使い捨ておむつ
【課題】補助パッドが積層されるか否か、補助パッドが長いものであるか短いものであるか等に関わらず、体液の漏れを確実に防止することができる使い捨ておむつとする。
【解決手段】液透過性表面シート、液不透過性裏面側シート、これらの間に介在された吸収体13を有する内装体10と、この外面に固定され、かつ内装体10の前方及び後方まで延在する外装体20とが、前身頃Fから後身頃Bにかけて備えられ、前身頃F及び後身頃Bの内面それぞれに、前後方向中央側に開口するポケットPA,PBが備えられた使い捨ておむつであって、ポケットPA,PBは、前身頃F及び後身頃Bにおいて、開口位置が前後方向に離間するように複数備えられ、この複数のポケットPA,PBは、それぞれの開口幅が前後方向中央から離れるに従って順に広くなる構成とされている。
【解決手段】液透過性表面シート、液不透過性裏面側シート、これらの間に介在された吸収体13を有する内装体10と、この外面に固定され、かつ内装体10の前方及び後方まで延在する外装体20とが、前身頃Fから後身頃Bにかけて備えられ、前身頃F及び後身頃Bの内面それぞれに、前後方向中央側に開口するポケットPA,PBが備えられた使い捨ておむつであって、ポケットPA,PBは、前身頃F及び後身頃Bにおいて、開口位置が前後方向に離間するように複数備えられ、この複数のポケットPA,PBは、それぞれの開口幅が前後方向中央から離れるに従って順に広くなる構成とされている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンツ型おむつ等の使い捨ておむつに関するものである。特に、尿採りパッド等の補助パッドを積層して使用することもできる使い捨ておむつに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、使い捨ておむつ、特にパンツ型おむつは、そのまま単体で装着するのが一般的であったが、現在では、パンツ型おむつに尿採りパッド等の補助パッドを積層して装着することも多い。
しかしながら、パンツ型おむつに補助パッドを積層して装着すると、装着者(おむつを装着している者)の動き等に伴って補助パッドがズレ、このズレを原因として体液の漏れが生じることがある。また、特にパンツ型おむつは、装着感を向上させるために、吸収体を前後方向に長く配置しない場合があり、この場合の吸収体(以下、単に「基本吸収体」ともいう。)は、夜用などとして用いられる補助パッドに備わる吸収体(以下、単に「補助吸収体」ともいう。)よりも短くなる傾向にある。しかるに、基本吸収体よりも補助吸収体の方が長いと、この補助吸収体を伝わって体液が基本吸収体の前方や後方にまで広がる。そして、この広がりは当該おむつが通常は想定していない広がりであり、この広がりを原因として体液の前後漏れが生じるおそれがある。
そこで、まず、前者のズレの問題に関しては、本出願人が特許文献1において提案している「第1係合部を有する裏面シートを備えた吸収パッドと、第2係合部を有する吸収パッド保持体とからなり、前記第1係合部と前記第2係合部とを係合させることによって、前記吸収パッドを前記吸収パッド保持体に取り付けてなる」との技術的思想を適用して解決することが考えられる。
【0003】
また、後者の前後漏れの問題に関しては、特許文献2や特許文献3において提案されている技術的思想を適用して解決することが考えられる。特許文献2は、「外装シート3(1,2)の肌面側の後背部に、吸収体4と立ち上がり帯材5の後部分を覆うように親水性の漏れ防止用シート6を立ち上がり可能に接合することにより、この漏れ防止用シート6と立ち上がり帯材5とで囲まれた部分にポケット12を形成する」とするものである。また、特許文献3は、「腹側部A及び/又は背側部Bにおける着用者の胴回りに位置する胴回り部Eに、立体ガード7が形成されており、該立体ガード7は、複数本の立体ガード弾性部材71,71が配されて、胴回り方向に伸縮可能になされている」とするものである。なお、以上の説明で用いた符号は、該当文献における符号をそのまま用いたものであり、後述する本願発明の符号とは関係がない。
これら特許文献2及び特許文献3に提案された技術的思想は、補助パッドを積層して装着する場合を想定するものではないが、特許文献2は背漏れが防止されるとしており、また、特許文献3はウエスト開口部からの漏れが防止されるとしている。そこで、補助パッドを積層する場合においても前後漏れを防止することができるのではないかと考えるのである。
【0004】
しかしながら、より詳細に検討すると、特許文献1〜3によっては、上記問題を解決することができない。
すなわち、まず、補助パッド(補助吸収体)が長いと、この補助パッドによって特許文献2が提案するポケット12や特許文献3が提案する立体ガード7(以下、これらポケット12及び立体ガード7を合わせて、単に「ポケット」ともいう。)が覆われてしまうため、当該ポケットが機能しなくなり、前後漏れの問題を解決することができなくなる。この点に関しては、当該ポケットをできる限り、ウエスト開口部側に設けることにより、解決することも考えられるが、このような解決によると、補助パッドが長いものではない場合に、補助パッドの前後端部とポケットとが離間し、この離間部において体液が幅方向に広がって(拡散して)しまうため、この広がりを原因として体液の漏れが生じるおそれがある。しかも、この場合に特許文献1が提案する第2の係合部を適用して補助パッドのズレを防止しようとすると、当該離間部において第2の係合部が露出してしまう。そこで、当該離間部には第2の係合部を設けないものとすることも考えられるが、このような対応では、補助パッドが長い場合において、当該補助パッドの前後端部のズレを防止することができなくなり、ズレを原因とする漏れの問題が生じるおそれがある。また、そもそも第2の係合部を備える形態は、補助パッドを積層しない場合に不都合である。
【0005】
以上のように、従来の形態によると、補助パッドが積層されるか否に関わらず、また、積層される補助パッドが長いものであるか否かに関わらず、体液の漏れを確実に防止することができる使い捨ておむつとはならないのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004‐261332号公報
【特許文献2】特開2001‐37809号公報
【特許文献3】特開2001‐252303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする主たる課題は、補助パッドが積層されるか否か、補助パッドが長いものであるか短いものであるか等に関わらず、体液の漏れを確実に防止することができる使い捨ておむつを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決した本発明は次の通りである。
〔請求項1記載の発明〕
前後方向前側の前身頃及び前後方向後側の後身頃を有し、
液透過性表面シート、液不透過性裏面側シート、並びにこれら表面シート及び裏面側シートの間に介在された吸収体を有する内装体と、この内装体の外面に固定され、かつ当該内装体の前方及び後方まで延在する外装体とが、前記前身頃から前記後身頃にかけて備えられ、
前記前身頃及び前記後身頃の内面それぞれに、前後方向中央側に開口するポケットが備えられた使い捨ておむつであって、
前記ポケットは、前記前身頃及び前記後身頃の少なくとも一方において、開口位置が前後方向に離間するように複数備えられ、
この複数のポケットは、それぞれの開口幅が、前後方向中央から離れるに従って順に広くなる構成とされている、
ことを特徴とする使い捨ておむつ。
【0009】
(作用効果)
前身頃及び後身頃の内面それぞれに、前後方向中央側に開口するポケットが備えられていると、この両ポケットに補助パッドの前後端部を差し込むことができ、補助パッドのズレを防止することができる。しかも、この場合、両ポケットが補助パッドを覆った状態になり、両ポケットが補助パッドに覆われた状態にはならないため、ポケットの漏れ防止機能は失われない。
また、ポケットが、前身頃及び後身頃の少なくとも一方において、開口位置が前後方向に離間するように複数備えられていると、この複数のポケットのいずれを選択するかによって、補助パッドの前端部を差し込むポケットと補助パッドの後端部を差し込むポケットとの離間距離が変わる。したがって、補助パッドが長いものであるか短いものであるかに関わらず、上記ズレ防止機能を発揮させることができる。しかも、この場合、補助パッドの前後端部と両ポケットとが離間した状態にならないため、離間部において体液が幅方向に広がる(拡散する)との問題も生じない。
さらに、補助パッドの幅は、通常、その長さが長くなると広くなり、その長さが短くなると狭くなる傾向にあるところ、複数のポケットそれぞれの開口幅が、前後方向中央から離れる(遠くなる)に従って順に広くなる構成とされていると、例えば、前後方向中央から離れた(遠い)ポケットには、通常の長い補助パッド、つまり幅が広い補助パッドを差し込むことができる。しかも、この構成によると、前後方向中央から離れていない(近い)ポケットの開口幅が必要以上に広くならないため、当該ポケットに通常の短い補助パッド、つまり幅が狭い補助パッドを差し込んだ場合においてもズレが防止される。
なお、長い補助パッドのなかにも幅が狭い補助パッドは存在し、この場合は、前後方向中央から離れた開口幅の広いポケットに当該幅が狭い補助パッドを差し込むことになる。しかしながら、前後方向中央から離れた部位においては、この種のおむつの構造上、おむつ内面と装着者との間の間隙が小さく(狭く)なるため、開口幅が広いことによるズレの問題は、相対的に小さなものとなる。
また、補助パッドを積層しない場合においては、前方及び後方へ拡散する体液が、前身頃及び後身頃の内面に備えられたポケット内に収容されるため、前後漏れ防止効果が向上する。
【0010】
〔請求項2記載の発明〕
前記外装体を構成する外装シートの端部が折り返され、この折り返し部の一部が外面側において固定されないことによって、及び/又は、前記外装体の内面に漏れ防止シートが備えられ、この漏れ防止シートの一部が外面側において固定されないことによって、前記ポケットが形成され、
前記内装体の少なくとも前方及び後方に位置するポケットにおいては、当該ポケットを構成するシートの外面側に吸収補助体が備えられている、
請求項1記載の使い捨ておむつ。
【0011】
(作用効果)
外装体を構成する外装シートの端部が折り返され、この折り返し部の一部が外面側において固定されないことによって、あるいは外装体の内面に漏れ防止シートが備えられ、この漏れ防止シートの一部が外面側において固定されないことによって、ポケットが形成されるおむつは、極めて製造容易であるため、ポケットを備えることによる製造コストの増加が抑えられる。
また、内装体の前方及び後方に位置するポケットにおいて、当該ポケットを構成するシートの外面側に吸収補助体が備えられていると、ポケット内に流れた(入り込んだ)体液は、当該吸収補助体によって吸収・保持されることになるため、ポケットを構成する外装シートや漏れ防止シート自体に吸収力がない、あるいは弱い場合であっても、ポケット内の体液が逆戻りするおそれがない。
なお、内装体上に位置するポケットにおいては、当該内装体に備わる吸収体によってポケット内に流れた体液が吸収・保持される。
【0012】
〔請求項3記載の発明〕
前記前身頃及び前記後身頃の内面には、前後方向中央側から前記ポケット内へ体液を誘導する誘導加工が施されている、
請求項2記載の使い捨ておむつ。
【0013】
(作用効果)
前身頃及び後身頃の内面に、前後方向中央側からポケット内へ体液を誘導する、エンボス加工、親水加工等の誘導加工が施されていると、仮に基本吸収体や補助吸収体から前方又は後方に体液が流れた場合においても、当該体液は、基本吸収体や補助吸収体の前方又は後方に位置するポケットに誘導されるため、体液の漏れをより確実に防止することができる。
【0014】
〔請求項4記載の発明〕
前記ポケットを構成するシートの前後方向中央側端部にポケット弾性部材が幅方向に沿って伸張状態で固定され、かつ、前記外装体に外装弾性部材が幅方向に沿って伸張状態で固定されつつも、
前記外装弾性部材は、前記吸収補助体と重なる位置において不連続とされている、
請求項2又は請求項3記載の使い捨ておむつ。
【0015】
(作用効果)
ポケットを構成するシートの前後方向中央側端部にポケット弾性部材が幅方向に沿って伸張状態で固定されていると、このポケット弾性部材の収縮力によってポケットを構成するシートが前身頃や後身頃の内面から持ち上がり(立ち上がり)、漏れ防止効果が向上する。
一方、使い捨ておむつは、通常、フィット性向上等の観点から、外装体に外装弾性部材が幅方向に沿って伸張状態で固定されている。しかるに、ポケットを構成するシートの外面側に吸収補助体が配置されている場合においては、外装体に固定された外装弾性部材の収縮力とポケットを構成するシートに固定されたポケット弾性部材の収縮力とがつりあって、前記立ち上がり機能が抑制されてしまうおそれがある。しかしながら、外装体に固定された外装弾性部材が、吸収補助体と重なる位置において切断等によって不連続とされていると、収縮力のつりあいが解消され、立ち上がり機能が確実に発揮される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、補助パッドが積層されるか否か、補助パッドが長いものであるか短いものであるか等に関わらず、体液の漏れを確実に防止することができる使い捨ておむつとなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】展開状態のパンツ型おむつの平面図である(内面側)。
【図2】図1より弾性部材を省略した平面図である。
【図3】展開状態のパンツ型おむつの平面図である(外面側)。
【図4】図1のC‐C矢視図である。
【図5】図1のA‐A矢視図である。
【図6】図1のB‐B矢視図である。
【図7】パンツ型おむつの装着状態の斜視図である。
【図8】図4のD部分の拡大図及び変形例である。(A)D部分の拡大図、(B)ポケットPBを別体シートで形成する変形例、(C)ポケットPA,PBを別体シートで形成する変形例である。
【図9】図4のE部分の拡大図及び変形例である。(A)E部分の拡大図、(B)ポケットPBを別体シートで形成する変形例、(C)ポケットPA,PBを別体シートで形成する変形例である。
【図10】ポケットの別の形態を示す展開状態のパンツ型おむつの平面図である(内面側)。
【図11】図10より弾性部材を省略した平面図である。
【図12】小型の補助パッドを積層したパンツ型おむつの平面図である(内面側)。
【図13】大型の補助パッドを積層したパンツ型おむつの平面図である(内面側)。
【図14】図12のF‐F矢視図である。
【図15】ポケットの数を増やした形態を示す展開状態のパンツ型おむつの平面図である(内面側)。
【図16】図15より弾性部材を省略した平面図である。
【図17】図15のポケットを外装シートで形成した場合(A)、漏れ防止シートで形成した場合(B)の断面説明図である。
【図18】吸収補助体の配置例である。
【図19】誘導加工の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しつつ詳説する。
図1〜図7は、本実施の形態の使い捨ておむつ、特にパンツ型おむつを示している。このパンツ型おむつ(以下、単に「おむつ」ともいう。)は、前後方向前側の前身頃F及び前後方向後側の後身頃Bを有し、外装体20と、この外装体20の内面に固定され一体化された内装体10とが、前身頃Fから後身頃Bにかけて備えられている。なお、この構成においては、内装体10の外面に、外装体20が固定され一体化されているともいうことができ、この一体化により、内装体10の前方及び後方まで外装体20が延在している。
【0019】
本おむつの製造に際しては、外装体20の内面(上面、表面)に対して内装体10の外面(下面・裏面)がホットメルト接着剤Gなどの接合手段によって固定された後に、内装体10及び外装体20が前身頃F及び後身頃Bの境界である縦方向(前後方向、長手方向)中央で折り畳まれ、その両側部が相互に熱溶着またはホットメルト接着剤などによって接合されることによって、ウエスト開口部及び左右一対のレッグ開口部が形成されたパンツ型おむつとなる。
【0020】
(外装体の構造例)
外装体20は、図4〜図6に示されるように、上層不織布20A及び下層不織布20Bからなる2層構造の不織布シートとされ、上層不織布20Aと下層不織布20Bとの間、及び下層不織布20Bをウエスト開口縁で内面側に折り返してなる折り返し部20Cとこの折り返し部20Cを除く下層不織布20Bとの間に各種外装弾性部材が配設され、伸縮性が付与されている。外装体20の平面形状は、前後方向中央両側部にそれぞれ脚部開口を形成するために形成された凹状の脚回りカットライン29により、全体として擬似砂時計形状をなしている。
【0021】
特に、図示形態の外装体20においては、外装弾性部材として、図4に示される展開形状において、ウエスト開口部回りに配置されたウエスト部弾性部材24,24…と、前身頃F及び後身頃Bに、上下方向に間隔をおいて幅方向に沿って配置された複数の腰回り弾性部材群25,25…とを有するとともに、前身頃F及び後身頃Bのそれぞれにおいて、腰回り弾性部材群25,25…とは別に、前身頃Fと後身頃Bとを接合する一方側接合縁から股下側に延び、股下側を迂回して前身頃Fと後身頃Bとの他方側接合縁に到達するとともに、互いに交差することなく間隔をおいて配置された複数本の湾曲弾性部材群26…、28…を備えている。なお、外装体20には、脚回りカットライン29に沿って実質的に連続する、いわゆる脚回り弾性部材は設けられていない。
【0022】
ウエスト部弾性部材24,24…は、前身頃Fと後身頃Bとが接合された脇部接合縁21、22の範囲のうち、ウエスト開口縁近傍に上下方向に間隔をおいて配設された複数条の糸ゴム状弾性部材であり、身体のウエスト部回りを締め付けるように伸縮力を与えることによりおむつを身体に装着するためのものである。このウエスト部弾性部材24は、図示例では糸ゴムを用いたが、例えばテープ状の弾性部材を用いてもよい。また、図示形態のウエスト部弾性部材24,24…は、ウエスト部における下層不織布20Bの折り返し片20Cとこの折り返し部20Cを除く下層不織布20Bとの間に挟持されているが、上層不織布20Aと下層不織布20Bとの間に挟持しても良い。
【0023】
腰回り弾性部材群25,25…は、脇部接合縁21、22の内、概ね上部から下部までの範囲に亘り、上下方向に間隔をおいて幅方向(水平方向)に沿って配設された糸ゴム状の弾性部材群であり、前身頃F及び後身頃Bの腰回り部分にそれぞれ幅方向の伸縮力を与え、おむつを身体に密着させるためのものである。なお、ウエスト部弾性部材24、24…と腰回り弾性部材群25、25…との境界は必ずしも明確でなくてよい。例えば、前身頃F及び後身頃Bに上下方向に間隔をおいて水平方向に配置された弾性部材のうち、数は特定できなくても、上部側の何本かがウエスト部弾性部材として機能し、残りの弾性部材が腰回り弾性部材として機能していればよい。
【0024】
後身頃Bにおいて、腰回り弾性部材群25,25…とは別に配設された背側湾曲弾性部材群26、26…は、所定の(一方側の脇部接合縁22からほぼ脚回りカットライン29に沿って股下部に至り、股下部を横切った後に反対側の脚回りカットライン29にほぼ沿いながら他方側の脇部接合縁22に到達する)曲線に沿って配置された複数本、図示例では5本の糸ゴム状弾性部材であり、これら背側湾曲弾性部材群26、26…は互いに交差することなく、間隔をおいて配置されている。この背側湾曲弾性部材群26、26…は、2,3本程度の弾性部材を間隔を密にして実質的に一束として配置されるのではなく、所定の伸縮ゾーンを形成するように所定の間隔を空けて、3以上、好ましくは5本以上配置される。
【0025】
外装体20の前身頃Fにおいて、腰回り弾性部材群25,25…とは別に配設された腹側湾曲弾性部材群28,28…も、所定の(一方側の脇部接合縁21から股下側に至り、股下部を横切った後に他方側の脇部接合縁21に到達する)曲線に沿って配置された複数本、図示例では5本の糸ゴム状弾性部材であり、これら腹側湾曲弾性部材群28、28…は互いに交差することなく、間隔をおいて配置されている。この腹側湾曲弾性部材群28、28…も、2,3本程度の弾性部材を間隔を密にして実質的に一束として配置されるのではなく、所定の伸縮ゾーンを形成するように所定の間隔を空けて、3本以上、好ましくは5本以上配置される。
【0026】
また、上記形態例では、図3に示すように、前身頃F及び後身頃Bに配置された腰回り弾性部材群25,25…及び湾曲弾性部材26…、28…は、内装体10を横切る部分を切断し、不連続とすることができるが、内装体10上においても連続させて配置することもできる。弾性部材を内装体10上で不連続とすることにより、吸収体13の縮こまりをより防止することができる。
【0027】
上述した外装体20は、例えば特開平4−28363号公報や、特開平11−332913号公報記載の技術により製造することができる。また、湾曲弾性部材26…、28…を内装体10上で切断し不連続化するには、特開2002−35029号公報、特開2002−178428号公報及び特開2002‐273808号公報に記載される切断方法が好適に採用される。
【0028】
(内装体の構造例)
内装体10は、図5及び図6に示すように、不織布などからなる液透過性表面シート11と、ポリエチレン等からなる液不透過性裏面側シート12との間に、吸収体13を介在させた構造を有しており、表面シート11を透過した排泄液(体液)を吸収保持するものである。
【0029】
吸収体13の表面側(肌当接面側)を覆う液透過性表面シート11としては、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維は、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高でソフトである点で優れている。液透過性表面シート11に多数の透孔を形成した場合には、尿などが速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。液透過性表面シート11は、吸収体13の側縁部を巻き込んで吸収体13の裏面側まで延在している。
【0030】
吸収体13の裏面側(非肌当接面側)を覆う液不透過性裏面側シート12は、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどの液不透過性プラスチックシートが用いられるが、近年ではムレ防止の点から透湿性を有するものが好適に用いられる。この遮水・透湿性シートは、たとえばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂中に無機充填材を溶融混練してシートを形成した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートである。
【0031】
吸収体13としては、公知のもの、例えばパルプ繊維の積繊体、セルロースアセテート等のフィラメントの集合体、あるいは不織布を基本とし、必要に応じて高吸収性ポリマーを混合、固着等してなるものを用いることができ、図示例では平面形状を略砂時計形状として成形されたものが使用され、その幅寸法は股間部への当たりによって着用者にゴワ付き感を与えない寸法幅となっている。この吸収体13は、形状及びポリマー保持等のため、必要に応じてクレープ紙等の、液透過性及び液保持性を有する包装シート14によって包装することができる。吸収体13の形状は、図示形態のように背側及び腹側に対して前後方向中央部(股下部)の幅が狭い砂時計形状(括れ形状)とするほか、長方形状とすることもできる。
【0032】
内装体10の両側部には脚回りにフィットする立体ギャザーBSが形成されているのが好ましい。この立体ギャザーBSはギャザー不織布15により形成される。このギャザー不織布15としては、図5に示されるように、折返しによって二重シートとした不織布が好適に用いられ、液透過性表面シート11によって巻き込まれた吸収体13の側縁部をさらにその上側から巻き込んで吸収体13の裏面側まで延在して接着されている。より具体的には、ギャザー不織布15は、おむつ1の前後方向中央部(股間部)では、立体ギャザーBS形成部分を残し、幅方向中間部から吸収体13の裏面側に亘る範囲がホットメルト接着剤G等によって接着され、また前後方向前後端部では、幅方向中間部から一方側端縁までの区間が吸収体13の裏面側に亘る範囲で接着されるとともに、立体ギャザーBSを形成する部分を吸収体13の上面部にて折り畳むようにしながらホットメルト接着剤G等により接着している。
【0033】
二重シート不織布によって形成されたギャザー不織布15の内部には、起立先端側部分に複数本の糸状弾性部材16、16…が配設されている。糸状弾性部材16、16…は、製品状態において図5に二点鎖線で示すように、弾性伸縮力により吸収体側縁部より突出する不織布部分を起立させて立体ギャザーBSを形成するためのものである。
【0034】
液不透過性裏面側シート12は、二重シート状のギャザー不織布15の内部まで進入し、図6に示されるように、立体ギャザーBSの下端側において防漏壁を構成するようになっている。
【0035】
この液不透過性裏面側シート12としては、排便や尿などの褐色が出ないように不透明のものを用いるのが望ましい。不透明化としては、プラスチック中に、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、ホワイトカーボン、クレイ、タルク、硫酸バリウムなどの顔料や充填材を内添してフィルム化したものが好適に使用される。
【0036】
糸状弾性部材16としては、通常使用されるスチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンブタジエン、シリコーン、ポリエステル等の素材を用いることができる。また、外側から見え難くするため、太さは925dtex以下、テンションは150〜350%、間隔は7.0mm以下として配設するのがよい。なお、糸状弾性部材に代えて、ある程度の幅を有するテープ状弾性部材を用いるようにしてもよい。
【0037】
前述のギャザー不織布15を構成する素材繊維も液透過性表面シート11と同様に、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工方法により得られた不織布を用いることができるが、特にはムレを防止するために坪量を抑えて通気性に優れた不織布を用いるのがよい。さらにギャザー不織布15については、尿などの透過を防止するとともに、カブレを防止しかつ肌への感触性(ドライ感)を高めるために、シリコーン系、パラフィン金属系、アルキルクロミッククロイド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布を用いるのが望ましい。
【0038】
(ポケットの例)
本おむつは、ウエスト開口部からの漏れを防止するため、前身頃F及び後身頃Bの内面それぞれに、前後方向中央側に開口するポケットを有する。そして、このポケットは、前身頃F及び後身頃Bの少なくとも一方において、好ましくは以下で説明するように両方において、開口位置が前後方向に離間するように複数備えられ、この複数のポケットは、それぞれの開口幅が、前後方向中央から離れるに従って順に広くなる構成とされている。
【0039】
以下、このポケットの形態例を、図1,2,8,9を参照しつつ詳説する。
本形態のポケットPA,PBは、開口が収容スペース(内空部)の前後方向中央側端部に位置するポケット状の構造をとり、開口位置が前後方向に離間するように複数(図示例では各2つ)備えられる。
【0040】
これらポケットPA,PBのうち、1つについては外装体20を構成する外装シートたる下層不織布20Bの端部(折り返し部)20Cを折り返して形成し、残りを別体のシートで形成することができる(図8(A)(B)、図9(A)(B))。また、全てのポケットPA,PBについて、別体シート50A,50Bをおむつの内面に付加して形成することもできる(図8(C),図9(C))。なお、前身頃Fや後身頃Bにおいて外装体20内面に固定される背漏れ防止シートや腹漏れ防止シートは、この別体シート50A,50Bの一種である。
【0041】
これらのポケットPA,PBは、ポケットを構成するシート(折り返し部20C、別体のシート50A,50B)の一部が外面側において固定されないことによって、具体的には、収容スペースとなる領域のウエスト側及び幅方向両側が、その内面側に位置するシートの表面に固着(固定)されつつ(図中の固着部SA,SB)、収容スペースとなる領域が固定されないことによって形成することができる。
【0042】
この他、下層不織布20Bの折り返し部20CをΣ状に折り畳み、収容スペースとなる領域のウエスト側及び幅方向両側を、その内面側に位置するシートの表面に固着することにより、折り返し部20CのみでポケットPA,PBを形成することもできる。
【0043】
本形態において、付加される別体のシート50A,50Bの幅方向の長さは、製品幅より短くしても良いが、製品幅と同じ長さとし、外装体20と共に、その両側部が熱溶着またはホットメルト接着剤などによって接合されることが好ましい。
【0044】
図8(A)(背側は図9(A))に示される例では、ウエスト開口部側に位置するポケットPBが折り返し部20Cによって形成されており、別体シート50Aが折り返し部20Cと上層不織布20Aとの間に固着部SAにおいて固定され、股下側(前後方向中央側)に位置するポケットPAを形成している。別の例としては、図8(B)(背側は図9(B))に示すように、股下側に位置するポケットPBを折り返し部20Cによって形成し、折り返し部20Cの表面側に別体シート50Bを固着部SBにおいて固定する形態、図8(C)(背側は図9(C))に示すように、折り返し部20Cではポケットを形成せず、折り返し部20Cの表面側に別体シート50Aを、さらに表面側に重ねて別体シート50Bを固定してポケットPA,PBを形成する形態等が挙げられる。
【0045】
以上のように前身頃F及び後身頃Bの内面それぞれに、前後方向中央側に開口するポケットPA,PBが備えられていると、この両ポケットPA,PBのいずれかに補助パッドの前後端部を差し込むことができ、補助パッドのズレを防止することができる。しかも、この場合、両ポケットPA,PBのいずれかが補助パッドを覆った状態になり、ポケットPA,PBのいずれかが補助パッドに覆われた状態にはならないため、ポケットPA,PBの漏れ防止機能は失われない。また、ポケットPA,PBが、開口位置が前後方向に離間するように複数備えられていると、この複数のポケットPA,PBのいずれを選択するかによって、補助パッドの前端部を差し込むポケットPA又はPBと補助パッドの後端部を差し込むポケットPA又はPBとの離間距離が変わる。したがって、補助パッドが長いものであるか短いものであるかに関わらず、上記ズレ防止機能を発揮させることができる。しかも、この場合、補助パッドの前後端部と両ポケットPA,PBとが離間した状態にならないため、離間部において体液が幅方向に広がる(拡散する)との問題も生じない。さらに、補助パッドの幅は、通常、その長さが長くなると広くなり、その長さが短くなると狭くなる傾向にあるところ、複数のポケットPA,PBそれぞれの開口幅X1,X2(図2参照)が、前後方向中央から離れる(遠くなる)に従って順に広くなる構成とされていると、図示例ではポケットPAよりもポケットPBが広くなる構成とされていると、例えば、前後方向中央から離れた(遠い)ポケット(図示例ではポケットPB)には、通常の長い補助パッド、つまり幅が広い補助パッドを差し込むことができる。また、この構成によると、前後方向中央から離れていない(近い)ポケット、図示例ではポケットPAの開口幅X1が必要以上に広くならないため、当該ポケットPAに通常の短い補助パッド、つまり幅が狭い補助パッドを差し込んだ場合においてもズレが防止される。なお、長い補助パッドのなかにも幅が狭い補助パッドは存在し、この場合は、前後方向中央から離れた開口幅の広いポケットに当該幅が狭い補助パッドを差し込むことになる。しかしながら、前後方向中央から離れた部位においては、この種のおむつの構造上、おむつ内面と装着者との間の間隙が小さくなるため、開口幅が広いことによるズレの問題は、相対的に小さなものとなる。また、補助パッドを積層しない場合においては、前方及び後方へ拡散する体液が、前身頃F及び後身頃Bの内面に備えられたポケットPA,PB内に収容されるため、前後漏れ防止効果が向上する。
【0046】
本形態において、ポケットPA,PBは、平面形状が幅方向に長い長方形状となっているが、これに限定する趣旨ではない。例えば、各ポケットPA,PBを、ウエスト側が円弧状となる形状とすることや、ウエスト側に向かって徐々に広がる形状、ウエスト側に向かって徐々に狭まる形状などとすることができる。ただし、補助パッドを差し込み、もって当該補助パッドのズレを防止するという観点からは、本形態のように方形状とするのが好ましい。
【0047】
別体シート50A,50Bとしては、撥水性と通気性を有する素材を使用することが好ましく、具体的には、ギャザー不織布15と同様に、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維等からなり、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工方法に得られた不織布を用いることができる。また、シリコーン系、パラフィン金属系、アルキルクロミッククロイド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布を用いるのが望ましい。
【0048】
折り返し部20CでポケットPA,PBを形成する場合においては、折り返し部20Cのうち固着部SA,SB以外の自由部分については撥水処理を施すのが好ましい。
【0049】
ポケットPA,PBの一方又は両方は、開口が開放可能なように閉じられていると、補助パッドに対して被さる又は遠すぎるポケットを、邪魔にならないように、また着用者に不快感を与えないように閉じておくことができる。
【0050】
このような構造は、ポケットPA,PBの収容スペースの内面のうち厚み方向の対向面(装着者の身体側となる面及びその反対側の面)相互を剥離可能に接合することにより構成することができる。この剥離可能接合部は、ポケットPA,PBの収容スペースの全体としても良いが、少なくとも一部に設ければ良く、例えば開口の縁部にのみ設けることができる。剥離可能接合部は、周囲の固定部分より弱い接合強度で接合されている部分であり、接着剤を用いない単なる圧着により形成できる他、接着剤を用いて弱く接着することにより形成できる。接着剤を用いる場合、剥離可能接合部の接着剤の量を周囲の固着部分SA,SBより少なくすることにより、剥離可能接合部を形成することができる。この場合、剥離可能接合部と周囲の固着部分とにおいて、接着剤の塗布パターンは同じで塗布量を代える他、両者の塗布パターンを異ならしめ、例えば剥離可能接合部の塗布パターンをスパイラル塗布等の間欠塗布とし、周囲の固着部分SA,SBをベタ塗りとするといった手法を採用することができる。また、剥離可能接合部と対応する部分において外装体20に固定する弾性部材25の本数を多くして、つまり弾性部材25の間隔を小さくすることでこまかいシャーリングを生じさせ、その皺により剥離可能接合部と接合対象当接部材との接合面積を減じる、といった手法を採用することもできる。
【0051】
剥離可能接合部は、ポケットPA,PBの収容スペースの内面のうち厚み方向の対向面(装着者の身体側となる面及びその反対側の面)のいずれか一方の面にメカニカルファスナーの雄テープMを接着剤等で固定し、この雄テープMを他方の面に係止することにより剥離可能に接合する形態としてもよい(図14(B))。この場合、ポケットPA,PBを閉じておくことによる効果はもちろん、装着する補助パッドのウエスト側端部(前後端部)をポケット内面の雄テープMで固定し、補助パッドのズレを防止できるという効果も発揮され、漏れ防止効果をより一層のものとすることができる。
【0052】
ポケットPA,PBのおむつ前後方向の長さ(ポケットの深さ)は、5〜100mmとすることが好ましく、特に10〜50mmとすることが好ましい。最もウエスト開口部側(前後方向中央から離れた側)に位置するポケットPBの幅方向の長さX2(図2参照)は、300〜350mmとすることが好ましく、特に300〜330mmであることがより好ましい。また、前後方向中央側に位置するポケットPAの幅方向の長さX1は、200〜300mmとすることが好ましく、230〜290mmであることがより好ましい。ウエスト開口部からポケットPA,PBの開口縁までの距離は、それぞれ100〜230mm、60〜200mmとすることが好ましく、135〜205mm、85〜170mmとすることがより好ましい。
【0053】
最も前後方向中央側に位置するポケットPAは、その収容スペースの前後方向中央側端部が内装体10の吸収体13におけるウエスト側端部(前後端部)の幅方向全体を覆うように設けられているのが好ましい。
【0054】
複数のポケットPA,PBの前後方向間隔は適宜定めることができるが、ポケットPA,PBを前身頃F及び後身頃Bそれぞれに2つ設ける図示例では、ポケットPA,PBを構成するシート(折り返し部20C、別体シート50A,50B)の前後方向中央側端縁間の離間距離が、10〜150mm、特に15〜115mmであることが望ましい。
【0055】
前後方向中央から離れた側に位置するポケットPBの前後方向中央側端縁間の距離PD2(図1,2参照)は、540〜600mmであるのが好ましく、550〜580mmであるのがより好ましい。他方、前後方向中央側に位置するポケットPAの前後方向中央側端縁間の距離PD1(図1,2参照)は、420〜500mmであるのが好ましく、480〜495mmであるのがより好ましい。
【0056】
図10及び図11に、ポケットの別の形態を示す。前後方向中央側に位置するポケットPAは、初期収容スペースとなる部分(幅方向中央部における前後方向中央側端縁からウエスト側の所定位置まで)が非接着部(剥離可能に接合しても良い)PA1とされ、この非接着部PA1の両側部及びウエスト側部の三方をそれぞれ取り囲むスペース拡大部分PA2が剥離可能に接合されている。また、図示例では、前後方向中央側から離れた側(ウエスト側)に位置するポケットPBも初期収容スペースとなる非接着部(剥離可能に接合しても良い)PB1と、この非接着部PB1を取り囲むスペース拡大部分PB2とを有している。これらの初期収容スペースPA1,PB1及びスペース拡大部分PA2,PB2を剥離可能に接合する手法としては、前述の剥離可能接合部と同様の手法を採用することができる。
【0057】
このようなスペース拡大部分PA2,PB2を有することにより、併用する補助パッドの寸法が、前後方向中央側に位置するポケットの初期収容スペースPA1に挿入するには大きすぎるが当該ポケットPAよりもウエスト側に位置する次のポケットPBの収容スペースPB1に挿入するには小さい場合や、ウエスト側に位置するポケットPBの初期収容スペースPB1に対して若干寸法が大きい場合等、必要に応じて、所望のポケットPA,PBのスペース拡大部分PA2,PB2の剥離によりポケットPA,PBの収納部分を拡大し、補助パッドの寸法に適合させることが可能となる。複数あるポケットPA,PBの全てをこのようなスペース拡大部分PA2,PB2を有する構造としてもよく、また最もウエスト側に位置するポケットPBのみ、最も前後方向中央側に位置するポケットPAのみ等、一部のポケットPA,PBのみにスペース拡大部分PA2,PB2を設けても良い。さらに、前身頃F及び後身頃Bのどちらか一方に配されたポケットPA,PBにのみスペース拡大部分PA2,PB2を設けることもできる。
【0058】
(補助パッド装着例)
補助パッドを積層した使い捨ておむつの例を図12,13に示す。
図12に例示する補助パッド100は小型タイプであり(例えば、長さ450〜520mm、幅150〜280mm)、主に液透過性表面シート111、液不透過性裏面側シート112及び吸収体113より構成される。補助パッド100は、前身頃F及び後身頃Bの前後方向中央側に位置するポケットPAにその前後両端部が挟み込まれる(挿入される)ようにして配置される。図14に、補助パッド100の前端部(前身頃側端部)を挟み込んだポケットPAの断面を示す。
【0059】
補助パッド100の液透過性表面シート111は、不織布が使用されるのが一般的であるため、図14(B)のようにポケットPAの内部に面ファスナー等の雄テープMが配されている場合は、雄テープMを補助パッド100の液透過性シート111に係合させ、補助パッド100のズレを防止することができる。
【0060】
図13に示すような大型の補助パッド200(例えば、長さ520〜650mm、幅280〜350mm)を使用する場合は、ポケットPAの上を跨ぐようにして、前身頃F及び後身頃Bのウエスト側のポケットPBに、補助パッド200の前後両端部が挟み込まれるように配置されるのが好ましい。
【0061】
(ポケットの数を変えた例)
図15及び図16に、ポケットの数を増やした形態、具体的には、前後方向中央側からウエスト側に向けて順にポケットPA、ポケットPB、ポケットPCが備えられた形態を示した。なお、本形態例では、ポケットが前身頃F及び後身頃Bのそれぞれに3つずつ備えられている形態を示しているが、4つ、5つ又はそれ以上の複数とすることもできる。
【0062】
本形態においても、ポケットPA,PB,PCの形成方法は特に限定されず、例えば、前述した下層不織布20Bの折り返し部20Cや別体シート50A,50Bを利用して形成すること、これらのシート20C,50A,50BをΣ状に折り畳んで形成すること等ができる。以下では、このΣ状に折り畳む形態の例を、図17を参照しながら説明する。
【0063】
図17の(A)は、外装体20を構成する外装シートたる下層不織布20Bの折り返し部20Cの一部が外面側において固定されないことによってポケットPA,PB,PCが形成された形態の一例を示すものである。
【0064】
この形態においては、ウエスト側端縁(折り返し縁)から前後方向中央側に延在する折り返し部20Cが、所定の位置PC5において山折りされて(外面側に折り返されて)ウエスト側に延在し、この延在部が所定の位置PC6において谷折りされて(外面側に折り返されて)前後方向中央側に延在し、この延在部PC8が所定の位置PC7に至るまで外面側において、つまり外装体20を構成する外装シートたる上層不織布20Aにホットメルト接着剤G等によって固定される。これにより、所定の位置PC5を前後方向中央側端縁とする二重シート構造の前後方向中央側から最も離れたポケットPCが形成される。
【0065】
また、折り返し部20Cは、上記所定の位置PC7から外面側において上記上層不織布20Aに固定されることなく前後方向中央側へ所定の位置PB5まで延在し、この所定の位置PB5において山折りされて(外面側に折り返されて)ウエスト側に延在し、この延在部が所定の位置PB6において谷折りされて(外面側に折り返されて)前後方向中央側に延在し、この延在部PB8が所定の位置PB7に至るまで外面側において、つまり上層不織布20Aにホットメルト接着剤G等によって固定される。これにより、所定の位置PB5を前後方向中央側端縁とする二重シート構造の前後方向に関して中央に位置するポケットPBが形成される。
【0066】
さらに、折り返し部20Cは,上記所定の位置PB7から外面側において上層不織布20Aに固定されることなく前後方向中央側へ所定の位置PA5まで延在し、この所定の位置PA5において山折りされて(外面側に折り返されて)ウエスト側に延在し、この延在部が所定の位置PA6において谷折りされて(外面側に折り返されて)前後方向中央側に延在し、この延在部PA8が所定の位置PA7に至るまで外面側において、つまり上層不織布20Aにホットメルト接着剤G等によって固定される。これにより、所定の位置PA5を前後方向中央側端縁とする二重シート構造の最も前後方向中央側に位置するポケットPAが形成される。
【0067】
以上のように、本形態によると折り返し部20Cの折り返しを繰り返す(Σ状に折り返す)のみで複数のポケット、本形態では3つのポケットが形成されるため、極めて製造容易であり、ポケットを備えることによる製造コストの増加が抑えられる。また、本形態によると、各所定の位置PA5〜PA7、PB5〜PB7、PC5〜PC7の前後方向に関する位置を変えるのみで、各ポケットPA,PB,PCの大きさ(深さ)や配置位置、ポケット相互間の離間距離を変えることができる。また、各ポケットPA,PB,PCの開口幅は、各ポケットPA,PB,PCの両側方を外面側において延在部PA8,PB8,PC8に対して固定する際に、この固定幅を調節することのみによって、変えることができる。なお、このことから、開口幅とは、ポケットPA,PB,PCの前後方向中央側端縁における固定部間の距離ということができる。
【0068】
一方、図17の(B)は、外装体20の内面に備えられる不織布等からなる背漏れ防止シートや腹漏れ防止シート等の漏れ防止シート20Dの一部が外面側において固定されないことによってポケットPA,PB,PCが形成された形態の一例を示すものである。この形態においても、上記折り返し部20CをΣ状に折り返す場合と同様に、漏れ防止シート20Dを折り返すことによって、複数のポケット、図示例では3つのポケットPA,PB,PCが形成される。近年、前後漏れ防止性能の向上という観点から、外装体20の内面に漏れ防止シート20Dが備えられることがあるが、本形態によると、当該漏れ防止シート20Dをそのまま利用することができ、製造コストの増加を抑えることができる。
【0069】
以上の形態においては、各ポケットPA,PB,PCの前後方向中央側端部、つまり所定の位置PA5,PB5,PC5の二重シートの間に、ポケット弾性部材27が幅方向に沿って伸張状態で固定されている。この形態によると、ポケット弾性部材27の収縮力によって各ポケットPA,PB,PCの前後方向中央側端部を構成するシート20C,20Dが前身頃Fや後身頃Bの内面から表面側(内面側、肌面側)に立ち上がるため、体液の前後方向への漏れがより確実に防止される。
【0070】
この点、このように各ポケットPA,PB,PCが立ち上がると、おむつの装着や補助パッドの積層等に際して、当該ポケットPA,PB,PCが邪魔になることがある。しかしながら、このような不都合は、例えば、前述した各ポケットPA,PB,PCの収容スペースの内面のうち厚み方向の対向面相互を剥離可能に接合する形態を採用することによって、回避することができる。
【0071】
また、内装体10の前方及び後方に位置するポケット、本形態では、ポケットPB及びポケットPCにおいては、ポケットPCの場合を例に図18に示すように、当該ポケットPCを構成するシート20C(20D)の外面側に、吸収補助体PHが備えられていると好適である。このように吸収補助体PHが備えられていると、ポケットPC内に流れた(入り込んだ)体液は、当該吸収補助体PHによって吸収・保持されるため、ポケットPCを構成する下層不織布20Bや漏れ防止シート20Dに吸収力がない、あるいは弱い場合であっても、ポケットPC内の体液が逆戻りするおそれがない。
【0072】
ここで、この場合のポケットPCを構成するシート20C(20D)とは、当該シート全体を意味するものではなく、実際にポケットPCを構成する二重シート部分のみを意味する。したがって、例えば、上層不織布20Aに固定された延在部PC8等は含まない。
【0073】
また、ポケットPCを構成するシート20C(20D)の外面側には、図18の(A)に示すように、上層不織布20Aに固定されたポケットPCを構成しないシート20C(20D)である延在部PC8の内面側のほか、図18の(B)に示すように、当該延在部PC8の外面側も含む。
【0074】
ところで、前身頃F及び後身頃Bの内面には、ポケットPCの場合を例に図19の(A)に示すように、前後方向中央側からポケットPC内へ体液を誘導する、特に幅方向への拡散を防止するエンボス加工や親水加工等の体液誘導加工が施されていると好適である。このような体液誘導加工が施されていると、仮に基本吸収体13や補助吸収体113(図14参照)から前方又は後方に体液が流れた場合においても、当該体液は、基本吸収体13や補助吸収体113の前方又は後方に存在するポケットPCに誘導されるため、特に幅方向への拡散が防止されるため、体液の漏れをより確実に防止することができる。
【0075】
また、特に体液誘導加工としてエンボス加工を採用した場合においては、ポケットPCの場合を例に図19の(B)に示すように、エンボス凹部PCe内を体液が流れ、このエンボス凹部PCeを通して体液がポケットPC内に流れ込むことになる。したがって、ポケット弾性部材27を設けていない場合や、ポケット弾性部材27を設けているがポケットPCの立ち上がりが不十分な場合、あるいはポケットPCが剥離可能に接合されている場合等、ポケットPCの開口が閉じている場合においても、体液の漏れを確実に防止することができる。
【0076】
本形態において、エンボス加工とは、単に「前身頃F及び後身頃Bの内面に凹凸を形成する加工」を意味し、例えば、連続しているか否か、エンボス凹部PCeの断面形状がいかなるものであるか等は、特に限定されない。また、親水加工とは、単に「前身頃F及び後身頃Bの内面に、例えば、非イオン性界面活性剤(例えば、エステル型、エーテル型、エステル・エーテル型等)などの親水剤を付与する加工」を意味し、付与の範囲や形状等は特に限定されない。
【0077】
ただし、エンボス加工や親水加工等の誘導加工は、前後方向に沿って施すのが好ましく、腰回り弾性部材25によって外装体20の内面にプリーツが形成されている場合においては、このプリーツの凹凸に沿って(並行して)施すのがより好ましい。
【0078】
また、おむつの製造にあたって、誘導加工をいつ施すのかは特に限定されないが、誘導加工を施した後に、ポケットを形成する手順によるのが好ましい。
【0079】
本形態においては、ポケット弾性部材27のほかに、図18に示すように、外装体20に、図示例では上層不織布20Aと下層不織布20Bとの間に、外装弾性部材たる腰回り弾性部材25が、フィット性の向上等を目的として備えられている。しかるに、ポケットPCを構成するシート20C(20D)の外面側に吸収補助体PHが配置されている本形態においては、外装体20に固定された腰回り弾性部材25の収縮力とポケットPCを構成するシート20C(20D)に固定されたポケット弾性部材27の収縮力とがつりあって、上記立ち上がり機能が抑制されてしまうおそれがある(なお、上記剥離可能接合を利用して立ち上がりを抑制するのと、意図せずに立ち上がりが抑制されてしまうのとでは技術的意義が異なる。)。そこで、本形態においては、腰回り弾性部材25を、吸収補助体PHと重なる位置において切断等して不連続とすると好適である。このように腰回り弾性部材25を不連続としておけば、外装体20の収縮力が低下するため、収縮力のつりあいが解消され、立ち上がり機能を確実に発揮させることができる。
【0080】
本形態においては、このように腰回り弾性部材25を不連続とするのではなく、ポケット弾性部材27の収縮力を強くすることによって収縮力つりあいの解消を図ることもできる。しかしながら、吸収補助体PHが縮こまってしまうのを防止するという観点からは、上記したように腰回り弾性部材25を吸収補助体PHと重なる位置において不連続とするのが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、上記例のようなパンツ型おむつの他、テープ型おむつ等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0082】
10…内装体、11…液透過性表面シート、12…液不透過性裏面側シート、13…吸収体、14…包装シート、15…ギャザー不織布、16…糸状弾性部材、20…外装体、20C…折り返し部、21,22…脇部接合縁、24…ウエスト部弾性部材、25…腰回り弾性部材、26…背側湾曲弾性部材、27…ポケット弾性部材、28…腹側湾曲弾性部材、29…脚回りカットライン、50A,50B…別体シート、100,200…吸収パッド、111…液透過性表面シート、112…液不透過性裏面側シート、F…前身頃、B…後身頃、PA,PB,PC…ポケット、PA1,PB1…ポケット非接着部、PA2,PB2…ポケット剥離部、M…雄テープ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンツ型おむつ等の使い捨ておむつに関するものである。特に、尿採りパッド等の補助パッドを積層して使用することもできる使い捨ておむつに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、使い捨ておむつ、特にパンツ型おむつは、そのまま単体で装着するのが一般的であったが、現在では、パンツ型おむつに尿採りパッド等の補助パッドを積層して装着することも多い。
しかしながら、パンツ型おむつに補助パッドを積層して装着すると、装着者(おむつを装着している者)の動き等に伴って補助パッドがズレ、このズレを原因として体液の漏れが生じることがある。また、特にパンツ型おむつは、装着感を向上させるために、吸収体を前後方向に長く配置しない場合があり、この場合の吸収体(以下、単に「基本吸収体」ともいう。)は、夜用などとして用いられる補助パッドに備わる吸収体(以下、単に「補助吸収体」ともいう。)よりも短くなる傾向にある。しかるに、基本吸収体よりも補助吸収体の方が長いと、この補助吸収体を伝わって体液が基本吸収体の前方や後方にまで広がる。そして、この広がりは当該おむつが通常は想定していない広がりであり、この広がりを原因として体液の前後漏れが生じるおそれがある。
そこで、まず、前者のズレの問題に関しては、本出願人が特許文献1において提案している「第1係合部を有する裏面シートを備えた吸収パッドと、第2係合部を有する吸収パッド保持体とからなり、前記第1係合部と前記第2係合部とを係合させることによって、前記吸収パッドを前記吸収パッド保持体に取り付けてなる」との技術的思想を適用して解決することが考えられる。
【0003】
また、後者の前後漏れの問題に関しては、特許文献2や特許文献3において提案されている技術的思想を適用して解決することが考えられる。特許文献2は、「外装シート3(1,2)の肌面側の後背部に、吸収体4と立ち上がり帯材5の後部分を覆うように親水性の漏れ防止用シート6を立ち上がり可能に接合することにより、この漏れ防止用シート6と立ち上がり帯材5とで囲まれた部分にポケット12を形成する」とするものである。また、特許文献3は、「腹側部A及び/又は背側部Bにおける着用者の胴回りに位置する胴回り部Eに、立体ガード7が形成されており、該立体ガード7は、複数本の立体ガード弾性部材71,71が配されて、胴回り方向に伸縮可能になされている」とするものである。なお、以上の説明で用いた符号は、該当文献における符号をそのまま用いたものであり、後述する本願発明の符号とは関係がない。
これら特許文献2及び特許文献3に提案された技術的思想は、補助パッドを積層して装着する場合を想定するものではないが、特許文献2は背漏れが防止されるとしており、また、特許文献3はウエスト開口部からの漏れが防止されるとしている。そこで、補助パッドを積層する場合においても前後漏れを防止することができるのではないかと考えるのである。
【0004】
しかしながら、より詳細に検討すると、特許文献1〜3によっては、上記問題を解決することができない。
すなわち、まず、補助パッド(補助吸収体)が長いと、この補助パッドによって特許文献2が提案するポケット12や特許文献3が提案する立体ガード7(以下、これらポケット12及び立体ガード7を合わせて、単に「ポケット」ともいう。)が覆われてしまうため、当該ポケットが機能しなくなり、前後漏れの問題を解決することができなくなる。この点に関しては、当該ポケットをできる限り、ウエスト開口部側に設けることにより、解決することも考えられるが、このような解決によると、補助パッドが長いものではない場合に、補助パッドの前後端部とポケットとが離間し、この離間部において体液が幅方向に広がって(拡散して)しまうため、この広がりを原因として体液の漏れが生じるおそれがある。しかも、この場合に特許文献1が提案する第2の係合部を適用して補助パッドのズレを防止しようとすると、当該離間部において第2の係合部が露出してしまう。そこで、当該離間部には第2の係合部を設けないものとすることも考えられるが、このような対応では、補助パッドが長い場合において、当該補助パッドの前後端部のズレを防止することができなくなり、ズレを原因とする漏れの問題が生じるおそれがある。また、そもそも第2の係合部を備える形態は、補助パッドを積層しない場合に不都合である。
【0005】
以上のように、従来の形態によると、補助パッドが積層されるか否に関わらず、また、積層される補助パッドが長いものであるか否かに関わらず、体液の漏れを確実に防止することができる使い捨ておむつとはならないのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004‐261332号公報
【特許文献2】特開2001‐37809号公報
【特許文献3】特開2001‐252303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする主たる課題は、補助パッドが積層されるか否か、補助パッドが長いものであるか短いものであるか等に関わらず、体液の漏れを確実に防止することができる使い捨ておむつを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決した本発明は次の通りである。
〔請求項1記載の発明〕
前後方向前側の前身頃及び前後方向後側の後身頃を有し、
液透過性表面シート、液不透過性裏面側シート、並びにこれら表面シート及び裏面側シートの間に介在された吸収体を有する内装体と、この内装体の外面に固定され、かつ当該内装体の前方及び後方まで延在する外装体とが、前記前身頃から前記後身頃にかけて備えられ、
前記前身頃及び前記後身頃の内面それぞれに、前後方向中央側に開口するポケットが備えられた使い捨ておむつであって、
前記ポケットは、前記前身頃及び前記後身頃の少なくとも一方において、開口位置が前後方向に離間するように複数備えられ、
この複数のポケットは、それぞれの開口幅が、前後方向中央から離れるに従って順に広くなる構成とされている、
ことを特徴とする使い捨ておむつ。
【0009】
(作用効果)
前身頃及び後身頃の内面それぞれに、前後方向中央側に開口するポケットが備えられていると、この両ポケットに補助パッドの前後端部を差し込むことができ、補助パッドのズレを防止することができる。しかも、この場合、両ポケットが補助パッドを覆った状態になり、両ポケットが補助パッドに覆われた状態にはならないため、ポケットの漏れ防止機能は失われない。
また、ポケットが、前身頃及び後身頃の少なくとも一方において、開口位置が前後方向に離間するように複数備えられていると、この複数のポケットのいずれを選択するかによって、補助パッドの前端部を差し込むポケットと補助パッドの後端部を差し込むポケットとの離間距離が変わる。したがって、補助パッドが長いものであるか短いものであるかに関わらず、上記ズレ防止機能を発揮させることができる。しかも、この場合、補助パッドの前後端部と両ポケットとが離間した状態にならないため、離間部において体液が幅方向に広がる(拡散する)との問題も生じない。
さらに、補助パッドの幅は、通常、その長さが長くなると広くなり、その長さが短くなると狭くなる傾向にあるところ、複数のポケットそれぞれの開口幅が、前後方向中央から離れる(遠くなる)に従って順に広くなる構成とされていると、例えば、前後方向中央から離れた(遠い)ポケットには、通常の長い補助パッド、つまり幅が広い補助パッドを差し込むことができる。しかも、この構成によると、前後方向中央から離れていない(近い)ポケットの開口幅が必要以上に広くならないため、当該ポケットに通常の短い補助パッド、つまり幅が狭い補助パッドを差し込んだ場合においてもズレが防止される。
なお、長い補助パッドのなかにも幅が狭い補助パッドは存在し、この場合は、前後方向中央から離れた開口幅の広いポケットに当該幅が狭い補助パッドを差し込むことになる。しかしながら、前後方向中央から離れた部位においては、この種のおむつの構造上、おむつ内面と装着者との間の間隙が小さく(狭く)なるため、開口幅が広いことによるズレの問題は、相対的に小さなものとなる。
また、補助パッドを積層しない場合においては、前方及び後方へ拡散する体液が、前身頃及び後身頃の内面に備えられたポケット内に収容されるため、前後漏れ防止効果が向上する。
【0010】
〔請求項2記載の発明〕
前記外装体を構成する外装シートの端部が折り返され、この折り返し部の一部が外面側において固定されないことによって、及び/又は、前記外装体の内面に漏れ防止シートが備えられ、この漏れ防止シートの一部が外面側において固定されないことによって、前記ポケットが形成され、
前記内装体の少なくとも前方及び後方に位置するポケットにおいては、当該ポケットを構成するシートの外面側に吸収補助体が備えられている、
請求項1記載の使い捨ておむつ。
【0011】
(作用効果)
外装体を構成する外装シートの端部が折り返され、この折り返し部の一部が外面側において固定されないことによって、あるいは外装体の内面に漏れ防止シートが備えられ、この漏れ防止シートの一部が外面側において固定されないことによって、ポケットが形成されるおむつは、極めて製造容易であるため、ポケットを備えることによる製造コストの増加が抑えられる。
また、内装体の前方及び後方に位置するポケットにおいて、当該ポケットを構成するシートの外面側に吸収補助体が備えられていると、ポケット内に流れた(入り込んだ)体液は、当該吸収補助体によって吸収・保持されることになるため、ポケットを構成する外装シートや漏れ防止シート自体に吸収力がない、あるいは弱い場合であっても、ポケット内の体液が逆戻りするおそれがない。
なお、内装体上に位置するポケットにおいては、当該内装体に備わる吸収体によってポケット内に流れた体液が吸収・保持される。
【0012】
〔請求項3記載の発明〕
前記前身頃及び前記後身頃の内面には、前後方向中央側から前記ポケット内へ体液を誘導する誘導加工が施されている、
請求項2記載の使い捨ておむつ。
【0013】
(作用効果)
前身頃及び後身頃の内面に、前後方向中央側からポケット内へ体液を誘導する、エンボス加工、親水加工等の誘導加工が施されていると、仮に基本吸収体や補助吸収体から前方又は後方に体液が流れた場合においても、当該体液は、基本吸収体や補助吸収体の前方又は後方に位置するポケットに誘導されるため、体液の漏れをより確実に防止することができる。
【0014】
〔請求項4記載の発明〕
前記ポケットを構成するシートの前後方向中央側端部にポケット弾性部材が幅方向に沿って伸張状態で固定され、かつ、前記外装体に外装弾性部材が幅方向に沿って伸張状態で固定されつつも、
前記外装弾性部材は、前記吸収補助体と重なる位置において不連続とされている、
請求項2又は請求項3記載の使い捨ておむつ。
【0015】
(作用効果)
ポケットを構成するシートの前後方向中央側端部にポケット弾性部材が幅方向に沿って伸張状態で固定されていると、このポケット弾性部材の収縮力によってポケットを構成するシートが前身頃や後身頃の内面から持ち上がり(立ち上がり)、漏れ防止効果が向上する。
一方、使い捨ておむつは、通常、フィット性向上等の観点から、外装体に外装弾性部材が幅方向に沿って伸張状態で固定されている。しかるに、ポケットを構成するシートの外面側に吸収補助体が配置されている場合においては、外装体に固定された外装弾性部材の収縮力とポケットを構成するシートに固定されたポケット弾性部材の収縮力とがつりあって、前記立ち上がり機能が抑制されてしまうおそれがある。しかしながら、外装体に固定された外装弾性部材が、吸収補助体と重なる位置において切断等によって不連続とされていると、収縮力のつりあいが解消され、立ち上がり機能が確実に発揮される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、補助パッドが積層されるか否か、補助パッドが長いものであるか短いものであるか等に関わらず、体液の漏れを確実に防止することができる使い捨ておむつとなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】展開状態のパンツ型おむつの平面図である(内面側)。
【図2】図1より弾性部材を省略した平面図である。
【図3】展開状態のパンツ型おむつの平面図である(外面側)。
【図4】図1のC‐C矢視図である。
【図5】図1のA‐A矢視図である。
【図6】図1のB‐B矢視図である。
【図7】パンツ型おむつの装着状態の斜視図である。
【図8】図4のD部分の拡大図及び変形例である。(A)D部分の拡大図、(B)ポケットPBを別体シートで形成する変形例、(C)ポケットPA,PBを別体シートで形成する変形例である。
【図9】図4のE部分の拡大図及び変形例である。(A)E部分の拡大図、(B)ポケットPBを別体シートで形成する変形例、(C)ポケットPA,PBを別体シートで形成する変形例である。
【図10】ポケットの別の形態を示す展開状態のパンツ型おむつの平面図である(内面側)。
【図11】図10より弾性部材を省略した平面図である。
【図12】小型の補助パッドを積層したパンツ型おむつの平面図である(内面側)。
【図13】大型の補助パッドを積層したパンツ型おむつの平面図である(内面側)。
【図14】図12のF‐F矢視図である。
【図15】ポケットの数を増やした形態を示す展開状態のパンツ型おむつの平面図である(内面側)。
【図16】図15より弾性部材を省略した平面図である。
【図17】図15のポケットを外装シートで形成した場合(A)、漏れ防止シートで形成した場合(B)の断面説明図である。
【図18】吸収補助体の配置例である。
【図19】誘導加工の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しつつ詳説する。
図1〜図7は、本実施の形態の使い捨ておむつ、特にパンツ型おむつを示している。このパンツ型おむつ(以下、単に「おむつ」ともいう。)は、前後方向前側の前身頃F及び前後方向後側の後身頃Bを有し、外装体20と、この外装体20の内面に固定され一体化された内装体10とが、前身頃Fから後身頃Bにかけて備えられている。なお、この構成においては、内装体10の外面に、外装体20が固定され一体化されているともいうことができ、この一体化により、内装体10の前方及び後方まで外装体20が延在している。
【0019】
本おむつの製造に際しては、外装体20の内面(上面、表面)に対して内装体10の外面(下面・裏面)がホットメルト接着剤Gなどの接合手段によって固定された後に、内装体10及び外装体20が前身頃F及び後身頃Bの境界である縦方向(前後方向、長手方向)中央で折り畳まれ、その両側部が相互に熱溶着またはホットメルト接着剤などによって接合されることによって、ウエスト開口部及び左右一対のレッグ開口部が形成されたパンツ型おむつとなる。
【0020】
(外装体の構造例)
外装体20は、図4〜図6に示されるように、上層不織布20A及び下層不織布20Bからなる2層構造の不織布シートとされ、上層不織布20Aと下層不織布20Bとの間、及び下層不織布20Bをウエスト開口縁で内面側に折り返してなる折り返し部20Cとこの折り返し部20Cを除く下層不織布20Bとの間に各種外装弾性部材が配設され、伸縮性が付与されている。外装体20の平面形状は、前後方向中央両側部にそれぞれ脚部開口を形成するために形成された凹状の脚回りカットライン29により、全体として擬似砂時計形状をなしている。
【0021】
特に、図示形態の外装体20においては、外装弾性部材として、図4に示される展開形状において、ウエスト開口部回りに配置されたウエスト部弾性部材24,24…と、前身頃F及び後身頃Bに、上下方向に間隔をおいて幅方向に沿って配置された複数の腰回り弾性部材群25,25…とを有するとともに、前身頃F及び後身頃Bのそれぞれにおいて、腰回り弾性部材群25,25…とは別に、前身頃Fと後身頃Bとを接合する一方側接合縁から股下側に延び、股下側を迂回して前身頃Fと後身頃Bとの他方側接合縁に到達するとともに、互いに交差することなく間隔をおいて配置された複数本の湾曲弾性部材群26…、28…を備えている。なお、外装体20には、脚回りカットライン29に沿って実質的に連続する、いわゆる脚回り弾性部材は設けられていない。
【0022】
ウエスト部弾性部材24,24…は、前身頃Fと後身頃Bとが接合された脇部接合縁21、22の範囲のうち、ウエスト開口縁近傍に上下方向に間隔をおいて配設された複数条の糸ゴム状弾性部材であり、身体のウエスト部回りを締め付けるように伸縮力を与えることによりおむつを身体に装着するためのものである。このウエスト部弾性部材24は、図示例では糸ゴムを用いたが、例えばテープ状の弾性部材を用いてもよい。また、図示形態のウエスト部弾性部材24,24…は、ウエスト部における下層不織布20Bの折り返し片20Cとこの折り返し部20Cを除く下層不織布20Bとの間に挟持されているが、上層不織布20Aと下層不織布20Bとの間に挟持しても良い。
【0023】
腰回り弾性部材群25,25…は、脇部接合縁21、22の内、概ね上部から下部までの範囲に亘り、上下方向に間隔をおいて幅方向(水平方向)に沿って配設された糸ゴム状の弾性部材群であり、前身頃F及び後身頃Bの腰回り部分にそれぞれ幅方向の伸縮力を与え、おむつを身体に密着させるためのものである。なお、ウエスト部弾性部材24、24…と腰回り弾性部材群25、25…との境界は必ずしも明確でなくてよい。例えば、前身頃F及び後身頃Bに上下方向に間隔をおいて水平方向に配置された弾性部材のうち、数は特定できなくても、上部側の何本かがウエスト部弾性部材として機能し、残りの弾性部材が腰回り弾性部材として機能していればよい。
【0024】
後身頃Bにおいて、腰回り弾性部材群25,25…とは別に配設された背側湾曲弾性部材群26、26…は、所定の(一方側の脇部接合縁22からほぼ脚回りカットライン29に沿って股下部に至り、股下部を横切った後に反対側の脚回りカットライン29にほぼ沿いながら他方側の脇部接合縁22に到達する)曲線に沿って配置された複数本、図示例では5本の糸ゴム状弾性部材であり、これら背側湾曲弾性部材群26、26…は互いに交差することなく、間隔をおいて配置されている。この背側湾曲弾性部材群26、26…は、2,3本程度の弾性部材を間隔を密にして実質的に一束として配置されるのではなく、所定の伸縮ゾーンを形成するように所定の間隔を空けて、3以上、好ましくは5本以上配置される。
【0025】
外装体20の前身頃Fにおいて、腰回り弾性部材群25,25…とは別に配設された腹側湾曲弾性部材群28,28…も、所定の(一方側の脇部接合縁21から股下側に至り、股下部を横切った後に他方側の脇部接合縁21に到達する)曲線に沿って配置された複数本、図示例では5本の糸ゴム状弾性部材であり、これら腹側湾曲弾性部材群28、28…は互いに交差することなく、間隔をおいて配置されている。この腹側湾曲弾性部材群28、28…も、2,3本程度の弾性部材を間隔を密にして実質的に一束として配置されるのではなく、所定の伸縮ゾーンを形成するように所定の間隔を空けて、3本以上、好ましくは5本以上配置される。
【0026】
また、上記形態例では、図3に示すように、前身頃F及び後身頃Bに配置された腰回り弾性部材群25,25…及び湾曲弾性部材26…、28…は、内装体10を横切る部分を切断し、不連続とすることができるが、内装体10上においても連続させて配置することもできる。弾性部材を内装体10上で不連続とすることにより、吸収体13の縮こまりをより防止することができる。
【0027】
上述した外装体20は、例えば特開平4−28363号公報や、特開平11−332913号公報記載の技術により製造することができる。また、湾曲弾性部材26…、28…を内装体10上で切断し不連続化するには、特開2002−35029号公報、特開2002−178428号公報及び特開2002‐273808号公報に記載される切断方法が好適に採用される。
【0028】
(内装体の構造例)
内装体10は、図5及び図6に示すように、不織布などからなる液透過性表面シート11と、ポリエチレン等からなる液不透過性裏面側シート12との間に、吸収体13を介在させた構造を有しており、表面シート11を透過した排泄液(体液)を吸収保持するものである。
【0029】
吸収体13の表面側(肌当接面側)を覆う液透過性表面シート11としては、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維は、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高でソフトである点で優れている。液透過性表面シート11に多数の透孔を形成した場合には、尿などが速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。液透過性表面シート11は、吸収体13の側縁部を巻き込んで吸収体13の裏面側まで延在している。
【0030】
吸収体13の裏面側(非肌当接面側)を覆う液不透過性裏面側シート12は、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどの液不透過性プラスチックシートが用いられるが、近年ではムレ防止の点から透湿性を有するものが好適に用いられる。この遮水・透湿性シートは、たとえばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂中に無機充填材を溶融混練してシートを形成した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートである。
【0031】
吸収体13としては、公知のもの、例えばパルプ繊維の積繊体、セルロースアセテート等のフィラメントの集合体、あるいは不織布を基本とし、必要に応じて高吸収性ポリマーを混合、固着等してなるものを用いることができ、図示例では平面形状を略砂時計形状として成形されたものが使用され、その幅寸法は股間部への当たりによって着用者にゴワ付き感を与えない寸法幅となっている。この吸収体13は、形状及びポリマー保持等のため、必要に応じてクレープ紙等の、液透過性及び液保持性を有する包装シート14によって包装することができる。吸収体13の形状は、図示形態のように背側及び腹側に対して前後方向中央部(股下部)の幅が狭い砂時計形状(括れ形状)とするほか、長方形状とすることもできる。
【0032】
内装体10の両側部には脚回りにフィットする立体ギャザーBSが形成されているのが好ましい。この立体ギャザーBSはギャザー不織布15により形成される。このギャザー不織布15としては、図5に示されるように、折返しによって二重シートとした不織布が好適に用いられ、液透過性表面シート11によって巻き込まれた吸収体13の側縁部をさらにその上側から巻き込んで吸収体13の裏面側まで延在して接着されている。より具体的には、ギャザー不織布15は、おむつ1の前後方向中央部(股間部)では、立体ギャザーBS形成部分を残し、幅方向中間部から吸収体13の裏面側に亘る範囲がホットメルト接着剤G等によって接着され、また前後方向前後端部では、幅方向中間部から一方側端縁までの区間が吸収体13の裏面側に亘る範囲で接着されるとともに、立体ギャザーBSを形成する部分を吸収体13の上面部にて折り畳むようにしながらホットメルト接着剤G等により接着している。
【0033】
二重シート不織布によって形成されたギャザー不織布15の内部には、起立先端側部分に複数本の糸状弾性部材16、16…が配設されている。糸状弾性部材16、16…は、製品状態において図5に二点鎖線で示すように、弾性伸縮力により吸収体側縁部より突出する不織布部分を起立させて立体ギャザーBSを形成するためのものである。
【0034】
液不透過性裏面側シート12は、二重シート状のギャザー不織布15の内部まで進入し、図6に示されるように、立体ギャザーBSの下端側において防漏壁を構成するようになっている。
【0035】
この液不透過性裏面側シート12としては、排便や尿などの褐色が出ないように不透明のものを用いるのが望ましい。不透明化としては、プラスチック中に、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、ホワイトカーボン、クレイ、タルク、硫酸バリウムなどの顔料や充填材を内添してフィルム化したものが好適に使用される。
【0036】
糸状弾性部材16としては、通常使用されるスチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンブタジエン、シリコーン、ポリエステル等の素材を用いることができる。また、外側から見え難くするため、太さは925dtex以下、テンションは150〜350%、間隔は7.0mm以下として配設するのがよい。なお、糸状弾性部材に代えて、ある程度の幅を有するテープ状弾性部材を用いるようにしてもよい。
【0037】
前述のギャザー不織布15を構成する素材繊維も液透過性表面シート11と同様に、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工方法により得られた不織布を用いることができるが、特にはムレを防止するために坪量を抑えて通気性に優れた不織布を用いるのがよい。さらにギャザー不織布15については、尿などの透過を防止するとともに、カブレを防止しかつ肌への感触性(ドライ感)を高めるために、シリコーン系、パラフィン金属系、アルキルクロミッククロイド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布を用いるのが望ましい。
【0038】
(ポケットの例)
本おむつは、ウエスト開口部からの漏れを防止するため、前身頃F及び後身頃Bの内面それぞれに、前後方向中央側に開口するポケットを有する。そして、このポケットは、前身頃F及び後身頃Bの少なくとも一方において、好ましくは以下で説明するように両方において、開口位置が前後方向に離間するように複数備えられ、この複数のポケットは、それぞれの開口幅が、前後方向中央から離れるに従って順に広くなる構成とされている。
【0039】
以下、このポケットの形態例を、図1,2,8,9を参照しつつ詳説する。
本形態のポケットPA,PBは、開口が収容スペース(内空部)の前後方向中央側端部に位置するポケット状の構造をとり、開口位置が前後方向に離間するように複数(図示例では各2つ)備えられる。
【0040】
これらポケットPA,PBのうち、1つについては外装体20を構成する外装シートたる下層不織布20Bの端部(折り返し部)20Cを折り返して形成し、残りを別体のシートで形成することができる(図8(A)(B)、図9(A)(B))。また、全てのポケットPA,PBについて、別体シート50A,50Bをおむつの内面に付加して形成することもできる(図8(C),図9(C))。なお、前身頃Fや後身頃Bにおいて外装体20内面に固定される背漏れ防止シートや腹漏れ防止シートは、この別体シート50A,50Bの一種である。
【0041】
これらのポケットPA,PBは、ポケットを構成するシート(折り返し部20C、別体のシート50A,50B)の一部が外面側において固定されないことによって、具体的には、収容スペースとなる領域のウエスト側及び幅方向両側が、その内面側に位置するシートの表面に固着(固定)されつつ(図中の固着部SA,SB)、収容スペースとなる領域が固定されないことによって形成することができる。
【0042】
この他、下層不織布20Bの折り返し部20CをΣ状に折り畳み、収容スペースとなる領域のウエスト側及び幅方向両側を、その内面側に位置するシートの表面に固着することにより、折り返し部20CのみでポケットPA,PBを形成することもできる。
【0043】
本形態において、付加される別体のシート50A,50Bの幅方向の長さは、製品幅より短くしても良いが、製品幅と同じ長さとし、外装体20と共に、その両側部が熱溶着またはホットメルト接着剤などによって接合されることが好ましい。
【0044】
図8(A)(背側は図9(A))に示される例では、ウエスト開口部側に位置するポケットPBが折り返し部20Cによって形成されており、別体シート50Aが折り返し部20Cと上層不織布20Aとの間に固着部SAにおいて固定され、股下側(前後方向中央側)に位置するポケットPAを形成している。別の例としては、図8(B)(背側は図9(B))に示すように、股下側に位置するポケットPBを折り返し部20Cによって形成し、折り返し部20Cの表面側に別体シート50Bを固着部SBにおいて固定する形態、図8(C)(背側は図9(C))に示すように、折り返し部20Cではポケットを形成せず、折り返し部20Cの表面側に別体シート50Aを、さらに表面側に重ねて別体シート50Bを固定してポケットPA,PBを形成する形態等が挙げられる。
【0045】
以上のように前身頃F及び後身頃Bの内面それぞれに、前後方向中央側に開口するポケットPA,PBが備えられていると、この両ポケットPA,PBのいずれかに補助パッドの前後端部を差し込むことができ、補助パッドのズレを防止することができる。しかも、この場合、両ポケットPA,PBのいずれかが補助パッドを覆った状態になり、ポケットPA,PBのいずれかが補助パッドに覆われた状態にはならないため、ポケットPA,PBの漏れ防止機能は失われない。また、ポケットPA,PBが、開口位置が前後方向に離間するように複数備えられていると、この複数のポケットPA,PBのいずれを選択するかによって、補助パッドの前端部を差し込むポケットPA又はPBと補助パッドの後端部を差し込むポケットPA又はPBとの離間距離が変わる。したがって、補助パッドが長いものであるか短いものであるかに関わらず、上記ズレ防止機能を発揮させることができる。しかも、この場合、補助パッドの前後端部と両ポケットPA,PBとが離間した状態にならないため、離間部において体液が幅方向に広がる(拡散する)との問題も生じない。さらに、補助パッドの幅は、通常、その長さが長くなると広くなり、その長さが短くなると狭くなる傾向にあるところ、複数のポケットPA,PBそれぞれの開口幅X1,X2(図2参照)が、前後方向中央から離れる(遠くなる)に従って順に広くなる構成とされていると、図示例ではポケットPAよりもポケットPBが広くなる構成とされていると、例えば、前後方向中央から離れた(遠い)ポケット(図示例ではポケットPB)には、通常の長い補助パッド、つまり幅が広い補助パッドを差し込むことができる。また、この構成によると、前後方向中央から離れていない(近い)ポケット、図示例ではポケットPAの開口幅X1が必要以上に広くならないため、当該ポケットPAに通常の短い補助パッド、つまり幅が狭い補助パッドを差し込んだ場合においてもズレが防止される。なお、長い補助パッドのなかにも幅が狭い補助パッドは存在し、この場合は、前後方向中央から離れた開口幅の広いポケットに当該幅が狭い補助パッドを差し込むことになる。しかしながら、前後方向中央から離れた部位においては、この種のおむつの構造上、おむつ内面と装着者との間の間隙が小さくなるため、開口幅が広いことによるズレの問題は、相対的に小さなものとなる。また、補助パッドを積層しない場合においては、前方及び後方へ拡散する体液が、前身頃F及び後身頃Bの内面に備えられたポケットPA,PB内に収容されるため、前後漏れ防止効果が向上する。
【0046】
本形態において、ポケットPA,PBは、平面形状が幅方向に長い長方形状となっているが、これに限定する趣旨ではない。例えば、各ポケットPA,PBを、ウエスト側が円弧状となる形状とすることや、ウエスト側に向かって徐々に広がる形状、ウエスト側に向かって徐々に狭まる形状などとすることができる。ただし、補助パッドを差し込み、もって当該補助パッドのズレを防止するという観点からは、本形態のように方形状とするのが好ましい。
【0047】
別体シート50A,50Bとしては、撥水性と通気性を有する素材を使用することが好ましく、具体的には、ギャザー不織布15と同様に、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維等からなり、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工方法に得られた不織布を用いることができる。また、シリコーン系、パラフィン金属系、アルキルクロミッククロイド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布を用いるのが望ましい。
【0048】
折り返し部20CでポケットPA,PBを形成する場合においては、折り返し部20Cのうち固着部SA,SB以外の自由部分については撥水処理を施すのが好ましい。
【0049】
ポケットPA,PBの一方又は両方は、開口が開放可能なように閉じられていると、補助パッドに対して被さる又は遠すぎるポケットを、邪魔にならないように、また着用者に不快感を与えないように閉じておくことができる。
【0050】
このような構造は、ポケットPA,PBの収容スペースの内面のうち厚み方向の対向面(装着者の身体側となる面及びその反対側の面)相互を剥離可能に接合することにより構成することができる。この剥離可能接合部は、ポケットPA,PBの収容スペースの全体としても良いが、少なくとも一部に設ければ良く、例えば開口の縁部にのみ設けることができる。剥離可能接合部は、周囲の固定部分より弱い接合強度で接合されている部分であり、接着剤を用いない単なる圧着により形成できる他、接着剤を用いて弱く接着することにより形成できる。接着剤を用いる場合、剥離可能接合部の接着剤の量を周囲の固着部分SA,SBより少なくすることにより、剥離可能接合部を形成することができる。この場合、剥離可能接合部と周囲の固着部分とにおいて、接着剤の塗布パターンは同じで塗布量を代える他、両者の塗布パターンを異ならしめ、例えば剥離可能接合部の塗布パターンをスパイラル塗布等の間欠塗布とし、周囲の固着部分SA,SBをベタ塗りとするといった手法を採用することができる。また、剥離可能接合部と対応する部分において外装体20に固定する弾性部材25の本数を多くして、つまり弾性部材25の間隔を小さくすることでこまかいシャーリングを生じさせ、その皺により剥離可能接合部と接合対象当接部材との接合面積を減じる、といった手法を採用することもできる。
【0051】
剥離可能接合部は、ポケットPA,PBの収容スペースの内面のうち厚み方向の対向面(装着者の身体側となる面及びその反対側の面)のいずれか一方の面にメカニカルファスナーの雄テープMを接着剤等で固定し、この雄テープMを他方の面に係止することにより剥離可能に接合する形態としてもよい(図14(B))。この場合、ポケットPA,PBを閉じておくことによる効果はもちろん、装着する補助パッドのウエスト側端部(前後端部)をポケット内面の雄テープMで固定し、補助パッドのズレを防止できるという効果も発揮され、漏れ防止効果をより一層のものとすることができる。
【0052】
ポケットPA,PBのおむつ前後方向の長さ(ポケットの深さ)は、5〜100mmとすることが好ましく、特に10〜50mmとすることが好ましい。最もウエスト開口部側(前後方向中央から離れた側)に位置するポケットPBの幅方向の長さX2(図2参照)は、300〜350mmとすることが好ましく、特に300〜330mmであることがより好ましい。また、前後方向中央側に位置するポケットPAの幅方向の長さX1は、200〜300mmとすることが好ましく、230〜290mmであることがより好ましい。ウエスト開口部からポケットPA,PBの開口縁までの距離は、それぞれ100〜230mm、60〜200mmとすることが好ましく、135〜205mm、85〜170mmとすることがより好ましい。
【0053】
最も前後方向中央側に位置するポケットPAは、その収容スペースの前後方向中央側端部が内装体10の吸収体13におけるウエスト側端部(前後端部)の幅方向全体を覆うように設けられているのが好ましい。
【0054】
複数のポケットPA,PBの前後方向間隔は適宜定めることができるが、ポケットPA,PBを前身頃F及び後身頃Bそれぞれに2つ設ける図示例では、ポケットPA,PBを構成するシート(折り返し部20C、別体シート50A,50B)の前後方向中央側端縁間の離間距離が、10〜150mm、特に15〜115mmであることが望ましい。
【0055】
前後方向中央から離れた側に位置するポケットPBの前後方向中央側端縁間の距離PD2(図1,2参照)は、540〜600mmであるのが好ましく、550〜580mmであるのがより好ましい。他方、前後方向中央側に位置するポケットPAの前後方向中央側端縁間の距離PD1(図1,2参照)は、420〜500mmであるのが好ましく、480〜495mmであるのがより好ましい。
【0056】
図10及び図11に、ポケットの別の形態を示す。前後方向中央側に位置するポケットPAは、初期収容スペースとなる部分(幅方向中央部における前後方向中央側端縁からウエスト側の所定位置まで)が非接着部(剥離可能に接合しても良い)PA1とされ、この非接着部PA1の両側部及びウエスト側部の三方をそれぞれ取り囲むスペース拡大部分PA2が剥離可能に接合されている。また、図示例では、前後方向中央側から離れた側(ウエスト側)に位置するポケットPBも初期収容スペースとなる非接着部(剥離可能に接合しても良い)PB1と、この非接着部PB1を取り囲むスペース拡大部分PB2とを有している。これらの初期収容スペースPA1,PB1及びスペース拡大部分PA2,PB2を剥離可能に接合する手法としては、前述の剥離可能接合部と同様の手法を採用することができる。
【0057】
このようなスペース拡大部分PA2,PB2を有することにより、併用する補助パッドの寸法が、前後方向中央側に位置するポケットの初期収容スペースPA1に挿入するには大きすぎるが当該ポケットPAよりもウエスト側に位置する次のポケットPBの収容スペースPB1に挿入するには小さい場合や、ウエスト側に位置するポケットPBの初期収容スペースPB1に対して若干寸法が大きい場合等、必要に応じて、所望のポケットPA,PBのスペース拡大部分PA2,PB2の剥離によりポケットPA,PBの収納部分を拡大し、補助パッドの寸法に適合させることが可能となる。複数あるポケットPA,PBの全てをこのようなスペース拡大部分PA2,PB2を有する構造としてもよく、また最もウエスト側に位置するポケットPBのみ、最も前後方向中央側に位置するポケットPAのみ等、一部のポケットPA,PBのみにスペース拡大部分PA2,PB2を設けても良い。さらに、前身頃F及び後身頃Bのどちらか一方に配されたポケットPA,PBにのみスペース拡大部分PA2,PB2を設けることもできる。
【0058】
(補助パッド装着例)
補助パッドを積層した使い捨ておむつの例を図12,13に示す。
図12に例示する補助パッド100は小型タイプであり(例えば、長さ450〜520mm、幅150〜280mm)、主に液透過性表面シート111、液不透過性裏面側シート112及び吸収体113より構成される。補助パッド100は、前身頃F及び後身頃Bの前後方向中央側に位置するポケットPAにその前後両端部が挟み込まれる(挿入される)ようにして配置される。図14に、補助パッド100の前端部(前身頃側端部)を挟み込んだポケットPAの断面を示す。
【0059】
補助パッド100の液透過性表面シート111は、不織布が使用されるのが一般的であるため、図14(B)のようにポケットPAの内部に面ファスナー等の雄テープMが配されている場合は、雄テープMを補助パッド100の液透過性シート111に係合させ、補助パッド100のズレを防止することができる。
【0060】
図13に示すような大型の補助パッド200(例えば、長さ520〜650mm、幅280〜350mm)を使用する場合は、ポケットPAの上を跨ぐようにして、前身頃F及び後身頃Bのウエスト側のポケットPBに、補助パッド200の前後両端部が挟み込まれるように配置されるのが好ましい。
【0061】
(ポケットの数を変えた例)
図15及び図16に、ポケットの数を増やした形態、具体的には、前後方向中央側からウエスト側に向けて順にポケットPA、ポケットPB、ポケットPCが備えられた形態を示した。なお、本形態例では、ポケットが前身頃F及び後身頃Bのそれぞれに3つずつ備えられている形態を示しているが、4つ、5つ又はそれ以上の複数とすることもできる。
【0062】
本形態においても、ポケットPA,PB,PCの形成方法は特に限定されず、例えば、前述した下層不織布20Bの折り返し部20Cや別体シート50A,50Bを利用して形成すること、これらのシート20C,50A,50BをΣ状に折り畳んで形成すること等ができる。以下では、このΣ状に折り畳む形態の例を、図17を参照しながら説明する。
【0063】
図17の(A)は、外装体20を構成する外装シートたる下層不織布20Bの折り返し部20Cの一部が外面側において固定されないことによってポケットPA,PB,PCが形成された形態の一例を示すものである。
【0064】
この形態においては、ウエスト側端縁(折り返し縁)から前後方向中央側に延在する折り返し部20Cが、所定の位置PC5において山折りされて(外面側に折り返されて)ウエスト側に延在し、この延在部が所定の位置PC6において谷折りされて(外面側に折り返されて)前後方向中央側に延在し、この延在部PC8が所定の位置PC7に至るまで外面側において、つまり外装体20を構成する外装シートたる上層不織布20Aにホットメルト接着剤G等によって固定される。これにより、所定の位置PC5を前後方向中央側端縁とする二重シート構造の前後方向中央側から最も離れたポケットPCが形成される。
【0065】
また、折り返し部20Cは、上記所定の位置PC7から外面側において上記上層不織布20Aに固定されることなく前後方向中央側へ所定の位置PB5まで延在し、この所定の位置PB5において山折りされて(外面側に折り返されて)ウエスト側に延在し、この延在部が所定の位置PB6において谷折りされて(外面側に折り返されて)前後方向中央側に延在し、この延在部PB8が所定の位置PB7に至るまで外面側において、つまり上層不織布20Aにホットメルト接着剤G等によって固定される。これにより、所定の位置PB5を前後方向中央側端縁とする二重シート構造の前後方向に関して中央に位置するポケットPBが形成される。
【0066】
さらに、折り返し部20Cは,上記所定の位置PB7から外面側において上層不織布20Aに固定されることなく前後方向中央側へ所定の位置PA5まで延在し、この所定の位置PA5において山折りされて(外面側に折り返されて)ウエスト側に延在し、この延在部が所定の位置PA6において谷折りされて(外面側に折り返されて)前後方向中央側に延在し、この延在部PA8が所定の位置PA7に至るまで外面側において、つまり上層不織布20Aにホットメルト接着剤G等によって固定される。これにより、所定の位置PA5を前後方向中央側端縁とする二重シート構造の最も前後方向中央側に位置するポケットPAが形成される。
【0067】
以上のように、本形態によると折り返し部20Cの折り返しを繰り返す(Σ状に折り返す)のみで複数のポケット、本形態では3つのポケットが形成されるため、極めて製造容易であり、ポケットを備えることによる製造コストの増加が抑えられる。また、本形態によると、各所定の位置PA5〜PA7、PB5〜PB7、PC5〜PC7の前後方向に関する位置を変えるのみで、各ポケットPA,PB,PCの大きさ(深さ)や配置位置、ポケット相互間の離間距離を変えることができる。また、各ポケットPA,PB,PCの開口幅は、各ポケットPA,PB,PCの両側方を外面側において延在部PA8,PB8,PC8に対して固定する際に、この固定幅を調節することのみによって、変えることができる。なお、このことから、開口幅とは、ポケットPA,PB,PCの前後方向中央側端縁における固定部間の距離ということができる。
【0068】
一方、図17の(B)は、外装体20の内面に備えられる不織布等からなる背漏れ防止シートや腹漏れ防止シート等の漏れ防止シート20Dの一部が外面側において固定されないことによってポケットPA,PB,PCが形成された形態の一例を示すものである。この形態においても、上記折り返し部20CをΣ状に折り返す場合と同様に、漏れ防止シート20Dを折り返すことによって、複数のポケット、図示例では3つのポケットPA,PB,PCが形成される。近年、前後漏れ防止性能の向上という観点から、外装体20の内面に漏れ防止シート20Dが備えられることがあるが、本形態によると、当該漏れ防止シート20Dをそのまま利用することができ、製造コストの増加を抑えることができる。
【0069】
以上の形態においては、各ポケットPA,PB,PCの前後方向中央側端部、つまり所定の位置PA5,PB5,PC5の二重シートの間に、ポケット弾性部材27が幅方向に沿って伸張状態で固定されている。この形態によると、ポケット弾性部材27の収縮力によって各ポケットPA,PB,PCの前後方向中央側端部を構成するシート20C,20Dが前身頃Fや後身頃Bの内面から表面側(内面側、肌面側)に立ち上がるため、体液の前後方向への漏れがより確実に防止される。
【0070】
この点、このように各ポケットPA,PB,PCが立ち上がると、おむつの装着や補助パッドの積層等に際して、当該ポケットPA,PB,PCが邪魔になることがある。しかしながら、このような不都合は、例えば、前述した各ポケットPA,PB,PCの収容スペースの内面のうち厚み方向の対向面相互を剥離可能に接合する形態を採用することによって、回避することができる。
【0071】
また、内装体10の前方及び後方に位置するポケット、本形態では、ポケットPB及びポケットPCにおいては、ポケットPCの場合を例に図18に示すように、当該ポケットPCを構成するシート20C(20D)の外面側に、吸収補助体PHが備えられていると好適である。このように吸収補助体PHが備えられていると、ポケットPC内に流れた(入り込んだ)体液は、当該吸収補助体PHによって吸収・保持されるため、ポケットPCを構成する下層不織布20Bや漏れ防止シート20Dに吸収力がない、あるいは弱い場合であっても、ポケットPC内の体液が逆戻りするおそれがない。
【0072】
ここで、この場合のポケットPCを構成するシート20C(20D)とは、当該シート全体を意味するものではなく、実際にポケットPCを構成する二重シート部分のみを意味する。したがって、例えば、上層不織布20Aに固定された延在部PC8等は含まない。
【0073】
また、ポケットPCを構成するシート20C(20D)の外面側には、図18の(A)に示すように、上層不織布20Aに固定されたポケットPCを構成しないシート20C(20D)である延在部PC8の内面側のほか、図18の(B)に示すように、当該延在部PC8の外面側も含む。
【0074】
ところで、前身頃F及び後身頃Bの内面には、ポケットPCの場合を例に図19の(A)に示すように、前後方向中央側からポケットPC内へ体液を誘導する、特に幅方向への拡散を防止するエンボス加工や親水加工等の体液誘導加工が施されていると好適である。このような体液誘導加工が施されていると、仮に基本吸収体13や補助吸収体113(図14参照)から前方又は後方に体液が流れた場合においても、当該体液は、基本吸収体13や補助吸収体113の前方又は後方に存在するポケットPCに誘導されるため、特に幅方向への拡散が防止されるため、体液の漏れをより確実に防止することができる。
【0075】
また、特に体液誘導加工としてエンボス加工を採用した場合においては、ポケットPCの場合を例に図19の(B)に示すように、エンボス凹部PCe内を体液が流れ、このエンボス凹部PCeを通して体液がポケットPC内に流れ込むことになる。したがって、ポケット弾性部材27を設けていない場合や、ポケット弾性部材27を設けているがポケットPCの立ち上がりが不十分な場合、あるいはポケットPCが剥離可能に接合されている場合等、ポケットPCの開口が閉じている場合においても、体液の漏れを確実に防止することができる。
【0076】
本形態において、エンボス加工とは、単に「前身頃F及び後身頃Bの内面に凹凸を形成する加工」を意味し、例えば、連続しているか否か、エンボス凹部PCeの断面形状がいかなるものであるか等は、特に限定されない。また、親水加工とは、単に「前身頃F及び後身頃Bの内面に、例えば、非イオン性界面活性剤(例えば、エステル型、エーテル型、エステル・エーテル型等)などの親水剤を付与する加工」を意味し、付与の範囲や形状等は特に限定されない。
【0077】
ただし、エンボス加工や親水加工等の誘導加工は、前後方向に沿って施すのが好ましく、腰回り弾性部材25によって外装体20の内面にプリーツが形成されている場合においては、このプリーツの凹凸に沿って(並行して)施すのがより好ましい。
【0078】
また、おむつの製造にあたって、誘導加工をいつ施すのかは特に限定されないが、誘導加工を施した後に、ポケットを形成する手順によるのが好ましい。
【0079】
本形態においては、ポケット弾性部材27のほかに、図18に示すように、外装体20に、図示例では上層不織布20Aと下層不織布20Bとの間に、外装弾性部材たる腰回り弾性部材25が、フィット性の向上等を目的として備えられている。しかるに、ポケットPCを構成するシート20C(20D)の外面側に吸収補助体PHが配置されている本形態においては、外装体20に固定された腰回り弾性部材25の収縮力とポケットPCを構成するシート20C(20D)に固定されたポケット弾性部材27の収縮力とがつりあって、上記立ち上がり機能が抑制されてしまうおそれがある(なお、上記剥離可能接合を利用して立ち上がりを抑制するのと、意図せずに立ち上がりが抑制されてしまうのとでは技術的意義が異なる。)。そこで、本形態においては、腰回り弾性部材25を、吸収補助体PHと重なる位置において切断等して不連続とすると好適である。このように腰回り弾性部材25を不連続としておけば、外装体20の収縮力が低下するため、収縮力のつりあいが解消され、立ち上がり機能を確実に発揮させることができる。
【0080】
本形態においては、このように腰回り弾性部材25を不連続とするのではなく、ポケット弾性部材27の収縮力を強くすることによって収縮力つりあいの解消を図ることもできる。しかしながら、吸収補助体PHが縮こまってしまうのを防止するという観点からは、上記したように腰回り弾性部材25を吸収補助体PHと重なる位置において不連続とするのが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、上記例のようなパンツ型おむつの他、テープ型おむつ等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0082】
10…内装体、11…液透過性表面シート、12…液不透過性裏面側シート、13…吸収体、14…包装シート、15…ギャザー不織布、16…糸状弾性部材、20…外装体、20C…折り返し部、21,22…脇部接合縁、24…ウエスト部弾性部材、25…腰回り弾性部材、26…背側湾曲弾性部材、27…ポケット弾性部材、28…腹側湾曲弾性部材、29…脚回りカットライン、50A,50B…別体シート、100,200…吸収パッド、111…液透過性表面シート、112…液不透過性裏面側シート、F…前身頃、B…後身頃、PA,PB,PC…ポケット、PA1,PB1…ポケット非接着部、PA2,PB2…ポケット剥離部、M…雄テープ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向前側の前身頃及び前後方向後側の後身頃を有し、
液透過性表面シート、液不透過性裏面側シート、並びにこれら表面シート及び裏面側シートの間に介在された吸収体を有する内装体と、この内装体の外面に固定され、かつ当該内装体の前方及び後方まで延在する外装体とが、前記前身頃から前記後身頃にかけて備えられ、
前記前身頃及び前記後身頃の内面それぞれに、前後方向中央側に開口するポケットが備えられた使い捨ておむつであって、
前記ポケットは、前記前身頃及び前記後身頃の少なくとも一方において、開口位置が前後方向に離間するように複数備えられ、
この複数のポケットは、それぞれの開口幅が、前後方向中央から離れるに従って順に広くなる構成とされている、
ことを特徴とする使い捨ておむつ。
【請求項2】
前記外装体を構成する外装シートの端部が折り返され、この折り返し部の一部が外面側において固定されないことによって、及び/又は、前記外装体の内面に漏れ防止シートが備えられ、この漏れ防止シートの一部が外面側において固定されないことによって、前記ポケットが形成され、
前記内装体の少なくとも前方及び後方に位置するポケットにおいては、当該ポケットを構成するシートの外面側に吸収補助体が備えられている、
請求項1記載の使い捨ておむつ。
【請求項3】
前記前身頃及び前記後身頃の内面には、前後方向中央側から前記ポケット内へ体液を誘導する誘導加工が施されている、
請求項2記載の使い捨ておむつ。
【請求項4】
前記ポケットを構成するシートの前後方向中央側端部にポケット弾性部材が幅方向に沿って伸張状態で固定され、かつ、前記外装体に外装弾性部材が幅方向に沿って伸張状態で固定されつつも、
前記外装弾性部材は、前記吸収補助体と重なる位置において不連続とされている、
請求項2又は請求項3記載の使い捨ておむつ。
【請求項1】
前後方向前側の前身頃及び前後方向後側の後身頃を有し、
液透過性表面シート、液不透過性裏面側シート、並びにこれら表面シート及び裏面側シートの間に介在された吸収体を有する内装体と、この内装体の外面に固定され、かつ当該内装体の前方及び後方まで延在する外装体とが、前記前身頃から前記後身頃にかけて備えられ、
前記前身頃及び前記後身頃の内面それぞれに、前後方向中央側に開口するポケットが備えられた使い捨ておむつであって、
前記ポケットは、前記前身頃及び前記後身頃の少なくとも一方において、開口位置が前後方向に離間するように複数備えられ、
この複数のポケットは、それぞれの開口幅が、前後方向中央から離れるに従って順に広くなる構成とされている、
ことを特徴とする使い捨ておむつ。
【請求項2】
前記外装体を構成する外装シートの端部が折り返され、この折り返し部の一部が外面側において固定されないことによって、及び/又は、前記外装体の内面に漏れ防止シートが備えられ、この漏れ防止シートの一部が外面側において固定されないことによって、前記ポケットが形成され、
前記内装体の少なくとも前方及び後方に位置するポケットにおいては、当該ポケットを構成するシートの外面側に吸収補助体が備えられている、
請求項1記載の使い捨ておむつ。
【請求項3】
前記前身頃及び前記後身頃の内面には、前後方向中央側から前記ポケット内へ体液を誘導する誘導加工が施されている、
請求項2記載の使い捨ておむつ。
【請求項4】
前記ポケットを構成するシートの前後方向中央側端部にポケット弾性部材が幅方向に沿って伸張状態で固定され、かつ、前記外装体に外装弾性部材が幅方向に沿って伸張状態で固定されつつも、
前記外装弾性部材は、前記吸収補助体と重なる位置において不連続とされている、
請求項2又は請求項3記載の使い捨ておむつ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2011−206218(P2011−206218A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76321(P2010−76321)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】
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