説明

作用剤を含んだポリマーネットワーク、その製造方法、及びその使用方法

【課題】本発明は、作用剤の解放を一様に大きく遅延させることができる改良されたポリマーネットワークを提供することを目的とする。
【解決手段】上記目的は、作用剤を含んだポリマーネットワークを製造する方法であって、
重合可能なオリゴマーと作用剤、及び適宜更なるモノマー及び/又は助剤を混合する工程、及び得られた混合物を熱的又は光化学的に重合する工程を含む方法において、重合可能な混合物が以下の成分:(A)19.9質量%〜99.8質量%のオリゴマーであって、モノ(メト)アクリレート基を含み、平均モル量Mが350〜5000g/molの範囲であり、及びエポキシ(メト)アクリレート類、ポリエステル(メト)アクリレート類、ウレタン(メト)アクリレート類又はポリエーテル(メト)アクリレート類の群から選ばれ、且つ1つのオリゴマー分子に対する(メト)アクリレート基の数の算術平均値が2.1〜5の範囲であるオリゴマー、(B)0質量%〜49.8質量%の少なくとも1種のモノマーであって、オレフィン基を含み、及びモル量Mが350g/mol未満の前記少なくとも1種のモノマー、(C)前記光重合可能な混合物に溶解可能な、0.1質量%〜8質量%の少なくとも1種の開始剤、(D)前記光重合可能な混合物に分散可能又は溶解可能な、0.1質量%〜80質量%の少なくとも1種の作用剤、(E)合わせて0質量%〜20質量%となる、更なる助剤及び/又は添加剤、を含み、且つ上記各質量%は、前記重合可能な混合物の全成分の合計量に基いて表され、及び使用される成分(A)〜(E)全体の量が100%であることを特徴とする方法により達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メト)アクリレート、適宜更なるモノマー、及び作用剤を含むオリゴマーからなる作用剤を含んだポリマーネットワークの製造方法、その製造方法により得られるポリマーネットワーク、及び様々な目的、より詳細には、材料の保護又は農作物保護のためのそのネットワークの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
使用される作用剤には多くの用途があるため、望まない副作用を避けるためにその系において使用される作用剤は比較的低い濃度のみで存在させるが、この低い濃度を比較的長い期間にわたって確かに維持させることが求められる。
【0003】
この例としては、塗料、フィルム、又は他の材料の防腐剤として使用され、且つ常に最小有効濃度のみでその系中に存在すべき殺生物剤が含まれる。この目的のために、作用剤の遅延解放をもたらす系が求められる。
【0004】
作用剤の解放を遅延させるために、カプセルに封じ込めた作用剤が知られている。例えば、WO90/02655、WO2004/000953、又はEP1460089A1に開示されているように、作用剤は、例えば、マイクロカプセル(コア−シェルカプセル化)中に封入できる。しかしながら、この方法ではカプセルが破壊されると直ぐに作用剤が解放されるので、長期間に亘る一定の割合での解放はできない。
【0005】
さらに、作用剤を、その作用剤が遅延して解放されるポリマーネットワークに組み込むことが知られている。また、この方法は、マトリクス封入(matrix encapsulation)として知られている。
【0006】
US3,220,960には、架橋度の低い親水性共重合体と20〜97%の水とを含む成形体が開示されている。その架橋された共重合体の主な構成要素は、モノオレフィンモノマー、具体的には(メト)アクリル酸エステル、及びまた、第二の構成要素として、少なくとも2種の(メト)アクリル酸基を含む(メト)アクリル酸エステルである。水中に溶解されるものは、例えば、抗菌性物質のような薬剤であることが多い。ハイドロゲル成形体は保護することが要求される媒質中に添加されても良い。
【0007】
DE 25 28 068 C2には、作用剤を含む共重合体の非水溶性の親水性ゲルが開示されている。その共重合体は、400〜8000g/molの分子量を有し、且ついずれの場合にも2末端オレフィン基及び30〜90質量%の水溶性モノオレフィンモノマー(また適当な場合には、非水溶性モノマーの混合物中に含む)を含む、10〜70質量%の疎水性のマクロマーで構成される。その作用剤は、重合前でさえそれら作用剤をモノマー混合物中に溶解させるか、又は重合体が製造された後にそれら作用剤をゲルに吸収させることによりそのゲル中に収容される。作用剤の性質に依存して、水中に作用剤の90%が解放される時間が30〜300時間となるような例が記載される。多くの処理においてこれは迅速すぎる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO90/02655
【特許文献2】WO2004/000953
【特許文献3】EP1460089A1
【特許文献4】US3,220,960
【特許文献5】DE 25 28 068 C2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
作用剤の解放を一様に大きく遅延させることができる改良されたポリマーネットワークを提供することが本発明の目的であった。ここで、そのネットワーク構造は、とても単純に異なる作用剤の使用、及び求められる解放割合に適合するべきである。さらに、その作用剤は、そのネットワークへの組み込みの結果として改変されるべきではない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従って、作用剤を含んだポリマーネットワークを製造する方法であって、重合可能なオリゴマーと作用剤、及び適宜更なるモノマー及び/又は助剤を混合する工程、及び得られた混合物を熱的又は光化学的に重合する工程を含む方法において、その重合可能な混合物が、(A)19.9質量%〜99.8質量%のオリゴマーであって、(メト)アクリレート基を含み、平均モル量Mが350〜5000g/molの範囲であり、及びエポキシ(メト)アクリレート類、ポリエステル(メト)アクリレート類、ウレタン(メト)アクリレート類又はポリエーテル(メト)アクリレート類の群から選ばれ、且つ1つのオリゴマー分子に対する(メト)アクリレート基の数の算術平均値が2.1〜5の範囲であるオリゴマー、(B)0質量%〜49.8質量%の少なくとも1種のモノマーであって、オレフィン基を含み、及びモル量Mが350g/mol未満の前記少なくとも1種のモノマー、(C)前記光重合可能な混合物に溶解可能な、0.1質量%〜8質量%の少なくとも1種の開始剤、(D)前記光重合可能な混合物に分散可能又は溶解可能な、0.1質量%〜80質量%の少なくとも1種の作用剤、(E)合わせて0質量%〜20質量%となる、更なる助剤及び/又は添加剤、を含み、且つ上記各質量%は、前記重合可能な混合物の全成分の合計量に基いて表され、及び使用される成分(A)〜(E)全体の量が100%であることを特徴とする方法を発見した。
【0011】
また、上述の方法により得ることができる作用剤を含んだポリマーネットワークを発見した。
【0012】
最後に、工業材料、フィルム、塗料、及び分散物の保護の目的のための、及びまた農作物保護における、上述の作用剤を含んだポリマーネットワークの使用方法を発見した。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1及び実施例2における、作用剤の解放時間を配列した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の詳細を以下にこれから説明する。
【0015】
オリゴマー(A)
本発明のポリマーネットワークを構成するための重合可能な混合物は、(メト)アクリレート基を有する少なくとも1種のオリゴマー(A)を含む。
【0016】
使用されるオリゴマー(A)は、エポキシ(メト)アクリレート、ポリエステル(メト)アクリレート、ウレタン(メト)アクリレート、又はポリエーテル(メト)アクリレートの群から選択される少なくとも1種である。また、2種以上の異なるオリゴマー(A)を使用することができ、それにより効果が増大することが期待される。またさらに、使用されるオリゴマーは上述の構造的特徴を2種以上有しても良い。例えば、エーテル、エポキシ、及びウレタン単位を含むオリゴマーを使用することができる。またそれゆえ、ポリエステル(メト)アクリレート及びポリエーテル(メト)アクリレートの言葉にはそれぞれ、ポリエステルエーテル(メト)アクリレートが含まれる。
【0017】
この種類のオリゴマー及びそれらの混合物は、基本的に当業者に公知である。そのようなオリゴマーの製造方法は、例えば、DE 102 59 673 A1、EP 280 222 A2、EP 686 621 A1、又はEP 903 363 A1に開示されている。
【0018】
ポリエーテル(メト)アクリレートは(メト)アクリル酸とアルコキシル化ポリオールのエステル化による、基本的に公知の方法で得ることができる。
【0019】
アルコキシル化ポリオールは、当業者に公知の方法により、アルキレンオキシドとポリオールの反応により得ることができる。実施可能な形態は、“Houben−Weyl,Methoden der Organischen Chemie”(Thieme Verlag Stuttgart, Heinz Kropf編集、第4版、1970年、1/6a巻、1部、373〜385ページ)に記載されている。
【0020】
ポリオールは脂肪族、脂環式、又は芳香族のポリオールを使用することができる。好ましくは、それらは直鎖の又は分岐した脂肪族ポリオールである。一般的に言って、そのポリオールは、4〜50の、好ましくは5〜40の、より好ましくは6〜30の、最も好ましくは8〜26の炭素原子を有する。好適なポリオールの例は、DE 102 59 673A1の段落[0011]〜[0026]に開示されている。好ましいポリオールは、例えば、トリメチロールブタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ネオペンチルグリコール、又はペンタエリスリトールを含み、特に好ましくは、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、及びペンタエリスリトールである。
【0021】
ポリオールはエトキシル化され、プロポキシル化され、又はエトキシル化及びプロポキシル化が混合してなされていてもよいが、好ましくはエトキシル化されたポリオールがよい。アルコキシル化の程度は、ポリマーネットワークの要求される特性に従って、当業者により設定されてよい。好ましいポリオールは、公知の方法で、それぞれの場合の平均アルコキシル化度に関して上述のアルコキシル化の割合、1〜20倍、より好ましくは5〜20倍、非常に好ましくは10〜20倍、そしてより好ましくは12〜20倍のアルコキシル化されたトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、又はペンタエリスリトールである。
【0022】
ポリエーテル(メト)アクリレートをもたらす、アルコキシル化されたポリオールと(メト)アクリル酸のエステル化反応は、DE 102 59 674A1の段落[0038]〜[0132]に記載された方法に従って実施することができる。
【0023】
ポリエステル(メト)アクリレートは、アジピン酸のようなジカルボン酸と、1,4−ブタンジオールのようなジオールと、及びまたトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、及びペンタエリスリトールのような2以上のOH基を有するアルコールとから開始される、基本的に公知の方法でポリエステルを製造することにより得ることができる。有利なことに、その(メト)アクリレート基は、例えば、ポリエステルの末端COOH基とヒドロキシエチルアクリレートのようなヒドロキシアルキル(メト)アクリレートとの反応により得ることができる。
【0024】
エポキシ(メト)アクリレートはポリエポキシドと(メト)アクリル酸の反応による、基本的に公知な方法で得ることができる。使用することができるエポキシド化合物は、例えば、脂肪族又は芳香族ポリオールのグリシジルエーテルを含む。この種類の生成物はその多くが市販のものを入手することができる。特に好ましくは、ビスフェノールA、F、又はBタイプのポリグリシジル化合物、それらの完全に水素添加された誘導体、及び1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、グリセロール、トリメチロールプロパン、及びペンタエリスリトールのような多価アルコールのグリシジルエーテルである。特に詳細には、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、及びペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテルが好ましく、より詳細にはビスフェノールAジグリシジルエーテルが好ましい。そのような反応の詳細は、DE 102 59 674 A1の段落[0133]〜[0143]に記載されている。
【0025】
本発明のさらなる実施形態においては、混合物中でポリエーテル(メト)アクリレートと共にエポキシ(メト)アクリレートを使用することができる。上述の(メト)アクリル酸とアルコキシル化されたポリオールのエステル化のうちに、使用される(メト)アクリル酸は過剰量であることが好ましい。反応混合物からの過剰量のアクリル酸の除去を回避するために、エポキシ(メト)アクリレートを形成するためのポリエポキシドを化学量論的な量で添加することにより過剰量の画分を容易に除去することができる。また、完全にエステル化したアルコキシル化ポリオール及びエポキシエステルと同様に、そのような混合物は二次的構成成分として、エステル化されていない又は部分的にエステル化されたアルコキシル化ポリオール、及びエポキシドとのそれらについての反応生成物自身のような、さらなる生成物を含んでもよい。
【0026】
ウレタン(メト)アクリレートはウレタン基及び(メト)アクリレート基の両方を含む。それらは、2以上のOH基を含む化合物と、ジイソシアネート又はポリイソシアネートと、及びまたさらに、少なくとも1種のヒドロキシアルキル(メト)アクリレートとの反応による、基本的に公知の方法により得ることができる。好適なジイソシアネート又はポリイソシアネートは、例えば、少なくとも1.8、好ましくは1.8〜5、より好ましくは2〜4のNCO官能価を有する脂肪族、芳香族、脂環式のジイソシアネート及びポリイソシアネート、及びまた、それらのイソシアヌレート、ビウレット、アロファネート、及びウレトジオンを含む。好ましくは、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート及びそれらの異性体混合物、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、及びジ(イソシアナトシクロヘキシル)メタンが挙げられる。好ましく使用することができるヒドロキシアルキル(メト)アクリレートは、2−ヒドロキシエチル(メト)アクリレート、2−又は3−ヒドロキシプロピル(メト)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メト)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メト)アクリレート、グリセロールモノ(メト)アクリレート及びジ(メト)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メト)アクリレート及びジ(メト)アクリレート、及びペンタエリスリトールモノ(メト)アクリレート、ジ(メト)アクリレート、及びトリ(メト)アクリレートを含む。2−ヒドロキシエチル(メト)アクリレートが特に好ましい。
【0027】
OH基を含む化合物として、上述のポリエステルを使用することができる。また、本発明の特に好ましい一実施の形態では、上述のエポキシ(メト)アクリレートとポリエーテル(メト)アクリレートの混合物を使用することができる。(メト)アクリル酸とのエステル化に続いて、エポキシ(メト)アクリレートはイソシアネート基と反応することができるOH基を有し、その混合物中に存在する不完全にエステル化されたアルコキシル化ポリオールはOH基を有する。ジイソシアネート及びポリイソシアネートと、及びまたヒドロキシアルキル(メト)アクリレートとの反応後に残留しているイソシアネート基は、例えば、メタノール又はエタノールのような一価アルコールとの反応により不活性化することができる。ウレタン(メト)アクリレートの製造に関するさらなる詳細は、DE 102 59 674 A1の段落[0145]〜[0171]に記載されている。
【0028】
オリゴマー(A)は350〜5000g/molの平均モル質量Mを有する。Mは好ましくは400〜3000g/molであり、より好ましくは500〜2000g/molであり、最も好ましくは600〜1500g/molである。
【0029】
オリゴマー(A)1分子あたりの(メト)アクリレート基の数の算術平均値は2.1〜5である。これにより、重合可能な混合物中に存在するオリゴマー分子全てに関する平均がわかる。その平均は、好ましくは2.5〜4.5であり、より好ましくは2.8〜4.2である。また、その平均が維持されるという条件で、結果的に、実際に2官能性又は単官能性オリゴマーがその混合物中に存在しても良い。
【0030】
基本的に可能なオリゴマー(A)の中から、当業者はポリマーネットワークの要求される特性に従って適切に選択することができる。
【0031】
重合可能な混合物中に共に使用されるオリゴマー(A)の総量は、19.9〜99.8質量%、好ましくは45〜98質量%、より好ましくは50〜96質量%、最も好ましくは55〜95質量%である。
【0032】
モノマー(B)
オリゴマー(A)に加えて、適宜、オレフィン基を含み且つモル質量が350g/molより小さい更なるモノマー(B)を使用することができる。モル質量は、300g/molより小さいことが好ましい。例えば、ネットワークの密度又はネットワークの極性のような、ポリマーネットワークの特性に要求される作用を発揮させるために、当業者はこの種類のモノマーを使用することができる。
【0033】
そのモノマーは、好ましくは1〜3のオレフィン基を有する。そのオレフィン基は、好ましくは(メト)アクリレート基及び/又はビニルエーテル基、より好ましくは(メト)アクリレート基、最も好ましくはアクリレート基である。
【0034】
使用することができるモノマー(B)の例は、C−C20のアルキル(メト)アクリレート、又は20までの炭素原子を有する芳香族ビニルを含む。例えば、メチル(メト)アクリレート、エチル(メト)アクリレート、n−ブチル(メト)アクリレート、2−エチルヘキシル(メト)アクリレート、又は4−tert−ブチルシクロヘキシル(メト)アクリレートが含まれる。適切な芳香族ビニル化合物は、例えば、ビニルトルエン、α−ブチルスチレン、4−n−ブチルスチレン、4−n−デシルスチレン、又はスチレンが含まれる。この種類の比較的無極性のモノマー(B)を用いて、極性が低減されたネットワークを得ることができる。
【0035】
本発明の一つの変形例として、更なる官能基を有するモノマーを使用することができる。適切に選択された基を使用することにより、例えば、ネットワークと作用剤の間に狙った方法で、そして、結果的に作用剤の解放速度を調節できる、水素結合の形成のような二次的な相互作用を発現させることができる。比較的極性を有するネットワークは、ポリアルキレンオキシド単位、より詳細にはポリエチレンオキシド単位を包含するOH基置換されたC−C20アルキル(メト)アクリレート又は(メト)アクリレートであるモノマー(B)により得ることができる。例えば、ヒドロキシエチル(メト)アクリレート、ヒドロキシブチル(メト)アクリレート、又はポリエチレングリコール(メト)アクリレートが含まれる。
【0036】
更なるモノマー(B)は、例えば、トリメチロールプロパンのトリ(メト)アクリル酸エステル、ペンタエリスリトールのテトラ(メト)アクリル酸エステル、及びそれらのエトキシル化及び/又はプロポキシル化誘導体、及び、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−エタンジオール、1,3−又は1,4−又は1,6−ヘキサンジオールのジ(メト)アクリル酸エステルが含まれる。加えて、また例えば、COOH基を包含するモノマー(B)を使用することも可能である。
【0037】
好ましいモノマー(B)は、例えば、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジシクロペンタジエニルアクリレート、及びトリエチレングリコールジビニルエーテルが含まれる。
【0038】
重合可能な混合物中に共に使用されるモノマー(B)の総量は、0〜49、8質量%、好ましくは5〜45質量%、より好ましくは10〜40質量%、最も好ましくは20〜40質量%である。
【0039】
また一般に、存在するモノマー(B)の量は、モノマー(B)の量がオリゴマー(A)及びモノマー(B)の合計量に基づいて50質量%以下、好ましくは45質量%以下となるように設定される。
【0040】
重合開始剤(C)
さらに、重合可能な混合物は、光重合可能な混合物中に溶解する少なくとも1種の重合開始剤を含む。当のその開始剤は、要求される重合手法に従って当業者に選択される光化学及び熱のどちらの活性化型重合開始剤であってもよい。
【0041】
使用することができる光開始剤は、例えば、モノ−又はビスアシルホスフィンオキシド、ベンゾフェノン又はヒドロキシアセトフェノン、それらの誘導体、又はこれらの光開始剤の混合物を含む。具体的な例は、DE 102 59 673 A1の段落[0179]〜[0184]に開示されている。光開始剤は、使用される放射線(radiation)の性質に従って、公知の方法で当業者により選択される。
【0042】
使用することができる熱開始剤は、もしそれらの熱安定性が早期のブレークダウンを受けないようであれば、基本的に当業者に公知の開始剤である。例としては、ジベンジルペルオキシド、tert−ブチルペルオクトエイト、tert−ブチルペルオキシイソブチレート、又は2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)が含まれる。
【0043】
重合開始剤の量は、重合可能な混合物の成分の総量に基づいて、0.1〜8質量%、好ましくは1〜6質量%、より好ましくは2〜5質量%である。
【0044】
作用剤(D)
さらに、重合可能な混合物は、少なくとも1種の作用剤(D)を含む。一般的には、“作用剤(active)”という言葉の意味を、当業者は生物体中で効果又は反応を生じさせる物質を包含するものと理解する。例としては、農薬、薬剤、殺生物剤、防腐剤、伝達物質、又は芳香剤及びフレーバーが含まれる。本発明における意味における“作用剤”という言葉は、もっと幅広い意味で使用されることを意図されており、非生物系中で何らかの効果又は反応を生じさせる物質を含むことを意図されている。そのような物質の例としては、染料又は標識化合物を含む。
【0045】
作用剤(D)は光重合可能な混合物中に溶解性又は少なくとも分散性があり、好ましくはその混合物中に溶解性があるべきである。当業者にとって、その溶解性は光重合可能な混合物の性質、より詳細にはオリゴマー(A)、及び適宜にモノマー(B)の性質に依存することは自明である。あるオリゴマーに良好な溶解性を有する作用剤が、他のオリゴマーにはそれほど良好ではない溶解性を有していても良い。その溶解性は、重合可能な混合物中に特に要求される濃度で溶解するために、少なくとも十分に高くなければならない。当業者は、その作用剤に従って、オリゴマー(A)及びモノマー(B)に関する限り、適切な選択をする。
【0046】
さらに、重合反応のうちに、ネットワーク成分と化学結合を形成することで作用剤の解放が低減しないように、作用剤はできるだけネットワークと反応しないようにするべきである。より詳細には、作用剤は、作用剤自体にいずれのオレフィン系の重合可能な基も含ませるべきではない。溶解性を有する助剤が好ましいが、助剤(D)が重合可能な混合物中に分散することができれば、本発明の実施のためには十分である。重合可能な混合物中では、基本的に公知の方法で、対応する助剤が用いられることにより、より詳細には、対応する界面活性剤が用いられることにより、助剤の分散性を高めることができる。
【0047】
重合可能な混合物中で共に使用される作用剤(D)の総量は、0.1〜80質量%であり、好ましくは1〜30質量%であり、より好ましくは2〜10質量%であり、最も好ましくは3〜8質量%である。
【0048】
本発明の好ましい一実施の形態では、作用剤は殺生物剤である。ここで、当の殺生物剤は、どのような種類の殺生物的に作用する物質でもよく、例えば、殺菌剤、殺真菌剤、除草剤、殺虫剤、殺藻剤、ダニ駆除剤、消毒薬、軟体動物駆除剤、殺線虫剤、殺鼠剤、又は抗ウイルス剤のような物質が挙げられる。
【0049】
殺生物剤は、例えば、コンテナにおけるカビの繁殖及び/又は腐敗の予防を意図した、より詳細には最初の開封後のそれらの予防を意図した、缶又はコンテナ中での保存のための殺生物剤でよい。保護のための物質の例は、より詳細には、包装されたエマルジョンペンキ又はワニスが含まれる。
【0050】
また、殺生物剤は、コーティングフィルムへのカビ、細菌、及び/又は藻類の蔓延の予防を意図した、フィルム保護のための殺生物剤でも良い。
【0051】
適切な殺生物剤の例としては、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、2−メチルイソチアゾリン−3−オン、ブロノポール、ジンクピリチオン、N2−tert−ブチル−N4−エチル−6−メチルチオ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジアミン(テルブトリン)、3−ヨード−2−プロピニルブチルカルバマート、及びメチルイソチアゾリノン、オクチルイソチアゾリノン、ジクロロオクチルイソチアゾリノン、又はベンズイソチアゾリノンのようなイソチアゾリノン誘導体が含まれる。
【0052】
さらなる例としては、農作物保護に使用することができる殺生物性の作用剤が含まれる。例としては、フェンプロピモルフ、エポキシコナゾール、又はジチアノンのような殺真菌剤、又はジカンバ、イマザピル、イマザモックス、イマザピック、メタザクロル、サフルフェナシル、又はテルブトリンのような除草剤が含まれる。
【0053】
化合物は、好ましくは、例えば、N2−tert−ブチル−N4−エチル−6−メチルチオ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジアミン(テルブトリン)のような除草剤でよい。
【0054】
本発明のさらなる好ましい実施の形態では、その作用剤は伝達物質又は香気であり、特に、フェロモンであり、特に、農作物保護のために適用されるフェロモンである。フェロモンの例は、酢酸(Z)−9−ドデセニル((Z)-dodec-9-enyl acetate)である。それらは、例えば、(キクイムシの罠への)集合のため、又は(ヨーロッパブドウヒメハマキ(European grape berry moth)の)方向感覚を喪失させるために使用することができる。
【0055】
異なる作用剤の混合物もまた使用することができることは理解される。要求される最終用途に従って、当業者は作用剤の適切な選択を行う。
【0056】
助剤及び添加剤(E)
さらに、重合可能な混合物は0〜20質量%の更なる助剤及び/又は添加剤(E)を含んでよい。このようにして、その最終用途に従って、ポリマーネットワークの特性に対応して適合させることができる。
【0057】
当の助剤及び/又は添加剤は、例えば、抗酸化剤、UV安定剤、活性剤、充填剤、顔料、染料、脱ガス剤、光沢剤、帯電防止剤、難燃剤、増粘剤、揺変剤、流量調整助剤、バインダー、消泡剤、又は界面活性剤でも良い。
【0058】
UV安定剤は、例えば、オキサニリド、トリアジン及びベンゾトリアゾール、及びベンゾフェノンで良い。それらは単独で、又は適当なフリーラジカル消去剤と共に使用することができる。適当なフリーラジカル消去剤は、例えば、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2,6−ジ−tert−ブチルピペリジン、又はそれらの誘導体(例えば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート)のような立体障害アミンである。
【0059】
さらなる助剤及び/又は添加剤(E)の量は、好ましくは0〜15質量%、より好ましくは0〜10質量%、最も好ましくは0〜5質量%である。
【0060】
ポリマーネットワークの製造
ポリマーネットワークは、好ましくは、重合処方の光化学的又は熱的に活性化されたフリーラジカル重合により製造することができる。
【0061】
この目的のために、まず、成分(A)、(C)、(D)、並びに適宜(B)及び(E)がお互いに全て混合される。混合は、例えば、単純なロールミキサーのような、典型的な混合ユニットにより行われてよい。重合開始剤は、要求される重合手法に従って選択される。重合が熱的に行われる部位では、混合時の温度は開始剤の10時間の半減期の温度、10h−t1/2より十分に低く維持するべきである。80℃より大きいT(10h−t1/2)が適切であるとわかった。
【0062】
本発明の好ましい一実施の形態では、製造は光化学的に行われる。通常、この目的のための重合性組成物は、例えば、ガラスのような好適な基材に、例えばナイフ塗布によって薄いフィルムに加工される。フィルムの厚さに制約はない。例えば、5mmまで、通常2mmまでの厚さのフィルムでもよい。フィルムの厚さは、10〜500μm、好ましくは20〜350μm、より好ましくは30〜250μm、最も好ましくは50〜200μmが適当であることがわかった。
【0063】
その後、そのフィルムは重合のための適当な線源で照射されて良い。照射硬化は好ましくは紫外線又は紫外可視光への照射により行われる。使用される線源の例としては、高圧水銀灯、レーザー、パルスランプ(閃光)、ハロゲンランプ、又はエキシマエミッターが含まれる。また、二以上の線源が硬化のために使用することができることが理解され、またそれらの線源がそれぞれ異なる波長範囲で放射されることも理解される。
【0064】
また、もし適切であれば、照射は、例えば不活性ガス雰囲気下のように、酸素の無い状態で実施することができる。適当な不活性ガスは、より詳細には窒素、希ガス、又は二酸化炭素を含む。
【0065】
架橋結合の後に、重合フィルムは基材から除去することができる。それはそのままで使用することができ、でなければ、例えば重合後に細片を形成するために細かに砕くことができ、又は粉末にするためにすりつぶすことができる。得られる粒子は、例えば、5〜100μm、好ましくは10〜60μmの直径を有する。しかし、本発明がその直径に制限されることはない。また、重合フィルムを基材と一緒に使用することもでき、又は基材と一緒に重合フィルムを細かく砕くこともできる。
【0066】
光化学的重合と同様に、熱的重合は、十分な温度へフィルムを加熱することにより実施することができ、またそれは熱的重合のためのフィルムを500μmより厚くすることを可能にする。
【0067】
本発明の好ましい一実施の形態では、熱的重合は懸濁重合(ビーズ重合とも言う)として実施される。この場合、ポリマーネットワークは微細ポリマー粒子の形状で得られる。懸濁重合の手法は基本的に当業者に公知であり、例えば、“Houben−Weyl”(E20巻、1149ページ)に記載されている。特に、一定の粒度分布を有する生成物の製造方法がEP 046 535及びWO 02/24755により開示されている。
【0068】
懸濁重合においては、まず、重合可能な混合物が適当な分散ユニットを用いて水中に懸濁される。このような状況においては、少量のSDSのような適当な界面活性剤を水相に添加することが適切であることがわかった。続いて、懸濁された粒子は混合物全体として80〜100℃の加熱により重合される。例えば、ある環境では、分散操作により導入される熱のみで十分である。粒子の大きさは分散操作の激しさにより、及び界面活性剤の量により調節することができる。その粒子は、球体、楕円体、引き伸ばされた、平面の、又は他の不規則な形状でも良い。好ましい粒子は、0.2〜50μmの大きさを有する。非球形の粒子の場合には、この図はそれぞれの場合において長径のことを述べている。
【0069】
作用剤を含んだポリマーネットワークの特性及び使用方法
作用剤(D)を含んだポリマーネットワークは、作用剤が中でその効果を示す系とネットワークとの接触により使用することができる。これは、例えば、その系とそのままのフィルムとの接触、又はその系と、例えば、粉末のような粉砕した物質の接触により実施することができる。
【0070】
作用剤(D)は非共有結合的相互作用によりしっかりとそのネットワーク中に結び付けられる。一方では、そのネットワーク中への作用剤の結合の結果として、その作用剤は、一方では、大きく遅延された速度に限定されてその系へ伝達される。さらに、そのネットワーク中での作用剤は、周囲の効果から保護され、そして、それら作用剤が全く分解されない、又はそれらが少なくとも大きく遅延して分解されるという結果がもたらされる。そのネットワークは水溶性ではないので、おまけに水溶性の作用剤を水環境に固定することができるという結果がもたらされる。
【0071】
作用剤の解放速度は化学的及び物理的パラメータにより調節することができる。調節のための化学的及び物理的パラメータは、作用剤とネットワークの間の非共有結合的相互作用、及びまたネットワーク密度とネットワーク膨張の間の非共有結合的相互作用を含む。オリゴマー(A)及び/又は比較的多数(例えば、3以上)の(メト)アクリレート基を有するモノマー(B)の使用によるネットワーク密度の増大は、作用剤の解放の遅延という一般的な効果をもたらす。当然、その解放は低温よりも上昇された温度下においてより速くなる。
【0072】
作用剤として殺生物剤を含むポリマーネットワークは、例えば、工業材料の保護のために、より詳細には、微生物の蔓延からその材料を保護するために使用することができる。
【0073】
工業材料の例としては、好ましくは液体工業材料、より詳細にはコーティング材料、塗料、含浸材料、ワニス、フレキソインク又はインクジェットインクのようなカラー又は印刷インク、例えば、アクリレート又はスチレン−アクリレート分散物のような分散物、及びまた、例えば、壁画、表面コーティング又は織物用助剤として使用するためのそのような分散物の製剤が含まれる。更なる例としては、ポリウレタン分散物、及び、例えば、木材、紙、又はプラスチック上のコーティングのための透明ワニスの製造のためのような、それらポリウレタン分散物の使用方法が含まれる。また、その材料は、石工職人のしっくいのような建築分野からの製造物でもよい。
【0074】
工業材料は、好ましくは塗料及び/又は分散物でもよい。これらは、好ましくは、例えば、水性分散物又は水性塗料のような水性の工業材料でよい。さらに、何らかのコーティング材料のフィルムが好ましく用いられる。
【0075】
作用剤を含んだポリマーネットワークが、例えば、ネットワークと工業材料、より詳細にはネットワークと塗料及び/又は分散物から形成された粉末又は粒子の混合により、使用されてもよい。これは、好ましくは、製品が適切なパッケージに分配される前、又は単に製品が適切なパッケージに分配された後に行われて良い。このようにして、工業材料は長期の貯蔵でさえも保護される。コーティング材料、より詳細には塗料及び/又は分散物の処理に続いて、その結果として生じるフィルムが同様に保護される。
【0076】
ここで、作用剤、より詳細には使用される殺生物剤の性質は、保護される材料の性質、及び/又は材料が使用される環境により左右される。従って、例えば、水中工法のためのコーティング材料、及びそれらを使用して処理されたフィルムは、特に藻類に蔓延に対して良好に保護されるに違いない。当業者は、要求される特定の最終用途に対して特に好適な作用剤を知っている。
【0077】
また、要求される処理に依存して、2以上の作用剤を組み合わせて使用することも可能である。これは、ネットワークの製造の際に、2以上の作用剤を使用することにより成し遂げることができる。
【0078】
本発明の特に好ましい一実施の形態では、少なくとも2種の異なるポリマーネットワークの組み合わせに使用することができ、それらポリマーネットワークのそれぞれが異なる作用剤を含む。この場合、それぞれのポリマーネットワークは、それぞれの場合における作用剤の解放速度を等しくするようにして作用剤に適合させることができる。このようにして、その系において両方の作用剤の一致した割合が保証される。
【0079】
本発明の更なる好ましい実施の形態では、作用剤は、例えば、殺虫剤又は除草剤のような農薬であっても良い。この種類のポリマーネットワークは、農作物防護のために使用することができる。
【0080】
一つの好ましい農作物保護の適用では、作用剤は除草剤である。最適活性のために、除草剤は土壌深くに浸透させすぎるべきではなく、その代わり地面の最上層に留めるべきである。それらの粒子サイズ及び非水溶性のため、ポリマーネットワークの粒子は大地の表面に留まり、又は、少なくとも、深層へのそれらの浸透は大きく遅延される。これは、その表面又は地表層への作用剤の有効濃度を保証する。
【0081】
本発明のネットワークは、農薬の特に強く遅延された解放をもたらす。それゆえに、そのネットワークは、保護される領域が後退しなければならない時間間隔が大きく増大することにより、長期間の適用に特に適している。そのような処理の例としては、森林、線路床及びレール盛土の処理、又は高圧電線下の領域の処理が含まれる。
【0082】
さらに、本発明のネットワークは、例えば船体の処理のための、例えばよごれ止め塗料又はコーティングの成分として適している。
【実施例】
【0083】
以下の例は、本発明をより詳細に説明することを意図している。
【0084】
使用される出発材料
ウレタンアクリレート(A1)の製造
DE 102 59 673 A1、16ページの説明に従い、ウレタンアクリレートB1をウレタンアクリレートに使用した。平均モル質量Mは約1100g/molであり、平均アクリレート官能価は約3.4である。
【0085】
ポリエステルアクリレート(A2)の製造
ポリエステルアクリレート(A2)の製造はEP 686 621 A1、5/6ページからの例に従って実施した。平均モル質量Mは約650g/molであり、平均アクリレート官能価は約4.0である。
【0086】
ポリエステルアクリレート(A3)の製造
ポリエステルアクリレート(A3)の製造はEP 0126341 A1からの例8に従って実施した。平均モル質量Mは約1100g/molであり、平均アクリレート官能価は約2.6である。
【0087】
ポリエーテルアクリレート(A4)の製造
最初に、トリメチロールプロパンを一般的な方法によりエトキシル化した(平均エトキシル化度は約3.5である)。それから、得られたエトキシル化トリメチロールプロパンをアクリル酸で完全にエステル化した。
【0088】
平均モル質量Mは約450g/molであり、平均アクリレート官能価は約3.0である。
【0089】
エポキシアクリレート(A5)の製造
エポキシアクリレート(A5)の製造は、EP 921 168 A1からの例1aに従って実施した。平均モル質量Mは約510g/molであり、平均アクリレート官能価は約2.4である。
【0090】
作用剤
作用剤Dは:
D1 テルブトリン(N2−tert−ブチル−N4−エチル−6−メチルチオ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジアミン,殺藻剤/除草剤)
D2 ジカンバ(3,6−ジクロロ−2−メトキシ安息香酸,除草剤)
D3 フェロモン
を使用した。
【0091】
ウレタンアクリレート(A1)中でのテルブトリンの溶解性は8〜10質量%、ポリエーテルアクリレート中では16〜18質量%、そして水中では約20mg/lである。
【0092】
光開始剤
光開始剤は2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンを使用した。
【0093】
実施例1〜6
作用剤を含んだポリマーネットワークの光化学的な製造:
オリゴマー(A)、適宜モノマー(B)、光開始剤(C)、及び作用剤(D)、及びまた、適宜(E)を、表1に示した量で、ローラーミキサーを使用して10〜48時間、お互いに強く混合した。続いて、ドクターブレード(実施例1〜3:200μm;実施例4:50μm)を用いてガラス板に、表1に示した厚さでフィルムを施し、そのフィルムを130W/cmの強度を有するUV光で2回、それぞれ約0.5秒間照射した。
【0094】
コーティングしたフィルムはガラス板から注意深く取り除いた。フィルムの部分から直径70mmの円盤状の孔を開けた。その円盤を作用剤の解放の実験のために使用した。
【0095】
【表1】

【0096】
実施された試験の組成:それぞれの場合において、全ての量のデータは、重合可能な組成物の全ての成分の量に基づいた質量%である。(TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート)
【0097】
実施例7
フィルムの粉末への加工
最初に、実施例4に従って得られたコーティングされたフィルムをガラス板から除去した。その間に、そのフィルムは既に多数の小片に破壊された。その後、小片を超遠心ミル(ZM 100,Retsch)使用して粉砕した。そのミルのローターは予めドライアイスで冷却していた。粉砕は2回行った。最初の粉砕では500μmの環状の篩を使用し、2回目の粉砕では80μmの環状の篩を使用した。約5〜100μmのサイズの粒子を得た。
【0098】
実施例8
懸濁重合法による作用剤を含んだポリマーネットワークの製造
オリゴマーA4を使用して懸濁重合を行った。
【0099】
17.3g(86.5質量%)のオリゴマー(A4)、2gのテルブトリン(10質量%)、0.6gのジベンゾイルペルオキシド(3質量%)、及び0.1gの1−オクタデカノール(0.5質量%)の混合物を、透明な溶液が得られるまで暗所で48時間撹拌した。その後、その混合物を0.5%強度のNaHPO水溶液200gに注ぎ、そしてその系に、さらに0.2gのドデシル硫酸ナトリウムを添加し、分散ユニット(Ultra−Turrax T25,IKA Labortechnik)を使用して9500rpmで水溶液中に分散した。その混合物を、最初に80℃まで急速に加熱し、それからさらにゆっくり、重合が開始するまで、88〜92℃で10分間加熱した。重合後に、得られた生成物をろ過により分離し、洗浄し、そして乾燥した。結果として生じた粉末小片(powder crumbs)を乳鉢で注意深く細かく砕いた。これにより、約50〜200nmのサイズの微細な粒子を得た。
【0100】
得られた粉末は、(例えば、塗料分散物の)保護が要求される媒質に直接添加することができる。
【0101】
試験結果
水と接触した作用剤の解放を実施例1〜3、及び実施例5で得られたそれぞれのネットワークで測定した。
【0102】
この目的のために、上述のことから得られたフィルム円盤を40mlの完全な純水を含有する密閉可能な容器中に室温で置いた。そして、その容器を密閉状態で一定時間室温で保管した。
【0103】
その後円盤を取り除き、そして40mlの新しい水を含むさらなる容器中で室温で一定時間保管した。この処理サイクルを数回繰り返した。
【0104】
水中でのそれぞれの貯蔵において、作用剤が解放された。その水中での作用剤のそれぞれの濃度を円盤の除去の前にHPLCを用いて分析した。
【0105】
その解放された量をそれぞれの場合で表2に要約する。
【0106】
【表2】

【0107】
実施例1及び実施例2に従って、作用剤の解放の時間プロフィル(time profile)を図1中に配列した。
【0108】
解放速度はポリマーネットワークのための成分の選択により非常に効果的に調節することができ、そしてその解放はそのネットワーク構造を用いることにより非常に大きな程度で遅延することができることがその結果より示された。実施例2では、1000時間より多くの時間の経過後でさえ、作用剤が11%のみしか解放されていない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作用剤を含んだポリマーネットワークを製造する方法であって、
重合可能なオリゴマーと作用剤、及び適宜更なるモノマー及び/又は助剤を混合する工程、及び得られた混合物を熱的又は光化学的に重合する工程を含む方法において、
重合可能な混合物が以下の成分:
(A)19.9質量%〜99.8質量%のオリゴマーであって、モノ(メト)アクリレート基を含み、平均モル量Mが350〜5000g/molの範囲であり、及びエポキシ(メト)アクリレート類、ポリエステル(メト)アクリレート類、ウレタン(メト)アクリレート類又はポリエーテル(メト)アクリレート類の群から選ばれ、且つ1つのオリゴマー分子に対する(メト)アクリレート基の数の算術平均値が2.1〜5の範囲であるオリゴマー、
(B)0質量%〜49.8質量%の少なくとも1種のモノマーであって、オレフィン基を含み、及びモル量Mが350g/mol未満の前記少なくとも1種のモノマー、
(C)前記光重合可能な混合物に溶解可能な、0.1質量%〜8質量%の少なくとも1種の開始剤、
(D)前記光重合可能な混合物に分散可能又は溶解可能な、0.1質量%〜80質量%の少なくとも1種の作用剤、
(E)合わせて0質量%〜20質量%となる、更なる助剤及び/又は添加剤、を含み、且つ
上記各質量%は、前記重合可能な混合物の全成分の合計量に基いて表され、及び使用される成分(A)〜(E)全体の量が100%であることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記重合が、光化学的に実施されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記光化学的な重合が、重合可能な混合物の10〜500μmの厚さを有するフィルムへの加工、及び該フィルムへの化学線放射による照射により実施されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記重合が、熱的に実施されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記熱的な重合が、懸濁重合法により実施されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記懸濁重合法のうちに形成されるポリマーネットワークの粒子サイズが、0.2〜50μmであることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記オリゴマーの平均モル質量Mが、400〜3000g/molであることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
1つのオリゴマー分子に対する(メト)アクリレート基の数の平均値が、2.5〜4.5であることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記オレフィンモノマー(B)が、(メト)アクリレート基及び/又はビニルエーテル基を含むモノマーであることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記モノマー(B)が、1〜3のオレフィン基を包含するオレフィン基を含むことを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記モノマー(B)が、少なくとも1種の更なる官能基を包含するオレフィン基であることを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記オリゴマー(A)の量が45〜98質量%であり、且つ前記オレフィンモノマー(B)の量が5〜45質量%であることを特徴とする請求項1〜11の何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1種の作用剤が、殺生物剤であることを特徴とする請求項1〜12の何れか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記殺生物剤が、除草剤であることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1種の作用剤が、伝達物質及び/又は香気であることを特徴とする請求項1〜12の何れか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記作用剤が、少なくとも2種使用されることを特徴とする請求項1〜15の何れか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記作用剤(D)の量が、1〜30質量%であることを特徴とする請求項1〜16の何れか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記重合後に結果として生じるポリマーネットワークが、粉末に加工されることを特徴とする請求項1〜17の何れか1項に記載の方法。
【請求項19】
請求項1〜18の何れか1項に記載の方法により得られる、作用剤を含んだポリマーネットワーク。
【請求項20】
前記作用剤の量が、ポリマーネットワーク及び作用剤の総量に基づいて、1〜30質量%であることを特徴とする請求項19に記載の作用剤を含んだポリマーネットワーク。
【請求項21】
前記作用剤が、殺生物剤であることを特徴とする請求項19又は20に記載の作用剤を含んだポリマーネットワーク。
【請求項22】
前記作用剤が、農薬であることを特徴とする請求項19又は20に記載の作用剤を含んだポリマーネットワーク。
【請求項23】
前記作用剤が、除草剤であることを特徴とする請求項19又は20に記載の作用剤を含んだポリマーネットワーク。
【請求項24】
前記作用剤が、伝達物質及び/又は香気であることを特徴とする請求項19又は20に記載の作用剤を含んだポリマーネットワーク。
【請求項25】
工業材料の保護のための請求項21に記載の作用剤を含んだポリマーネットワークの使用方法。
【請求項26】
フィルムの保護のための請求項21に記載の作用剤を含んだポリマーネットワークの使用方法。
【請求項27】
塗料及び分散物の保護のための請求項21に記載の作用剤を含んだポリマーネットワークの使用方法。
【請求項28】
農作物保護のための請求項22に記載の作用剤を含んだポリマーネットワークの使用方法。
【請求項29】
植物の生長調節のための請求項23に記載の作用剤を含んだポリマーネットワークの使用方法。
【請求項30】
少なくとも2種の異なるポリマーネットワークの組み合わせであって、前記ポリマーネットワークがそれぞれ異なる作用剤を含むものの前記組み合わせが使用されることを特徴とする請求項25〜29の何れか1項に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2010−535258(P2010−535258A)
【公表日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518630(P2010−518630)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【国際出願番号】PCT/EP2008/059780
【国際公開番号】WO2009/016112
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】