このときの応答制限は、蓄電装置11の残容量、発電電動機6の発電量、S205又はS206での電力供給制限量の大きさに応じて、可能な限り車両の走行が継続できるように決定することが好ましい。S208が完了したら、非常運転を開始する(S209)。これにより第1駆動方式よりも走行用電動機9のトルクの応答性及び大きさを制限しながら、車両を走行させることができる。S209が終了したら、S200に戻ってS200以降の処理を繰り返す。
【0071】
上記のように、本実施の形態によれば、発電電動機6又はインバータ装置7に異常が発生した場合でも、非常運転管理部30において、車両走行に最低限必要な電力を走行用電動機9に供給されるとともに、走行用電動機9のトルク応答が制限されるので、ホイールローダの走行を継続することが可能となる。
【0072】
なお、本実施の形態においても場合によっては、第1の実施の形態の変形例と同様に作業装置50を動作させる必要が生じることがある。しかし、本実施の形態では、走行用電動機9の出力は電力供給制限部47により制限されているため、作業装置50のパワーは要求通り出力できる。したがって、作業装置50を動作させる場合も同様に、図11のフローチャートに従って非常運転を実行すればよい。
【0073】
ところで、上記の各実施の形態では、非常運転管理部30が非常運転の実行が可能と判定した場合に、自動的に非常運転が実施される場合について説明した。しかし、オペレータからの指示により非常運転動作を開始するためのシステム(非常運転開始指示系)を追加しても良い。その際、非常運転の開始を指示する際に参照するために、走行電力供給システムを構成する各装置の異常状態及び非常運転可否状態を車内パネル65に表示するシステム(状態表示系)を追加しても良い。このような非常運転開始指示系及び状態表示系をホイールローダに設置した場合の処理を例えば第1の実施の形態で示した図8のフローチャートに追記すると、図12に示すフローチャートとなる。
【0074】
図12は本発明の第1の実施の形態の他の変形例に係るホイールローダにおいて第1駆動方式から第2駆動方式に移行する際に実行される処理のフローチャートである。このフローチャートは、S300,301の処理を実行する点で図8のものと異なる。図8のフローチャートと同じ処理については同じ符号を付して説明は省略する。
【0075】
S102で非常運転実行が決定されたら、非常運転判定部31は、車内パネル65に表示信号を出力して、走行電力供給システムを構成する各装置の状態及び非常運転の可否状態を表示する(S300)。すなわち、S100で入力した情報に基づいて異常が発生していると判定される装置名を表示するとともに、S100で入力した情報に基づいて正常な装置のみで非常運転が可能か否かを表示する。これにより、オペレータは、非常運転を開始するか否かを判断することができる。S300が終了したらS301に進む。
【0076】
S301は、オペレータからの非常運転開始指示があるまで非常運転の開始を待機するための処理であり、非常運転スイッチ66の切替位置が「ON」にあるか否かを判定する。この判定にはスイッチ66から制御装置200に入力されるスイッチ指令の内容を利用する。非常運転スイッチ66の切換位置がONの場合には、S103に進んで最終的に非常運転を実行する。一方、切換位置がOFFの場合には、S100に戻って以降の処理を繰り返す。
【0077】
このように構成したホイールローダによれば、オペレータの指示があってはじめて非常運転が実行されるので、非常運転が実行されていることをオペレータに認知させることができる。また、不必要な非常運転を回避することができる。さらに、異常が発生した装置や非常運転の可否状態が表示されるので、非常運転の実行を決断する前にホイールローダの状態を適切に把握することができる。
【0078】
以上述べてきたように、本発明によれば、走行電力供給システムの一部に異常が発生した場合においても、正常な装置に非常運転に必要な制御機能を付加することができるとともに、通常走行に比べ走行用電動機のトルクの応答や大きさを制限することで、その場で立ち往生することなく、支障の無い場所まで車両を退避させるが可能となる。
【0079】
なお、上記の各実施の形態では、予め設定しておいた装置に異常が発生したときのみに、非常運転が実行される場合について説明してきたが、S100やS200で各制御装置から入力した異常情報に基づいて異常が発生している装置を特定し、当該異常が発生している装置に応じて異なる非常運転を実行するように構成しても良い。すなわち、図8のフローチャートの場合を例に挙げれば、S100の情報に基づいて蓄電装置11又はコンバータ装置12に異常が発生していると判定した場合には、同じ図8中のS102以降の処理を実行し、一方、S100の情報に基づいて発電電動機6又はインバータ装置7に異常が発生していると判定した場合には、図11のS202以降の処理を実行するようにホイールローダを構成しても良い。
【符号の説明】
【0080】
1…エンジン、4…油圧ポンプ、50…フロント作業装置、6…発電電動機(モータ・ジェネレータ:M/G)、7…M/Gインバータ装置、8…プロペラシャフト、9…走行用電動機、10…走行用インバータ装置、11…蓄電装置、12…DCDCコンバータ装置、20…ハイブリッド駆動制御装置、21…油圧制御装置、22…エンジン制御装置、23…インバータ制御装置、24…コンバータ制御装置、30…非常運転管理部、31…非常運転判定部、32…非常運転制御部、40…DCバス、41…平滑用コンデンサ、45…DCバス電圧制御系、46…トルク応答制限部、47…電力供給制限部、65…車内パネル(表示装置)、66…非常運転スイッチ、200…制御装置
【技術分野】
【0001】
本発明は動力源としてエンジン及び蓄電装置を備えるハイブリッド式の作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題、原油価格高騰などの点から、各工業製品に対して省エネ志向が強まっている。これまでディーゼルエンジンによる油圧駆動システムが中心であった建設車両、作業用車両等の分野においても、その傾向にあり、電動化による高効率化、省エネルギー化の事例が増加してきている。例えば、前述の建設車両や作業用車両の駆動部分を電動化、すなわち駆動源を電動機(電気モータ)にした場合、排気ガスの低減のほか、エンジンの高効率駆動(ハイブリッド機種の場合)、動力伝達効率の向上、回生電力の回収など多くの省エネルギー効果が期待できる。このような建設車両・作業用車両分野では、フォークリフトの電動化が最も進んでおり、バッテリの電力を用いてモータを駆動する、いわゆる「バッテリーフォークリフト」が他車両に先駆けて実用化されており、小型フォークリフトを中心にかなり普及している。また最近では、これに引き続いて、油圧ショベル、エンジン式フォークリフトなどにおいて、ディーゼルエンジンと電気モータを組み合わせた「ハイブリッド車両」が製品化され始めている。
【0003】
ところで、上記のように電動化による環境対応・省エネルギー化が進む建設車両・作業用車両の中で、ハイブリッド化した場合に比較的大きな燃費低減効果が見込まれる車両としてホイールローダがある。従来のホイールローダは、例えば、トルクコンバータ(トルコン)およびトランスミッション(T/M)を介してエンジンの動力を車輪に伝えて走行を行いながら、車両前方に取り付けられた作業装置のバケット部分で土砂等を掘削・運搬する作業用車両である。このようなホイールローダの走行駆動部分を電動化すると、トルコン及びトランスミッション部分における動力伝達効率を電気による動力伝達効率まで向上させることが可能となる。さらにホイールローダでは、作業中、頻繁に発進・停止の走行動作を繰り返すため、走行駆動部分を電動化した場合には、走行用の電動機から制動時の回生電力回収が見込める。
【0004】
ハイブリッド式のホイールローダとしては、走行部分を電動化した構成、すなわち、シリーズ型ハイブリッドシステムがある。この種のシステムでは走行部を完全に電動化しているため、当該走行部の駆動源である走行用電動機に電力を供給するためのシステム(走行電力供給システム)の一部に故障等の異常が発生した場合には、その後の走行動作が実施できなくなるおそれがある。ホイールローダなどの車輪を有する作業車両は公道を走行する場合や作業現場内を走りまわる場合があり、故障により走行不能となった際には、その場で立ち往生することも考えられる。そこで、走行電力供給システムの一部に異常が発生した場合でも、車両の走行動作を継続可能とする機能が求められる。
【0005】
このような故障時の非常運転方法については、例えば特開2010−133235号公報に示されたものがある。この技術によれば、ショベルなどのハイブリッド型建設機械において、発電電動機(M/G)または電動作業要素(旋回モータ等)の制御系の異常が検出された場合に、昇降圧コンバータ(DCDCコンバータ)によるDCバスの昇降圧制御を継続するとの記載がある。これにより、電動発電機(M/G)または電動作業要素の制御系が故障した場合においても正常な蓄電系を利用した駆動の継続が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−133235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記技術では、発電電動機または電動作業要素の制御系に異常が発生した場合において、正常な蓄電系の電力により電動作業部の駆動を継続するため、図3の蓄電装置がバッテリに比べ容量の小さいキャパシタであった場合や、発電系とは反対に蓄電系側が故障した場合では、車両を動作させることが困難となる可能性が考えられる。
【0008】
そこで、本発明の目的は、走行駆動部を電動化した作業車両において、走行電力供給システムの一部に異常が発生した場合にも、走行動作を継続できる作業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、エンジンと、前記エンジンによって駆動され、油圧アクチュエータを駆動するための油圧ポンプと、直流電力を蓄えるための蓄電装置と、直流電流と交流電流の変換を行う第1及び第2インバータ装置と、前記第1及び第2インバータ装置が接続された回路の電圧を変換するコンバータ装置と、前記第1インバータ装置からの交流電流によって前記油圧ポンプの駆動トルクを発生する発電電動機と、前記第2インバータ装置からの交流電流によって車両の駆動トルクを発生する電動機と、前記第1及び第2インバータ装置を制御するための制御装置とを備え、前記制御装置は、前記回路に接続され前記電動機に電流を供給するために必要な各種装置に異常が発生したときには、当該異常が発生した装置が異常発生前に実行していた処理と同一又は当該処理に相当する他の処理を他の正常な装置で実行することで、前記第2インバータ装置を介して前記電動機を駆動するものとする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、走行部を電動化した作業車両において、走行電力供給システムに異常が発生した場合にも、その場に立ち往生することなく支障の無い場所に走行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係るハイブリッド式ホイールローダのシステム構成図。
【図2】従来のホイールローダの代表的な構成例を示す図。
【図3】本発明の実施の形態に係る走行電力供給システムの構成図。
【図4】本発明の実施の形態に係る制御装置200の構成図。
【図5】本発明の実施の形態に係る非常運転管理部30の構成を示す図。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係るインバータ制御装置23で実行されるインバータ装置7(発電電動機6)の制御処理に係るブロック図。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係るインバータ制御装置23で実行されるインバータ装置10(走行用電動機9)の制御処理に係るブロック図。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係るホイールローダにおいて第1駆動方式から第2駆動方式に移行する際に実行される処理のフローチャート。
【図9】本発明の第1の実施の形態の変形例に係るホイールローダにおいて第1駆動方式から第2駆動方式に移行する際に実行される処理のフローチャート。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係るコンバータ制御装置24で実行されるDCDCコンバータ装置12の制御処理に係るブロック図。
【図11】本発明の第2の実施の形態に係るホイールローダにおいて第1駆動方式から第2駆動方式に移行する際に実行される処理のフローチャート。
【図12】本発明の第1の実施の形態の他の変形例に係るホイールローダにおいて第1駆動方式から第2駆動方式に移行する際に実行される処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。図1は本発明の実施の形態に係るハイブリッド式ホイールローダのシステム構成図である。
【0013】
この図に示すホイールローダは、バケット及びリフトアーム(図示せず)を有し車体前方に取り付けられた作業装置50と、ディーゼルエンジン(内燃機関)1と、エンジン1によって駆動され、油圧アクチュエータ(バケットシリンダ51、リフトシリンダ52及びステアリングシリンダ53)を駆動するための油圧ポンプ4と、油圧ポンプ4から油圧アクチュエータ51,52,53に供給される圧油を制御するためのコントロールバルブ55と、直流電力を蓄えるための蓄電装置11と、直流電流と交流電流の変換を行うためのインバータ装置7,11と、インバータ装置7,11が接続された電気回路の電圧(インバータ装置7,11間のDCバス電圧)を変換するためのDCDCコンバータ装置12と、インバータ装置7からの交流電流によって油圧ポンプ4の駆動トルクを発生してエンジン1をアシストする発電電動機(モータ/ジェネレータ(M/G))6と、インバータ装置11からの交流電流によって車両(走行体60)の駆動トルクを発生する走行用電動機9と、油圧アクチュエータ51,52,53を駆動するための操作信号を操作量に応じて出力する操作装置(操作レバー56及びステアリングホイール(図示せず))と、インバータ装置7,11及びコンバータ装置12等を制御するための制御装置200を備えている。
【0014】
発電電動機6は、さらにエンジン1と接続されており、エンジン1によって駆動されることで発電機としても動作する。発電電動機6によって発生された電力は、走行用電動機6に供給されたり、蓄電装置11に蓄えられたりする。発電電動機6の力行運転(エンジンアシスト)と発電運転の切り換えは、制御装置200においてエンジン1の負荷に応じて行われる。
【0015】
走行体60は、ディファレンシャルギア(Dif)及びファイナルギア(G)を介してプロペラシャフト8に適宜取り付けられた4つの車輪61を有しており、プロペラシャフト8の軸上に取り付けられた走行用電動機9の駆動トルクによって各車輪61が回転駆動される。
【0016】
バケットシリンダ51及びリフトシリンダ52は、キャブ内に設置された操作レバー56の操作量に応じて出力される操作信号(油圧信号)に基づいて駆動される。リフトシリンダ52は、車体前方に回動可能に固定されたリフトアームに取り付けられており、操作レバー56からの操作信号に基づいて伸縮してリフトアームを上下に回動させる。バケットシリンダ51は、リフトアームの先端に回動可能に固定されたバケットに取り付けられており、操作レバー56からの操作信号に基づいて伸縮してバケットを上下に回動させる。ステアリングシリンダ53は、キャブ内に設置されたステアリングホイール(図示せず)の操舵量に応じて出力される操作信号(油圧信号)に基づいて駆動される。ステアリングシリンダ53は、各車輪61に連結されており、ステアリングホイールからの操作信号に基づいて伸縮して車輪61の舵角を変更する。
【0017】
蓄電装置11はDCDCコンバータ装置12を介してインバータ装置7,10と電気的に接続されており、インバータ装置7,10の間で直流電力の収受を行う構成となっている。なお、蓄電装置11は、比較的大電力の出し入れが高速に実施できるものであれば特に種類は限定されないが、リチウム電池等の二次電池又は大容量電気二重層キャパシタを用いることが好適である。そこで、ここでは、蓄電装置11は大容量電気二重層キャパシタであるものとして説明する。
【0018】
上記のように構成されるハイブリッドホイールローダでは、土砂などの掘削作業を行うための作業装置50に油圧ポンプ4によって適宜油圧を供給することで目的に応じた作業を実施する。また、走行体60の走行動作は、蓄電装置11とDCDCコンバータ装置12によってシステム電圧(各インバータ間7,10のDCバス電圧)を所定の値に制御しながら、主にエンジン1で発電電動機6を駆動し、これによって発電された電力で走行用電動機9を駆動することにより行う。その際、蓄電装置11では、車両制動時に走行用電動機9が発生する回生電力を吸収したり、発電電動機6又は走行用電動機9に蓄電電力を供給することでエンジン1に対する出力アシストを行ったりすることで、車両の消費エネルギー低減に寄与する。
【0019】
なお、本発明が対象とするハイブリッドシステムは、図1の構成例に限られるものではなく、走行部パラレル型等の多様なシステム構成にも適用可能である。
【0020】
図2は従来のホイールローダの代表的な構成例を示す図である。なお、先の図と同じ部分には同じ符号を付して説明は省略する(後の図も同様とする)。この図に示した従来のホイールローダは、主な駆動部として走行体60と作業装置50(リフト/バケット部分)を備えており、トルクコンバータ(トルコン)2およびトランスミッション(T/M)3を介してエンジン1の動力を車輪61に伝えて走行を行い、さらに油圧ポンプ4によって駆動される作業装置50で土砂等を掘削・運搬する。トルコンの動力伝達効率は電気による動力伝達効率より劣るため、図2に示したホイールローダの走行駆動部分を電動化(パラレル式ハイブリッド構成も含む)すると、エンジン1からの動力伝達効率を向上させることが可能となる。さらに、作業中のホイールローダでは頻繁に発進・停止の走行動作が繰り返されるため、上記のように走行駆動部分を電動化した場合には走行用電動機9から制動時の回生電力の回収が見込めるようになる。このようにホイールローダの駆動装置の一部を電動化してハイブリッド化すると、一般に燃料消費量を数10%程度低減することができる。
【0021】
ところで、本実施の形態に係るホイールローダは、走行用電動機9に電流を供給するために必要な種々の装置から構成される走行電力供給システムを備えている。このシステムを構成する各装置は、走行用電動機9を制御するためのインバータ装置10が接続された電気回路に接続されており、図1に示した例では、蓄電装置11と、DCDCコンバータ12と、発電電動機6と、インバータ装置7が該当する。
【0022】
図3は本発明の実施の形態に係る走行電力供給システムの構成図である。この図に示す走行電力供給システムは、蓄電装置11と、DCDCコンバータ装置12と、発電電動機6を制御するためのインバータ装置7と、走行用電動機9を制御するためのインバータ装置10と、平滑コンデンサ41を備えており、これらはDCバス40を介して適宜接続されている。
【0023】
制御装置200は、蓄電装置11と、DCDCコンバータ装置12と、インバータ装置7と、インバータ装置10と、車内パネル(表示装置)65と、非常運転スイッチ66に接続されている。
【0024】
表示パネル65は、走行電力供給システムを構成する各装置の状態(異常が発生しているか否か)を表示するためのもので、ホイールローダのキャブ内に設置されている。非常運転スイッチ66は、制御装置200による非常運転(後述)の実行を許可するか否かを指示するための装置(指示装置)であり、ホイールローダのキャブ内に設置されている。
【0025】
DCDCコンバータ装置12から制御装置200にはコンバータ電流が入力されており、制御装置200からDCDCコンバータ装置12にはコンバータ電圧指令が入力されている。インバータ装置7から制御装置200には発電電動機6の電流値(モータ電流)が入力されており、制御装置200からインバータ装置7には発電電動機6の電圧指令(モータ電圧指令)が入力されている。インバータ装置1から制御装置200には走行用電動機9の電流値(モータ電流)が入力されており、制御装置200からインバータ装置10には走行用電動機9の電圧指令(モータ電圧指令)が入力されている。DCバス40に取り付けられた検出器(図示せず)から制御装置200にはDCバス40の電圧(Vdc)が入力されている。また、制御装置200から車内パネル65には表示指令が入力されており、非常運転スイッチ66から制御装置200にはスイッチ指令が入力されている。
【0026】
また、制御装置200には、発電電動機6および走行用電動機9のトルク及び回転数、オペレータによって操作される操作レバー56及びペダル類(図示せず)の操作量並びに車速などの車両情報や、蓄電装置11の電流値及び電圧値等が入力されている。また、制御装置200は、上記各入力信号に基づいて、発電電動機6および走行用電動機9へのトルク指令を計算する機能も備えている。
【0027】
上記のように構成される走行電力供給システムにおいて、当該システムを構成する各装置に異常が発生していないときには、蓄電装置11及びDCDCコンバータ装置12によってシステム電圧(各インバータ間7,10のDCバス電圧)を所定の値に制御しながら、発電電動機6又は蓄電装置11からの電流をインバータ装置10を介して走行用電動機9に供給する。これにより走行用電動機6が駆動される。以下では、このように走行用電動機6を駆動する方式を第1駆動方式と称することがある。
【0028】
図4は本発明の実施の形態に係る制御装置200の構成図である。この図に示すように、本実施の形態に係るホイールローダ(車両)には、制御装置200として、図1に示したハイブリッドシステム全体のエネルギーフローやパワーフロー等の制御を行うコントローラであるハイブリッド制御装置20と、コントロールバルブ(C/V)55や油圧ポンプ4を制御するための油圧制御装置21と、エンジン1の制御を行うためのエンジン制御装置22と、インバータ装置7,10を制御するためのインバータ制御装置23と、DCDCコンバータ装置12を制御するためのコンバータ制御装置24が搭載されている。
【0029】
各制御装置20,21,22,23,24は、処理内容や処理結果が記憶される記憶装置(RAM、ROM等)(図示せず)と、当該記憶装置に記憶された処理を実行する処理装置(CPU等)(図示せず)を備えている。また、各制御装置20,21,22,23,24は、CAN(Controller Area Network)を介して互いに接続されており、相互に各機器の指令値及び状態量を送受信している。ハイブリッド制御装置20は、図4に示すように、油圧制御装置21、エンジン制御装置22、インバータ制御装置23及びコンバータ制御装置24の各コントローラの上位に位置し、システム全体の制御を行っており、システム全体が最高の作業性能を発揮するように他の各制御装置21〜24に具体的動作の指令を与える。
【0030】
なお、図4に示した各制御装置20〜24は、図1に示すハイブリッドシステムの各駆動部分を制御するために必要なコントローラのみを示している。実際車両を成立させる上では、その他にモニタや情報系のコントローラが必要となってくるが、それらは図示していない。また、各制御装置20〜24は、図4に示すように他の制御装置と別体である必要はなく、ある1つの制御装置に2つ以上の制御機能を実装しても構わない。
【0031】
ところで、本発明で対象としているホイールローダにはいくつかの基本的動作パターンがあり、ハイブリッド制御装置20はその各動作に応じて車両を最適に稼働させる。たとえば、最も代表的な作業パターンとしてはVサイクル掘削作業がある。Vサイクル掘削作業は実際のホイールローダの作業全体に対して、約7割以上を占める主動作パターンである。ホイールローダはこのとき、まず砂利山などの掘削対象物に対して前進し、砂利山の掘削対象物に突っ込むような形で砂利等の運搬物をバケット内に積み込む。その後、後進して元の位置に戻り、ステアリングホイールを操作しながら、かつリフトアーム及びバケットを上昇させながらダンプトラック等の運搬車両に向かって前進する。そして、バケットをダンプさせて運搬車両に運搬物を積み込んで(放土して)再び後進し、車両は元の位置に戻る。車両は以上の説明のようにV字軌跡を描きながらこの作業を繰り返し行う。このような動作を図1に示すホイールローダで行う際は、ハイブリッド制御装置20により、ハイブリッドシステム全体で最も燃費および作業効率が高くなるように、エンジン1および蓄電装置11からの出力を作業装置50および走行用電動機9に配分する。
【0032】
また、ホイールローダは上記の様な基本的作業パターンであるVサイクル掘削作業の他、作業現場から別の現場に移動するために公道も走行できるようになっている。ここで、上記のような公道走行とVサイクル掘削作業に共通して必要となる機能に非常運転機能が挙げられる。非常運転とは、システムのある一部分が故障して本来の機能が失われた場合においても、その他の正常な部分で最小限必要の動作を継続することを意味する。
【0033】
例えば、公道走行時において、走行電力供給システムが故障して走行用電動機への電力供給が遮断されることで走行不能になった場合には、車両を安全な場所に速やかに移動する必要がある。走行不能になった場所が交差点の真ん中であったり、踏切上であったりした場合には、車両移動の重要性はさらに高まる。また、作業現場内においてもVサイクル掘削作業時に走行電力供給システムが故障し走行不能になった場合、その場に立ち往生してしまうと掘削作業自体が滞ってしまうことが考えられる。すなわち、この場合も速やかに作業の支障とならない場所に移動する必要が生じる。よって、そのような場合においては上記の非常運転機能が必要となるが、ハイブリッド式のホイールローダを含め、走行用電動機で走行するホイールローダの従来の制御機能では、走行電力供給システムの一部が故障した場合には、車両の走行動作を継続することは困難であった。
【0034】
そこで、本発明では、上記の非常運転機能を発揮するために、制御装置200内に非常運転管理部(非常運転管理手段)30を備えることとした。これにより、本実施の形態に係る制御装置200は、走行用電動機6の駆動方式として、走行電力供給システムを構成する各装置に異常が発生していないとき(通常時)に利用する方式(第1駆動方式(上述))に加えて、当該システムを構成する装置のいずれかに異常が発生したときに利用する方式(第2駆動方式)を実装した。ハイブリッド駆動制御装置20は、ハイブリッドシステムの各駆動部分を制御する制御装置群(制御装置21,22,23,24)の制御上の上位に位置しているため、各駆動部分の状態を統括的に把握することが可能であり、走行電力供給システムを構成する各装置に異常が生じた場合、適切な構成で非常運転に移行することができる。なお、ここでは、ハイブリッド駆動制御装置20内に非常運転管理部30を備えた場合について説明するが、他の制御装置20,21,22,23,24から独立した制御装置として制御装置200内に設けても良い。
【0035】
図5は本発明の実施の形態に係る非常運転管理部30の構成を示す図である。この図に示す非常運転管理部30は、非常運転判定部31と、非常運転制御部32を備えている。
【0036】
非常運転判定部31は、走行電力供給システムを構成する各装置に異常が発生しているか否かを判定し、異常が発生している装置が存在する場合には、さらに当該異常が発生している装置を除外した非常運転の実行が可能か否かを判定する処理を実行する部分である。異常の発生の有無の判定は、走行電力供給システムに係る各装置を制御する各制御装置から入力される異常状態の情報に基づいて行う。
【0037】
非常運転制御部32は、非常運転判定部31において非常運転の実行が可能であると判定されたときに、異常が発生した装置が実行していた処理と同一又は当該処理に相当する他の処理を他の正常な装置で実行するための処理を実行する部分である。これにより、走行電力供給システムに係る正常な装置によって走行用電動機9に電流が供給されるので、非常運転が実行される。これにより、走行電力供給システムを構成する装置に故障等の異常が発生しても、当該装置を除外した構成による走行用電動機9への電力供給が確保されるので、支障の無い場所へ作業車両を移動することができる。このように非常運転監視部30によって実行される具体的な制御処理は、異常が発生した装置ごとに設定されており、以下の各実施の形態の説明ではこれらの制御処理について説明する。
【0038】
まず、本発明の第1の実施の形態について説明する。ここでは、走行電力供給システムにおける蓄電装置11又はDCDCコンバータ装置12に異常が発生した場合の非常運転について説明する。
【0039】
図3に示した電力供給システムは、ハイブリッドシステムの中で車両性能を左右する最も重要なサブシステムであり、エンジン1で駆動される発電電動機6で発電された電力Pgを主電力にして、走行用電動機9に電力Pdを供給しながら車両を駆動している。また、発電電動機6用のインバータ装置7と走行用電動機9用のインバータ装置10とを接続するDCバス40は、平滑コンデンサ41を介しているのみである。そのため、電力Pgと電力Pdに若干の電力差ΔPが発生すると、DCバス40の電圧は大きく変動してしまい、その後の走行用電動機9の駆動が困難となることがある。そこで、DCバス40に並列接続しているDCDCコンバータ装置12を用いて、DCバス40部の電圧を応答性良く制御している。この際、DCDCコンバータ装置12の電力源となるのが蓄電装置11である。DCDCコンバータ12は蓄電装置11の電力を用いてDCバス40部分に生じる電力差ΔP(すなわちDCバス40部の電圧変動)を抑制する。
【0040】
また、DCDCコンバータ装置12と蓄電装置11は、DCバス40部分の電圧変動を抑制するのみならず、走行用電動機9が制動時に発生する回生電力の回収、エンジン1のパワー不足時のアシスト等、ハイブリッド車両特有の機能を発揮する重要な電機駆動システムの一部分である。よって、DCDCコンバータ12又は蓄電装置11が故障した場合には、その後の車両の走行駆動が困難となってくる。例えば、これらの故障が生じた場所が公道であった場合や作業現場であった場合は、支障の無い場所へ車両を速やかに移動させる必要がある。そのため、電機駆動システム故障時の非常運転機能が必要となってくる。以下では、異常発生時の非常運転として、通常走行時に比べて機能を制限しながら最小限の性能で走行を継続する場合について主に説明する。
【0041】
図6は本発明の第1の実施の形態に係るインバータ制御装置23で実行されるインバータ装置7(発電電動機6)の制御処理に係るブロック図を示す。この図におけるスイッチ62の切替位置は、蓄電装置11又はコンバータ装置12に異常が発生しているか否か(すなわち、どの駆動方式が利用されているか)に応じて変更される。図示の状態はこれら装置に異常が発生して第2駆動方式が利用されている状態を示す。
【0042】
この図に示すように、インバータ制御装置23は、走行用電動機9の駆動制御に際して第1駆動方式が利用されている場合(通常時)には、図6の下側に記載されたルートに従ってインバータ装置7を制御する。すなわち、インバータ制御装置23は、上位のハイブリッド駆動制御装置20から入力される発電電動機6のトルク指令を電流変換器63で電流指令に変換し、当該電流指令に基づいて発電電動機6の電圧指令(モータ電圧指令)を制御器64で生成する。なお、本実施の形態に係る制御器64には、電流指令の他にモータ電流の実測値が入力されており、電流の指令値と実測値の偏差がゼロに近づくように電圧指令を生成するフィードバック制御が行われている。
【0043】
一方、第2駆動方式が利用されている場合(蓄電装置11又はコンバータ装置12の異常時)には、図6の上側に記載されたルートのように、通常時にコンバータ装置12が実行していた電圧変換処理を実行するためのDCバス電圧制御系45が追加される。すなわち、DCバス電圧制御系45の制御器61において、ハイブリッド駆動制御装置20から入力されるDCバス電圧指令(Vdc指令)に基づいてトルク指令を生成し、当該トルク指令を電流指令変換器63に出力する。なお、本実施の形態に係る制御器61には、Vdc指令の他にDCバス電圧の実測値(Vdc)が入力されており、DCバス電圧の指令値と実測値の偏差がゼロに近づくようにトルク指令を生成するフィードバック制御が行われている。電流指令変換器63より以後の処理は第1駆動方式と同じものが行われる。
【0044】
図7は本発明の第1の実施の形態に係るインバータ制御装置23で実行されるインバータ装置10(走行用電動機9)の制御処理に係るブロック図を示す。
【0045】
この図に示すブロック図はトルク応答制限部46を備えている。トルク応答制限部46は、第2駆動方式が利用されている場合には、第1駆動方式が利用されている場合(主として、蓄電装置11の電力を利用して走行用電動機9を駆動し、停止状態の車両を発進する場合)と比較してトルク応答性を制限する。すなわち、第2駆動方式のときには走行用電動機9のトルク応答速度が第1駆動方式のときよりも低減される。これは、停止状態の車両を発進する場合において、蓄電装置11及びDCDCコンバータ装置12が正常なときにはトルク応答性の良い蓄電装置11の電力を一般的に用いるが、これらに異常が発生している場合には出力応答性に劣るエンジン1で駆動して得られる発電電動機6の電力を用いる必要があるからである。なお、図7におけるトルク応答制限部46内のグラフ中に示した実線73aは第1駆動方式のトルク応答性の一例を示したものであり、破線73bは第2駆動方式のトルク応答性の一例を示したものである。
【0046】
なお、第2駆動方式のときのトルク応答速度は、エンジン1の出力応答速度に近づくように設定することが好ましい。これは、第2駆動方式のときは、エンジン1で発電電動機6を駆動して得られる電力で走行用電動機9を駆動することになるが、このときの発電電動機6の出力応答性はエンジン1の出力応答性に依存するため、走行用電動機9のトルク指令も同様にエンジン1の出力応答性に近づけることが好ましいからである。
【0047】
図7に示すように、インバータ制御装置23は、上位のハイブリッド駆動制御装置20から入力される走行用電動機9のトルク指令をトルク応答制限部46で所定の値に低減して電流指令変換器71に出力する。そして、当該トルク指令を電流指令変換器71で電流指令に変換し、当該電流指令に基づいて走行用電動機9の電圧指令(モータ電圧指令)を制御器72で生成する。なお、本実施の形態に係る制御器72には、電流指令の他にモータ電流の実測値が入力されており、電流の指令値と実測値の偏差がゼロに近づくように電圧指令を生成するフィードバック制御が行われている。
【0048】
図8は本発明の第1の実施の形態に係るホイールローダにおいて第1駆動方式から第2駆動方式に移行する際に実行される処理のフローチャートである。
【0049】
この図に示す各処理は非常運転管理部30によって実行される。この図に示す処理が開始されると、非常運転判定部31は、走行電力供給システムを構成する各装置に係る異常情報を各制御装置21,22,23,24から入力する(S100)。そして、S100で入力した異常情報に基づいて蓄電装置11又はDCDCコンバータ装置12に異常が発生したか否かを判定する(S101)。S101において、これら装置11,12に異常が無ければ、S100に戻って異常が発生するまで処理を繰り返す。一方、S101において装置11,12に異常が発生したと判定した場合には、非常運転の実行を決定する(S102)。なお、S100からS102までの処理は、非常運転判定部31によって実行される。
【0050】
S102が終了したら、次は、S103以降の処理を非常運転制御部32によって実行する。まず、非常運動制御部32は、インバータ制御装置23で実行される発電電動機6の制御処理において、DCバス電圧制御系45(図6参照)を起動する(S103)。これにより、第1駆動方式ではDCDCコンバータ装置12によって実行されていた電圧変換処理に相当する処理がインバータ装置7で実行される。これによりエンジン1によって駆動された発電電動機6が発生した電力が、DCバス40を介してインバータ装置10に供給される。
【0051】
さらに、非常運転制御部32は、インバータ制御装置23で実行される走行用電動機9の制御処理に際して、トルク応答制限部46(図7参照)において破線73bのトルク応答性を選択する(S104)。S104が完了したら、非常運転を開始する(S105)。これにより第1駆動方式よりも走行用電動機9のトルク応答性を制限して、エンジン1の出力応答性に近づけることができる。S105が終了したら、S100に戻ってS100以降の処理を繰り返す。
【0052】
上記のように、本実施の形態によれば、蓄電装置11又はDCDCコンバータ装置12に異常が発生した場合でも、非常運転管理部30において、DCバス電圧制御系45を正常な発電電動機6の制御系で起動することができ、さらに走行用電動機9のトルク応答性をエンジン1の出力応答性に近づけることができるので、ホイールローダの走行を継続することが可能となる。なお、第1の実施の形態の場合は、後述する第2の実施の形態の場合とは異なり、走行に必要な大きさの出力はエンジン1(発電電動機6)から供給可能であるため、走行用電動機9のトルクの応答性能のみを制限すればよい。
【0053】
ところで、上記で説明したホイールローダは、走行用電動機9による走行に加えて、車両前方に設置された作業装置50による作業が可能な車両である。したがって、前述のように蓄電装置11やDCDCコンバータ装置12に異常が発生した場合にも、作業装置50の動作の継続が必要なこともある。しかしこの場合には、蓄電装置11やDCDCコンバータに異常が発生しているため、発電電動機6による電気的なパワーアシストが得られず、所望の作業が実行できないおそれがある。次に、この点を鑑みた制御処理を第1の実施形態の変形例として説明する。
【0054】
図9は本発明の第1の実施の形態の変形例に係るホイールローダにおいて第1駆動方式から第2駆動方式に移行する際に実行される処理のフローチャートである。この変形例では、上記点を鑑み、油圧ポンプ4によってパワーが要求されているときには、エンジン1のパワーを油圧ポンプ4に優先的に供給するものとする。すなわち、作業装置50が要求するパワー(油圧パワー:Poil)を油圧制御装置21で演算し、ハイブリッド駆動制御装置20において、エンジン1の出力の上限(エンジン最大パワー:Pengmax)から油圧パワーPoilを減じた値(走行パワー制限値:Psub)以下で走行用電動機の出力(走行パワー:Prun)が制限されるように制御するものとする。
【0055】
図9に示したフローチャートは、S104の処理の代わりにS401,402,403の処理を実行する点で図8のものと異なる。また、図8のフローチャートと同じ処理については同じ符号を付して説明は省略する。
【0056】
図9に示すフローチャートにおいて、S103が終了したら、油圧制御装置21で演算された油圧パワーPoilと、ハイブリッド駆動制御装置20から出力されるエンジン最大パワーPengmaxが非常運転制御部32に入力される(S401)。そして、非常運転制御部32は、エンジン最大パワーPengmaxから油圧パワーPoilを減じることで、非常運転時の走行パワー制限値Psubを演算する処理を実行する(S402)。
【0057】
次に、非常運転制御部32は、インバータ制御装置23で実行される走行用電動機9の制御処理に際して、トルク応答制限部46において破線73bのトルク応答性を選択することで走行用電動機9のトルクの応答性の制限をするとともに、走行用電動機9のパワーPrunの上限値が走行パワー制限値Psub以下に保持されるように走行用電動機9のパワーPrunを制限する(S403)。S403において走行パワーPrunをPsub以下に保持する方法としては、トルク応答制限部46において、走行用電動機9のトルクの最大値を制限値Psubに基づいて設定するものがある。これにより蓄電装置11又はDCDCコンバータ装置12に異常が発生した場合にも、作業装置50による作業を優先させることができ、さらに、それでも電力に余剰が生じる場合には作業をしながら走行することができる。
【0058】
なお、上記の例では、作業装置50の要求出力を優先する方式について説明したが、ホイールローダの動作によっては、走行用電動機9の要求出力を優先する場合もある。このときは、エンジン最大パワーPengmaxから走行パワーPrunを差し引いた残りのパワーで作業装置50を駆動することになる。
【0059】
次に本発明の第2の実施の形態について説明する。ここでは、走行電力供給システムにおける発電電動機6又はインバータ装置7に異常が発生した場合の非常運転について説明する。
【0060】
正常時には、車両の走行に必要な電力のほとんどを発電電動機6及びインバータ装置7を利用して発電供給している。そのため、これらに異常が生じた場合には、発電電動機6からの電力供給が遮断されたり、少なくなったりするので、車両走行は基本的に困難となる。しかしながら、第1の実施の形態でも述べたように、このような異常が生じた場所が公道であった場合や作業現場であった場合は、車両を速やかに移動させる必要がある。そのため、第1の実施の形態と同様に非常運転機能が重要となる。そこで、本実施の形態では、主に蓄電装置11の電力に依存して車両を走行させることにする。
【0061】
図10は本発明の第2の実施の形態に係るコンバータ制御装置24で実行されるDCDCコンバータ装置12の制御処理に係るブロック図を示す。この図に示すブロック図は電力供給制限部47を備えている。電力供給制限部47は、第1駆動方式が利用されている場合(通常時)には、DCバス電圧の応答性を優先させて、蓄電装置11の過放電による劣化を抑制するための電力供給制限のみを行う。一方、発電電動機6又はインバータ装置7の異常発生時(第2駆動方式が利用されている場合)には、通常時よりも電力供給制限量を大きくする。具体的には、走行用電動機9に供給可能な電力量等に基づいて電力供給制限量を決定し(後述)、当該電力供給制限量に基づいて走行用電動機9への電力供給を制限する。これにより、車両走行に最低限必要な電力が確保されるとともに、結果的に走行用電動機9のトルク制限が実施される。
【0062】
図10に示すように、コンバータ制御装置24は、上位のハイブリッド駆動制御装置20から入力されるDCバス電圧指令(Vdc指令)に基づいてコンバータ電流指令を制御器81で生成し、当該コンバータ電流指令を電力供給制限部47に出力する。制御器81では、Vdc指令の他にDCバス電圧の実測値Vdcが入力されており、DCバス電圧の指令値と実測値の偏差がゼロに近づくように電流指令を生成するフィードバック制御が行われている。
【0063】
電力供給制限部47では、制御器81から入力されるコンバータ電流指令を所定の値に低減して制御器82に出力する。そして、制御器82では、電力供給制限部47からのコンバータ電流指令に基づいてコンバータ電圧指令を生成する。制御器82では、コンバータ電流指令の他にコンバータ電流の実測値が入力されており、コンバータ電流の指令値と実測値の偏差がゼロに近づくようにコンバータ電圧指令を生成するフィードバック制御が行われている。
【0064】
上記の処理により、発電電動機6又はインバータ装置7に異常が発生した場合にも、DCバス40の電圧が所定の値に制御され、さらに走行用電動機9に対して所定の電力が供給される。
【0065】
図11は本発明の第2の実施の形態に係るホイールローダにおいて第1駆動方式から第2駆動方式に移行する際に実行される処理のフローチャートである。
【0066】
この図に示す処理が開始されると、非常運転判定部31は、走行電力供給システムを構成する各装置に係る異常情報を各制御装置21,22,23,24から入力する(S200)。そして、S200で入力した異常情報に基づいて発電電動機6又はインバータ装置7に異常が発生したか否かを判定する(S201)。S201において、これら装置6,7に異常が無ければ、S200に戻って異常が発生するまで処理を繰り返す。一方、S201において装置6,7に異常が発生したと判定した場合には、非常運転の実行を決定する(S202)。
【0067】
S202で非常運転の実行を決定したら、非常運転判定部31は、エンジン1で発電電動機6を駆動したときにインバータ装置7で整流発電動作が可能かどうかを判定する(S203)。本実施の形態では発電電動機6によって三相交流電流を発生するが、その中の少なくとも1つの交流電流が整流可能であれば、インバータ装置7での整流発電動作が可能であると判定してS204に進む。一方、S203でインバータ装置7内のダイオード部の異常等で発電電動機6の整流発電動作が困難であると判定した場合にはS206に進む。なお、S200からS203までの処理は、非常運転判定部31によって実行される。
【0068】
S203において整流発電動作が可能であると判定された場合には、回避運転制御部32は、エンジン1を所定の回転数で一定速駆動を行う(S204)。これにより発電電動機6によって所定の電力が発生する。そして、回避運転制御部32は、蓄電装置11の残容量及び発電電動機6の発電量に基づいて、電力供給制限部47(図10参照)における電力供給制限量を決定する(S205)。この電力供給制限量の決定方法としては、車両の走行に最低限必要な電力と、当該必要最低電力を出力する時間(すなわち、非常運転時に担保する最小走行距離)に基づいて算出すればよい。その際、蓄電装置11の残容量及び発電電動機6の発電量と、前記必要最低電力とから推定走行可能距離を算出し、当該算出結果を車内パネル65に表示しても良い。電力供給制限量が決定したらS207に進む。
【0069】
一方、S203において整流発電動作が困難であると判定された場合には、回避運転制御部32は、蓄電装置11の残容量に基づいて電力供給制限部47における電力供給制限量を決定する(S206)。電力供給制限量の決定方法はS205での考え方と同じであり、推定走行可能距離を車内パネル65に適宜表示しても良い。電力供給制限量が決定したらS207に進む。
【0070】
S207では、非常運動制御部32は、コンバータ制御装置24で実行されるDCDCコンバータ装置12の制御処理において、S205又はS206で決定した電力供給制限量に基づいて電力供給制限部47を稼働させる。これにより、走行用電動機9に供給される電力が制限される。さらに、第1の実施の形態で説明したS104の処理と同様に、インバータ制御装置23内に構成される走行用電動機9の制御部でトルク指令応答制限部46(図7参照)を起動する(S208)。なお、このときの応答制限は、蓄電装置11の残容量、発電電動機6の発電量、S205又はS206での電力供給制限量の大きさに応じて、可能な限り車両の走行が継続できるように決定することが好ましい。S208が完了したら、非常運転を開始する(S209)。これにより第1駆動方式よりも走行用電動機9のトルクの応答性及び大きさを制限しながら、車両を走行させることができる。S209が終了したら、S200に戻ってS200以降の処理を繰り返す。
【0071】
上記のように、本実施の形態によれば、発電電動機6又はインバータ装置7に異常が発生した場合でも、非常運転管理部30において、車両走行に最低限必要な電力を走行用電動機9に供給されるとともに、走行用電動機9のトルク応答が制限されるので、ホイールローダの走行を継続することが可能となる。
【0072】
なお、本実施の形態においても場合によっては、第1の実施の形態の変形例と同様に作業装置50を動作させる必要が生じることがある。しかし、本実施の形態では、走行用電動機9の出力は電力供給制限部47により制限されているため、作業装置50のパワーは要求通り出力できる。したがって、作業装置50を動作させる場合も同様に、図11のフローチャートに従って非常運転を実行すればよい。
【0073】
ところで、上記の各実施の形態では、非常運転管理部30が非常運転の実行が可能と判定した場合に、自動的に非常運転が実施される場合について説明した。しかし、オペレータからの指示により非常運転動作を開始するためのシステム(非常運転開始指示系)を追加しても良い。その際、非常運転の開始を指示する際に参照するために、走行電力供給システムを構成する各装置の異常状態及び非常運転可否状態を車内パネル65に表示するシステム(状態表示系)を追加しても良い。このような非常運転開始指示系及び状態表示系をホイールローダに設置した場合の処理を例えば第1の実施の形態で示した図8のフローチャートに追記すると、図12に示すフローチャートとなる。
【0074】
図12は本発明の第1の実施の形態の他の変形例に係るホイールローダにおいて第1駆動方式から第2駆動方式に移行する際に実行される処理のフローチャートである。このフローチャートは、S300,301の処理を実行する点で図8のものと異なる。図8のフローチャートと同じ処理については同じ符号を付して説明は省略する。
【0075】
S102で非常運転実行が決定されたら、非常運転判定部31は、車内パネル65に表示信号を出力して、走行電力供給システムを構成する各装置の状態及び非常運転の可否状態を表示する(S300)。すなわち、S100で入力した情報に基づいて異常が発生していると判定される装置名を表示するとともに、S100で入力した情報に基づいて正常な装置のみで非常運転が可能か否かを表示する。これにより、オペレータは、非常運転を開始するか否かを判断することができる。S300が終了したらS301に進む。
【0076】
S301は、オペレータからの非常運転開始指示があるまで非常運転の開始を待機するための処理であり、非常運転スイッチ66の切替位置が「ON」にあるか否かを判定する。この判定にはスイッチ66から制御装置200に入力されるスイッチ指令の内容を利用する。非常運転スイッチ66の切換位置がONの場合には、S103に進んで最終的に非常運転を実行する。一方、切換位置がOFFの場合には、S100に戻って以降の処理を繰り返す。
【0077】
このように構成したホイールローダによれば、オペレータの指示があってはじめて非常運転が実行されるので、非常運転が実行されていることをオペレータに認知させることができる。また、不必要な非常運転を回避することができる。さらに、異常が発生した装置や非常運転の可否状態が表示されるので、非常運転の実行を決断する前にホイールローダの状態を適切に把握することができる。
【0078】
以上述べてきたように、本発明によれば、走行電力供給システムの一部に異常が発生した場合においても、正常な装置に非常運転に必要な制御機能を付加することができるとともに、通常走行に比べ走行用電動機のトルクの応答や大きさを制限することで、その場で立ち往生することなく、支障の無い場所まで車両を退避させるが可能となる。
【0079】
なお、上記の各実施の形態では、予め設定しておいた装置に異常が発生したときのみに、非常運転が実行される場合について説明してきたが、S100やS200で各制御装置から入力した異常情報に基づいて異常が発生している装置を特定し、当該異常が発生している装置に応じて異なる非常運転を実行するように構成しても良い。すなわち、図8のフローチャートの場合を例に挙げれば、S100の情報に基づいて蓄電装置11又はコンバータ装置12に異常が発生していると判定した場合には、同じ図8中のS102以降の処理を実行し、一方、S100の情報に基づいて発電電動機6又はインバータ装置7に異常が発生していると判定した場合には、図11のS202以降の処理を実行するようにホイールローダを構成しても良い。
【符号の説明】
【0080】
1…エンジン、4…油圧ポンプ、50…フロント作業装置、6…発電電動機(モータ・ジェネレータ:M/G)、7…M/Gインバータ装置、8…プロペラシャフト、9…走行用電動機、10…走行用インバータ装置、11…蓄電装置、12…DCDCコンバータ装置、20…ハイブリッド駆動制御装置、21…油圧制御装置、22…エンジン制御装置、23…インバータ制御装置、24…コンバータ制御装置、30…非常運転管理部、31…非常運転判定部、32…非常運転制御部、40…DCバス、41…平滑用コンデンサ、45…DCバス電圧制御系、46…トルク応答制限部、47…電力供給制限部、65…車内パネル(表示装置)、66…非常運転スイッチ、200…制御装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンによって駆動され、油圧アクチュエータを駆動するための油圧ポンプと、
直流電力を蓄えるための蓄電装置と、
直流電流と交流電流の変換を行う第1及び第2インバータ装置と、
前記第1及び第2インバータ装置が接続された回路の電圧を変換するコンバータ装置と、
前記第1インバータ装置からの交流電流によって前記油圧ポンプの駆動トルクを発生する発電電動機と、
前記第2インバータ装置からの交流電流によって車両の駆動トルクを発生する電動機と、
前記第1及び第2インバータ装置を制御するための制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記回路に接続され前記電動機に電流を供給するために必要な各種装置に異常が発生したときには、当該異常が発生した装置が異常発生前に実行していた処理と同一又は当該処理に相当する他の処理を他の正常な装置で実行することで、前記第2インバータ装置を介して前記電動機を駆動することを特徴とする作業車両。
【請求項2】
請求項1に記載の作業車両において、
前記制御装置は、前記異常が発生したとき、前記電動機のトルクの応答性及び大きさの少なくとも一方を異常発生前と比較して制限することを特徴とする作業車両。
【請求項3】
請求項2に記載の作業車両において、
前記制御装置は、前記蓄電装置、前記コンバータ装置、前記発電電動機及び前記第1インバータ装置のいずれかに異常が発生したかを判定し、当該異常が発生した装置に対応した駆動方式で前記電動機を駆動することを特徴とする作業車両。
【請求項4】
請求項3に記載の作業車両において、
前記駆動方式は、前記蓄電装置又は前記コンバータ装置に異常が発生したときに利用されるものであり、
前記制御装置は、前記駆動方式において、前記コンバータ装置が実行していた電圧変換処理を前記第1インバータ装置に実行させることで前記電動機を駆動することを特徴とする作業車両。
【請求項5】
請求項4に記載の作業車両において、
前記駆動方式は、さらに前記電動機のトルクの応答性を異常発生前よりも制限するものであり、
前記制御装置は、前記駆動方式において、前記電動機のトルク応答速度を、前記エンジンの出力応答速度に近づくように制限することを特徴とする作業車両。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の作業車両において、
前記制御装置は、前記駆動方式において、前記油圧ポンプによってパワーが要求されているときには、前記エンジンのパワーを前記油圧ポンプに優先的に供給することを特徴とする作業車両。
【請求項7】
請求項3に記載の作業車両において、
前記駆動方式は、前記発電電動機又は前記第1インバータ装置に異常が発生したときに利用されるものであり、
前記制御装置は、前記駆動方式において、前記コンバータ装置で実行される前記電動機への電力供給制限処理の制限量の大きさを異常発生前よりも大きくすることを特徴とする作業車両。
【請求項8】
請求項7に記載の作業車両において、
前記駆動方式おいて前記コンバータ装置で実行される電力供給制限処理の制限値の大きさは、前記蓄電装置の残容量に基づいて算出されることを特徴とする作業車両。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の作業車両において、
前記蓄電装置、前記コンバータ装置、前記発電電動機及び前記第1インバータ装置の状態を表示するための表示装置をさらに備えることを特徴とする作業車両。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の作業車両において、
前記異常が発生した装置が異常発生前に実行していた処理と同一又は当該処理に相当する他の処理を他の正常な装置で実行することで前記電動機を駆動することを前記制御装置に許可するための指示装置をさらに備えることを特徴とする作業車両。
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンによって駆動され、油圧アクチュエータを駆動するための油圧ポンプと、
直流電力を蓄えるための蓄電装置と、
直流電流と交流電流の変換を行う第1及び第2インバータ装置と、
前記第1及び第2インバータ装置が接続された回路の電圧を変換するコンバータ装置と、
前記第1インバータ装置からの交流電流によって前記油圧ポンプの駆動トルクを発生する発電電動機と、
前記第2インバータ装置からの交流電流によって車両の駆動トルクを発生する電動機と、
前記第1及び第2インバータ装置を制御するための制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記回路に接続され前記電動機に電流を供給するために必要な各種装置に異常が発生したときには、当該異常が発生した装置が異常発生前に実行していた処理と同一又は当該処理に相当する他の処理を他の正常な装置で実行することで、前記第2インバータ装置を介して前記電動機を駆動することを特徴とする作業車両。
【請求項2】
請求項1に記載の作業車両において、
前記制御装置は、前記異常が発生したとき、前記電動機のトルクの応答性及び大きさの少なくとも一方を異常発生前と比較して制限することを特徴とする作業車両。
【請求項3】
請求項2に記載の作業車両において、
前記制御装置は、前記蓄電装置、前記コンバータ装置、前記発電電動機及び前記第1インバータ装置のいずれかに異常が発生したかを判定し、当該異常が発生した装置に対応した駆動方式で前記電動機を駆動することを特徴とする作業車両。
【請求項4】
請求項3に記載の作業車両において、
前記駆動方式は、前記蓄電装置又は前記コンバータ装置に異常が発生したときに利用されるものであり、
前記制御装置は、前記駆動方式において、前記コンバータ装置が実行していた電圧変換処理を前記第1インバータ装置に実行させることで前記電動機を駆動することを特徴とする作業車両。
【請求項5】
請求項4に記載の作業車両において、
前記駆動方式は、さらに前記電動機のトルクの応答性を異常発生前よりも制限するものであり、
前記制御装置は、前記駆動方式において、前記電動機のトルク応答速度を、前記エンジンの出力応答速度に近づくように制限することを特徴とする作業車両。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の作業車両において、
前記制御装置は、前記駆動方式において、前記油圧ポンプによってパワーが要求されているときには、前記エンジンのパワーを前記油圧ポンプに優先的に供給することを特徴とする作業車両。
【請求項7】
請求項3に記載の作業車両において、
前記駆動方式は、前記発電電動機又は前記第1インバータ装置に異常が発生したときに利用されるものであり、
前記制御装置は、前記駆動方式において、前記コンバータ装置で実行される前記電動機への電力供給制限処理の制限量の大きさを異常発生前よりも大きくすることを特徴とする作業車両。
【請求項8】
請求項7に記載の作業車両において、
前記駆動方式おいて前記コンバータ装置で実行される電力供給制限処理の制限値の大きさは、前記蓄電装置の残容量に基づいて算出されることを特徴とする作業車両。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の作業車両において、
前記蓄電装置、前記コンバータ装置、前記発電電動機及び前記第1インバータ装置の状態を表示するための表示装置をさらに備えることを特徴とする作業車両。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の作業車両において、
前記異常が発生した装置が異常発生前に実行していた処理と同一又は当該処理に相当する他の処理を他の正常な装置で実行することで前記電動機を駆動することを前記制御装置に許可するための指示装置をさらに備えることを特徴とする作業車両。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−39874(P2013−39874A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178151(P2011−178151)
【出願日】平成23年8月16日(2011.8.16)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月16日(2011.8.16)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】
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