使い捨て紙おむつ
【課題】弾性部材の配置によって2方向以上の伸縮軸が得られ、ストレート止めはもとよりクロス止めに好適に対応可能とした使い捨て紙おむつを提供する。
【解決手段】背側両側部に紙おむつを身体に装着するためのファスナー部材5,5を備えた使い捨て紙おむつにおいて、前記ファスナー部材5は、積層された不織布シート11,12と、これら不織布シート11,12間に介在され伸縮力を与える弾性部材10…と、前記不織布シートの内面側に設けられた面ファスナー9とから構成されるとともに、側方に突出する1又は複数の接合片部8aと、紙おむつへの取付け部8bとを有し、前記接合片部8aにおいて、前記弾性部材10は少なくとも反転部を有する曲線形状で配置され、前記突出片部の部材長手方向に対して交差する方向に少なくとも2本以上の伸縮軸K1,K2を有し、前記取付け部8bが使い捨て紙おむつの背側両側部に接合されている。
【解決手段】背側両側部に紙おむつを身体に装着するためのファスナー部材5,5を備えた使い捨て紙おむつにおいて、前記ファスナー部材5は、積層された不織布シート11,12と、これら不織布シート11,12間に介在され伸縮力を与える弾性部材10…と、前記不織布シートの内面側に設けられた面ファスナー9とから構成されるとともに、側方に突出する1又は複数の接合片部8aと、紙おむつへの取付け部8bとを有し、前記接合片部8aにおいて、前記弾性部材10は少なくとも反転部を有する曲線形状で配置され、前記突出片部の部材長手方向に対して交差する方向に少なくとも2本以上の伸縮軸K1,K2を有し、前記取付け部8bが使い捨て紙おむつの背側両側部に接合されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙おむつの背面両側部にそれぞれ設けられるとともに、紙おむつを身体へあてがった状態で腹側表面に止着することによって紙おむつを身体に装着するためのファスナー部材を備えた使い捨て紙おむつに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より市場に提供されている主に大人用テープ式紙おむつにおいては、図15に示されるように、不透液性裏面シート50と透液性表面シート51との間に吸収体52が介在された紙おむつの背面側両側部にそれぞれ、側方に突出して上下一対のファスナーテープ53A,53Bが取り付けられ、この一対のファスナーテープ53,53を腹側表面のターゲットシート54に止着することによって身体に装着されるようになっている(例えば、下記特許文献1,2等の従来技術参照)。また、同公報では、脚回りのフィット性を向上させるために、下段側のファスナーテープ53Bを胴周り側に傾斜させて取り付けることが記載されているとともに、下記特許文献2では、下段側の止着テープが伸縮性を有する素材とすることも記載されている。なお、前記ファスナーテープ53A,53Bの貼着手段としては、粘着接合手段又は機械的接合手段(面ファスナー)等が使用される。
【0003】
また、近年は、前記のような細帯状のファスナーテープ53に代えて、外観デザインを向上するとともに、先端角部が肌を傷める等の問題点を解決するために、図16に示されるように、1枚のシートの外側縁から延在して上下2段で側方に突出する接合片55a、55aを形成し、この接合片55a、55aの内面側に粘着剤層又は面ファスナー56を設けるようにしたファスナーシート55も知られている。
【0004】
前記ファスナーテープ53A、53Bとしては、プラスチックフィルムや不織布が主に使用され、前記ファスナーシート55としては、不織布が使用されるが、身体への密着性を良好とするとともに、身体の運動に追従可能とするために、伸縮性を持たせることも行われている(下記特許文献3〜5)。
【0005】
さらに下記特許文献6では、胴周りと脚回りとを共に身体に密着して装着させるために、止着テープを伸縮性を有する第1テープ部と第2テープ部とで構成するとともに、第1テープは背側部の側縁部から胴周りに平行に延出させ、かつ前記第2テープは胴周り部に向かって傾斜するように延出させ、かつ先端部を第1テープの先端部に固定し、先端部に止着部材を設けた止着テープの構造が開示されている。
【0006】
ところで、図15及び図16に示した大人用テープ式紙おむつの場合は、装着に当たり、着用者は体型によって上下2段のファスニングテープ53A,53B(55a、55a)を略平行状態でターゲットシート54に貼着したり(以下、ストレート止めという。)、上下2段のファスニングテープ53A,53B(55a、55a)を互いに交差させるようにしながらターゲットシート54に貼着させたりしている(以下、クロス止めという)。前者の装着方法は主に標準的な体型の人から太った体型の人に多く見られ、後者の装着方法は主に痩せた体型の人に多く見られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平6−31726号公報
【特許文献2】特開2002−95693号公報
【特許文献3】実開昭57−157209号公報
【特許文献4】特開昭62−81474号公報
【特許文献5】特開昭62−81477号公報
【特許文献6】特開2003−153951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特に大人用紙おむつの場合は、個人的な体型差が大きく、伸縮性を有しないファスナーテープでは完全に身体にフィットさせることができないなどの問題があった。このような問題点に鑑み、ファスナーテープに対し弾性部材を設け伸縮性を持たせるか、素材自体に伸縮性を有するものを用いる試みも成されている。しかしながら、ファスナーテープに従来の方法で弾性部材を配置し伸縮性を与える場合には、部材長手方向の一方向にしか伸縮性を付与することができない。そのため、止着テープが突出方向とは異なる方向に引っ張られる前記クロス止めにはうまく対応できないものであった。
【0009】
また、素材自在に伸縮性を有するものを用いる場合には、全方向に伸縮性を与え得ることもでき、前記クロス止めにも容易に対応可能となるが素材自体が高価であり、製品コストが嵩む原因となる等の問題があった。
【0010】
そこで本発明の主たる課題は、弾性部材の配置によって2方向以上の伸縮軸が得られ、ストレート止めはもとよりクロス止めに好適に対応可能とするファスナー部材を備えた使い捨て紙おむつを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、透液性表面シートと、裏面シートとの間に吸収体を介在させるとともに、背側両側部にそれぞれ側方に突出して設けられ、紙おむつを身体へあてがった状態で腹側表面に止着することによって紙おむつを身体に装着するためのファスナー部材を備えた使い捨て紙おむつにおいて、
前記ファスナー部材は、積層された不織布シートと、これら不織布シート間に介在され伸縮力を与える弾性部材と、前記不織布シートの内面側に設けられた粘着接合手段又は機械的接合手段とから構成されるとともに、側方に突出する1又は複数の接合片部と、紙おむつへの取付け部とを有し、前記接合片部において、前記弾性部材は少なくとも反転部を有する曲線形状で配置され、前記突出片部の部材長手方向に対して交差する方向に少なくとも2本以上の伸縮軸を有し、
前記取付け部が前記使い捨て紙おむつの背側両側部に接合されていることを特徴とする使い捨て紙おむつが提供される。
【0012】
上記請求項1記載の発明において、ファスナー部材は、積層された不織布シートと、これら不織布シート間に介在され伸縮力を与える弾性部材と、前記不織布シートの内面側に設けられた粘着接合手段又は機械的接合手段とから構成するようにし、かつ側方に突出する1又は複数の接合片部と、紙おむつへの取付け部とを有する。
【0013】
そして、前記接合片部において、前記弾性部材は少なくとも反転部を有する曲線形状で配置され前記突出片部の部材長手方向に対して交差する少なくとも2方向の伸縮軸を有することにより、ストレート止めはもとよりクロス止めにも好適に対応可能となる。また、前記弾性部材は後述するトラバース装置により連続不織布シート間に揺動させながら波状の曲線配置で連続的に配置することが可能であり、ファスナー部材を安価かつ効率的に得ることが可能となる。
【0014】
請求項2に係る本発明として、透液性表面シートと、裏面シートとの間に吸収体が介在され、両側部に前記吸収体が存在しないサイドフラップ部が形成されるとともに、このサイドフラップ部に脚回りギャザーを形成するレッグ弾性部材が配置され、背側両側部にそれぞれ側方に突出して設けられ、紙おむつを身体へあてがった状態で腹側表面に止着することによって紙おむつを身体に装着するためのファスナー部材を備えた使い捨て紙おむつにおいて、
前記ファスナー部材は、積層された不織布シートと、これら不織布シート間に介在され伸縮力を与える弾性部材と、前記不織布シートの内面側に設けられた粘着接合手段又は機械的接合手段とから構成されるとともに、側方に突出する1又は複数の接合片部と、紙おむつへの取付け部とを有し、前記接合片部及び取付け部において、前記弾性部材は少なくとも反転部を有する曲線形状で配置され、前記突出片部の部材長手方向に対して交差する方向に少なくとも2本以上の伸縮軸を有し、
前記取付け部が前記使い捨て紙おむつの背側両側部に接合されるとともに、該取付け部に配置された弾性部材の一方側端部が前記レッグ弾性部材に重なるように配置されていることを特徴とする使い捨て紙おむつが提供される。
【発明の効果】
【0015】
以上詳説のとおり本発明によれば、弾性部材の配置によって2方向以上の伸縮軸が得られ、ストレート止めはもとよりクロス止めにも好適に対応可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る使い捨て紙おむつの一部破断展開図である。
【図2】紙おむつのファスニングシート5を示す、(A)は正面図、(B)はB-B線矢視図である。
【図3】ファスニングシート5を得るため連続積層不織布シート5Aの平面図である。
【図4】連続積層不織布シート5Aの製造要領を示す、(A)は模式図、(B)は要部平面図である。
【図5】ファスニングシート5における弾性部材10,10…の一部を不連続化した場合の正面図である。
【図6】第2形態例に係るファスナーシート5の正面図である。
【図7】第3形態例に係るファスナーシート5の正面図である。
【図8】第4形態例に係る、ファスナーシート5の取付け位置変更による紙おむつの要部展開図である。
【図9】第5形態例(その1)に係るファスナーシート5の取付け状態を示す要部展開図である。
【図10】第5形態例(その2)に係るファスナーシート5の取付け状態を示す要部展開図である。
【図11】(A)(B)は弾性部材10の曲線配置態様を示す図である。
【図12】他の弾性部材10の曲線配置態様を示す図である。
【図13】通常の止め方による紙おむつの装着状態を示す図である。
【図14】クロス止めによる紙おむつの装着状態を示す図である。
【図15】従来のテープ式紙おむつの一部破断展開図である。
【図16】従来のファスニングシート55の例を示す展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。図1は本発明に係る紙おむつの一部破断展開図である。
【0018】
〔紙おむつの構造〕
図1において紙おむつは、ポリエチレン等からなる不透液性バックシート1と、不織布などからなる透液性トップシート2との間に、綿状パルプ等からなる、たとえば長方形若しくは砂時計形状のある程度の剛性を有する吸収体3が介在されている。吸収体3は、その形状保持のためにクレープ紙(図示せず)により包み込むことができる。前記不透液性バックシート1としては、近年、ムレ防止の点から透湿性を有するものも用いられている。この遮水・透湿性シートは、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂中に無機充填材を溶融混練してシートを形成した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートである。
【0019】
また、前記透液性トップシート2としては、有孔または無孔の不織布や穴あきプラスチックシートなどが用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができる。
【0020】
前記不透液性バックシート1は、吸収体3の周囲より外方に延在して略砂時計形状を成しており、その側方延在部はバリヤシート4の側部とともに、吸収体の存在しないサイドフラップ部SFを構成している。前記透液性トップシート2は、吸収体3より若干大きめの砂時計形状とされ、吸収体3側縁より若干外方に延在する部分が前記バリヤシート4と不透液性バックシート1との間に介在され不透液性バックシート1側にホットメルト接着剤により固着されている。前記バリヤシート4の形成材料としては、プラスチックシートやメルトブローン不織布を使用することもできるが、肌への感触性の点で、不織布にシリコンなどにより撥水処理をしたものが好適に使用される。
【0021】
他方、紙おむつの長手方向両端部、すなわち腹側および背側では不透液性バックシート1および透液性トップシート2が共に延在し吸収体3の存在しないエンドフラップ部EFが形成され、このうち背側のエンドフラップ部EFにおいては、複数本、図示の例では3本の糸状弾性伸縮部材7,7…が幅方向に沿って配設されている。この糸状弾性伸縮部材7としては、通常使用されるスチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンブタジエン、シリコン、ポリエステル等の素材を用いることができる。
【0022】
また、背側のエンドフラップ部EFの両端部には、それぞれファスナーシート5,5が側方に突出して取り付けられるとともに、紙おむつの腹側表面に幅方向に沿ってフロントターゲットテープ6が貼着されており、このフロントターゲットテープ6に前記ファスナーシート5の接合片8aを止着することによって紙おむつが身体に装着されるようになっている。
【0023】
〔ファスナーシート5の構造〕
前記ファスナーシート5は、詳細には図2に示されるように、積層された不織布シート11,12と、これら不織布シート11,12間に介在されるとともに、少なくとも反転部を有する曲線形状で配置された複数の、図示例では4本の弾性部材10,10…と、前記不織布シート11,12の内面側に設けられた機械的接合手段9(以下、雄側面ファスナー)とから構成され、前記雄側面ファスナー9が雌側面ファスナーを構成する前記フロントターゲットテープ6に対して接合可能となっている。なお、前記機械的接合手段9を雌側とし、前記フロントターゲットテープ6側を雄側としてもよい。前記不織布シート11,12としては、坪量40〜80g/m2の不織布とするとともに、強度特性に優れたスパンボンド不織布を用いるのが望ましい。
【0024】
前記ファスナーシート5は、側方に突出する上下2段の接合片部8a、8aと、紙おむつへの取付け部8bとを有し、少なくとも前記各接合片部8a、8aにおいて、前記弾性部材10,10…は、接合片部8aの先端側で反転する横U字状の曲線形状で配置されている。前記接合片8aにおいて配置された弾性部材10、10…は、横U字状の曲線形状を成す上側配置部分と下側配置部分とがそれぞれ突出片部8aの部材長手方向に対して交差する方向に2本の伸縮軸K1,K2を有することとなる。
【0025】
前記ファスナーシート5を製造するには、図4に示されるように、ニップローラ14,14部の上側に連続シート状の上層不織布12が供給されるとともに、下側に連続シート状の下層不織布11が供給され、これら両不織布11,12をを積層させる過程で、これら不織布の間に公知のトラバース装置16により弾性部材10、10…が波状の曲線形状で配置される。前記トラバース装置16は、先端部分に弾性部材10,10…の保持部を有し、連続ウエブ(不織布シート11,12)の幅方向への進退を計算された速度で行わしめることにより、弾性部材10,10…を所定の波状曲線で配置するようにしたものである。なお、符合17,18はホットメルト接着剤の塗布装置である。
【0026】
前記弾性部材10,10…が波状曲線形状で配置された連続積層不織布シート5Aを得たならば、積層不織布シートの一方側の面に連続的にテープ状の雄側面ファスナー9を連続的に配置することにより連続状のファスナーシート5を得る。その後、図3に示されるように、前記雄側面ファスナー9を交互に横切るとともに、前記弾性部材10,10…の曲線位相に合わせたジグザグ状の切断線19で切断するとともに、2つの接合片部8a、8aを一組とする長手方向位置13,13…で連続積層不織布シート5Aを切断し、図2に示される単体のファスナーシート5を得るようにする。
【0027】
ところで、上記例では前記弾性部材10、10…は、ファスナーシート5内で連続する曲線として配置されているが、必要となる弾性伸縮力は前記ファスナーシート5の接合片部8aを伸縮軸K1,K2の方向、総じて突出方向に伸縮させるようにすればよく、シートの幅方向(おむつ縦方向)に作用する伸縮力はシートをいびつに縮こませる原因となるため、図5に示されるように、ファスナーシート5の幅方向に配向されている曲線部分(鎖線囲み領域S1〜S5)を細かく切断し不連続とするのが望ましい。弾性部材10,10…を切断し不連続化するには、特開2002-35029号公報、特開2002-178428号公報及び特開2002-273808号公報に記載される切断方法が好適に採用される。同公報に記載される弾性伸縮部材の切断方法は、基本的には図4に示されるように、前記連続積層不織布シート5Aを製造した後、表面に凸部を複数個配列したエンボスヒートロール20と、このエンボスヒートロール20と対向する対向ロール21との間に前記連続積層不織布シート5Aを通過させ、この連続積層不織布シート5Aの弾性部材10,10…を前記エンボスヒートロール20の凸部20aおよび対向ロール21間での加圧および加熱の内の少なくとも一方により細かく切断するものである。
【0028】
〔第2形態例〕
前記弾性部材10,10の曲線配置形状は、前記トラバース装置16の制御により任意の曲線形状とすることが可能である。従って、図6に示されるように、前記弾性部材10,10…は、主として前記接合片部8aにおいて、先端側で2箇所の反転部を有する横W字状の曲線形状で配置することも可能である。なお、図中、鎖線囲み領域S1〜S9は弾性部材10の破断領域である。この場合には、接合片部8aの突出方向に4条の弾性部材束10A〜10Dによる伸縮力を有することとなり、図5に示されるファスナーシート5と比べると、2倍の伸縮力を得ることが可能となる。
【0029】
〔第3形態例〕
また、図7に示されるように、主として前記接合片部8aにおいて、前記弾性部材10は接合片8aの先端側で反転する横U字状の曲線形状で配置された複数の弾性部材22Aと、接合片8aの基端側で反転する横U字状の曲線形状で配置された複数の弾性部材22Bとの組合せにより、略X字状の曲線形状で配置されている弾性部材22とした例である。製造は、図4に示される製造方法の応用により、2組のトラバース装置を用い、弾性部材22Aを一組とする束を一方側のトラバース装置16により揺動配置し、弾性部材22Bを一組とする束を他方側のトラバース装置16により揺動配置することにより、略X字状の曲線形状で配置することが可能である。なお、図中、鎖線囲み領域S1〜S3は弾性部材22Aの破断領域である。この第3形態例の場合には、伸縮軸K1,K2が接合片8a内でX状となるため、多様な伸縮方向に適応可能となるため、装着に当たり、ストレートにファスナーシート5を止め付けるストレート止めはもとより、クロスさせてファスナーシート5を止め付けるクロス止めにも好適に対応し得るものとなる、また、伸縮方向の多様性から止着させた状態からも外れ難くなる。
【0030】
〔第4形態例〕
本ファスナーシート5では、連続曲線状に弾性部材10,10…が配置されるものである。従って、この特性を利用して、紙おむつのサイドフラップSFに設けられた脚回りギャザー23と前記弾性部材10,10…とを連携させて脚回りのフィット性を高めるようにすることもできる。具体的には、図8に示されるように、紙おむつのサイドフラップ部SFには、脚回りギャザーを形成するためにレッグ弾性部材23,23…が配置される条件の下で、ファスナーシート5の弾性部材10,10…の下方側端部が前記レッグ弾性部材23と重なるように取り付けることにより弾性部材10…,23…の連続性が確保され、ファスナーシート5から脚回りに至る領域において、より一層のフィット性が得られるようになる。
【0031】
〔第5形態例〕
また、図9に示されるように、ファスナーシート5’は、1つの接合片部8aを有する態様を示したものである。このファスナーシート5’は、図3に示される連続積層不織布シート5Aの切断位置13を1つの接合片8a毎に設定することにより得られるものである。この場合には、同図9に示されるように、ファスナーシート5’を上下2段で配置するようにしても良いし、場合によっては図10に示されるように、単独で配置するようにしてもよい。
【0032】
〔弾性部材10の他の曲線配置態様〕
上記形態例はいずれも、図11(A)に示されるように、弾性部材10、10…の揺動制御点を連続積層不織布シート5Aの幅方向に沿う直線ラインに並べて揺動制御した場合の軌跡線となるが、図11(B)に示されるように、揺動制御点を連続積層不織布シート5Aの幅方向線に対して傾斜させた直線ラインに並べて揺動制御した場合には、一方側の伸縮軸K1(K2)については各弾性部材10,10…の間隔を大きく設定でき、他方側の伸縮軸K2(K1)については各弾性部材10,10…の間隔を小さく設定できるようになる。さらに、図12(B)に示されるようにトラバース装置16の弾性部材保持点を連続積層不織布シート5Aのライン方向に並べた場合には、図12(A)に示されるように、弾性部材10,10…の伸縮軸K1,K2に沿う曲線ライン部分において、各弾性部材10,10…間に所定の間隔を持たせることができるようになる。
【0033】
以上詳説したように、前記ファスナーシート5は、突出片部8aの部材長手方向に対して交差する方向に2本の伸縮軸K1,K2を有し、伸縮方向に多様性を持たせているため、図13に示されるように、ファスナーシート5の接合片部8a、8aをストレートに止め付ける「ストレート止め」の場合には、各接合片部8a、8aを水平方向(伸縮軸K1,K2の合成方向)に伸長させた状態で止め付けることができる。また、図14に示されるように、ファスナーシート5の接合片部8a、8aをクロスさせて止め付ける「クロス止め」の場合のように、各接合片部8a、8aが傾斜方向に引っ張られて止め付けられる場合にでも、傾斜した伸縮軸K1,K2によって斜め方向に伸縮性が与えられているため、しっかりと止め付けることができる。
【0034】
〔他の形態例〕
(1)上記形態例では、前記接合片部8aとフロントターゲットテープ6とを機械的ファスナー手段たる面ファスナーによって剥離自在に接合するようにしたが、前記接合片8aに直接又はシートを介して間接的に粘着剤層を設け、フロントターゲットテープ6に剥離自在に接着可能とすることでもよい。
【符号の説明】
【0035】
1…不透液性バックシート、2…透液性トップシート、3…吸収体、4…バリヤシート、5・5’…ファスニングシート、5A…連続積層不織布シート、6…フロントターゲットテープ、7…糸状弾性伸縮部材、8a……接合片部(接合片)、8b…取付け部、9…面ファスナー、10・22A・22B…弾性部材、11・12…不織布シート、K1・K2…伸縮軸
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙おむつの背面両側部にそれぞれ設けられるとともに、紙おむつを身体へあてがった状態で腹側表面に止着することによって紙おむつを身体に装着するためのファスナー部材を備えた使い捨て紙おむつに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より市場に提供されている主に大人用テープ式紙おむつにおいては、図15に示されるように、不透液性裏面シート50と透液性表面シート51との間に吸収体52が介在された紙おむつの背面側両側部にそれぞれ、側方に突出して上下一対のファスナーテープ53A,53Bが取り付けられ、この一対のファスナーテープ53,53を腹側表面のターゲットシート54に止着することによって身体に装着されるようになっている(例えば、下記特許文献1,2等の従来技術参照)。また、同公報では、脚回りのフィット性を向上させるために、下段側のファスナーテープ53Bを胴周り側に傾斜させて取り付けることが記載されているとともに、下記特許文献2では、下段側の止着テープが伸縮性を有する素材とすることも記載されている。なお、前記ファスナーテープ53A,53Bの貼着手段としては、粘着接合手段又は機械的接合手段(面ファスナー)等が使用される。
【0003】
また、近年は、前記のような細帯状のファスナーテープ53に代えて、外観デザインを向上するとともに、先端角部が肌を傷める等の問題点を解決するために、図16に示されるように、1枚のシートの外側縁から延在して上下2段で側方に突出する接合片55a、55aを形成し、この接合片55a、55aの内面側に粘着剤層又は面ファスナー56を設けるようにしたファスナーシート55も知られている。
【0004】
前記ファスナーテープ53A、53Bとしては、プラスチックフィルムや不織布が主に使用され、前記ファスナーシート55としては、不織布が使用されるが、身体への密着性を良好とするとともに、身体の運動に追従可能とするために、伸縮性を持たせることも行われている(下記特許文献3〜5)。
【0005】
さらに下記特許文献6では、胴周りと脚回りとを共に身体に密着して装着させるために、止着テープを伸縮性を有する第1テープ部と第2テープ部とで構成するとともに、第1テープは背側部の側縁部から胴周りに平行に延出させ、かつ前記第2テープは胴周り部に向かって傾斜するように延出させ、かつ先端部を第1テープの先端部に固定し、先端部に止着部材を設けた止着テープの構造が開示されている。
【0006】
ところで、図15及び図16に示した大人用テープ式紙おむつの場合は、装着に当たり、着用者は体型によって上下2段のファスニングテープ53A,53B(55a、55a)を略平行状態でターゲットシート54に貼着したり(以下、ストレート止めという。)、上下2段のファスニングテープ53A,53B(55a、55a)を互いに交差させるようにしながらターゲットシート54に貼着させたりしている(以下、クロス止めという)。前者の装着方法は主に標準的な体型の人から太った体型の人に多く見られ、後者の装着方法は主に痩せた体型の人に多く見られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平6−31726号公報
【特許文献2】特開2002−95693号公報
【特許文献3】実開昭57−157209号公報
【特許文献4】特開昭62−81474号公報
【特許文献5】特開昭62−81477号公報
【特許文献6】特開2003−153951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特に大人用紙おむつの場合は、個人的な体型差が大きく、伸縮性を有しないファスナーテープでは完全に身体にフィットさせることができないなどの問題があった。このような問題点に鑑み、ファスナーテープに対し弾性部材を設け伸縮性を持たせるか、素材自体に伸縮性を有するものを用いる試みも成されている。しかしながら、ファスナーテープに従来の方法で弾性部材を配置し伸縮性を与える場合には、部材長手方向の一方向にしか伸縮性を付与することができない。そのため、止着テープが突出方向とは異なる方向に引っ張られる前記クロス止めにはうまく対応できないものであった。
【0009】
また、素材自在に伸縮性を有するものを用いる場合には、全方向に伸縮性を与え得ることもでき、前記クロス止めにも容易に対応可能となるが素材自体が高価であり、製品コストが嵩む原因となる等の問題があった。
【0010】
そこで本発明の主たる課題は、弾性部材の配置によって2方向以上の伸縮軸が得られ、ストレート止めはもとよりクロス止めに好適に対応可能とするファスナー部材を備えた使い捨て紙おむつを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、透液性表面シートと、裏面シートとの間に吸収体を介在させるとともに、背側両側部にそれぞれ側方に突出して設けられ、紙おむつを身体へあてがった状態で腹側表面に止着することによって紙おむつを身体に装着するためのファスナー部材を備えた使い捨て紙おむつにおいて、
前記ファスナー部材は、積層された不織布シートと、これら不織布シート間に介在され伸縮力を与える弾性部材と、前記不織布シートの内面側に設けられた粘着接合手段又は機械的接合手段とから構成されるとともに、側方に突出する1又は複数の接合片部と、紙おむつへの取付け部とを有し、前記接合片部において、前記弾性部材は少なくとも反転部を有する曲線形状で配置され、前記突出片部の部材長手方向に対して交差する方向に少なくとも2本以上の伸縮軸を有し、
前記取付け部が前記使い捨て紙おむつの背側両側部に接合されていることを特徴とする使い捨て紙おむつが提供される。
【0012】
上記請求項1記載の発明において、ファスナー部材は、積層された不織布シートと、これら不織布シート間に介在され伸縮力を与える弾性部材と、前記不織布シートの内面側に設けられた粘着接合手段又は機械的接合手段とから構成するようにし、かつ側方に突出する1又は複数の接合片部と、紙おむつへの取付け部とを有する。
【0013】
そして、前記接合片部において、前記弾性部材は少なくとも反転部を有する曲線形状で配置され前記突出片部の部材長手方向に対して交差する少なくとも2方向の伸縮軸を有することにより、ストレート止めはもとよりクロス止めにも好適に対応可能となる。また、前記弾性部材は後述するトラバース装置により連続不織布シート間に揺動させながら波状の曲線配置で連続的に配置することが可能であり、ファスナー部材を安価かつ効率的に得ることが可能となる。
【0014】
請求項2に係る本発明として、透液性表面シートと、裏面シートとの間に吸収体が介在され、両側部に前記吸収体が存在しないサイドフラップ部が形成されるとともに、このサイドフラップ部に脚回りギャザーを形成するレッグ弾性部材が配置され、背側両側部にそれぞれ側方に突出して設けられ、紙おむつを身体へあてがった状態で腹側表面に止着することによって紙おむつを身体に装着するためのファスナー部材を備えた使い捨て紙おむつにおいて、
前記ファスナー部材は、積層された不織布シートと、これら不織布シート間に介在され伸縮力を与える弾性部材と、前記不織布シートの内面側に設けられた粘着接合手段又は機械的接合手段とから構成されるとともに、側方に突出する1又は複数の接合片部と、紙おむつへの取付け部とを有し、前記接合片部及び取付け部において、前記弾性部材は少なくとも反転部を有する曲線形状で配置され、前記突出片部の部材長手方向に対して交差する方向に少なくとも2本以上の伸縮軸を有し、
前記取付け部が前記使い捨て紙おむつの背側両側部に接合されるとともに、該取付け部に配置された弾性部材の一方側端部が前記レッグ弾性部材に重なるように配置されていることを特徴とする使い捨て紙おむつが提供される。
【発明の効果】
【0015】
以上詳説のとおり本発明によれば、弾性部材の配置によって2方向以上の伸縮軸が得られ、ストレート止めはもとよりクロス止めにも好適に対応可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る使い捨て紙おむつの一部破断展開図である。
【図2】紙おむつのファスニングシート5を示す、(A)は正面図、(B)はB-B線矢視図である。
【図3】ファスニングシート5を得るため連続積層不織布シート5Aの平面図である。
【図4】連続積層不織布シート5Aの製造要領を示す、(A)は模式図、(B)は要部平面図である。
【図5】ファスニングシート5における弾性部材10,10…の一部を不連続化した場合の正面図である。
【図6】第2形態例に係るファスナーシート5の正面図である。
【図7】第3形態例に係るファスナーシート5の正面図である。
【図8】第4形態例に係る、ファスナーシート5の取付け位置変更による紙おむつの要部展開図である。
【図9】第5形態例(その1)に係るファスナーシート5の取付け状態を示す要部展開図である。
【図10】第5形態例(その2)に係るファスナーシート5の取付け状態を示す要部展開図である。
【図11】(A)(B)は弾性部材10の曲線配置態様を示す図である。
【図12】他の弾性部材10の曲線配置態様を示す図である。
【図13】通常の止め方による紙おむつの装着状態を示す図である。
【図14】クロス止めによる紙おむつの装着状態を示す図である。
【図15】従来のテープ式紙おむつの一部破断展開図である。
【図16】従来のファスニングシート55の例を示す展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。図1は本発明に係る紙おむつの一部破断展開図である。
【0018】
〔紙おむつの構造〕
図1において紙おむつは、ポリエチレン等からなる不透液性バックシート1と、不織布などからなる透液性トップシート2との間に、綿状パルプ等からなる、たとえば長方形若しくは砂時計形状のある程度の剛性を有する吸収体3が介在されている。吸収体3は、その形状保持のためにクレープ紙(図示せず)により包み込むことができる。前記不透液性バックシート1としては、近年、ムレ防止の点から透湿性を有するものも用いられている。この遮水・透湿性シートは、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂中に無機充填材を溶融混練してシートを形成した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートである。
【0019】
また、前記透液性トップシート2としては、有孔または無孔の不織布や穴あきプラスチックシートなどが用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができる。
【0020】
前記不透液性バックシート1は、吸収体3の周囲より外方に延在して略砂時計形状を成しており、その側方延在部はバリヤシート4の側部とともに、吸収体の存在しないサイドフラップ部SFを構成している。前記透液性トップシート2は、吸収体3より若干大きめの砂時計形状とされ、吸収体3側縁より若干外方に延在する部分が前記バリヤシート4と不透液性バックシート1との間に介在され不透液性バックシート1側にホットメルト接着剤により固着されている。前記バリヤシート4の形成材料としては、プラスチックシートやメルトブローン不織布を使用することもできるが、肌への感触性の点で、不織布にシリコンなどにより撥水処理をしたものが好適に使用される。
【0021】
他方、紙おむつの長手方向両端部、すなわち腹側および背側では不透液性バックシート1および透液性トップシート2が共に延在し吸収体3の存在しないエンドフラップ部EFが形成され、このうち背側のエンドフラップ部EFにおいては、複数本、図示の例では3本の糸状弾性伸縮部材7,7…が幅方向に沿って配設されている。この糸状弾性伸縮部材7としては、通常使用されるスチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンブタジエン、シリコン、ポリエステル等の素材を用いることができる。
【0022】
また、背側のエンドフラップ部EFの両端部には、それぞれファスナーシート5,5が側方に突出して取り付けられるとともに、紙おむつの腹側表面に幅方向に沿ってフロントターゲットテープ6が貼着されており、このフロントターゲットテープ6に前記ファスナーシート5の接合片8aを止着することによって紙おむつが身体に装着されるようになっている。
【0023】
〔ファスナーシート5の構造〕
前記ファスナーシート5は、詳細には図2に示されるように、積層された不織布シート11,12と、これら不織布シート11,12間に介在されるとともに、少なくとも反転部を有する曲線形状で配置された複数の、図示例では4本の弾性部材10,10…と、前記不織布シート11,12の内面側に設けられた機械的接合手段9(以下、雄側面ファスナー)とから構成され、前記雄側面ファスナー9が雌側面ファスナーを構成する前記フロントターゲットテープ6に対して接合可能となっている。なお、前記機械的接合手段9を雌側とし、前記フロントターゲットテープ6側を雄側としてもよい。前記不織布シート11,12としては、坪量40〜80g/m2の不織布とするとともに、強度特性に優れたスパンボンド不織布を用いるのが望ましい。
【0024】
前記ファスナーシート5は、側方に突出する上下2段の接合片部8a、8aと、紙おむつへの取付け部8bとを有し、少なくとも前記各接合片部8a、8aにおいて、前記弾性部材10,10…は、接合片部8aの先端側で反転する横U字状の曲線形状で配置されている。前記接合片8aにおいて配置された弾性部材10、10…は、横U字状の曲線形状を成す上側配置部分と下側配置部分とがそれぞれ突出片部8aの部材長手方向に対して交差する方向に2本の伸縮軸K1,K2を有することとなる。
【0025】
前記ファスナーシート5を製造するには、図4に示されるように、ニップローラ14,14部の上側に連続シート状の上層不織布12が供給されるとともに、下側に連続シート状の下層不織布11が供給され、これら両不織布11,12をを積層させる過程で、これら不織布の間に公知のトラバース装置16により弾性部材10、10…が波状の曲線形状で配置される。前記トラバース装置16は、先端部分に弾性部材10,10…の保持部を有し、連続ウエブ(不織布シート11,12)の幅方向への進退を計算された速度で行わしめることにより、弾性部材10,10…を所定の波状曲線で配置するようにしたものである。なお、符合17,18はホットメルト接着剤の塗布装置である。
【0026】
前記弾性部材10,10…が波状曲線形状で配置された連続積層不織布シート5Aを得たならば、積層不織布シートの一方側の面に連続的にテープ状の雄側面ファスナー9を連続的に配置することにより連続状のファスナーシート5を得る。その後、図3に示されるように、前記雄側面ファスナー9を交互に横切るとともに、前記弾性部材10,10…の曲線位相に合わせたジグザグ状の切断線19で切断するとともに、2つの接合片部8a、8aを一組とする長手方向位置13,13…で連続積層不織布シート5Aを切断し、図2に示される単体のファスナーシート5を得るようにする。
【0027】
ところで、上記例では前記弾性部材10、10…は、ファスナーシート5内で連続する曲線として配置されているが、必要となる弾性伸縮力は前記ファスナーシート5の接合片部8aを伸縮軸K1,K2の方向、総じて突出方向に伸縮させるようにすればよく、シートの幅方向(おむつ縦方向)に作用する伸縮力はシートをいびつに縮こませる原因となるため、図5に示されるように、ファスナーシート5の幅方向に配向されている曲線部分(鎖線囲み領域S1〜S5)を細かく切断し不連続とするのが望ましい。弾性部材10,10…を切断し不連続化するには、特開2002-35029号公報、特開2002-178428号公報及び特開2002-273808号公報に記載される切断方法が好適に採用される。同公報に記載される弾性伸縮部材の切断方法は、基本的には図4に示されるように、前記連続積層不織布シート5Aを製造した後、表面に凸部を複数個配列したエンボスヒートロール20と、このエンボスヒートロール20と対向する対向ロール21との間に前記連続積層不織布シート5Aを通過させ、この連続積層不織布シート5Aの弾性部材10,10…を前記エンボスヒートロール20の凸部20aおよび対向ロール21間での加圧および加熱の内の少なくとも一方により細かく切断するものである。
【0028】
〔第2形態例〕
前記弾性部材10,10の曲線配置形状は、前記トラバース装置16の制御により任意の曲線形状とすることが可能である。従って、図6に示されるように、前記弾性部材10,10…は、主として前記接合片部8aにおいて、先端側で2箇所の反転部を有する横W字状の曲線形状で配置することも可能である。なお、図中、鎖線囲み領域S1〜S9は弾性部材10の破断領域である。この場合には、接合片部8aの突出方向に4条の弾性部材束10A〜10Dによる伸縮力を有することとなり、図5に示されるファスナーシート5と比べると、2倍の伸縮力を得ることが可能となる。
【0029】
〔第3形態例〕
また、図7に示されるように、主として前記接合片部8aにおいて、前記弾性部材10は接合片8aの先端側で反転する横U字状の曲線形状で配置された複数の弾性部材22Aと、接合片8aの基端側で反転する横U字状の曲線形状で配置された複数の弾性部材22Bとの組合せにより、略X字状の曲線形状で配置されている弾性部材22とした例である。製造は、図4に示される製造方法の応用により、2組のトラバース装置を用い、弾性部材22Aを一組とする束を一方側のトラバース装置16により揺動配置し、弾性部材22Bを一組とする束を他方側のトラバース装置16により揺動配置することにより、略X字状の曲線形状で配置することが可能である。なお、図中、鎖線囲み領域S1〜S3は弾性部材22Aの破断領域である。この第3形態例の場合には、伸縮軸K1,K2が接合片8a内でX状となるため、多様な伸縮方向に適応可能となるため、装着に当たり、ストレートにファスナーシート5を止め付けるストレート止めはもとより、クロスさせてファスナーシート5を止め付けるクロス止めにも好適に対応し得るものとなる、また、伸縮方向の多様性から止着させた状態からも外れ難くなる。
【0030】
〔第4形態例〕
本ファスナーシート5では、連続曲線状に弾性部材10,10…が配置されるものである。従って、この特性を利用して、紙おむつのサイドフラップSFに設けられた脚回りギャザー23と前記弾性部材10,10…とを連携させて脚回りのフィット性を高めるようにすることもできる。具体的には、図8に示されるように、紙おむつのサイドフラップ部SFには、脚回りギャザーを形成するためにレッグ弾性部材23,23…が配置される条件の下で、ファスナーシート5の弾性部材10,10…の下方側端部が前記レッグ弾性部材23と重なるように取り付けることにより弾性部材10…,23…の連続性が確保され、ファスナーシート5から脚回りに至る領域において、より一層のフィット性が得られるようになる。
【0031】
〔第5形態例〕
また、図9に示されるように、ファスナーシート5’は、1つの接合片部8aを有する態様を示したものである。このファスナーシート5’は、図3に示される連続積層不織布シート5Aの切断位置13を1つの接合片8a毎に設定することにより得られるものである。この場合には、同図9に示されるように、ファスナーシート5’を上下2段で配置するようにしても良いし、場合によっては図10に示されるように、単独で配置するようにしてもよい。
【0032】
〔弾性部材10の他の曲線配置態様〕
上記形態例はいずれも、図11(A)に示されるように、弾性部材10、10…の揺動制御点を連続積層不織布シート5Aの幅方向に沿う直線ラインに並べて揺動制御した場合の軌跡線となるが、図11(B)に示されるように、揺動制御点を連続積層不織布シート5Aの幅方向線に対して傾斜させた直線ラインに並べて揺動制御した場合には、一方側の伸縮軸K1(K2)については各弾性部材10,10…の間隔を大きく設定でき、他方側の伸縮軸K2(K1)については各弾性部材10,10…の間隔を小さく設定できるようになる。さらに、図12(B)に示されるようにトラバース装置16の弾性部材保持点を連続積層不織布シート5Aのライン方向に並べた場合には、図12(A)に示されるように、弾性部材10,10…の伸縮軸K1,K2に沿う曲線ライン部分において、各弾性部材10,10…間に所定の間隔を持たせることができるようになる。
【0033】
以上詳説したように、前記ファスナーシート5は、突出片部8aの部材長手方向に対して交差する方向に2本の伸縮軸K1,K2を有し、伸縮方向に多様性を持たせているため、図13に示されるように、ファスナーシート5の接合片部8a、8aをストレートに止め付ける「ストレート止め」の場合には、各接合片部8a、8aを水平方向(伸縮軸K1,K2の合成方向)に伸長させた状態で止め付けることができる。また、図14に示されるように、ファスナーシート5の接合片部8a、8aをクロスさせて止め付ける「クロス止め」の場合のように、各接合片部8a、8aが傾斜方向に引っ張られて止め付けられる場合にでも、傾斜した伸縮軸K1,K2によって斜め方向に伸縮性が与えられているため、しっかりと止め付けることができる。
【0034】
〔他の形態例〕
(1)上記形態例では、前記接合片部8aとフロントターゲットテープ6とを機械的ファスナー手段たる面ファスナーによって剥離自在に接合するようにしたが、前記接合片8aに直接又はシートを介して間接的に粘着剤層を設け、フロントターゲットテープ6に剥離自在に接着可能とすることでもよい。
【符号の説明】
【0035】
1…不透液性バックシート、2…透液性トップシート、3…吸収体、4…バリヤシート、5・5’…ファスニングシート、5A…連続積層不織布シート、6…フロントターゲットテープ、7…糸状弾性伸縮部材、8a……接合片部(接合片)、8b…取付け部、9…面ファスナー、10・22A・22B…弾性部材、11・12…不織布シート、K1・K2…伸縮軸
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透液性表面シートと、裏面シートとの間に吸収体を介在させるとともに、背側両側部にそれぞれ側方に突出して設けられ、紙おむつを身体へあてがった状態で腹側表面に止着することによって紙おむつを身体に装着するためのファスナー部材を備えた使い捨て紙おむつにおいて、
前記ファスナー部材は、積層された不織布シートと、これら不織布シート間に介在され伸縮力を与える弾性部材と、前記不織布シートの内面側に設けられた粘着接合手段又は機械的接合手段とから構成されるとともに、側方に突出する1又は複数の接合片部と、紙おむつへの取付け部とを有し、前記接合片部において、前記弾性部材は少なくとも反転部を有する曲線形状で配置され、前記突出片部の部材長手方向に対して交差する方向に少なくとも2本以上の伸縮軸を有し、
前記取付け部が前記使い捨て紙おむつの背側両側部に接合されていることを特徴とする使い捨て紙おむつ。
【請求項2】
透液性表面シートと、裏面シートとの間に吸収体が介在され、両側部に前記吸収体が存在しないサイドフラップ部が形成されるとともに、このサイドフラップ部に脚回りギャザーを形成するレッグ弾性部材が配置され、背側両側部にそれぞれ側方に突出して設けられ、紙おむつを身体へあてがった状態で腹側表面に止着することによって紙おむつを身体に装着するためのファスナー部材を備えた使い捨て紙おむつにおいて、
前記ファスナー部材は、積層された不織布シートと、これら不織布シート間に介在され伸縮力を与える弾性部材と、前記不織布シートの内面側に設けられた粘着接合手段又は機械的接合手段とから構成されるとともに、側方に突出する1又は複数の接合片部と、紙おむつへの取付け部とを有し、前記接合片部及び取付け部において、前記弾性部材は少なくとも反転部を有する曲線形状で配置され、前記突出片部の部材長手方向に対して交差する方向に少なくとも2本以上の伸縮軸を有し、
前記取付け部が前記使い捨て紙おむつの背側両側部に接合されるとともに、該取付け部に配置された弾性部材の一方側端部が前記レッグ弾性部材に重なるように配置されていることを特徴とする使い捨て紙おむつ。
【請求項1】
透液性表面シートと、裏面シートとの間に吸収体を介在させるとともに、背側両側部にそれぞれ側方に突出して設けられ、紙おむつを身体へあてがった状態で腹側表面に止着することによって紙おむつを身体に装着するためのファスナー部材を備えた使い捨て紙おむつにおいて、
前記ファスナー部材は、積層された不織布シートと、これら不織布シート間に介在され伸縮力を与える弾性部材と、前記不織布シートの内面側に設けられた粘着接合手段又は機械的接合手段とから構成されるとともに、側方に突出する1又は複数の接合片部と、紙おむつへの取付け部とを有し、前記接合片部において、前記弾性部材は少なくとも反転部を有する曲線形状で配置され、前記突出片部の部材長手方向に対して交差する方向に少なくとも2本以上の伸縮軸を有し、
前記取付け部が前記使い捨て紙おむつの背側両側部に接合されていることを特徴とする使い捨て紙おむつ。
【請求項2】
透液性表面シートと、裏面シートとの間に吸収体が介在され、両側部に前記吸収体が存在しないサイドフラップ部が形成されるとともに、このサイドフラップ部に脚回りギャザーを形成するレッグ弾性部材が配置され、背側両側部にそれぞれ側方に突出して設けられ、紙おむつを身体へあてがった状態で腹側表面に止着することによって紙おむつを身体に装着するためのファスナー部材を備えた使い捨て紙おむつにおいて、
前記ファスナー部材は、積層された不織布シートと、これら不織布シート間に介在され伸縮力を与える弾性部材と、前記不織布シートの内面側に設けられた粘着接合手段又は機械的接合手段とから構成されるとともに、側方に突出する1又は複数の接合片部と、紙おむつへの取付け部とを有し、前記接合片部及び取付け部において、前記弾性部材は少なくとも反転部を有する曲線形状で配置され、前記突出片部の部材長手方向に対して交差する方向に少なくとも2本以上の伸縮軸を有し、
前記取付け部が前記使い捨て紙おむつの背側両側部に接合されるとともに、該取付け部に配置された弾性部材の一方側端部が前記レッグ弾性部材に重なるように配置されていることを特徴とする使い捨て紙おむつ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2009−131722(P2009−131722A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−76073(P2009−76073)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【分割の表示】特願2005−52382(P2005−52382)の分割
【原出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【分割の表示】特願2005−52382(P2005−52382)の分割
【原出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】
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