使い捨ておむつ
【課題】性器のサイズに関係なく、装着性の点で優れ、漏れを効果的に防止できる男性用パッドを提供する。
【解決手段】当接部10と、延在部20A,20Bと、着用者の少なくとも陰茎の先端側部分を上側から覆う被覆部と、を有し;当接部10の下方側に陰茎の挿通部1が形成され、被覆部は、左右に分離した、打ち合わせ可能な対としての左右の分離被覆片30A,30Bを有し、着用時において、少なくとも陰茎の先端側部分は、当接部10の着用者の腹側から挿通部1を通して反対側に挿通され、この挿通状態で着用者の陰茎下側が延在部20A,20Bに対向しており、着用者の陰茎上側に対する左右の分離被覆片30A,30Bの打ち合わせによって陰茎上側が被覆され、着用者の少なくとも陰茎の先端側部分が延在部20A,20B及び被覆部で包まれるように構成する。
【解決手段】当接部10と、延在部20A,20Bと、着用者の少なくとも陰茎の先端側部分を上側から覆う被覆部と、を有し;当接部10の下方側に陰茎の挿通部1が形成され、被覆部は、左右に分離した、打ち合わせ可能な対としての左右の分離被覆片30A,30Bを有し、着用時において、少なくとも陰茎の先端側部分は、当接部10の着用者の腹側から挿通部1を通して反対側に挿通され、この挿通状態で着用者の陰茎下側が延在部20A,20Bに対向しており、着用者の陰茎上側に対する左右の分離被覆片30A,30Bの打ち合わせによって陰茎上側が被覆され、着用者の少なくとも陰茎の先端側部分が延在部20A,20B及び被覆部で包まれるように構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、男性用吸収性物品に関する。より詳細には、男性の陰茎の大きさに関係なく、どの着用者にも装着しやすく、尿が腹側へ伝ったとしても、腹もれしない男性用吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
成人向けの排泄物吸収性物品(おむつ)としては、テープタイプ、パンツタイプ等の基本吸収性物品の他に、これらと併用することを想定した、より小型のフラットタイプやパッドタイプと呼ばれるものが市販されており、これらの組み合わせは特にケア施設等の介護現場において汎用されている。すなわち、こう縮が発生している装着者等の場合、上記基本吸収性物品だけでは装着者の身体表面に対して適切にフィットさせることが困難なことがあり、そのような場合、フラットタイプの補助吸収性物品をじゃばら状等の適宜の形状に変形し、身体表面と基本製品との間の隙間(又は隙間が生じやすい部分)に挟んだり、特に装着者が男性のときには円錐状に丸めて陰茎に巻き付けたりする(以下、男性巻きともいう)対応が取られている。
【0003】
袋状のパッドタイプのものとして、特許文献1および特許文献2に記載の発明がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−204755号公報
【特許文献2】特開2011−30962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献2の袋状のパッドタイプのものは、男性器が短い場合には装着が難しい、装着後に外れてしまうことがある。
この点、特許文献1のものでは、装着性の点で優れるが、男性器の向きや状態によって、男性器とパッドとの間に空間ができてしまい、尿がパッドに吸収されず、肌を伝わり腹側から漏れることがある。
この原因の一つに、購入者数を考えれば男性器のサイズに応じて複数のパッドが提供されるものではないので、単一サイズのものに限られがちであることにある。
この点、いわゆる男性巻きである場合には、対象者の男性器のサイズに応じて現場において陰茎に巻き付けられるために、男性器が短い場合などと関係なく装着されるので、装着性が優れ、男性器のサイズ(特に陰茎の径が細いこと)が原因となって、男性器とパッドとの間に空間ができ、漏れも比較的に少ない傾向にある。
【0006】
いわゆる男性巻きは利点があるものの、依然として解決できないのは、装着している過程での男性器の向きや状態によって、たとえば男性器の先端部が腹側に反り返った場合には、パッドからはみ出ることがあり、尿がパッドに吸収されず、肌を伝わり腹側から漏れることがある。
【0007】
使用者のなかには、腹もれを防止するために、陰茎を覆うパッドに加えて、お腹にもう1枚吸収体パッドを置いてモレを防止しており、これでは介護者にとって装着により一層の手間を要しコストがかかるという問題がある。
【0008】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、男性器のサイズに関係なく、装着性の点で優れ、漏れを効果的に防止できる男性用パッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の課題を解決するための請求項1記載の発明として、
着用時において、着用者の左右鼠径部とこれらを着用者の陰茎を含んで跨ぐ領域とで実質的に区画される着用者の鼠径下腹領域に当てられる当接部と、
前記当接部から着用者の下方に延びる延在部と、
前記延在部から連続し、着用者の陰茎を上側から覆う被覆部と、を有し;
前記当接部の下方側に陰茎の挿通部が形成され、
前記被覆部は、左右に分離した、打ち合わせ可能な対としての左右の分離被覆片を有し、
着用時において、少なくとも陰茎の先端側部分は、前記当接部の着用者の腹側から前記挿通部を通して反対側に挿通され、この挿通状態で前記着用者の陰茎下側が前記延在部に対向しており、前記着用者の陰茎上側に対する左右の分離被覆片の打ち合わせによって陰茎上側が被覆され、前記着用者の少なくとも陰茎の先端側部分が前記延在部及び前記被覆部で包まれるように構成されている、
ことを特徴とする男性用吸収性物品が提供される。
【0010】
(作用効果)
当接部の下方側に陰茎の挿通部が形成され、着用時において、少なくとも陰茎の先端側部分は、前記当接部の着用者の腹側から前記挿通部を通して反対側に挿通されるので、挿通状態で前記着用者の陰茎下側が前記延在部に対向する。
他方で、前記着用者の陰茎上側に対しては、主に陰茎の挿通後における左右の分離被覆片の打ち合わせによって、あるいは陰茎のサイズに応じた左右の分離被覆片の打ち合わせ後における陰茎の挿通によって、陰茎上側が被覆され、前記着用者の少なくとも陰茎の先端側部分が前記延在部及び前記被覆部で包まれる。
したがって、対象者の陰茎のサイズに応じた分離被覆片の打ち合わせがなされるので、男性用吸収性物品が外れ難いものとなる。また、陰茎の挿通及び分離被覆片の打ち合わせは煩雑ではなく比較的簡易に行なうことができる点で装着性に優れる。
対象者の陰茎のサイズに応じた分離被覆片の打ち合わせは、延在部及び被覆部との分離を防止して接触状態を確保できるものとなるので、漏れ防止効果が高い。
さらに、仮に腹側に漏れようとしても、当接部の下方側に陰茎の挿通部が形成されているから、逆に、陰茎の挿通状態では、陰茎より臍側に当接部が存在している関係で、漏れた尿を当接部が吸収でき、外部への漏れを防止できる。たとえば、挿通部を通して陰茎を挿通した後に、陰茎の先端側が臍側に反り返った状態で排尿があった場合などにおいて、外部への漏れを防止する効果をもたらす。
【0011】
請求項2記載の発明として、少なくとも、前記当接部、前記延在部及び前記被覆部の挿通した陰茎部に対応する部分は、使用面側が液透過性であり、裏面側が液不透過性であり、それらの間に使用面側から透過して体液の吸収要素が介在されている請求項1記載の男性用吸収性物品が提供される。
【0012】
(作用効果)
少なくとも、当接部、延在部及び被覆部の挿通した陰茎部に対応する部分は、使用面側が液透過性であり、裏面側が液不透過性であり、それらの間に使用面側から透過して体液の吸収要素が介在されているために、排尿があったとき、使用面側から尿を透過して吸収要素で吸収できる。
【0013】
請求項3記載の発明として、前記挿通部は、下方が窄まり、上方が膨らんだほぼ液滴形状をなしている請求項1記載の男性用吸収性物品が提供される。
【0014】
(作用効果)
挿通部は、下方が窄まり、上方が膨らんだほぼ液滴形状をなしていると、陰茎を挿入した後は、下方の窄まり部分の縁が、陰茎の外周面に接するようにし、陰茎の外周面と挿通部の縁との間からの漏れを抑制できる。また、挿通部の形状としてたとえば円形である場合には、それ以上の径に開口することはないが、本発明に従って、非使用時には上方が膨らんだほぼ液滴形状の挿通部であると、特に挿通部の下方の窄まり部分の縁が立体的に形状変化し、非使用時の液滴形状の最大径部より挿通部全体がさらに大きく開口し、陰茎の挿通を許容する。したがって、液滴形状の最大径部の径を小さくし、陰茎の外周面に挿通部の縁を積極的に接触させるようにすることにより、漏れの抑制効果を高いものとすることができる。
【0015】
請求項4記載の発明として、前記挿通部の下方側においてその左右に延びる、または前記挿通部を横切って左右に延びる、予め形成されたあるいは使用者の操作によって破断される切欠部が形成されている請求項1または3に記載の男性用吸収性物品が提供される。
【0016】
(作用効果)
切欠部が形成されていると、陰茎を挿通後において、陰茎の上下方向の変形力の作用は、当接部に対する延在部の持ち上がり変形しようとする力となり、その変形力に応じて、切欠部が開口するようになるので、変形抵抗力はなく、そのまま変形し、延在部の変形に追従し易くなり、陰茎の外周面と挿通部の縁との接触状態の維持が安定し、漏れの抑制効果が高いものとなる。
【0017】
請求項5記載の発明として、前記切欠部は、前記当接部と前記延在部との境界に位置し、その境界部分には前記吸収要素が設けられていない請求項4記載の男性用吸収性物品が提供される。
【0018】
(作用効果)
吸収要素が設けられていない切欠部が、変形力の作用によって容易に開口するようになり、請求項4の作用効果が顕著にあらわれるようになる。
【0019】
請求項6記載の発明として、前記延在部と前記分離被覆片との境界部分には前記吸収要素が設けられていない請求項2記載の男性用吸収性物品が提供される。
【0020】
(作用効果)
分離被覆片が延在部との境界部分を境にして容易に変形し、陰茎を好適に被覆できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、男性器のサイズに関係なく、装着性の点で優れ、漏れを効果的に防止できるなどの利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明にかかる男性用吸収性物品の製品化前の展開平面図である。
【図2】製品状態の側面図である。
【図3】図2の状態から製品を拡げて着用者に当てがう前の段階の斜視図である。
【図4】製品を着用者に当てがう段階の状態を、図1の展開状態との関係で示した平面図である。
【図5】製品を着用者に当てがった状態の着用者に向き合った正面図である。
【図6】本発明にかかる男性用吸収性物品に着用者の陰茎を挿入した状態の側面図である。
【図7】陰茎と挿通部との関係の説明用斜視図である。
【図8】陰茎と挿通部との関係の説明用図である。
【図9】他の挿通部の左右に切欠部を形成した例の平面図である。
【図10】図9の態様における陰茎と挿通部との関係の説明用平面図である。
【図11】着用者の鼠径下腹領域Zを示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の吸収性物品を実施するための形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
以下の説明において、「上方」及び「下方」などにおける上下方向とは、本発明の吸収性物品を図5のように着用した状態における上下(伸張)方向をいう。「左右」とは、同じく本発明の吸収性物品を図5のように着用した状態における左右方向(体の中心に対し左右幅方向)をいう。
また、「陰茎下側」とは、陰茎のうち精巣に近い側をいい、「陰茎上側」とは、陰茎下側と反対の側をいう。
【0024】
本発明の男性用吸収性物品は、着用時において、図5に示すように、着用者Mの左右鼠径部m、mとこれらを着用者Mの陰茎Pを含んで跨ぐ領域とで実質的に区画される着用者の鼠径下腹領域Z(図11)に当てられる当接部10と、当接部10から着用者の下方に延びる延在部20A,20Bと、延在部20A,20Bから連続し、着用者の少なくとも陰茎Pの先端側部分を上側から覆う被覆部30と、を有し;当接部10の下方側に陰茎Pの挿通部1が形成され、被覆部30は、左右に分離した、打ち合わせ可能な対としての左右の分離被覆片30A,30Bを有し、着用時において、少なくとも陰茎Pの先端側部分は、当接部10の着用者の腹側から挿通部1を通して反対側に挿通され、この挿通状態で着用者Mの陰茎P下側が延在部20A,20Bに対向しており、着用者Mの陰茎P上側に対する左右の分離被覆片30A,30Bの打ち合わせによって陰茎P上側が被覆され、着用者の少なくとも陰茎Pの先端側部分が延在部20A,20B及び被覆部30で包まれるように構成されているものである。
【0025】
本発明の男性用吸収性物品は、生産段階で、図1〜図3に示すように、液不透過性の裏面シート51に対し、綿状パルプなどからかる吸収要素52を設け、その反対側(使用面側)が液透過性の表面シート53を設け、たとえば図1に示すL字形に成形しておく。
この場合、少なくとも当接部10、延在部20A,20B、並びに分離被覆片30A(好適には分離被覆片30Bも)の所定の個所には、吸収要素52を設けておく。
【0026】
他方、生産の最終段階で、L字形の開放側縁相互を、たとえば図1及び図2の符号Sで示す部分を熱溶着やホットメルト接着剤などにより接合しておく。また、陰茎Pの適宜形状の挿通部1を形成しておく。図示例の挿通部1形状は、下方が窄まり、上方が膨らんだほぼ液滴形状をなしている。挿通部1形状は、単なる円形でもよいが、液滴形状であると後述する利点をもたらす。
【0027】
さらに実施の形態では、L字形の境界部分に、挿通部1の下方側においてその左右に延びる(着用状態において左右に延びる)、予め形成されたあるいはミシン目などにより使用者の操作によって破断される切欠部40A,40Bが形成されている。
【0028】
また、図2、図4及び図5が参照されるように、左右の分離被覆片30A,30Bの打ち合わせ状態を維持し、陰茎P上側の被覆状態維持するために、分離被覆片30Aの角部に接合部60が設けられている。接合部60は、粘着剤塗布部60aを剥離テープ60bで覆ったもので、使用において、剥離テープ60bを剥離除去して粘着剤塗布部60aを露出させて、分離被覆片30A上に分離被覆片30Bを打ち合わせ状態(前身頃の重ね合わせ状態)にする。
【0029】
一方、先に説明した、吸収要素52は、剛性を与え、折りを阻害する性質を示すので、最終的に図4及び図5の折り成形を目的からして、図1〜図3に示す谷折り線(一点鎖線)で谷折りする形態が望ましいので、その谷折り線の個所には、吸収要素52を設けないようにするのが望ましい。
【0030】
本発明の男性用吸収性物品の使用に際しては、図2の状態から製品を、図3のように拡げて着用者の局部に当てがう。その際に、陰茎Pを裏面側から使用面側に向かって挿通部1を挿通する。この挿通状態を図6及び図7に示した。
【0031】
また、剥離テープ60bを剥離除去して粘着剤塗布部60aを露出させて、図1が参照される谷折り線La,Lbを境にして谷折りし、図4〜図6に示すように、分離被覆片30A上に分離被覆片30Bを打ち合わせ状態(前身頃の重ね合わせ状態)にする。
その結果、少なくとも陰茎Pの先端側部分は、当接部10の裏面側から挿通部1を通して使用面側に挿通され、この挿通状態で着用者Mの陰茎P下側が延在部20A,20Bに対向しており、着用者Mの陰茎P上側に対する左右の分離被覆片30A,30Bの打ち合わせによって陰茎P上側が被覆される。この被覆状態は、接合部60によって維持される。
【0032】
この場合において、切欠部40A,40Bが形成されていると、陰茎Pを挿通後において、陰茎の上下方向の変形力の作用(寝ている姿勢の変化による変形力)は、当接部10に対する延在部20A,20Bの持ち上がり変形しようとする力となり、その変形力に応じて、切欠部40A,40Bが、図6のように開口するようになるので、変形抵抗力はなく、そのまま変形し、延在部の変形に追従し易くなり、陰茎Pの外周面と挿通部の縁との接触状態の維持が安定し、漏れの抑制効果が高いものとなる。
【0033】
挿通部1の形状として、下方が窄まり、上方が膨らんだほぼ液滴形状をなしていると、陰茎Pを挿入した後は、図7に示すように、下方の窄まり部分の縁が、陰茎の下側の外周面に接するようにし、陰茎の外周面と挿通部の縁との間からの漏れを抑制できる。
また、挿通部の形状としてたとえば円形である場合には、それ以上の径に開口することはないが、実施の形態に従って、非使用時には上方が膨らんだほぼ液滴形状の挿通部1であると、特に挿通部1の下方の窄まり部分の縁が立体的に形状変化し、図8に示すように、非使用時の液滴形状の径部D0より挿通部全体がさらに大きく開口して径部D1になり、陰茎の挿通を許容する。したがって、液滴形状の最大径部の径を小さくし、陰茎の外周面に挿通部の縁を積極的に接触させるようにすることにより、漏れの抑制効果を高いものとすることができる。
【0034】
以上のように、本発明においては、当接部10の下方側に陰茎Pの挿通部1が形成され、着用時において、少なくとも陰茎Pの先端側部分は、当接部10の着用者の腹側から前記挿通部1を通して反対側に挿通されるので、挿通状態で着用者Mの陰茎P下側が前記延在部20A,20Bに対向する。
他方で、着用者Mの陰茎P上側に対しては、主に陰茎Pの挿通後における左右の分離被覆片30A,30Bの打ち合わせによって、あるいは陰茎Pのサイズに応じた左右の分離被覆片30A,30Bの打ち合わせ後における陰茎の挿通によって、陰茎P上側が被覆され、着用者Mの少なくとも陰茎Pの先端側部分が延在部20A,20B及び被覆部30で包まれる。
したがって、対象者の陰茎Pのサイズに応じた分離被覆片30A,30Bの打ち合わせがなされるので、男性用吸収性物品が外れ難いものとなる。また、陰茎Pの挿通及び分離被覆片30A,30Bの打ち合わせは煩雑ではなく比較的簡易に行なうことができる点で装着性に優れる。
対象者Mの陰茎Pのサイズに応じた分離被覆片30A,30Bの打ち合わせは、延在部20A,20B及び被覆部30との分離を防止して接触状態を確保できるものとなるので、漏れ防止効果が高い。
さらに、仮に腹側に漏れようとしても、当接部の下方側に陰茎Pの挿通部1が形成されているから、逆に、陰茎Pの挿通状態では、陰茎Pより臍側に当接部が存在している関係で、漏れた尿を当接部が吸収でき、外部への漏れを防止できる。たとえば、挿通部1を通して陰茎Pを挿通した後に、陰茎Pの先端側が臍側に反り返った状態で排尿があった場合などにおいて、外部への漏れを防止する効果をもたらす。
【0035】
ところで、切欠部の位置としては、図9及び図10に示すように、挿通部1を横切って左右に延びる切欠部41A,41Bでもよい。切欠部41A,41Bも同様に、予め形成されたあるいは使用者の操作によって破断されるものでもよい。
この切欠部41A,41Bは挿通部1と相俟って、たとえば図10のように変形が可能である。
【0036】
実施の形態における液透過性表面シート53としては、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維は、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高でソフトである点で優れている。肌当接面シートに多数の透孔を形成した場合には、尿などが速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。
【0037】
液不透過性裏面シート51としては、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどの液不透過性プラスチックシートが用いられるが、近年はムレ防止の点から透湿性を有するものが好適に用いられる。この液不透過性裏面シート51は、たとえばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂中に無機充填材を溶融混練してシートを形成した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートである。
【0038】
吸収要素52としては、公知のもの、例えばパルプ繊維の積繊体、セルロースアセテート等のフィラメントの集合体、あるいは不織布を基本とし、必要に応じて高吸収性ポリマーを混合、固着等してなるものを用いることができる。この吸収要素52吸収体12は、形状及びポリマー保持等のため、必要に応じてクレープ紙等の、液透過性及び液保持性を有する包装シートによって包装することができる。吸収要素52吸収体12の形状は、図示形態のように長方形状や三角形状とする他、円状のものや、これらの形状のものを任意に組み合わせたものとすることができる。
【0039】
なお、本発明における着用者の左右鼠径部とこれらを着用者の陰茎を含んで跨ぐ領域とで実質的に区画される着用者の鼠径下腹領域とは、これを厳格に介するべきでなく、陰茎の挿通を行なうことに適した部位であって、臍下の下腹部であると概略的に解するべきものである。
【符号の説明】
【0040】
1 挿通部
10 当接部
20A,20B 延在部
30 被覆部
30A,30B 分離被覆片
M 着用者
P 陰茎
【技術分野】
【0001】
本発明は、男性用吸収性物品に関する。より詳細には、男性の陰茎の大きさに関係なく、どの着用者にも装着しやすく、尿が腹側へ伝ったとしても、腹もれしない男性用吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
成人向けの排泄物吸収性物品(おむつ)としては、テープタイプ、パンツタイプ等の基本吸収性物品の他に、これらと併用することを想定した、より小型のフラットタイプやパッドタイプと呼ばれるものが市販されており、これらの組み合わせは特にケア施設等の介護現場において汎用されている。すなわち、こう縮が発生している装着者等の場合、上記基本吸収性物品だけでは装着者の身体表面に対して適切にフィットさせることが困難なことがあり、そのような場合、フラットタイプの補助吸収性物品をじゃばら状等の適宜の形状に変形し、身体表面と基本製品との間の隙間(又は隙間が生じやすい部分)に挟んだり、特に装着者が男性のときには円錐状に丸めて陰茎に巻き付けたりする(以下、男性巻きともいう)対応が取られている。
【0003】
袋状のパッドタイプのものとして、特許文献1および特許文献2に記載の発明がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−204755号公報
【特許文献2】特開2011−30962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献2の袋状のパッドタイプのものは、男性器が短い場合には装着が難しい、装着後に外れてしまうことがある。
この点、特許文献1のものでは、装着性の点で優れるが、男性器の向きや状態によって、男性器とパッドとの間に空間ができてしまい、尿がパッドに吸収されず、肌を伝わり腹側から漏れることがある。
この原因の一つに、購入者数を考えれば男性器のサイズに応じて複数のパッドが提供されるものではないので、単一サイズのものに限られがちであることにある。
この点、いわゆる男性巻きである場合には、対象者の男性器のサイズに応じて現場において陰茎に巻き付けられるために、男性器が短い場合などと関係なく装着されるので、装着性が優れ、男性器のサイズ(特に陰茎の径が細いこと)が原因となって、男性器とパッドとの間に空間ができ、漏れも比較的に少ない傾向にある。
【0006】
いわゆる男性巻きは利点があるものの、依然として解決できないのは、装着している過程での男性器の向きや状態によって、たとえば男性器の先端部が腹側に反り返った場合には、パッドからはみ出ることがあり、尿がパッドに吸収されず、肌を伝わり腹側から漏れることがある。
【0007】
使用者のなかには、腹もれを防止するために、陰茎を覆うパッドに加えて、お腹にもう1枚吸収体パッドを置いてモレを防止しており、これでは介護者にとって装着により一層の手間を要しコストがかかるという問題がある。
【0008】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、男性器のサイズに関係なく、装着性の点で優れ、漏れを効果的に防止できる男性用パッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の課題を解決するための請求項1記載の発明として、
着用時において、着用者の左右鼠径部とこれらを着用者の陰茎を含んで跨ぐ領域とで実質的に区画される着用者の鼠径下腹領域に当てられる当接部と、
前記当接部から着用者の下方に延びる延在部と、
前記延在部から連続し、着用者の陰茎を上側から覆う被覆部と、を有し;
前記当接部の下方側に陰茎の挿通部が形成され、
前記被覆部は、左右に分離した、打ち合わせ可能な対としての左右の分離被覆片を有し、
着用時において、少なくとも陰茎の先端側部分は、前記当接部の着用者の腹側から前記挿通部を通して反対側に挿通され、この挿通状態で前記着用者の陰茎下側が前記延在部に対向しており、前記着用者の陰茎上側に対する左右の分離被覆片の打ち合わせによって陰茎上側が被覆され、前記着用者の少なくとも陰茎の先端側部分が前記延在部及び前記被覆部で包まれるように構成されている、
ことを特徴とする男性用吸収性物品が提供される。
【0010】
(作用効果)
当接部の下方側に陰茎の挿通部が形成され、着用時において、少なくとも陰茎の先端側部分は、前記当接部の着用者の腹側から前記挿通部を通して反対側に挿通されるので、挿通状態で前記着用者の陰茎下側が前記延在部に対向する。
他方で、前記着用者の陰茎上側に対しては、主に陰茎の挿通後における左右の分離被覆片の打ち合わせによって、あるいは陰茎のサイズに応じた左右の分離被覆片の打ち合わせ後における陰茎の挿通によって、陰茎上側が被覆され、前記着用者の少なくとも陰茎の先端側部分が前記延在部及び前記被覆部で包まれる。
したがって、対象者の陰茎のサイズに応じた分離被覆片の打ち合わせがなされるので、男性用吸収性物品が外れ難いものとなる。また、陰茎の挿通及び分離被覆片の打ち合わせは煩雑ではなく比較的簡易に行なうことができる点で装着性に優れる。
対象者の陰茎のサイズに応じた分離被覆片の打ち合わせは、延在部及び被覆部との分離を防止して接触状態を確保できるものとなるので、漏れ防止効果が高い。
さらに、仮に腹側に漏れようとしても、当接部の下方側に陰茎の挿通部が形成されているから、逆に、陰茎の挿通状態では、陰茎より臍側に当接部が存在している関係で、漏れた尿を当接部が吸収でき、外部への漏れを防止できる。たとえば、挿通部を通して陰茎を挿通した後に、陰茎の先端側が臍側に反り返った状態で排尿があった場合などにおいて、外部への漏れを防止する効果をもたらす。
【0011】
請求項2記載の発明として、少なくとも、前記当接部、前記延在部及び前記被覆部の挿通した陰茎部に対応する部分は、使用面側が液透過性であり、裏面側が液不透過性であり、それらの間に使用面側から透過して体液の吸収要素が介在されている請求項1記載の男性用吸収性物品が提供される。
【0012】
(作用効果)
少なくとも、当接部、延在部及び被覆部の挿通した陰茎部に対応する部分は、使用面側が液透過性であり、裏面側が液不透過性であり、それらの間に使用面側から透過して体液の吸収要素が介在されているために、排尿があったとき、使用面側から尿を透過して吸収要素で吸収できる。
【0013】
請求項3記載の発明として、前記挿通部は、下方が窄まり、上方が膨らんだほぼ液滴形状をなしている請求項1記載の男性用吸収性物品が提供される。
【0014】
(作用効果)
挿通部は、下方が窄まり、上方が膨らんだほぼ液滴形状をなしていると、陰茎を挿入した後は、下方の窄まり部分の縁が、陰茎の外周面に接するようにし、陰茎の外周面と挿通部の縁との間からの漏れを抑制できる。また、挿通部の形状としてたとえば円形である場合には、それ以上の径に開口することはないが、本発明に従って、非使用時には上方が膨らんだほぼ液滴形状の挿通部であると、特に挿通部の下方の窄まり部分の縁が立体的に形状変化し、非使用時の液滴形状の最大径部より挿通部全体がさらに大きく開口し、陰茎の挿通を許容する。したがって、液滴形状の最大径部の径を小さくし、陰茎の外周面に挿通部の縁を積極的に接触させるようにすることにより、漏れの抑制効果を高いものとすることができる。
【0015】
請求項4記載の発明として、前記挿通部の下方側においてその左右に延びる、または前記挿通部を横切って左右に延びる、予め形成されたあるいは使用者の操作によって破断される切欠部が形成されている請求項1または3に記載の男性用吸収性物品が提供される。
【0016】
(作用効果)
切欠部が形成されていると、陰茎を挿通後において、陰茎の上下方向の変形力の作用は、当接部に対する延在部の持ち上がり変形しようとする力となり、その変形力に応じて、切欠部が開口するようになるので、変形抵抗力はなく、そのまま変形し、延在部の変形に追従し易くなり、陰茎の外周面と挿通部の縁との接触状態の維持が安定し、漏れの抑制効果が高いものとなる。
【0017】
請求項5記載の発明として、前記切欠部は、前記当接部と前記延在部との境界に位置し、その境界部分には前記吸収要素が設けられていない請求項4記載の男性用吸収性物品が提供される。
【0018】
(作用効果)
吸収要素が設けられていない切欠部が、変形力の作用によって容易に開口するようになり、請求項4の作用効果が顕著にあらわれるようになる。
【0019】
請求項6記載の発明として、前記延在部と前記分離被覆片との境界部分には前記吸収要素が設けられていない請求項2記載の男性用吸収性物品が提供される。
【0020】
(作用効果)
分離被覆片が延在部との境界部分を境にして容易に変形し、陰茎を好適に被覆できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、男性器のサイズに関係なく、装着性の点で優れ、漏れを効果的に防止できるなどの利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明にかかる男性用吸収性物品の製品化前の展開平面図である。
【図2】製品状態の側面図である。
【図3】図2の状態から製品を拡げて着用者に当てがう前の段階の斜視図である。
【図4】製品を着用者に当てがう段階の状態を、図1の展開状態との関係で示した平面図である。
【図5】製品を着用者に当てがった状態の着用者に向き合った正面図である。
【図6】本発明にかかる男性用吸収性物品に着用者の陰茎を挿入した状態の側面図である。
【図7】陰茎と挿通部との関係の説明用斜視図である。
【図8】陰茎と挿通部との関係の説明用図である。
【図9】他の挿通部の左右に切欠部を形成した例の平面図である。
【図10】図9の態様における陰茎と挿通部との関係の説明用平面図である。
【図11】着用者の鼠径下腹領域Zを示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の吸収性物品を実施するための形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
以下の説明において、「上方」及び「下方」などにおける上下方向とは、本発明の吸収性物品を図5のように着用した状態における上下(伸張)方向をいう。「左右」とは、同じく本発明の吸収性物品を図5のように着用した状態における左右方向(体の中心に対し左右幅方向)をいう。
また、「陰茎下側」とは、陰茎のうち精巣に近い側をいい、「陰茎上側」とは、陰茎下側と反対の側をいう。
【0024】
本発明の男性用吸収性物品は、着用時において、図5に示すように、着用者Mの左右鼠径部m、mとこれらを着用者Mの陰茎Pを含んで跨ぐ領域とで実質的に区画される着用者の鼠径下腹領域Z(図11)に当てられる当接部10と、当接部10から着用者の下方に延びる延在部20A,20Bと、延在部20A,20Bから連続し、着用者の少なくとも陰茎Pの先端側部分を上側から覆う被覆部30と、を有し;当接部10の下方側に陰茎Pの挿通部1が形成され、被覆部30は、左右に分離した、打ち合わせ可能な対としての左右の分離被覆片30A,30Bを有し、着用時において、少なくとも陰茎Pの先端側部分は、当接部10の着用者の腹側から挿通部1を通して反対側に挿通され、この挿通状態で着用者Mの陰茎P下側が延在部20A,20Bに対向しており、着用者Mの陰茎P上側に対する左右の分離被覆片30A,30Bの打ち合わせによって陰茎P上側が被覆され、着用者の少なくとも陰茎Pの先端側部分が延在部20A,20B及び被覆部30で包まれるように構成されているものである。
【0025】
本発明の男性用吸収性物品は、生産段階で、図1〜図3に示すように、液不透過性の裏面シート51に対し、綿状パルプなどからかる吸収要素52を設け、その反対側(使用面側)が液透過性の表面シート53を設け、たとえば図1に示すL字形に成形しておく。
この場合、少なくとも当接部10、延在部20A,20B、並びに分離被覆片30A(好適には分離被覆片30Bも)の所定の個所には、吸収要素52を設けておく。
【0026】
他方、生産の最終段階で、L字形の開放側縁相互を、たとえば図1及び図2の符号Sで示す部分を熱溶着やホットメルト接着剤などにより接合しておく。また、陰茎Pの適宜形状の挿通部1を形成しておく。図示例の挿通部1形状は、下方が窄まり、上方が膨らんだほぼ液滴形状をなしている。挿通部1形状は、単なる円形でもよいが、液滴形状であると後述する利点をもたらす。
【0027】
さらに実施の形態では、L字形の境界部分に、挿通部1の下方側においてその左右に延びる(着用状態において左右に延びる)、予め形成されたあるいはミシン目などにより使用者の操作によって破断される切欠部40A,40Bが形成されている。
【0028】
また、図2、図4及び図5が参照されるように、左右の分離被覆片30A,30Bの打ち合わせ状態を維持し、陰茎P上側の被覆状態維持するために、分離被覆片30Aの角部に接合部60が設けられている。接合部60は、粘着剤塗布部60aを剥離テープ60bで覆ったもので、使用において、剥離テープ60bを剥離除去して粘着剤塗布部60aを露出させて、分離被覆片30A上に分離被覆片30Bを打ち合わせ状態(前身頃の重ね合わせ状態)にする。
【0029】
一方、先に説明した、吸収要素52は、剛性を与え、折りを阻害する性質を示すので、最終的に図4及び図5の折り成形を目的からして、図1〜図3に示す谷折り線(一点鎖線)で谷折りする形態が望ましいので、その谷折り線の個所には、吸収要素52を設けないようにするのが望ましい。
【0030】
本発明の男性用吸収性物品の使用に際しては、図2の状態から製品を、図3のように拡げて着用者の局部に当てがう。その際に、陰茎Pを裏面側から使用面側に向かって挿通部1を挿通する。この挿通状態を図6及び図7に示した。
【0031】
また、剥離テープ60bを剥離除去して粘着剤塗布部60aを露出させて、図1が参照される谷折り線La,Lbを境にして谷折りし、図4〜図6に示すように、分離被覆片30A上に分離被覆片30Bを打ち合わせ状態(前身頃の重ね合わせ状態)にする。
その結果、少なくとも陰茎Pの先端側部分は、当接部10の裏面側から挿通部1を通して使用面側に挿通され、この挿通状態で着用者Mの陰茎P下側が延在部20A,20Bに対向しており、着用者Mの陰茎P上側に対する左右の分離被覆片30A,30Bの打ち合わせによって陰茎P上側が被覆される。この被覆状態は、接合部60によって維持される。
【0032】
この場合において、切欠部40A,40Bが形成されていると、陰茎Pを挿通後において、陰茎の上下方向の変形力の作用(寝ている姿勢の変化による変形力)は、当接部10に対する延在部20A,20Bの持ち上がり変形しようとする力となり、その変形力に応じて、切欠部40A,40Bが、図6のように開口するようになるので、変形抵抗力はなく、そのまま変形し、延在部の変形に追従し易くなり、陰茎Pの外周面と挿通部の縁との接触状態の維持が安定し、漏れの抑制効果が高いものとなる。
【0033】
挿通部1の形状として、下方が窄まり、上方が膨らんだほぼ液滴形状をなしていると、陰茎Pを挿入した後は、図7に示すように、下方の窄まり部分の縁が、陰茎の下側の外周面に接するようにし、陰茎の外周面と挿通部の縁との間からの漏れを抑制できる。
また、挿通部の形状としてたとえば円形である場合には、それ以上の径に開口することはないが、実施の形態に従って、非使用時には上方が膨らんだほぼ液滴形状の挿通部1であると、特に挿通部1の下方の窄まり部分の縁が立体的に形状変化し、図8に示すように、非使用時の液滴形状の径部D0より挿通部全体がさらに大きく開口して径部D1になり、陰茎の挿通を許容する。したがって、液滴形状の最大径部の径を小さくし、陰茎の外周面に挿通部の縁を積極的に接触させるようにすることにより、漏れの抑制効果を高いものとすることができる。
【0034】
以上のように、本発明においては、当接部10の下方側に陰茎Pの挿通部1が形成され、着用時において、少なくとも陰茎Pの先端側部分は、当接部10の着用者の腹側から前記挿通部1を通して反対側に挿通されるので、挿通状態で着用者Mの陰茎P下側が前記延在部20A,20Bに対向する。
他方で、着用者Mの陰茎P上側に対しては、主に陰茎Pの挿通後における左右の分離被覆片30A,30Bの打ち合わせによって、あるいは陰茎Pのサイズに応じた左右の分離被覆片30A,30Bの打ち合わせ後における陰茎の挿通によって、陰茎P上側が被覆され、着用者Mの少なくとも陰茎Pの先端側部分が延在部20A,20B及び被覆部30で包まれる。
したがって、対象者の陰茎Pのサイズに応じた分離被覆片30A,30Bの打ち合わせがなされるので、男性用吸収性物品が外れ難いものとなる。また、陰茎Pの挿通及び分離被覆片30A,30Bの打ち合わせは煩雑ではなく比較的簡易に行なうことができる点で装着性に優れる。
対象者Mの陰茎Pのサイズに応じた分離被覆片30A,30Bの打ち合わせは、延在部20A,20B及び被覆部30との分離を防止して接触状態を確保できるものとなるので、漏れ防止効果が高い。
さらに、仮に腹側に漏れようとしても、当接部の下方側に陰茎Pの挿通部1が形成されているから、逆に、陰茎Pの挿通状態では、陰茎Pより臍側に当接部が存在している関係で、漏れた尿を当接部が吸収でき、外部への漏れを防止できる。たとえば、挿通部1を通して陰茎Pを挿通した後に、陰茎Pの先端側が臍側に反り返った状態で排尿があった場合などにおいて、外部への漏れを防止する効果をもたらす。
【0035】
ところで、切欠部の位置としては、図9及び図10に示すように、挿通部1を横切って左右に延びる切欠部41A,41Bでもよい。切欠部41A,41Bも同様に、予め形成されたあるいは使用者の操作によって破断されるものでもよい。
この切欠部41A,41Bは挿通部1と相俟って、たとえば図10のように変形が可能である。
【0036】
実施の形態における液透過性表面シート53としては、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維は、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高でソフトである点で優れている。肌当接面シートに多数の透孔を形成した場合には、尿などが速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。
【0037】
液不透過性裏面シート51としては、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどの液不透過性プラスチックシートが用いられるが、近年はムレ防止の点から透湿性を有するものが好適に用いられる。この液不透過性裏面シート51は、たとえばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂中に無機充填材を溶融混練してシートを形成した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートである。
【0038】
吸収要素52としては、公知のもの、例えばパルプ繊維の積繊体、セルロースアセテート等のフィラメントの集合体、あるいは不織布を基本とし、必要に応じて高吸収性ポリマーを混合、固着等してなるものを用いることができる。この吸収要素52吸収体12は、形状及びポリマー保持等のため、必要に応じてクレープ紙等の、液透過性及び液保持性を有する包装シートによって包装することができる。吸収要素52吸収体12の形状は、図示形態のように長方形状や三角形状とする他、円状のものや、これらの形状のものを任意に組み合わせたものとすることができる。
【0039】
なお、本発明における着用者の左右鼠径部とこれらを着用者の陰茎を含んで跨ぐ領域とで実質的に区画される着用者の鼠径下腹領域とは、これを厳格に介するべきでなく、陰茎の挿通を行なうことに適した部位であって、臍下の下腹部であると概略的に解するべきものである。
【符号の説明】
【0040】
1 挿通部
10 当接部
20A,20B 延在部
30 被覆部
30A,30B 分離被覆片
M 着用者
P 陰茎
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用時において、着用者の左右鼠径部とこれらを着用者の陰茎を含んで跨ぐ領域とで実質的に区画される着用者の鼠径下腹領域に当てられる当接部と、
前記当接部から着用者の下方に延びる延在部と、
前記延在部から連続し、着用者の少なくとも陰茎の先端側部分を上側から覆う被覆部と、を有し;
前記当接部の下方側に陰茎の挿通部が形成され、
前記被覆部は、左右に分離した、打ち合わせ可能な対としての左右の分離被覆片を有し、
着用時において、少なくとも陰茎の先端側部分は、前記当接部の着用者の腹側から前記挿通部を通して反対側に挿通され、この挿通状態で前記着用者の陰茎下側が前記延在部に対向しており、前記着用者の陰茎上側に対する左右の分離被覆片の打ち合わせによって陰茎上側が被覆され、前記着用者の少なくとも陰茎の先端側部分が前記延在部及び前記被覆部で包まれるように構成されている、
ことを特徴とする男性用吸収性物品
【請求項2】
少なくとも、前記当接部、前記延在部及び前記被覆部の挿通した陰茎部に対応する部分は、使用面側が液透過性であり、裏面側が液不透過性であり、それらの間に使用面側から透過して体液の吸収要素が介在されている請求項1記載の男性用吸収性物品。
【請求項3】
前記挿通部は、下方が窄まり、上方が膨らんだほぼ液滴形状をなしている請求項1記載の男性用吸収性物品。
【請求項4】
前記挿通部より下方側においてその左右に延びる、または前記挿通部を横切って左右に延びる、予め形成されたあるいは使用者の操作によって破断される切欠部が形成されている請求項1または3に記載の男性用吸収性物品。
【請求項5】
前記切欠部は、前記当接部と前記延在部との境界に位置し、その境界部分には前記吸収要素が設けられていない請求項4記載の男性用吸収性物品。
【請求項6】
前記延在部と前記分離被覆片との境界部分には前記吸収要素が設けられていない請求項2記載の男性用吸収性物品。
【請求項1】
着用時において、着用者の左右鼠径部とこれらを着用者の陰茎を含んで跨ぐ領域とで実質的に区画される着用者の鼠径下腹領域に当てられる当接部と、
前記当接部から着用者の下方に延びる延在部と、
前記延在部から連続し、着用者の少なくとも陰茎の先端側部分を上側から覆う被覆部と、を有し;
前記当接部の下方側に陰茎の挿通部が形成され、
前記被覆部は、左右に分離した、打ち合わせ可能な対としての左右の分離被覆片を有し、
着用時において、少なくとも陰茎の先端側部分は、前記当接部の着用者の腹側から前記挿通部を通して反対側に挿通され、この挿通状態で前記着用者の陰茎下側が前記延在部に対向しており、前記着用者の陰茎上側に対する左右の分離被覆片の打ち合わせによって陰茎上側が被覆され、前記着用者の少なくとも陰茎の先端側部分が前記延在部及び前記被覆部で包まれるように構成されている、
ことを特徴とする男性用吸収性物品
【請求項2】
少なくとも、前記当接部、前記延在部及び前記被覆部の挿通した陰茎部に対応する部分は、使用面側が液透過性であり、裏面側が液不透過性であり、それらの間に使用面側から透過して体液の吸収要素が介在されている請求項1記載の男性用吸収性物品。
【請求項3】
前記挿通部は、下方が窄まり、上方が膨らんだほぼ液滴形状をなしている請求項1記載の男性用吸収性物品。
【請求項4】
前記挿通部より下方側においてその左右に延びる、または前記挿通部を横切って左右に延びる、予め形成されたあるいは使用者の操作によって破断される切欠部が形成されている請求項1または3に記載の男性用吸収性物品。
【請求項5】
前記切欠部は、前記当接部と前記延在部との境界に位置し、その境界部分には前記吸収要素が設けられていない請求項4記載の男性用吸収性物品。
【請求項6】
前記延在部と前記分離被覆片との境界部分には前記吸収要素が設けられていない請求項2記載の男性用吸収性物品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−205612(P2012−205612A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71355(P2011−71355)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】
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