説明

使い捨ておむつ

【課題】着用容易であり、汎用性に欠けることなくウエスト周りのフィット性を向上させることができる使い捨ておむつを提供する。
【解決手段】前身頃2、股下部4、後身頃6の各部からなり、吸収体と、少なくとも一部が液透過性材料からなり、吸収体の表面を被覆するように配置されたトップシート18と、液不透過性材料からなり、吸収体の裏面を被覆するように配置されたバックシート20と、を備え、股下部4は、少なくとも複数枚のシート材及びシート材の幅方向中央に配置された吸収体22で構成されており、シート材の両側縁から幅方向中央側に向かって切込50が形成され、シート材が前後方向Xに分割されている使い捨ておむつ1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は使い捨ておむつに関する。更に詳しくは、股下部の両側縁から切込を形成した使い捨ておむつに関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつを乳幼児に使用する場合、食事によりお腹が膨れることで、ズレ落ちたり、ウエスト周りに隙間が生じて尿漏れが起きたりする場合がある。また、乳幼児の動きによっても、ズレ落ちたり、ウエスト周りに隙間が生じて尿漏れが起きたりする場合がある。
【0003】
使い捨ておむつを高齢者等に使用する場合、乳幼児ほど食事によりお腹が膨れることはない。しかしながら、歩いたりする場合に、脚周りの動きによりズレ落ちたり、ウエスト周りに隙間が生じて尿漏れが起きたりする場合がある。
【0004】
近年、このような問題に鑑み、ウエスト周りのフィット性を向上させることを目的として、様々な使い捨ておむつが開発されている(例えば、特許文献1,2参照)。特許文献1に記載の使い捨ておむつは、サイドフラップに複数本の弾性体を備えることで、ウエスト幅方向にサイドフラップが伸びる構造を有している。また、特許文献2に記載の使い捨ておむつは、パネル止着部を設けた伸縮性パネル部を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−148818号公報
【特許文献2】特開2007−175298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献で開示された使い捨ておむつは、ウエスト周りを伸縮可能な構成として、フィット性の向上を図っている。しかしながら、伸縮可能な構成部材を選択する必要があったり、従前とは異なる工程を行ったりする必要があり、汎用性に欠けるという問題がある。
【0007】
また、従来のテープ型使い捨ておむつの場合、脚周り伸縮材による脚周りのフィット性を考慮して前身頃を引っ張るように持ち上げて着用させる。しかしながら、前身頃を引っ張ることでおむつの着用位置がずれる場合がある。そのため、従来の使い捨ておむつには、より着用し易くするべく改善の余地がある。
【0008】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものである。本発明の課題とするところは、着用容易であり、汎用性に欠けることなくウエスト周りのフィット性を向上させることができる使い捨ておむつを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、股下部の両側縁から切込を形成し、シート材を前後方向に分割することによって、上記課題を解決することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明によれば、以下に示す使い捨ておむつが提供される。
【0011】
[1]前身頃、股下部、後身頃の各部からなり、吸収体と、少なくとも一部が液透過性材料からなり、前記吸収体の表面を被覆するように配置されたトップシートと、液不透過性材料からなり、前記吸収体の裏面を被覆するように配置されたバックシートと、を備え、前記股下部は、少なくとも複数枚のシート材及び前記シート材の幅方向中央に配置された前記吸収体で構成されており、前記シート材の両側縁から幅方向中央側に向かって切込が形成され、前記シート材が前後方向に分割されている使い捨ておむつ。
【0012】
[2]複数枚の前記シート材の層間に、少なくとも左右一対の脚周り伸縮材が伸張状態で前後方向に連続的に固定されており、前記切込によって、前記脚周り伸縮材が前後方向に分割されている前記[1]に記載の使い捨ておむつ。
【0013】
[3]前記切込によって、前記シート材が前後方向の中心線で分割されている前記[1]又は[2]に記載の使い捨ておむつ。
【0014】
[4]左右複数対の脚周り伸縮材が伸張状態で前後方向に連続的に固定され、前記切込が前後方向に複数箇所形成されており、少なくとも1箇所の前記切込は、前記複数対の脚周り伸縮材の全てを前後方向に分割するよう形成されており、残りの前記切込は、前記複数対の脚周り伸縮材の一部を前後方向に分割し、前記複数対の脚周り伸縮材の残部を前後方向に分割しないように形成されている前記[2]又は[3]に記載の使い捨ておむつ。
【0015】
[5]最外層を構成する前記シート材に、前記シート材の前記切込を覆うように伸縮シートが貼り合わされている前記[1]〜[4]のいずれか1つに記載の使い捨ておむつ。
【0016】
[6]前記吸収体と、前記トップシートと、前記バックシートと、前記後身頃の左右の各側縁から延出するように配置された、前記前身頃と前記後身頃とを固定するための止着テープと、撥水性シートからなり、前記トップシートの両側縁に継ぎ合わされているサイドシートと、を備えたテープ型使い捨ておむつであって、前記シート材は、前記バックシート及び前記サイドシートからなり、前記切込は、前記バックシート及び前記サイドシートに形成され、前記バックシート及び前記サイドシートが前後方向に分割されている前記[1]〜[5]のいずれか1つに記載の使い捨ておむつ。
【発明の効果】
【0017】
本発明の使い捨ておむつは、着用容易であり、汎用性に欠けることなくウエスト周りのフィット性を向上させることができるという効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1A】本発明の使い捨ておむつの一実施形態を示す概略平面図であり、使い捨ておむつ展開し、トップシート側から見た状態を模式的に示す概略平面図である。
【図1B】図1Aに示す使い捨ておむつのA−A’切断端面を模式的に示す概略端面図である。
【図2】本発明の使い捨ておむつの他の実施形態を示す概略平面図であり、使い捨ておむつ展開し、トップシート側から見た状態を模式的に示す概略平面図である。
【図3】本発明の使い捨ておむつを着用している状態を模式的に示す図であり、乳幼児が空腹時にテープ型使い捨ておむつを着用している状態を模式的に示す図である。
【図4】本発明の使い捨ておむつを着用している状態を模式的に示す図であり、乳幼児が満腹時にテープ型使い捨ておむつを着用している状態を模式的に示す図である。
【図5】本発明の使い捨ておむつを展開し、トップシート方向から見た状態を一部拡大して模式的に示す概略平面図である。
【図6】本発明の使い捨ておむつの幅方向側面の一部を模式的に示す側面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の使い捨ておむつを実施するための形態について、テープ型使い捨ておむつの例により具体的に説明する。但し、本発明はその発明特定事項を備える使い捨ておむつを広く包含するものであり、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0020】
[1]定義等:
「使い捨ておむつ」とは、前身頃、股下部及び後身頃の各部からなり、吸収体と、少なくとも一部が液透過性材料からなり、吸収体の表面を被覆するように配置されたトップシートと、液不透過性材料からなり、吸収体の裏面を被覆するように配置されたバックシートと、を備え、着用者の腰周りを被包するように装着される使い捨ておむつを意味する。
【0021】
本明細書においては、「前身頃」、「股下部」及び「後身頃」を以下のように定義する。例えば図1Aに示すように、使い捨ておむつ1装着時に脚周り開口部を形成するために前後方向の中央に最狭部を有するくびれ形状に形成されている。このくびれの前身頃2側の起点同士を結ぶ第1境界線と、くびれの後身頃6側の起点同士を結ぶ第2境界線との間の部分を「股下部(図中符号4)」、第1境界線からウエスト端縁に至るまでの部分を「前身頃(図中符号2)」、第2境界線からウエスト端縁に至るまでの部分を「後身頃(図中符号6)」と称することにする。
【0022】
「テープ型使い捨ておむつ」とは、前記使い捨ておむつのうち、図1A〜図1Bに示すように、前身頃2と後身頃6とを止め付ける止着テープ11を備えたものを意味する。
【0023】
「使い捨ておむつの前後方向」とは、例えば図1Aや図2に示すように使い捨ておむつ1を展開し、トップシート方向から見た状態を模式的に示す概略平面図において、前身頃2から股下部4を経て後身頃6に向う方向Xを意味する。
【0024】
「前後方向の中心線」とは、例えば図1Aや図2に示すように使い捨ておむつ1を展開し、トップシート方向から見た状態を模式的に示す概略平面図において、前記第1境界線と前記第2境界線との中間に位置する両側縁同士を結ぶ線を意味する。この中心線は、使い捨ておむつを着用時には、ほぼ股下中央に位置する。
【0025】
[2]本発明の使い捨ておむつの構成:
本発明は、例えば図1A〜図1Bに示すような、1)前身頃2、股下部4、後身頃6の各部からなり、吸収体22と、少なくとも一部が液透過性材料からなり、吸収体22の表面を被覆するように配置されたトップシート18と、液不透過性材料からなり、吸収体22の裏面を被覆するように配置されたバックシート20と、を備えること、2)股下部4は、少なくとも複数枚のシート材及びシート材の幅方向中央に配置された吸収体22で構成されていること、3)シート材の両側縁から幅方向中央側に向かって切込50が形成され、シート材が前後方向Xに分割されていること、を発明特定事項とする使い捨ておむつ1である。
【0026】
本発明の使い捨ておむつは、シート材の両側縁から幅方向中央側に向かって切込が形成され、シート材が前後方向に分割されている。このように切込を形成することで、ウエスト周りが脚周り伸縮材40の収縮力により、股下方向に引っ張られる影響を受け難くし、シート材の前後方向に対してゆとりが生じる。そのため、着用時において、ウエスト周り伸縮材の効果をより発揮させることができ、ウエスト周りのフィット性を向上させることができる。例えば、本発明の使い捨ておむつを乳幼児に使用した場合、図3と図4で対比して示すように、食事後にお腹が膨れた場合、前後方向に切込50が開くことになる。そのため、切込を形成しない場合と比較して、股下方向に働く脚周り伸縮材の収縮力が少なく、おむつがズレ落ちることが抑制されており、従来の使い捨ておむつよりもウエスト周りのフィット性が向上している。
【0027】
また、本発明の使い捨ておむつを高齢者に使用した場合、図示はしないが、歩いたりする等の動作に追従して前後方向に切込が開閉することになる。そのため、脚周り伸縮材の収縮力により、ウエスト周りが股下方向に引っ張られておむつがズレ落ちることが抑制されており、従来の使い捨ておむつよりもウエスト周りのフィット性が向上している。
【0028】
更に、本発明の使い捨ておむつがテープ型の使い捨ておむつの場合、着用時に前身頃を引っ張るように持ち上げる際、切込が前後方向に開くので、おむつの着用位置がずれることを防止することができる。
【0029】
切込は製品の製造後に形成することができる。また、予め切込が形成されたシート材を用いることもできる。そのため、本発明の使い捨ておむつは、伸縮可能な部材を用いたり、特段複雑な工程を行ったりする必要もないので、汎用性に優れている。
【0030】
図5は本発明の使い捨ておむつを展開し、トップシート方向から見た状態を一部拡大して模式的に示す概略平面図であり、使い捨ておむつの一例としてテープ型使い捨ておむつの場合を示している。切込50は、図5の(a)図に示すように、シート材の前後方向Xに対して直交するように形成することが好ましい。但し、図5の(b)図に示すように、シート材の前後方向Xに対して45°〜80°程度の角度をつけて形成しても良い。また、図5の(c)図に示すように、V字状となるように形成しても良い。
【0031】
本発明の使い捨ておむつは、少なくとも左右一対の脚周り伸縮材が伸張状態で前後方向に連続的に固定されており、切込によって、シート材に加えて脚周り伸縮材も前後方向に分割されるように形成することが好ましい。脚周り伸縮材は着用者の脚周りのフィット性を向上させるものであり、脚周り伸縮材に切込を形成する場合、脚周りのフィット性が若干低下するおそれがある。しかしながら、シート材の前後方向に脚周り伸縮材の伸縮力が分れ、着用時に使い捨ておむつの上部だけでなく、下部においても伸縮力が働く。このように伸縮力が分散されることで、切込が開く場合だけでなく、閉じる場合にも脚周り伸縮材の伸縮力が働くことになる。そのため、ウエスト周りフィット性を更に向上させることができる。
【0032】
また、切込は、シート材が前後方向の中心線で分割されるように形成することが好ましい。このように切込を形成することで、前身頃及び後身頃の両方において、おむつのウエスト周りが脚周り伸縮材40の収縮力により、股下方向に引っ張られる影響をより少なくし、シート材の前後方向に対して更にゆとりが生じる。そのため、着用時において、ウエスト周り伸縮材の効果を更に発揮させることができ、ウエスト周りのフィット性を特に向上させることができる。
【0033】
使い捨ておむつの幅方向について、図1Aに示すように切込50は側縁から立体ギャザー26の起立端まで形成することが好ましい。中でも、切込が広がることを考慮して、側縁から立体ギャザーの起立端の中間まで形成することが好ましい。
【0034】
また、本発明の使い捨ておむつは、左右複数対の脚周り伸縮材が伸張状態で前後方向に連続的に固定され、切込が前後方向に複数箇所形成されていることも好ましい。具体的には、図2に示すように、シート材が前後方向Xの中心線で分割されるように形成する切込50Aは、3本の脚周り伸縮材40を前後方向Xに分割するように形成し、他の切込50B,50Cは、2本の脚周り伸縮材40を前後方向Xに分割し、残りの1本の脚周り伸縮材40を前後方向Xに分割しないように形成することが好ましい。このように、切込50を前後方向に複数箇所形成した場合、脚周り伸縮材40による脚周りのフィット性をより向上させることができる。
【0035】
図6は本発明の使い捨ておむつの幅方向側面の一部を模式的に示す側面斜視図であり、使い捨ておむつの一例としてテープ型使い捨ておむつの場合を示している。図6に示すように、最外層を構成するシート材には、切込50を覆うように伸縮シート51が貼り合わされていることが好ましい。伸縮シートは、切込が開いた場合にそれを閉じる方向に収縮力を働かせる一方で、おむつの股下方向に働く収縮力は少ない。そのため、このような伸縮シートを張り合わせても、切込を形成しない場合とは異なり、脚周り伸縮材の股下方向に働く収縮力は少なく、おむつがウエスト周りでズレ落ち難い。
【0036】
また、伸縮シートを貼り合わせることで、着用時に切込が広がることを抑制することができる。更に、シート材に切込を形成することにより懸念される尿漏れも抑制することができる。また、脚周り伸縮材に切込を形成することで生じる脚周りのフィット性の低下も抑制することもできる。即ち、最外層を構成するシート材に伸縮シートを貼り合わせることで、シート材や脚周り伸縮材に切込を形成することで懸念されるデメリットを改善することができる。
【0037】
伸縮シートは特に限定されるものではないが、少なくとも前後方向に伸縮できるように貼り合わせるものである。例えば、伸縮素材シートや伸縮弾性体を伸張状態でシートに固定したものがある。なお、伸縮弾性体を伸張状態でシートに固定したものを使用する場合、縮ませた状態でシート材に貼り合わせて使用する。
【0038】
具体的な伸縮素材シートの材質としては、例えばエラストマーを2枚の不織布で挟んだものや、メルトブロー法で製造されたポリウレタン不織布等を挙げることができる。
【0039】
具体的な伸縮弾性体の材質としては、従来の使い捨ておむつで使用されてきた伸縮材を好適に用いることができ、ウレタンフォーム等の伸縮性フォーム、伸縮性ネットの他、天然ゴムや合成ゴム(ウレタンゴム等)の弾性材からなる糸ゴム、平ゴム等を挙げることができる。なお、本発明の使い捨ておむつにおいては、ウレタンフォームから構成された伸縮弾性体を伸張状態でシートに固定した伸縮シートを好適に用いることができる。伸縮弾性体としてウレタンフォームを使用している場合には、張力を与えていない状態の長さを基準として150〜350%の伸長状態でシートに固定することが好ましく、200〜300%の伸長状態でシートに固定することがより好ましい。このような範囲の伸長状態でシートに固定することにより、十分な伸縮力を作用させることが可能となる。
【0040】
本発明の使い捨ておむつに用いられる伸縮シートは、切込の両端をその前後方向に伸縮可能とするように、最外面を構成するシート材に貼り合わされる。伸縮シートは、十分な伸縮力を作用させるため,切込を覆うようにして固定する。
【0041】
このような伸縮シートは、最外層を構成するシート材の切込の周辺に対して、接着剤その他の手段により固定される。固定方法としては、例えば、ホットメルト接着剤、その他の流動性の高い接着剤を用いた接着であってもよいし、ヒートシールをはじめとする熱や超音波等による溶着であってもよい。
【0042】
本発明の使い捨ておむつがテープ型使い捨ておむつである場合、通常、吸収体はその表面側をトップシートによって被覆されるとともに、その裏面側をバックシートによって被覆されている。また、トップシートの両側縁には、親水性シートからなるサイドシートが継ぎ合わされている。更に、脚周り伸縮材をはじめとする各種伸縮材は、サイドシートとバックシートとの層間に固定されている。従って、通常サイドシートとバックシートとから構成されるシート材に切込を形成することになる。
【0043】
[3]使い捨ておむつの構成部材:
本発明の使い捨ておむつは、図1A〜図1B、図2に示す使い捨ておむつ1のように、少なくとも吸収体22、トップシート18、バックシート20を構成部材として備える。
【0044】
[3−1]吸収体:
「吸収体」は、着用者の尿等を吸収し保持するための部材であり、吸収性材料によって構成される。前記吸収性材料としては、例えばフラッフパルプ、高吸水性ポリマー(Super Absorbent Polymer;以下、「SAP」と記す。)、親水性シート等を挙げることができる。前記フラッフパルプとしては木材パルプや非木材パルプを綿状に解繊したものを、前記SAPとしてはポリアクリル酸ナトリウムを、前記親水性シートとしてはティシュ、吸収紙、親水化処理を行った不織布等を用いることが好ましい。
【0045】
「吸収体」としては、1種又は2種以上の吸収性材料を単層又は複層のマット状に成形したものを用いることが好ましい。中でも、フラッフパルプ100質量部に対して、10〜500質量部のSAPを併用したものが好ましい。この際、SAPはフラッフパルプのマット中に混在させてもよいし、複数のマットの層間に層状に配置して用いてもよい。なお、SAPの脱落を防止し、形状安定性を付与するために、吸収体全体を親水性シートによって被包しておくことが好ましい。図1Bに示す使い捨ておむつ1は親水性シート28によって吸収体22全体を被包した例である。
【0046】
「吸収体」は、目的に応じて矩形状、砂時計型等の所望の形状に成形されたものを用いればよい。図1A及び図2に示す使い捨ておむつ1は、砂時計型の吸収体22を用いた例である。なお、「吸収体」はその表面側をトップシートによって被覆されるとともに、その裏面側をバックシートによって被覆されている。即ち、トップシートとバックシートの層間に配置されている。
【0047】
[3−2]トップシート:
「トップシート」は、吸収体の表面(使い捨ておむつの装着時に着用者の肌と対向する側の面)を被覆するように配置されるシート状部材である。着用者の尿等を透過させる必要から、その少なくとも一部(全部又は一部)が液透過性材料により構成される。
【0048】
前記液透過性材料としては、織布、不織布、多孔性フィルム等を挙げることができる。中でも、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、脂肪族ポリアミド等の熱可塑性樹脂からなる不織布に親水化処理を施したものを用いることが好ましい。
【0049】
前記不織布としては、エアースルー(カード熱風)、カードエンボス等の製法によって製造された不織布を好適に用いることができる。前記親水化処理は、不織布の原綿に対して界面活性剤を塗布、スプレー、含浸等させることにより行うことができる。
【0050】
トップシートは「少なくとも一部」が液透過性材料によって構成されている。その位置については特に限定されない。但し、平面視した場合に股下部における吸収体の配置位置と重畳する部分が液透過性材料により構成されていることが好ましい。
【0051】
なお、本発明の使い捨ておむつは、着用者の肌と対向する側の面全てがトップシートによってカバーされている必要はない。例えば、テープ型使い捨ておむつにおいては、おむつの幅方向中央部に液透過性材料からなるトップシートを配置し、おむつの幅方向側縁部(サイドフラップ部分)には通気撥水性材料からなるサイドシートを配置する形態がよく用いられる。この際、前記通気撥水性材料としてはカードエンボス、スパンボンド等の製法により得られた不織布シート、特に防水性が高いSMS、SMMS等の不織布シートを用いることが好ましい。
【0052】
[3−3]バックシート:
バックシートは、吸収体の裏面(使い捨ておむつの装着時に着用者の肌と背向する側の面)を被覆するように配置されるシート状部材である。バックシートは、着用者の尿がおむつ外部に漏洩してしまうことを防止する必要から、液不透過性材料によって構成される。
【0053】
バックシートの配置位置については特に制限はない。吸収体に吸収された尿の漏れを防止するという観点から、少なくとも吸収体の配置位置をカバーするようにバックシートが配置されていることが好ましい。
【0054】
前記液不透過性材料としては、例えば、ポリエチレン等の樹脂からなる液不透過性フィルム等を挙げることができる。中でも、微多孔性ポリエチレンフィルムを用いることが好ましい。この微多孔性ポリエチレンフィルムは0.1〜数μmの微細な孔が多数形成されたフィルムであり、液不透過性ではあるが透湿性を有する。従って、防漏性を確保しつつおむつ内部の蒸れを防止することができる。
【0055】
テープ型使い捨ておむつにおいては、バックシートの外表面側にカバーシートを貼り合わせる形態がよく用いられる。このカバーシートは、バックシートを補強し、バックシートの手触り(触感)を良好なものとするために用いられる。なお、カバーシートを貼り合わせた場合、本発明においてはカバ−シートにも切込が形成される。
【0056】
カバーシートを構成する材料としては、例えば、織布、不織布等を挙げることができる。中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の熱可塑性樹脂からなる乾式不織布、湿式不織布を用いることが好ましい。
【0057】
[3−4]立体ギャザー:
使い捨ておむつは、通常、図1A、図1B、及び図2に示す使い捨ておむつ1のように、撥水性シート32からなり、吸収体22の両側に配置された左右一対の立体ギャザー26(26a,26b)を備えている。なお、立体ギャザーの尿漏れ防止の効果を考えた場合、切込は立体ギャザーの起立部位には形成しないことが好ましい。
【0058】
立体ギャザーは、従来の使い捨ておむつに準じて構成することができる。図1Bに示すように撥水性シート32の層間に伸張状態の立体ギャザー伸縮材36を挟み込んで固定したものを挙げることができる。この際、撥水性シートとしては、サイドシートと同様の材料を好適に用いることができる。
【0059】
テープ型使い捨ておむつの場合、図1Bに示すようにおむつを構成するシート材(例えば撥水性不織布からなるサイドシート19等)の一部によって立体ギャザー26を構成する形態が多く用いられる。
【0060】
[3−5]各種伸縮材:
本発明の使い捨ておむつは、ウエスト周り伸縮材、脚周り伸縮材等の伸縮材を配置することが好ましい。
【0061】
脚周り伸縮材は、脚周り開口部に沿って配置される伸縮材である。この脚周り伸縮材を配置することによって、脚周り開口部に伸縮性に富むギャザー(レグギャザー)を形成することができる。従って、脚周りに隙間が形成され難くなり、脚周り開口部からの尿漏れを効果的に防止することができる。
【0062】
この脚周り伸縮材は、立体ギャザーの起立線より外側の部分に配置されていることが好ましい。このような構成とすると、立体ギャザーの十分な防漏効果を確保しつつ、股下部の装用感・装着感を向上させることができる。
【0063】
ウエスト周り伸縮材は、ウエスト周り開口部に沿って配置される伸縮材である。ウエスト周り伸縮材を配置することによって、ウエスト開口部に伸縮性に富むギャザー(ウエストギャザー)を形成することができる。このウエストギャザーにより、ウエスト周りに隙間が形成され難くなり、ウエスト周りからの尿漏れを防止することができる他、着用者へのおむつのフィット性が良好となり、おむつのずり下がりが防止される。
【0064】
図1Aに示すテープ型の使い捨ておむつ1は、おむつの後身頃6の端縁に沿って帯状のウエスト周り伸縮材42を配置し、また、脚周り開口部に沿って脚周り伸縮材40を配置した例である。なお、帯状のウエスト周り伸縮材42は、ウレタンフォーム等の伸縮性フォームによって構成することができる。図示の例では、後身頃(背側)のみにウエスト周り伸縮材42を配置しているが、前身頃(腹側)にウエスト周り伸縮材を配置してもよい。
【0065】
伸縮材としては、天然ゴムからなる平ゴムや合成ゴム(ウレタンゴム等)の弾性糸からなる糸ゴムの他、伸縮性ネット、伸縮性フィルム、伸縮性フォーム(ウレタンフォーム等)等を好適に用いることができる。
【0066】
伸縮材は、着用者に対して過度の締め付け力を作用させることなく、十分な伸縮力を作用させるため、120〜400%の伸長状態で固定することが好ましく、200〜300%の伸長状態で固定することが好ましい。伸縮材は、例えば、ホットメルト接着剤、その他の流動性の高い接着剤を用いた接着、ヒートシールをはじめとする熱や超音波等による溶着によって固定することができる。
【0067】
テープ型使い捨ておむつの場合、脚周り伸縮材は、例えばサイドシートとバックシートの層間に、伸張状態の線状伸縮材を挟み込むように固定する等の方法で、ウエスト周り伸縮材は、例えばトップシートとバックシートの層間に、伸張状態の面状伸縮材(伸縮性フォーム等)を挟み込むように固定する等の方法で配置することができる。
【0068】
[3−6]止着テープ:
テープ型使い捨ておむつの場合、図1Aに示すように後身頃6の左右の各側縁6a,6bから延出するように配置された、前身頃2と後身頃6とを固定するための止着テープ11を備えたものが好適に用いられる。
【0069】
止着テープ11のファスニング部材は特に限定されない。但し、止着力が高く、複数回の脱着を行っても止着力が低下し難いメカニカルファスナー46(面状ファスナー)を用いることが好ましい。例えば、止着テープ11の先端近傍にメカニカルファスナー46のフック材46aを付設する一方、前身頃2にメカニカルファスナー46のループ材46bからなるフロントパッチ13を付設する形態が多く用いられる。
【0070】
止着テープの数は特に限定されず、着用者の体型(具体的には、ウエスト周り、脚周り等)の寸法に合わせて、適当な数の止着テープを付設すればよい。一般的には、乳幼児用の使い捨ておむつであれば一対(左右1個ずつ)、成人用の使い捨ておむつであれば二対(左右2個ずつ)が付設される。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の使い捨ておむつは、乳幼児用、或いは介護を必要とする高齢者や障害者等の成人用のおむつとして好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0072】
1:使い捨ておむつ、2:前身頃、2a,2b:側縁、4:股下部、6:後身頃、6a,6b:側縁、10:ウエスト周り開口部、11:止着テープ、12:脚周り開口部、13:フロントパッチ、18:トップシート、19:サイドシート、20:バックシート、22:吸収体、26,26a,26b:立体ギャザー、28:親水性シート、32:撥水性シート、36:立体ギャザー伸縮材、40:脚周り伸縮材、42:ウエスト周り伸縮材、46:メカニカルファスナー、46a:フック材、46b:ループ材、50,50A,50B,50C:切込、51:伸縮シート、60:脚、62:腹、X:前後方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前身頃、股下部、後身頃の各部からなり、吸収体と、少なくとも一部が液透過性材料からなり、前記吸収体の表面を被覆するように配置されたトップシートと、液不透過性材料からなり、前記吸収体の裏面を被覆するように配置されたバックシートと、を備え、
前記股下部は、少なくとも複数枚のシート材及び前記シート材の幅方向中央に配置された前記吸収体で構成されており、
前記シート材の両側縁から幅方向中央側に向かって切込が形成され、前記シート材が前後方向に分割されている使い捨ておむつ。
【請求項2】
複数枚の前記シート材の層間に、少なくとも左右一対の脚周り伸縮材が伸張状態で前後方向に連続的に固定されており、
前記切込によって、前記脚周り伸縮材が前後方向に分割されている請求項1に記載の使い捨ておむつ。
【請求項3】
前記切込によって、前記シート材が前後方向の中心線で分割されている請求項1又は2に記載の使い捨ておむつ。
【請求項4】
左右複数対の脚周り伸縮材が伸張状態で前後方向に連続的に固定され、前記切込が前後方向に複数箇所形成されており、
少なくとも1箇所の前記切込は、前記複数対の脚周り伸縮材の全てを前後方向に分割するよう形成されており、
残りの前記切込は、前記複数対の脚周り伸縮材の一部を前後方向に分割し、前記複数対の脚周り伸縮材の残部を前後方向に分割しないように形成されている請求項2又は3に記載の使い捨ておむつ。
【請求項5】
最外層を構成する前記シート材に、前記シート材の前記切込を覆うように伸縮シートが貼り合わされている請求項1〜4のいずれか一項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項6】
前記吸収体と、前記トップシートと、前記バックシートと、前記後身頃の左右の各側縁から延出するように配置された、前記前身頃と前記後身頃とを固定するための止着テープと、撥水性シートからなり、前記トップシートの両側縁に継ぎ合わされているサイドシートと、を備えたテープ型使い捨ておむつであって、
前記シート材は、前記バックシート及び前記サイドシートからなり、
前記切込は、前記バックシート及び前記サイドシートに形成され、前記バックシート及び前記サイドシートが前後方向に分割されている請求項1〜5のいずれか一項に記載の使い捨ておむつ。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−170516(P2012−170516A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32780(P2011−32780)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(390036799)王子ネピア株式会社 (387)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】