説明

作業車

【課題】運転者が、後方を向く動作を行うことなく、常に前方を向いて、容易に迅速にロールベールのラップ作業を行なうことができる、ラップ装置を装備した作業車を提供する。
【解決手段】作業車(2)が、屈折操向式の車両本体(4)と、車両本体(4)の前部に上下に揺動作動を自在に取付けられた平行リンク式のリフトアーム装置(6)と、リフトアーム装置(6)の先端に取付けられ短円柱状の牧草の塊であるロールベール(R)の外側にフィルムを巻き付けるラップ装置(8)を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、短円柱状の牧草の塊であるロールベールの外側にフィルムを巻き付けるラップ装置を備えた作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
ロールベールにフィルムを巻き付ける周知のラップ装置は、農用トラクタの後部にけん引移動を自在に連結されている(例えば、特許文献1、2参照)。トラクタの運転者はトラクタを、ロールベーラによって作成され牧草地の諸所に放置されているロールベールの所に移動させ、ラップ装置とロールベールの位置を合わせ、ロールベールを載置し、ラップ作業を行なう。
【特許文献1】特開平5−23041号公報(図6)
【特許文献2】特開2003−265031号公報(図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述したとおりの、トラクタに装備されたラップ装置には、次のとおりの解決すべき課題がある。
【0004】
すなわち、ラップ装置がトラクタの後部に装備されているので、ロールベールとラップ装置の位置を合わせるために、トラクタの運転者には常に後を向いた動作が強いられる。したがって、ラップ作業を終日行なうような場合には、一日中後方を向いた動作が要求されるので、またトラクタを後進させてのロールベールとの位置合わせには時間を要するので、身体の負担が大きい。
【0005】
本発明は上記事実に鑑みてなされたもので、その技術的課題は、運転者が、後方を向く動作を行うことなく、常に前方を向いて、容易に迅速にロールベールのラップ作業を行なうことができる、ラップ装置を装備した作業車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば上記技術的課題を解決する作業車として、屈折操向式の車両本体と、この車両本体の前部に上下に揺動作動を自在に取付けられた平行リンク式のリフトアーム装置と、リフトアーム装置の先端に取付けられ短円柱状の牧草の塊であるロールベールの外側にフィルムを巻き付けるラップ装置と、を備えている、ことを特徴とする作業車が提供される。
【0007】
好適には、ラップ装置は、作業車の前方に向けて平行に延び突出した左右一対の、円柱状のロールベールを積載しその円周方向に回転させる回転作動を自在に取付けられたローラと、この一対のローラの上方に位置しロールベールにフィルムを巻き付ける、鉛直軸線を中心に回転作動を自在に取付けられたフィルム巻付装置と、を備えている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に従って構成された作業車は、屈折操向式の車両本体の前部に上下に揺動作動を自在に取付けられた平行リンク式のリフトアーム装置を備え、リフトアーム装置の先端にラップ装置を備えている。したがって、運転者は後方を向く動作を行うことなく、常に前方を向いて、さらに屈折操向式の本体および平行リンク式リフトアーム装置によって、ラップ装置を容易に迅速にロールベールに位置付けラップ作業を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に従って構成された作業車について、好適実施形態を図示している添付の図1を参照して、さらに詳細に説明する。
【0010】
全体を番号2で示す作業車は、屈折操向式の車両本体4と、この車両本体4の前部に上下方向に揺動作動を自在に取付けられた平行リンク式のリフトアーム装置6と、リフトアーム装置6の先端に取付けられ、短円柱状の牧草の塊であるロールベールRの外側にフィルムを巻き付けるラップ装置8を備えている。
【0011】
車両本体4は、前車輪10aおよび前記リフトアーム装置6を有した前車体10と、後車輪12a、運転席12bおよびエンジン室12cを有した後車体12を備えている。前車体10と後車体12は鉛直に延びる軸線11を中心に屈折操向を自在に取付けられている。
【0012】
リフトアーム装置6は、前車体10の上端部に基端が回動自在に取付けられたリフトアーム6aと、リフトアーム6aを揺動作動させるリフトシリンダ6bと、リフトアーム6aの揺動作動に応じてリフトアーム6aの先端のラップ装置8を上下に実質上平行に移動させるリンク機構6cを備えている。リンク機構6cはさらに、リフトアーム6aの先端を中心にラップ装置8を前後に傾動させるチルトシリンダ6dを備えている。
【0013】
ラップ装置8は、リフトアーム装置6の先端に取付けられた周知の迅速連結装置であるクイックカプラ14を介して取付けられている。
【0014】
ラップ装置8は、クイックカプラ14を介してリフトアーム装置6の先端に取付けられるフレーム本体16と、フレーム本体16から作業車2の前方(図1の右方)に向けて平行に延び突出した左右一対の、円柱状のロールベールRを積載しその周方向に回転させる回転作動を自在に取付けられたローラ18,18と、この一対のローラ18,18の上方に位置しロールベールRにフィルムを巻き付ける、鉛直軸線9を中心に回転作動を自在にフレーム本体16に取付けられたフィルム巻付装置20を備えている。
【0015】
ローラ18は、突出した先端を半球面にした丸棒状に形成され、フレーム本体16側の基端に取付けられたモータ19により、先端側から見て矢印X1で示す時計方向に回転作動される。一対のローラ18,18は、基部に備えた油圧シリンダによる拡縮手段22によって、間隔Wを拡縮可能に取付けられている。
【0016】
フィルム巻付装置20は、フレーム本体16に立設され、ローラ18,18の上方に向けて曲がり延びた固定アーム20aと、固定アーム20aの先端に取付けられた、鉛直軸線9を中心に回動自在に取付けられ水平に延び先端側を下方に向けて直角に曲げた回動アーム20bおよび回動アーム20bを回転作動させるモータ20cを備えている。回動アーム20bの先端部にはロールフィルムを装填したフィルム繰出装置20dが備えられている。
【0017】
回動アーム20bは、上方のモータ20c側から見て、ロールベールRの周りを矢印Zで示す時計方向に回転され、フィルム繰出装置20dのフィルムがロールベールRに巻き付けられる。
【0018】
次に、ラップ装置8を備えた作業車2による、ロールベールRのラップ作業の手順について説明する。
【0019】
(1)ロールベールに接近:
作業車2を運転して前進走行状態(図1の左から右に進む状態)で、地面Gに円周面を置いた状態のロールベールRにおの円形端面側から接近させ、ラップ装置8の一対のローラ18,18をロールベールRの円周面の両側に差し込む(矢視A−A(a)の状態)。この工程においては、ラップ装置8の一対のローラ18,18の幅Wを、ローラ18が地面GとロールベールRの円周面の間に入る間隔にし、リフトアーム装置6のチルトシリンダ6dによりラップ装置8をやや前傾に、すなわちローラ18の先端を矢印Y1で示す下方に傾けて、また車両本体4を左右に屈折操向させて位置決めすることにより、容易に迅速にローラ18の先端をロールベールRと地面Gの間に差し込むことができる。
【0020】
(2)ロールベール載置:
作業車2をさらに前進させ、ローラ18の先端を矢印Y2で示す上方に戻しながら、円柱状のロールベールR全体がローラ18の上に位置するまでローラ18を差し込み、ローラ18,18の幅Wをやや狭めながらロールベールRを、リフトアーム装置6のリフトアームシリンダ6bによってラップ装置8を持上げ、地面Gから持上げる(矢視A−A(b)の状態)。
【0021】
(3)ラッピング:
ラップ装置8のフィルム巻付装置20を作動させ、フィルムFをロールベールRに巻き付ける(矢視A−A(b)の状態)。フィルムFは比較的薄いので同じ位置で所要回数巻き付けたら、ローラ18を回転させ(矢印X1)、ロールベールRを所定の角度回動させ(矢印X2)、回動させた位置で新たにフィルムFをロールベールRに巻き付ける。ローラ18とフィルム巻付装置20を間欠的に作動させ、ロールベールRの外側全面にフィルムFを巻き付ける。
【0022】
(4)集積場に移送:
フィルムFがラップされたロールベールRを一対のローラ18、18に載置した状態で作業車2を走行させるとともに、リフトアーム装置6を作動させ、ラップ装置8を上昇、下降、前後傾させて、ロールベールRを集積場に移送し所望の位置に格納する。
【0023】
上述したとおりのラップ装置8を備えた作業車2の作用効果について説明する。
【0024】
作業車2は、屈折操向式の車両本体4の前部に上下に揺動作動を自在に取付けられた平行リンク式のリフトアーム装置6を備え、リフトアーム装置6の先端にラップ装置8を備えている。
【0025】
したがって、運転者は後方を向く動作を行うことなく、常に前方を向いて、さらに屈折操向式の車両本体4および平行リンク式リフトアーム装置6によって、ラップ装置8を容易に迅速にロールベールRに位置付けラップ作業を行なうことができる。
【0026】
また、ラップ装置8は、クイックカプラ14を介してリフトアーム装置6の先端に取付けられるフレーム本体16と、フレーム本体16から作業車2の前方に向けて平行に延び突出した左右一対の、円柱状のロールベールRを積載しその周方向に回転させる回転作動を自在に取付けられたローラ18,18と、この一対のローラ18,18の上方に位置しロールベールRにフィルムFを巻き付ける、鉛直軸線9を中心に回転作動を自在にフレーム本体16に取付けられたフィルム巻付装置20を備えている。
【0027】
したがって、ラップ装置8の、前方に向けて平行に延び突出したローラ18,18は、屈折操向式の車両本体4および平行リンク式のリフトアーム装置6と相俟って、特にロールベールRのラップ装置8への載置、格納場所への移送などを、例えば荷役作業に用いるフォークリフトのように、容易に迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に従って構成された作業車の側面図。
【符号の説明】
【0029】
2:作業車
4:車両本体
6:リフトアーム装置
8:ラップ装置
18:ローラ
20:フィルム巻付装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈折操向式の車両本体と、
この車両本体の前部に上下に揺動作動を自在に取付けられた平行リンク式のリフトアーム装置と、
リフトアーム装置の先端に取付けられ短円柱状の牧草の塊であるロールベールの外側にフィルムを巻き付けるラップ装置と、を備えている、
ことを特徴とする作業車。
【請求項2】
ラップ装置が、
作業車の前方に向けて平行に延び突出した左右一対の、円柱状のロールベールを積載しその円周方向に回転させる回転作動を自在に取付けられたローラと、
この一対のローラの上方に位置しロールベールにフィルムを巻き付ける、鉛直軸線を中心に回転作動を自在に取付けられたフィルム巻付装置と、を備えている、
ことを特徴とする請求項1記載の作業車。

【図1】
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【公開番号】特開2010−35498(P2010−35498A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−203061(P2008−203061)
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【出願人】(000190297)キャタピラージャパン株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】