説明

使い捨ておむつ

【課題】 パンツ型及び展開型の両方の使用形態において液モレ防止性能に優れ、かつ、履き心地に優れたパンツ型及び展開型両用の使い捨ておむつを提供する。
【解決手段】 着用者の胴回りに沿わされる環状外装帯と、該外装帯の腹側部肌面側及び背側部肌面側に接合され股下に沿わされるよう垂設された、吸収性コアを具備する下帯部材とを有する使い捨ておむつであって、
前記環状外装帯の腹側部には外装帯の上縁から下縁にまで延びる一対の破断誘導線があり、該環状外装帯は前記破断誘導線に沿って切断して前記下帯部材から切離し観音開きに開放可能であり、さらに前記破断誘導線の近傍で切り離される外装帯部分にその切断により引き出し可能なファスニングテープが収納されており、前記下帯部材は前記吸収性コアの非肌面側に該下帯部材の長手方向に延びる臀部第1弾性部材を有するパンツ型及び展開型両用の使い捨ておむつ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつに関し、詳しくはパンツ型及び展開型両用の使い捨ておむつに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使い捨ておむつとして、長手方向一端部の両側部に一対のファスニングテープを有し、該ファスニングテープを長手方向他端部の外面に設けたランディングゾーンに止着して用いる使い捨ておむつ(以下、展開型おむつという)と、ウエスト開口部と一対のレッグ開口部とが予め形成されている使い捨ておむつ(以下、パンツ型おむつという)が広く知られている。
【0003】
展開型おむつは、寝た状態で着脱することができ、また、テープの止着位置をずらしてフィット性の調整が可能で、製造コストが安い等の利点がある。他方、パンツ型おむつは、下着であるパンツやショーツと同様に着脱でき、例えば、月齢が上がってきた乳幼児を四つん這いにして又は立たせて装着させることができ便利であるという利点がある。
【0004】
これに対し、展開型おむつと同様にもパンツおむつと同様にも使用でき、しかも腹側に配される部分の意図しない開放が生じにくく、更にサイズ調整の自由度が高い、成人用の使い捨ておむつが開発されている(特許文献1参照)。この使い捨ておむつは、一対のミシン目などの破断誘導線に挟まれた中央部分と破断誘導線を介して中央部分に連設された外方部を有し、外方部にファスニングテープが設けられている。このおむつは、破断誘導線の分離前は、通常のパンツおむつと同様な形状をしており、破断誘導線をやぶくと展開型おむつと同様に取り外すことができる。そして、テープで再接合することで、パンツ形状とすることができる。そのため、普通のパンツタイプのようにはけて上げ下げでき、ズボンを脱がなくても取り替えられ、さらに、ミシン目をやぶけば横になったままでも簡単に交換ができるものである。
【0005】
【特許文献1】特開2006−204688号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者の確認によれば、上記のように新開発のパンツ型及び展開型の両用おむつは、双利用性の高いものであるが、その活用の形態のために、股下あたりのフィット性ないし装着感と漏れ防止性とを両立するのが困難であることがわかってきた。特に、この使い捨ておむつは、その腹側部位を分離していないパンツ型の状態ではかせることも、分離開放した後にテープで止めて着用させることもできるため、着用者の肌に対するおむつ密着状態が異なることがあり、その両方の使用場面において、肌とおむつの隙間からの横モレなどに対する信頼性の高い漏れ防止性と良好なフィット性とを両立することは容易ではない。
【0007】
本発明は、上記のパンツ型及び展開型の両用使い捨ておむつに特有の課題に鑑み、その両方の使用形態において液モレ防止性能に優れ、かつ、履き心地に優れたパンツ型及び展開型両用の使い捨ておむつを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、着用者の胴回りに沿わされる環状外装帯と、該外装帯の腹側部肌面側及び背側部肌面側に接合され股下に沿わされるよう垂設された、吸収性コアを具備する下帯部材とを有する使い捨ておむつであって、前記環状外装帯の腹側部には外装帯の上縁から下縁にまで延びる一対の破断誘導線があり、該環状外装帯は前記破断誘導線に沿って切断して前記下帯部材から切離し観音開きに開放可能であり、さらに前記破断誘導線の近傍で切り離される外装帯部分にその切断により引き出し可能なファスニングテープが収納されており、前記下帯部材は前記吸収性コアの非肌面側に該下帯部材の長手方向に延びる臀部第1弾性部材を有するパンツ型及び展開型両用の使い捨ておむつを提供することにより、上記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のパンツ型及び展開型両用のおむつは、通常、使用初期にはパンツ型おむつとして使用し、必要により、展開型おむつに切り替えて使用することができ、この新開発両用おむつに特有の課題を解決して、おむつと着用者の股間部との隙間を程良く少なくして、股間部等からの液モレ防止性能と良好な履き心地とを両立することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の好ましい一つの実施形態としての成人用のパンツ型・展開型の両用使い捨ておむつ10の初期形状での着用時の形状を示す、着用者腹側から見た斜視図である。おむつ10は、下帯部材2と環状外装帯3を備えている。環状外装帯3は、およそ半周ずつをなす腹側部位31及び背側部位32からなり、該両部位は着用者の左右両側部のそれぞれにおいて接合され、一対のサイドシール部33を形成している。このサイドシール部33におけるシートの接合方法は特に限定されるものではなく、ヒートシール、超音波シール等の任意の手段により接合することができる。そして、環状外装帯3は着用者の背丈方向上側において、環状のウエスト開口部Woをなし、ここに着用者の胴回りを通して着用される。下帯部材2は、環状外装帯3の腹側部位31の内面(肌当接面側の面)及び背側部位32の内面に、両端部がそれぞれ接合され、着用者の股下に沿わされるよう垂設される。これにより、レッグ開口部Loが形成され、全体としてパンツ型の形状をしている。
【0011】
腹側部位31及び背側部位32と下帯部材2との固定方法は、特に限定されるものではなく、下帯部材2と腹側部位31または背側部位32と重なっている部分の所定の領域で、接着剤等により固定したり、下帯部材2の周縁部のみにおいて、両者を接合したり、下帯部材2の幅方向の中央部のみ又は両端部のみで両者を接合することもできる。また、接着剤に代えて、ヒートシール、超音波シール等を用いることもできる。
【0012】
図2は、図1に示したおむつ10を破断誘導線34で破断して展開した状態を肌当接面側から見た状態を示す展開平面図であり、下帯部材2の一部は、重ねられた部材を少しずつ破断した状態で表示してある。下帯部材2は、液透過性の表面シート22、液不透過性の裏面シート23、及びこれら両シート22,23間に介在された吸収性コア24を具備してなる。下帯部材2は、平面視形状が長方形状であり、図1においては、おむつの長さ方向(Y方向)に長い形状を有している。吸収性コア24は、長方形状の裏面シート23及び長方形状の表面シート22により挟持・固定されている。吸収性コア24は、展開状態の平面視において図示したもののような、砂時計形状、すなわち長手方向(Y方向)の両側の幅の広い部分に対して、その中間に介在する括れた部分が穏やかに内方に張り出す逆円弧状となっている。吸収性コア24のおむつ幅方向(X方向)の中心である正中面切断線(着用時に着用者の臀裂に沿って延びる直線を示したものに相当する)Pは吸収性コア24の上記の括れた部分において、着用者の尿排泄対応領域Q、Q(男性の場合は領域Q、女性の場合は領域Q)から排便対応領域Qに沿うようにされる。このようにして、着用時には、吸収性コア24は着用者のおよそ下腹部から臀部にかけて股間を介して沿わされる。
【0013】
破断して展開された環状外装帯3の開放主部(腹側部位31の前身頃開放可能部31aと後身頃となる背後部位32)は全体においてT字状であり、胴周り方向(X方向)を長手方向とした形状をなしている。図中矢印B1は前身頃開放可能部の占める領域を示し、矢印B2は後身頃の占める領域を表す。ただし、T字としたときの横棒(X方向)と縦棒(Y方向)との交わる部分の輪郭は、両側の外形において穏やかな逆円弧状、すなわち外装帯3の内方に入り込むような円弧をなすようにされている。そして、外装帯3の開放主部の長手方向、すなわち、おむつ幅方向(X方向)の中央部付近が、下帯部材2の一端部(背側後方部R側の端部)の外面(非肌当接面側の面)を覆っており、この覆う部分で環状外装帯3と下帯部材2とが着接されている。下帯部材2の他端部(腹側前方部F側の端部)の外面は、腹側部位31(前身頃開放可能部31a、前身頃非開放部31bによって覆われるが、この下帯部材2の他端部の外面を覆う部分の一部(前身頃非開放部31b)において下帯部材2の外面に固定されている。図中、矢印B3は前身頃非開放部31bの占める領域を表す。このようにして、環状外装帯3と下帯部材2とを着接して組み立てたおむつ10は、上記破断展開状態においてもT字形状であり、前記の環状外装帯3がなすT字形状の縦棒(Y方向)が下帯部材2によってさらに延びたようにされている。このようにして、本実施形態のおむつ10は全体において、背側後方部Rと腹側前方部Fとこの両部に介在された股下中間部Cとに区画され、着用状態では上記前方部Fと後方部Rとが連結され胴回り部Dを構成する(図1、図2参照)。なお、図2に示す符号で、特に言及しないものは、図1に示すもので同じ意味である(以下に説明する図面においても、それ以前の図面で説明した符号については、説明を省略することがある。)。
【0014】
環状外装帯3の腹側部位31は、おむつ長さ方向(Y方向)に一対の破断可能な破断誘導線34を有し、これに挟まれた前身頃非開放部(中央部分)31bと前身頃開放部(外側方部分)31aとに区別される。本実施形態においては、この破断誘導線34が線状に形成されたミシン目で構成されており(図1参照)、それぞれ腹側部位31の上下端間に亘って延びている。破断誘導線34は、着用者の臍に対応する部位を挟んでその両側に股下方向に延び平行に設けられている。ここで平行とは実質的に平行であればよく、それぞれの線が多少蛇行していても、やや平行状態にずれがあってもよい。そして、このミシン目により形成された破断誘導線34に沿って着用者ないし介助者等の手で前身頃非開放部31b(破断線34b)と前身頃開放部31a(破断線34a)とに分離するように破断し、前身頃開放部縁部31aを開くことで破断線34bとを切り離し展開型のおむつ形状とすることができる。
【0015】
股下部の下帯部材2には、長さ方向(Y方向)に伸縮性を有する臀部第1弾性部材21が配置され、吸収体ギャザーを形成している。本実施形態では、長さ方向に沿った4本の弾性部材が幅方向(X方向)にほぼ並列されて設置されており、着用時に、伸長状態で設置された臀部第1弾性部材21が収縮することにより、おむつの股下部が着用者の臀裂に合わせるように引き上げられ、おむつ10と着用者の股間とが密着することになる。
【0016】
本実施形態では、臀部第1弾性部材21は、一対の破断誘導線34(図2では破断線34b)の延長線長さ方向に延長した2本の線よりも、幅方向内側の正中面切断線P側に配されている。このような位置にあることで、着用者股間部において、おむつの密着性を向上させ、排泄物の漏れ防止性能を向上させることができる。なお、破断誘導線が曲線状のものである場合には、上記破断誘導線の延長線とは、破断誘導線の始点と終点を結んだ直線の延長線を意味する。
【0017】
本実施形態においては、環状外装帯3の背側部位32は、全体において台形の下底に長方形が組み合わされた火山の断面のような形状を逆さにした形状を有しており、この逆さ台の逆「八」の字状の部分がおもに着用者の臀部を覆い包囲するように着用される。そして、この背側部位32における上記逆さ台形の臀部対応部の両側方には、着用者股下部付近においては幅方向に伸縮性を有するよう、かつ着用者の背後から見て背丈方向に上開き、つまり逆「八」の字状になるように配設された左右一対の臀部第2弾性部材41a、41bを有している。この左右一対の臀部第2弾性部材41a、41bからなる臀部第2弾性部材41が着用時に着用者の臀部のでっぱりに合わせて適度な張力(伸縮応力)を発揮して、ヒップギャザーをなし、とりわけ弾性部材41の臀溝部分から背丈方向の上方にかけておしりの左右のやや下方で張り出したふくらみを両側からつつみ、軽く引き上げるようにして良好にフィットする。
【0018】
本実施形態において、環状外装帯3は、不織布などの2枚のシートから形成され(図では1枚のものとして示している。)、2枚のシート間に、胴回り方向に沿ってそれぞれウエスト弾性部材42および胴回り弾性部材43を伸長状態で固定している。これらの弾性部材42、43が着用状態で適度に胴回り方向に伸縮してウエストギャザー及び胴回りギャザーを形成しながら、着用者の胴回りにフィットして、おむつ10を着用者に密着させる。
【0019】
下帯部材2のおむつ幅方向(X方向)の両側縁部は着用時にレッグ開口部Loをなす長手方向(Y方向)に沿って伸びるレッグギャザー用弾性部材44が配されている。このレッグギャザー用弾性部材の張力(伸縮応力)により、着用者には足回りに良好なレッグギャザーを形成しながら、適度に締め付けて包み込むようにして、着用者の大腿部ないし足の付根のあたりにフィットする。
【0020】
図3は、図2におけるA−A線模式断面図である。なお、この断面図は、伸展状態ではなく、自然状態のおむつにおいてレッグギャザーGが起立した状態の断面を模式的に示している。本実施形態では、図3に示されるように、下帯部材2は裏面シート23を備えており、吸収性コア24と裏面シート23の間に臀部第1弾性部材21を伸長可能に配されている。このため、臀部第1弾性部材21により形成される吸収体ギャザーと、環状外装帯3により設けられた臀部第2弾性部材41により形成されるヒップギャザーとは、おむつ10において、実質的に同一平面上に形成されることになり、両者の張力の相互作用により極めて良好なフィット感が得られる。そして、吸収体ギャザーとヒップギャザーはともに、弾性部材44により形成されるレッグギャザーとは異なる平面に形成されているため、レッグギャザーは脚回りに対するフィット性を実現する一方で、臀部第1弾性部材21と臀部第2弾性部材41の良好な伸縮性を阻害しづらくなされている。また、本発明においては、防漏カフを形成するように立体ギャザーを設けてもよいが、この場合も、吸収体ギャザー及びヒップギャザーと、立体ギャザーとは異なる平面上に形成されるため、お互いの機能を阻害しづらくなっている。
なお、臀部第1弾性部材21の配置位置は、吸収性コア24と裏面シート23の間に限定されるものではなく、例えば、裏面シート23の外側に弾性部材保持用シートを設けて、裏面シート23と弾性部材保持用シートの間に臀部第1弾性部材21を設けても良い。
【0021】
図4は、図1のおむつの着用者左側のミシン目の破断誘導線34を破断した状態を示す斜視図である。本実施形態のおむつ10においては、環状外装帯3の破断誘導線近傍で、腹側部位31の前身頃開放可能部31aの内側(肌面側)に固定されたファスニングテープ5が設けられている。このファスニングテープ5は、基材シート5aのさらに肌面側に面状ファスナー5bが取り付けられており、破断誘導線34の破断により分離開放した開放可能部31aから上記面状ファスナー5bのある耳Mの部分を引き出すことができる。ファスニングテープ5の基材シート5aは、例えば、不織布や不織布と樹脂フィルムの積層体等から構成することができる。面状ファスナー(オス部材)は、鉤状ないしキノコ状の微小突起を係着面5iに密集して設けた構造のものが挙げられる。具体的には、メス部材に対して着脱自在に止着可能である通常の機械的面ファスナーを用いることができる。面状ファスナー5bを係着させる相手側部材は、通常の不織布でよく、例えばループ状ないし捲縮した繊維面を有する布材等を用いることができる。したがって、おむつの不織布を用いた任意の面に通常係着可能であり、また特に係着に適した素材を別途適用してランディング部としてもよい。本実施形態においては、腹側部位31の前身頃非開放部31bの非肌面が係着性が良好のランディング部となる。なお、図1に示すような破断誘導線34の破断前のファスニングテープ5は、その係着面5iが基材シート5aの内面側表面に接着固定された機械的面ファスナーのメス部材に仮着されて、折りたたまれた状態で収納されている。
【0022】
本実施形態においてはミシン目などの破断誘導線34は、下帯部材2の幅方向両側部に、外方部となる前身頃開放可能部31aと重なる部分2cを形成する観点から、下帯部材2の幅方向両側縁2sの位置より内側に形成されている。このように下帯部材2に前身頃開放可能部31aと重なる部分2cを形成することで、ファスニングテープ5の耳Mを下帯部材2と重ねて配置でき、それにより、ファスニングテープ5が着用者に接触して不快感や違和感を与えることを防止できる。また、破断誘導線34の下に剛性が比較的高い下帯部材2が存在することによって、破断誘導線34の破断操作を容易に行うことができる。
【0023】
本実施形態においては、破断誘導線34が、おむつ10を着用者の臍に対応する部位を挟んでその両側に股下方向に延び、略平行に設けられている。このとき、略平行に設けられている破断誘導線34は、着用時の形状としては着用者の体形に応じて腹側部位31の上方から下方に向かうにつれて、着用者の正中面に対応する切断線(おむつ縦方向中央線)に近づくように若干傾斜させて形成された、つまり若干逆「八」の字状になることもある。本発明におけるミシン目34は、傾斜させるか否かを問わずに、直線状のものであっても、円弧状やサインカーブ状等の曲線状のものであってもよい。
【0024】
破断誘導線34をなすミシン目は、おむつ製造中及びおむつ装着中に破れない強度を維持しながら、使用場面において比較的容易に破断することが好ましい。このため、腹側部位31のミシン目の上方端部及び下方端部は、腹側部位31の上下の端縁からわずかに距離dを介して離れていることが好ましい。図5は、腹側部位31の上端縁を含む位置のミシン目からなる破断誘導線34の拡大平面図である。腹側部位31の上下の端縁それぞれから、各端縁に最も近い切れ目までの距離dが1.5mm以上であることが好ましい。他方、ミシン目の切れ目の長さLaとし、ミシン目の切れ目間の長さLbとすると、その比率〔La/Lb〕は、適当な破断強度を確保する観点から、2〜8の範囲内であることが好ましく、3〜7の範囲内であることがより好ましい。数値的に言えばLaは2〜10mm、Lbは1〜5mmの範囲内であることが好ましい。また、必要に応じて、破断誘導線の破断開始部に起点となる凹欠部や掴み代を設けることもできる。なお、図1および4においては、ミシン目の大きさ及び縁部の距離dを図面上の視認性を考慮し、やや誇張して示している。
【0025】
本実施形態では、図2の展開平面図に示されるように、4本の全ての臀部第1弾性部材21が、着用時に正中面切断線Pで示される着用者の臀裂に沿って伸びるように、下帯部材2の幅方向中央部に存在し、全体において線状になっている。このように、臀部第1弾性部材21を全体において線状とすることで着用者の排尿部付近に下帯部材をより近づけることができ、吸収体に尿が素早く吸収されるため、排尿した時の漏れを防止することができる。ここで幅方向中央の範囲とは特に限定されず、正中面切断線Pから幅方向(X方向)に臀部第1弾性部材の作用が範囲として機能的に定められればよい。
【0026】
図6は、本発明の別の好ましい実施形態の使い捨ておむつ20を示す展開平面図である。この臀部第1弾性部材21は、着用者の正中面切断線Pの位置を挟んで、幅方向の両サイド部に2本ずつ離間して一対の平行線状となっている。このように、臀部第1弾性部材21を離間して一対の平行線状とすることで着用者の股間部付近に下帯部材をより近づけることができ、股間部の隙間が小さくなるために、排尿した時の股間部からの漏れを防止することができる。
【0027】
図7は、図1のおむつを装着した状態における各弾性部材の伸縮性をモデル化して説明するための着用者背側から見た概略斜視図である。
図7に示されるように、臀部第1弾性部材(臀裂フィット性弾性部材)21の収縮により、臀裂線P方向で上方に向かう張力fが働き引っ張ることで、おむつ10と着用者6の股間部との隙間が少なくなる。これにより、臀部第1弾性部材がなかった従来のものに対して、この部分の隙間からの排泄物の液漏れを防止する性能と適切にフィットすることによる着用時の安心感が格段に向上する。しかも本実施形態のおむつにおいては、図示されるように、臀部第2弾性部材(臀溝フィット性弾性部材)41が臀溝の部分から左右に延び、おしりの両わきの上の方まで包み込みながら支えるように配設されたため、とくにおしりのやや下の方で左右に膨らみある部分を軽く持ち上げるようにして、おむつの背側部位がしっかりと余計な隙間をあけずにフィットする。そして、さらに、この臀部第2弾性部材41が臀溝線Pに沿って左右に延び、幅方向外側向け張力f2aおよびf2bが働き両側に開くように引っ張ることで、着用者が歩いたり寝返りを打ったときに、臀裂に臀部第1弾性部材21入り込みすぎて履き心地が悪くなってしまうことを効果的に防ぐことができる。すなわち、臀部第1弾性部材21の張力fと臀部第2弾性部材41の張力f2a、f2bとが相互に作用して、おむつの下方全体の形状が着用者の臀部の凹凸形状と好適にフィットするようになり、しかもおしりの割れ目部分に弾性部材が食い込むことはなく、モレ防止性能と長時間着用するときの履き心地の良さとを両立できる。
【0028】
本実施形態では、上述のように環状外装帯3の背側部位32は、着用者の臀部を覆う股下にかけて十分幅広にされ、その背側部位32の両側方には着用者の背後から見て側面方向に上開き、つまり逆「八」の字状になるように配置された左右一対の臀部第2弾性部材41a、41bを有する。また、図7において、上述のように臀部第1弾性部材21の収縮によって働く力の方向を矢印fで示し、臀部第2弾性部材41a、41bの収縮によって働く力の方向を矢印f2a、f2bでそれぞれ示してある。力fは臀裂線Pに沿った方向に作用し、f2aおよびf2bは臀溝線Pに沿った方向に作用する。f2aとf2bは、臀部第2弾性部材41を設置するときの伸長率を等しくすることで等しくなる。力f、f2a、およびf2bは、吸収体ギャザー及びヒップギャザーを以下に示す伸長率に設定することで、バランスよく組み合わされ、上述した程よい装着感を生み出すフィット性を発揮することができる。
【0029】
また、臀部第1弾性部材21により形成される吸収体ギャザーの伸長率(Eb)は、20〜200%であることが好ましく、30〜100%がさらに好ましい。吸収体ギャザーの伸長率を上げる方法としては、弾性部材の繊度、弾性部材の本数、弾性部材の伸長率の向上などの手段を用いることができる。また、臀部第2弾性部材41により形成されるヒップギャザーの伸長率は30〜300%であることが好ましく、50〜100%がさらに好ましい。ここでいう、吸収体ギャザー、及びヒップギャザーの伸長率(Eb)とは、各伸縮部における自然に収縮した状態のある長さを(A)とし、ギャザーを伸び止まりするまで引き伸ばした時の長さを(B)としたとき、((B)−(A))/(A)で算出される百分率(%)と定義する。
【0030】
上記各実施形態のおむつは、使用開始時にパンツ型の形態のまま着脱することができるため、自立意識の高い起立状態で着脱できる着用者に対して、自分でパンツを穿くというニーズに応えることができる。そのため、介助が必要でありながら自立する訓練も必要となる高齢者や身体障害者のリハビリ用として適している。そして、2回目以降の着脱においては必要により、破断誘導線34を破断し取り出したファスナーテープで再接合することにより、展開型おむつと同様にして装着し、使用することもできるため、横になったままでも交換が簡単にでき、介助者が軽便におむつ交換をすることができる。
【0031】
本発明の使い捨ておむつの各構成材料としては、通常用いられている各種の材料を特に制限なく用いることができる。例えば、肌に接触する部位に使用するシート材は、肌触りの良い材料、不織布や布等であることが好ましい。吸収性コアとしては、例えば、解繊パルプや捲縮アセテート繊維等の繊維からなる繊維集合体や、繊維集合体に吸水性ポリマーを保持させてなるものが好ましい。上記の各弾性部材の材料としては、吸収性物品に用いられる通常の弾性材料を用いることができ、例えば素材としては、スチレン−ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、ネオプレン等の合成ゴム、天然ゴム、EVA、伸縮性ポリオレフィン、ポリウレタン等を挙げることができ、形態としては、断面が矩形、正方形、円形、多角形状等の糸状ないし紐状(平ゴム等)のもの、或いはマルチフィラメントタイプの糸状のもの等を用いることができる。機械的ファスナーのオス部材及びメス部材としては、公知の機械的ファスナー、例えば「マジックテープ(登録商標)」(クラレ社製)、「クイックロン(登録商標)」(YKK社製)、「マジクロス(登録商標)」(カネボウベルタッチ社製)等におけるオス部材及びメス部材を用いることができる。機械的面ファスナーのメス部材としては、これに直接係合可能な材料、例えば係合性に富む不織布を用いることもできる。
【0032】
本発明の使い捨ておむつは、上述した実施形態に制限されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
例えば、機械的面ファスナーに代えて、粘着剤を塗工して形成した粘着部を設けることもできる。また、破断誘導線としては、切り取り線としての効果があれば特に制限なく用いることができる。例えば、熱シール、超音波シールなどにより誘導線に沿って破断強度の強弱が形成されるのであれば孔の有無は問わない。また、破綻誘導線34の近傍に配される部分に着色領域を設け、破断誘導線34の破断作業の際の破断誘導線34の視認を容易しにすることもできる。
本発明の使い捨ておむつは、成人用に適しているが、幼児用であっても良い。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例にさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0034】
[実施例1]
図1〜3に示す形態の使い捨ておむつ(複数本からなる臀部第1弾性部材の、吸収性コア幅方向における両外側に位置するものと、臀部第2弾性部材の同方向内側端が重ならないようになっている)を製造した。おむつ幅方向の中央部に配設された臀部第1弾性部材21により形成された吸収体ギャザーの伸長率は50%であり、また、臀部第2弾性部材41により形成されたヒップギャザーの伸長率は70%であった。
【0035】
[実施例2]
臀部第1弾性部材21を図6に示すようにサイド部に配設した以外は、実施例1と同様にして使い捨ておむつを製造した。
【0036】
[実施例3]
臀部第2弾性部材を設けなかった以外は、実施例1と同様にして、使い捨ておむつを製造した。
【0037】
[比較例1]
臀部第1弾性部材を設けなかった以外は、実施例1と同様にして、使い捨ておむつを製造した。
【0038】
[股間部フィット状態評価]
図8の模式的な正面図による説明図で示すように、モデル人形61に、実施例1〜3および比較例1のおむつであって、パンツ形状の使い捨ておむつ62をはかせ、股間窪部から、垂直方向のおむつ外装帯表面までの距離Lを測定した。各測定に退いて、おむつ62の上端63は、人形の同一の位置となるようにした。結果を表1に示す。
【0039】
[装着感評価]
被験者に、実施例1〜3および比較例1のおむつをパンツ形状で装着してもらい、その履き心地を評価した。臀裂部、または股間部に吸収体ギャザーによる食い込みが無いか、あっても極めて小さく、装着感が良かったものを「○」、臀裂部または、股間部に吸収体ギャザーによる食い込みが少し有り、やや装着感が悪かったものを「△」、臀裂部または、股間部に吸収体ギャザーによる食い込みが有り、装着感が悪かったものを「×」により評価した。
【0040】
[液漏れ防止性評価]
排尿ポイント65を設けたモデル人形66に、パンツ形状の実施例1〜3および比較例1の使い捨ておむつ67をはかせ、モデル人形66を傾斜角度30度に傾けた。図9は、このときの状態をまた下側から見た説明図である。モデル人形66に設けられた排泄ポイント65から、生理食塩水を、排泄量50g/回、排泄速度5g/sで排泄させた。この排出を5分間隔で、繰り返した後、漏れるまでの総排泄量から漏れた量を差し引くことにより、液吸収量を測定した。なお、試験は25℃で行った。
結果を表2に示す。なお、液吸収量の単位はgである。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
表1および2から示されるように、比較例1のおむつでは、おむつとモデル股間との距離(L)が52mmと長く、液漏れ防止性評価試験において、吸収量が300gと少なく、図9において矢印68方向に液の横モレが生じ、液漏れ防止性が十分ではなかった。
これに対して、臀部第1弾性部材を設けた実施例1〜3のおむつでは、おむつとモデル股間との距離(L)が11〜12mmと小さいため吸収量も比較例にくらべ大幅に向上し、十分に液モレを防止することができた。さらに、臀部第2弾性部材が設けられた実施例1〜2では、臀部割れ目や股間部に弾性部材がくい込むことがなく、履き心地に優れ、優れた漏れ防止性と装着感を両立することができた。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施形態としての使い捨ておむつを示す、腹側から見た斜視図である。
【図2】図1のおむつを、破断誘導線を破断して展開した状態を肌当接面側からみた状態を示す展開平面図である。
【図3】図2のA−A線模式断面図である。
【図4】図1のおむつを、片側の破断誘導線を破断した状態を示す斜視図である。
【図5】腹側部位の上端縁を含む位置のミシン目からなる破断誘導線の拡大平面図である。
【図6】本発明の別の実施形態としての使い捨ておむつを、破断誘導線を破断して展開した状態を肌当接面側からみた状態を示す展開平面図である。
【図7】図1のおむつを装着した状態における各弾性部材の伸縮性をモデル化して説明するための着用者背側から見た概略斜視図である。
【図8】実施例の股間部フィット状態評価試験の説明図である。
【図9】実施例の液漏れ防止性評価試験の説明図である。
【符号の説明】
【0045】
10、20 使い捨ておむつ
2 下帯部材
3 環状外装帯
5 ファスニングテープ
21 臀部第1弾性部材
22 表面シート
23 裏面シート
24 吸収性コア
31 腹側部位
32 背側部位
33 サイドシール部
34 破断誘導線
41 臀部第2弾性部材
42,43 ウエスト弾性部材
44 レッグ弾性部材
61 モデル人形
62 使い捨ておむつ
65 排尿ポイント
66 モデル人形
67 使い捨ておむつ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の胴回りに沿わされる環状外装帯と、該外装帯の腹側部肌面側及び背側部肌面側に接合され股下に沿わされるよう垂設された、吸収性コアを具備する下帯部材とを有する使い捨ておむつであって、
前記環状外装帯の腹側部には外装帯の上縁から下縁にまで延びる一対の破断誘導線があり、該環状外装帯は前記破断誘導線に沿って切断して前記下帯部材から切離し観音開きに開放可能であり、さらに前記破断誘導線の近傍で切り離される外装帯部分にその切断により引き出し可能なファスニングテープが収納されており、前記下帯部材は前記吸収性コアの非肌面側に該下帯部材の長手方向に延びる臀部第1弾性部材を有するパンツ型及び展開型両用の使い捨ておむつ。
【請求項2】
前記破断誘導線は着用者の臍に対応する部位を挟んでその両側に背丈方向に延びて平行に設けられており、展開状態でみて前記臀部第1弾性部材がその平行に設けられた一対の破断誘導線及びその延長平行線間に挟まれる位置にある請求項1記載の使い捨ておむつ。
【請求項3】
前記臀部第1弾性部材は、着用者の臀裂に沿うように線状に延在する請求項1または2記載の使い捨ておむつ。
【請求項4】
前記臀部第1弾性部材が全体において着用者の正中面位置で離間して一対の平行線状になっていて、着用者の股間部に沿うように線状に延在する請求項1、または2に記載の使い捨ておむつ。
【請求項5】
前記下帯部材は前記吸収性コアより非肌面側に配置された裏面シートを備えており、前記臀部第1弾性部材が前記吸収性コアと該裏面シートとの間に介在された請求項1〜4いずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項6】
前記環状外装帯の背側部位には、着用者の胴回りから股下にかけて延在する逆「八」の字状外形の臀部包被部があり、該臀部包被部の逆「八」の字状側縁部に、着用者の股下部付近において該下帯部材の幅方向に伸縮性を有する一対の臀部第2弾性部材を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−131197(P2010−131197A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−310089(P2008−310089)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】