説明

使い捨ての皮膚穿刺装置

【課題】片手操作だけでランセットを発射できる装置を提供する。
【解決手段】使い捨ての皮膚穿刺装置7は、ハウジング8と、ハウジング8内に配置されたランセットと、ハウジング8およびランセットの間に結合された付勢手段11と、相対的移動のためにハウジング8に装着された引金12とを備える。引金12は、第1の方向への引金12の移動によって、付勢手段11を圧縮する方向にランセットが移動し、次いで引金8からランセットを解放し、それによって、付勢手段11が上記第1の方向とは実質的に逆の第2の方向にランセットを駆動するようにランセットに解放可能に結合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、使い捨ての皮膚穿刺装置に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚穿刺装置は、当該技術分野において周知である。典型的には皮膚穿刺装置はランセットを有し、ランセットは、一方の端部に鋭い先端部を有し、かつ、反対側の端部ではプラスチック本体に埋込まれる針を備え、針の先端部は本体から突き出ている。偶発的な指穿刺を防ぐため、および針の無菌性を保つために、先端部は多くの場合キャップ内に封入されており、キャップはランセットの使用前に取外される。このようなランセットは、分析用の小さな血液サンプルを取得するために用いられる。多くの使い捨ての皮膚穿刺装置は、皮膚穿刺の手順をできる限り単純かつ安全にするように工夫されてきた。このような使い捨ての皮膚穿刺装置は典型的には、ランセット本体を保持するためのホルダと、発射機構とを含む。発射機構は、予め定められた距離だけまたは予め定められた力を用いてランセットの針を皮膚に押込むように構成される。このような発射装置の一例は、EP1204371に記載されている。
【0003】
公知の皮膚穿刺装置では典型的に、安全に装置を発射させるためにユーザはいくつかの動作を行なう必要がある。これらの動作は、装置からパッケージを取外すことと、装置から安全キャップを取外すことと、引金を押して装置を発射させることとを含む。また、発射前にランセットを起こす必要がある皮膚穿刺装置もあり、発射後に針に再びキャップを付ける必要がある皮膚穿刺装置もあるが、偶発的な皮膚穿刺を回避するために大多数の皮膚穿刺装置は針を装置の中に引込む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-230570号公報
【特許文献2】特開昭62-38140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このいくつかのステップは不便であり、キャップを取外すもしくは交換するときまたはパッケージを取外すときにユーザは両手を使用しなければならない。発射させるためにそれほど多くのステップを必要としない装置が使用するのにより便利であり、さらに、手を十分に使えなかったかもしれないユーザにとっては特に、片手だけを使用して発射させることができる装置が有利であろうということが分かる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の第1の局面に従って、使い捨ての皮膚穿刺装置を提供し、上記使い捨ての皮膚穿刺装置は、ハウジングと、ハウジング内に配置されたランセットと、ハウジングおよびランセットの間に結合された付勢手段と、相対的移動のためにハウジングに装着された引金とを備え、引金は、第1の方向への引金の移動によって、付勢手段を圧縮する方向にランセットが移動し、次いで引金からランセットを解放し、それによって、付勢手段が第1の方向とは実質的に逆の第2の方向にランセットを駆動するように、ランセットに解放可能に結合される。
【0007】
好ましくは、ランセットは、針の端部を覆うキャップを備え、第1の方向への引金の移動によって、まずキャップがランセットから取外されて針を露出させる。キャップは好ましくは、ハウジングに対して実質的に固定されている。
【0008】
上記装置は、ハウジング内に配置され、ハウジング内でのランセットの移動を案内するための1つ以上の案内トラックを備えることが好ましい。案内トラックは、実質的にU字型であってもよい。
【0009】
引金は滑動手段によってランセットに結合されることが好ましく、滑動手段によって、引金は、第1の方向への行程(travel)の予め規定されたあるポイントにおいてランセットとの係合を解除することができる。この発明の一実施例では、滑動手段は、引金に形成された引金楔と、ランセットに形成された楔係合形成物とを備え、引金楔は、ランセットが移動して楔と形成物との係合が解除されランセットを解放する行程のポイントまで第1の方向に引金が移動するときに、形成物と係合する。
【0010】
好ましくは、付勢手段は、一旦装置を発射させるとハウジング内に十分にランセットを引込むように配置されている。付勢手段は、ハウジングと一体的に形成されてもよい。この発明の一実施例では、付勢手段は、引金を押込む前に部分的に予め負荷をかけられる。
【0011】
付勢手段は弦巻ばねを備えることが好ましい。
好ましくは、引金は、装置を発射させるとランセット針が突出する開口を備える。引金は、穿刺されるべき皮膚のエリアに直接に押付けることによって始動されることも好ましい。
【0012】
この発明の一実施例では、引金およびハウジングは、引金とハウジングとの間の境界面に配置された弱い部分と一体的に成形されてもよく、弱い部分は、引金を押すと破損するように構成される。
【0013】
上記装置は好ましくは、一旦引金を押すと予め定められた位置にハウジングに対して引金をロックするように配置されたロッキング機構を備える。
【0014】
上記装置は、ユーザがランセットを見ることができるようにハウジングに設けられた窓も備えていてもよい。
【0015】
この発明の第2の局面に従って、使い捨ての皮膚穿刺装置を提供し、上記使い捨ての皮膚穿刺装置は、ハウジングと、ハウジング内に配置されたランセットと、ハウジングおよびランセットの間に結合されたばねと、ハウジング内の案内トラックとを備え、ランセットは案内トラックに装着され、上記使い捨ての皮膚穿刺装置はさらに、ランセットに解放可能に結合され、かつ、ランセットの針が突出し得る開口を形成させた引金を備える。
【0016】
好ましくは、トラックは実質的にU字型である。
引金はハウジングに入れ子式に装着されることが好ましい。
【0017】
好ましくは、U字型トラックの脚部は、引金の移動方向に実質的に平行に位置している。
【0018】
この使い捨ての皮膚穿刺装置の利点は、この装置を片手で操作できることであり、引金のたった1回の移動が、ランセットのキャップを取外し、起こされた位置にランセットを移動させ、ランセットを発射させることである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】使い捨ての皮膚穿刺装置において使用されるランセットの斜視図である。
【図2】ハウジングの一方の側を取外した使い捨ての皮膚穿刺装置の斜視図である。
【図3】図2の使い捨ての皮膚穿刺装置の分解斜視図である。
【図4】使い捨ての皮膚穿刺装置を使用する際の段階を示すフロー図である。
【図5】引金を部分的に押込んだ状態の、ハウジングの一方の側を取外した使い捨ての皮膚穿刺装置の斜視図および側面図である。
【図6】引金をさらに押込んだ状態の、ハウジングの一方の側を取外した使い捨ての皮膚穿刺装置の斜視図および側面図である。
【図7】引金を十分に押込んだ状態の、ハウジングの一方の側を取外した使い捨ての皮膚穿刺装置の斜視図および側面図である。
【図8】引金を十分に押込み、ランセット針が使い捨ての皮膚穿刺装置から露出した状態の、ハウジングの一方の側を取外した使い捨ての皮膚穿刺装置の斜視図および側面図である。
【図9】引金を十分に押込み、ランセット針が使い捨ての皮膚穿刺装置の中に引込まれた状態の、ハウジングの一方の側を取外した使い捨ての皮膚穿刺装置の斜視図および側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明をよりよく理解するために、およびこの発明が如何に実施され得るかを示すために、ここで一例として添付の図面を参照する。
【0021】
図1を参照して、ランセット1は、成形されたプラスチックランセット本体2を備え、針3は一部分がランセット本体2に埋込まれている。針3の先端部は、ランセット本体2から突出している。キャップ4は、使用前に無菌性を保つために針3の先端部を覆う。針3がキャップ4よりもしっかりと本体2に埋込まれるならば、キャップ4は針の先端部の上にオーバーモールドされてもよい。
【0022】
ランセット本体はさらに、ランセット本体の両側に延びる1対の整形された案内部5を備える。ランセットキャップ4は、ランセットキャップ4の両側に配置された1対の固定突出部6を備える。
【0023】
使い捨ての皮膚穿刺装置7はハウジング8を備える。ハウジングは、プレス加工されるか、嵌め合せられるか、溶接されるか、または貼り合せられて、完全なハウジング8を形成し得る2つの別個の対称的な部分として成形される。図2は、ハウジング8によって形成される内部空洞を示すために取外されたハウジングの一方の部分を示す。ハウジング8の各部分は、ハウジング8の後方部に配置されたばねホルダ9を備え、各部分はさらに、ハウジング8に成形されたランセット本体案内トラック10を備える。案内トラック10は、ハウジング8の内面に沿って実質的に「U」字型の経路を辿り、「U」の湾曲部はばねホルダ9の方に配置されている。
【0024】
ばね11は、ハウジング8の内部に配置されており、ばね11の一方端においてばねホルダ9によって保持され、他方端においてランセット本体2に保持されている。ばね11は、金属またはプラスチックなどの任意の好適な材料で作られる。特に、ばね11がプラスチック材料で作られる場合、ばね11はハウジング8の一部として一体的に成形されてもよい。しかしながら、金属弦巻ばねを使用することが好ましい。
【0025】
ランセット本体2およびランセットキャップ4は両方とも、一旦挿入されると、ハウジング8内に配置される。ランセット本体案内部5は、両側でランセット本体案内トラック10と協働するように構成される。ランセットキャップ固定突出部6は、組立後にランセットキャップ4がハウジング8に対して動かないようにハウジング8によって所定の位置に保持されている。代替的に、ランセットキャップ4はハウジング8と一体的に成形されてもよいが、これは好ましくない。なぜなら、ランセットキャップ4は無菌でなければならず、ハウジング8と一体的にランセットキャップ4を成形することには、製造および組立プロセスを無菌環境で実施することが必要になるためである。
【0026】
使い捨ての皮膚穿刺装置はさらに引金12を備える。引金12は、ハウジング8に接続されており、引金12に圧力をかけるとハウジング8の開口に入れ子式に嵌まることができる。引金12は、ランセット針3が突出し得る開口13を備える。引金12はさらに、ハウジング8と協働し、かつ、引金が確実にハウジング8に対して使い捨ての皮膚穿刺装置7の主軸に沿って線形に移動するように案内ラグ14を備える。引金12はさらに、1対の引金楔15を備える。引金楔15は各々、使い捨ての皮膚穿刺装置7の長手方向の軸に対して角度の付いた面16を有する。角度の付いた面16は、使用時に、ランセット本体2の案内部5と接触するように構成される。
【0027】
引金12は、ハウジング8とは別個に成形される場合もあれば、引金がハウジング8から「抜ける(break free)」ことができ、ハウジング8に対する引金12の移動を可能にするように弱いエリアがハウジング8および引金12を接続する状態でハウジング8と一体的に成形される場合もある。
【0028】
ユーザが使い捨ての皮膚穿刺装置7を受取ると、使い捨ての皮膚穿刺装置7は図2に示す構成の状態であり、これは、引金12がハウジング8から延びており、ランセットキャップ4がランセット針3を覆う所定の位置にある状態である。装置を発射させるために、ユーザは引金12を皮膚に押付ける。次いで、図4に示すステップが続く。引金を皮膚に押付けると(ステップ17)、引金楔15の角度の付いた面16はランセット本体2の案内部5と接触する。これは、ランセットキャップ4から離れるようにランセット本体2を押し、それによって、図5に示すようにランセット針3からキャップ4を取外す。
【0029】
引金12をさらに押すと、図6に示すように引金12はハウジング8の内部に移動する。ばね11が圧縮し(ステップ18)、引金突出部15の角度の付いた面16はキャップ4からさらに離れるようにランセット本体2を押す。ランセット本体2の各案内部5と案内トラック10との間の協働の結果、ランセット本体2は、ハウジング8の後方のばねホルダ9の方に「U」の一方の脚部を下方に第1の方向に移動する。引金楔15が角度の付いた面16を備えているので、ランセット本体2は、引金12によって押されると角度の付いた面16を下方に滑動する。
【0030】
ランセット本体2は、ハウジング8の中で最大後方行程に到達すると(ステップ19)、U字型案内トラック10の頂点に達しており、もはやキャップ4の方に戻ることはできない。引金楔15の角度の付いた面16によって、ランセット本体2の案内部5は引金楔15から完全に離れるように滑動し、その結果、ランセット本体2はもはや引金楔15によって保持されなくなる。この時点で、ばね11は最大圧縮状態にあり、引金12はハウジング8の中に十分に引込まれる。
【0031】
ばね11は、本体2が楔15から自由になるまで、案内部5を通じてランセット本体2を押し下げる。次いで、ランセット本体2は、ばね11の急速な膨張によって前方に発射される(ステップ20)。ランセット本体2は、各ランセット案内部5と案内トラック10の下方脚部との間の協働によって定められる第2の方向に押される。ランセット本体2は、ランセットの針の先端部3が引金12の開口13から突出して皮膚を穿刺するように移動する。ランセット本体2は引金12の前面と接触する。これは、針3が開口13から突き出ることができる距離を制限し、それによって、針3が深く皮膚に貫通しすぎることを防ぐ。
【0032】
この時点でばね11は伸び過ぎているため、ばね11は縮んで開口13を通して針3を引戻し(ステップ21)、それによって、使い捨ての皮膚穿刺装置7の内部に針3を保持して、針3が引起すいずれの皮膚穿刺事故も防ぐ。一旦使い捨ての皮膚穿刺装置7を使用すると、この装置を完全に解体することなく使い捨ての皮膚穿刺装置7を元に戻すことはできない。
【0033】
装置が使用され、廃棄されるべきであることをユーザに対して示すために、一旦装置が発射されるとハウジング8内に引金12をロックするようにクリップまたはロックが設けられてもよい。
【0034】
針3がキャップ4に埋込まれているときに無菌であり、皮膚を穿刺する前に使い捨ての皮膚穿刺装置7の他の部分と接触しないので、針3および取囲んでいるキャップ4以外にハウジング8またはハウジング8内に収容されている部品を殺菌または密封する必要がない。
【0035】
引金12の開口13から突出するようにばね11が十分な力で確実にランセットを発射させるために、装置7を組立る前に、ばね11は部分的に予め負荷をかけられてもよい。
【0036】
この発明の範囲から逸脱することなく上述の実施例に対してさまざまな修正がなされ得ることが当業者によって理解される。たとえば、使用前に、ハウジング内に収容されているランセットをユーザが見ることができるようにハウジング8の壁に窓を設けてもよい。これによって、ユーザは、キャップ4とランセット本体2とが使用前に分離していないことを確認できる。
【符号の説明】
【0037】
1 ランセット、2 ランセット本体、3 針、4 キャップ、5 案内部、6 固定突出部、7 捨ての皮膚穿刺装置、8 ハウジング、9 ばねホルダ、10 ランセット本体案内トラック、11 ばね、12 引金、13 開口、14 案内ラグ、15 引金楔、16 角度の付いた面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使い捨ての皮膚穿刺装置であって、
ハウジングと、
ハウジング内に配置されたランセットと、
前記ハウジングおよび前記ランセットの間に結合されたばねと、
ハウジング内の実質的にU字形状の案内トラックとを備え、ランセットは案内トラックに装着され、前記案内トラックは一対の細長い脚部を有し、前記使い捨ての皮膚穿刺装置はさらに、
ランセットに解放可能に結合され、かつ、ランセットの針が突出し得る開口を形成させた引金を備える、使い捨ての皮膚穿刺装置。
【請求項2】
前記引金は、ハウジングに入れ子式に装着される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
U字形状のトラックの前記脚部は、引金の移動方向に実質的に平行に位置している、請求項1に記載の装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−99542(P2013−99542A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−280898(P2012−280898)
【出願日】平成24年12月25日(2012.12.25)
【分割の表示】特願2008−551884(P2008−551884)の分割
【原出願日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(505333414)オーウェン マンフォード リミテッド (26)
【氏名又は名称原語表記】OWEN MUMFORD LIMITED
【住所又は居所原語表記】Brook Hill, Woodstock, Oxfordshire OX20 1TU (GB).
【Fターム(参考)】