説明

使い捨て吸収性物品

【課題】着用者の体圧がかかった状態であっても吸収体が潰れにくく、その結果排出された体液が腹側部および背側部へ拡散されて、体液漏れが発生しにくい使い捨て吸収性物品を提供すること。
【解決手段】本発明の使い捨て吸収性物品は、体液を透過する液透過性の表面シートと、 体液を透過しない液不透過性の裏面側シートと、これらの間に介在され前記表面シートを透過した体液を吸収する吸収体とを備えた使い捨て吸収性物品において、前記吸収体は、上層吸収体及びその下方に配置された下層吸収体を有し、前記上層吸収体は、少なくとも股間部の長手方向中央を跨いで長手方向に沿って設けられ、前記下層吸収体は、前記上層吸収体より幅広に設けられ、前記下層吸収体には、前記上層吸収体の下方に孔部または上方に開口する溝部が長手方向に延びて形成され、前記上層吸収体の少なくとも股間部には、前記上層吸収体を収縮させる弾性体が長手方向に沿って設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨て吸収性物品に関するものであり、より詳しくは、それ自体で着用される使い捨ておむつを対象とするほか、大人用などの使い捨ておむつ内に配置されるいわゆるパッドの取り付けが可能な使い捨ておむつも対象とする。
そして、本発明の使い捨て吸収性物品は、着用者の体液を腹側部および背側部へ拡散することで、尿もれがしにくくなるものである。
【背景技術】
【0002】
この種の使い捨て吸収性物品を着用して椅子等に着席した場合、着用者の体圧によって股間部に配置された吸収体が潰されてしまう。その結果、着用者が尿などの体液を排出すると、股間部に配置された吸収体で吸収されるが、その股間部で吸収された体液が腹側部または背側部の吸収体へ拡散することは少ない。このように、体液の吸収が主に股間部でのみ行われるため、尿などの体液の排出量が少ない場合でも漏れが発生しやすいという問題がある。
【0003】
下記特許文献1には、股下部において幅方向両側に一対の第一吸収体が設けられ、当該一対の第一吸収体の間に第二吸収体が設けられた使い捨て吸収性物品が開示されている。当該吸収性物品においては、吸収体が部分的に厚くなって装着感が悪くなるのを防ぐため、前記第一吸収体と第二吸収体とが積層しないように設計されている。
【0004】
また、下記特許文献2では、股下部において幅方向両側に一対の脚回り吸収体を設け、その裏面シート側に第二弾性体を配置した使い捨て吸収性物品が開示されている。この第二弾性体の収縮により一対の脚回り吸収体が装着者の股間部に密着するため、漏れを確実に防止できるとの効果が示されている。また、前記使い捨て吸収性物品は、一対の脚回り吸収体間に孔部が設けられ、当該孔部の上にパッド吸収体を配置する実施例も開示されており、吸収性を向上できるとの効果が示されている。
【特許文献1】特開2007−330383号公報
【特許文献2】特開2007−185240号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示の使い捨て吸収性物品は、第一吸収体と第二吸収体とが積層しないように設計されているため、当該吸収性物品の着用者が椅子等に着席した場合、股下部に配置された第一吸収体と第二吸収体が潰れてしまう。その結果、着用者が尿などの体液を排出すると、股下部に配置された前記吸収体で吸収されるが、股下部で吸収された体液が腹側部または背側部の吸収体へ拡散することは少ない。このように、体液の吸収が股下部でのみ行われるため、尿などの体液の排出量が少ない場合でも漏れが発生しやすいという問題がある。
また、特許文献2に開示の使い捨て吸収性物品においても、脚回り吸収体とパッド吸収体が部分的に重なって厚みが増加するのを防ぐため、脚回り吸収体とパッド吸収体とが積層しないような幅寸法に設計されている。そのため、当該吸収性物品の着用者が椅子等に着席した場合に股下部に配置された脚回り吸収体とパッド吸収体が潰れてしまう。その結果、着用者が尿などの体液を排出すると、股間部に配置された前記吸収体で吸収されるが、股間部で吸収された体液が腹側部または背側部の吸収体へ拡散することは少ない。このように、体液の吸収が股間部でのみ行われるため、尿などの体液の排出量が少ない場合でも漏れが発生しやすいという問題がある。
【0006】
そこで、本発明の主たる目的は、着用者の体圧がかかった状態であっても吸収体が潰れにくく、その結果排出された体液が腹側部および背側部へ拡散されて、体液漏れが発生しにくい使い捨て吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
体液を透過する液透過性の表面シートと、
体液を透過しない液不透過性の裏面側シートと、
これらの間に介在され前記表面シートを透過した体液を吸収する吸収体とを備えた使い捨て吸収性物品において、
前記吸収体は、上層吸収体及びその下方に配置された下層吸収体を有し、
前記上層吸収体は、少なくとも股間部の長手方向中央を跨いで長手方向に沿って設けられ、
前記下層吸収体は、前記上層吸収体より幅広に設けられ、
前記下層吸収体には、前記上層吸収体の下方に孔部または上方に開口する溝部が長手方向に延びて形成され、
前記上層吸収体の少なくとも股間部には、前記上層吸収体を収縮させる弾性体が長手方向に沿って設けられている
ことを特徴とする使い捨て吸収性物品。
【0008】
(作用効果)
下層吸収体には、上層吸収体の下方に孔部または上方に開口する溝部が長手方向に延びて形成されているため、上層吸収体で吸収しきれずに下方へ滴下した体液を長手方向腹側および背側へ拡散することができる。その結果、長手方向腹側および背側に位置する下層吸収体によって体液が吸収されるため、尿などの体液の排出量が多い場合でも漏れの発生を防止することができる。
また、上層吸収体の少なくとも股間部には、上層吸収体を収縮させる弾性体が長手方向に沿って設けられているため、使い捨ておむつの装着状態において、前記弾性体の長手方向内側へ縮む弾性力によって、上層吸収体も長手方向内側に収縮する。その結果、上層吸収体が装着者の股間部に密着し、漏れを防止することができる。
さらに、上層吸収体を収縮させる弾性体が長手方向に沿って設けることで、上層吸収体が長手方向内側に収縮して硬くなるため、着用者の体圧がかかった状態でも上層吸収体の下方に設けた孔部または溝部に生じた空間が潰れにくくなる。その結果、体液を長手方向腹側および背側へ拡散できるため、尿などの体液の排出量が多い場合でも漏れの発生を防止することができる。
【0009】
<請求項2記載の発明>
平面視で、前記下層吸収体の孔部または溝部の長手方向側端部は、前記上層吸収体の腹側部または背側部の幅方向側端部より幅方向外側へ延出している請求項1記載の使い捨て吸収性物品。
【0010】
(作用効果)
平面視で、前記下層吸収体の孔部または溝部の長手方向側端部は、前記上層吸収体の腹側部または背側部の幅方向側端部より幅方向外側へ延出しているため、体液が上層吸収体で吸収しきれずに幅方向外側へ漏れ出した場合であっても、当該漏れ出した体液は、上層吸収体の腹側部または背側部の幅方向側端部より幅方向外側へ延出している孔部または凹部へ入り込む。そして入り込んだ後は、長手方向腹側または背側へと拡散し、下層吸収体の広い範囲で体液が吸収されるため、漏れの発生を防止できる。
【0011】
<請求項3記載の発明>
平面視で、前記下層吸収体の孔部または溝部の長手方向中央側部は、前記上層吸収体の腹側部または背側部の幅方向側端部より幅方向外側へ延出している請求項1または2記載の使い捨て吸収性物品。
【0012】
(作用効果)
平面視で、前記下層吸収体の孔部または溝部の長手方向中央側部は、前記上層吸収体の腹側部または背側部の幅方向側端部より幅方向外側へ延出しているため、体液が上層吸収体で吸収しきれずに幅方向外側へ漏れ出した場合であっても、当該漏れ出した体液は、上層吸収体の腹側部または背側部の幅方向側端部より幅方向外側へ延出している長手方向中央側部の孔部または溝部へと入り込む。そして入り込んだ後は、長手方向腹側または背側へと拡散し、下層吸収体の広い範囲で体液が吸収されるため、漏れの発生を防止できる。
【0013】
<請求項4記載の発明>
前記上層吸収体の背側部に、前記上層吸収体を収縮させる弾性体が長手方向に沿って更に設けられている請求項1記載の使い捨て吸収性物品。
【0014】
(作用効果)
前記上層吸収体の背側部に、前記上層吸収体を収縮させる弾性体が長手方向に沿って更に設けられているため、当該弾性体の収縮作用によって背側部に設けられた上層吸収体も硬くなり、着用者の体圧が背側にかかった場合でも上層吸収体の下方に設けた孔部または溝部に生じた空間が潰れにくくなる。その結果、体液を長手方向腹側および背側へ拡散できるため、尿などの体液の排出量が多い場合でも漏れの発生を防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のとおり本発明によれば、着用者の体圧がかかった状態であっても吸収体が潰れにくく、その結果排出された体液が腹側部および背側部へ拡散されて、体液漏れが発生しにくい使い捨て吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態の吸収性物品の平面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の吸収性物品の2−2部の断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の吸収性物品の3−3部の断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態の吸収性物品の2−2部の断面図であり、着用状態を示した図である。
【図5】本発明の第1の実施形態の吸収性物品の2−2部の断面図であり、弾性体上方シートを設けた場合を示した図である。
【図6】本発明の第1の実施形態の吸収性物品の斜視図である。
【図7】本発明の第2の実施形態の吸収性物品の平面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態の吸収性物品の8−8部の断面図である。
【図9】本発明の第3の実施形態の吸収性物品の平面図である。
【図10】本発明の吸収性物品の弾性体の配置例を示した平面図である。
【図11】本発明の第4の実施形態の吸収性物品の平面図である。
【図12】本発明の第4の実施形態の吸収性物品の12−12部の断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の第1の実施の形態について添付図面を参照しながら詳説する。
【0018】
図1は、本発明にかかる使い捨て吸収性物品1の平面図である。
この使い捨て吸収性物品1は、腹側に位置する腹側部と、股間に位置する股間部と、背側に位置する背側部とで区画できる。使い捨て吸収性物品1の股間部には、着用者の足と当接する窪みが幅方向両側から内側へ向かって形成されている。
【0019】
この使い捨て吸収性物品1は、着用者の尿などの体液を透過する液透過性の表面シート2と、体液を透過しない液不透過性の裏面側シート3と、これらの間に介在されて、前記表面シート2を透過した体液を吸収する吸収体4とからなる。
【0020】
前記のように、吸収体4の表面側は表面シート2により覆われている。この表面シート2としては、有孔または無孔の不織布や穴あきプラスチックシートなどが用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができる。
【0021】
また、前記のように、吸収体4の裏面側には液不透過性の裏面側シート3が設けられている。裏面側シート3としては、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどの液不透過性プラスチックシートが用いられるが、近年はムレ防止の点から透湿性を有するものが好適に用いられる。この裏面側シート3は、たとえばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂中に無機充填材を溶融混練してシートを形成した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートである。
【0022】
そして、前記表面シート2と裏面側シート3の間に介在される吸収体4は、表面シート2側にある上層吸収体5と、その下方の裏面側シート3側にある下層吸収体6からなる。
この上層吸収体5は、少なくとも股間部の長手方向中央を跨いで長手方向に沿って設けられる。図1の実施例においては、上層吸収体5が腹側部から股間部を通り背側部へと長手方向に沿って設けられているが、これに限定されるものではない。例えば、腹側部や背側部には設けられなくても良い。また、股間部の長手方向中央を跨いで設けられれば良く、股間部のうち長手方向腹側または背側には設けられていなくても良い。
【0023】
上層吸収体5の下方には、下層吸収体6が設けられている。
この下層吸収体6は、上層吸収体5よりも幅広に設けられており、上層吸収体5から幅方向外側へ漏れた体液を下層吸収体6で吸収できるようにしている。
また、図1における下層吸収体6は、上層吸収体5の長手方向の長さよりも長く設けられており、上層吸収体5から長手方向外側へ漏れた体液を下層吸収体6で吸収できるようにしている。しかし、本発明においては、下層吸収体6の長手方向の長さよりも上層吸収体5の長さのほうが長くなるようにしても良い。
【0024】
上層吸収体5および下層吸収体6としては、パルプ繊維の積繊体、セルロースアセテート等のフィラメントの集合体、あるいは不織布を基本とし、必要に応じて粒子状等の高吸収性ポリマーを混合、固着等してなるものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子を混合する場合等、必要に応じて、上層吸収体5および下層吸収体6はクレープ紙等の包被シート8により包むことができる。
【0025】
また図1に示すように、下層吸収体6には、上層吸収体5の下方に孔部6aが形成されている。そして、当該孔部6aは長手方向に延びるように形成されている。
孔部6aの形状は任意に決めることができる。図1においては、長手方向に延びた孔部6aが、着用者の足圧を均等に受けることができるように、平面視で、幅方向外側から内側へ向かって弧状に窪んだ形状をしている。
【0026】
当該孔部6aを設けることにより、上層吸収体5で吸収しきれずに下方へ滴る体液を腹側部および背側部へと長手方向に拡散することができる。その結果、腹側部および背側部に位置する下層吸収体6によって体液が吸収されるため、尿などの体液の排出量が多い場合でも漏れの発生を防止することができる。
【0027】
図1の2−2部分の断面図を図2に示す。
2−2部分の断面では、上層吸収体5の幅方向外側部分と、下層吸収体6の幅方向内側部分とが重なり合っている。この重なり合う部分を設けることにより、着用者の体圧がかかった状態でも上層吸収体5の下方に設けた孔部6aに生じた空間Aが潰れにくくなる。その結果、体液を長手方向腹側および背側へ拡散できるため、尿などの体液の排出量が多い場合でも漏れの発生を防止することができる。
【0028】
また、上層吸収体5の下面と臨むように長手方向に沿って弾性体7が設けられる。
図1の実施例においては、当該弾性体7が糸状弾性体からなる場合を現した。しかし、これに限られるものではなく、帯状弾性体などであっても良い。
【0029】
図1の実施例においては、複数本からなる糸状弾性体を現した。しかし、これに限られるものではなく、糸状弾性体や帯状弾性体などの本数を1本のみからなるようにしても良い。1本のみからなる場合は、上層吸収体を収縮させることができる程度の弾性力を有する素材で構成することが好ましい。
【0030】
また、図1の実施例においては、当該弾性体7は長手方向に沿って略平行に設けられている。しかし、これに限られるものではなく、複数本の弾性体7が所定の角度をもって交差するように配置しても良い。ただし、製造のしやすさ等を考慮すると、略平行に配置することが好ましい。
【0031】
上記弾性体7を設けることにより、使い捨ておむつの装着状態において、前記弾性体7が長手方向内側に縮むような弾性力が加わり、それにつられて上層吸収体5も長手方向内側に収縮する。その結果、上層吸収体5が装着者の股間部に密着し、漏れを防止することができる。
【0032】
また、上層吸収体5を収縮させる弾性体7を長手方向に沿って設けることで、上層吸収体5が長手方向内側に収縮して硬くなるため、着用者が着座して、吸収性物品1が着用者の体圧を受けた場合でも、上層吸収体5の下方に設けた孔部6aに生じた空間Aが潰れにくくなる。その結果、体液を長手方向腹側および背側へ拡散できるため、尿などの体液の排出量が多い場合でも漏れの発生を防止することができる。
【0033】
弾性体7は、上層吸収体5の下面に直接設けても良いし、上層吸収体5を包み込む包被シート8の下面に設けても良い。図2では、包被シート8の下面に弾性体7を設けた例を示している。上層吸収体5の下面に直接設ける場合は、上層吸収体5が弾性体7によって収縮してしまい、よれわれを生じやすい。そのため、包被シート8の下面に取り付けるようにするのが好ましい。
【0034】
また、包被シート8の下方に更にシートを設け、そのシートの下面に弾性体7を設けても良い。包被シート8の下方かつ弾性体の上方にある当該シートを、以下、弾性体上方シート11という。
図5は、図1の吸収性物品1の2−2部の断面図を示した図であり、弾性体上方シート11を設けた場合を示した図である。
弾性体上方シート11は、上層吸収体5から下方へ体液が滴下した場合に、当該体液を透過できる液透過性能を有していることが好ましい。また、弾性体上方シート11は、上層吸収体5が弾性体7によって収縮し、よれわれが生じるのを防ぐものであるため、よれわれを防ぐことができる程度の剛性を有していることが好ましい。
【0035】
この弾性体上方シート11は、有孔または無孔の不織布や穴あきプラスチックシートなどが用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができる。
【0036】
図5においては、弾性体上方シート11を1枚だけ設けた例を示した。本発明はこれに限られるものではなく、弾性体上方シート11を複数枚設けるようにしても良い。1枚より複数枚設けるほうが、剛性が強くなるため、上層吸収体5のよれわれを防ぎやすくなるという利点がある。
また、複数枚設ける場合は、全て同じ素材のシートにしても良いし、違う素材のシートを任意に組み合わせても良い。素材の選択においては、液透過性能が低下しないように組み合わせるのが好ましい。
【0037】
本発明の吸収性物品1は、図2のように、弾性体7の下方に弾性体下方シート9を設けても良い。この弾性体下方シート9を設けることにより、弾性体7を包被シート8にしっかりと固定することができ、包被シート8上を弾性体7が幅方向左右へ動くことを防ぐことができるという効果がある。
【0038】
この弾性体下方シート11は、有孔または無孔の不織布や穴あきプラスチックシートなどが用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができる。
【0039】
図2においては、弾性体下方シート9を1枚だけ設けた例を示した。本発明はこれに限られるものではなく、弾性体上方シート9を複数枚設けるようにしても良い。
また、複数枚設ける場合は、全て同じ素材のシートにしても良いし、違う素材のシートを任意に組み合わせても良い。素材の選択においては、液透過性能が低下しないように組み合わせるのが好ましい。
【0040】
前記弾性体下方シート9の下面と、下方吸収体6を包む包被シート8の上面が重なり合う部分は、ホットメルトなどの手段により固着されている。また、表面シート2の下面と、下方吸収体6を包む包被シート8の上面が重なり合う部分についても、ホットメルトなどの手段により固着されている。
【0041】
次に図3について説明する。図3は、図1の吸収性物品1の3−3部分の断面図である。3−3部分の断面は、図2の2−2部分の断面と異なり、上層吸収体5の幅方向外側部分と、下層吸収体6の幅方向内側部分とが重なり合っていない。
図1の平面図を参照しても、下層吸収体6の孔部6aの長手方向側端部は、上層吸収体5の腹側部または背側部の幅方向側端部より幅方向外側へ延出しており、上層吸収体5の幅方向外側部分と、下層吸収体6の幅方向内側部分とが重なり合っていないことが分かる。
【0042】
このように、上層吸収体5の腹側部または背側部では、上層吸収体5の幅方向外側部分と、下層吸収体6の幅方向内側部分とが重なり合わないため、体液が上層吸収体5で吸収しきれずに幅方向外側へ漏れ出した場合であっても、当該漏れ出した体液は、上層吸収体5の腹側部または背側部の幅方向側端部より幅方向外側へ延出している孔部6aへ入り込む。そして入り込んだ後は、長手方向腹側または背側へと拡散し、下層吸収体6の広い範囲で体液が吸収されるため、体液の漏れを防止できる。
【0043】
また、図1の平面図では省略したが、図2や図3のように、本発明にかかる吸収性物品1には、立体ギャザー10を配置しても良い。
具体的には、本発明にかかる吸収性物品1の幅方向外側に、腹側部から股間部を通り背側部へと長手方向に縦断するように糸ゴムを有する一対の立体ギャザー10を配置することができる。
このように立体ギャザー10を配置することで、立体ギャザーを着用者の肌と当接させることができ、尿などが使い捨て吸収性物品1の横から漏れるのを防ぐことができる。
【0044】
立体ギャザー10の素材としては、プラスチックシートやメルトブローン不織布を使用することもできるが、肌への感触性の点で、不織布にシリコンなどにより撥水処理をしたものが好適に使用される。
【0045】
立体ギャザー10には、細長状弾性部材Sが設けられている。
この細長状弾性部材Sとしては、糸状、紐状、帯状等に形成された、スチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンブタジエン、シリコン、ポリエステル等、通常使用される素材を用いることができる。
【0046】
図4は、図1の2−2部分の断面図であり、本発明の使い捨ておむつを着用した状態を示した図である。着用者の足圧によって幅方向両側から内側へ向かって力が加わり、下層吸収体6が着用者の太腿の形状に合うように変形する。
また、上層吸収体5は、弾性体7の作用によって長手方向外側から内側へ向かって収縮するため、吸収性物品1と着用者の股間部との密着性が高くなる。また、下層吸収体6に設けた孔部6aによって、上層吸収体5の下方に空間Aが生じている。
【0047】
図6は、図1の吸収性物品1の一部を表面シート1側から見た斜視図である。立体ギャザー10の間に上層吸収体5および下層吸収体6が配置されており、弾性体7によって上層吸収体5が収縮し、表面シート1には複数の皺が生じている。このように、上層吸収体5が収縮することにより、着用者の股間部への密着性が向上し、漏れを防止することができる。
【0048】
図7および図8は、本発明の第二実施例の吸収性物品1を示した図である。図7は、吸収性物品1の平面図であり、図8は、図7の8−8部分の断面図である。なお、上記第一の実施の形態と同様の構成および作用については、同一の符号を付したその説明を省略する。
【0049】
図7は、図1と下層吸収体6に設けた孔部6aの形状が異なる。具体的には、下層吸収体6の幅方向中央部分に孔部6aが設けられていない点が異なる。
本発明においては、上層吸収体5から下層吸収体6の孔部6aに滴下した体液が長手方向腹側または背側へ拡散すれば良いため、孔部6aの形状は長手方向に延びていれば、特に限定されない。つまり、図7においては、下層吸収体6の幅方向中央を長手方向に通る線を中央線として左右対称に2つの孔部6aを設けているが、例えば、当該2つの孔部6aの間に長手方向に延びる孔部6aを1つまたは複数設けても良い。
【0050】
図8は、図7の8−8部分の断面図であり、第一実施例の図2に対応する図面であるが、図2とは下層吸収体6に設けた孔部6aの形状が異なる。具体的には、下層吸収体6の幅方向中央部分に孔部6aが設けられていない点が異なる。
この第二実施例においては、下層吸収体6の幅方向中央にも下層吸収体6があるため、吸収性物品1が着用者の体圧を受けた場合に、下層吸収体6の間に設けた孔部6aが、第一実施例の場合よりも潰れにくいという利点がある。それに対して、孔部6aの大きさが第一実施例の場合よりも小さいため、体液を長手方向へ拡散する能力は第一実施例の場合よりも小さい。
【0051】
図9は、本発明の第三実施例の吸収性物品1を示した平面図である。
図9のように、平面視で、下層吸収体6の孔部6aの長手方向中央側部を、上層吸収体5の腹側部または背側部の幅方向側端部より幅方向外側へ延出するようにしても良い。このような形状にすることにより、体液が上層吸収体5で吸収しきれずに幅方向外側へ漏れ出した場合であっても、当該漏れ出した体液は、上層吸収体5の腹側部または背側部の幅方向側端部より幅方向外側へ延出している長手方向中央側部の孔部へと入り込む。そして入り込んだ後は、長手方向腹側または背側へと拡散し、下層吸収体6の広い範囲で体液が吸収されるため、漏れの発生を防止できる。
【0052】
図9においては、上層吸収体5の長手方向中央側部に孔部6aを幅方向左右対称に1つずつ設けた例を示したが、本発明の吸収性物品1はこのような形態に限られない。
例えば、長手方向中央側部に孔部6aを左右対称に2つ以上設けてもよいし、左右非対称に1つまたは複数の孔部6aを設けても良い。また、幅方向左右に異なる数の孔部6aを設けても良い。
【0053】
また、図9においては、平面視で、下層吸収体6に設けた孔部6aの長手方向側端部も、上層吸収体5の腹側部および背側部の幅方向側端部より幅方向外側へ延出している例を示したが、当該部分が幅方向外側へ延出しないようにしても良い。つまり、平面視で、下層吸収体6の孔部6aの長手方向中央側部のみを、上層吸収体5の腹側部または背側部の幅方向側端部より幅方向外側へ延出するようにしても良い。
【0054】
また、図9においては、孔部6aのうち、上層吸収体5の腹側部および背側部の幅方向側端部より幅方向外側へ延出している部分の形状が略三角形となる例を示したが、本発明はこれに限られるものではない。具体的には、当該部分が四角形などの多角形や円形などの形状を呈していても良く、孔部6aの当該部分から孔部6aに体液が入り込めるのであれば、その形状は問わない。
【0055】
図10は、弾性体7の配置例を示した吸収性物品1の平面図である。
本発明の弾性体7は、股間部にある上層吸収体5の下方に設けるのが好ましい。股間部にある上層吸収体5を弾性体7の作用によって収縮させて硬くすることにより、上層吸収体5の股間部への密着性が向上するという効果があるからである。また、吸収性物品1が着用者の体圧を受けた場合でも上層吸収体5の下方に設けた孔部6aに生じたAが潰れにくくなる結果、体液を長手方向腹側および背側へ拡散できるため、尿などの体液の排出量が多い場合でも漏れの発生を防止することができるからである。
【0056】
また、図10のように、本発明の弾性体7は、背側部にある上層吸収体5の下方に更に設けるようにするのが好ましい。背側部にある上層吸収体5を弾性体7の作用によって収縮させて硬くすることにより、上層吸収体5の背側部への密着性が向上するという効果があるからである。また、吸収性物品1が着用者の体圧を受けた場合でも上層吸収体5の下方に設けた孔部6aに生じた空間Aが潰れにくくなる結果、体液を長手方向腹側および背側へ更に拡散しやすくなるため、尿などの体液の排出量が多い場合でも漏れの発生を防止することができるからである。
同様の理由により、腹側部にある上層吸収体5の下方に弾性体7を更に設けるようにしても良い。
【0057】
図11は、第四の実施形態の吸収性物品1の平面図であり、図12は、図11の12−12部分の断面図である。図11の二点鎖線で示す部分に、下層吸収体6に孔ではなく、上方に開口する溝部6bを設けても良い。このような溝部6bによっても、下層吸収体6に滴下した体液を長手方向へ拡散させることができるからである。
なお、孔部6aを設ける場合とは、滴下した体液を溝部6bに設けた下層吸収体6によって吸収するという点が異なる。
【0058】
なお、当該溝部6bの形状は、図11の二点鎖線の部分の形状に限られるものではない。前述の孔部6aの形状と置き換えることができ、様々な形状を採ることができる。
【符号の説明】
【0059】
1:吸収性物品、2:表面シート、3:裏面側シート、4:吸収体、5:上層吸収体、
6:下層吸収体、6a:孔部、6b:溝部、7:弾性体、8:包被シート、
9:弾性体下方シート、10:立体ギャザー、11:弾性体上方シート、
A:空間、S:細長状弾性部材、H:ホットメルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体液を透過する液透過性の表面シートと、
体液を透過しない液不透過性の裏面側シートと、
これらの間に介在され前記表面シートを透過した体液を吸収する吸収体とを備えた使い捨て吸収性物品において、
前記吸収体は、上層吸収体及びその下方に配置された下層吸収体を有し、
前記上層吸収体は、少なくとも股間部の長手方向中央を跨いで長手方向に沿って設けられ、
前記下層吸収体は、前記上層吸収体より幅広に設けられ、
前記下層吸収体には、前記上層吸収体の下方に孔部または上方に開口する溝部が長手方向に延びて形成され、
前記上層吸収体の少なくとも股間部には、前記上層吸収体を収縮させる弾性体が長手方向に沿って設けられている
ことを特徴とする使い捨て吸収性物品。
【請求項2】
平面視で、前記下層吸収体の孔部または溝部の長手方向側端部は、前記上層吸収体の腹側部または背側部の幅方向側端部より幅方向外側へ延出している請求項1記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項3】
平面視で、前記下層吸収体の孔部または溝部の長手方向中央側部は、前記上層吸収体の腹側部または背側部の幅方向側端部より幅方向外側へ延出している請求項1または2記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項4】
前記上層吸収体の背側部に、前記上層吸収体を収縮させる弾性体が長手方向に沿って更に設けられている請求項1記載の使い捨て吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−245303(P2012−245303A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121395(P2011−121395)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】