説明

使い捨ておむつ

【課題】グラフィックを利用して胴回り弾性体が適切に切断または切除されているか否かを容易に視認することができる使い捨ておむつを提供する。
【解決手段】おむつ1は、肌対向面および非肌対向面を有し、前後胴回り部材6,7を画成するとともに、肌対向面の側に位置する内面シート41と、非肌対向面の側に位置する外面シート42と、内外面シート41,42の間に介在して前後胴回り部材6,7における横方向Xへ延びて収縮性を有する胴回り弾性体44と、胴回り弾性体44が設けられていない前後非弾性領域61,62と、外面シート42から視認可能な前後グラフィック54,55を有する前後グラフィックシート51,52とを備えている。胴回り弾性体44の端部44aが、前後グラフィックシート51,52と外面シート42との間であって、グラフィックシート51,52の外部からその両側縁51a,51bを横切ってグラフィックシート51,52の内部にまで延びている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、使い捨ておむつに関し、さらに詳しくは、排便トレーニングパンツ、失禁ブリーフ等の使い捨ておむつに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、着用者の胴回り域を被覆する前後胴回り部材を備える使い捨ておむつは公知である。例えば、特許文献1には、肌対向面の側に位置する内面シートと、非肌対向面の側に位置する外面シートと、内面シートと外面シートとの間に介在された胴回り弾性体およびグラフィックが形成されたグラフィックシートとを備える前後胴回り部材が開示されている。
胴回り弾性体は、胴回り方向に収縮力が作用するように、胴回り方向に伸長状態で、内外面シート間に接着剤を介して取り付けてある。
【0003】
この使い捨ておむつでは、グラフィックシートが配置された部分では、収縮力が作用しないように胴回り弾性体を切除してある。このように胴回り弾性体を切除することによって、グラフィックが表示されている部分では、胴回り弾性体の収縮力が作用せず、胴回り弾性体の収縮力による皺も発生しないため、グラフィックが見え難くなることを避けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−525858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている発明には、胴回り弾性体が適切に切断または切除されているか否かを視認するため、グラフィックを利用する技術的思想が開示されていない。
【0006】
そこで、この発明では、グラフィックを利用して胴回り弾性体が適切に切断または切除されているか否かを容易に視認することができる使い捨てのおむつの提供を課題にしている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、この発明が対象とするのは、肌対向面および非肌対向面を有し、前後胴回り部材を画成するとともに、前記肌対向面の側に位置する内面シートと、前記非肌対向面の側に位置する外面シートと、前記内外面シートの間に介在して前記前後胴回り部材における横方向へ延びて収縮性を有する胴回り弾性体と、前記胴回り弾性体が設けられていない非弾性領域と、前記外面シートから視認可能なグラフィックを有するグラフィックシートとを備える使い捨ておむつである。
【0008】
係る使い捨ておむつにおいて、この発明の特徴は、前記胴回り弾性体の端部が、前記グラフィックシートと前記外面シートとの間であって、前記グラフィックシートの外部からその両側縁を横切って前記グラフィックシートの内部にまで延びている。
【0009】
この発明の好ましい実施態様の一つにおいて、前記胴回り弾性体は、その端部が収縮性を有さない一方、前記端部以外の部分は、収縮性を有するものであり、 前記胴回り弾性体の収縮性を有する部分が、前記グラフィックシートの外部から前記両側縁を横切って前記グラフィックシートの内部にまで延びている。
【0010】
この発明の好ましい実施態様の他の一つにおいて、前記胴回り弾性体の端部が、前記グラフィックの上に位置している。
【0011】
この発明の好ましい実施態様の他の一つにおいて、前記胴回り弾性体の端部が、前記グラフィックシートの両側縁と前記グラフィックとの間に位置している。
【0012】
この発明の好ましい実施態様の他の一つにおいて、前記グラフィックシートは、少なくとも中央部グラフィックと、前記中央部グラフィックの両側にそれぞれ配置した側部グラフィックとを有し、前記胴回り弾性体の端部が、前記グラフィックシートの両側縁と前記中央部グラフィックとの間に位置している。
【0013】
この発明の好ましい実施態様の他の一つにおいて、前記胴回り弾性体の非収縮性の端部が、前記側部グラフィックの上に位置する。
【0014】
この発明の好ましい実施態様の他の一つにおいて、前記グフラィックと前記胴回り弾性体とは、色相、彩度、明度の少なくともいずれか一つが異なる。
【0015】
この発明の好ましい実施態様の他の一つにおいて、前記グラフィックは、明度の低い部分を有する一方、前記胴回り弾性体は、明度が高い。
【0016】
この発明の好ましい実施態様の他の一つにおいて、吸液構造体をさらに備え、前記内面シートと前記グラフィックシートとを接合する第1接着剤の塗布方向と、前記内面シートと前記吸液構造体とを接合する第2接着剤の塗布方向とが交差する。
【0017】
この発明の好ましい実施態様の他の一つにおいて、芯材を備える吸液構造体をさらに備え、前記横方向において、前記芯材の幅と前記グラフィックシートの幅とがほぼ等しい。
【発明の効果】
【0018】
この発明の1つ以上の実施の形態に係る使い捨ておむつによれば、胴回り弾性体の非収縮性の端部が、グラフィックシートと外面シートとの間であって、グラフィックシートの外部からその両側縁を横切ってグラフィックシートの内部にまで延びているため胴回り弾性体の端部を外面シートの非肌対向面から視認することができる。よって、胴回り弾性体の端部を視認し、グラフィックを利用して胴回り弾性体の切断または切除が適切に行われているか否かを容易に視認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態における使い捨ておむつをその前ウエスト域の側から見たときの斜視図。
【図2】おむつの両側部の接合が解かれ、平らで収縮していない状態のおむつの一部破断平面図。
【図3】おむつの分解斜視図。
【図4】(a)おむつの正面図。(b)おむつの背面図。
【図5】図4(a)のV−V線断面図。
【図6】接着剤の塗布方向を示す要部斜視図。
【図7】第2実施形態の使い捨ておむつの要部を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
添付の図面を参照して、この発明に係る使い捨ておむつの実施形態を説明すると、以下のとおりである。
【0021】
[第1実施形態]
図1および図2を参照すると、おむつ1は、ウエスト開口2と、一対のレッグ開口3とを有するパンツ型に形成されている。図中、Xは横方向を示し、Yは横方向Xと直交する縦方向Yを示し、Zは横方向X及び縦方向Yにそれぞれ直交する前後方向を示している。
おむつ1は、胴回り方向に延びる環状の胴回り部材4と、胴回り方向に交差する方向に延びるクロッチ部材5とを備える。
胴回り部材4は、前胴回り部材6と、後胴回り部材7とから構成されている。おむつ1、すなわち、環状の胴回り部材4およびクロッチ部材5は、それらの内側面である肌対向面と、それらの外側面である非肌対向面とを有する。
【0022】
前後胴回り部材6,7は、横方向Xに対向し縦方向Yに延びる前後側縁部8,9を有する。これら前後側縁部8,9が対向し、縦方向Yに間欠的に並ぶ接合部10で接合されることによってウエスト開口2が画成される。
【0023】
図2において、Pは、おむつ1を横方向Xに二等分する仮想縦中心線を示し、Qは、クロッチ部材5を縦方向Yに二等分する仮想横中心線を示す。
おむつ1は、仮想縦中心線Pに対して対称に形成されている。
おむつ1は、縦方向Yに互いに連なる、前ウエスト域11と、後ウエスト域12と、前後ウエスト域11,12の間に位置するクロッチ域13とを有している。前後胴回り部材6,7は、縦方向Yに対向し横方向Xに延びる一対のウエスト外端部21,22および一対のクロッチ端部24,25を有する。
クロッチ部材5は、前胴回り部材6と後胴回り部材7との縦方向Yの中央部の間に配置されていてこれらの部材6,7に連結されている。具体的には、クロッチ部材5のクロッチ前端部5aが前胴回り部材6に接合され、クロッチ後端部5bが後胴回り部材7に接合される。この接合と、前後側縁部8,9の前記接合とによって、前後胴回り部材6,7のクロッチ端部24,25と、クロッチ部材5の両側縁5cとの間にレッグ開口3が画成される(図1参照)。
【0024】
クロッチ部材5は吸液構造体31を含む。吸液構造体31は、木材フラッフパルプと高吸収性ポリマー粒子との混合物等によって構成される吸液性の芯材32と、芯材32を包む例えばティッシュペーパ製の吸液拡散シート33と、吸液拡散シート33の肌対向面の側を覆う、例えば繊維不織布製の透液性のインナーシート34と、吸液拡散シート33の非肌対向面の側を覆う、例えば繊維不織布製のアウターシート35とを含む。さらに吸液拡散シート33とアウターシート35との間には、透湿性のプラスチックフィルム製の漏れ防止シート36を配置してある。漏れ防止シート36は、縦横において、芯材32とほぼ同じ大きさか、それよりも大きく、芯材32に吸収された排泄物が非肌対向面の側に漏れることを防止している。このような吸液構造体31を含むクロッチ部材5のクロッチ前後端部5a,5bを後述する外面シート42の折り返し部43で覆うことによって、芯材32がこぼれ出るのを防止している。
インナーシート34とアウターシート35との間において、吸液構造体31の横方向Xの両側縁には、縦方向Yへ延びるレッグ弾性体37が伸長状態で取り付けられている。
【0025】
芯材32は、その縦方向Yのほぼ中央において横方向Xの内側に向かって凹曲している(図3参照)。このような形状にすることによって、おむつ1を着用したときにおむつ1が着用者の脚回りにフィットする。芯材32の横方向Xの両側から外方へ延出したインナーシート34およびアウターシート35の両側縁部34a,34bで形成されるサイドフラップにはそれらの間において縦方向Yへ延びるレッグ弾性体37が伸長状態で接着剤(図示せず)を介して固定されている。従って、着用時にはレッグ弾性体37の収縮によって、両サイドフラップが肌対向面の側に立ち上がって、漏れを防止する壁を形成する。なお、サイドフラップに代え、または別途、例えば繊維不織布製の漏れ防止カフを、クロッチ部材5の肌対向面の側に形成することによって、漏れを防止する壁を形成することもできる。
【0026】
前後胴回り部材6,7は、肌対向面を画成する、例えば繊維不織布製の内面シート41と、非肌対向面を画成する、例えば繊維不織布製の外面シート42とを有する。外面シート42は、光透過率が75%以上のものを用いることが好ましく、83%以上のものを用いることがより好ましい。
外面シート42は、ウエスト外端部21,22において肌対向面の側への折り返し部43を形成している。この折り返し部43によってクロッチ部材5のクロッチ前後端部5a,5bが被覆される。
【0027】
内面シート41と外面シート42との間には、複数の胴回り弾性体44が介在されている。
胴回り弾性体44は、横方向Xへ延び、内外面シート41,42の間の接着剤(図示せず)を介して固定されている。胴回り弾性体44には、例えば伸縮性を有するポリウレタン等の熱可塑性合成樹脂製の繊維からなり、ゴム弾性を有する糸状または紐状のものを使用することができる。胴回り弾性体44は、縦方向Yにおいて、クロッチ端部24,25からウエスト外端部21,22に亘って例えば一定の間隔で配置されている。
【0028】
図2中、前胴回り部材6の縦方向Yにおいて、ウエスト開口2からクロッチ前端縁5aの間に配置してある胴回り弾性体44は、後述する切断等による非弾性領域61を画成しておらず、横方向Xに連続し、例えば約620〜940dtexのものを用いることが好ましく、それを約2.2〜2.6倍に伸長して内外面シート41,42に固定するのが好ましい。これらの胴回り弾性体44は、前胴回り部材6の上部を着用者の前胴回りにフィットさせる機能を有する。
また、クロッチ前端縁5aから芯材33の前端縁までの間に配置してある胴回り弾性体44は、後述する切断等による非弾性領域61を画成しておらず、横方向Xに連続し、例えば約470〜940dtexのものを用いることが好ましく、それを約1.9〜2.4倍に伸長して内外面シート41,42に固定するのが好ましい。これらの胴回り弾性体44は、インナーシート34等を着用者の前胴回りにフィットさせる機能を有する。
さらに、芯材33の前端縁から下方に配置してある胴回り弾性体44は、後述する切断等による非弾性領域61を横方向Xの中央部において画成し、例えば約320〜780dtexのものを用いることが好ましく、それを約2.6〜3.5倍に伸長して内外面シート41,42および前グラフィックシート51に固定するのが好ましい。これらの胴回り弾性体44は、芯材33に重なり、芯材33を着用者の肌に押し当てる機能を有する。これらの胴回り弾性体44は、非弾性領域61を画成しても芯材33を着用者の肌に押し当てるため、十分な収縮性を有していることが好ましく、上述した他の部位の胴回り弾性体44に比較して伸長倍率を高く設定してある。また、このように伸長倍率を高くした場合、縦方向Yの単位長さ当たりの本数が少ないと、着用者の肌に胴回り弾性体44が局所的に食い込むため、縦方向Yの単位長さ当たりの本数を多くすることによって、複数の胴回り弾性体44によって全体として芯材33を着用者の肌に押し当てて、着用者の肌に胴回り弾性体44が食い込むことを防止することができる。これを考慮すると、上記胴回り弾性体44は、約320〜500dtexのものを用いることがより好ましく、それを6mm以下の間隔で配置することがより好ましい。
上述には、前胴回り部材6について説明したが、後胴回り部材7も同様である。
なお、胴回り弾性体44の伸長倍率は、以下のようにして確認することができる。先ず、内外面シート41,42を胴回り弾性体44の収縮による皺が発生しない状態に引き延ばす。次に、その引き延ばした状態で横方向X(長さ方向)の一定の寸法Aで胴回り弾性体44に印を付ける。次いで、内外面シート41,42から胴回り弾性体44を取り出す。なお、この取り出しの際に、胴回り弾性体44を内外面シート41,42等に固定してある接着剤に対し、トルエン等の溶媒を用いて溶解させ、胴回り弾性体44に接着剤が残らないようにする。最後に、非伸長状態(自然状態)における長さ方向の寸法Bを測定し、寸法Aを寸法Bで除して伸長倍率を算出する。
【0029】
図3を参照すると、前後胴回り部材6,7において、内面シート41と外面シート42との間には、略矩形状の前後グラフィックシート51,52が介在されている。
前後グラフィックシート51,52は、その材料として熱可塑性合成樹脂製のフィルムや繊維不織布、またはペーパーを用いることができる。
前後グラフィックシート51,52の非肌対向面の側にはその横方向Xのほぼ中央に前後グラフィック54,55が印刷されて、これら前後グラフィック54,55が光透過性の外面シート42を介して視認可能である。また、前後グラフィックシート51,52の前後グラフィック54,55の周辺には、前後グラフィック54,55が印刷されていない前後非グラフィック領域57,58が位置している。
【0030】
前胴回り部材6における前グラフィックシート51には、キャラクターの前側のグラフィック54が、後胴回り部材7における後グラフィックシート52には、キャラクターの後側のグラフィック55がそれぞれ印刷されている。このように、前後グラフィックシート51,52によって異なる前後グラフィック54,55を位置させると、これらをおむつ1の前後の判別の指標として利用し、その前後を誤って着用することを防止することができる。
【0031】
図4(a)は、おむつ1の正面図であり、図4(b)は、おむつ1の背面図である。図5は、図4(a)のV−V線断面図である。
胴回り弾性体44は、前後胴回り部材6,7の横方向Xにおける中央部で切断してあり、胴回り弾性体44の収縮力が作用しない前後非弾性領域61,62が画成されている。より具体的には、横方向Xへ伸長状態にある胴回り弾性体44の中央部を切断して胴回り弾性体44を横方向の外側へ収縮(スナップバック)させることによって、前後胴回り部材6,7の横方向Xの中央部には、胴回り弾性体44の収縮力が作用しない前後非弾性領域61,62が画成されるとともに、前後胴回り部材6,7の両側域には、胴回り弾性体44の収縮力が作用する前後弾性領域64,65が画成されている。そのように胴回り弾性体44の中央部を収縮させるには、その中央部において胴回り弾性体44が内外面シート41,42の対向面に接着剤によって固定されないようになされる。なお、胴回り弾性体44の中央部における切断は、熱を加えることによる切断、またはカッターを用いることによる切断が好ましい。
【0032】
前後非弾性領域61,62には、グラフィック54,55の印刷面が外面シート42の肌対向面に対向するとともに、胴回り弾性体44の内外面シート41,42のいずれにも接着剤で固定されていないフリーかつ収縮性を喪失している端部44aが、前後グラフィックシート51,52の横方向Xの両側縁51a,51bに位置する。
胴回り弾性体44の端部44aは、収縮性を有さない一方、端部44a以外の部分44bは収縮性を有している。このおむつ1では、収縮性を有さない胴回り弾性体44の端部44aが、前後グラフィックシート51,52と外面シート42との間であって、前後グラフィックシート51,52の外部からその両側縁51a,51bを横切ってグラフィックシート51,52の内部にまで延びている。しかも、収縮性を有する胴回り弾性体44の部分44bも、前後グラフィックシート51,52の外部からその両側縁51a,51bを横切ってグラフィックシート51,52の内部にまで延びている。また、胴回り弾性体44の端部44aが、前後グラフィックシート51,52の両側縁51a,51bと、前後グラフィック54,55との間に位置している。
【0033】
このようなおむつ1によれば、胴回り弾性体44の非収縮性の端部44aは、前後非弾性領域61,62内に位置し、前後グラフィックシート51,52と外面シート42との間であって、前後グラフィックシート51,52の外部からその両側縁51a,51bを横切って前後グラフィックシート51,52の内部にまで延びているため、胴回り弾性体44の端部44aを外面シート42の非肌対向面から視認することができる。しかも、胴回り弾性体44の端部44aが、前後グラフィックシート51,52の両側縁51a,51bと、前後グラフィック54,55との間に位置しているため、胴回り弾性体44の端部44aを視認し、仮に、前後グラフィック54,55に端部44aが重なっている場合には、スナップバックすることによって生じる非収縮性の端部44aの長さが長すぎる一方、前後グラフィックシート51,52の両側縁51a,51bに端部44aが重なっていない場合は、胴回り弾性体44の横方向Xの長さが短かすぎ、いずれの場合も胴回り弾性体44の切断または切除の不良が発生していることが分かる。よって、グラフィックを利用して胴回り弾性体44の切断または切除が適切に行われているか否かを容易に視認することができる。
【0034】
前後胴回り部材6,7の前後グラフィック54,55は、前後非弾性領域61,62に配置してあるため、胴回り弾性体44の収縮力によって前後グラフィック54,55に皺が発生することを抑えることができる。よって、前後グラフィック54,55が見え難くなるということがない。
図3に示すように、前後非弾性領域61,62は、芯材32に重なるように配置され(図3参照)、このため、この重なった部分においては、芯材32にも胴回り弾性体44の収縮力が作用せず、芯材32に皺が発生するのを抑えることができる。したがって、芯材32に皺が発生することによって排泄物が漏れるのを防止することができる。
また、図示省略するが,横方向Xにおいて、芯材32の幅と、前後グラフィックシート51,52の幅とがほぼ等しい場合、前後グラフィックシート51,52と吸液構造体31とが重なる位置において、収縮性を有する胴回り弾性体44の部分44bが、前後グラフィックシート51,52の両側縁51a,51bを横切っていることで、胴回り弾性体44の端部44aを視認し、異常がなければ、芯材32上に、弾性領域64,65の一部と、前後非弾性領域61,62の一部とが重なることとなり、芯材32を胴回り弾性体44により着用者に押し当てる状態にあることを容易に確認することができる。
【0035】
前後非弾性領域61,62は、伸長状態で取り付けられた胴回り弾性体44の中央部を切断して収縮させるだけで画成することができ、その画成が容易である。
また、胴回り弾性体44の切断は、1か所のみで行うことが好ましい。1か所のみで胴回り弾性体44を切断すれば、内外面シート41,42および前後グラフィックシート51,52に接合されていない部分は、自身の収縮力によって収縮し、内外面シート41,42および前後グラフィックシート51,52に接合されている部分の先端側に、収縮力を喪失した端部44aとして残る。従って、複数個所で胴回り弾性体44を切断すれば、胴回り弾性体44の屑が発生し、その屑がおむつ1に残り、端部44aを誤認するおそれがあるが、1か所で切断すれば、そのおそれがない。また、胴回り弾性体44を切断する場合、内外面シート41,42および前後グラフィックシート51,52に接合されていない箇所の中央部で切断するのが好ましい。このように切断すれば、収縮力を喪失した部分の長さを、横方向Xにおける両端部44aで同一にすることができる。なお、切断箇所は1か所に限られず、かつ内外面シート41,42および前後グラフィックシート51,52に接合されていない箇所の中央部で切断することに限られない。
【0036】
なお、前後非弾性領域61,62は、胴回り弾性体44の中央部を前後非弾性領域61,62に相当する範囲に亘って切除することによって画成することもできる。この場合も、切除する範囲が、内外面シート41,42の対向面に接着剤によって固定されていないことが必要である。
【0037】
前後胴回り部材6,7のいずれにも横方向Xの中央部に前後グラフィック54,55を形成してあるため、容易に前後グラフィック54,55を視認することができる。ただし、前後胴回り部材6,7のいずれか一方にのみグラフィック54,55を形成してもよい。
【0038】
なお、図示省略するが、前後グラフィック54,55の線書きの部分を黒色にし、または線書きの部分および線書きの内部を黒色にする一方、胴回り弾性体44を白色にしてもよい。このように前後グラフィック54,55の線書きの部分等の明度を低くする一方、胴回り弾性体44の明度を高くし、前後グラフィック54,55と胴回り弾性体44との明度が異なれば、胴回り弾性体44の端部44aの視認性を向上することができる。もちろん、明度が異なる場合のみならず、色相を変えてもよい。例えば、前後グラフィック54,55の線書きの部分等を黄色にする一方、胴回り弾性体44を青色にし、前後グラフィック54,55と胴回り弾性体44とを補色関係にすれば、端部44aの視認性を一層向上することができる。もちろん、明度や色相を変えることに代えて彩度を変えてもよい。また、色相、明度、彩度のいずれか一つを変えるのみならず、複数のものを変えてもよい。また、前後グラフィック54,55は、キャラクターに限られず、文字、図形、記号等でもよい。さらに、胴回り弾性体44の端部44aは、前後グラフィックシート51,52の両側縁51a,51bと、前後グラフィック54,55との間に位置せず、前後グラフィック54,55の上に位置してもよい。このようなおむつによれば、胴回り弾性体44の端部44aの視認が一層容易になる。
【0039】
また、必ずしもおむつ1を仮想縦中心線Pに関して対称に形成する必要はない。例えば横方向Xにおいて、中央部ではなく、左方、もしくは右方のいずれか一方に偏倚させて胴回り弾性体44を切断することもできる。このように胴回り弾性体44の切断を偏倚させ、収縮性を喪失した端部44aの横方向Xの長さを変えることができ、例えば横方向Xにおける一方の胴回り弾性体44の端部44aが、前後グラフィック54,55の上に位置する一方、横方向Xにおける別のもう一方の胴回り弾性体44の端部44aが、前後グラフィック54,55と、前後グラフィックシート51,52の両側縁51a,51bとの間に位置し、前後グラフィック54,55の上に位置しないように配置させることができる。このように配置すれば、端部44aを横方向Xの左右で比較することにより、一層容易に切断等が正常に行われたか否かを視認することができる。
【0040】
さらに、図6に示すように、例えば内面シート41に波状に塗布する第1ホットメルト接着剤(第1接着剤)71の塗布方向を横方向Xにして内面シート41と後グラフィックシート52とを接合する一方、例えば吸液構造体31に波状に塗布する第2ホットメルト接着剤(第2接着剤)72の塗布方向を縦方向Yにして内面シート41と吸液構造体31とを接合する。このように、内面シート41と後グラフィックシート52とを接合する第1ホットメルト接着剤71の塗布方向と、内面シート41と吸液構造体31とを接合する第2ホットメルト接着剤72の塗布方向とを交差させれば、後グラフィックシート52に発生する皺を抑えることができ、後グラフィックシート52上の胴回り弾性体44の視認が容易となる、また、横方向Xにおいて、前述の後グラフィックシート52の幅と芯材32の幅とを合わせることで、後グラフィックシート52のみでなく、芯材32に発生する皺をも抑えることができ、吸収効率を高くすることができる。
もちろん、接着剤の塗布パターンは、波状に限られず、Ω字状等、他の形状でもよい。また、前グラフィックシート51を同様に内面シート41に接合してもよい。
【0041】
[第2実施形態]
図7は、本発明の第2実施形態に係るおむつ100の要部の正面図である。本実施形態の基本的構成は、第1実施形態と同様であるので、同一の構成には同一の符号を付して説明を省略し、相違する点についてのみ以下に説明する。
【0042】
このおむつ100の前グラフィックシート151には、横方向Xに3つのグラフィック154,159を表示してある。横方向Xの中央部には中央部グラフィック154を配置してある一方、横方向Xの両側には側部グラフィック159をそれぞれ配置してある。
図示するように、側部グラフィック159が横方向Xにおいて相対的に小さい一方、中央部グラフィック154が横方向Xにおいて相対的に大きい。
また、胴回り弾性体44の収縮性を喪失している端部44aは、側部グラフィック159の上に配置してある。
【0043】
この発明に係るおむつ100によれば、前グラフィックシート151は、少なくとも中央部グラフィック154と、中央部グラフィック154の両側にそれぞれ配置した側部グラフック158,159とを有し、胴回り弾性体44の非収縮性の端部44aが、非弾性領域61内に位置し、グラフィックシート151と外面シート42との間であって、非弾性領域61内におけるグラフィックシート151の両側縁51a,51bと中央部グラフィック154との間に位置しているため、胴回り弾性体44の端部44aを外面シート42の非肌対向面から視認することができる。よって、胴回り弾性体44の端部44aを視認し、グラフィックを利用して胴回り弾性体44の切断または切除が適切に行われているか否かを容易に視認することができる。
【0044】
加えて、横方向Xにおいて、側部グラフィック159が相対的に小さい一方、中央部グラフィック154が相対的に大きいため、側部グラフィック159が存在する違和感を抑えることができる。
【0045】
なお、側部グラフィック159と中央部グラフィック154との大きさの差は、横方向Xのみに限られず、縦横において異なってもよい。
【0046】
このおむつ100において、側部グラフィック159の線書きの部分を黒色にし、または線書きの部分および線書きの内部を黒色にしてもよい。胴回り弾性体44を白色にすれば、胴回り弾性体44と側部グラフィック159の明度が異なるため、胴回り弾性体44の端部44aの視認性を向上することができる。しかも、中央部グラフィック154の線書きの部分のみを黒色または有色にすれば、前グラフィックシート151の違和感を抑えることができる。
もちろん、胴回り弾性体44と側部グラフィック159とは、明度が異なる場合のみならず、色相を変えてもよいし、彩度を変えてもよい。また、色相、明度、彩度のいずれか一つを変えるのみならず、複数のものを変えてもよい。
さらに、前グラフィックシート151に設けるグラフィック154,158,159の数は3つに限られず、4つ以上設けてもよい。また、側部グラフィック159は、中央部グラフィック154の両側にそれぞれ設ける必要はなく、いずれか一方のみでもよい。
また、前胴回り部材6に設ける前グラフィックシート151で説明したが、図示省略するが、後胴回り部材7に設ける後グラフィックシートに適用してもよい。
【0047】
次に、外面シート42の光透過率の測定方法の一例を以下に説明する。
光透過率は、例えば日本電色工業株式会社製の交照測光式色差計Z−300Aを用いて以下のように測定する。
先ず、一方の検出部と、別のもう一方の検出部との間に、光を遮蔽する遮蔽物を配置した状態で測定し、零点補正する。
次に、一方の検出部と、別のもう一方の検出部との間に配置した遮蔽物を取り除いてから、光を遮るものがない状態で測定し、標準補正を行う。
次いで、対象物である前後胴回り弾性体44を有する外面シート42を、一方の検出部と、別のもう一方の検出部との間に配置した状態で測定する。
【0048】
例えば、スパンボンド繊維不織布とメルトブローン繊維不織布とスパンボンド繊維不織布との積層体であるSMS繊維不織布、スパンボンド繊維不織布、およびエアースルー繊維不織布を対象とし、これらを外面シート42に用いたおむつ1について、その胴回り弾性体44の視認性を確認した。胴回り弾性体44には、320dtexを用い、3.2倍に伸長した状態で所定の位置でスナップバックさせた。
第1の対象物は10g/mのSMS繊維不織布であり、第2の対象物は13g/mのSMS繊維不織布であり、第3の対象物は17g/mのスパンボンド繊維不織布であり、第4の対象物は30g/mのエアースルー繊維不織布であり、第5の対象物は60g/mのエアースルー繊維不織布である。
【0049】
光透過率は、第1の対象物が87.3%であり、第2の対象物が83.2%であり、第3の対象物が84.4%であり、第4の対象物が73.2%であり、第5の対象物が56.8%であった。
【0050】
第4,5の対象物は、前後胴回り弾性体44の端部44aが見えにくく、第1〜3の対象物は、前後胴回り弾性体44の端部44aが見えやすかった。これら以外の繊維不織布についても同様の実験を行った結果、光透過率が75%よりも小さいと、端部44aが見えにくい。一方、光透過率が75%以上であれば、端部44aの視認が容易である。さらに、光透過率が83%以上であれば、端部44aの視認が一層容易である。
【0051】
なお、おむつ1,100は、この発明の範囲で適宜変更することができ、上述した実施形態に限定されることはない。例えば、この発明は、おむつ1,100に限られず、排便トレーニングパンツ、失禁ブリーフ等に適用することもできる。
さらに、上述した実施形態ではパンツ型のおむつ1,100について説明しているが、いわゆるオープン型のおむつに適用することも可能である。
また、上述した実施形態には、内面シート41と外面シート42とは、いずれか一方のシートに塗布したホットメルト接着剤によって接合してもよいし内外面シート41,42の双方にそれぞれホットメルト接着剤を塗布して接合してもよい。また、内外面シート41,42は、ホットメルト接着剤等の接着剤で接合する必要はなく、例えばこれらの内外面シート41,42の間に熱融着シートを設け、この熱融着シートに熱を加えて接合してもよい。もちろん、このように熱を加えて接合する必要もなく、ソニックシールによって接合してもよい。
また、内外面シート41,42は、前胴回り部材6と後胴回り部材7とに分かれている必要はなく、前ウエスト域11から後ウエスト域12に亘る一連のシートを用いてもよい。
さらに、胴回り弾性体44に関する伸長倍率等の数値は、上述したものに限られず、適宜、変更することができる。
【0052】
また、前後グラフィックシート51,52,151の非肌対向面の側には、非肌対向面の側から肌対向面の側に向けて凹む凹部を設けてもよい。
凹部を形成する一例としては、放電電極と、周面に多数の凸部を有する誘電体被覆ロールとから形成された表面処理装置を使用し、パルス性コロナ放電を繰り返すことにより処理する。放電電極と誘電体被覆ロールとは、一定の間隙を開けて互いに対向配置され、グラフィックシートをロールに密着させた状態でグラフィックシートの下面の側と放電電極との間にエアーギャップを設けながらグラフィックシートを通過させる。放電電極とロールの凸部との間に局所的な絶縁破壊が起こり、放電電極からロールの凸部に向かって放電が始まる。すると、凸部に放電された電流によりグラフィックシート51,52,151に凹部が形成される。
このようにグラフィックシート51,52,151に凹部を形成すれば、ホットメルト接着剤等による内外面シート41,42と、グラフィックシート51,52,151との接合を強固にすることができる。
【0053】
なお、おむつ1,100を構成する部材には、特に明記されていない限りにおいて、本明細書に記載されている材料のほかに、この種の分野において通常用いられている公知の材料を制限なく用いることができる。
また、本明細書において使用されている「第1」および「第2」の用語は、同様の要素、位置等を単に区別するために用いてある。
【符号の説明】
【0054】
1 おむつ
31 吸液構造体
41 内面シート
42 外面シート
44 胴回り弾性体
44a 端部
51 前グラフィックシート(グラフィックシート)
52 後グラフィックシート(グラフィックシート)
54 前グラフィック(グラフィック)
55 後グラフィック(グラフィック)
51a 両側縁
52a 両側縁
71 第1ホットメルト接着剤(第1接着剤)
72 第2ホットメルト接着剤(第2接着剤)
151 グラフィックシート
154 中央部グラフィック
159 側部グラフィック
X 横方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肌対向面および非肌対向面を有し、前後胴回り部材を画成するとともに、前記肌対向面の側に位置する内面シートと、前記非肌対向面の側に位置する外面シートと、前記内外面シートの間に介在して前記前後胴回り部材における横方向へ延びて収縮性を有する胴回り弾性体と、前記胴回り弾性体が設けられていない非弾性領域と、前記外面シートから視認可能なグラフィックを有するグラフィックシートとを備える使い捨ておむつにおいて、
前記胴回り弾性体の端部が、前記グラフィックシートと前記外面シートとの間であって、前記グラフィックシートの外部からその両側縁を横切って前記グラフックシートの内部にまで延びていることを特徴とする前記おむつ。
【請求項2】
前記胴回り弾性体は、その端部が収縮性を有さない一方、前記端部以外の部分は、収縮性を有するものであり、
前記胴回り弾性体の収縮性を有する部分が、前記グラフィックシートの外部から前記両側縁を横切って前記グラフィックシートの内部にまで延びている請求項1に記載のおむつ。
【請求項3】
前記胴回り弾性体の端部が、前記グラフィックの上に位置している請求項1または2に記載のおむつ。
【請求項4】
前記胴回り弾性体の端部が、前記グラフィックシートの両側縁と前記グラフィックとの間に位置している請求項1または2に記載のおむつ。
【請求項5】
前記グラフィックシートは、少なくとも中央部グラフィックと、前記中央部グラフィックの両側にそれぞれ配置した側部グラフィックとを有し、
前記胴回り弾性体の端部が、前記グラフィックシートの両側縁と前記中央部グラフィックとの間に位置している請求項1に記載のおむつ。
【請求項6】
前記胴回り弾性体の非収縮性の端部が、前記側部グラフィックの上に位置する請求項5に記載のおむつ。
【請求項7】
前記グラフィックと前記胴回り弾性体とは、色相、彩度、明度の少なくともいずれか一つが異なる請求項1〜6のいずれかに記載のおむつ。
【請求項8】
前記グラフィックは、明度の低い部分を有する一方、前記胴回り弾性体は、明度が高い請求項1〜7のいずれかに記載のおむつ。
【請求項9】
吸液構造体をさらに備え、
前記内面シートと前記グラフィックシートとを接合する第1接着剤の塗布方向と、前記内面シートと前記吸液構造体とを接合する第2接着剤の塗布方向とが交差する請求項1〜8のいずれかに記載のおむつ。
【請求項10】
芯材を備える吸液構造体をさらに備え、
前記横方向において、前記芯材の幅と前記グラフィックシートの幅とがほぼ等しい請求項1〜8のいずれかに記載のおむつ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−179313(P2012−179313A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45725(P2011−45725)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】