説明

使い勝手に優れた量産型システムキッチン

【課題】 製造工程の効率化及び製造コストの低減を図ることができ、しかも、加熱調理に係る調味料及び調理器具の収納機能及び調理作業時の利便性を向上できる使い勝手に優れた量産型システムキッチンを提供すること。
【解決手段】 ワークトップ1を載置するベースキャビネット列において、同一サイズのコンロキャビネット2とシンクキャビネット3のボックス体同士、及びコンロキャビネット2における少なくとも前板部以外が同じ寸法の一対の小引出し同士をそれぞれ共通部材によって作製可能とすると共に、
前記コンロキャビネット2の小引出しの幅を、(キャビネット幅サイズ−コンロ器具本体の幅サイズ)×1/2の値に近似する大きさとしてコンロ器具側方の幅を調節可能とすることにより、ワークトップ1上のコンロ横に所定大きさの載置スペースSを確保可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、システムキッチンの改良、詳しくは、製造工程の効率化及び製造コストの低減を図ることができ、しかも、加熱調理に係る調味料及び調理器具の収納性および作業性の向上も図れる使い勝手に優れた量産型システムキッチンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、一般家庭の台所において、収納具や調理・洗浄設備、作業台などを選択して組み合わせることで個々のライフスタイルに合った台所空間を自由に形成可能なシステムキッチンの利用が進んでいる。
【0003】
そして、このようなシステムキッチンの構成としては、コンロキャビネットやシンクキャビネットなどが並列したベースキャビネット列に一つの天板部材を載置して各キャビネットを連結したものが広くに知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、上記従来におけるシステムキッチンにおいては、コンロキャビネットの幅をシンクキャビネットよりも小さく設計することが一般的であったことから、それぞれのキャビネットを別々の工程で組み立てる必要があり、それによって製造効率が悪化するだけでなく部材加工費などの製造コストも高く付き易かった。
【0005】
また、コンロキャビネットにおいては、サイズ上の制限からコンロ器具を一方に寄せて反対側に幅150mmの小引出しを一つ設けるのが精一杯であったが、小引出し一つでは加熱調理時に頻繁に用いる調味料や調理器具を収納するのに不十分であった。
【0006】
また更に、コンロキャビネットの小引出しの幅が150mmしかないと、サイズの大きなガラストップを備えたコンロ器具を装着した際に、作業面上におけるコンロ横のスペースが極めて小さくなって、加熱調理時に調味料や調理器具を殆ど置くことができず、非常に使い勝手が悪いという不満もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−246166号公報(第2−9頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の如き問題に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、製造工程の効率化及び製造コストの低減を図ることができ、しかも、加熱調理に係る調味料及び調理器具の収納機能及び調理作業時の利便性を向上できる使い勝手に優れた量産型システムキッチンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者が上記課題を解決するために採用した手段を添付図面を参照して説明すれば次のとおりである。
【0010】
即ち、本発明は、コンロ器具Cを落とし込んで装着するための開口部11とシンク槽12とを備えるワークトップ1をレイアウトされたベースキャビネット列B上に載置して構成されるシステムキッチンであって、
前記ベースキャビネット列Bを、前記コンロ器具Cが収容可能な収容部をボックス体上部に備えたコンロキャビネット2と、このコンロキャビネット2と同じサイズで、かつ、前記シンク槽12を収容できる収容部をボックス体上部に備えたシンクキャビネット3とを含んで構成すると共に、前記コンロキャビネット2における収容部の両脇には、少なくとも前板部21a以外が同じ寸法の一対の小引出し21・21を左右対称に配設して、コンロキャビネット2とシンクキャビネット3のボックス体同士、及びコンロキャビネット2の一対の小引出し同士をそれぞれ共通部材によって作製可能とし、かつ、
前記コンロキャビネット2の小引出し21の幅を、(キャビネット幅サイズ−コンロ器具本体の幅サイズ)×1/2の値に近似する大きさとしてコンロ器具C側方の幅を調節可能とすることにより、ワークトップ1上のコンロ横に所定大きさの載置スペースSを確保可能とした点に特徴がある。
【0011】
ちなみに、上記「ワークトップ」とは、システムキッチンにおいて調理作業などを行う作業面を構成する天板部材を意味する。
【0012】
また本発明は、上記手段に加えて、コンロキャビネット2とシンクキャビネット3に、同じ寸法の引出し部を設けるという技術的手段を採用することもできる。
【0013】
そしてまた本発明は、上記手段において、コンロキャビネット2の一方の小引出し21における、前板部21aの片側の側縁部に対しドア枠に干渉しないように切り詰め加工を行うという技術的手段を採用することもできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、システムキッチンの天板部材が載置されるキャビネット列に、同じ寸法のコンロキャビネットとシンクキャビネットとを使用すると共に、コンロキャビネットの上部には、同じ寸法の一対の小引出しを左右対称に配設して構成したことにより、コンロキャビネットとシンクキャビネットのボックス体を同じ大きさの板材等を用いて作製することが可能となり、またコンロキャビネットの小引出しについても同様に共通部材を使用して作製することが可能となることから、製造工程の合理化及び部材加工費の削減による製造効率の向上及び製造コストの低減を図れる。
【0015】
そして更に、上記コンロキャビネットの各小引出しの幅を、キャビネットの幅サイズから装着するコンロ器具本体の幅サイズを差し引いた値を半分に割った大きさとして、コンロ器具側方の幅を調節可能としたことにより、作業面上に加熱調理時に使用する調味料や調理器具を載置できるだけの所定大きさのスペースを形成することができるため、この場所を有効に活用して加熱調理の作業性を向上することも可能となる。
【0016】
特に上記効果は、天板部材の開口部の外側に大きく張り出すワイド型トッププレートを備えたコンロ器具を使用するときに有効であり、具体的には、キャビネット幅を1050mm、コンロ器具本体の幅を600mm、各小引出しの幅を225mmとした場合、開口部からの張り出しが100mm近くあるガラストップ式コンロを使用したとしても、作業面上に幅100mm以上の載置スペースを確保できるため、直径が10cm前後のオイルポットや小型ボール、酒瓶、大型ボトル入りの油等であっても自由にコンロ横に置くことができる。
【0017】
そしてまた、上記コンロキャビネットに小引出しを二つ設けたことにより、加熱調理に使用する塩・胡椒などの調味料やフライ返しなどの調理器具を左右の小引出しに分けて十分に収納することができる。
【0018】
他方また、上記キャビネット列を直線型のレイアウトとした場合には、コンロキャビネットとシンクキャビネット及び一対の小引出しが左右対称の均整のとれたデザインとなって様式美であるシンメトリーの視覚効果も得られる。
【0019】
したがって、本発明により、調理作業を行う上で非常に使い勝手の良いシステムキッチンを安価に提供できることから、本発明の実用的利用価値は頗る高い。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例1におけるシステムキッチンを表わす全体前面図である。
【図2】本発明の実施例1におけるシステムキッチンを表わす全体上面図である。
【図3】本発明の実施例1におけるワークトップを表わす全体上面図である。
【図4】本発明の実施例1におけるワークトップを表わす全体側面図である。
【図5】本発明の実施例1におけるコンロキャビネットの小引出しを表わす拡大説明図である。
【図6】本発明の変形例におけるシステムキッチンを表わす全体上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
『実施例1』
本発明の実施例1を、図1から図5に基いて以下に説明する。ちなみに同図において、符号1で指示するものは、ワークトップであり、符号2で指示するものは、コンロキャビネットである。また符号3で指示するものは、シンクキャビネットであり、符号4で指示するものは、作業台キャビネットである。
【0022】
まず実施例1では、レイアウトして配置されたベースキャビネット列B(幅:2550mm)上にワークトップ1を載置して、コンロキャビネット2(幅:1050mm)とシンクキャビネット3(幅:1050mm)と、その間に配置された作業台キャビネット4(幅:450mm)とを直列かつ一体的に連結してシステムキッチンKを構成している(図1、図2参照)。
【0023】
また、上記ワークトップ1には、開口部11(幅:562mm)とシンク槽12(幅:800mm)とが設けられており(図3、図4参照)、コンロ器具Cは、当該ワークトップ1をベースキャビネット列Bに対し載置した後、前記開口部11から落とし込んでコンロキャビネット3とワークトップ1に固定している。
【0024】
なお実施例1では、上記コンロ器具Cにガラス製トッププレートT(幅:750mm)を備えたIHコンロ(幅:600mm)を使用しているが、コンロ器具CにIHコンロ以外のガスコンロ等を使用することも勿論可能である。
【0025】
また、上記ベースキャビネット列Bを構成するコンロキャビネット2は、ワークトップ1の下側に突き出したコンロ器具Cを収容可能な収容部をボックス体の上部に備えると共に、収容部の両脇には、前板部21a以外が同じ寸法の一対の小引出し21・21(幅:215mm、225mm)を左右対称に配設している。
【0026】
なお、上記コンロキャビネット2の小引出し21においては、前板部21aの片側の側縁部がドア枠に干渉しないように幅10mmの切り詰め加工を行っており(図5参照)、また、この加工は小引出し21の下方に配設された引出し部22・22の前板部に対しても同様に行っている。
【0027】
一方、上記ベースキャビネット列Bを構成するシンクキャビネット3については、コンロキャビネット2と同じサイズで、かつ、前記ワークトップ1のシンク槽12を収容できる収納部をボックス体上部に設けて作製している。
【0028】
そして、このような構成を採用したことにより、上記コンロキャビネット2とシンクキャビネット3のボックス体やコンロキャビネット2の小引出し21・21を共通した部材を使用して同工程で作製することが可能となるため、製造効率の向上及び製造コストの低減を図ることができる。
【0029】
また実施例1では、コンロキャビネット2の引出し部22・22とシンクキャビネット3の引出し部31・31についてもそれぞれ同じ寸法としているため、引出し部の作製及び取付け工程についても合理化できる。
【0030】
また実施例1では、本体部の幅が600mmのコンロ器具Cを使用すると共に、コンロキャビネット2の各小引出し21を幅225mmに設計したことにより、幅750mmのガラストップ式コンロ器具Cを使用しても、作業面上におけるコンロ器具C側方に調味料や調理器具を載置するための幅150mm程度の載置スペースSを形成できる。
【0031】
なお、実施例1においては、コンロ器具Cに幅750mのトッププレートTを備えたものを使用しているが、トッププレートTが600mmのコンロ器具Cを使用すれば225mmの載置スペースSを確保でき、直径が20cm前後の調理鍋でもコンロ横に置くことが可能となる。
【0032】
また、上記コンロキャビネット2の小引出し21のサイズは、調理作業に支障をきたさない程度の範囲で幅225mm以上に設計することも可能であり、また、上記のようにコンロキャビネット2に小引出し21・21を二つ設けることで、調味料や調理器具の収納機能も向上できる。
【0033】
他方また、上記構成によるシステムキッチンKは、コンロキャビネット2とシンクキャビネット3、及びコンロキャビネット2の一対の小引出し21・21が左右対称であることによって、シンメトリーの意匠効果を得ることも可能となる。
【0034】
しかも、実施例1においては、ベースキャビネット列Bの各キャビネットの引出し部にプッシュオープン可能なチップオン式のものを採用しているため、操作の容易性により使い勝手が向上するだけでなく、把手部材の省略によるコストダウン及びすっきりとした外観による洗練されたインテリアデザインを実現できる。
【0035】
そして更に、上記各キャビネットにおける最上段の引出し部は、手掛かり位置を従来よりも高めに設定することにより、腰を屈めずに楽な姿勢で引出し部を開閉操作できるようにしている。
【0036】
また実施例1では、作業時に使用者のつま先がキャビネット下部に当たらない工夫として、蹴込み部をキャビネット下部に設ける代わりに、ワークトップ1をキャビネット前方に突き出す形状としたことにより、キャビネット構造を単純化して加工組立費のコストダウンを図ると共に、キャビネットの収納性を向上している。
【0037】
本発明は、概ね上記のように構成されるが、本発明は図示の実施形態に限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内において種々の変更が可能であって、例えば、ベースキャビネット列Bの配置に関しては直線型でなくとも、図6に示すようにコンロキャビネット2及びシンクキャビネット3、作業台キャビネット4をL字型に配置した形態であってもよく、またU字型に配置した形態を採用することもできる。
【0038】
また、コンロキャビネット2及びシンクキャビネット3には、同じ寸法の引出し部を設ける替わりに同じ寸法の開閉扉を設けても同様の効果を得ることができる。
【0039】
そしてまた、ベースキャビネット列Bは必ずしも収納具として使用する必要はなくボックス体内部に食洗機やオーブンレンジを設置して使用することもでき、上記何れのものも本発明の技術的範囲に属する。
【産業上の利用可能性】
【0040】
近年においては、ライフスタイルの多様化により使用者に合わせて様々な台所空間を形成できるシステムキッチンの需要が高まっているが、このようなシステムキッチンの利用を幅広い層に進めていくためにはコスト面の問題を解決する必要がある。
【0041】
そのような中で、本発明の使い勝手に優れた量産型システムキッチンは、製造効率の改善によって製造コストの低減できるだけでなく、利用度の多い加熱調理の作業性についても考慮された有用な技術であることから、市場における需要は大きく、その産業上の利用価値は非常に高い。
【符号の説明】
【0042】
1 ワークトップ
11 開口部
12 シンク槽
2 コンロキャビネット
21 小引出し
21a 前板部
22 引出し部
3 シンクキャビネット
31 引出し部
4 作業台キャビネット
K システムキッチン
B ベースキャビネット列
C コンロ器具
T トッププレート
S 載置スペース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンロ器具Cを落とし込んで装着するための開口部11とシンク槽12とを備えるワークトップ1をレイアウトされたベースキャビネット列B上に載置して構成されるシステムキッチンであって、
前記ベースキャビネット列Bを、前記コンロ器具Cが収容可能な収容部をボックス体上部に備えたコンロキャビネット2と、このコンロキャビネット2と同じサイズで、かつ、前記シンク槽12を収容できる収容部をボックス体上部に備えたシンクキャビネット3とを含んで構成すると共に、前記コンロキャビネット2における収容部の両脇には、少なくとも前板部21a以外が同じ寸法の一対の小引出し21・21を左右対称に配設して、コンロキャビネット2とシンクキャビネット3のボックス体同士、及びコンロキャビネット2の一対の小引出し同士をそれぞれ共通部材によって作製可能とし、かつ、
前記コンロキャビネット2の小引出し21の幅を、(キャビネット幅サイズ−コンロ器具本体の幅サイズ)×1/2の値に近似する大きさとしてコンロ器具C側方の幅を調節可能とすることにより、ワークトップ1上のコンロ横に所定大きさの載置スペースSを確保可能としたことを特徴とする使い勝手に優れた量産型システムキッチン。
【請求項2】
コンロキャビネット2とシンクキャビネット3とに同じ寸法の引出し部を設けたことを特徴とする請求項1記載の使い勝手に優れた量産型システムキッチン。
【請求項3】
コンロキャビネット2の一方の小引出し21における、前板部21aの片側の側縁部に対しドア枠に干渉しないように切り詰め加工が施されていることを特徴とする請求項1または2に記載の使い勝手に優れた量産型システムキッチン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−279420(P2010−279420A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−133004(P2009−133004)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【出願人】(510031590)株式会社サンキューハウスシステム (6)
【Fターム(参考)】