使い捨ておむつ
【課題】おむつの股下被包部の側縁部(例えばレッグ開口部の周縁部)の伸縮性、柔軟性、クッション性に優れ、容易に製造することができ、快適な着用感を得られる使い捨ておむつを提供する。
【解決手段】着用者の胴周りを被包する前被包部及び後被包部と、吸収体が配置され、着用者の股下を被包する股下被包部とを有し、少なくとも股下被包部の左右の側縁部に伸縮性不織布からなる伸縮部80が形成され、伸縮部80は股下被包部の側縁に沿う方向に収縮するように形成されており、股下被包部の肌当接面の一部に撥水性不織布からなる通気路形成シート82が配置され、通気路形成シート82は、伸張状態の伸縮部80に積層され、通気路形成シート82と伸張状態の伸縮部80とが、伸縮部80の収縮方向に向かって間欠的に形成された接合部84により接合されている使い捨ておむつ。
【解決手段】着用者の胴周りを被包する前被包部及び後被包部と、吸収体が配置され、着用者の股下を被包する股下被包部とを有し、少なくとも股下被包部の左右の側縁部に伸縮性不織布からなる伸縮部80が形成され、伸縮部80は股下被包部の側縁に沿う方向に収縮するように形成されており、股下被包部の肌当接面の一部に撥水性不織布からなる通気路形成シート82が配置され、通気路形成シート82は、伸張状態の伸縮部80に積層され、通気路形成シート82と伸張状態の伸縮部80とが、伸縮部80の収縮方向に向かって間欠的に形成された接合部84により接合されている使い捨ておむつ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつに関するものである。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつは、着用者の腰周りを被包するように装着される吸収性物品であり、排泄物を吸収・保持させるための吸収体を備えている。
【0003】
前記のような使い捨ておむつにおいては、股下を被包する部分の側縁に沿って(例えばレッグ開口部の周縁に沿って)、伸張状態の伸縮材を固定することが行われている。この伸縮材は、着用感やフィット感を向上させ、レッグ開口部からの排泄物の漏れを防止する目的で固定されるものである。
【0004】
しかし、単に伸張状態の伸縮材を固定するのみでは、伸縮材固定部に伸縮性を付与することはできても、柔軟性、クッション性等が不十分となる場合がある。例えば、1)伸縮材による締め付けが強過ぎて着用者の肌にゴム跡(タイマーク)がつく、2)伸縮材固定部は接着剤の塗工や伸縮材の熱融着等によって硬くなり易いため、おむつの柔軟性や触感が損なわれる、3)特にレッグ開口部周縁が硬くなっていると、着用者自身の肌は勿論のこと、交換作業をする者の手指を傷つける場合がある、といった問題があった。
【0005】
そこで、使い捨ておむつにおいては、伸縮材固定部に伸縮性を付与しつつ、柔軟性、クッション性等を改善するための種々の提案がなされている。例えば、外層シート、内層シート及び複数本の弾性部材により吸収性物品の外包材が形成され、前記外層シート及び前記内層シートが、腰周り方向及びその直交方向に向かって間欠的に形成した接合部によって相互に接合される一方、前記弾性部材が前記接合部を通らないように配されたパンツ型吸収性物品が提案されている(特許文献1〜5参照)。
【0006】
このパンツ型吸収性物品では、前記弾性部材が前記外層シート及び前記内層シートに固定されないように構成されている。そして、ウエスト部の全周に、ウエスト部の外端部から内端部に亘って延びる複数本の襞が形成されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−136793号公報
【特許文献2】特開2008−136794号公報
【特許文献3】特開2008−142316号公報
【特許文献4】特開2008−142341号公報
【特許文献5】特開2008−142342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1〜5に記載のパンツ型吸収性物品は、弾性部材により外層シート及び内層シートをウエスト周方向に収縮させて複数本の襞を形成させるものである。そして、前記襞により形成される凸曲面が外装シートと内層シートの厚み方向にボリュームを出し、伸縮材配置部の柔軟性、クッション性等を改善することを企図していると考えられる。
【0009】
しかしながら、前記の構造は外装シートと内層シートの間欠的な接合部を通らないように弾性部材が配された特殊な構造である。この構造では弾性部材は外装シート及び内層シートの何れにも拘束されず、自由に伸張することができる。例えば製造時に300%の伸張率で弾性部材を配置しても、使用時において局所的にはその300%の伸張率を超えて弾性部材が伸張する場合が起こり得る。即ち、弾性部材が理想的な伸張率を超えて過度に伸張する場合がある。従って、硬く張り詰めた弾性部材が内層シートを介して肌に当接し、痛みや不快感を生ずるおそれがあるという課題があった。更に、前記の特殊な構造を得るために、製造に際して精密な接合技術が必要となり、製造が困難であるという課題もあった。
【0010】
本発明は、前記のような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであって、おむつの股下被包部の側縁部(例えばレッグ開口部の周縁部)の伸縮性、柔軟性、クッション性に優れ、容易に製造することができ、快適な着用感を得られる使い捨ておむつを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、前記のような従来技術の課題を解決するために鋭意検討した結果、1)少なくともおむつの股下被包部の側縁部に、伸縮材と不織布が一体的に挙動する伸縮性不織布からなる伸縮部を形成すること、2)股下被包部の側縁に沿う方向に収縮するように伸縮部を形成すること、3)少なくとも股下被包部の肌当接面の一部に撥水性不織布からなる通気路形成シートを配置すること、4)通気路形成シートを伸張状態の伸縮部に積層し、通気路形成シートと伸張状態の伸縮部を伸縮部の収縮方向に向かって間欠的に接合すること、によって、おむつの股下被包部の縁部にクッションとして機能する通気路構造が形成され、前記課題が解決されることに想到して、本発明を完成させた。具体的には、本発明により、以下の使い捨ておむつが提供される。
【0012】
[1]着用者の胴周りを被包する前被包部及び後被包部と、吸収体が配置され、着用者の股下を被包する股下被包部とを有し、少なくとも前記股下被包部の左右の側縁部に伸縮性不織布からなる伸縮部が形成され、前記伸縮部は前記股下被包部の側縁に沿う方向に収縮するように形成されており、前記股下被包部の肌当接面の一部に撥水性不織布からなる通気路形成シートが配置され、前記通気路形成シートは、伸張状態の前記伸縮部に積層され、前記通気路形成シートと伸張状態の前記伸縮部とが、前記伸縮部の収縮方向に向かって間欠的に形成された接合部により接合されている使い捨ておむつ。
【0013】
[2]前記股下被包部における少なくとも前記後被包部側の端部に伸縮性不織布からなる伸縮部が形成され、前記伸縮部は前記後被包部側の端縁に沿う方向に収縮するように形成されており、前記後被包部側の端部の肌当接面の一部に撥水性不織布からなる通気路形成シートが配置され、前記通気路形成シートは、伸張状態の前記伸縮部に積層され、前記通気路形成シートと伸張状態の前記伸縮部とが、前記伸縮部の収縮方向に向かって間欠的に形成された接合部により接合されている前記[1]に記載の使い捨ておむつ。
【0014】
[3]前記前被包部における少なくとも前記股下被包部側の端部に伸縮性不織布からなる伸縮部が形成され、前記伸縮部は前記股下被包部側の端縁に沿う方向に収縮するように形成されており、前記股下被包部側の端部の肌当接面の一部に撥水性不織布からなる通気路形成シートが配置され、前記通気路形成シートは、伸張状態の前記伸縮部に積層され、前記通気路形成シートと伸張状態の前記伸縮部とが、前記伸縮部の収縮方向に向かって間欠的に形成された接合部により接合されている前記[2]に記載の使い捨ておむつ。
【0015】
[4]前記股下被包部の側縁部に形成された伸縮部と、前記前被包部における前記股下被包部側の端部に形成された伸縮部及び前記股下被包部における前記後被包部側の端部に形成された伸縮部のうちの少なくとも一つとが連続的に配置され、着用者の脚周りを取り囲むレッグ伸縮部が形成されており、前記通気路形成シートは、伸張状態の前記レッグ伸縮部に積層され、前記通気路形成シートと伸張状態の前記レッグ伸縮部とが、前記レッグ伸縮部の収縮方向に向かって間欠的に形成された接合部により接合されている前記[3]に記載の使い捨ておむつ。
【0016】
[5]前記伸縮部は、複数の不織布シートの層間に伸張状態の伸縮材が配置されるとともに、前記伸縮材が前記複数の不織布シートに対して固着され、前記複数の不織布シート及び前記伸縮材が一体的に挙動するものである前記[1]〜[4]のいずれか一に記載の使い捨ておむつ。
【0017】
[6]前記伸縮部は、伸縮性フィルムが不織布シートに対して固着され、前記不織布シート及び前記伸縮性フィルムが一体的に挙動するものである前記[1]〜[4]のいずれか一に記載の使い捨ておむつ。
【0018】
[7]前記通気路形成シートと前記伸縮部とが、前記伸縮部の収縮方向に向かって間欠的に、かつ、前記伸縮部の収縮方向と直交する方向に向かって連続的に形成された接合部により接合されている前記[1]〜[6]のいずれか一に記載の使い捨ておむつ。
【0019】
[8]前記通気路形成シートと前記伸縮部とが、前記伸縮部の収縮方向と前記伸縮部の収縮方向と直交する方向の両方向に向かって間欠的に形成された接合部により接合されている前記[1]〜[6]のいずれか一に記載の使い捨ておむつ。
【発明の効果】
【0020】
本発明の使い捨ておむつは、おむつの股下被包部の側縁部(例えばレッグ開口部の周縁部)の伸縮性、柔軟性、クッション性に優れ、容易に製造することができ、快適な着用感を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1A】本発明の使い捨ておむつの一の実施形態を模式的に示す概略平面図である。
【図1B】図1Aに示す使い捨ておむつのA−A’切断端面を模式的に示す概略端面図である。
【図1C】図1Aに示す使い捨ておむつの概略裏面図である。
【図1D】図1Aに示す使い捨ておむつの伸縮部近傍を模式的に示す斜視図である。
【図1E】図1Dに示す使い捨ておむつのX−X’切断端面を模式的に示す概略端面図である。
【図1F】図1Aに示す使い捨ておむつの接合部の形態を拡大して模式的に示す概略平面図であり、通気路形成シートを剥離した状態を示すものである。
【図2A】使い捨ておむつの接合部の別の形態を拡大して模式的に示す概略平面図であり、通気路形成シートを剥離した状態を示すものである。
【図2B】使い捨ておむつの接合部の更に別の形態を拡大して模式的に示す概略平面図であり、通気路形成シートを剥離した状態を示すものである。
【図2C】使い捨ておむつの接合部の更にまた別の形態を拡大して模式的に示す概略平面図であり、通気路形成シートを剥離した状態を示すものである。
【図3A】本発明の使い捨ておむつの別の実施形態を模式的に示す概略平面図である。
【図3B】図3Aに示す使い捨ておむつのA−A’切断端面を模式的に示す概略端面図である。
【図3C】図3Aに示す使い捨ておむつの使用状態におけるA−A’切断端面を模式的に示す概略端面図である。
【図4A】本発明の使い捨ておむつの更に別の実施形態を模式的に示す概略端面図である。使用状態における図3Cに示す切断端面に対応する切断端面を示す図である。
【図4B】本発明の使い捨ておむつの更にまた別の実施形態を模式的に示す概略端面図である。使用状態における図3Cに示す切断端面に対応する切断端面を示す図である。
【図5A】本発明の使い捨ておむつの別の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【図5B】図5Aに示す使い捨ておむつを展開し、トップシート方向から見た状態を模式的に示す概略平面図である。
【図5C】図5Bに示す使い捨ておむつのA−A’切断端面を模式的に示す概略端面図である。
【図5D】図5Bに示す使い捨ておむつのB−B’切断端面を模式的に示す概略端面図である。
【図5E】図5Aに示す使い捨ておむつを展開し、アウターシート方向から見た状態を模式的に示す概略平面図である。
【図6A】本発明の使い捨ておむつの更に別の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【図6B】図6Aに示す使い捨ておむつを展開し、トップシート方向から見た状態を模式的に示す概略平面図である。
【図6C】図6Bに示す使い捨ておむつのA−A’切断端面を模式的に示す概略端面図である。
【図6D】図6Bに示す使い捨ておむつのB−B’切断端面を模式的に示す概略端面図である。
【図6E】図6Aに示す使い捨ておむつを展開し、アウターシート方向から見た状態を模式的に示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の使い捨ておむつを実施するための形態について具体的に説明する。
【0023】
[1]本発明の使い捨ておむつの基本的な構成:
本発明の使い捨ておむつは、図1A及び図1Cに示す使い捨ておむつ1のように、着用者の胴周りを被包する前被包部2及び後被包部6と、吸収体22が配置され、着用者の股下を被包する股下被包部4とを有するものである。
【0024】
[1−1]使い捨ておむつ:
「使い捨ておむつ」には、パンツ型、テープ型等の各種形態が含まれる。但し、本発明はその特定事項を備える使い捨ておむつを広く包含し、以下に示すパンツ型、テープ型等に限定されるものではない。
【0025】
[1−2]前被包部及び後被包部:
「前被包部」及び「後被包部」は、使い捨ておむつのうち、着用者の胴周りを被包する部分である。
【0026】
本明細書においては、吸収体が、股下被包部から前被包部及び後被包部にかけて連続的に配置されている場合において、前被包部及び後被包部における、吸収体の端縁及び前記端縁の延長線よりウエスト端縁側の部分を「ウエスト被包部」、前記吸収体の端縁及び前記端縁の延長線より股下側の部分を「タミー被包部」と称することにする。
【0027】
「胴周りを被包する」とは、使い捨ておむつの一部によって、着用者の胴を取り囲む筒状構造が形成された形態又は前記筒状構造が形成され得る形態であることを意味する。「筒状構造が形成された形態」のおむつとしては、パンツ型の使い捨ておむつを挙げることができる。
【0028】
「パンツ型」とは、図5Aに示す使い捨ておむつ501のように、予め一つのウエスト開口部510及び左右一対のレッグ開口部512が形成されたパンツ型を呈する使い捨ておむつを指す。
【0029】
図5B及び図5Eに示す使い捨ておむつ501は、前外装体562の側縁562a,562bと後外装体565の側縁565a,565bが相互に接合されて、着用者の胴を取り囲む筒状構造が形成された形態である。このような形態においては、外装体516のうち、左右の接合部507,508の間の領域によって前記筒状構造が形成される。従って、前記領域を前被包部502又は後被包部506と称することにする。
【0030】
図5A、図5B及び図5Eに示す使い捨ておむつ501は、外装体516が前外装体562と後外装体565から構成されている。但し、外装体が前後に分離されず、一体的に構成され、予め一つのウエスト開口部及び左右一対のレッグ開口部が形成されているものも「パンツ型」の一形態である。
【0031】
例えば、図6B及び図6Eに示す使い捨ておむつ601は、一体的に構成された外装体616の側縁602a,602bと側縁606a,606bが相互に接合されて、着用者の胴を取り囲む筒状構造が形成された形態である。このような形態においては、外装体616のうち、左右の接合部607,608の間の領域によって前記筒状構造が形成される。従って、前記領域を前被包部602又は後被包部606と称することにする。
【0032】
「筒状構造が形成され得る形態」のおむつとしては、疑似パンツ型又はテープ型の使い捨ておむつを挙げることができる。
【0033】
「疑似パンツ型」とは、図5A、図5B及び図5Eに示す使い捨ておむつ501又は図6A、図6B及び図6Eに示す使い捨ておむつ601と同様の形態において、接合部507,508又は接合部607,608に代えて、着脱可能なファスナー(メカニカルファスナー等)を付設した形態の使い捨ておむつを指す。
【0034】
このような「疑似パンツ型」では、ファスナーの係合力によって、外装体のうち着用者の前側を覆う部分と後側を覆う部分とをこれらの両側縁で着脱可能に係合させることができる。従って、着用者の胴を取り囲む筒状構造を形成することができる。「疑似パンツ型」については、外装体のうち、左右の両側縁のファスナーの間の領域によって前記筒状構造が形成される。従って、前記領域を前被包部又は後被包部と称することにする。
【0035】
「テープ型」は、図1A及び図1Cに示す使い捨ておむつ1のように、着用者の後側を被包する部分の左右の各側縁(図示の例では後サイドフラップ74の側縁74a,74b)から延出するように止着テープ11が付設された使い捨ておむつを指す。
【0036】
「テープ型」は、図1A及び図1Cに示すように、止着テープ11を構成する基材50にファスニング部材(図示の例ではメカニカルファスナーのフック材48)を有している。従って、着用者の前側を被包する部分のファスニング部材(図示の例ではフロントパッチ13を形成するメカニカルファスナーのループ材46)に止め付けることで、着用者の胴を取り囲む筒状構造を形成することができる。
【0037】
「テープ型」は「パンツ型」のように予め筒状構造が形成されているわけではない。従って、「テープ型」における「前被包部」、「後被包部」は、吸収体及び前記吸収体を被服するシート材(トップシート、バックシート、サイドシート等)により構成されるおむつ本体の形状に応じて以下のように定義することとする。
【0038】
おむつ本体が砂時計型(前後のウエスト端縁が幅広く、股下側に幅狭い括れを有する形状。図6Bに示す外装体616と同様の形状)に形成されている場合には、おむつ前側のウエスト端縁側の前記括れの起点同士を結ぶ直線と、おむつ前側のウエスト端縁との間の領域を「前被包部」、おむつ後側のウエスト端縁側の前記括れの起点同士を結ぶ直線と、おむつ後側のウエスト端縁との間の領域を「後被包部」と称することにする。
【0039】
図1A及び図1Cに示す使い捨ておむつ1のように、おむつ本体70のウエスト端縁70c側に、おむつ本体70とは別体の後サイドフラップ74が付設されるとともに、ウエスト端縁70d側にも、おむつ本体70とは別体の前サイドフラップ72が付設されている場合には、おむつ股下側における前サイドフラップ72とおむつ本体70の側縁70a,70bとの交点同士を結ぶ直線と、ウエスト端縁70dとの間の領域を「前被包部」、おむつ股下側における後サイドフラップ74とおむつ本体70の側縁70a,70bとの交点同士を結ぶ直線と、ウエスト端縁70cとの間の領域を「後被包部」と称することにする。
【0040】
なお、おむつ本体に、おむつ本体とは別体の後サイドフラップのみが付設され、前サイドフラップが付設されていない場合には、おむつ股下側における後サイドフラップとおむつ本体の側縁との交点同士を結ぶ直線と、ウエスト端縁との間の領域を「後被包部」、おむつ本体をウエスト端縁同士が重なるように折り畳んだ際に「後被包部」と重畳する領域を「前被包部」と称することにする。
【0041】
[1−3]股下被包部:
「股下被包部」は、使い捨ておむつのうち、着用者の股下を被包する部分を指す。換言すれば、前被包部と後被包部の間の部分である。
【0042】
股下被包部には、排泄物を吸収・保持させるための吸収体が配置される。吸収体の構成については特に限定されず、従来公知の吸収性物品に用いられる吸収体を用いることができる。吸収体の具体的な構成については後述する。
【0043】
図1A及び図1Cに示す使い捨ておむつ1においては、おむつ本体70によって股下被包部4が形成されている。そして、おむつ股下側における前サイドフラップ72とおむつ本体70の側縁70a,70bとの交点同士を結ぶ直線と、おむつ股下側における後サイドフラップ74とおむつ本体70の側縁70a,70bとの交点同士を結ぶ直線との間の領域が股下被包部4である。
【0044】
図5Dに示す使い捨ておむつ501においては、前外装体562と後外装体565との間に架け渡されるように吸収性本体514が配置され、接合されている(接合部528)。この形態においては、前外装体562によって前被包部502が、後外装体565の一部によって後被包部506が、後外装体565の一部と吸収性本体514の一部によって股下被包部504が形成されている。吸収体522は吸収性本体514の構成部材として配置されている。
【0045】
図6Bに示す使い捨ておむつ601においては、吸収性本体514及び外装体616によって股下被包部604が形成されている。そして、外装体616の側縁におけるウエスト端縁602c側の括れの起点同士を結ぶ直線と、ウエスト端縁606c側の括れの起点同士を結ぶ直線との間の領域が股下被包部604である。
【0046】
[2]本発明の使い捨ておむつの特徴的な構成:
本発明の使い捨ておむつは、図1A〜図1Cに示す使い捨ておむつ1のように、1)少なくともおむつの股下被包部4の側縁部に、伸縮材と不織布が一体的に挙動する伸縮性不織布からなる伸縮部80が形成されていること、2)股下被包部4の側縁(この例では、おむつ本体70の側縁70a,70b)に沿う方向に収縮するように伸縮部80が形成されていること、3)少なくとも股下被包部4の肌当接面の一部に撥水性不織布からなる通気路形成シート82が配置されていること、4)通気路形成シート82が伸張状態の伸縮部80に積層され、通気路形成シート82と伸張状態の伸縮部80が伸縮部80の収縮方向に向かって間欠的に接合された接合部84により接合されていること、を特徴とするものである。
【0047】
このような使い捨ておむつは、図1D及び図1Eに示すように、伸縮部80の収縮によって、通気路形成シート82の接合部84間の距離も狭められる。これにより、通気路形成シート82が撓んで波型に変形され、通気路形成シート82と伸縮部80のうち接合部84以外の部分(非接合部)が離間し、通気管、クッションとして機能する通気路86が形成される。
【0048】
通気路86は、エアクッションのように緩衝機能を発揮する。従って、肌当たりが柔らかく、おむつのウエスト周りの柔軟性を向上させることができる。即ち、着用者は快適な着用感を得ることができる。
【0049】
また、着用者が立位から座位をとった場合には、おむつは外側から圧縮されて、おむつの内部空間の湿気が通気路86を通過して外部空間に排出される。更に、着用者が歩行をすると、脚の動きでおむつの股下被包部が変形するために、その変形によっておむつの内部空間の湿気が外部空間に排出され、これと交換に外部空間の空気がおむつの内部空間に流入する。従って、おむつの内部空間を快適な環境にすることができる。
【0050】
[2−1]伸縮部:
伸縮部は、伸縮性不織布からなる。「伸縮性不織布」とは、不織布自体が伸縮性を有するもの、又は基材となる不織布に伸縮材(ゴムや熱可塑性エラストマー等の弾性材)を接合等することによって、不織布に伸縮性を付与したものを意味する。
【0051】
例えば、市販のエラスチック不織布、エラストマースパンボンド不織布等を用いることができる。具体的には、以下全て商品名で、ストラフレックス(出光ユニテック社製)、エスパンシオーネ(KBセーレン社製)等を好適に用いることができる。これらのエラスチック不織布、エラストマースパンボンド不織布は、不織布自体が伸縮性を有するものである。
【0052】
但し、伸縮性不織布として必ずしも前記のような不織布自体が伸縮性を有するものを用いる必要はない。不織布と伸縮材を適宜組み合わせ接合等することによって構成することもできる。即ち、伸縮性不織布が、複数の不織布シートの層間に伸張状態の伸縮材が配置されるとともに、伸縮材が複数の不織布シートに対して固着され、複数の不織布シート及び伸縮材が一体的に挙動するものであってもよい。例えば複数の不織布シートの層間に伸張状態の伸縮材が固定された構造の伸縮性不織布を挙げることができる。このような不織布と伸縮材が一体的に挙動する伸縮性不織布を用いることにより、特許文献1〜5のパンツ型吸収性物品とは異なり、伸縮材がシート幅以上に伸張することがなくなる。また、伸縮材が理想的な伸張率を超えて過度に伸張されることがない。
【0053】
また、伸縮性不織布は、伸縮性フィルムが不織布シートに対して固着され、不織布シート及び伸縮性フィルムが一体的に挙動するものであってもよい。このような伸縮性不織布も、複数の不織布シートの層間に伸張状態の伸縮材を固定した構造の伸縮性不織布と同様の効果を奏する。この形態の伸縮性不織布は、伸縮性フィルムの少なくとも一方の面に不織布シートが固定される。伸縮性フィルムの双方の面に不織布シートが固定されていてもよい。
【0054】
一般に、使い捨ておむつは、不織布の層間に線状の伸縮材を配した構造を有している。従って、必ずしも別途、伸縮性不織布を配する必要はなく、従来の使い捨ておむつの構造の一部を伸縮性不織布として利用して伸縮部を構成してもよい。
【0055】
また、図1Bに示す使い捨ておむつ1は、おむつ本体70を構成するサイドシート19とバックシート20との層間又はサイドシート19とカバーシート24との層間に、伸張状態のレッグ伸縮材40が配置されている。レッグ伸縮材40はサイドシート19、バックシート20及びカバーシート24に対して固着され、サイドシート19、バックシート20、カバーシート24及びレッグ伸縮材40によって一体的に挙動する伸縮性不織布(伸縮部80)が構成されている。
【0056】
また、図3Cに示す使い捨ておむつ201は、立体ギャザー227を構成する不織布シート233と不織布シート234の基部279との層間に、伸張状態の立体ギャザー伸縮材237が配置されている。立体ギャザー伸縮材237は不織布シート233、基部279に対して固着され、不織布シート233、基部279及び立体ギャザー伸縮材237によって一体的に挙動する伸縮性不織布(伸縮部281)が構成されている。
【0057】
一方、図5Cに示す使い捨ておむつ501は、立体ギャザー526を構成する不織布シート532の基部と折り返し部との層間に、伸張状態の立体ギャザー伸縮材536が配置されている。立体ギャザー伸縮材536は不織布シート532の基部と折り返し部に対して固着され、不織布シート532の基部、折り返し部及び立体ギャザー伸縮材536によって一体的に挙動する伸縮性不織布(伸縮部581)が構成されている。
【0058】
伸縮部は股下被包部の左右の側縁に沿う方向に収縮するように形成されている。例えば図1Bに示す使い捨ておむつ1は、股下被包部を構成するおむつ本体70の側縁70a,70bに沿う方向に収縮するように伸縮部80が形成されている。また、図5Cに示す使い捨ておむつ501は、股下被包部を構成する吸収性本体514の側縁に沿う方向に収縮するように伸縮部581が形成されている。図6Cに示す使い捨ておむつ601も、図5Cに示す使い捨ておむつ501と同一構造の伸縮部581が形成されている。
【0059】
「股下被包部の側縁に沿う方向に収縮するように形成」とは、伸縮性不織布が股下被包部の側縁に沿って伸張された際に股下被包部の側縁に沿って収縮力が作用するように、伸縮性不織布が配置されていることを意味する。最も簡単な構造としては、図1Cに示す使い捨ておむつ1のように、股下被包部4の側縁(おむつ本体70の側縁70a,70b)に沿って線状の伸縮材(この例ではレッグ伸縮材40)を配置する構成を挙げることができる。
【0060】
但し、伸縮性不織布が股下被包部の側縁に沿う方向に収縮する限り、図1Cに示す構成には限定されない。例えば股下被包部の側縁に沿う方向に対して左に凸ないし右に凸のカーブを描くように伸縮材が配置されていてもよい。
【0061】
本発明の使い捨ておむつにおいては、少なくとも股下被包部の左右の側縁部に前記伸縮部が形成されていればよい。但し、その他の部分に前記伸縮部が形成されていてもよい。その伸縮部に対して通気路形成シートを間欠的に接合することで、股下被包部の左右の側縁部と同様に、柔軟性を付与することができる。
【0062】
例えば、図5Eに示すように、股下被包部504における少なくとも後被包部506側の端部に伸縮性不織布からなる伸縮部580が形成され、伸縮部580は後被包部506側の端縁に沿う方向に収縮するように形成されている場合には、図5Bに示すように後被包部506側の端部の肌当接面の一部に撥水性不織布からなる通気路形成シート583が配置されていることが好ましい。通気路形成シート583が伸縮部に積層され、通気路形成シート583と伸縮部とが、伸縮部の収縮方向に向かって間欠的に形成された接合部585により接合されることによって、股下被包部504の後被包部506側の端部にも通気路構造を形成することができる。
【0063】
また、図5Eに示すように、前被包部502における少なくとも股下被包部504側の端部に伸縮性不織布からなる伸縮部580が形成され、伸縮部580が股下被包部504側の端縁に沿う方向に収縮するように形成されている場合には、図5Bに示すように股下被包部504側の端部の肌当接面の一部に撥水性不織布からなる通気路形成シート583が配置されていることが好ましい。通気路形成シート583が伸張状態の伸縮部に積層され、通気路形成シート583と伸張状態の伸縮部とが、伸縮部の収縮方向に向かって間欠的に形成された接合部585により接合されることによって、前被包部502の股下被包部504側の端部にも通気路構造を形成することができる。
【0064】
更に、図5A〜図5Eに示す使い捨ておむつ501のように、股下被包部504の側縁部に形成された伸縮部581と、前被包部502における股下被包部504側の端部に形成された伸縮部580及び股下被包部504における後被包部506側の端部に形成された伸縮部580のうちの少なくとも一つとが連続的に配置され、着用者の脚周りを取り囲むレッグ伸縮部が形成されていることが好ましい。通気路形成シート582,583が伸張状態のレッグ伸縮部に積層され、通気路形成シート582,583と伸張状態のレッグ伸縮部とが、レッグ伸縮部の収縮方向に向かって間欠的に形成された接合部584,585により接合されることによって、股下被包部504の通気路構造と、前被包部502及び/又は後被包部506の通気路構造が連続的に配置される。このような構造はレッグ伸縮部に柔軟性を付与できるため好ましい。
【0065】
[2−2]通気路形成シート:
本発明の使い捨ておむつは、図1Aに示す使い捨ておむつ1のように股下被包部4の肌当接面の一部に撥水性不織布からなる通気路形成シート82が配置される。この通気路形成シート82によって、おむつのレッグ開口部近傍等に通気管、クッションとして機能する通気路構造が形成される。
【0066】
「肌当接面」とは、使い捨ておむつの着用時に、着用者の肌に直接当たる面、即ち使い捨ておむつの最内面を意味する。「撥水性不織布」としては、後述するサイドシートと同様の素材を用いることができる。撥水性不織布を用いることで、通気路形成シートを伝った排泄物の漏れが生じ難くなる。
【0067】
「一部」とは、股下被包部の肌当接面の全部に通気路形成シートが配置されていなくてもよいことを意味する。通気路形成シートを配置する部位については特に限定されない。但し、図1Aに示すように、少なくとも股下被包部4の左右の側縁部(この例ではおむつ本体70の側縁70a,70b)に配置することが好ましい。その場合、図1Aに示すように、おむつ本体70の全長(ウエスト端縁70c,70d間の長さ)の60%以上をカバーするように配置することが好ましい。
【0068】
通気路形成シートの坪量は10〜50g/m2とすることが好ましい。10g/m2未満とすると、シートの嵩が小さ過ぎて伸縮材を固定する接着剤がシートを透過して染み出す、等の不具合を生ずるおそれがある。一方、50g/m2を超えると、1)シートの剛性が高過ぎて伸縮材の収縮に連動して撓み難くなり、通気路構造を形成し難くなる、2)シートの嵩が大き過ぎて股下被包部の側縁部(着用者の脚周りに当接する部分等)がゴワゴワし、着用感が低下する等のおそれがある。
【0069】
通気路形成シートは、図4Bに示す使い捨ておむつ401においては通気路形成シート482のように独立した部材として構成している。但し、通気路形成シートが独立した部材として構成されている必要はない。例えば図3Cに示す使い捨ておむつ201においては、伸縮性不織布(伸縮部281)を構成する不織布シート234の一部を折り返して折り返し部を形成し、折り返し部を通気路形成シート283として利用している。
【0070】
また、図4Aに示す使い捨ておむつ301においては、立体ギャザー327を構成する不織布シート333の一部を通気路形成シート383として利用している。図4Bに示す使い捨ておむつ401においても、立体ギャザー26,427を構成する不織布シート433の一部を通気路形成シート483として利用している。図4Aに示す使い捨ておむつ301及び図4Bに示す使い捨ておむつ401においては、不織布シート333,433に折り返し部378,379,478,479を形成し、折り返し部378,379,478,479によって伸縮部381,481を構成する不織布シートとしても利用している。
【0071】
通気路形成シートには、おむつの内部空間と、通気路形成シートによって形成された通気路とを連通させる孔が形成されていてもよい。このような構造とすることで、おむつの内部空間から孔を経由して通気路に湿気が流入し、通気路を経由しておむつの外部空間へ湿気が排出される。
【0072】
「孔」とは、おむつの内部空間と通気路とを連通させる開口部を意味し、その形状は特に限定されない。例えば、円形、楕円形、多角形(三角形、四角形等)等の形状を挙げることができる。
【0073】
なお、「孔」には常時開口しているもののみならず、開閉可能な構造のものも含まれる。例えば通気路形成シートに軌跡が凸形状のスリット又は交差する複数本のスリットを形成することにより、弁として機能する舌片を有する孔とすることができる。前記舌片により、通気路に尿や体液が侵入することを抑制しつつ、湿気を通過させることができる。
【0074】
スリットの形態は特に限定されない。「軌跡が凸形状のスリット」としては、a)湾曲部を有するスリット(逆U字状スリット等)、b)屈曲部を有するスリット(逆V字状スリット等)等を挙げることができる。また、「交差する複数本のスリット」としては、c)二本のスリットを交差させて形成した十字状のスリット、d)3本のスリットを交差させて形成した星型のスリット等を挙げることができる。
【0075】
前記の孔は、通気路形成シートのうち通気路が形成される部位(即ち、接合部間領域)に形成されることが好ましい。特に、図3Cに示す使い捨ておむつ201のように通気路形成シート283が不織布シート234の折り返し部により形成されたものである場合には、折り返し部の先端部近傍に孔が形成され、当該孔よりも更に折り返し部の先端寄りの部分が伸縮部に対して接合されていることが好ましい。このような形態は伸縮部の収縮によって孔が強制的に開放されるため好ましい。
【0076】
前記構成では強制的に開放された孔が通気路の端部開口となる。従って、おむつ内部空間の湿気は、強制的に開放された孔から通気路の内部に流入し、通気路を通過し、折り返し線の部分(図3Cの例では立体ギャザー227の上端縁)で通気路形成シートを透過しておむつの外部空間に排出される。このような構成は単に通気路形成シートに孔を形成した構造と比較して、湿気が通気路に流入し易く、湿気をおむつ外部に排出し易い点において好ましい。
【0077】
また、通気路形成シートには孔を複数形成してもよい。孔を複数形成することによって、通気性が向上し湿気をおむつ外部に排出し易くなる。
【0078】
「複数」の具体的な数は特に限定されない。孔の開口面積によっても異なる。開口面積が0.5〜10mm2の孔であれば5〜200個形成することが好ましく、10〜100個形成することが更に好ましい。5個以上とすることで通気性向上効果を得ることができる。一方、200個以下とすることで尿や体液が通気路に流入することを有効に防止することができる。
【0079】
通気路形成シートに薬剤を付着させておくことも好ましい形態の一つである。薬剤を付着させることにより、着用者の肌と直接接触する通気路形成シートに当該薬品に基づく薬効を付与することができる。
【0080】
薬剤の種類は特に限定されない。例えば保湿剤(アロエエキス、プロピレングリコール等);保湿効果を奏することに加え、ウレアーゼ阻害活性を有するスキンケア用添加物(ユーカリ抽出物等);の他、消毒剤、抗菌剤(エデト酢酸、塩化ベンザルコニウム等)、消臭剤(各種ポリフェノール化合物等)等を挙げることができる。
【0081】
[2−3]接合部:
本発明の使い捨ておむつにおいては、図1D及び図1Eに示すように通気路形成シート82が伸張状態の伸縮部80に積層され、通気路形成シート82と伸張状態の伸縮部80とが、伸縮部の収縮方向に沿う方向に向かって間欠的に形成された接合部84により接合されている。
【0082】
前記構造とすることで、伸縮部80の収縮に追従して通気路形成シート82の接合部84間距離も狭められ、股下被包部の側縁部におむつの内部空間と外部空間を連通する通気路86が形成される。この通気路86によりおむつの通気性・柔軟性が向上する。また、前記構造であれば、特許文献1〜5に記載のパンツ型吸収性物品のように伸縮材の位置を考慮してシート同士を接合する等の精密な接合技術は不要である。従って、容易に製造することができる。
【0083】
「伸張状態の伸縮部」とは、伸縮性不織布に対して収縮力が作用している状態の伸縮部を意味する。伸張状態の伸縮部に対して通気路形成シートを間欠的に接合することで、伸縮部の収縮に伴って通気路形成シートを撓ませることが可能となる。従って、伸縮部と通気路形成シートとの層間に通気路を形成することができる。
【0084】
不織布シートに伸縮性フィルムが固着された伸縮性不織布、エラスチック不織布又はエラストマースパンボンド不織布等は、自然状態(張力をかけていない状態)において原寸の状態となっており、収縮力は作用していない。従って、これらの伸縮性不織布等については原寸より伸張させた状態で通気路形成シートを接合する。一方、複数の不織布シートの層間に伸張状態の伸縮材が配置された伸縮性不織布等は自然状態において原寸より収縮された状態となっており、収縮力は作用していない。従って、このような伸縮性不織布等については収縮状態から伸張させた状態で通気路形成シートを接合する。
【0085】
伸縮部と通気路形成シートの接合は、伸縮部を構成する伸縮性不織布の表面と通気路形成シートとが接合されることで行われる。即ち、不織布シートの層間に配置される伸縮材や伸縮性フィルムと通気路形成シートが直接接合されることはない。
【0086】
「間欠的」とは、接合部が非連続的ないし断続的に形成されていることを意味する。この接合状態では、接合部においては伸縮部と通気路形成シートが一体不可分の状態となっている。一方、非接合部においては伸縮部と通気路形成シートが相互に拘束されず、自由に離間可能な状態となっている。
【0087】
本発明においては、通気路形成シートや伸縮部における一の接合部と他の接合部との間隙部が収縮して通気路を形成する。従って、接合部同士の間隔は股下被包部の側縁に沿う方向に向かって2〜50mmとすることが好ましく、5〜10mmとすることが特に好ましい。
【0088】
なお、「間欠的」とは伸縮部の収縮方向に対して間欠的であればよい。即ち、接合部が伸縮部の収縮方向と直交する方向に向かっていかなる形状に形成されているかは特に限定されない。但し、接合部は伸縮部の収縮方向と直交する方向に向かって連続的に形成されていることが好ましい。このような形態は、前記収縮方向と直交する方向に向かう効果的な通気路を形成することができ、肌触りにも優れる。例えば、伸縮部の収縮方向と直交する方向に向かって連続的に形成され、かつ、伸縮部の収縮方向に対して規則的な間隔で間欠的に形成された接合部等を挙げることができる。
【0089】
図1Bに示す使い捨ておむつ1では伸縮部80(伸縮性不織布)を構成する不織布シート32(サイドシート19)に対し、通気路形成シート82が接合されている(接合部84)。図1Fは図1A及び図1Bに示す使い捨ておむつ1の接合部84の形態を拡大して模式的に示す概略平面図であり、使い捨ておむつ1から通気路形成シート82を剥離した状態を模式的に示す平面図である。
【0090】
図1Fに示すように接合部84はおむつの胴周り方向(図面左右方向)に向かう、複数の線状接合部90からなる。そして、線状接合部90が股下被包部の側縁(おむつ本体70の側縁70a)に沿う方向に向かって間欠的に形成されている。更に、線状接合部90の各々は、複数のドット状接合部92がおむつの胴周り方向に向かって一列に配置された集合体として形成されている形態である。
【0091】
図1Fに示す例では、線状接合部90がおむつの胴周り方向に向かって配向している。従って、股下被包部の側縁に沿う方向に向かって配向させた場合と比較して湿気等が前記前後方向に向かって流れ易く、股下被包部の側縁(おむつ本体の側縁70a)側からの湿気等の排気を促進することができる。また、着用者の脚周りの曲線的な形状におむつを追従させ易く、フィット性、着用感にも優れる。
【0092】
なお、本明細書において「線状」というときは、おむつの胴周り方向に延びる形状を広く包含するものとし、いわゆる線状の他、帯状、短冊状等の形状も含むものとする。また、複数のドット状接合部が「集合体」と把握されるためには、隣接するドット状接合部との間隔が5mm以下であることを要する。
【0093】
また、図2Aに示す形態は、図1Fに示す形態と伸縮部の構成が同一で、接合部の形態が異なるものである。接合部84Aは、おむつの胴周り方向に向かう、複数の線状接合部90Aからなる。そして、線状接合部90Aが股下被包部の側縁(おむつ本体の側縁70a)に沿う方向に向かって間欠的に形成されている。更に、線状接合部90Aが円形状のドット状接合部92Aの集合体として形成されている。従って、図1Fに示す形態の効果に加えて、触感が硬くなり易い接合部84Aが肌に当たっても痛みを生じ難いという効果を奏する。
【0094】
また、図2Bに示す形態も、図1Fに示す形態と伸縮部の構成が同一で、接合部の形態が異なるものである。接合部84Bは、おむつの胴周り方向に向かう、複数の線状接合部90Bからなる。そして、線状接合部90Bが股下被包部の側縁(おむつ本体の側縁70a)に沿う方向に向かって間欠的に形成されている。
【0095】
更に、線状接合部90Bの各々は、複数のドット状接合部92Bがおむつの胴周り方向にn行、股下被包部の側縁(おむつ本体の側縁70a)に沿う方向にm列で、n<mを満たすマトリクス状に配置された集合体して形成されている形態である。この形態は「n<m」とすることで、各々の線状接合部90Bにおいて股下被包部の側縁に沿う方向に比して胴周り方向に、より多くのドット状接合部92Bを配置し、股下被包部の側縁に沿う方向より胴周り方向が長い線状に形成したものである。
【0096】
図2Bに示す例では、線状接合部90Bが円形状のドット状接合部92Bの集合体として形成され、そのドット状接合部92Bが2行5列のマトリクス状に配置された集合体として形成されている。
【0097】
前記のような形態では、幅1〜4mm×長さ2〜80mmの線状接合部を、長さ方向に1〜30箇所形成することが好ましい。各々の線状接合部は1個当たりの面積が1〜4mm2のドット状接合部を幅方向に0.5〜5mm間隔、長さ方向に0.5〜3mm間隔でマトリクス状に配置した集合体とすることが好ましい。
【0098】
図2A及び図2Bにおいては、線状接合部をドット状接合部の集合体として形成した例で説明した。但し、図2Cに示すように股下被包部の側縁(おむつ本体の側縁70a)に沿う方向に向かって間欠的に、かつ、おむつの胴周り方向に向かって連続的に形成された接合部84Cであることも好ましい(線状接合部90C)。図2Cに示す形態も、図1Fに示す形態と伸縮部の構成が同一で、接合部の形態が異なるものである。
【0099】
中でも、接合部84Cのように股下被包部の側縁(おむつ本体の側縁70a)に沿う方向と直交するように形成され、通気路が股下被包部の側縁を横切る方向に並んでいる形態が好ましい。この形態では通気路が股下被包部の側縁において、おむつの内部空間と外部空間を連通する。従って、十分な通気を図ることが可能となる。
【0100】
前記形態では、接合部がおむつの胴周り方向に延びる線状に形成されている。従って、股下被包部の側縁(おむつ本体の側縁70a)側からの湿気等の排気が促進される点において好ましい。同様の思想から、おむつの胴周り方向に複数の接合部を形成する場合に、その複数の接合部がおむつの胴周り方向に向かう一直線上に乗るように一列に整列させて形成することが好ましい(図2A及び図2Bに示す形態)。このように接合部を形成することで、おむつの胴周り方向に連続する直線的な通気路を形成し易くなる。このような構造は、形成される通気路が潰れ難くなり、通気性を向上させ易い点において好ましい。
【0101】
本発明の使い捨ておむつにおいては、通気路形成シートと伸縮部とが、おむつの胴周り方向と股下被包部の側縁に沿う方向の両方向に向かって間欠的に形成された接合部により接合されていることも好ましい。
【0102】
例えば、複数のドット状接合部が千鳥に配置されたものであってもよい。このような形態でも、伸縮部の収縮に追従して通気路形成シートが撓み、おむつの内部空間と外部空間を連通する通気路が形成される。従って、本発明の効果である股下被包部の側縁部の通気性、柔軟性を得ることができる。
【0103】
[2−4]適用箇所:
本発明の使い捨ておむつにおいては通気路構造を形成させる部位について特に限定はされない。例えば、以下のような部位に適用することができる。
【0104】
[2−4a]レッグ伸縮材配置部:
レッグ伸縮材の配置部は、不織布シートの層間に伸張状態のレッグ伸縮材が固定され、伸縮性不織布の構造を有する。そして、レッグ伸縮材は股下被包部の側縁に沿って配置されることが多い。従って、伸張状態のレッグ伸縮材配置部に通気路形成シートを間欠的に接合することにより、レッグ伸縮材配置部に通気路構造を形成することができる。
【0105】
例えば図1Bに示す使い捨ておむつ1は、サイドシート19とカバーシート24の層間に伸張状態のレッグ伸縮材40が固定された伸縮性不織布(伸縮部80)の構造を有する。即ち、伸縮部80は、立体ギャザー26の固定端(下端)と股下被包部4の側縁(おむつ本体70の側縁70a,70b)との間の領域に形成されている。そして、この伸縮部80に通気路形成シート82を間欠的に接合した例である(接合部84)。図3Cに示す接合部284、図4Aに示す接合部384、図4Bに示す接合部484も同様の形態である。
【0106】
また、図5Cに示す使い捨ておむつ501は、不織布シート532同士の層間に伸張状態のレッグ伸縮材538が固定された伸縮性不織布(伸縮部580)の構造を有する。即ち、伸縮部580は、立体ギャザー526の固定端(下端)と股下被包部504の側縁(吸収性本体514の側縁)との間の領域に形成されている。そして、この伸縮部580に通気路形成シート582を間欠的に接合した例である(接合部584)。
【0107】
[2−4b]立体ギャザー伸縮材配置部:
立体ギャザーの配置部は、不織布シートの層間に伸張状態の立体ギャザー伸縮材が固定され、伸縮性不織布の構造を有する。そして、立体ギャザーは股下被包部の側縁に沿う方向に形成されることが多い。従って、伸張状態の立体ギャザー伸縮材配置部に通気路形成シートを間欠的に接合することにより、立体ギャザー伸縮材配置部に通気路構造を形成することができる。
【0108】
例えば図5Cに示す使い捨ておむつ501は、不織布シート532の一部によって立体ギャザー526が形成されている。また、不織布シート532の基部と折り返し部の層間に伸張状態の立体ギャザー伸縮材536が固定された伸縮性不織布(伸縮部581)の構造を有する。即ち、伸縮部581は、立体ギャザー526の固定端(下端)と、自由端(上端)との間の領域に形成されている。そして、この伸縮部581に通気路形成シート582を間欠的に接合した例である(接合部584)。
【0109】
また、図3Cに示す使い捨ておむつ201は、不織布シート233の一部によって立体ギャザー227が形成されている。また、不織布シート233と不織布シート234の層間に伸張状態の立体ギャザー伸縮材237が固定された伸縮性不織布(伸縮部281)の構造を有する。即ち、伸縮部281は、立体ギャザー227の固定端(下端)と、自由端(上端)との間の領域に形成されている。そして、この伸縮部281に通気路形成シート283を間欠的に接合した例である(接合部285)。図4Aに示す接合部385、図4Bに示す接合部485も同様の形態である。
【0110】
なお、図3Cに示す使い捨ておむつ201においては、立体ギャザー227のみに通気路形成シート283を接合し、立体ギャザー26(立体ギャザー伸縮材36の配置部)には通気路形成シートを接合していない。但し、立体ギャザー26(立体ギャザー伸縮材36の配置部)に通気路形成シートを接合してもよい。
【0111】
[2−5]製造方法:
本発明の使い捨ておむつの製造方法について説明する。
【0112】
本発明の使い捨ておむつは、例えば股下被包部の肌当接面を構成する部材に対して通気路形成シートを間欠的に接合する等の方法により製造することができる。他の部分については、一般的な使い捨ておむつの製造方法に準じて製造することができる。以下、図1A〜図1Eに示す使い捨ておむつ1を製造する場合の例により説明する。
【0113】
[2−5a]通気路形成シートの接合:
不織布シート32の一の側縁部(立体ギャザー26となる側の側縁部)を折り返し、基部と折り返し部の間に伸張状態の立体ギャザー伸縮材36を挟み込んで、ホットメルト接着剤等により固定し、立体ギャザー26を形成する。一方、不織布シート32の他の側縁部(サイドシート19となる側の側縁部)に通気路形成シート82を接合し、接合部84を形成する。図示の例ではヒートシールにより接合部84を形成している。そして、使い捨ておむつの胴周り方向(図面左右方向)に向かって間欠的に、おむつの前後方向(図面上下方向)に向かって間欠的に接合部84を形成している。
【0114】
[2−5b]トップシート複合体の形成:
通気路形成シート82が間欠的に接合された不織布シート32の前記他の側縁部には、ホットメルト接着剤等により前サイドフラップ72及び後サイドフラップ74を貼り合わせる。後サイドフラップ74の側縁部にはヒートシール等により止着テープ11を接合する。この構造体を「トップシート複合体」と称することにする。
【0115】
[2−5c]バックシート複合体の形成:
ホットメルト接着剤等により、カバーシート24の幅方向中央部に、バックシート20を貼り合わせ、更にバックシート20にウエスト伸縮材42を貼り合わせた構造体を形成する。この構造体を「バックシート複合体」と称することにする。
【0116】
[2−5d]吸収体複合体の形成:
吸収体22を図示されない上ティシュ及び下ティシュにより被包する。この構造体を「吸収体複合体」と称することにする。上ティシュ及び下ティシュの配置は、例えば図5C及び図5Dに示される吸収体522、上ティシュ554及び下ティシュ556と同様の配置とすればよい。
【0117】
[2−5e]使い捨ておむつの製造:
前記バックシート複合体の幅方向中央部に、前記吸収体複合体を配置し、前記バックシート複合体の幅方向側縁部に、伸張状態のレッグ伸縮材40を配置する。この際、前記吸収体複合体及び前記吸収体複合体を固定するためのホットメルト接着剤等を塗工しておく。
【0118】
レッグ伸縮材40の接着は、1)バックシート20、カバーシート24又はサイドシート19にホットメルト接着剤を連続的に塗工し、その塗工部分にレッグ伸縮材40を伸張状態で配置し、接着する方法、2)レッグ伸縮材40に直接ホットメルト接着剤を塗布ないしスプレーし、当該レッグ伸縮材40を伸張状態で接着する方法、3)バックシート20、カバーシート24の上部に、レッグ伸縮材40を伸張状態で配置しておき、その状態でホットメルト接着剤をスプレーし、バックシート20、カバーシート24とレッグ伸縮材40の双方にホットメルト接着剤を付着させ、接着する方法、4)バックシート20、カバーシート24の表面に、レッグ伸縮材40を伸張状態で配置しておき、その状態でホットメルト接着剤をスプレーないし連続的に塗工し、バックシート20、カバーシート24とレッグ伸縮材40の双方にホットメルト接着剤を付着させ、接着する方法等により行うことができる。このような方法により、レッグ伸縮材40を挟み込むバックシート20、カバーシート24とサイドシート19は連続面で接着される。
【0119】
これらの形態における「連続的に塗工」には接着剤を不織布シートの全面にベタ塗り又は全面にスプレーする形態のみならず、スパイラル状に塗工する形態等も含む。即ち、股下被包部の側縁に沿う方向に向かって接合部が連続的に形成されている形態であればよい。前記1)〜4)のいずれの方法を採用した場合でも、股下被包部の側縁に沿う方向に向かって接合部が連続的に形成される。従って、伸縮部80を構成するバックシート20、カバーシート24とサイドシート19との層間にはおむつの胴周り方向に向かう連続的な通気路は形成されないことになる。一方、サイドシート19と通気路形成シート82との層間には前記通気路が形成される。
【0120】
前記1)の接着方法は、スリットコーター(シムコーター)、カーテンスプレー、スパイラルスプレー、オメガコート等の手法により、前記2)の接着方法は、コームガン、オメガコート、サミット等の手法により、前記3)及び4)の接着方法は、オメガコート、サミット等の手法により、実施することができる。なお、オメガコートは、例えばオメガノズルヘッド(ITWダイナテック社製)を用いることにより、サミットは、例えばサミットノズル(ノードソン社製)を用いることにより実施することができる。
【0121】
前記吸収体複合体及びレッグ伸縮材40が配置されたバックシート複合体に対して前記トップシート複合体を貼り合わせる。これにより、吸収体複合体、レッグ伸縮材40がトップシート複合体とバックシート複合体の層間に固定される。このようにして、使い捨ておむつ1を製造することができる。
【0122】
また、前記のような一連の工程は、機械的な手段によって連続的に行うことが可能である。例えば、長尺のシート材をローラーから連続的に送出する等の方法・装置を採用することにより、多数の使い捨ておむつを連続的に製造することが可能となる。
【0123】
[3]使い捨ておむつの構成部材:
本発明の使い捨ておむつは、図1A及び図1Bに示す使い捨ておむつ1のように、少なくとも吸収体22を備える。そして、通常は、吸収体22の他に、トップシート18、バックシート20等を構成部材として備える。また、目的に応じて、立体ギャザー、各種伸縮材等の他の構成部材を備えていてもよい。
【0124】
[3−1]吸収体:
「吸収体」は、吸収性材料によって構成された構造体である。着用者の尿等を吸収し保持する目的で用いられる。前記吸収性材料としては、例えばフラッフパルプ、高吸水性ポリマー(Super Absorbent Polymer;以下、「SAP」と記す。)、親水性シート等を挙げることができる。前記フラッフパルプとしては木材パルプや非木材パルプを綿状に解繊したもの等を、前記SAPとしてはポリアクリル酸ナトリウム等を、前記親水性シートとしてはティシュ、吸収紙、親水化処理を行った不織布等を用いることが好ましい。
【0125】
「吸収体」としては、1種又は2種以上の吸収性材料をマット状に成形したものを用いることが好ましい。マットは単層であっても複層であってもよい。中でも、フラッフパルプ100質量部に対して、10〜500質量部のSAPを併用したものが好ましい。この際、SAPはフラッフパルプのマット中に混在させてもよいし、複数のフラッフパルプマットの層間に層状に配置して用いてもよい。
【0126】
なお、SAPの脱落を防止し、形状安定性を付与するために、吸収体全体を前記親水性シートによって被包しておくことが好ましい。図5C及び図5Dに示すように吸収体522は、親水性シートである上ティシュ554及び下ティシュ556によって吸収体522全体が被包されている。図1A及び図1Bに示す吸収体22も同様の構造である。即ち、図示されない上ティシュ及び下ティシュによって吸収体22全体が被包されている。
【0127】
「吸収体」は、目的に応じて矩形状、砂時計型等の所望の形状に成形されたものを用いればよい。例えば、図1A及び図1Bに示す吸収体22は、矩形状の吸収体を用いた例である。なお、「吸収体」は、通常、図1Bに示す吸収体22のように、その表面側をトップシート18によって被覆されるとともに、その裏面側をバックシート20によって被覆される。即ち、図1Bに示すように、吸収体22はトップシート18とバックシート20の層間に配置されることが一般的である。
【0128】
[3−2]トップシート:
「トップシート」は、吸収体の表面(おむつの装着時に着用者の肌と対向する側の面)を被覆するように配置されるシートである。着用者の尿等を透過させる必要があるため、その少なくとも一部(全部又は一部)が液透過性材料により構成される。
【0129】
前記液透過性材料としては、織布、不織布、多孔性フィルム等を挙げることができる。中でも、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、脂肪族ポリアミド等の熱可塑性樹脂からなる不織布に親水化処理を施したものを用いることが好ましい。
【0130】
前記不織布としては、エアースルー(カード熱風)、カードエンボス等の製法によって製造された不織布を好適に用いることができる。前記親水化処理は、不織布の原綿に対して界面活性剤を塗布、スプレー、含浸等させることにより行うことができる。
【0131】
トップシートは「少なくとも一部」が液透過性材料によって構成されている。その位置については特に限定されない。但し、平面視した場合に股下被包部における吸収体の配置位置と重畳する部分が液透過性材料により構成されていることが好ましい。
【0132】
なお、本発明の使い捨ておむつは、着用者の肌と対向する側の面全てがトップシートによってカバーされている必要はない。例えば、テープ型使い捨ておむつにおいては、図1A及び図1Bに示すように、おむつの胴周り方向中央部のみに液透過性材料からなるトップシート18を配置する場合がある。この際、おむつの胴周り方向側縁部には通気撥水性材料からなるサイドシート19を配置する形態を採用することが多い。前記通気撥水性材料としては、カードエンボス、スパンボンド等の製法により得られた不織布シートを用いることが好ましい。特に防水性が高いSMS、SMMS等の不織布シートを用いることが好ましい。
【0133】
[3−3]バックシート:
バックシートは、吸収体の裏面(おむつの装着時に着用者の肌と背向する側の面)を被覆するように配置されるシートである。バックシートは、着用者の尿がおむつ外部に漏洩してしまうことを防止するため、液不透過性材料によって構成される。
【0134】
バックシートの配置位置については特に制限はない。吸収体に吸収された尿の漏れを防止するという観点から、少なくとも吸収体の配置位置をカバーするようにバックシートが配置されていることが好ましい。
【0135】
前記液不透過性材料としては、例えば、ポリエチレン等の樹脂からなる液不透過性フィルム等を挙げることができる。中でも、微多孔性ポリエチレンフィルムを用いることが好ましい。この微多孔性ポリエチレンフィルムは0.1〜数μmの微細な孔が多数形成されたフィルムであり、液不透過性であるが透湿性を有する。従って、防漏性を確保しつつ、おむつ内部空間の蒸れを防止することができる。
【0136】
テープ型使い捨ておむつにおいては、図1B及び図1Cに示すようにバックシート20の外表面側にカバーシート24を貼り合わせる形態とすることが多い。このカバーシート24は、バックシート20を補強し、バックシート20の手触り(触感)を良好なものとするために用いられる。
【0137】
カバーシートを構成する材料としては、例えば、織布、不織布等を挙げることができる。中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の熱可塑性樹脂からなる乾式不織布、湿式不織布を用いることが好ましい。
【0138】
[3−4]立体ギャザー:
「立体ギャザー」は、おむつの肌当接面に配置された、立体的に起立する防漏壁である。着用者の肌に対して当接させ、レッグ伸縮材と相俟って排泄物の横漏れを防止する目的で用いられる。図1Bに示す立体ギャザー26のように、不織布シート32によって構成され、不織布シート32の層間に伸張状態の立体ギャザー伸縮材36が挟み込まれて固定された構造のものを用いることが多い。このような構造とすれば、立体ギャザー伸縮材36の収縮力によって立体ギャザー26が立体的に起立する。
【0139】
図1A及び図1Bに示すように立体ギャザー26は、吸収体22の両側に左右一対配置することが多い。但し、吸収体の両側に左右二対以上の立体ギャザーを配置してもよい。図3A〜図3Cに示す使い捨ておむつ201は、吸収体22の両側に立体ギャザー26に加えて立体ギャザー227を配置した例である。この形態において、おむつの胴周り方向内側に位置する立体ギャザー26は、主として着用者の股下部に当接して横漏れを防ぐものである。一方、おむつの胴周り方向外側に位置する立体ギャザー227は、主として着用者の脚周りに当接して横漏れを防ぐものである(「立体レッグギャザー」と称される場合がある。)。
【0140】
不織布シートの材質は特に限定されない。但し、サイドシートと同様に、通気撥水性材料からなる不織布シートを好適に用いることができる。
【0141】
不織布シートは、専ら立体ギャザーを形成するものであってもよいし、立体ギャザーとおむつの他の部材を形成するものであってもよい。パンツ型使い捨ておむつの場合、図5Cに示すように専ら立体ギャザーを形成する不織布シート532を用い、これを吸収性本体514に対して付設し、吸収性本体514と一体的に立体ギャザー526を構成する形態とすることが多い。一方、テープ型使い捨ておむつの場合、図1B及び図1Cに示すように撥水性不織布等からなる不織布シート32によって立体ギャザー26とサイドシート19を構成する形態とすることが多い。
【0142】
[3−5]吸収性本体:
「吸収性本体」は、吸収体が内包された吸収パッドである。吸収性本体は後述する外装体と一体となってパンツ型使い捨ておむつを構成する。「吸収パッド」とは、吸収体、トップシート及びバックシートが一体的に構成されたパッド状の部材を指す。
【0143】
例えば図5C及び図5Dに示す吸収性本体514のように、吸収体522の表面を被覆するトップシート518と、吸収体522の裏面を被覆するバックシート520とが、吸収体522の周縁部において貼り合わされ、トップシート518とバックシート520との層間に吸収体522が内包された構造のものを挙げることができる。なお、図6B〜図6Dに示す吸収性本体514は、図5A〜図5Eに示す吸収性本体514と同一の構造を有する。
【0144】
[3−6]外装体:
「外装体」とは、着用者の胴周りを被包する構造体である。「外装体」は単独で又は吸収性本体と一体となって一つのウエスト開口部及び一対のレッグ開口部が形成されたパンツ型を呈する。
【0145】
図5Aに示す外装体516は、着用者の胴周りを被包する前外装体562及び後外装体565を備えている。そして、吸収性本体514と一体となって一つのウエスト開口部510及び一対のレッグ開口部512が形成されたパンツ型を呈する。また、図6Aに示す外装体616は、前被包部602、股下被包部604及び後被包部606が一体的に構成され、外装体616単独で一つのウエスト開口部610及び一対のレッグ開口部612が形成されたパンツ型を呈する。
【0146】
外装体516,616において接合部507,508(接合部607,608)に代えて係合可能なファスナー部材が付設され、そのファスナー部材同士を相互に係合させることによってパンツ型とすることが可能な形態、又は前記ファスナー部材同士が予め係合されてパンツ型を呈している形態のものも「外装体」に含まれる。前記ファスナー部材としては、例えばメカニカルファスナー等を挙げることができる。
【0147】
外装体の材質は特に限定されない。但し、おむつ内部空間の蒸れを防止するべく通気性に優れた素材により構成することが好ましい。前記素材としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、その他の合成繊維からなる不織布等を挙げることができる。
【0148】
外装体は2枚以上の不織布が貼り合わされて構成されることが多い。例えば、図5Dに示す外装体516は2枚以上の不織布(インナーシート564,561、アウターシート566,563、押さえシート568)を貼り合わせた積層体によって構成されている。図6B〜図6Dに示す外装体616も2枚以上の不織布(インナーシート615、アウターシート617、押さえシート668)を貼り合わせた積層体によって構成されている。通常、前記2枚以上の不織布の層間には伸張状態の各種伸縮材が固定される。
【0149】
[3−7]おむつ本体:
テープ型の使い捨ておむつは、吸収性本体と外装体の2ピース構成を採らないことが多い。テープ型の使い捨ておむつにおいて、吸収体と、吸収体を被覆する各種シートが一体的に構成された構造体は「おむつ本体」と称される。「おむつ本体」は、各種シートの層間に吸収体が内包されており、おむつの本質的機能である吸収・保持機能を発揮する部材である。一方、吸収体を内包せず、吸収・保持機能が発揮されない部材(サイドシートとは別体のサイドフラップ、止着テープ等)は「おむつ本体」の構成部材ではない。
【0150】
例えば図1A及び図1Bに示す使い捨ておむつ1は、吸収体22と、吸収体22を被覆するトップシート18、サイドシート19、バックシート20及びカバーシート24が一体的に構成されたおむつ本体70を備えている。使い捨ておむつ1において、止着テープ11、前サイドフラップ72及び後サイドフラップ74は、おむつ本体70を構成しない。
【0151】
[3−8]各種伸縮材:
本発明の使い捨ておむつには、ウエスト伸縮材、レッグ伸縮材、タミー伸縮材等の伸縮材を配置することが好ましい。既述の如く、レッグ伸縮材等を本発明に言う「伸縮部」、「伸縮性不織布」を構成する伸縮材として利用することもできる。
【0152】
[3−8a]ウエスト伸縮材:
ウエスト伸縮材は、ウエスト被包部に配置される伸縮材である。ウエスト伸縮材によってウエスト被包部にウエストギャザーが形成される。
【0153】
ウエスト伸縮材は、おむつのウエスト端縁に沿って配置することが好ましい。「沿って」とは、基準となる部分に対して概ね平行であることを意味する。即ち、厳密な意味で平行である必要はない。但し、図1A及び図1Cに示すウエスト伸縮材42はウエスト端縁70c,70dと平行となるように配置されている。
【0154】
パンツ型の使い捨ておむつの場合、図6A、図6B及び図6Eに示すように、ウエスト伸縮材642として、複数本の線状伸縮材を用いることが多い。また、ウエスト端縁602c,606cに沿って、前被包部602と後被包部606の双方にウエスト伸縮材642を配置することが多い。図5A、図5B及び図5Eに示す使い捨ておむつ501のウエスト伸縮材542も同様の構成を採用している。
【0155】
一方、テープ型使い捨ておむつの場合、図1A及び図1Cに示すようにウエスト伸縮材42として、1枚の面状伸縮材(伸縮性フォーム等)を用いることが多い。図1A等に示す使い捨ておむつ1は、ウエスト端縁70c,70dに沿って、前被包部2及び後被包部6の双方にウエスト伸縮材42を配置している。但し、後被包部のウエスト端縁に沿って、後被包部のみにウエスト伸縮材を配置してもよい。
【0156】
[3−8b]レッグ伸縮材:
レッグ伸縮材は、股下被包部に配置される伸縮材である。レッグ伸縮材によって股下被包部にレッグギャザーが形成される。
【0157】
パンツ型使い捨ておむつの場合、図6A、図6B及び図6Eに示すように、レッグ伸縮材640として、複数本の線状伸縮材を用いることが多い。また、外装体616のレッグ開口部612の外縁に沿って、レッグ伸縮材640を曲線的に配置する形態を採用することが多い。この形態においては、図6Eに示すようにレッグ伸縮材640が股下被包部604における胴周り方向中央を横断しないように配置することが好ましい。この形態によれば、股下被包部604における胴周り方向中央にレッグ伸縮材640の収縮力が作用し難い。従って、吸収体522のヨレが防止され、着用者の股下に対し吸収体522がフィットし易くなる。
【0158】
図5Eに示す使い捨ておむつ501は、後外装体565のうち股下被包部504に、レッグ伸縮材540を直線的に配置している。レッグ伸縮材540はウエスト端縁565cと平行になるように配置されている。この構造においては、後外装体565のうち股下被包部504に位置する部分がレッグ伸縮材540の収縮に追従して吸収性本体514の側縁に向かって収縮する。従って、前記部分が着用者の脚周りに沿った形状に変形し、着用者の脚周りに対するフィット性を向上させる。
【0159】
また、図5Eに示す使い捨ておむつ501は、吸収性本体514における吸収体522の両側縁に沿って、レッグ伸縮材538を直線的に配置している。このような形態においてはレッグ伸縮材538,540及び前外装体562のタミー伸縮材544が一体となって着用者の脚周りに対するフィット性を向上させる。
【0160】
また、レッグ伸縮材538を配置すると、おむつの着用時において、吸収性本体514の両側縁が吸収体522よりも立ち上がった形態になり易い。このような形態は、排尿後に吸収性本体514の幅方向中央部(即ち吸収体522が配置されている部分)に尿が集まり易くなる。従って尿漏れを発生し難くすることができる。
【0161】
テープ型使い捨ておむつの場合、図1B及び図1Cに示すように、レッグ伸縮材40として、複数本の線状伸縮材を用いることが多い。また、少なくとも股下被包部4に、吸収体22の両側縁に沿うように、左右複数対の線状伸縮材を直線的に配置する形態を採用することが多い。
【0162】
[3−8c]タミー伸縮材:
タミー伸縮材は、タミー被包部に配置される伸縮材である。タミー伸縮材によってタミー被包部にタミーギャザーが形成される。主としてパンツ型の使い捨ておむつに配置される伸縮材である。
【0163】
パンツ型使い捨ておむつの場合、図6A、図6B及び図6Eに示すように、タミー伸縮材644として、複数本の線状伸縮材を用いることが多い。また、ウエスト端縁602c,606cに沿って直線的に、また、前被包部602と後被包部606の双方にタミー伸縮材644を配置することが多い。レッグ伸縮材の場合と同様の理由から、図6Eに示すように吸収体522の配置部位を横断しないようにタミー伸縮材644を配置することが好ましい。図5A、図5B及び図5Eに示す使い捨ておむつ501のタミー伸縮材544も同様の構成を採用している。
【0164】
[3−8d]伸縮材の構成、その他:
伸縮材としては、天然ゴムからなる平ゴム、合成ゴム(ウレタンゴム等)の弾性糸からなる糸ゴム等を好適に用いることができる。また、伸縮性ネット、伸縮性フィルム、伸縮性フォーム(ウレタンフォーム等)等を用いることもできる。
【0165】
伸縮材は、120〜400%の伸長状態で固定することが好ましく、200〜300%の伸長状態で固定することが好ましい。この範囲とすることで着用者に対して過度の締め付け力を作用させることなく、十分な伸縮力を作用させることができる。伸縮材は、接着剤を用いた接着、熱や超音波等による溶着によって固定することができる。前記接着剤としてはホットメルト接着剤、その他の流動性の高い接着剤を用いることができる。溶着の方法としてはヒートシール等を挙げることができる。
【0166】
伸縮材の固定の方法は特に限定されない。但し、伸縮材及び前記伸縮材を挟み込む不織布シートの少なくとも一つに、接着剤を塗工ないし噴霧し、固定する方法等を挙げることができる。塗工方法としては、例えばスパイラル塗工等を挙げることができる。
【0167】
パンツ型使い捨ておむつの場合、ウエスト伸縮材、レッグ伸縮材、タミー伸縮材とも、外装体を構成する複数のシートの層間に挟み込むように固定する等の方法で配置することができる。
【0168】
例えば、図5Dに示す使い捨ておむつ501においては、押さえシート568とアウターシート563,566の層間に挟み込むように、ウエスト伸縮材542を固定している。一方、図6Dに示す使い捨ておむつ601は、押さえシート668とアウターシート617の層間に挟み込むように、ウエスト伸縮材642を固定している。
【0169】
また、図5Eに示す使い捨ておむつ501においては、インナーシート561,564とアウターシート563,566の層間に挟み込むように、レッグ伸縮材540及びタミー伸縮材544を固定している。一方、図6Eに示す使い捨ておむつ601においては、インナーシート615とアウターシート617の層間に挟み込むように、レッグ伸縮材640及びタミー伸縮材644を固定している。
【0170】
但し、レッグ伸縮材については、吸収性本体を構成する複数のシートの層間に挟み込むように固定する等の方法で配置してもよい。例えば、図5Cに示す使い捨ておむつ501は、立体ギャザー526を形成するために吸収性本体514に貼り合わされる不織布シート532同士の層間又は不織布シート532とカバーシート524との層間に挟み込むように、レッグ伸縮材538を固定している。
【0171】
一方、テープ型使い捨ておむつの場合、ウエスト伸縮材、レッグ伸縮材とも、おむつ本体を構成する複数のシートの層間に挟み込むように固定する等の方法で配置することができる。例えば、トップシートとバックシートとの層間に挟み込むように、ウエスト伸縮材を固定することができる。
【0172】
また、図1Bに示す使い捨ておむつ1は、不織布シート32によって構成されるサイドシート19と、バックシート20との層間に挟み込むように、レッグ伸縮材40を固定している。但し、図1Bに示すように、サイドシート19とカバーシート24との層間に挟み込むように、レッグ伸縮材40を固定してもよい。
【0173】
[3−9]止着テープ:
「止着テープ」は、前被包部及び後被包部のいずれか一方を他方に対して止め付けるためのテープである。通常は、図1Aに示す止着テープ11のように、後被包部6の左右の側縁(後サイドフラップの側縁74a,74b)から腰周り方向外側に延出するように付設される。
【0174】
止着テープはファスニング部材を有することが好ましい。ファスニング部材の種類は特に限定されない。但し、メカニカルファスナー(面状ファスナー)を用いることが好ましい。メカニカルファスナーは止着力が高く、複数回の脱着を行っても止着力が低下し難い点で好ましい。例えば、図1Aに示すように止着テープ11を構成する基材50の先端近傍にメカニカルファスナーのフック材48を付設する。一方、図1Cに示すように前被包部2に、メカニカルファスナーのループ材46からなるフロントパッチ13を付設する形態とすることが多い。
【0175】
止着テープの数は特に限定されない。但し、着用者の体型(具体的には、ウエスト周り、脚周り等)の寸法に合わせて、適当な数の止着テープを付設すればよい。一般的には、乳幼児用の使い捨ておむつであれば一対(左右1個ずつ)、成人用の使い捨ておむつであれば二対(左右2個ずつ)が付設される。
【実施例】
【0176】
本発明の使い捨ておむつについて、図面を参照しながら更に具体的に説明する。但し、本発明の使い捨ておむつは、その発明特定事項を備えた使い捨ておむつを全て包含するものであり、以下の実施例に限定されるものではない。
【0177】
〔実施例1〕
実施例1として、図3A〜図3Cに示すテープ型の使い捨ておむつ201を作製した。このテープ型使い捨ておむつ201は、乳児用Lサイズのものであり、おむつ本体70の前後方向長さを485mm、幅を230mmの矩形状に構成した。
【0178】
おむつ本体70の側縁部にはレッグ伸縮材40として太さ620dtexの糸ゴムを配置した。レッグ伸縮材40は5mmピッチで左右3本ずつ配置した。おむつ本体70の側縁70a,70bから10mmの位置に最も外側に配されるレッグ伸縮材40が位置するように配置した。サイドシート19とバックシート20の層間及びサイドシート19とカバーシート24の層間に250%の伸張状態でレッグ伸縮材40を固定し、伸縮部280を構成した。
【0179】
サイドシート19の肌当接面には不織布シート233(通気路形成シート282)を股下被包部4の側縁(おむつ本体70の側縁70a,70b)に沿う方向に向かって間欠的に接合した。通気路形成シート282はスパンボンド不織布からなり、坪量18g/m2のポリプロピレン製不織布シートを用いた。この通気路形成シート282を超音波シールにてサイドシート19の肌当接面に接合した。接合部284は、より具体的には幅0.4mm、長さ10mmの矩形状接合部を複数個集合的に形成したものであり、前記矩形状接合部を股下被包部4の側縁に沿う方向に7mm間隔、おむつの胴周り方向に1mm間隔で配列するものとした。
【0180】
また、不織布シート233の一部により立体ギャザー227を形成した。立体ギャザー227の固定端(下端)から自由端(上端)までの長さは30mmとした。立体ギャザー227には立体ギャザー伸縮材237として糸ゴムを配置した。立体ギャザー伸縮材237は5mmピッチで左右4本ずつ配置した。立体ギャザー227の自由端から2mmの位置に最も自由端側に配される立体ギャザー伸縮材237が位置するように配置した。不織布シート234の基部279と不織布シート233との層間に300%の伸張状態で立体ギャザー伸縮材237を固定し、伸縮部281を構成した。
【0181】
立体ギャザー227の自由端から20mmの部分の肌当接面には不織布シート234(通気路形成シート283)を股下被包部4の側縁(おむつ本体70の側縁70a,70b)に沿う方向に向かって間欠的に接合した。通気路形成シート283を超音波シールにて不織布シート233の肌当接面に接合した。接合部285は、接合部284と同一形状の矩形状接合部を同一の形態にて形成した。不織布シート233,234としては、坪量15g/m2の撥水性のSMS不織布シートを用いた。
【産業上の利用可能性】
【0182】
本発明の使い捨ておむつは、乳幼児用又は介護を必要とする高齢者や障害者等の成人用の使い捨ておむつ、より具体的にはパンツ型使い捨ておむつやテープ型使い捨ておむつとして利用することができる。
【符号の説明】
【0183】
1:使い捨ておむつ、2:前被包部、4:股下被包部、6:後被包部、11:止着テープ、13:フロントパッチ、18:トップシート、19:サイドシート、20:バックシート、22:吸収体、24:カバーシート、26:立体ギャザー、32:不織布シート、36:立体ギャザー伸縮材、40:レッグ伸縮材、42:ウエスト伸縮材、46:ループ材、48:フック材、50:基材、70:おむつ本体、70a,70b:側縁、70c,70d:ウエスト端縁、72:前サイドフラップ、74:後サイドフラップ、74a,74b:側縁、80:伸縮部、82:通気路形成シート、84,84A,84B,84C:接合部、86:通気路、90,90A,90B,90C:線状接合部、92,92A,92B:ドット状接合部、201:使い捨ておむつ、227:立体ギャザー、233,234:不織布シート、237:立体ギャザー伸縮材、279:基部、280,281:伸縮部、282,283:通気路形成シート、284,285:接合部、301:使い捨ておむつ、327:立体ギャザー、333:不織布シート、378,379:折り返し部、381:伸縮部、383:通気路形成シート、427:立体ギャザー、433:不織布シート、478,479:折り返し部、481:伸縮部、482,483:通気路形成シート、501:使い捨ておむつ、502:前被包部、504:股下被包部、506:後被包部、507,508:接合部、510:ウエスト開口部、512:レッグ開口部、514:吸収性本体、516:外装体、518:トップシート、520:バックシート、522:吸収体、524:カバーシート、526:立体ギャザー、528:接合部、532:不織布シート、536:立体ギャザー伸縮材、538,540:レッグ伸縮材、542:ウエスト伸縮材、544:タミー伸縮材、554:上ティシュ、556:下ティシュ、564,561:インナーシート、562:前外装体、562a,562b:側縁、566,563:アウターシート、565:後外装体、565a,565b:側縁、565c:ウエスト端縁、568:押さえシート、580,581:伸縮部、582,583:通気路形成シート、584,585:接合部、601:使い捨ておむつ、602:前被包部、602a,602b:側縁、602c,606c:ウエスト端縁、604:股下被包部、606:後被包部、606a,606b:側縁、606c:ウエスト端縁、607,608:接合部、610:ウエスト開口部、612:レッグ開口部、615:インナーシート、61616:外装体、617:アウターシート、640:レッグ伸縮材、642:ウエスト伸縮材、644:タミー伸縮材、668:押さえシート。
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつに関するものである。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつは、着用者の腰周りを被包するように装着される吸収性物品であり、排泄物を吸収・保持させるための吸収体を備えている。
【0003】
前記のような使い捨ておむつにおいては、股下を被包する部分の側縁に沿って(例えばレッグ開口部の周縁に沿って)、伸張状態の伸縮材を固定することが行われている。この伸縮材は、着用感やフィット感を向上させ、レッグ開口部からの排泄物の漏れを防止する目的で固定されるものである。
【0004】
しかし、単に伸張状態の伸縮材を固定するのみでは、伸縮材固定部に伸縮性を付与することはできても、柔軟性、クッション性等が不十分となる場合がある。例えば、1)伸縮材による締め付けが強過ぎて着用者の肌にゴム跡(タイマーク)がつく、2)伸縮材固定部は接着剤の塗工や伸縮材の熱融着等によって硬くなり易いため、おむつの柔軟性や触感が損なわれる、3)特にレッグ開口部周縁が硬くなっていると、着用者自身の肌は勿論のこと、交換作業をする者の手指を傷つける場合がある、といった問題があった。
【0005】
そこで、使い捨ておむつにおいては、伸縮材固定部に伸縮性を付与しつつ、柔軟性、クッション性等を改善するための種々の提案がなされている。例えば、外層シート、内層シート及び複数本の弾性部材により吸収性物品の外包材が形成され、前記外層シート及び前記内層シートが、腰周り方向及びその直交方向に向かって間欠的に形成した接合部によって相互に接合される一方、前記弾性部材が前記接合部を通らないように配されたパンツ型吸収性物品が提案されている(特許文献1〜5参照)。
【0006】
このパンツ型吸収性物品では、前記弾性部材が前記外層シート及び前記内層シートに固定されないように構成されている。そして、ウエスト部の全周に、ウエスト部の外端部から内端部に亘って延びる複数本の襞が形成されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−136793号公報
【特許文献2】特開2008−136794号公報
【特許文献3】特開2008−142316号公報
【特許文献4】特開2008−142341号公報
【特許文献5】特開2008−142342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1〜5に記載のパンツ型吸収性物品は、弾性部材により外層シート及び内層シートをウエスト周方向に収縮させて複数本の襞を形成させるものである。そして、前記襞により形成される凸曲面が外装シートと内層シートの厚み方向にボリュームを出し、伸縮材配置部の柔軟性、クッション性等を改善することを企図していると考えられる。
【0009】
しかしながら、前記の構造は外装シートと内層シートの間欠的な接合部を通らないように弾性部材が配された特殊な構造である。この構造では弾性部材は外装シート及び内層シートの何れにも拘束されず、自由に伸張することができる。例えば製造時に300%の伸張率で弾性部材を配置しても、使用時において局所的にはその300%の伸張率を超えて弾性部材が伸張する場合が起こり得る。即ち、弾性部材が理想的な伸張率を超えて過度に伸張する場合がある。従って、硬く張り詰めた弾性部材が内層シートを介して肌に当接し、痛みや不快感を生ずるおそれがあるという課題があった。更に、前記の特殊な構造を得るために、製造に際して精密な接合技術が必要となり、製造が困難であるという課題もあった。
【0010】
本発明は、前記のような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであって、おむつの股下被包部の側縁部(例えばレッグ開口部の周縁部)の伸縮性、柔軟性、クッション性に優れ、容易に製造することができ、快適な着用感を得られる使い捨ておむつを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、前記のような従来技術の課題を解決するために鋭意検討した結果、1)少なくともおむつの股下被包部の側縁部に、伸縮材と不織布が一体的に挙動する伸縮性不織布からなる伸縮部を形成すること、2)股下被包部の側縁に沿う方向に収縮するように伸縮部を形成すること、3)少なくとも股下被包部の肌当接面の一部に撥水性不織布からなる通気路形成シートを配置すること、4)通気路形成シートを伸張状態の伸縮部に積層し、通気路形成シートと伸張状態の伸縮部を伸縮部の収縮方向に向かって間欠的に接合すること、によって、おむつの股下被包部の縁部にクッションとして機能する通気路構造が形成され、前記課題が解決されることに想到して、本発明を完成させた。具体的には、本発明により、以下の使い捨ておむつが提供される。
【0012】
[1]着用者の胴周りを被包する前被包部及び後被包部と、吸収体が配置され、着用者の股下を被包する股下被包部とを有し、少なくとも前記股下被包部の左右の側縁部に伸縮性不織布からなる伸縮部が形成され、前記伸縮部は前記股下被包部の側縁に沿う方向に収縮するように形成されており、前記股下被包部の肌当接面の一部に撥水性不織布からなる通気路形成シートが配置され、前記通気路形成シートは、伸張状態の前記伸縮部に積層され、前記通気路形成シートと伸張状態の前記伸縮部とが、前記伸縮部の収縮方向に向かって間欠的に形成された接合部により接合されている使い捨ておむつ。
【0013】
[2]前記股下被包部における少なくとも前記後被包部側の端部に伸縮性不織布からなる伸縮部が形成され、前記伸縮部は前記後被包部側の端縁に沿う方向に収縮するように形成されており、前記後被包部側の端部の肌当接面の一部に撥水性不織布からなる通気路形成シートが配置され、前記通気路形成シートは、伸張状態の前記伸縮部に積層され、前記通気路形成シートと伸張状態の前記伸縮部とが、前記伸縮部の収縮方向に向かって間欠的に形成された接合部により接合されている前記[1]に記載の使い捨ておむつ。
【0014】
[3]前記前被包部における少なくとも前記股下被包部側の端部に伸縮性不織布からなる伸縮部が形成され、前記伸縮部は前記股下被包部側の端縁に沿う方向に収縮するように形成されており、前記股下被包部側の端部の肌当接面の一部に撥水性不織布からなる通気路形成シートが配置され、前記通気路形成シートは、伸張状態の前記伸縮部に積層され、前記通気路形成シートと伸張状態の前記伸縮部とが、前記伸縮部の収縮方向に向かって間欠的に形成された接合部により接合されている前記[2]に記載の使い捨ておむつ。
【0015】
[4]前記股下被包部の側縁部に形成された伸縮部と、前記前被包部における前記股下被包部側の端部に形成された伸縮部及び前記股下被包部における前記後被包部側の端部に形成された伸縮部のうちの少なくとも一つとが連続的に配置され、着用者の脚周りを取り囲むレッグ伸縮部が形成されており、前記通気路形成シートは、伸張状態の前記レッグ伸縮部に積層され、前記通気路形成シートと伸張状態の前記レッグ伸縮部とが、前記レッグ伸縮部の収縮方向に向かって間欠的に形成された接合部により接合されている前記[3]に記載の使い捨ておむつ。
【0016】
[5]前記伸縮部は、複数の不織布シートの層間に伸張状態の伸縮材が配置されるとともに、前記伸縮材が前記複数の不織布シートに対して固着され、前記複数の不織布シート及び前記伸縮材が一体的に挙動するものである前記[1]〜[4]のいずれか一に記載の使い捨ておむつ。
【0017】
[6]前記伸縮部は、伸縮性フィルムが不織布シートに対して固着され、前記不織布シート及び前記伸縮性フィルムが一体的に挙動するものである前記[1]〜[4]のいずれか一に記載の使い捨ておむつ。
【0018】
[7]前記通気路形成シートと前記伸縮部とが、前記伸縮部の収縮方向に向かって間欠的に、かつ、前記伸縮部の収縮方向と直交する方向に向かって連続的に形成された接合部により接合されている前記[1]〜[6]のいずれか一に記載の使い捨ておむつ。
【0019】
[8]前記通気路形成シートと前記伸縮部とが、前記伸縮部の収縮方向と前記伸縮部の収縮方向と直交する方向の両方向に向かって間欠的に形成された接合部により接合されている前記[1]〜[6]のいずれか一に記載の使い捨ておむつ。
【発明の効果】
【0020】
本発明の使い捨ておむつは、おむつの股下被包部の側縁部(例えばレッグ開口部の周縁部)の伸縮性、柔軟性、クッション性に優れ、容易に製造することができ、快適な着用感を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1A】本発明の使い捨ておむつの一の実施形態を模式的に示す概略平面図である。
【図1B】図1Aに示す使い捨ておむつのA−A’切断端面を模式的に示す概略端面図である。
【図1C】図1Aに示す使い捨ておむつの概略裏面図である。
【図1D】図1Aに示す使い捨ておむつの伸縮部近傍を模式的に示す斜視図である。
【図1E】図1Dに示す使い捨ておむつのX−X’切断端面を模式的に示す概略端面図である。
【図1F】図1Aに示す使い捨ておむつの接合部の形態を拡大して模式的に示す概略平面図であり、通気路形成シートを剥離した状態を示すものである。
【図2A】使い捨ておむつの接合部の別の形態を拡大して模式的に示す概略平面図であり、通気路形成シートを剥離した状態を示すものである。
【図2B】使い捨ておむつの接合部の更に別の形態を拡大して模式的に示す概略平面図であり、通気路形成シートを剥離した状態を示すものである。
【図2C】使い捨ておむつの接合部の更にまた別の形態を拡大して模式的に示す概略平面図であり、通気路形成シートを剥離した状態を示すものである。
【図3A】本発明の使い捨ておむつの別の実施形態を模式的に示す概略平面図である。
【図3B】図3Aに示す使い捨ておむつのA−A’切断端面を模式的に示す概略端面図である。
【図3C】図3Aに示す使い捨ておむつの使用状態におけるA−A’切断端面を模式的に示す概略端面図である。
【図4A】本発明の使い捨ておむつの更に別の実施形態を模式的に示す概略端面図である。使用状態における図3Cに示す切断端面に対応する切断端面を示す図である。
【図4B】本発明の使い捨ておむつの更にまた別の実施形態を模式的に示す概略端面図である。使用状態における図3Cに示す切断端面に対応する切断端面を示す図である。
【図5A】本発明の使い捨ておむつの別の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【図5B】図5Aに示す使い捨ておむつを展開し、トップシート方向から見た状態を模式的に示す概略平面図である。
【図5C】図5Bに示す使い捨ておむつのA−A’切断端面を模式的に示す概略端面図である。
【図5D】図5Bに示す使い捨ておむつのB−B’切断端面を模式的に示す概略端面図である。
【図5E】図5Aに示す使い捨ておむつを展開し、アウターシート方向から見た状態を模式的に示す概略平面図である。
【図6A】本発明の使い捨ておむつの更に別の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【図6B】図6Aに示す使い捨ておむつを展開し、トップシート方向から見た状態を模式的に示す概略平面図である。
【図6C】図6Bに示す使い捨ておむつのA−A’切断端面を模式的に示す概略端面図である。
【図6D】図6Bに示す使い捨ておむつのB−B’切断端面を模式的に示す概略端面図である。
【図6E】図6Aに示す使い捨ておむつを展開し、アウターシート方向から見た状態を模式的に示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の使い捨ておむつを実施するための形態について具体的に説明する。
【0023】
[1]本発明の使い捨ておむつの基本的な構成:
本発明の使い捨ておむつは、図1A及び図1Cに示す使い捨ておむつ1のように、着用者の胴周りを被包する前被包部2及び後被包部6と、吸収体22が配置され、着用者の股下を被包する股下被包部4とを有するものである。
【0024】
[1−1]使い捨ておむつ:
「使い捨ておむつ」には、パンツ型、テープ型等の各種形態が含まれる。但し、本発明はその特定事項を備える使い捨ておむつを広く包含し、以下に示すパンツ型、テープ型等に限定されるものではない。
【0025】
[1−2]前被包部及び後被包部:
「前被包部」及び「後被包部」は、使い捨ておむつのうち、着用者の胴周りを被包する部分である。
【0026】
本明細書においては、吸収体が、股下被包部から前被包部及び後被包部にかけて連続的に配置されている場合において、前被包部及び後被包部における、吸収体の端縁及び前記端縁の延長線よりウエスト端縁側の部分を「ウエスト被包部」、前記吸収体の端縁及び前記端縁の延長線より股下側の部分を「タミー被包部」と称することにする。
【0027】
「胴周りを被包する」とは、使い捨ておむつの一部によって、着用者の胴を取り囲む筒状構造が形成された形態又は前記筒状構造が形成され得る形態であることを意味する。「筒状構造が形成された形態」のおむつとしては、パンツ型の使い捨ておむつを挙げることができる。
【0028】
「パンツ型」とは、図5Aに示す使い捨ておむつ501のように、予め一つのウエスト開口部510及び左右一対のレッグ開口部512が形成されたパンツ型を呈する使い捨ておむつを指す。
【0029】
図5B及び図5Eに示す使い捨ておむつ501は、前外装体562の側縁562a,562bと後外装体565の側縁565a,565bが相互に接合されて、着用者の胴を取り囲む筒状構造が形成された形態である。このような形態においては、外装体516のうち、左右の接合部507,508の間の領域によって前記筒状構造が形成される。従って、前記領域を前被包部502又は後被包部506と称することにする。
【0030】
図5A、図5B及び図5Eに示す使い捨ておむつ501は、外装体516が前外装体562と後外装体565から構成されている。但し、外装体が前後に分離されず、一体的に構成され、予め一つのウエスト開口部及び左右一対のレッグ開口部が形成されているものも「パンツ型」の一形態である。
【0031】
例えば、図6B及び図6Eに示す使い捨ておむつ601は、一体的に構成された外装体616の側縁602a,602bと側縁606a,606bが相互に接合されて、着用者の胴を取り囲む筒状構造が形成された形態である。このような形態においては、外装体616のうち、左右の接合部607,608の間の領域によって前記筒状構造が形成される。従って、前記領域を前被包部602又は後被包部606と称することにする。
【0032】
「筒状構造が形成され得る形態」のおむつとしては、疑似パンツ型又はテープ型の使い捨ておむつを挙げることができる。
【0033】
「疑似パンツ型」とは、図5A、図5B及び図5Eに示す使い捨ておむつ501又は図6A、図6B及び図6Eに示す使い捨ておむつ601と同様の形態において、接合部507,508又は接合部607,608に代えて、着脱可能なファスナー(メカニカルファスナー等)を付設した形態の使い捨ておむつを指す。
【0034】
このような「疑似パンツ型」では、ファスナーの係合力によって、外装体のうち着用者の前側を覆う部分と後側を覆う部分とをこれらの両側縁で着脱可能に係合させることができる。従って、着用者の胴を取り囲む筒状構造を形成することができる。「疑似パンツ型」については、外装体のうち、左右の両側縁のファスナーの間の領域によって前記筒状構造が形成される。従って、前記領域を前被包部又は後被包部と称することにする。
【0035】
「テープ型」は、図1A及び図1Cに示す使い捨ておむつ1のように、着用者の後側を被包する部分の左右の各側縁(図示の例では後サイドフラップ74の側縁74a,74b)から延出するように止着テープ11が付設された使い捨ておむつを指す。
【0036】
「テープ型」は、図1A及び図1Cに示すように、止着テープ11を構成する基材50にファスニング部材(図示の例ではメカニカルファスナーのフック材48)を有している。従って、着用者の前側を被包する部分のファスニング部材(図示の例ではフロントパッチ13を形成するメカニカルファスナーのループ材46)に止め付けることで、着用者の胴を取り囲む筒状構造を形成することができる。
【0037】
「テープ型」は「パンツ型」のように予め筒状構造が形成されているわけではない。従って、「テープ型」における「前被包部」、「後被包部」は、吸収体及び前記吸収体を被服するシート材(トップシート、バックシート、サイドシート等)により構成されるおむつ本体の形状に応じて以下のように定義することとする。
【0038】
おむつ本体が砂時計型(前後のウエスト端縁が幅広く、股下側に幅狭い括れを有する形状。図6Bに示す外装体616と同様の形状)に形成されている場合には、おむつ前側のウエスト端縁側の前記括れの起点同士を結ぶ直線と、おむつ前側のウエスト端縁との間の領域を「前被包部」、おむつ後側のウエスト端縁側の前記括れの起点同士を結ぶ直線と、おむつ後側のウエスト端縁との間の領域を「後被包部」と称することにする。
【0039】
図1A及び図1Cに示す使い捨ておむつ1のように、おむつ本体70のウエスト端縁70c側に、おむつ本体70とは別体の後サイドフラップ74が付設されるとともに、ウエスト端縁70d側にも、おむつ本体70とは別体の前サイドフラップ72が付設されている場合には、おむつ股下側における前サイドフラップ72とおむつ本体70の側縁70a,70bとの交点同士を結ぶ直線と、ウエスト端縁70dとの間の領域を「前被包部」、おむつ股下側における後サイドフラップ74とおむつ本体70の側縁70a,70bとの交点同士を結ぶ直線と、ウエスト端縁70cとの間の領域を「後被包部」と称することにする。
【0040】
なお、おむつ本体に、おむつ本体とは別体の後サイドフラップのみが付設され、前サイドフラップが付設されていない場合には、おむつ股下側における後サイドフラップとおむつ本体の側縁との交点同士を結ぶ直線と、ウエスト端縁との間の領域を「後被包部」、おむつ本体をウエスト端縁同士が重なるように折り畳んだ際に「後被包部」と重畳する領域を「前被包部」と称することにする。
【0041】
[1−3]股下被包部:
「股下被包部」は、使い捨ておむつのうち、着用者の股下を被包する部分を指す。換言すれば、前被包部と後被包部の間の部分である。
【0042】
股下被包部には、排泄物を吸収・保持させるための吸収体が配置される。吸収体の構成については特に限定されず、従来公知の吸収性物品に用いられる吸収体を用いることができる。吸収体の具体的な構成については後述する。
【0043】
図1A及び図1Cに示す使い捨ておむつ1においては、おむつ本体70によって股下被包部4が形成されている。そして、おむつ股下側における前サイドフラップ72とおむつ本体70の側縁70a,70bとの交点同士を結ぶ直線と、おむつ股下側における後サイドフラップ74とおむつ本体70の側縁70a,70bとの交点同士を結ぶ直線との間の領域が股下被包部4である。
【0044】
図5Dに示す使い捨ておむつ501においては、前外装体562と後外装体565との間に架け渡されるように吸収性本体514が配置され、接合されている(接合部528)。この形態においては、前外装体562によって前被包部502が、後外装体565の一部によって後被包部506が、後外装体565の一部と吸収性本体514の一部によって股下被包部504が形成されている。吸収体522は吸収性本体514の構成部材として配置されている。
【0045】
図6Bに示す使い捨ておむつ601においては、吸収性本体514及び外装体616によって股下被包部604が形成されている。そして、外装体616の側縁におけるウエスト端縁602c側の括れの起点同士を結ぶ直線と、ウエスト端縁606c側の括れの起点同士を結ぶ直線との間の領域が股下被包部604である。
【0046】
[2]本発明の使い捨ておむつの特徴的な構成:
本発明の使い捨ておむつは、図1A〜図1Cに示す使い捨ておむつ1のように、1)少なくともおむつの股下被包部4の側縁部に、伸縮材と不織布が一体的に挙動する伸縮性不織布からなる伸縮部80が形成されていること、2)股下被包部4の側縁(この例では、おむつ本体70の側縁70a,70b)に沿う方向に収縮するように伸縮部80が形成されていること、3)少なくとも股下被包部4の肌当接面の一部に撥水性不織布からなる通気路形成シート82が配置されていること、4)通気路形成シート82が伸張状態の伸縮部80に積層され、通気路形成シート82と伸張状態の伸縮部80が伸縮部80の収縮方向に向かって間欠的に接合された接合部84により接合されていること、を特徴とするものである。
【0047】
このような使い捨ておむつは、図1D及び図1Eに示すように、伸縮部80の収縮によって、通気路形成シート82の接合部84間の距離も狭められる。これにより、通気路形成シート82が撓んで波型に変形され、通気路形成シート82と伸縮部80のうち接合部84以外の部分(非接合部)が離間し、通気管、クッションとして機能する通気路86が形成される。
【0048】
通気路86は、エアクッションのように緩衝機能を発揮する。従って、肌当たりが柔らかく、おむつのウエスト周りの柔軟性を向上させることができる。即ち、着用者は快適な着用感を得ることができる。
【0049】
また、着用者が立位から座位をとった場合には、おむつは外側から圧縮されて、おむつの内部空間の湿気が通気路86を通過して外部空間に排出される。更に、着用者が歩行をすると、脚の動きでおむつの股下被包部が変形するために、その変形によっておむつの内部空間の湿気が外部空間に排出され、これと交換に外部空間の空気がおむつの内部空間に流入する。従って、おむつの内部空間を快適な環境にすることができる。
【0050】
[2−1]伸縮部:
伸縮部は、伸縮性不織布からなる。「伸縮性不織布」とは、不織布自体が伸縮性を有するもの、又は基材となる不織布に伸縮材(ゴムや熱可塑性エラストマー等の弾性材)を接合等することによって、不織布に伸縮性を付与したものを意味する。
【0051】
例えば、市販のエラスチック不織布、エラストマースパンボンド不織布等を用いることができる。具体的には、以下全て商品名で、ストラフレックス(出光ユニテック社製)、エスパンシオーネ(KBセーレン社製)等を好適に用いることができる。これらのエラスチック不織布、エラストマースパンボンド不織布は、不織布自体が伸縮性を有するものである。
【0052】
但し、伸縮性不織布として必ずしも前記のような不織布自体が伸縮性を有するものを用いる必要はない。不織布と伸縮材を適宜組み合わせ接合等することによって構成することもできる。即ち、伸縮性不織布が、複数の不織布シートの層間に伸張状態の伸縮材が配置されるとともに、伸縮材が複数の不織布シートに対して固着され、複数の不織布シート及び伸縮材が一体的に挙動するものであってもよい。例えば複数の不織布シートの層間に伸張状態の伸縮材が固定された構造の伸縮性不織布を挙げることができる。このような不織布と伸縮材が一体的に挙動する伸縮性不織布を用いることにより、特許文献1〜5のパンツ型吸収性物品とは異なり、伸縮材がシート幅以上に伸張することがなくなる。また、伸縮材が理想的な伸張率を超えて過度に伸張されることがない。
【0053】
また、伸縮性不織布は、伸縮性フィルムが不織布シートに対して固着され、不織布シート及び伸縮性フィルムが一体的に挙動するものであってもよい。このような伸縮性不織布も、複数の不織布シートの層間に伸張状態の伸縮材を固定した構造の伸縮性不織布と同様の効果を奏する。この形態の伸縮性不織布は、伸縮性フィルムの少なくとも一方の面に不織布シートが固定される。伸縮性フィルムの双方の面に不織布シートが固定されていてもよい。
【0054】
一般に、使い捨ておむつは、不織布の層間に線状の伸縮材を配した構造を有している。従って、必ずしも別途、伸縮性不織布を配する必要はなく、従来の使い捨ておむつの構造の一部を伸縮性不織布として利用して伸縮部を構成してもよい。
【0055】
また、図1Bに示す使い捨ておむつ1は、おむつ本体70を構成するサイドシート19とバックシート20との層間又はサイドシート19とカバーシート24との層間に、伸張状態のレッグ伸縮材40が配置されている。レッグ伸縮材40はサイドシート19、バックシート20及びカバーシート24に対して固着され、サイドシート19、バックシート20、カバーシート24及びレッグ伸縮材40によって一体的に挙動する伸縮性不織布(伸縮部80)が構成されている。
【0056】
また、図3Cに示す使い捨ておむつ201は、立体ギャザー227を構成する不織布シート233と不織布シート234の基部279との層間に、伸張状態の立体ギャザー伸縮材237が配置されている。立体ギャザー伸縮材237は不織布シート233、基部279に対して固着され、不織布シート233、基部279及び立体ギャザー伸縮材237によって一体的に挙動する伸縮性不織布(伸縮部281)が構成されている。
【0057】
一方、図5Cに示す使い捨ておむつ501は、立体ギャザー526を構成する不織布シート532の基部と折り返し部との層間に、伸張状態の立体ギャザー伸縮材536が配置されている。立体ギャザー伸縮材536は不織布シート532の基部と折り返し部に対して固着され、不織布シート532の基部、折り返し部及び立体ギャザー伸縮材536によって一体的に挙動する伸縮性不織布(伸縮部581)が構成されている。
【0058】
伸縮部は股下被包部の左右の側縁に沿う方向に収縮するように形成されている。例えば図1Bに示す使い捨ておむつ1は、股下被包部を構成するおむつ本体70の側縁70a,70bに沿う方向に収縮するように伸縮部80が形成されている。また、図5Cに示す使い捨ておむつ501は、股下被包部を構成する吸収性本体514の側縁に沿う方向に収縮するように伸縮部581が形成されている。図6Cに示す使い捨ておむつ601も、図5Cに示す使い捨ておむつ501と同一構造の伸縮部581が形成されている。
【0059】
「股下被包部の側縁に沿う方向に収縮するように形成」とは、伸縮性不織布が股下被包部の側縁に沿って伸張された際に股下被包部の側縁に沿って収縮力が作用するように、伸縮性不織布が配置されていることを意味する。最も簡単な構造としては、図1Cに示す使い捨ておむつ1のように、股下被包部4の側縁(おむつ本体70の側縁70a,70b)に沿って線状の伸縮材(この例ではレッグ伸縮材40)を配置する構成を挙げることができる。
【0060】
但し、伸縮性不織布が股下被包部の側縁に沿う方向に収縮する限り、図1Cに示す構成には限定されない。例えば股下被包部の側縁に沿う方向に対して左に凸ないし右に凸のカーブを描くように伸縮材が配置されていてもよい。
【0061】
本発明の使い捨ておむつにおいては、少なくとも股下被包部の左右の側縁部に前記伸縮部が形成されていればよい。但し、その他の部分に前記伸縮部が形成されていてもよい。その伸縮部に対して通気路形成シートを間欠的に接合することで、股下被包部の左右の側縁部と同様に、柔軟性を付与することができる。
【0062】
例えば、図5Eに示すように、股下被包部504における少なくとも後被包部506側の端部に伸縮性不織布からなる伸縮部580が形成され、伸縮部580は後被包部506側の端縁に沿う方向に収縮するように形成されている場合には、図5Bに示すように後被包部506側の端部の肌当接面の一部に撥水性不織布からなる通気路形成シート583が配置されていることが好ましい。通気路形成シート583が伸縮部に積層され、通気路形成シート583と伸縮部とが、伸縮部の収縮方向に向かって間欠的に形成された接合部585により接合されることによって、股下被包部504の後被包部506側の端部にも通気路構造を形成することができる。
【0063】
また、図5Eに示すように、前被包部502における少なくとも股下被包部504側の端部に伸縮性不織布からなる伸縮部580が形成され、伸縮部580が股下被包部504側の端縁に沿う方向に収縮するように形成されている場合には、図5Bに示すように股下被包部504側の端部の肌当接面の一部に撥水性不織布からなる通気路形成シート583が配置されていることが好ましい。通気路形成シート583が伸張状態の伸縮部に積層され、通気路形成シート583と伸張状態の伸縮部とが、伸縮部の収縮方向に向かって間欠的に形成された接合部585により接合されることによって、前被包部502の股下被包部504側の端部にも通気路構造を形成することができる。
【0064】
更に、図5A〜図5Eに示す使い捨ておむつ501のように、股下被包部504の側縁部に形成された伸縮部581と、前被包部502における股下被包部504側の端部に形成された伸縮部580及び股下被包部504における後被包部506側の端部に形成された伸縮部580のうちの少なくとも一つとが連続的に配置され、着用者の脚周りを取り囲むレッグ伸縮部が形成されていることが好ましい。通気路形成シート582,583が伸張状態のレッグ伸縮部に積層され、通気路形成シート582,583と伸張状態のレッグ伸縮部とが、レッグ伸縮部の収縮方向に向かって間欠的に形成された接合部584,585により接合されることによって、股下被包部504の通気路構造と、前被包部502及び/又は後被包部506の通気路構造が連続的に配置される。このような構造はレッグ伸縮部に柔軟性を付与できるため好ましい。
【0065】
[2−2]通気路形成シート:
本発明の使い捨ておむつは、図1Aに示す使い捨ておむつ1のように股下被包部4の肌当接面の一部に撥水性不織布からなる通気路形成シート82が配置される。この通気路形成シート82によって、おむつのレッグ開口部近傍等に通気管、クッションとして機能する通気路構造が形成される。
【0066】
「肌当接面」とは、使い捨ておむつの着用時に、着用者の肌に直接当たる面、即ち使い捨ておむつの最内面を意味する。「撥水性不織布」としては、後述するサイドシートと同様の素材を用いることができる。撥水性不織布を用いることで、通気路形成シートを伝った排泄物の漏れが生じ難くなる。
【0067】
「一部」とは、股下被包部の肌当接面の全部に通気路形成シートが配置されていなくてもよいことを意味する。通気路形成シートを配置する部位については特に限定されない。但し、図1Aに示すように、少なくとも股下被包部4の左右の側縁部(この例ではおむつ本体70の側縁70a,70b)に配置することが好ましい。その場合、図1Aに示すように、おむつ本体70の全長(ウエスト端縁70c,70d間の長さ)の60%以上をカバーするように配置することが好ましい。
【0068】
通気路形成シートの坪量は10〜50g/m2とすることが好ましい。10g/m2未満とすると、シートの嵩が小さ過ぎて伸縮材を固定する接着剤がシートを透過して染み出す、等の不具合を生ずるおそれがある。一方、50g/m2を超えると、1)シートの剛性が高過ぎて伸縮材の収縮に連動して撓み難くなり、通気路構造を形成し難くなる、2)シートの嵩が大き過ぎて股下被包部の側縁部(着用者の脚周りに当接する部分等)がゴワゴワし、着用感が低下する等のおそれがある。
【0069】
通気路形成シートは、図4Bに示す使い捨ておむつ401においては通気路形成シート482のように独立した部材として構成している。但し、通気路形成シートが独立した部材として構成されている必要はない。例えば図3Cに示す使い捨ておむつ201においては、伸縮性不織布(伸縮部281)を構成する不織布シート234の一部を折り返して折り返し部を形成し、折り返し部を通気路形成シート283として利用している。
【0070】
また、図4Aに示す使い捨ておむつ301においては、立体ギャザー327を構成する不織布シート333の一部を通気路形成シート383として利用している。図4Bに示す使い捨ておむつ401においても、立体ギャザー26,427を構成する不織布シート433の一部を通気路形成シート483として利用している。図4Aに示す使い捨ておむつ301及び図4Bに示す使い捨ておむつ401においては、不織布シート333,433に折り返し部378,379,478,479を形成し、折り返し部378,379,478,479によって伸縮部381,481を構成する不織布シートとしても利用している。
【0071】
通気路形成シートには、おむつの内部空間と、通気路形成シートによって形成された通気路とを連通させる孔が形成されていてもよい。このような構造とすることで、おむつの内部空間から孔を経由して通気路に湿気が流入し、通気路を経由しておむつの外部空間へ湿気が排出される。
【0072】
「孔」とは、おむつの内部空間と通気路とを連通させる開口部を意味し、その形状は特に限定されない。例えば、円形、楕円形、多角形(三角形、四角形等)等の形状を挙げることができる。
【0073】
なお、「孔」には常時開口しているもののみならず、開閉可能な構造のものも含まれる。例えば通気路形成シートに軌跡が凸形状のスリット又は交差する複数本のスリットを形成することにより、弁として機能する舌片を有する孔とすることができる。前記舌片により、通気路に尿や体液が侵入することを抑制しつつ、湿気を通過させることができる。
【0074】
スリットの形態は特に限定されない。「軌跡が凸形状のスリット」としては、a)湾曲部を有するスリット(逆U字状スリット等)、b)屈曲部を有するスリット(逆V字状スリット等)等を挙げることができる。また、「交差する複数本のスリット」としては、c)二本のスリットを交差させて形成した十字状のスリット、d)3本のスリットを交差させて形成した星型のスリット等を挙げることができる。
【0075】
前記の孔は、通気路形成シートのうち通気路が形成される部位(即ち、接合部間領域)に形成されることが好ましい。特に、図3Cに示す使い捨ておむつ201のように通気路形成シート283が不織布シート234の折り返し部により形成されたものである場合には、折り返し部の先端部近傍に孔が形成され、当該孔よりも更に折り返し部の先端寄りの部分が伸縮部に対して接合されていることが好ましい。このような形態は伸縮部の収縮によって孔が強制的に開放されるため好ましい。
【0076】
前記構成では強制的に開放された孔が通気路の端部開口となる。従って、おむつ内部空間の湿気は、強制的に開放された孔から通気路の内部に流入し、通気路を通過し、折り返し線の部分(図3Cの例では立体ギャザー227の上端縁)で通気路形成シートを透過しておむつの外部空間に排出される。このような構成は単に通気路形成シートに孔を形成した構造と比較して、湿気が通気路に流入し易く、湿気をおむつ外部に排出し易い点において好ましい。
【0077】
また、通気路形成シートには孔を複数形成してもよい。孔を複数形成することによって、通気性が向上し湿気をおむつ外部に排出し易くなる。
【0078】
「複数」の具体的な数は特に限定されない。孔の開口面積によっても異なる。開口面積が0.5〜10mm2の孔であれば5〜200個形成することが好ましく、10〜100個形成することが更に好ましい。5個以上とすることで通気性向上効果を得ることができる。一方、200個以下とすることで尿や体液が通気路に流入することを有効に防止することができる。
【0079】
通気路形成シートに薬剤を付着させておくことも好ましい形態の一つである。薬剤を付着させることにより、着用者の肌と直接接触する通気路形成シートに当該薬品に基づく薬効を付与することができる。
【0080】
薬剤の種類は特に限定されない。例えば保湿剤(アロエエキス、プロピレングリコール等);保湿効果を奏することに加え、ウレアーゼ阻害活性を有するスキンケア用添加物(ユーカリ抽出物等);の他、消毒剤、抗菌剤(エデト酢酸、塩化ベンザルコニウム等)、消臭剤(各種ポリフェノール化合物等)等を挙げることができる。
【0081】
[2−3]接合部:
本発明の使い捨ておむつにおいては、図1D及び図1Eに示すように通気路形成シート82が伸張状態の伸縮部80に積層され、通気路形成シート82と伸張状態の伸縮部80とが、伸縮部の収縮方向に沿う方向に向かって間欠的に形成された接合部84により接合されている。
【0082】
前記構造とすることで、伸縮部80の収縮に追従して通気路形成シート82の接合部84間距離も狭められ、股下被包部の側縁部におむつの内部空間と外部空間を連通する通気路86が形成される。この通気路86によりおむつの通気性・柔軟性が向上する。また、前記構造であれば、特許文献1〜5に記載のパンツ型吸収性物品のように伸縮材の位置を考慮してシート同士を接合する等の精密な接合技術は不要である。従って、容易に製造することができる。
【0083】
「伸張状態の伸縮部」とは、伸縮性不織布に対して収縮力が作用している状態の伸縮部を意味する。伸張状態の伸縮部に対して通気路形成シートを間欠的に接合することで、伸縮部の収縮に伴って通気路形成シートを撓ませることが可能となる。従って、伸縮部と通気路形成シートとの層間に通気路を形成することができる。
【0084】
不織布シートに伸縮性フィルムが固着された伸縮性不織布、エラスチック不織布又はエラストマースパンボンド不織布等は、自然状態(張力をかけていない状態)において原寸の状態となっており、収縮力は作用していない。従って、これらの伸縮性不織布等については原寸より伸張させた状態で通気路形成シートを接合する。一方、複数の不織布シートの層間に伸張状態の伸縮材が配置された伸縮性不織布等は自然状態において原寸より収縮された状態となっており、収縮力は作用していない。従って、このような伸縮性不織布等については収縮状態から伸張させた状態で通気路形成シートを接合する。
【0085】
伸縮部と通気路形成シートの接合は、伸縮部を構成する伸縮性不織布の表面と通気路形成シートとが接合されることで行われる。即ち、不織布シートの層間に配置される伸縮材や伸縮性フィルムと通気路形成シートが直接接合されることはない。
【0086】
「間欠的」とは、接合部が非連続的ないし断続的に形成されていることを意味する。この接合状態では、接合部においては伸縮部と通気路形成シートが一体不可分の状態となっている。一方、非接合部においては伸縮部と通気路形成シートが相互に拘束されず、自由に離間可能な状態となっている。
【0087】
本発明においては、通気路形成シートや伸縮部における一の接合部と他の接合部との間隙部が収縮して通気路を形成する。従って、接合部同士の間隔は股下被包部の側縁に沿う方向に向かって2〜50mmとすることが好ましく、5〜10mmとすることが特に好ましい。
【0088】
なお、「間欠的」とは伸縮部の収縮方向に対して間欠的であればよい。即ち、接合部が伸縮部の収縮方向と直交する方向に向かっていかなる形状に形成されているかは特に限定されない。但し、接合部は伸縮部の収縮方向と直交する方向に向かって連続的に形成されていることが好ましい。このような形態は、前記収縮方向と直交する方向に向かう効果的な通気路を形成することができ、肌触りにも優れる。例えば、伸縮部の収縮方向と直交する方向に向かって連続的に形成され、かつ、伸縮部の収縮方向に対して規則的な間隔で間欠的に形成された接合部等を挙げることができる。
【0089】
図1Bに示す使い捨ておむつ1では伸縮部80(伸縮性不織布)を構成する不織布シート32(サイドシート19)に対し、通気路形成シート82が接合されている(接合部84)。図1Fは図1A及び図1Bに示す使い捨ておむつ1の接合部84の形態を拡大して模式的に示す概略平面図であり、使い捨ておむつ1から通気路形成シート82を剥離した状態を模式的に示す平面図である。
【0090】
図1Fに示すように接合部84はおむつの胴周り方向(図面左右方向)に向かう、複数の線状接合部90からなる。そして、線状接合部90が股下被包部の側縁(おむつ本体70の側縁70a)に沿う方向に向かって間欠的に形成されている。更に、線状接合部90の各々は、複数のドット状接合部92がおむつの胴周り方向に向かって一列に配置された集合体として形成されている形態である。
【0091】
図1Fに示す例では、線状接合部90がおむつの胴周り方向に向かって配向している。従って、股下被包部の側縁に沿う方向に向かって配向させた場合と比較して湿気等が前記前後方向に向かって流れ易く、股下被包部の側縁(おむつ本体の側縁70a)側からの湿気等の排気を促進することができる。また、着用者の脚周りの曲線的な形状におむつを追従させ易く、フィット性、着用感にも優れる。
【0092】
なお、本明細書において「線状」というときは、おむつの胴周り方向に延びる形状を広く包含するものとし、いわゆる線状の他、帯状、短冊状等の形状も含むものとする。また、複数のドット状接合部が「集合体」と把握されるためには、隣接するドット状接合部との間隔が5mm以下であることを要する。
【0093】
また、図2Aに示す形態は、図1Fに示す形態と伸縮部の構成が同一で、接合部の形態が異なるものである。接合部84Aは、おむつの胴周り方向に向かう、複数の線状接合部90Aからなる。そして、線状接合部90Aが股下被包部の側縁(おむつ本体の側縁70a)に沿う方向に向かって間欠的に形成されている。更に、線状接合部90Aが円形状のドット状接合部92Aの集合体として形成されている。従って、図1Fに示す形態の効果に加えて、触感が硬くなり易い接合部84Aが肌に当たっても痛みを生じ難いという効果を奏する。
【0094】
また、図2Bに示す形態も、図1Fに示す形態と伸縮部の構成が同一で、接合部の形態が異なるものである。接合部84Bは、おむつの胴周り方向に向かう、複数の線状接合部90Bからなる。そして、線状接合部90Bが股下被包部の側縁(おむつ本体の側縁70a)に沿う方向に向かって間欠的に形成されている。
【0095】
更に、線状接合部90Bの各々は、複数のドット状接合部92Bがおむつの胴周り方向にn行、股下被包部の側縁(おむつ本体の側縁70a)に沿う方向にm列で、n<mを満たすマトリクス状に配置された集合体して形成されている形態である。この形態は「n<m」とすることで、各々の線状接合部90Bにおいて股下被包部の側縁に沿う方向に比して胴周り方向に、より多くのドット状接合部92Bを配置し、股下被包部の側縁に沿う方向より胴周り方向が長い線状に形成したものである。
【0096】
図2Bに示す例では、線状接合部90Bが円形状のドット状接合部92Bの集合体として形成され、そのドット状接合部92Bが2行5列のマトリクス状に配置された集合体として形成されている。
【0097】
前記のような形態では、幅1〜4mm×長さ2〜80mmの線状接合部を、長さ方向に1〜30箇所形成することが好ましい。各々の線状接合部は1個当たりの面積が1〜4mm2のドット状接合部を幅方向に0.5〜5mm間隔、長さ方向に0.5〜3mm間隔でマトリクス状に配置した集合体とすることが好ましい。
【0098】
図2A及び図2Bにおいては、線状接合部をドット状接合部の集合体として形成した例で説明した。但し、図2Cに示すように股下被包部の側縁(おむつ本体の側縁70a)に沿う方向に向かって間欠的に、かつ、おむつの胴周り方向に向かって連続的に形成された接合部84Cであることも好ましい(線状接合部90C)。図2Cに示す形態も、図1Fに示す形態と伸縮部の構成が同一で、接合部の形態が異なるものである。
【0099】
中でも、接合部84Cのように股下被包部の側縁(おむつ本体の側縁70a)に沿う方向と直交するように形成され、通気路が股下被包部の側縁を横切る方向に並んでいる形態が好ましい。この形態では通気路が股下被包部の側縁において、おむつの内部空間と外部空間を連通する。従って、十分な通気を図ることが可能となる。
【0100】
前記形態では、接合部がおむつの胴周り方向に延びる線状に形成されている。従って、股下被包部の側縁(おむつ本体の側縁70a)側からの湿気等の排気が促進される点において好ましい。同様の思想から、おむつの胴周り方向に複数の接合部を形成する場合に、その複数の接合部がおむつの胴周り方向に向かう一直線上に乗るように一列に整列させて形成することが好ましい(図2A及び図2Bに示す形態)。このように接合部を形成することで、おむつの胴周り方向に連続する直線的な通気路を形成し易くなる。このような構造は、形成される通気路が潰れ難くなり、通気性を向上させ易い点において好ましい。
【0101】
本発明の使い捨ておむつにおいては、通気路形成シートと伸縮部とが、おむつの胴周り方向と股下被包部の側縁に沿う方向の両方向に向かって間欠的に形成された接合部により接合されていることも好ましい。
【0102】
例えば、複数のドット状接合部が千鳥に配置されたものであってもよい。このような形態でも、伸縮部の収縮に追従して通気路形成シートが撓み、おむつの内部空間と外部空間を連通する通気路が形成される。従って、本発明の効果である股下被包部の側縁部の通気性、柔軟性を得ることができる。
【0103】
[2−4]適用箇所:
本発明の使い捨ておむつにおいては通気路構造を形成させる部位について特に限定はされない。例えば、以下のような部位に適用することができる。
【0104】
[2−4a]レッグ伸縮材配置部:
レッグ伸縮材の配置部は、不織布シートの層間に伸張状態のレッグ伸縮材が固定され、伸縮性不織布の構造を有する。そして、レッグ伸縮材は股下被包部の側縁に沿って配置されることが多い。従って、伸張状態のレッグ伸縮材配置部に通気路形成シートを間欠的に接合することにより、レッグ伸縮材配置部に通気路構造を形成することができる。
【0105】
例えば図1Bに示す使い捨ておむつ1は、サイドシート19とカバーシート24の層間に伸張状態のレッグ伸縮材40が固定された伸縮性不織布(伸縮部80)の構造を有する。即ち、伸縮部80は、立体ギャザー26の固定端(下端)と股下被包部4の側縁(おむつ本体70の側縁70a,70b)との間の領域に形成されている。そして、この伸縮部80に通気路形成シート82を間欠的に接合した例である(接合部84)。図3Cに示す接合部284、図4Aに示す接合部384、図4Bに示す接合部484も同様の形態である。
【0106】
また、図5Cに示す使い捨ておむつ501は、不織布シート532同士の層間に伸張状態のレッグ伸縮材538が固定された伸縮性不織布(伸縮部580)の構造を有する。即ち、伸縮部580は、立体ギャザー526の固定端(下端)と股下被包部504の側縁(吸収性本体514の側縁)との間の領域に形成されている。そして、この伸縮部580に通気路形成シート582を間欠的に接合した例である(接合部584)。
【0107】
[2−4b]立体ギャザー伸縮材配置部:
立体ギャザーの配置部は、不織布シートの層間に伸張状態の立体ギャザー伸縮材が固定され、伸縮性不織布の構造を有する。そして、立体ギャザーは股下被包部の側縁に沿う方向に形成されることが多い。従って、伸張状態の立体ギャザー伸縮材配置部に通気路形成シートを間欠的に接合することにより、立体ギャザー伸縮材配置部に通気路構造を形成することができる。
【0108】
例えば図5Cに示す使い捨ておむつ501は、不織布シート532の一部によって立体ギャザー526が形成されている。また、不織布シート532の基部と折り返し部の層間に伸張状態の立体ギャザー伸縮材536が固定された伸縮性不織布(伸縮部581)の構造を有する。即ち、伸縮部581は、立体ギャザー526の固定端(下端)と、自由端(上端)との間の領域に形成されている。そして、この伸縮部581に通気路形成シート582を間欠的に接合した例である(接合部584)。
【0109】
また、図3Cに示す使い捨ておむつ201は、不織布シート233の一部によって立体ギャザー227が形成されている。また、不織布シート233と不織布シート234の層間に伸張状態の立体ギャザー伸縮材237が固定された伸縮性不織布(伸縮部281)の構造を有する。即ち、伸縮部281は、立体ギャザー227の固定端(下端)と、自由端(上端)との間の領域に形成されている。そして、この伸縮部281に通気路形成シート283を間欠的に接合した例である(接合部285)。図4Aに示す接合部385、図4Bに示す接合部485も同様の形態である。
【0110】
なお、図3Cに示す使い捨ておむつ201においては、立体ギャザー227のみに通気路形成シート283を接合し、立体ギャザー26(立体ギャザー伸縮材36の配置部)には通気路形成シートを接合していない。但し、立体ギャザー26(立体ギャザー伸縮材36の配置部)に通気路形成シートを接合してもよい。
【0111】
[2−5]製造方法:
本発明の使い捨ておむつの製造方法について説明する。
【0112】
本発明の使い捨ておむつは、例えば股下被包部の肌当接面を構成する部材に対して通気路形成シートを間欠的に接合する等の方法により製造することができる。他の部分については、一般的な使い捨ておむつの製造方法に準じて製造することができる。以下、図1A〜図1Eに示す使い捨ておむつ1を製造する場合の例により説明する。
【0113】
[2−5a]通気路形成シートの接合:
不織布シート32の一の側縁部(立体ギャザー26となる側の側縁部)を折り返し、基部と折り返し部の間に伸張状態の立体ギャザー伸縮材36を挟み込んで、ホットメルト接着剤等により固定し、立体ギャザー26を形成する。一方、不織布シート32の他の側縁部(サイドシート19となる側の側縁部)に通気路形成シート82を接合し、接合部84を形成する。図示の例ではヒートシールにより接合部84を形成している。そして、使い捨ておむつの胴周り方向(図面左右方向)に向かって間欠的に、おむつの前後方向(図面上下方向)に向かって間欠的に接合部84を形成している。
【0114】
[2−5b]トップシート複合体の形成:
通気路形成シート82が間欠的に接合された不織布シート32の前記他の側縁部には、ホットメルト接着剤等により前サイドフラップ72及び後サイドフラップ74を貼り合わせる。後サイドフラップ74の側縁部にはヒートシール等により止着テープ11を接合する。この構造体を「トップシート複合体」と称することにする。
【0115】
[2−5c]バックシート複合体の形成:
ホットメルト接着剤等により、カバーシート24の幅方向中央部に、バックシート20を貼り合わせ、更にバックシート20にウエスト伸縮材42を貼り合わせた構造体を形成する。この構造体を「バックシート複合体」と称することにする。
【0116】
[2−5d]吸収体複合体の形成:
吸収体22を図示されない上ティシュ及び下ティシュにより被包する。この構造体を「吸収体複合体」と称することにする。上ティシュ及び下ティシュの配置は、例えば図5C及び図5Dに示される吸収体522、上ティシュ554及び下ティシュ556と同様の配置とすればよい。
【0117】
[2−5e]使い捨ておむつの製造:
前記バックシート複合体の幅方向中央部に、前記吸収体複合体を配置し、前記バックシート複合体の幅方向側縁部に、伸張状態のレッグ伸縮材40を配置する。この際、前記吸収体複合体及び前記吸収体複合体を固定するためのホットメルト接着剤等を塗工しておく。
【0118】
レッグ伸縮材40の接着は、1)バックシート20、カバーシート24又はサイドシート19にホットメルト接着剤を連続的に塗工し、その塗工部分にレッグ伸縮材40を伸張状態で配置し、接着する方法、2)レッグ伸縮材40に直接ホットメルト接着剤を塗布ないしスプレーし、当該レッグ伸縮材40を伸張状態で接着する方法、3)バックシート20、カバーシート24の上部に、レッグ伸縮材40を伸張状態で配置しておき、その状態でホットメルト接着剤をスプレーし、バックシート20、カバーシート24とレッグ伸縮材40の双方にホットメルト接着剤を付着させ、接着する方法、4)バックシート20、カバーシート24の表面に、レッグ伸縮材40を伸張状態で配置しておき、その状態でホットメルト接着剤をスプレーないし連続的に塗工し、バックシート20、カバーシート24とレッグ伸縮材40の双方にホットメルト接着剤を付着させ、接着する方法等により行うことができる。このような方法により、レッグ伸縮材40を挟み込むバックシート20、カバーシート24とサイドシート19は連続面で接着される。
【0119】
これらの形態における「連続的に塗工」には接着剤を不織布シートの全面にベタ塗り又は全面にスプレーする形態のみならず、スパイラル状に塗工する形態等も含む。即ち、股下被包部の側縁に沿う方向に向かって接合部が連続的に形成されている形態であればよい。前記1)〜4)のいずれの方法を採用した場合でも、股下被包部の側縁に沿う方向に向かって接合部が連続的に形成される。従って、伸縮部80を構成するバックシート20、カバーシート24とサイドシート19との層間にはおむつの胴周り方向に向かう連続的な通気路は形成されないことになる。一方、サイドシート19と通気路形成シート82との層間には前記通気路が形成される。
【0120】
前記1)の接着方法は、スリットコーター(シムコーター)、カーテンスプレー、スパイラルスプレー、オメガコート等の手法により、前記2)の接着方法は、コームガン、オメガコート、サミット等の手法により、前記3)及び4)の接着方法は、オメガコート、サミット等の手法により、実施することができる。なお、オメガコートは、例えばオメガノズルヘッド(ITWダイナテック社製)を用いることにより、サミットは、例えばサミットノズル(ノードソン社製)を用いることにより実施することができる。
【0121】
前記吸収体複合体及びレッグ伸縮材40が配置されたバックシート複合体に対して前記トップシート複合体を貼り合わせる。これにより、吸収体複合体、レッグ伸縮材40がトップシート複合体とバックシート複合体の層間に固定される。このようにして、使い捨ておむつ1を製造することができる。
【0122】
また、前記のような一連の工程は、機械的な手段によって連続的に行うことが可能である。例えば、長尺のシート材をローラーから連続的に送出する等の方法・装置を採用することにより、多数の使い捨ておむつを連続的に製造することが可能となる。
【0123】
[3]使い捨ておむつの構成部材:
本発明の使い捨ておむつは、図1A及び図1Bに示す使い捨ておむつ1のように、少なくとも吸収体22を備える。そして、通常は、吸収体22の他に、トップシート18、バックシート20等を構成部材として備える。また、目的に応じて、立体ギャザー、各種伸縮材等の他の構成部材を備えていてもよい。
【0124】
[3−1]吸収体:
「吸収体」は、吸収性材料によって構成された構造体である。着用者の尿等を吸収し保持する目的で用いられる。前記吸収性材料としては、例えばフラッフパルプ、高吸水性ポリマー(Super Absorbent Polymer;以下、「SAP」と記す。)、親水性シート等を挙げることができる。前記フラッフパルプとしては木材パルプや非木材パルプを綿状に解繊したもの等を、前記SAPとしてはポリアクリル酸ナトリウム等を、前記親水性シートとしてはティシュ、吸収紙、親水化処理を行った不織布等を用いることが好ましい。
【0125】
「吸収体」としては、1種又は2種以上の吸収性材料をマット状に成形したものを用いることが好ましい。マットは単層であっても複層であってもよい。中でも、フラッフパルプ100質量部に対して、10〜500質量部のSAPを併用したものが好ましい。この際、SAPはフラッフパルプのマット中に混在させてもよいし、複数のフラッフパルプマットの層間に層状に配置して用いてもよい。
【0126】
なお、SAPの脱落を防止し、形状安定性を付与するために、吸収体全体を前記親水性シートによって被包しておくことが好ましい。図5C及び図5Dに示すように吸収体522は、親水性シートである上ティシュ554及び下ティシュ556によって吸収体522全体が被包されている。図1A及び図1Bに示す吸収体22も同様の構造である。即ち、図示されない上ティシュ及び下ティシュによって吸収体22全体が被包されている。
【0127】
「吸収体」は、目的に応じて矩形状、砂時計型等の所望の形状に成形されたものを用いればよい。例えば、図1A及び図1Bに示す吸収体22は、矩形状の吸収体を用いた例である。なお、「吸収体」は、通常、図1Bに示す吸収体22のように、その表面側をトップシート18によって被覆されるとともに、その裏面側をバックシート20によって被覆される。即ち、図1Bに示すように、吸収体22はトップシート18とバックシート20の層間に配置されることが一般的である。
【0128】
[3−2]トップシート:
「トップシート」は、吸収体の表面(おむつの装着時に着用者の肌と対向する側の面)を被覆するように配置されるシートである。着用者の尿等を透過させる必要があるため、その少なくとも一部(全部又は一部)が液透過性材料により構成される。
【0129】
前記液透過性材料としては、織布、不織布、多孔性フィルム等を挙げることができる。中でも、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、脂肪族ポリアミド等の熱可塑性樹脂からなる不織布に親水化処理を施したものを用いることが好ましい。
【0130】
前記不織布としては、エアースルー(カード熱風)、カードエンボス等の製法によって製造された不織布を好適に用いることができる。前記親水化処理は、不織布の原綿に対して界面活性剤を塗布、スプレー、含浸等させることにより行うことができる。
【0131】
トップシートは「少なくとも一部」が液透過性材料によって構成されている。その位置については特に限定されない。但し、平面視した場合に股下被包部における吸収体の配置位置と重畳する部分が液透過性材料により構成されていることが好ましい。
【0132】
なお、本発明の使い捨ておむつは、着用者の肌と対向する側の面全てがトップシートによってカバーされている必要はない。例えば、テープ型使い捨ておむつにおいては、図1A及び図1Bに示すように、おむつの胴周り方向中央部のみに液透過性材料からなるトップシート18を配置する場合がある。この際、おむつの胴周り方向側縁部には通気撥水性材料からなるサイドシート19を配置する形態を採用することが多い。前記通気撥水性材料としては、カードエンボス、スパンボンド等の製法により得られた不織布シートを用いることが好ましい。特に防水性が高いSMS、SMMS等の不織布シートを用いることが好ましい。
【0133】
[3−3]バックシート:
バックシートは、吸収体の裏面(おむつの装着時に着用者の肌と背向する側の面)を被覆するように配置されるシートである。バックシートは、着用者の尿がおむつ外部に漏洩してしまうことを防止するため、液不透過性材料によって構成される。
【0134】
バックシートの配置位置については特に制限はない。吸収体に吸収された尿の漏れを防止するという観点から、少なくとも吸収体の配置位置をカバーするようにバックシートが配置されていることが好ましい。
【0135】
前記液不透過性材料としては、例えば、ポリエチレン等の樹脂からなる液不透過性フィルム等を挙げることができる。中でも、微多孔性ポリエチレンフィルムを用いることが好ましい。この微多孔性ポリエチレンフィルムは0.1〜数μmの微細な孔が多数形成されたフィルムであり、液不透過性であるが透湿性を有する。従って、防漏性を確保しつつ、おむつ内部空間の蒸れを防止することができる。
【0136】
テープ型使い捨ておむつにおいては、図1B及び図1Cに示すようにバックシート20の外表面側にカバーシート24を貼り合わせる形態とすることが多い。このカバーシート24は、バックシート20を補強し、バックシート20の手触り(触感)を良好なものとするために用いられる。
【0137】
カバーシートを構成する材料としては、例えば、織布、不織布等を挙げることができる。中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の熱可塑性樹脂からなる乾式不織布、湿式不織布を用いることが好ましい。
【0138】
[3−4]立体ギャザー:
「立体ギャザー」は、おむつの肌当接面に配置された、立体的に起立する防漏壁である。着用者の肌に対して当接させ、レッグ伸縮材と相俟って排泄物の横漏れを防止する目的で用いられる。図1Bに示す立体ギャザー26のように、不織布シート32によって構成され、不織布シート32の層間に伸張状態の立体ギャザー伸縮材36が挟み込まれて固定された構造のものを用いることが多い。このような構造とすれば、立体ギャザー伸縮材36の収縮力によって立体ギャザー26が立体的に起立する。
【0139】
図1A及び図1Bに示すように立体ギャザー26は、吸収体22の両側に左右一対配置することが多い。但し、吸収体の両側に左右二対以上の立体ギャザーを配置してもよい。図3A〜図3Cに示す使い捨ておむつ201は、吸収体22の両側に立体ギャザー26に加えて立体ギャザー227を配置した例である。この形態において、おむつの胴周り方向内側に位置する立体ギャザー26は、主として着用者の股下部に当接して横漏れを防ぐものである。一方、おむつの胴周り方向外側に位置する立体ギャザー227は、主として着用者の脚周りに当接して横漏れを防ぐものである(「立体レッグギャザー」と称される場合がある。)。
【0140】
不織布シートの材質は特に限定されない。但し、サイドシートと同様に、通気撥水性材料からなる不織布シートを好適に用いることができる。
【0141】
不織布シートは、専ら立体ギャザーを形成するものであってもよいし、立体ギャザーとおむつの他の部材を形成するものであってもよい。パンツ型使い捨ておむつの場合、図5Cに示すように専ら立体ギャザーを形成する不織布シート532を用い、これを吸収性本体514に対して付設し、吸収性本体514と一体的に立体ギャザー526を構成する形態とすることが多い。一方、テープ型使い捨ておむつの場合、図1B及び図1Cに示すように撥水性不織布等からなる不織布シート32によって立体ギャザー26とサイドシート19を構成する形態とすることが多い。
【0142】
[3−5]吸収性本体:
「吸収性本体」は、吸収体が内包された吸収パッドである。吸収性本体は後述する外装体と一体となってパンツ型使い捨ておむつを構成する。「吸収パッド」とは、吸収体、トップシート及びバックシートが一体的に構成されたパッド状の部材を指す。
【0143】
例えば図5C及び図5Dに示す吸収性本体514のように、吸収体522の表面を被覆するトップシート518と、吸収体522の裏面を被覆するバックシート520とが、吸収体522の周縁部において貼り合わされ、トップシート518とバックシート520との層間に吸収体522が内包された構造のものを挙げることができる。なお、図6B〜図6Dに示す吸収性本体514は、図5A〜図5Eに示す吸収性本体514と同一の構造を有する。
【0144】
[3−6]外装体:
「外装体」とは、着用者の胴周りを被包する構造体である。「外装体」は単独で又は吸収性本体と一体となって一つのウエスト開口部及び一対のレッグ開口部が形成されたパンツ型を呈する。
【0145】
図5Aに示す外装体516は、着用者の胴周りを被包する前外装体562及び後外装体565を備えている。そして、吸収性本体514と一体となって一つのウエスト開口部510及び一対のレッグ開口部512が形成されたパンツ型を呈する。また、図6Aに示す外装体616は、前被包部602、股下被包部604及び後被包部606が一体的に構成され、外装体616単独で一つのウエスト開口部610及び一対のレッグ開口部612が形成されたパンツ型を呈する。
【0146】
外装体516,616において接合部507,508(接合部607,608)に代えて係合可能なファスナー部材が付設され、そのファスナー部材同士を相互に係合させることによってパンツ型とすることが可能な形態、又は前記ファスナー部材同士が予め係合されてパンツ型を呈している形態のものも「外装体」に含まれる。前記ファスナー部材としては、例えばメカニカルファスナー等を挙げることができる。
【0147】
外装体の材質は特に限定されない。但し、おむつ内部空間の蒸れを防止するべく通気性に優れた素材により構成することが好ましい。前記素材としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、その他の合成繊維からなる不織布等を挙げることができる。
【0148】
外装体は2枚以上の不織布が貼り合わされて構成されることが多い。例えば、図5Dに示す外装体516は2枚以上の不織布(インナーシート564,561、アウターシート566,563、押さえシート568)を貼り合わせた積層体によって構成されている。図6B〜図6Dに示す外装体616も2枚以上の不織布(インナーシート615、アウターシート617、押さえシート668)を貼り合わせた積層体によって構成されている。通常、前記2枚以上の不織布の層間には伸張状態の各種伸縮材が固定される。
【0149】
[3−7]おむつ本体:
テープ型の使い捨ておむつは、吸収性本体と外装体の2ピース構成を採らないことが多い。テープ型の使い捨ておむつにおいて、吸収体と、吸収体を被覆する各種シートが一体的に構成された構造体は「おむつ本体」と称される。「おむつ本体」は、各種シートの層間に吸収体が内包されており、おむつの本質的機能である吸収・保持機能を発揮する部材である。一方、吸収体を内包せず、吸収・保持機能が発揮されない部材(サイドシートとは別体のサイドフラップ、止着テープ等)は「おむつ本体」の構成部材ではない。
【0150】
例えば図1A及び図1Bに示す使い捨ておむつ1は、吸収体22と、吸収体22を被覆するトップシート18、サイドシート19、バックシート20及びカバーシート24が一体的に構成されたおむつ本体70を備えている。使い捨ておむつ1において、止着テープ11、前サイドフラップ72及び後サイドフラップ74は、おむつ本体70を構成しない。
【0151】
[3−8]各種伸縮材:
本発明の使い捨ておむつには、ウエスト伸縮材、レッグ伸縮材、タミー伸縮材等の伸縮材を配置することが好ましい。既述の如く、レッグ伸縮材等を本発明に言う「伸縮部」、「伸縮性不織布」を構成する伸縮材として利用することもできる。
【0152】
[3−8a]ウエスト伸縮材:
ウエスト伸縮材は、ウエスト被包部に配置される伸縮材である。ウエスト伸縮材によってウエスト被包部にウエストギャザーが形成される。
【0153】
ウエスト伸縮材は、おむつのウエスト端縁に沿って配置することが好ましい。「沿って」とは、基準となる部分に対して概ね平行であることを意味する。即ち、厳密な意味で平行である必要はない。但し、図1A及び図1Cに示すウエスト伸縮材42はウエスト端縁70c,70dと平行となるように配置されている。
【0154】
パンツ型の使い捨ておむつの場合、図6A、図6B及び図6Eに示すように、ウエスト伸縮材642として、複数本の線状伸縮材を用いることが多い。また、ウエスト端縁602c,606cに沿って、前被包部602と後被包部606の双方にウエスト伸縮材642を配置することが多い。図5A、図5B及び図5Eに示す使い捨ておむつ501のウエスト伸縮材542も同様の構成を採用している。
【0155】
一方、テープ型使い捨ておむつの場合、図1A及び図1Cに示すようにウエスト伸縮材42として、1枚の面状伸縮材(伸縮性フォーム等)を用いることが多い。図1A等に示す使い捨ておむつ1は、ウエスト端縁70c,70dに沿って、前被包部2及び後被包部6の双方にウエスト伸縮材42を配置している。但し、後被包部のウエスト端縁に沿って、後被包部のみにウエスト伸縮材を配置してもよい。
【0156】
[3−8b]レッグ伸縮材:
レッグ伸縮材は、股下被包部に配置される伸縮材である。レッグ伸縮材によって股下被包部にレッグギャザーが形成される。
【0157】
パンツ型使い捨ておむつの場合、図6A、図6B及び図6Eに示すように、レッグ伸縮材640として、複数本の線状伸縮材を用いることが多い。また、外装体616のレッグ開口部612の外縁に沿って、レッグ伸縮材640を曲線的に配置する形態を採用することが多い。この形態においては、図6Eに示すようにレッグ伸縮材640が股下被包部604における胴周り方向中央を横断しないように配置することが好ましい。この形態によれば、股下被包部604における胴周り方向中央にレッグ伸縮材640の収縮力が作用し難い。従って、吸収体522のヨレが防止され、着用者の股下に対し吸収体522がフィットし易くなる。
【0158】
図5Eに示す使い捨ておむつ501は、後外装体565のうち股下被包部504に、レッグ伸縮材540を直線的に配置している。レッグ伸縮材540はウエスト端縁565cと平行になるように配置されている。この構造においては、後外装体565のうち股下被包部504に位置する部分がレッグ伸縮材540の収縮に追従して吸収性本体514の側縁に向かって収縮する。従って、前記部分が着用者の脚周りに沿った形状に変形し、着用者の脚周りに対するフィット性を向上させる。
【0159】
また、図5Eに示す使い捨ておむつ501は、吸収性本体514における吸収体522の両側縁に沿って、レッグ伸縮材538を直線的に配置している。このような形態においてはレッグ伸縮材538,540及び前外装体562のタミー伸縮材544が一体となって着用者の脚周りに対するフィット性を向上させる。
【0160】
また、レッグ伸縮材538を配置すると、おむつの着用時において、吸収性本体514の両側縁が吸収体522よりも立ち上がった形態になり易い。このような形態は、排尿後に吸収性本体514の幅方向中央部(即ち吸収体522が配置されている部分)に尿が集まり易くなる。従って尿漏れを発生し難くすることができる。
【0161】
テープ型使い捨ておむつの場合、図1B及び図1Cに示すように、レッグ伸縮材40として、複数本の線状伸縮材を用いることが多い。また、少なくとも股下被包部4に、吸収体22の両側縁に沿うように、左右複数対の線状伸縮材を直線的に配置する形態を採用することが多い。
【0162】
[3−8c]タミー伸縮材:
タミー伸縮材は、タミー被包部に配置される伸縮材である。タミー伸縮材によってタミー被包部にタミーギャザーが形成される。主としてパンツ型の使い捨ておむつに配置される伸縮材である。
【0163】
パンツ型使い捨ておむつの場合、図6A、図6B及び図6Eに示すように、タミー伸縮材644として、複数本の線状伸縮材を用いることが多い。また、ウエスト端縁602c,606cに沿って直線的に、また、前被包部602と後被包部606の双方にタミー伸縮材644を配置することが多い。レッグ伸縮材の場合と同様の理由から、図6Eに示すように吸収体522の配置部位を横断しないようにタミー伸縮材644を配置することが好ましい。図5A、図5B及び図5Eに示す使い捨ておむつ501のタミー伸縮材544も同様の構成を採用している。
【0164】
[3−8d]伸縮材の構成、その他:
伸縮材としては、天然ゴムからなる平ゴム、合成ゴム(ウレタンゴム等)の弾性糸からなる糸ゴム等を好適に用いることができる。また、伸縮性ネット、伸縮性フィルム、伸縮性フォーム(ウレタンフォーム等)等を用いることもできる。
【0165】
伸縮材は、120〜400%の伸長状態で固定することが好ましく、200〜300%の伸長状態で固定することが好ましい。この範囲とすることで着用者に対して過度の締め付け力を作用させることなく、十分な伸縮力を作用させることができる。伸縮材は、接着剤を用いた接着、熱や超音波等による溶着によって固定することができる。前記接着剤としてはホットメルト接着剤、その他の流動性の高い接着剤を用いることができる。溶着の方法としてはヒートシール等を挙げることができる。
【0166】
伸縮材の固定の方法は特に限定されない。但し、伸縮材及び前記伸縮材を挟み込む不織布シートの少なくとも一つに、接着剤を塗工ないし噴霧し、固定する方法等を挙げることができる。塗工方法としては、例えばスパイラル塗工等を挙げることができる。
【0167】
パンツ型使い捨ておむつの場合、ウエスト伸縮材、レッグ伸縮材、タミー伸縮材とも、外装体を構成する複数のシートの層間に挟み込むように固定する等の方法で配置することができる。
【0168】
例えば、図5Dに示す使い捨ておむつ501においては、押さえシート568とアウターシート563,566の層間に挟み込むように、ウエスト伸縮材542を固定している。一方、図6Dに示す使い捨ておむつ601は、押さえシート668とアウターシート617の層間に挟み込むように、ウエスト伸縮材642を固定している。
【0169】
また、図5Eに示す使い捨ておむつ501においては、インナーシート561,564とアウターシート563,566の層間に挟み込むように、レッグ伸縮材540及びタミー伸縮材544を固定している。一方、図6Eに示す使い捨ておむつ601においては、インナーシート615とアウターシート617の層間に挟み込むように、レッグ伸縮材640及びタミー伸縮材644を固定している。
【0170】
但し、レッグ伸縮材については、吸収性本体を構成する複数のシートの層間に挟み込むように固定する等の方法で配置してもよい。例えば、図5Cに示す使い捨ておむつ501は、立体ギャザー526を形成するために吸収性本体514に貼り合わされる不織布シート532同士の層間又は不織布シート532とカバーシート524との層間に挟み込むように、レッグ伸縮材538を固定している。
【0171】
一方、テープ型使い捨ておむつの場合、ウエスト伸縮材、レッグ伸縮材とも、おむつ本体を構成する複数のシートの層間に挟み込むように固定する等の方法で配置することができる。例えば、トップシートとバックシートとの層間に挟み込むように、ウエスト伸縮材を固定することができる。
【0172】
また、図1Bに示す使い捨ておむつ1は、不織布シート32によって構成されるサイドシート19と、バックシート20との層間に挟み込むように、レッグ伸縮材40を固定している。但し、図1Bに示すように、サイドシート19とカバーシート24との層間に挟み込むように、レッグ伸縮材40を固定してもよい。
【0173】
[3−9]止着テープ:
「止着テープ」は、前被包部及び後被包部のいずれか一方を他方に対して止め付けるためのテープである。通常は、図1Aに示す止着テープ11のように、後被包部6の左右の側縁(後サイドフラップの側縁74a,74b)から腰周り方向外側に延出するように付設される。
【0174】
止着テープはファスニング部材を有することが好ましい。ファスニング部材の種類は特に限定されない。但し、メカニカルファスナー(面状ファスナー)を用いることが好ましい。メカニカルファスナーは止着力が高く、複数回の脱着を行っても止着力が低下し難い点で好ましい。例えば、図1Aに示すように止着テープ11を構成する基材50の先端近傍にメカニカルファスナーのフック材48を付設する。一方、図1Cに示すように前被包部2に、メカニカルファスナーのループ材46からなるフロントパッチ13を付設する形態とすることが多い。
【0175】
止着テープの数は特に限定されない。但し、着用者の体型(具体的には、ウエスト周り、脚周り等)の寸法に合わせて、適当な数の止着テープを付設すればよい。一般的には、乳幼児用の使い捨ておむつであれば一対(左右1個ずつ)、成人用の使い捨ておむつであれば二対(左右2個ずつ)が付設される。
【実施例】
【0176】
本発明の使い捨ておむつについて、図面を参照しながら更に具体的に説明する。但し、本発明の使い捨ておむつは、その発明特定事項を備えた使い捨ておむつを全て包含するものであり、以下の実施例に限定されるものではない。
【0177】
〔実施例1〕
実施例1として、図3A〜図3Cに示すテープ型の使い捨ておむつ201を作製した。このテープ型使い捨ておむつ201は、乳児用Lサイズのものであり、おむつ本体70の前後方向長さを485mm、幅を230mmの矩形状に構成した。
【0178】
おむつ本体70の側縁部にはレッグ伸縮材40として太さ620dtexの糸ゴムを配置した。レッグ伸縮材40は5mmピッチで左右3本ずつ配置した。おむつ本体70の側縁70a,70bから10mmの位置に最も外側に配されるレッグ伸縮材40が位置するように配置した。サイドシート19とバックシート20の層間及びサイドシート19とカバーシート24の層間に250%の伸張状態でレッグ伸縮材40を固定し、伸縮部280を構成した。
【0179】
サイドシート19の肌当接面には不織布シート233(通気路形成シート282)を股下被包部4の側縁(おむつ本体70の側縁70a,70b)に沿う方向に向かって間欠的に接合した。通気路形成シート282はスパンボンド不織布からなり、坪量18g/m2のポリプロピレン製不織布シートを用いた。この通気路形成シート282を超音波シールにてサイドシート19の肌当接面に接合した。接合部284は、より具体的には幅0.4mm、長さ10mmの矩形状接合部を複数個集合的に形成したものであり、前記矩形状接合部を股下被包部4の側縁に沿う方向に7mm間隔、おむつの胴周り方向に1mm間隔で配列するものとした。
【0180】
また、不織布シート233の一部により立体ギャザー227を形成した。立体ギャザー227の固定端(下端)から自由端(上端)までの長さは30mmとした。立体ギャザー227には立体ギャザー伸縮材237として糸ゴムを配置した。立体ギャザー伸縮材237は5mmピッチで左右4本ずつ配置した。立体ギャザー227の自由端から2mmの位置に最も自由端側に配される立体ギャザー伸縮材237が位置するように配置した。不織布シート234の基部279と不織布シート233との層間に300%の伸張状態で立体ギャザー伸縮材237を固定し、伸縮部281を構成した。
【0181】
立体ギャザー227の自由端から20mmの部分の肌当接面には不織布シート234(通気路形成シート283)を股下被包部4の側縁(おむつ本体70の側縁70a,70b)に沿う方向に向かって間欠的に接合した。通気路形成シート283を超音波シールにて不織布シート233の肌当接面に接合した。接合部285は、接合部284と同一形状の矩形状接合部を同一の形態にて形成した。不織布シート233,234としては、坪量15g/m2の撥水性のSMS不織布シートを用いた。
【産業上の利用可能性】
【0182】
本発明の使い捨ておむつは、乳幼児用又は介護を必要とする高齢者や障害者等の成人用の使い捨ておむつ、より具体的にはパンツ型使い捨ておむつやテープ型使い捨ておむつとして利用することができる。
【符号の説明】
【0183】
1:使い捨ておむつ、2:前被包部、4:股下被包部、6:後被包部、11:止着テープ、13:フロントパッチ、18:トップシート、19:サイドシート、20:バックシート、22:吸収体、24:カバーシート、26:立体ギャザー、32:不織布シート、36:立体ギャザー伸縮材、40:レッグ伸縮材、42:ウエスト伸縮材、46:ループ材、48:フック材、50:基材、70:おむつ本体、70a,70b:側縁、70c,70d:ウエスト端縁、72:前サイドフラップ、74:後サイドフラップ、74a,74b:側縁、80:伸縮部、82:通気路形成シート、84,84A,84B,84C:接合部、86:通気路、90,90A,90B,90C:線状接合部、92,92A,92B:ドット状接合部、201:使い捨ておむつ、227:立体ギャザー、233,234:不織布シート、237:立体ギャザー伸縮材、279:基部、280,281:伸縮部、282,283:通気路形成シート、284,285:接合部、301:使い捨ておむつ、327:立体ギャザー、333:不織布シート、378,379:折り返し部、381:伸縮部、383:通気路形成シート、427:立体ギャザー、433:不織布シート、478,479:折り返し部、481:伸縮部、482,483:通気路形成シート、501:使い捨ておむつ、502:前被包部、504:股下被包部、506:後被包部、507,508:接合部、510:ウエスト開口部、512:レッグ開口部、514:吸収性本体、516:外装体、518:トップシート、520:バックシート、522:吸収体、524:カバーシート、526:立体ギャザー、528:接合部、532:不織布シート、536:立体ギャザー伸縮材、538,540:レッグ伸縮材、542:ウエスト伸縮材、544:タミー伸縮材、554:上ティシュ、556:下ティシュ、564,561:インナーシート、562:前外装体、562a,562b:側縁、566,563:アウターシート、565:後外装体、565a,565b:側縁、565c:ウエスト端縁、568:押さえシート、580,581:伸縮部、582,583:通気路形成シート、584,585:接合部、601:使い捨ておむつ、602:前被包部、602a,602b:側縁、602c,606c:ウエスト端縁、604:股下被包部、606:後被包部、606a,606b:側縁、606c:ウエスト端縁、607,608:接合部、610:ウエスト開口部、612:レッグ開口部、615:インナーシート、61616:外装体、617:アウターシート、640:レッグ伸縮材、642:ウエスト伸縮材、644:タミー伸縮材、668:押さえシート。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の胴周りを被包する前被包部及び後被包部と、吸収体が配置され、着用者の股下を被包する股下被包部とを有し、
少なくとも前記股下被包部の左右の側縁部に伸縮性不織布からなる伸縮部が形成され、前記伸縮部は前記股下被包部の側縁に沿う方向に収縮するように形成されており、
前記股下被包部の肌当接面の一部に撥水性不織布からなる通気路形成シートが配置され、
前記通気路形成シートは、伸張状態の前記伸縮部に積層され、
前記通気路形成シートと伸張状態の前記伸縮部とが、前記伸縮部の収縮方向に向かって間欠的に形成された接合部により接合されている使い捨ておむつ。
【請求項2】
前記股下被包部における少なくとも前記後被包部側の端部に伸縮性不織布からなる伸縮部が形成され、前記伸縮部は前記後被包部側の端縁に沿う方向に収縮するように形成されており、
前記後被包部側の端部の肌当接面の一部に撥水性不織布からなる通気路形成シートが配置され、
前記通気路形成シートは、伸張状態の前記伸縮部に積層され、
前記通気路形成シートと伸張状態の前記伸縮部とが、前記伸縮部の収縮方向に向かって間欠的に形成された接合部により接合されている請求項1に記載の使い捨ておむつ。
【請求項3】
前記前被包部における少なくとも前記股下被包部側の端部に伸縮性不織布からなる伸縮部が形成され、前記伸縮部は前記股下被包部側の端縁に沿う方向に収縮するように形成されており、
前記股下被包部側の端部の肌当接面の一部に撥水性不織布からなる通気路形成シートが配置され、
前記通気路形成シートは、伸張状態の前記伸縮部に積層され、
前記通気路形成シートと伸張状態の前記伸縮部とが、前記伸縮部の収縮方向に向かって間欠的に形成された接合部により接合されている請求項2に記載の使い捨ておむつ。
【請求項4】
前記股下被包部の側縁部に形成された伸縮部と、前記前被包部における前記股下被包部側の端部に形成された伸縮部及び前記股下被包部における前記後被包部側の端部に形成された伸縮部のうちの少なくとも一つとが連続的に配置され、着用者の脚周りを取り囲むレッグ伸縮部が形成されており、
前記通気路形成シートは、伸張状態の前記レッグ伸縮部に積層され、
前記通気路形成シートと伸張状態の前記レッグ伸縮部とが、前記レッグ伸縮部の収縮方向に向かって間欠的に形成された接合部により接合されている請求項3に記載の使い捨ておむつ。
【請求項5】
前記伸縮部は、複数の不織布シートの層間に伸張状態の伸縮材が配置されるとともに、前記伸縮材が前記複数の不織布シートに対して固着され、前記複数の不織布シート及び前記伸縮材が一体的に挙動するものである請求項1〜4のいずれか一項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項6】
前記伸縮部は、伸縮性フィルムが不織布シートに対して固着され、前記不織布シート及び前記伸縮性フィルムが一体的に挙動するものである請求項1〜4のいずれか一項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項7】
前記通気路形成シートと前記伸縮部とが、前記伸縮部の収縮方向に向かって間欠的に、かつ、前記伸縮部の収縮方向と直交する方向に向かって連続的に形成された接合部により接合されている請求項1〜6のいずれか一項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項8】
前記通気路形成シートと前記伸縮部とが、前記伸縮部の収縮方向と前記伸縮部の収縮方向と直交する方向の両方向に向かって間欠的に形成された接合部により接合されている請求項1〜6のいずれか一項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項1】
着用者の胴周りを被包する前被包部及び後被包部と、吸収体が配置され、着用者の股下を被包する股下被包部とを有し、
少なくとも前記股下被包部の左右の側縁部に伸縮性不織布からなる伸縮部が形成され、前記伸縮部は前記股下被包部の側縁に沿う方向に収縮するように形成されており、
前記股下被包部の肌当接面の一部に撥水性不織布からなる通気路形成シートが配置され、
前記通気路形成シートは、伸張状態の前記伸縮部に積層され、
前記通気路形成シートと伸張状態の前記伸縮部とが、前記伸縮部の収縮方向に向かって間欠的に形成された接合部により接合されている使い捨ておむつ。
【請求項2】
前記股下被包部における少なくとも前記後被包部側の端部に伸縮性不織布からなる伸縮部が形成され、前記伸縮部は前記後被包部側の端縁に沿う方向に収縮するように形成されており、
前記後被包部側の端部の肌当接面の一部に撥水性不織布からなる通気路形成シートが配置され、
前記通気路形成シートは、伸張状態の前記伸縮部に積層され、
前記通気路形成シートと伸張状態の前記伸縮部とが、前記伸縮部の収縮方向に向かって間欠的に形成された接合部により接合されている請求項1に記載の使い捨ておむつ。
【請求項3】
前記前被包部における少なくとも前記股下被包部側の端部に伸縮性不織布からなる伸縮部が形成され、前記伸縮部は前記股下被包部側の端縁に沿う方向に収縮するように形成されており、
前記股下被包部側の端部の肌当接面の一部に撥水性不織布からなる通気路形成シートが配置され、
前記通気路形成シートは、伸張状態の前記伸縮部に積層され、
前記通気路形成シートと伸張状態の前記伸縮部とが、前記伸縮部の収縮方向に向かって間欠的に形成された接合部により接合されている請求項2に記載の使い捨ておむつ。
【請求項4】
前記股下被包部の側縁部に形成された伸縮部と、前記前被包部における前記股下被包部側の端部に形成された伸縮部及び前記股下被包部における前記後被包部側の端部に形成された伸縮部のうちの少なくとも一つとが連続的に配置され、着用者の脚周りを取り囲むレッグ伸縮部が形成されており、
前記通気路形成シートは、伸張状態の前記レッグ伸縮部に積層され、
前記通気路形成シートと伸張状態の前記レッグ伸縮部とが、前記レッグ伸縮部の収縮方向に向かって間欠的に形成された接合部により接合されている請求項3に記載の使い捨ておむつ。
【請求項5】
前記伸縮部は、複数の不織布シートの層間に伸張状態の伸縮材が配置されるとともに、前記伸縮材が前記複数の不織布シートに対して固着され、前記複数の不織布シート及び前記伸縮材が一体的に挙動するものである請求項1〜4のいずれか一項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項6】
前記伸縮部は、伸縮性フィルムが不織布シートに対して固着され、前記不織布シート及び前記伸縮性フィルムが一体的に挙動するものである請求項1〜4のいずれか一項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項7】
前記通気路形成シートと前記伸縮部とが、前記伸縮部の収縮方向に向かって間欠的に、かつ、前記伸縮部の収縮方向と直交する方向に向かって連続的に形成された接合部により接合されている請求項1〜6のいずれか一項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項8】
前記通気路形成シートと前記伸縮部とが、前記伸縮部の収縮方向と前記伸縮部の収縮方向と直交する方向の両方向に向かって間欠的に形成された接合部により接合されている請求項1〜6のいずれか一項に記載の使い捨ておむつ。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【公開番号】特開2012−210318(P2012−210318A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77350(P2011−77350)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(390036799)王子ネピア株式会社 (387)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(390036799)王子ネピア株式会社 (387)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】
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