説明

使い捨て着用物品

【課題】シャーシの前後ウエスト域であって、そのクロッチ域側では、両側縁部が横方向外側に向かって広がっている着用物品を提供する。
【解決手段】おむつ1は、前ウエスト域2に位置する前側縁部7aと、後ウエスト域3に位置する後側縁部7bと、クロッチ域4に位置するクロッチ側縁部7cとを有する。おむつ1のシャーシ10は、前ウエスト域2とクロッチ域4の一部を形成する第1外面シート11と、後ウエスト域3とクロッチ域4の一部を形成する第2外面シートとを有する。前後ウエスト域2,3には、第1前後ウエスト弾性糸および前後ウエスト弾性シートが取り付けられ、クロッチ域4には、クロッチ側縁部7cに沿って前レッグ弾性要素23及び後レッグ弾性要素が取り付けられている。前レッグ弾性要素23の一方の端部23aは、前側縁部7aに一致するように重なっている。後レッグ弾性要素の一方の端縁は、後側縁部7bに一致するように重なっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨て着用物品に関し、より詳しくは、ウエスト域に伸縮性シートを用いた使い捨ておむつ、使い捨てのトイレット・トレーニングパンツ、使い捨て失禁パンツ、使い捨ての生理用パンツ等の使い捨て着用物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前後ウエスト域に伸縮性シートを用い、前後ウエスト域を横方向に弾性化した使い捨ておむつは公知である。例えば、特許文献1には、使い捨ておむつの外装体を非伸縮性シートからなる内装シートと、伸縮性シートからなる外装シートとによって構成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−346439公報(JP 2006−346439 A)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような特許文献1では、前後ウエスト域では、その両側縁部が接合されてウエスト開口およびレッグ開口が形成されているが、両側縁部はほぼ平行に縦方向に延びている。このようなおむつは、着用時におむつ内からレッグ開口が確認し難く、両側縁部の下端部分に脚を引っかけてしまう可能性があった。
【0005】
この発明では、シャーシの前後ウエスト域であって、そのクロッチ域側では、両側縁部が横方向外側に向かって広がっている着用物品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、縦方向および横方向と、身体側およびその反対側と、前後ウエスト域のいずれか一方である第1ウエスト域と、前記前後ウエスト域の他方である第2ウエスト域と、前記第1および第2ウエスト域間に位置するクロッチ域とを含むシャーシと、前記第1および第2ウエスト域を前記横方向に収縮可能に弾性化するウエスト弾性要素と、前記クロッチ域を前記縦方向に収縮可能に弾性化するレッグ弾性要素とを含み、前記第1および第2ウエスト域の両側縁部を互いに接合して他の領域よりも剛性の高いサイドシーム部を形成し、ウエスト開口およびレッグ開口が形成される使い捨て着用物品の改良にかかわる。
【0007】
本発明の特徴は、前記レッグ弾性要素は、弾性シートによって形成され、その両端部の少なくともいずれか一方は、前記両側縁部に重なって配置されて他の領域よりも高剛性とされ、前記第1および第2ウエスト域は、前記レッグ弾性要素と重なった領域の前記クロッチ域側が、前記横方向外側に広がることにある。
【0008】
この発明の実施態様のひとつとして、前記ウエスト弾性要素は、前記ウエスト開口に沿って取り付けられるエラストマー弾性糸によって形成される第1ウエスト弾性糸と、前記第1ウエスト弾性糸よりも前記クロッチ域側に位置し弾性シートによって形成されるウエスト弾性シートとを含む。
【0009】
他の実施態様のひとつとして、前記第1および第2ウエスト域の少なくともいずれか一方に位置する前記レッグ弾性要素は、前記ウエスト弾性シートに重なることなく、前記ウエスト弾性シートは、前記第1ウエスト弾性糸と、前記レッグ弾性要素との間に取り付けられる。
【0010】
他の実施態様のひとつとして、前記レッグ弾性要素は、前記第1ウエスト域から前記クロッチ域に延びる第1レッグ弾性要素と、前記第2ウエスト域から前記クロッチ域に延びる第2レッグ弾性要素とを有する。
【0011】
他の実施態様のひとつとして、前記レッグ弾性要素は、エラストマー繊維を含む伸縮性繊維不織布によって形成される。
【0012】
他の実施態様のひとつとして、前記シャーシと前記レッグ弾性要素とは、前記サイドシーム部によって互いに接合される。
【0013】
他の実施態様のひとつとして、前記ウエスト弾性要素は、前記レッグ弾性要素に重なるとともに前記横方向に延びるエラストマー弾性糸によって形成される第2ウエスト弾性糸を含む。
【0014】
他の実施態様のひとつとして、前記シャーシは、前記反対側に位置する外面シートを有し、前記外面シートは、捲縮繊維を含むとともに、多数の熱圧着部が形成される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の特にそのひとつ以上の実施態様によれば、弾性シートによって形成されたレッグ弾性要素の端部が、シャーシの側縁に重なって取り付けられるので、この重なった部分では、その剛性が高くなる。前後ウエスト域をウエスト弾性要素によって横方向に収縮させると、レッグ弾性要素の縦方向のウエスト開口側が強く収縮され、相対的にレッグ開口側が弱く収縮される。したがって、弾性シートはレッグ開口側に向かって横方向外側に広がり、レッグ開口を大きくすることができる。レッグ開口を大きくすることによって、これを認識し易く、着用する際に、着用者の脚が引っかかるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の使い捨て着用物品の一例である第1の実施形態にかかるおむつの斜視図。
【図2】おむつの一部破断展開図。
【図3】おむつの分解斜視図。
【図4】図2のIV−IV線模式断面図。
【図5】第2の実施形態にかかるおむつの斜視図。
【図6】図5のおむつの一部を示した説明図。
【図7】比較例のおむつの一部破断展開図。
【図8】図7のおむつの分解斜視図。
【図9】(a)〜(e) 着用者a〜eの紅斑指数の測定結果を示したグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る使い捨て着用物品の一例として示す、使い捨ておむつ1の斜視図、図2は、おむつ1の一部破断展開平面図、図3は、おむつ1の分解斜視図、図4は、図2のIV−IV線模式断面図である。おむつ1は、横方向Xの長さ寸法を二等分した仮想縦中心線P−P、縦方向Yの長さ寸法を二等分した仮想横中心線Q−Qを有し、仮想縦中心線P−Pに関してほぼ対称とされている。図2〜図4は、各弾性要素をその収縮力に抗して伸長させた状態を例示したものである。
【0018】
おむつ1は、着用者の身体側およびその反対側である着衣側と、おむつ1の外形を形成するシャーシ10と、シャーシ10の身体側に位置する吸液構造体30とを含む。
【0019】
おむつ1は前ウエスト域2と、後ウエスト域3と、前後ウエスト域2,3間に位置するクロッチ域4と、互いに仮想横中心線Q−Qに関して対向し、横方向Xに延びる前後端部5,6と、互いに仮想縦中心線P−Pに関して対向し、縦方向Yへ延びる両側縁部とを有する。両側縁部は、前ウエスト域2に位置する前側縁部7aと、後ウエスト域3に位置する後側縁部7bと、クロッチ域4に位置するクロッチ側縁部7cとを有する。
【0020】
前後側縁部7a,7bは、各弾性要素の伸長状態において、仮想縦中心線P−Pにほぼ平行に延びるとともに、クロッチ側縁部7cは、着用者の大腿部に沿ってフィットするように凹曲状に形成されている。前側縁部7aと後側縁部7bとは、縦方向Yに間欠的に延びるサイドシーム部8によって連結され、ウエスト開口および一対のレッグ開口が形成されている。
【0021】
シャーシ10は、着衣側に位置し、前ウエスト域2とクロッチ域4の一部を形成する略台形状の第1外面シート11と、後ウエスト域3とクロッチ域4の一部を形成する略台形状の第2外面シート12とを有する。第1および第2外面シート11,12の内面には、着衣側外部から視認可能なグラフィック(図示せず)などが印刷されたグラフィック表示フィルム17,18が取り付けられている。
【0022】
第1および第2外面シート11,12は、繊維不織布から形成されている。第1および第2外面シート11,12は、それぞれ複数層から形成されていてもよいが、その場合には、少なくともその外面に位置する繊維層が捲縮するスパンボンドフィラメント繊維から形成されていることが好ましい。第1および第2外面シート11,12として、捲縮繊維を用いた場合には、捲縮繊維が伸縮し、弾性伸縮性を有するので、着用者に密着し易く、肌触りも良好なものとすることができる。
【0023】
シャーシ10は、さらに第1および第2外面シート11,12を連結しクロッチ域4の一部を構成する中間シート13を有する。中間シート13は、第1および第2外面シート11,12側に位置する略矩形の繊維不織布シート15と、その反対側に位置するとともに、繊維不織布シート15とほぼ同形同大の透湿性かつ不透液性のプラスチックシート16とがホットメルト接着剤(図示せず)を介して接合されて形成されている。このような中間シート13全体を被覆する繊維不織布製の固定シート14が、プラスチックシート16に積層されて取り付けられている。固定シート14は、中間シート13よりも幅広であるとともに、クロッチ域4から後ウエスト域3に位置している。中間シート13および固定シート14は、第1および第2外面シート11,12と同様に、捲縮繊維からなるスパンボンド繊維不織布から形成してもよいし、弾性的に非伸縮性のエアスルー繊維不織布などから形成してもよい。
【0024】
前ウエスト域2は、前端部5に沿って第1外面シート11が内方へ向かって折り返された前エンドフラップ19を有する。後ウエスト域3は、後端部6に沿って、第2外面シート12が内方へ向かって折り返された後エンドフラップ21を有する。
【0025】
上記のようなシャーシ10の身体側には、クロッチ域4から前後ウエスト域2,3へと延びる吸液構造体30が配置されている。吸液構造体30は、横方向Xに延びる前後端縁31,32と、縦方向Yに延びる両側縁33とによって画成された縦長方形状である。前端縁31は、第1外面シート11に位置し、後端縁32は、第2外面シート12に位置し、これら前後端縁31,32の間の中間部分は中間シート13に位置している。
【0026】
吸液構造体30は、フラッフパルプと超吸収性ポリマー粒子等との混合からなる吸液性コアを液拡散性シート(図示せず)で覆うことによって形成された吸液性芯材34と、吸液性芯材34の吸収面を覆う身体側ライナ35と、吸液性芯材34の底面を覆う被覆シート36と、被覆シート36と吸液性芯材34との間に位置しプラスチック材料から形成された防漏シート37とを含む。
【0027】
被覆シート36は、吸液性芯材34の両側縁から横方向Xの外方に延びるとともに、その一部が仮想縦中心線P−P側に向かって折り返され、一対のスリーブ状のサイドフラップ38,38を形成している。サイドフラップ38,38内には、縦方向Yに延びるエラストマーからなるストランド状の第1および第2カフ弾性要素39,40がホットメルト接着剤を介して収縮可能に接合されている。横方向X内側に位置する複数条の第1カフ弾性要素39は、クロッチ域4から前後ウエスト域2,3に延びている。これら第1カフ弾性要素39の収縮作用によって、被覆シート36の両側部が身体側ライナ35から離間してバリアまたはガスケットカフを形成し、排泄物の横漏れを防止することができる。第1カフ弾性要素39の横方向X外側に位置する複数条の第2カフ弾性要素40は、クロッチ域4の中央部にのみ取り付けられ、着用者の鼠径部に沿って延びる弾性帯を形成している。吸液構造体30は、被覆シート36の外面が、ホットメルト接着剤(図示せず)を介してシャーシ10の内面に固定されている。
【0028】
上記のようなおむつ1の前後ウエスト域2,3を横方向Xに弾性化するウエスト弾性要素として、ウエスト開口に沿って取り付けられる第1前後ウエスト弾性糸20,22および前後ウエスト弾性シート51,52が取り付けられている。第1前後ウエスト弾性糸20,22は、複数条のエラストマー弾性糸によって形成され、折り返しによって形成された前後エンドフラップ19,21内であって前後端部5,6沿いに、ホットメルト接着剤(図示せず)によって収縮可能に取り付けられている。
【0029】
前後ウエスト弾性シート51,52は、エラストマー繊維を含む伸縮性繊維不織布によって形成されている。前ウエスト域2に位置する前ウエスト弾性シート51は、吸液構造体30の底面と、第1外面シート11との間に位置し、横方向Xに伸長状態で収縮可能に取り付けられている。前ウエスト弾性シート51は、その外面が図示しないホットメルト接着剤等の接着手段によって、第1外面シート11に接合されるとともに、その内面は、被覆シート36に接合されている。
【0030】
後ウエスト域3に位置する後ウエスト弾性シート52は、吸液構造体30の吸収面側に位置し、横方向Xに伸長状態で収縮可能に取り付けられている。後ウエスト弾性シート52は、吸液構造体30の後端縁32を覆うように、後端縁32から縦方向Y外側に延出して重なるとともに、両側縁33から横方向X外側にも延出している。吸液構造体30の横方向X外側では、その全域において図示しないホットメルト接着剤等の接合手段によって、後ウエスト弾性シート52と第2外面シート12とが互いに接合されている。前後ウエスト弾性シート51,52の両側縁は、第1および第2外面シート11,12の両側縁と重なっている。
【0031】
第1および第2外面シート11,12が折り返された前後エンドフラップ19,21は、前後ウエスト弾性シート51,52の内面に接合される。前エンドフラップ19は、その内側端縁19aが吸液構造体30の前端縁31を覆い、その全域において前ウエスト弾性シート51および吸液構造体30に図示しないホットメルト接着剤等の接着手段によって接合される。吸液構造体30の前端縁31を第1外面シート11で覆い接合することによって、吸液性芯材34のフラッフパルプ等が零れ落ちるのを防止している。
【0032】
後エンドフラップ21は、その内側端縁21aが後ウエスト弾性シート52に僅かに重り、その全域において図示しないホットメルト接着剤等の接合手段によって接合される。
【0033】
上記のような構成のおむつ1において、前後ウエスト弾性シート51,52は、前後ウエスト域2,3の一方の側縁7a,7bから他方の側縁7a,7bに亘って、横方向Xに伸長状態で収縮可能に取り付けられているので、前後ウエスト域2,3のほぼ全域を着用者にフィットさせることができる。また、弾性糸を間欠的に配置した場合には、これら弾性糸の間で収縮されない部分ができてしまうが、前後ウエスト弾性シート51,52を用いることで収縮されない部分を形成することなく、より広い範囲で着用者にフィットさせることができるので、おむつ1のずり下がりを防止することができる。
【0034】
第1および第2外面シート11,12の内面には、クロッチ域4側であってクロッチ側縁部7cに沿って、前後レッグ弾性要素23,24がホットメルト接着剤(図示せず)によって収縮可能に取り付けられている。前後レッグ弾性要素23,24は、エラストマー繊維を含む伸縮性繊維不織布等の弾性シートによって形成されている。前レッグ弾性要素23の一部および後レッグ弾性要素24の全体の内面側には、固定シート14が積層され、これら弾性要素が固定されている。このような前後レッグ弾性要素23,24によって、レッグ開口を着用者に密着させることができる。
【0035】
クロッチ側縁部7cに沿って取り付けられた前レッグ弾性要素23の一方の端部23aは、前側縁部7aに一致するように重なっている。他方の端部23bは、クロッチ域4にまで延びて位置している。前レッグ弾性要素23には、少なくとも端部23aに重なって前ウエスト弾性シート51が取り付けられている。前ウエスト弾性シート51の縦方向Y外側には、これに重なることなく第1前ウエスト弾性糸20が取り付けられている。
【0036】
クロッチ側縁部7cに沿って取り付けられた後レッグ弾性要素24の一方の端縁24aは、後側縁部7bに一致するように重なっている。他方の端部24bは、クロッチ域4にまで延びて位置している。後レッグ弾性要素24の縦方向Y外側には、後ウエスト弾性シート52が、これに重なることなく取り付けられている。後ウエスト弾性シート52の縦方向Y外側には、さらに第1後ウエスト弾性糸22が、これに重なることなく取り付けられている。
【0037】
上記のような前後レッグ弾性要素23,24は、前後ウエスト域2,3をサイドシーム部8で接合した際には、互いに重なり、ウエスト開口側に位置する点Rと、レッグ開口側に位置する点Sとを有する。前後レッグ弾性要素23,24は、点Rおよび点Sにおいて互いに重なる。
【0038】
上記のようなおむつ1において、後ウエスト域3の点Rよりもウエスト開口側における剛性は0.04〜0.10gf・cm/cmであり、点Rと点Sとの間における剛性は0.16〜0.27gf・cm/cmであった。すなわち、点Rよりもウエスト開口側では、後レッグ弾性要素24が配置されていないが、点Rと点Sとの間では後レッグ弾性要素24が配置されているから、その分、剛性が大きくなると考えられる。
【0039】
剛性は、カトーテック(株)製のKES FB2 AUTO−A用いて測定した。後ウエスト域3の点Rからウエスト開口側の領域および点Rと点Sとの間の領域において、縦方向Y20mm×横方向X50mmのサンプル片をそれぞれ準備し、チャック間距離10mmで剛性を測定した。ただし、点Rと点Sとの間の領域におけるサンプル片は、ここでは、後レッグ弾性要素24に沿って、仮想縦中心線P−Pに傾斜するようにして準備した。
【0040】
上記測定では、後ウエスト域3におけるサンプル片を用いているが、前ウエスト域2においても同様の結果が得られる。すなわち、前ウエスト域2においても、点Rよりもウエスト開口側における剛性よりも、前レッグ弾性要素23が重なった点Rと点Sとの間における剛性のほうが大きくなる。
【0041】
同様に点Rよりもウエスト開口側の領域および点Rと点Sとの間の領域において、それぞれの領域を横方向Xに引っ張ったときの応力を測定した。応力は、(株)島津製作所製オートグラフを用いて測定した。サンプルは、おむつ1の前ウエスト域2を用いた。チャック間を100mmに設定するとともに、これらチャック間に一方のサイドシーム部8の内側と、他方のサイドシーム部8の内側とが位置するようにセットし、引張速度500mm/minで100mm引っ張り、そのときの行きの応力と戻りの応力とを測定した。
【0042】
点Rよりもウエスト開口側の領域の応力は、行きが約0.53N/20mm、戻りが約0.10N/20mmであった。点Rと点Sとの間の領域の応力は、行きが約0.38N/20mm、戻りが約0.04N/20mmであった。すなわち、応力は、点Rよりもウエスト開口側の領域のほうが、前レッグ弾性要素23が配置された点Rと点Sとの間の領域よりも大きくなる結果となった。同様に後ウエスト域3においても、点Rよりもウエスト開口側の領域のほうが、後レッグ弾性要素24が配置された点Rと点Sとの間の領域よりも大きくなる結果となった。
【0043】
以上の測定結果から、前後レッグ弾性要素23,24が取り付けられた点Rと点Sとの間の領域の剛性のほうが、点Rからウエスト開口側の領域よりも大きいので、第1前後ウエスト弾性糸20,22および前後ウエスト弾性シート51,52によって、第1および第2外面シート11,12が横方向X内側に収縮されると、剛性の高い前後レッグ弾性要素23,24の積層部分では、その収縮量が少なくなる。すなわち、前後レッグ弾性要素23,24の積層部分は、これよりも縦方向Yの上方に位置する領域に比べて横方向X外側に広がるようになる(図1参照)。第1および第2外面シート11,12は、剛性が変化する境界である前後レッグ弾性要素23,24の縦方向Yの上端縁を点Rとして、点Rから縦方向Y下方に向かって広がる。
【0044】
また、第1前後ウエスト弾性糸20,22が取り付けられた領域であって、点Rよりもウエスト開口側の領域の横方向Xの引っ張り応力は、前後レッグ弾性要素23,24が取り付けられた領域であって、点Rと点Sとの間の領域よりも大きくされているから、点Rよりもウエスト開口側の領域が、点Rと点Sとの間の領域よりも収縮し易く、点Rから下方に向かって広がり易くなっている。
【0045】
特に後ウエスト域3では、後レッグ弾性要素24と後ウエスト弾性シート52とは、互いに重なることはないので、後ウエスト弾性シート52が収縮しても、その収縮力は、後レッグ弾性要素24が取り付けられた部分に作用し難い。したがって、後レッグ弾性要素24が取り付けられた前後側縁部7a,7bの部分は、横方向X内側に収縮し難く、相対的にみるとよりその外側に広がりやすくなる。
【0046】
前後レッグ弾性要素23,24は、クロッチ側縁部7cに沿って湾曲して取り付けられている。このような前後レッグ弾性要素23,24の収縮時には、湾曲を直線にするように移動しようとする。そうすると前後レッグ弾性要素23,24の一方の端部23a,24aは、点Rを中心に点S側を横方向X外側に回動させるように移動する可能性も考えられる。このように移動した場合には、前後レッグ弾性要素23,24は、その幅寸法が約10mm〜40mmと、幅広とされているから、基点Rからクロッチ域側の端部までの距離が大きくなり、その広がりが大きくなることも予測される。また、前後レッグ弾性要素23,24を幅広とすることによって、より広い面で着用者の鼠蹊部近傍に密着し、尿等の漏れを防止することができ、さらに、クロッチ側縁部7cがよれにくく、皺になったりめくれたりするのを防止することができる。
【0047】
上記のように、前後ウエスト域2,3において第1および第2外面シート11,12が横方向X外側に向かって広がっているので、クロッチ側縁部7cによって形成されるレッグ開口が広がって見える。したがって、おむつ1を着用しようとした場合には、脚を挿入する位置が分かり易く、はき易い。また、レッグ開口が広がることによって、クロッチ側縁部7cに脚を引っかけたりすることも防止できる。
【0048】
前後ウエスト弾性シート51,52は、質量が20〜50g/m、好ましくは、30〜40g/m、繊維密度が0.01〜0.04g/cm、好ましくは0.025〜0.035g/cmの範囲である熱融着性のエラストマー繊維からなる伸縮性繊維不織布から形成されていることが好ましい。具体的には、熱可塑性ポリウレタンポリマーと、熱可塑性ポリウレタンポリマー以外の熱可塑性ポリマー、例えば、スチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、塩ビ系エラストマー、アミド系エラストマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等のポリオレフィン類のポリマーとの混合からなる繊維を含む混合繊維から形成することができる。
【0049】
前後ウエスト弾性シート51,52をエラストマー繊維と非エラストマー繊維との混合繊維から形成してもよい。この混合繊維を用いると、エラストマー繊維による着用者の肌に対する摩擦を軽減することができる。換言すると、非エラストマー繊維を混合することによって、着用者の肌に対するすべりを向上させ、前後ウエスト弾性シート51,52の柔軟性および肌触りを向上させることができる。また、前後ウエスト弾性シート51,52の伸縮性を調整することができる。
【0050】
第1および第2外面シート11,12は、質量が15〜40g/m、好ましくは25〜35g/m、繊維密度が0.03〜0.10g/cm、好ましくは0.04〜0.09g/cmである熱融着性のスパンボンド繊維不織布から形成されていることが好ましい。第1および第2外面シート11,12は、複数層から形成されていてもよい。
【0051】
前後レッグ弾性要素23,24は、質量が20〜50g/m、好ましくは、30〜40g/m、繊維密度が0.01〜0.04g/cm、好ましくは0.025〜0.035g/cmの範囲である熱融着性のエラストマー繊維からなる伸縮性繊維不織布から形成されていることが好ましい。具体的には、熱可塑性ポリウレタンポリマーと、熱可塑性ポリウレタンポリマー以外の熱可塑性ポリマー、例えば、スチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、塩ビ系エラストマー、アミド系エラストマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等のポリオレフィン類のポリマーとの混合からなる繊維を含む混合繊維から形成することができる。さらに、このような伸縮性繊維不織布を延伸処理することによって、伸縮性を向上させることができる。延伸処理としては、伸縮性繊維不織布をギア間に通過させることによって、さらに延伸される部分と延伸されない部分とを形成することによって行うことができる。例えば、前レッグ弾性要素23は、ギアピッチ約2.8mmで処理し、後レッグ弾性要素24は、ギアピッチ約4.9mmで処理することができる。ギアピッチが大きくなれば、繊維不織布に生じる皺も大きくなり、肌触りを向上させることができ、ギアピッチが小さくなれば皺も小さくなるので、他のシートとの接着性を向上させることができる。
【0052】
前後レッグ弾性要素23,24は、延伸処理を施すことによって、凹曲状にされたクロッチ側縁部7cに沿って湾曲させることが容易となる。すなわち、延伸処理によって伸縮性が向上されているので、湾曲した部分での内側と外側との円弧の差によってたわみが生じるのを防止することができる。したがって、前後レッグ弾性要素23,24は、第1および第2外面シート11,12から離間することなく、かつ、着用者の身体に密着することができる。
【0053】
上記のような前後レッグ弾性要素23,24は、前後側縁部7a,7bにおいて、第1および第2外面シート11,12とともに、一方の端部23a,24aがサイドシーム部8によって接合される。したがって、一方の端部23a,24aの抜け止めをすることができる。同様に、第1前後ウエスト弾性糸20,22および前後ウエスト弾性シート51,52もサイドシーム部8によって、第1および第2外面シート11,12に接合される。
【0054】
<第2の実施形態>
図5は、本発明の第2の実施形態に係る使い捨て着用物品の一例として示す、使い捨ておむつ1の斜視図、図6は、おむつ1の一部を示した説明図である。この実施形態では、第1および第2外面シート11,12が多数の熱圧着部60を有すること、および、ウエスト弾性要素としてエラストマー弾性糸によって形成される第2前後ウエスト弾性糸25,26をさらに有することを特徴とする。この特徴以外の構成要素については、第1の実施形態と同様であるので、その同様の構成要素については、第1の実施形態と同じ符号を用い、その詳細な説明を省略する。
【0055】
第2の実施形態において、第1および第2外面シート11,12は、熱融着性を有するとともに捲縮するスパンボンドフィラメント繊維から形成されている。第1および第2外面シート11,12には、その外面から内面に向かって熱圧着加工が施され、その全面に亘って多数の熱圧着部(デボス)60が形成されている。熱圧着部60では、外面シート11,12の外面がエンボスロール等によって熱圧着され、捲縮繊維が外面シート11,12の厚さ方向へ圧縮されている。多数の熱圧着部60は、間欠的に連続してラインを形成するように一定の方向に配置され、具体的には、仮想横中心線Q-Qに対して傾斜する第1熱圧着ライン61と、第1熱圧着ライン61に交差する第2熱圧着ライン62とを有する。これら第1および第2圧着ライン61,62は、第1および第2外面シート11,12の全域に形成されているが、図5ではその一部を省略している。
【0056】
第1および第2外面シート11,12の内面には、前後ウエスト弾性シート51,52が伸長状態で収縮可能に取り付けられているから、これら前後ウエスト弾性シート51,52が収縮することによって、第1および第2外面シート11,12が横方向Xに収縮し、これら第1および第2外面シート11,12には、熱圧着部60の間において図示しない隆起部が形成される。このような隆起部が形成されることで、第1および第2外面シート11,12が嵩高となり、「ふんわりとしたやわらかな感触」を与えることができる。熱圧着部60としては、ドット状、線状、矩形等、さまざまな形状に設計することが可能である。
【0057】
図6は、第1および第2外面シート11,12を示した図であるが、第1および第2外面シート11,12の内面には、第2前後ウエスト弾性糸25,26が取り付けられている。第2前後ウエスト弾性糸25,26は、少なくともその一部が前後レッグ弾性要素23,24と重なり、横方向Xに延びるとともに、伸長状態で収縮可能に取り付けられている。第2前後ウエスト弾性糸25,26の両端部は、サイドシーム部8に位置されている。第2前後ウエスト弾性糸25,26は、第1および第2外面シート11,12の前後ウエスト域2,3であって、クロッチ域4との境界近傍に取り付けられ、第1前後ウエスト弾性糸20,22とほぼ平行に配置されている。したがって、前後ウエスト域2,3に延出して位置する前後レッグ弾性要素23,24の端部23a,24aとは重なり、クロッチ域4に位置する端部23b,24b側では重なることなく縦方向Yに離間されている。
【0058】
前後ウエスト域2,3において、前後レッグ弾性要素23,24と重なった領域では、クロッチ域4に向かって横方向X外側に広がることは、第1実施形態と同様である。この実施形態では、点Rと点Sとの間に第2前後ウエスト弾性糸25,26が取り付けられるから、点Rからの屈曲をなだらかにすることができる。屈曲をなだらかにすることによって、横方向X外側に広がった部分が引っかかったり邪魔になったりするのを防止することができる。また、少なくとも前後レッグ弾性要素23,24の点R近傍は、第2前後ウエスト弾性糸26,26と前後ウエスト弾性シート51,52との収縮力によって着用者側に密着させることができるので、前後レッグ弾性要素23,24と着用者との間に隙間ができるのを防止し、そこから尿等の排泄物が漏れるのを抑制することができる。
【0059】
第1および第2実施形態のようなおむつ1において、前後レッグ弾性要素23,24として、繊維不織布等の伸縮シートを用いることとしているので、ストランド状の弾性糸を用いる場合に比べてレッグ開口における着用者に対する接触面積を大きくすることができる。このように接触面積を大きくすることによって、着用者の肌の単位面積当たりに対する接触圧を小さくすることができる。第2の実施形態のおむつ1を実施例とし、前後レッグ弾性要素としてストランド状の弾性糸を用いた場合を比較例として、着用者に対する接触圧、着用者のゴム跡の状態、および着用者の唾液中のアミラーゼ活性を測定した。
【0060】
<比較例>
図7は、比較例のおむつ100の一部破断展開平面図、図8は、おむつ100の分解斜視図であって、図7および図8は、各弾性要素をその収縮力に抗して伸長させた状態を示したものである。図示したように、比較例のおむつ100は、着衣側に位置する第1外面シート111と、第2外面シート112と、第1および第2外面シート111,112の内側に位置する内面シート114とを有する。第1および第2外面シート111,112と内面シート114との間には、着衣側外部から視認可能なグラフィック(図示せず)などが印刷されたグラフィック表示フィルム117,118が取り付けられている。
【0061】
第1および第2外面シート111,112は、縦方向Yに離間して配置され、これらの間には、略矩形の繊維不織布シート115と、透湿性かつ不透液性のプラスチックシート116とが接合された中間シート113が配置されている。内面シート114は、第1および第2外面シート111,112および中間シート113に重なっている。第1および第2外面シート111,112および内面シート114は、弾性的に非伸縮性のエアスルー繊維不織布によって形成されている。
【0062】
内面シート114の身体側には、吸液構造体130が配置され、これら吸液構造体130の前後端部130a,130bを覆うように、第1および第2外面シート111,112がその縦方向Yの内方へ折り返されている。第1および第2外面シート111,112と内面シート114との間には、複数本のストランド状の前後ウエスト弾性糸120,122が取り付けられている。前後ウエスト弾性糸120,122は、横方向Xに延びるとともに、伸長状態で収縮可能に取り付けられている。これら前後ウエスト弾性糸120,122は、吸液構造体130と重なる部分においては、その収縮力が作用しないようにされている。また、第1および第2外面シート111,112と内面シート114との間には、第1および第2外面シート111,112のクロッチ域104側の端縁に沿って、複数本のストランド状の前後レッグ弾性糸123,124が伸長状態で収縮可能に取り付けられている。このようなおむつ100の両側縁を互いに接合することによって、図1に示したようなおむつ100とすることができる。
【0063】
<接触圧の測定方法>
実施例および比較例のそれぞれのおむつにおいて、着用者に対する接触圧を測定した。接触圧は、股関節部分が可動可能な幼児型のドールに、実施例および比較例のそれぞれのおむつを着用させることによって測定した。測定は、エアパック式接触圧計(株式会社エイエムアイ・テクノ社製)を用いておこなった。具体的には、20mm径のエアパックをドールに付着し、ドールの体位を変化させたときの圧迫状況を接触圧(hPa)として測定した。エアパックは、実施例においては、前レッグ弾性要素23と重なる位置であって、かつ、第2前ウエスト弾性糸25には重ならない位置に取り付けた。具体的には、おむつ1の着用時に点Aが位置するドールの表面にエアパックを取り付けた。比較例においては、おむつ100の着用時に点Bが位置するドールの表面にエアパックを取り付けた。点Bは、実施例のおむつ1の点Aに対応する位置であって、前レッグ弾性糸123および前ウエスト弾性糸120と重なる範囲に位置する。
【0064】
ドールにエアパックを取り付けた後、実施例または比較例のおむつを着用させ、ドールの体位を以下の条件で変化させたときの接触圧を測定している。接触圧は、1秒間に5回測定され、その最大値を各体位における接触圧Pmとしている。接触圧Pmは、それぞれ10回測定されその平均値を各体位における接触圧Pとしている。ドールには、上半身のほぼ中心に体幹軸棒が取り付けられ、大腿部のほぼ中心に大腿軸棒が取り付けられている。
(1)脚上げ
ドールを床に仰向けに寝かせた状態から脚を持ち上げ、これを3回繰り返したときの接触圧Pmを測定した。脚の持ち上げは、床面と大腿軸棒とのなす角度が約100°であり、持ち上げ速度は約80°/秒の条件でおこなった。また、一対の大腿軸棒間の角度は約60°とされている。接触圧Pmは、床と大腿軸棒との角度が約100°にされる間における最大値をとることとした。
(2)座位
座位とは、床面とドールの体幹軸棒とのなす角度が約90°になった位置をいう。このときの大腿軸棒間の角度は約30°とされている。この座位の状態で約5秒間静止させ、このときの最大値を接触圧Pmとしている。
(3)立位
ドールを起立させた状態を立位として接触圧Pmを測定した。立位とは、床と大腿軸棒とのなす角度が約90°になった位置をいう。このとき、体幹軸棒と床とのなす角度は約100°とされ、ドールはやや前傾姿勢とされている。この立位の状態で約5秒間静止させ、このときの最大値を接触圧Pmとしている。
(4)歩行
ドールの両脚を交互に歩行させるように動かして、5歩進んだときの接触圧を歩行の接触圧Pmとして測定した。具体的には、上記立位の状態から、一方の大腿軸棒を前方に移動させる。このとき、床面に対する垂直線と一方の大腿軸棒との成す角度が約20°、垂直線と他方の大腿軸棒とのなす角度が約10°とされる。次に他方の大腿軸棒を前方に移動させて、他方の大腿軸棒と垂直線とのなす角度が約20°、一方の大腿軸棒と垂直線とのなす角度が約10°とされ、これを5回繰り返して歩行状態としている。移動速度は、70°/秒として、5回繰り返す間の接触圧のピーク5点を取り、この平均値を接触圧Pmとしている。
【0065】
<接触圧の測定結果>
上記(1)〜(4)における測定の結果を表1に示している。表1に示したように、いずれにおいても、比較例に比べて実施例の接触圧Pは低減されていることが理解される。エアパックを取り付けた着用者の前側の足付け根部分は、着用者の動きによっておむつのレッグ開口が食い込みやすいが、接触圧が低減されることによって、レッグ開口における着用者に対する刺激を低減することができ、おむつの良好な穿き心地を実現することができる。
【0066】
【表1】

【0067】
<ゴム跡の測定方法>
実施例および比較例のそれぞれのおむつにおいて、着用者の脚回りに対するゴム跡を測定した。ゴム跡の測定は、5名の乳幼児に、実施例および比較例のそれぞれのおむつを着用させることによって測定した。具体的には、就寝時から翌日の測定まで約15〜18時間それぞれのおむつを着用させた後、着用者の脚回りであって実施例のおむつ1の点Aおよび比較例のおむつ100の点Bが対応する部分における着用者の脚回りをデジタルカメラで撮影して、当該部分の肌の紅斑指数を測定した。着用者としては、月齢16−35ヶ月の男児2名、女児3名を対象とした。着用者は、おむつを着用した就寝時から測定までの間に、約4回のおむつ交換を行った。おむつ交換は、実施例の測定においては、着用中の実施例のおむつ1から未使用のおむつ1へと交換され、比較例の測定においては、着用中の比較例のおむつ100から未使用のおむつ100へと交換される。
【0068】
紅斑指数は、撮影されたデジタル画像を、ImageJ(商標、米国国立衛生研究所製)によって解析することによって求めた。紅斑指数は、皮膚の緑領域(G)と赤領域(R)の波長の吸光度差から定義される数値であって、log(1/G)−log(1/R)=logG−logRによって対数画像の差を取ることによって求めることができる。
【0069】
<ゴム跡の測定結果>
上記測定の結果を図9に示している。図9(a)(b)(c)(d)(e)はそれぞれ、着用者a〜eが実施例または比較例のおむつを着用した際の紅斑指数の測定結果をグラフにしたものである。着用者の肌における赤色が強いほど、紅斑指数が大きくなり、肌に対する刺激が強いことを表している。図9に示したように、着用者a以外の着用者b,c,d,eにおいて、比較例よりも実施例において紅斑指数が小さくなり、脚回りの赤みが軽減されていることが理解できる。これは、接触圧が低減されることによって、レッグ開口における着用者に対する刺激を低減することができたことを裏付ける結果となった。
【0070】
<アミラーゼ活性の測定方法>
人体において、ストレス等により交感神経系が刺激されると、唾液中のアミラーゼの量が増加することから、唾液中のアミラーゼ活性を測定することにより、着用者のストレス状態の指標とすることにした。アミラーゼ活性は、酵素分析装置である唾液アミラーゼモニター(ニプロ株式会社製)を用いて測定した。着用者として月齢16.4±2.9ヶ月の幼児29人を対象として、アミラーゼ活性を測定した。具体的には、おむつを脱いだ状態で3分間過ごし、実施例または比較例のそれぞれのおむつを着用状態でさらに3分間過ごした後、着用者の唾液中のアミラーゼ活性をそれぞれ測定した。
【0071】
<アミラーゼ活性の測定結果>
測定の結果、比較例のおむつを着用した場合に比べて、実施例のおむつを着用した場合の方が、アミラーゼ活性が低く、交感神経系の刺激が少ないことが分かった。この結果から、実施例のおむつを着用したほうが、着用者に対するストレスが少なく、着用者にとって穿き心地が良好であることが推察できる。
【0072】
この発明のおむつ1を構成する各構成部材には、本明細書に記載されている材料のほかに、この種の分野において通常用いられている、各種の公知の材料を制限なく用いることができる。また、おむつ1は、前ウエスト域2と、後ウエスト域3と、クロッチ域4とが一連に形成された態様であってもよい。
【0073】
本発明の明細書および特許請求の範囲において、用語「第1」および「第2」は、同称の要素、位置等を単に区別するために用いられている。さらに、本発明の明細書および特許請求の範囲において、用語「第1ウエスト域」は、前後ウエスト域の一方を意味し、「第2ウエスト域」はその他方を意味する。
【符号の説明】
【0074】
1 おむつ(使い捨ての着用物品)
2 前ウエスト域(第1又は第2ウエスト域)
3 後ウエスト域(第1又は第2ウエスト域)
4 クロッチ域
8 サイドシーム部
10 シャーシ
11 第1外面シート(外面シート)
12 第2外面シート(外面シート)
20 第1前ウエスト弾性糸
22 第1後ウエスト弾性糸
23 前レッグ弾性要素
23a 一方の端部
23b 他方の端部
24 後レッグ弾性要素
24a 一方の端部
24b 他方の端部
25 第2前ウエスト弾性糸
26 第2後ウエスト弾性糸
51 前ウエスト弾性シート
52 後ウエスト弾性シート
60 熱圧着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向および横方向と、身体側およびその反対側と、前後ウエスト域のいずれか一方である第1ウエスト域と、前記前後ウエスト域の他方である第2ウエスト域と、前記第1および第2ウエスト域間に位置するクロッチ域とを含むシャーシと、前記第1および第2ウエスト域を前記横方向に収縮可能に弾性化するウエスト弾性要素と、前記クロッチ域を前記縦方向に収縮可能に弾性化するレッグ弾性要素とを含み、前記第1および第2ウエスト域の両側縁部を互いに接合して他の領域よりも剛性の高いサイドシーム部を形成し、ウエスト開口およびレッグ開口が形成される使い捨て着用物品において、
前記レッグ弾性要素は、弾性シートによって形成され、その両端部の少なくともいずれか一方は、前記両側縁部に重なって配置されて他の領域よりも高剛性とされ、
前記第1および第2ウエスト域は、前記レッグ弾性要素と重なった領域の前記クロッチ域側が、前記横方向外側に広がることを特徴とする前記使い捨て着用物品。
【請求項2】
前記ウエスト弾性要素は、前記ウエスト開口に沿って取り付けられるエラストマー弾性糸によって形成される第1ウエスト弾性糸と、前記第1ウエスト弾性糸よりも前記クロッチ域側に位置し弾性シートによって形成されるウエスト弾性シートとを含む請求項1記載の使い捨て着用物品。
【請求項3】
前記第1および第2ウエスト域の少なくともいずれか一方に位置する前記レッグ弾性要素は、前記ウエスト弾性シートに重なることなく、前記ウエスト弾性シートは、前記第1ウエスト弾性糸と、前記レッグ弾性要素との間に取り付けられる請求項2記載の使い捨て着用物品。
【請求項4】
前記レッグ弾性要素は、前記第1ウエスト域から前記クロッチ域に延びる第1レッグ弾性要素と、前記第2ウエスト域から前記クロッチ域に延びる第2レッグ弾性要素とを有する請求項1〜3のいずれかに記載の使い捨て着用物品。
【請求項5】
前記レッグ弾性要素は、エラストマー繊維を含む伸縮性繊維不織布によって形成される請求項1〜4のいずれかに記載の使い捨て着用物品。
【請求項6】
前記シャーシと前記レッグ弾性要素とは、前記サイドシーム部によって互いに接合される請求項1〜5のいずれかに記載の使い捨て着用物品。
【請求項7】
前記ウエスト弾性要素は、前記レッグ弾性要素に重なるとともに前記横方向に延びるエラストマー弾性糸によって形成される第2ウエスト弾性糸を含む請求項1〜6のいずれかに記載の使い捨て着用物品。
【請求項8】
前記シャーシは、前記反対側に位置する外面シートを有し、前記外面シートは、捲縮繊維を含むとともに、多数の熱圧着部が形成される請求項1〜7のいずれかに記載の使い捨て着用物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−156341(P2011−156341A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134546(P2010−134546)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】