使い捨ておむつ
【課題】本発明の主たる課題は、使い捨ておむつ、特にパンツ型おむつにおいて、着用者が無理な姿勢を取らずに吸収パッドの交換ができる使い捨ておむつを提供する。
【解決手段】
股間部より前側に延在する腹側部及び股間部より後側に延在する背側部を有し、腹側部と背側部とが環状の胴回り部をなすように予めまたは使用時に一体化されて、胴回り開口および左右一対の脚周り開口が形成される使い捨ておむつにおいて、前記腹側部及び背側部の少なくとも一方の胴回り部構成部分は、幅方向中央部に位置する第1の部分がその両側の第2の部分に対して分離せずに縦方向にスライド可能とする。
【解決手段】
股間部より前側に延在する腹側部及び股間部より後側に延在する背側部を有し、腹側部と背側部とが環状の胴回り部をなすように予めまたは使用時に一体化されて、胴回り開口および左右一対の脚周り開口が形成される使い捨ておむつにおいて、前記腹側部及び背側部の少なくとも一方の胴回り部構成部分は、幅方向中央部に位置する第1の部分がその両側の第2の部分に対して分離せずに縦方向にスライド可能とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内装する吸収パッドの交換が容易な使い捨ておむつに関する発明である。
【背景技術】
【0002】
例えば、成人向けおむつは、パンツタイプ、テープタイプのものが知られるが、廃棄物の削減や経済性等を考慮して、何れも内部に吸収パッドを装着して使用されるのが一般的である。
吸収パッドの交換の際に、テープタイプ使い捨ておむつにおいては、テープをはがしておむつを展開させる必要があり、また、パンツタイプ使い捨ておむつにおいても、少なくともおむつを膝あたりまで下ろす必要があり、その作業は煩雑である。特にパンツタイプ使い捨ておむつは、介護者ではなく着用者自身が吸収パッドの交換をする場合が多いところ、おむつをずりおろして吸収パッドの交換を行う操作は、着用者が腰をかがめる等の無理な姿勢を取らなければならない、という問題があった。
一方、予めパンツタイプ使い捨ておむつのように形成されているもののテープタイプ使い捨ておむつのように展開可能なおむつも知られており、このおむつは、テープタイプ使い捨ておむつのように展開できるため介護者が吸収パッド及びおむつ本体の交換をしやすい、という利点を有するが、着用者自身が吸収パッドの交換をする場合には、前述のパンツタイプ使い捨ておむつと同様に理由により吸収パッドが交換しづらい、という問題を依然として有するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−204688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の主たる課題は、使い捨ておむつの内面に敷いた吸収パッドの交換をより容易にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決した本発明は次記の通りである。
<請求項1記載の発明>
股間部より前側に延在する腹側部及び股間部より後側に延在する背側部を有し、
腹側部と背側部とが環状の胴回り部をなすように予めまたは使用時に一体化されて、胴回り開口および左右一対の脚周り開口が形成される、使い捨ておむつにおいて、
前記腹側部及び背側部の少なくとも一方の胴回り部構成部分は、幅方向中央部に位置する第1の部分がその両側の第2の部分に対して分離せずに縦方向にスライド可能なように構成された、
ことを特徴とする使い捨ておむつ。
【0006】
(作用効果)
本発明に係る使い捨ておむつは、着用状態で腹側部の中央部分とそれに連なる内装体を備えた股間部を下方にスライドすることが可能な構成となっている。腹側中央部をスライド下降させることで、脚周り開口が広がるため、脚周りに隙間が生じ、当該隙間を介して、吸収パッドの交換を行うことが可能となる。
【0007】
<請求項2記載の発明>
前記第1の部分の幅方向両側部に、前記胴回り開口から前記脚周り開口まで縦断するレール部材が設けられ、
前記第2の部分の幅方向中央部の側部に、前記レール部材に咬み合い且つ前記レール部材の延在方向に移動可能な咬合部が設けられており、
前記第1の部分の幅方向両側部と前記第2の部分の幅方向中央側の側部とが重なり、前記レール部に前記咬合部が咬み合わさることにより、前記第1の部分がその両側の第2の部分に対して分離せずに縦方向にスライド可能なように構成されている、請求項1記載の使い捨ておむつ。
【0008】
(作用効果)
スライド部分をレール部材及びそれと咬み合う部材とすることで、腹側中央部を上下両方向にスライド移動させることが可能であり、またスライド移動を複数回繰り返すことが可能となる。
【0009】
<請求項3記載の発明>
前記第1の部分における前記第2の部分との重なり部、及び前記第2の部分における前記第1の部分との重なり部とが着脱可能に固定される固定手段が設けられた、請求項2記載の使い捨ておむつ。
【0010】
(作用効果)
着用時の予期せぬずり落ちや、腹側中央部と側部の完全な分離を避けるため、レール部材上下端の近傍に着脱可能な固定手段を設け、スライド移動を要しない時にはレール部材を固定できる構成とした。
【0011】
<請求項4記載の発明>
前記第1の部分の外側に第2の部分が重なるように構成されるとともに、前記固定手段が、前記レール部材及び咬合部よりも幅方向外側に設けられている、請求項3記載の使い捨ておむつ。
【0012】
(作用効果)
腹側両側部(第2の部分)を腹側中央部(第1の部分)の外側に配することで、腹側中央部を腹側両側部が外側から押さえ、より安定した形態となる。また、レール部材の固定手段をレール部材より幅方向外側に配することにより、腹側両側部の中央側端部のめくれ等により外れにくく、より安定した固定が可能である。
【0013】
<請求項5記載の発明>
前記レール部材は前記第1の部分に着脱可能な係止手段により固定されており、前記係止手段の剥離により、前記レール部材と前記第2の部分とが前記第1の部分から分離されるように構成された、請求項4記載の使い捨ておむつ。
【0014】
(作用効果)
レール部、咬合部とは別に、腹側の両側部と中央部とを着脱可能に固定する係止手段を有し、当該係止部分を剥離することによって、おむつを展開状態とすることができるようにした。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、吸収パッド交換時に腹側中央部から股間部を下方にスライド移動させることによって、着用状態のまま脚周り開口部を介して吸収パッドを交換することができる。このような構成とすることで、吸収パッド交換時におむつを展開状態にしたり、膝辺りまで下ろすことなく簡便に吸収パッドを交換することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】展開状態のパンツタイプ使い捨ておむつの平面図(内面側)である。
【図2】図1より弾性部材を省略した平面図である。
【図3】展開状態のパンツタイプ使い捨ておむつの平面図(外側)である。
【図4】図1のC−C矢視図である。
【図5】図1のA−A矢視図である。
【図6】図1のB−B矢視図である。
【図7】パンツタイプ使い捨ておむつの装着状態の斜視図である。
【図8】腹側中央部を下方向にスライド移動させた状態のパンツ型使い捨ておむつの斜視図である。
【図9】スライド部の構造を示す平面図である。
【図10】スライド部の断面図である。(A)凹状レールを有するスライド部、(B)凸状レールを有するスライド部。
【図11】図3のD−D矢視図である。
【図12】本発明に係るテープ式使い捨ておむつの例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しつつ詳説する。
図1〜図8は実施形態の一例としてパンツ式使い捨ておむつ1を示している。パンツ式の使い捨ておむつ1(以下、単におむつともいう。)は、背側Bから腹側Fの中央部にまで達する外装シート20Aと腹側両側部の一対の外装シート20Bとを有し、この外装シート20A,20Bの内面に固定され一体化された内装体10を有しており、内装体10は液透過性表面シート11と液不透過性裏面側シート12との間に吸収体13が介在されてなるものである。製造に際しては、外装シート20A,20Bが一体化された状態で外装シート20Aの内面(上面)に対して内装体10の裏面がホットメルト接着剤Gなどの接合手段によって固定された後に、内装体10および外装シート20が腹側部F及び背側部Bの境界である縦方向(前後方向)中央で折り畳まれ、その両側部が相互に熱溶着またはホットメルト接着剤などによって接合されることによって、ウエスト開口部及び左右一対のレッグ開口部が形成されたパンツタイプ使い捨ておむつとなる。なお、本発明におけるおむつの製造方法は上記記載の方法に限定されるものではない。
【0018】
(吸収性本体の構造例)
吸収性本体10は、図5及び図6に示すように、不織布などからなる液透過性表面シート11と、ポリエチレン等からなる液不透過性裏面側シート12との間に、吸収体13を介在させた構造を有しており、表面シート11を透過した排泄液を吸収保持するものである。
【0019】
吸収体13の表面側(肌当接面側)を覆う液透過性表面シート11としては、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維は、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高でソフトである点で優れている。液透過性表面シート11に多数の透孔を形成した場合には、尿などが速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。液透過性表面シート11は、吸収体13の側縁部を巻き込んで吸収体13の裏面側まで延在している。
【0020】
吸収体13の裏面側(非肌当接面側)を覆う液不透過性裏面側シート12は、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどの液不透過性プラスチックシートが用いられるが、近年はムレ防止の点から透湿性を有するものが好適に用いられる。この遮水・透湿性シートは、たとえばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂中に無機充填材を溶融混練してシートを形成した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートである。
【0021】
吸収体13としては、公知のもの、例えばパルプ繊維の積繊体、セルロースアセテート等のフィラメントの集合体、あるいは不織布を基本とし、必要に応じて高吸収性ポリマーを混合、固着等してなるものを用いることができ、図示例では平面形状を略方形状として成形されたものが使用され、その幅寸法は股間部への当たりによって着用者にゴワ付き感を与えない寸法幅となっている。この吸収体13は、形状及びポリマー保持等のため、必要に応じてクレープ紙等の、液透過性及び液保持性を有する包装シート14によって包装することができる。吸収体13の形状は、図示形態のように長方形状とする他、背側及び腹側に対して股間部の幅が狭い砂時計形状(括れ形状)とすることもできる。
【0022】
吸収性本体10の両側部には脚周りにフィットする立体ギャザーBSが形成されているのが好ましい。この立体ギャザーBSはギャザー不織布15により形成される、ギャザー不織布としては、図5に示されるように、折返しによって二重シートとした不織布が好適に用いられ、液透過性表面シート11によって巻き込まれた吸収体13の側縁部をさらにその上側から巻き込んで吸収体13の裏面側まで延在して接着されている。より具体的には、ギャザー不織布15は、おむつ1の長手方向中間部では、立体ギャザーBS形成部分を残し、幅方向中間部から吸収体13の裏面側に亘る範囲がホットメルト接着剤等によって接着され、また長手方向前後端部では、幅方向中間部から一方側端縁までの区間が吸収体13の裏面側に亘る範囲で接着されるとともに、立体ギャザーBSを形成する部分を吸収体13の上面部にて折り畳むようにしながらホットメルト接着剤等により接着している。
【0023】
二重シート不織布によって形成されたギャザー不織布15の内部には、起立先端側部分に複数本の糸状弾性伸縮部材16、16…が配設されている。糸状弾性伸縮部材16、16…は、製品状態において図5に二点鎖線で示すように、弾性伸縮力により吸収体側縁部より突出する不織布部分を起立させて立体ギャザーBSを形成するためのものである。
【0024】
液不透過性裏面側シート12は、二重シート状のギャザー不織布15の内部まで進入し、図6に示されるように、立体ギャザーBSの下端側において防漏壁を構成するようになっている。この液不透過性裏面側シート12としては、排便や尿などの褐色が出ないように不透明のものを用いるのが望ましい。不透明化としては、プラスチック中に、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、ホワイトカーボン、クレイ、タルク、硫酸バリウムなどの顔料や充填材を内添してフィルム化したものが好適に使用される。
【0025】
糸状弾性伸縮部材16としては、通常使用されるスチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンブタジエン、シリコン、ポリエステル等の素材を用いることができる。また、外側から見え難くするため、太さは925dtex以下、テンションは150〜350%、間隔は7.0mm以下として配設するのがよい。なお、糸状弾性伸縮部材に代えて、ある程度の幅を有するテープ状弾性伸縮部材を用いるようにしてもよい。
【0026】
前述のギャザー不織布15を構成する素材繊維も液透過性表面シート11と同様に、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工方法に得られた不織布を用いることができるが、特にはムレを防止するために坪量を抑えて通気性に優れた不織布を用いるのがよい。さらにギャザー不織布15については、尿などの透過を防止するとともに、カブレを防止しかつ肌への感触性(ドライ感)を高めるために、シリコン系、パラフィン金属系、アルキルクロミッククロイド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布を用いるのが望ましい。
【0027】
(外装シートの構造例)
外装シートは、背側部Bから腹側中央部Fにかけて配される外装シート20Aと、腹側両側部の外装シート20Bより成り、腹側中央部の両側端部と腹側両側部の中央側端部とが、好適にはシート20Bが外側に来るように一部オーバーラップして(図中OL)、スライド部30におけるスライド構造(後述)により一体化されている。外装シート20A,20Bは、いずれも上層不織布20a及び下層不織布20bからなる2層構造の不織布シートとされ、上層不織布20aと下層不織布20bとの間、及び下層不織布20bをウエスト開口縁で内面側に折り返してなる折り返し部分20cの不織布間に各種弾性部材が配設され、伸縮性が付与されている。
【0028】
特に、図示形態の外装シートにおいては、弾性部材として、図4に示される展開形状において、ウエスト開口部周り23に配置されたウエスト部弾性部材24,24…を有し、さらに背側部B及び腹側両側部に、上下方向に間隔をおいて水平方向に沿って配置された複数の腰周り弾性部材群25,25…とを有する。さらに、背側部Bにおいて、腰周り弾性部材群25,25…とは別に、腹側部Fと背側部Bとを接合する一方側接合縁から股下側に延び、股下側を迂回して腹側部分と背側部分との他方側接合縁に到達するとともに、互いに交差することなく間隔をおいて配置された複数本の湾曲弾性部材群26…を備えている。なお、本外装シートでは、脚周りに沿って実質的に連続する、所謂脚周り弾性部材は設けられていない。図示例においては、腹側部に湾曲弾性部材群が配されていないが、腹側中央部から腹側両側部にかけて非連続的に湾曲弾性部材を配する構成としてもよい。
【0029】
ウエスト部弾性部材24,24…は、腹側部Fと背側部Bとが接合された脇部接合縁21、22の範囲の内、ウエスト開口縁近傍に上下方向に間隔をおいて配設された複数条の糸ゴム状弾性部材であり、身体のウエスト部周りを締め付けるように伸縮力を与えることによりおむつを身体に装着するためのものである。このウエスト部弾性部材24は、図示例では糸ゴムを用いたが、例えばテープ状の伸縮部材を用いてもよい。また、図示形態のウエスト部弾性部材24,24…は、ウエスト部における下層不織布20bの折り返し部分20cの不織布間に挟持されているが、上層不織布20aと下層不織布20bとの間に挟持しても良い。
【0030】
腰周り弾性部材群25,25…は、脇部接合縁21、22の内、概ね上部から下部までの範囲に亘り、上下方向に間隔をおいて水平方向に沿って配設された糸ゴム状の弾性部材であり、腹側部側部及び背側部の腰周り部分に夫々水平方向の伸縮力を与え、おむつを身体に密着させるためのものである。なお、背側部において、ウエスト部弾性部材24、24…と腰周り弾性部材群25、25…との境界は必ずしも明確でなくてよい。例えば、腹側部F及び背側部Bに上下方向に間隔をおいて水平方向に配置された弾性部材の内、数は特定できなくても、上部側の何本かがウエスト部弾性部材として機能し、残りの弾性部材が腰周り弾性部材として機能していればよい。
【0031】
背側部Bにおいて、腰周り弾性部材群25,25…とは別に配設された背側湾曲弾性部材群26、26…は、所定の(一方側の脇部接合縁22からほぼ脚周りカットライン29に沿って股下部に至り、股下部を横切った後に反対側の脚周りカットライン29にほぼ沿いながら他方側の脇部接合縁22に到達する)曲線に沿って配置された複数本、図示例では9本の糸ゴム状弾性部材であり、これら背側湾曲弾性部材群26、26…は互いに交差することなく、間隔をおいて配置されている。この背側湾曲弾性部材群26、26…は、2,3本程度の弾性伸縮部材を間隔を密にして実質的に一束として配置されるのではなく、所定の伸縮ゾーンを形成するように所定の間隔を空けて、3以上、好ましくは5本以上配置される。
【0032】
また、上記形態例では、背側部Bに配置された腰周り弾性部材群25,25…及び湾曲弾性部材26…は、吸収性本体10を横切る部分を切断し、不連続としているが、吸収性本体10上においても連続させて配置することもできる。弾性部材を吸収性本体10上で不連続とすることにより、吸収体13の縮こまりをより防止することができる。湾曲弾性部材26…を吸収性本体10上で切断し不連続化するには、特開2002−35029号公報、特開2002−178428号公報及び特開2002−273808号公報に記載される切断方法が好適に採用される。
【0033】
(スライド構造)
外装シート20Aと20Bのオーバーラップ部分OLは、外装シート20Aの外側及び外装シート20Bの内側に、オーバーラップ部分を上下方向に縦断するようにスライド部30A、30Bを有する。スライド部の構造を図9〜11に示す。スライド部30は、図9〜11に示すような凹状(図10(A))及び凸状(図10(B))のレール構造を有し、図11に示すように、凹状のレール31Aと凸状のレール31Bは互いに咬み合う構造となっている。図示例の凸状レール31Bは、略円形の断面となっているが、断面形状は、フック状、多角形状等、凹状レール31Aと咬み合う構造であれば特に限定されない。また、図示例では凹状レール31A、凸状レール31Bはともにスライド部の長さ方向全域にわたって配されているが、どちらか一方のみは間欠的であってもよい。また、図示例ではスライド部30Aに凹状のレール、スライド部30Bに凸状のレールが配されているが、それぞれ逆としてもよい。また、スライド部のレール構造は一組には限られず、互いに咬み合う二組以上のレール構造を平行に配してもよい。
【0034】
スライド部30A,30Bは、合成樹脂により形成されていることが好ましく、また、レール構造のみでなく、図9に示すように、レール構造を含む一定の範囲を占めるフィルム状構造とし、ポリエチレン、ポリプロピレン等より成る可撓性の樹脂フィルムとすることが好ましい。このような構造とすることで、互いに咬み合うレール構造を互いに上下方向にずらす(スライドする)際に、レール周辺の摩擦を軽減し、スムーズなスライドを可能とする。スライド部30A,30Bを構成するフィルム状の部材は、それぞれ、ホットメルト接着剤G等により、外装シート20A,20Bに固定される。
【0035】
スライド部30A,30Bの上端部及び下端部には、それぞれ着脱可能な係止部32A、32Bを有する。係止部において、スライド部30Aとスライド部30Bは互いに対向した状態で固定され、輸送時、着用時に意図しない上下方向のずれを生じない構造となっている。また、スライド時に腹側中央部上端がスライド部下端より脱落し、おむつが展開状態となるのを防ぐ。係止部32A,32Bは、上記のずり落ち防止、脱落防止が可能であれば、その形態は限定されないが、フックテープとループテープを好適に使用できる。なお、図示例では、スライド部Aにフックテープ32Aを配し、スライド部Bにループテープ32Bを配しているが、それぞれ逆としてもよい。係止部32A,32Bは、レールより中央側、側端側何れに配してもよいが、外装シート20B端部の浮き上がりによる剥がれが生じにくいことから、側端側へ配することが好ましい。
【0036】
着用状態のおむつ1の状態を、図7に、おむつの腹側中央部を下方向にスライドさせた状態を図8に示す。スライド時には、係止部32Aと32Bを剥がし、腹側中央部を下方向に引っ張り、スライド移動させる。腹側中央部が下方向に移動することにより、脚周り開口33が大きく拡がり、この開口を介して吸収パッドの交換をすることが可能となる。
【0037】
(他の形態)
本発明は、パンツ型おむつに限らず、図12のようにテープ式のおむつ40にも使用できる。テープ式おむつにスライド部30を配する場合は、図示例のようにテープ止着部41より側端側の、外側部材に配することが好ましい。止着部41を剥離することで、スライド部30は腹側の側端側部材と共に中央部の部材より分離され、おむつを展開状態とすることができる。
【符号の説明】
【0038】
1…パンツ型使い捨ておむつ、10…吸収性本体、11…液透過性表面シート、12…液不透過性裏面側シート、13…吸収体、14…包装シート、15…ギャザー不織布、16…糸状弾性伸縮部材、20…外装シート、21,22…脇部接合縁、24…ウエスト部弾性部材、25…腰周り弾性部材、26…湾曲弾性部材、29…脚周りカットライン、30…スライド部、31A,31B…レール、32A…フックテープ、32B…ループテープ、33…脚周り開口部、40…テープ式使い捨ておむつ、41…テープ止着部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、内装する吸収パッドの交換が容易な使い捨ておむつに関する発明である。
【背景技術】
【0002】
例えば、成人向けおむつは、パンツタイプ、テープタイプのものが知られるが、廃棄物の削減や経済性等を考慮して、何れも内部に吸収パッドを装着して使用されるのが一般的である。
吸収パッドの交換の際に、テープタイプ使い捨ておむつにおいては、テープをはがしておむつを展開させる必要があり、また、パンツタイプ使い捨ておむつにおいても、少なくともおむつを膝あたりまで下ろす必要があり、その作業は煩雑である。特にパンツタイプ使い捨ておむつは、介護者ではなく着用者自身が吸収パッドの交換をする場合が多いところ、おむつをずりおろして吸収パッドの交換を行う操作は、着用者が腰をかがめる等の無理な姿勢を取らなければならない、という問題があった。
一方、予めパンツタイプ使い捨ておむつのように形成されているもののテープタイプ使い捨ておむつのように展開可能なおむつも知られており、このおむつは、テープタイプ使い捨ておむつのように展開できるため介護者が吸収パッド及びおむつ本体の交換をしやすい、という利点を有するが、着用者自身が吸収パッドの交換をする場合には、前述のパンツタイプ使い捨ておむつと同様に理由により吸収パッドが交換しづらい、という問題を依然として有するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−204688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の主たる課題は、使い捨ておむつの内面に敷いた吸収パッドの交換をより容易にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決した本発明は次記の通りである。
<請求項1記載の発明>
股間部より前側に延在する腹側部及び股間部より後側に延在する背側部を有し、
腹側部と背側部とが環状の胴回り部をなすように予めまたは使用時に一体化されて、胴回り開口および左右一対の脚周り開口が形成される、使い捨ておむつにおいて、
前記腹側部及び背側部の少なくとも一方の胴回り部構成部分は、幅方向中央部に位置する第1の部分がその両側の第2の部分に対して分離せずに縦方向にスライド可能なように構成された、
ことを特徴とする使い捨ておむつ。
【0006】
(作用効果)
本発明に係る使い捨ておむつは、着用状態で腹側部の中央部分とそれに連なる内装体を備えた股間部を下方にスライドすることが可能な構成となっている。腹側中央部をスライド下降させることで、脚周り開口が広がるため、脚周りに隙間が生じ、当該隙間を介して、吸収パッドの交換を行うことが可能となる。
【0007】
<請求項2記載の発明>
前記第1の部分の幅方向両側部に、前記胴回り開口から前記脚周り開口まで縦断するレール部材が設けられ、
前記第2の部分の幅方向中央部の側部に、前記レール部材に咬み合い且つ前記レール部材の延在方向に移動可能な咬合部が設けられており、
前記第1の部分の幅方向両側部と前記第2の部分の幅方向中央側の側部とが重なり、前記レール部に前記咬合部が咬み合わさることにより、前記第1の部分がその両側の第2の部分に対して分離せずに縦方向にスライド可能なように構成されている、請求項1記載の使い捨ておむつ。
【0008】
(作用効果)
スライド部分をレール部材及びそれと咬み合う部材とすることで、腹側中央部を上下両方向にスライド移動させることが可能であり、またスライド移動を複数回繰り返すことが可能となる。
【0009】
<請求項3記載の発明>
前記第1の部分における前記第2の部分との重なり部、及び前記第2の部分における前記第1の部分との重なり部とが着脱可能に固定される固定手段が設けられた、請求項2記載の使い捨ておむつ。
【0010】
(作用効果)
着用時の予期せぬずり落ちや、腹側中央部と側部の完全な分離を避けるため、レール部材上下端の近傍に着脱可能な固定手段を設け、スライド移動を要しない時にはレール部材を固定できる構成とした。
【0011】
<請求項4記載の発明>
前記第1の部分の外側に第2の部分が重なるように構成されるとともに、前記固定手段が、前記レール部材及び咬合部よりも幅方向外側に設けられている、請求項3記載の使い捨ておむつ。
【0012】
(作用効果)
腹側両側部(第2の部分)を腹側中央部(第1の部分)の外側に配することで、腹側中央部を腹側両側部が外側から押さえ、より安定した形態となる。また、レール部材の固定手段をレール部材より幅方向外側に配することにより、腹側両側部の中央側端部のめくれ等により外れにくく、より安定した固定が可能である。
【0013】
<請求項5記載の発明>
前記レール部材は前記第1の部分に着脱可能な係止手段により固定されており、前記係止手段の剥離により、前記レール部材と前記第2の部分とが前記第1の部分から分離されるように構成された、請求項4記載の使い捨ておむつ。
【0014】
(作用効果)
レール部、咬合部とは別に、腹側の両側部と中央部とを着脱可能に固定する係止手段を有し、当該係止部分を剥離することによって、おむつを展開状態とすることができるようにした。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、吸収パッド交換時に腹側中央部から股間部を下方にスライド移動させることによって、着用状態のまま脚周り開口部を介して吸収パッドを交換することができる。このような構成とすることで、吸収パッド交換時におむつを展開状態にしたり、膝辺りまで下ろすことなく簡便に吸収パッドを交換することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】展開状態のパンツタイプ使い捨ておむつの平面図(内面側)である。
【図2】図1より弾性部材を省略した平面図である。
【図3】展開状態のパンツタイプ使い捨ておむつの平面図(外側)である。
【図4】図1のC−C矢視図である。
【図5】図1のA−A矢視図である。
【図6】図1のB−B矢視図である。
【図7】パンツタイプ使い捨ておむつの装着状態の斜視図である。
【図8】腹側中央部を下方向にスライド移動させた状態のパンツ型使い捨ておむつの斜視図である。
【図9】スライド部の構造を示す平面図である。
【図10】スライド部の断面図である。(A)凹状レールを有するスライド部、(B)凸状レールを有するスライド部。
【図11】図3のD−D矢視図である。
【図12】本発明に係るテープ式使い捨ておむつの例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しつつ詳説する。
図1〜図8は実施形態の一例としてパンツ式使い捨ておむつ1を示している。パンツ式の使い捨ておむつ1(以下、単におむつともいう。)は、背側Bから腹側Fの中央部にまで達する外装シート20Aと腹側両側部の一対の外装シート20Bとを有し、この外装シート20A,20Bの内面に固定され一体化された内装体10を有しており、内装体10は液透過性表面シート11と液不透過性裏面側シート12との間に吸収体13が介在されてなるものである。製造に際しては、外装シート20A,20Bが一体化された状態で外装シート20Aの内面(上面)に対して内装体10の裏面がホットメルト接着剤Gなどの接合手段によって固定された後に、内装体10および外装シート20が腹側部F及び背側部Bの境界である縦方向(前後方向)中央で折り畳まれ、その両側部が相互に熱溶着またはホットメルト接着剤などによって接合されることによって、ウエスト開口部及び左右一対のレッグ開口部が形成されたパンツタイプ使い捨ておむつとなる。なお、本発明におけるおむつの製造方法は上記記載の方法に限定されるものではない。
【0018】
(吸収性本体の構造例)
吸収性本体10は、図5及び図6に示すように、不織布などからなる液透過性表面シート11と、ポリエチレン等からなる液不透過性裏面側シート12との間に、吸収体13を介在させた構造を有しており、表面シート11を透過した排泄液を吸収保持するものである。
【0019】
吸収体13の表面側(肌当接面側)を覆う液透過性表面シート11としては、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維は、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高でソフトである点で優れている。液透過性表面シート11に多数の透孔を形成した場合には、尿などが速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。液透過性表面シート11は、吸収体13の側縁部を巻き込んで吸収体13の裏面側まで延在している。
【0020】
吸収体13の裏面側(非肌当接面側)を覆う液不透過性裏面側シート12は、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどの液不透過性プラスチックシートが用いられるが、近年はムレ防止の点から透湿性を有するものが好適に用いられる。この遮水・透湿性シートは、たとえばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂中に無機充填材を溶融混練してシートを形成した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートである。
【0021】
吸収体13としては、公知のもの、例えばパルプ繊維の積繊体、セルロースアセテート等のフィラメントの集合体、あるいは不織布を基本とし、必要に応じて高吸収性ポリマーを混合、固着等してなるものを用いることができ、図示例では平面形状を略方形状として成形されたものが使用され、その幅寸法は股間部への当たりによって着用者にゴワ付き感を与えない寸法幅となっている。この吸収体13は、形状及びポリマー保持等のため、必要に応じてクレープ紙等の、液透過性及び液保持性を有する包装シート14によって包装することができる。吸収体13の形状は、図示形態のように長方形状とする他、背側及び腹側に対して股間部の幅が狭い砂時計形状(括れ形状)とすることもできる。
【0022】
吸収性本体10の両側部には脚周りにフィットする立体ギャザーBSが形成されているのが好ましい。この立体ギャザーBSはギャザー不織布15により形成される、ギャザー不織布としては、図5に示されるように、折返しによって二重シートとした不織布が好適に用いられ、液透過性表面シート11によって巻き込まれた吸収体13の側縁部をさらにその上側から巻き込んで吸収体13の裏面側まで延在して接着されている。より具体的には、ギャザー不織布15は、おむつ1の長手方向中間部では、立体ギャザーBS形成部分を残し、幅方向中間部から吸収体13の裏面側に亘る範囲がホットメルト接着剤等によって接着され、また長手方向前後端部では、幅方向中間部から一方側端縁までの区間が吸収体13の裏面側に亘る範囲で接着されるとともに、立体ギャザーBSを形成する部分を吸収体13の上面部にて折り畳むようにしながらホットメルト接着剤等により接着している。
【0023】
二重シート不織布によって形成されたギャザー不織布15の内部には、起立先端側部分に複数本の糸状弾性伸縮部材16、16…が配設されている。糸状弾性伸縮部材16、16…は、製品状態において図5に二点鎖線で示すように、弾性伸縮力により吸収体側縁部より突出する不織布部分を起立させて立体ギャザーBSを形成するためのものである。
【0024】
液不透過性裏面側シート12は、二重シート状のギャザー不織布15の内部まで進入し、図6に示されるように、立体ギャザーBSの下端側において防漏壁を構成するようになっている。この液不透過性裏面側シート12としては、排便や尿などの褐色が出ないように不透明のものを用いるのが望ましい。不透明化としては、プラスチック中に、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、ホワイトカーボン、クレイ、タルク、硫酸バリウムなどの顔料や充填材を内添してフィルム化したものが好適に使用される。
【0025】
糸状弾性伸縮部材16としては、通常使用されるスチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンブタジエン、シリコン、ポリエステル等の素材を用いることができる。また、外側から見え難くするため、太さは925dtex以下、テンションは150〜350%、間隔は7.0mm以下として配設するのがよい。なお、糸状弾性伸縮部材に代えて、ある程度の幅を有するテープ状弾性伸縮部材を用いるようにしてもよい。
【0026】
前述のギャザー不織布15を構成する素材繊維も液透過性表面シート11と同様に、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工方法に得られた不織布を用いることができるが、特にはムレを防止するために坪量を抑えて通気性に優れた不織布を用いるのがよい。さらにギャザー不織布15については、尿などの透過を防止するとともに、カブレを防止しかつ肌への感触性(ドライ感)を高めるために、シリコン系、パラフィン金属系、アルキルクロミッククロイド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布を用いるのが望ましい。
【0027】
(外装シートの構造例)
外装シートは、背側部Bから腹側中央部Fにかけて配される外装シート20Aと、腹側両側部の外装シート20Bより成り、腹側中央部の両側端部と腹側両側部の中央側端部とが、好適にはシート20Bが外側に来るように一部オーバーラップして(図中OL)、スライド部30におけるスライド構造(後述)により一体化されている。外装シート20A,20Bは、いずれも上層不織布20a及び下層不織布20bからなる2層構造の不織布シートとされ、上層不織布20aと下層不織布20bとの間、及び下層不織布20bをウエスト開口縁で内面側に折り返してなる折り返し部分20cの不織布間に各種弾性部材が配設され、伸縮性が付与されている。
【0028】
特に、図示形態の外装シートにおいては、弾性部材として、図4に示される展開形状において、ウエスト開口部周り23に配置されたウエスト部弾性部材24,24…を有し、さらに背側部B及び腹側両側部に、上下方向に間隔をおいて水平方向に沿って配置された複数の腰周り弾性部材群25,25…とを有する。さらに、背側部Bにおいて、腰周り弾性部材群25,25…とは別に、腹側部Fと背側部Bとを接合する一方側接合縁から股下側に延び、股下側を迂回して腹側部分と背側部分との他方側接合縁に到達するとともに、互いに交差することなく間隔をおいて配置された複数本の湾曲弾性部材群26…を備えている。なお、本外装シートでは、脚周りに沿って実質的に連続する、所謂脚周り弾性部材は設けられていない。図示例においては、腹側部に湾曲弾性部材群が配されていないが、腹側中央部から腹側両側部にかけて非連続的に湾曲弾性部材を配する構成としてもよい。
【0029】
ウエスト部弾性部材24,24…は、腹側部Fと背側部Bとが接合された脇部接合縁21、22の範囲の内、ウエスト開口縁近傍に上下方向に間隔をおいて配設された複数条の糸ゴム状弾性部材であり、身体のウエスト部周りを締め付けるように伸縮力を与えることによりおむつを身体に装着するためのものである。このウエスト部弾性部材24は、図示例では糸ゴムを用いたが、例えばテープ状の伸縮部材を用いてもよい。また、図示形態のウエスト部弾性部材24,24…は、ウエスト部における下層不織布20bの折り返し部分20cの不織布間に挟持されているが、上層不織布20aと下層不織布20bとの間に挟持しても良い。
【0030】
腰周り弾性部材群25,25…は、脇部接合縁21、22の内、概ね上部から下部までの範囲に亘り、上下方向に間隔をおいて水平方向に沿って配設された糸ゴム状の弾性部材であり、腹側部側部及び背側部の腰周り部分に夫々水平方向の伸縮力を与え、おむつを身体に密着させるためのものである。なお、背側部において、ウエスト部弾性部材24、24…と腰周り弾性部材群25、25…との境界は必ずしも明確でなくてよい。例えば、腹側部F及び背側部Bに上下方向に間隔をおいて水平方向に配置された弾性部材の内、数は特定できなくても、上部側の何本かがウエスト部弾性部材として機能し、残りの弾性部材が腰周り弾性部材として機能していればよい。
【0031】
背側部Bにおいて、腰周り弾性部材群25,25…とは別に配設された背側湾曲弾性部材群26、26…は、所定の(一方側の脇部接合縁22からほぼ脚周りカットライン29に沿って股下部に至り、股下部を横切った後に反対側の脚周りカットライン29にほぼ沿いながら他方側の脇部接合縁22に到達する)曲線に沿って配置された複数本、図示例では9本の糸ゴム状弾性部材であり、これら背側湾曲弾性部材群26、26…は互いに交差することなく、間隔をおいて配置されている。この背側湾曲弾性部材群26、26…は、2,3本程度の弾性伸縮部材を間隔を密にして実質的に一束として配置されるのではなく、所定の伸縮ゾーンを形成するように所定の間隔を空けて、3以上、好ましくは5本以上配置される。
【0032】
また、上記形態例では、背側部Bに配置された腰周り弾性部材群25,25…及び湾曲弾性部材26…は、吸収性本体10を横切る部分を切断し、不連続としているが、吸収性本体10上においても連続させて配置することもできる。弾性部材を吸収性本体10上で不連続とすることにより、吸収体13の縮こまりをより防止することができる。湾曲弾性部材26…を吸収性本体10上で切断し不連続化するには、特開2002−35029号公報、特開2002−178428号公報及び特開2002−273808号公報に記載される切断方法が好適に採用される。
【0033】
(スライド構造)
外装シート20Aと20Bのオーバーラップ部分OLは、外装シート20Aの外側及び外装シート20Bの内側に、オーバーラップ部分を上下方向に縦断するようにスライド部30A、30Bを有する。スライド部の構造を図9〜11に示す。スライド部30は、図9〜11に示すような凹状(図10(A))及び凸状(図10(B))のレール構造を有し、図11に示すように、凹状のレール31Aと凸状のレール31Bは互いに咬み合う構造となっている。図示例の凸状レール31Bは、略円形の断面となっているが、断面形状は、フック状、多角形状等、凹状レール31Aと咬み合う構造であれば特に限定されない。また、図示例では凹状レール31A、凸状レール31Bはともにスライド部の長さ方向全域にわたって配されているが、どちらか一方のみは間欠的であってもよい。また、図示例ではスライド部30Aに凹状のレール、スライド部30Bに凸状のレールが配されているが、それぞれ逆としてもよい。また、スライド部のレール構造は一組には限られず、互いに咬み合う二組以上のレール構造を平行に配してもよい。
【0034】
スライド部30A,30Bは、合成樹脂により形成されていることが好ましく、また、レール構造のみでなく、図9に示すように、レール構造を含む一定の範囲を占めるフィルム状構造とし、ポリエチレン、ポリプロピレン等より成る可撓性の樹脂フィルムとすることが好ましい。このような構造とすることで、互いに咬み合うレール構造を互いに上下方向にずらす(スライドする)際に、レール周辺の摩擦を軽減し、スムーズなスライドを可能とする。スライド部30A,30Bを構成するフィルム状の部材は、それぞれ、ホットメルト接着剤G等により、外装シート20A,20Bに固定される。
【0035】
スライド部30A,30Bの上端部及び下端部には、それぞれ着脱可能な係止部32A、32Bを有する。係止部において、スライド部30Aとスライド部30Bは互いに対向した状態で固定され、輸送時、着用時に意図しない上下方向のずれを生じない構造となっている。また、スライド時に腹側中央部上端がスライド部下端より脱落し、おむつが展開状態となるのを防ぐ。係止部32A,32Bは、上記のずり落ち防止、脱落防止が可能であれば、その形態は限定されないが、フックテープとループテープを好適に使用できる。なお、図示例では、スライド部Aにフックテープ32Aを配し、スライド部Bにループテープ32Bを配しているが、それぞれ逆としてもよい。係止部32A,32Bは、レールより中央側、側端側何れに配してもよいが、外装シート20B端部の浮き上がりによる剥がれが生じにくいことから、側端側へ配することが好ましい。
【0036】
着用状態のおむつ1の状態を、図7に、おむつの腹側中央部を下方向にスライドさせた状態を図8に示す。スライド時には、係止部32Aと32Bを剥がし、腹側中央部を下方向に引っ張り、スライド移動させる。腹側中央部が下方向に移動することにより、脚周り開口33が大きく拡がり、この開口を介して吸収パッドの交換をすることが可能となる。
【0037】
(他の形態)
本発明は、パンツ型おむつに限らず、図12のようにテープ式のおむつ40にも使用できる。テープ式おむつにスライド部30を配する場合は、図示例のようにテープ止着部41より側端側の、外側部材に配することが好ましい。止着部41を剥離することで、スライド部30は腹側の側端側部材と共に中央部の部材より分離され、おむつを展開状態とすることができる。
【符号の説明】
【0038】
1…パンツ型使い捨ておむつ、10…吸収性本体、11…液透過性表面シート、12…液不透過性裏面側シート、13…吸収体、14…包装シート、15…ギャザー不織布、16…糸状弾性伸縮部材、20…外装シート、21,22…脇部接合縁、24…ウエスト部弾性部材、25…腰周り弾性部材、26…湾曲弾性部材、29…脚周りカットライン、30…スライド部、31A,31B…レール、32A…フックテープ、32B…ループテープ、33…脚周り開口部、40…テープ式使い捨ておむつ、41…テープ止着部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
股間部より前側に延在する腹側部及び股間部より後側に延在する背側部を有し、
腹側部と背側部とが環状の胴回り部をなすように予めまたは使用時に一体化されて、胴回り開口および左右一対の脚周り開口が形成される、使い捨ておむつにおいて、
前記腹側部及び背側部の少なくとも一方の胴回り部構成部分は、幅方向中央部に位置する第1の部分がその両側の第2の部分に対して分離せずに縦方向にスライド可能なように構成された、
ことを特徴とする使い捨ておむつ。
【請求項2】
前記第1の部分の幅方向両側部に、前記胴回り開口から前記脚周り開口まで縦断するレール部材が設けられ、
前記第2の部分の幅方向中央部の側部に、前記レール部材に咬み合い且つ前記レール部材の延在方向に移動可能な咬合部が設けられており、
前記第1の部分の幅方向両側部と前記第2の部分の幅方向中央側の側部とが重なり、前記レール部に前記咬合部が咬み合わさることにより、前記第1の部分がその両側の第2の部分に対して分離せずに縦方向にスライド可能なように構成されている、請求項1記載の使い捨ておむつ。
【請求項3】
前記第1の部分における前記第2の部分との重なり部、及び前記第2の部分における前記第1の部分との重なり部とが着脱可能に固定される固定手段が設けられた、請求項2記載の使い捨ておむつ。
【請求項4】
前記第1の部分の外側に第2の部分が重なるように構成されるとともに、前記固定手段が、前記レール部材及び咬合部よりも幅方向外側に設けられている、請求項3記載の使い捨ておむつ。
【請求項5】
前記レール部材は前記第1の部分に着脱可能な係止手段により固定されており、前記係止手段の剥離により、前記レール部材と前記第2の部分とが前記第1の部分から分離されるように構成された、請求項4記載の使い捨ておむつ。
【請求項1】
股間部より前側に延在する腹側部及び股間部より後側に延在する背側部を有し、
腹側部と背側部とが環状の胴回り部をなすように予めまたは使用時に一体化されて、胴回り開口および左右一対の脚周り開口が形成される、使い捨ておむつにおいて、
前記腹側部及び背側部の少なくとも一方の胴回り部構成部分は、幅方向中央部に位置する第1の部分がその両側の第2の部分に対して分離せずに縦方向にスライド可能なように構成された、
ことを特徴とする使い捨ておむつ。
【請求項2】
前記第1の部分の幅方向両側部に、前記胴回り開口から前記脚周り開口まで縦断するレール部材が設けられ、
前記第2の部分の幅方向中央部の側部に、前記レール部材に咬み合い且つ前記レール部材の延在方向に移動可能な咬合部が設けられており、
前記第1の部分の幅方向両側部と前記第2の部分の幅方向中央側の側部とが重なり、前記レール部に前記咬合部が咬み合わさることにより、前記第1の部分がその両側の第2の部分に対して分離せずに縦方向にスライド可能なように構成されている、請求項1記載の使い捨ておむつ。
【請求項3】
前記第1の部分における前記第2の部分との重なり部、及び前記第2の部分における前記第1の部分との重なり部とが着脱可能に固定される固定手段が設けられた、請求項2記載の使い捨ておむつ。
【請求項4】
前記第1の部分の外側に第2の部分が重なるように構成されるとともに、前記固定手段が、前記レール部材及び咬合部よりも幅方向外側に設けられている、請求項3記載の使い捨ておむつ。
【請求項5】
前記レール部材は前記第1の部分に着脱可能な係止手段により固定されており、前記係止手段の剥離により、前記レール部材と前記第2の部分とが前記第1の部分から分離されるように構成された、請求項4記載の使い捨ておむつ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−24392(P2012−24392A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−167094(P2010−167094)
【出願日】平成22年7月26日(2010.7.26)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月26日(2010.7.26)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】
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