説明

使用済み植物培養液の処理方法

【課題】藻類生成作用によって植物工場ユニットなどからの使用済み植物培養液を清浄化するに際して、使用済み植物培養液からの生成藻類の分離回収を、手間少なく低コストにて遂行することができる、使用済み植物培養液の処理方法を提供する。
【解決手段】送出し用ロール7と巻取り用ロール8との間を延びる長尺帯状捕獲膜9の部分を、容器6内に収容した使用済み植物培養液5中に沈めた状態にし、該容器6内の使用済み植物培養液5を増殖液として藻類11を生成した後、ロール7,8を回転させて長尺帯状捕獲膜9を増殖液5の液面よりも上方に位置させ生成藻類11を増殖液5から分離させて長尺帯状捕獲膜9に捕獲し、しかる後、長尺帯状捕獲膜9の藻類捕獲部分を巻取り用ロール8に巻き取っていくことを繰り返して、長尺帯状捕獲膜9で生成藻類11の捕獲を複数回行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済み植物培養液の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
野菜類や花卉類等の植物を水耕栽培等により工場生産する植物工場では、使用済み植物培養液に含まれる窒素やリンが排水基準を超過してしまうことがあり、また、基準を超えなくとも、下水に放流すると、排水処理場の負荷を大きくしてしまう。
【0003】
そのような問題に対し、従来より、二階建ての植物工場において、一階で人工光を利用した野菜類等の栽培を行い、二階で太陽光を利用した食用藻の生産を行うようにし、藻の生産に、野菜類等の栽培に使用した使用済み植物培養液を増殖液として使用することで、使用済み植物培養液を清浄化し、それを、野菜類等の栽培に循環利用するか、あるいは、下水に放出するという方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−058367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような方法において、藻を生産した後に、藻と増殖液とを分離しなければならないが、それに多くの手間を必要とし、コストが高くついてしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、上記のような問題点に鑑み、藻類生成作用によって植物工場ユニットなどからの使用済み植物培養液を清浄化するに際して、使用済み植物培養液からの生成藻類の分離回収を、手間少なく低コストにて遂行することができる、使用済み植物培養液の処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題は、使用済み植物培養液を収容する容器と、
前記容器に収容される使用済み植物培養液の液面よりも上方に位置して互いに間隔をおき、平行に設けられた送出し用ロール及び巻取り用ロールと、
送出し用ロールに巻き付けられ、巻取り用ロールに巻取り可能に連結された藻類捕獲用の透液性を備えた長尺帯状膜と
が備えられ、該長尺帯状捕獲膜を、送出し用ロールから送り出し、巻取り用ロールに巻き取っていくことができるようになされた処理装置を用い、
送出し用ロールと巻取り用ロールとの間を延びる長尺帯状捕獲膜部分を、容器内に収容した使用済み植物培養液中に沈めた状態にして、該容器内の使用済み植物培養液を増殖液として藻類を生成した後、
いずれか一方又は両方のロールを回転させ、長尺帯状捕獲膜を増殖液の液面よりも上方に位置させることで、生成した藻類を増殖液から分離させて長尺帯状捕獲膜に捕獲し、しかる後、
長尺帯状捕獲膜の藻類捕獲部分を巻取り用ロールに巻き取っていく、ことを繰り返して、前記長尺帯状捕獲膜で生成藻類の捕獲を複数回行うことを特徴とする、使用済み植物培養液の処理方法によって解決される。
【0008】
この方法によれば、使用済み植物培養液を増殖液として藻類を生成することとしているので、藻類生成作用によって使用済み植物培養液を清浄化することができる。
【0009】
のみならず、増殖液から藻類を分離するため、上記のような装置を用い、送出し用ロールと巻取り用ロールとの間を延びる長尺帯状捕獲膜部分を、容器内に収容した使用済み植物培養液中に沈めた状態にし、藻類生成後は、いずれか一方又は両方のロールを回転させ、長尺帯状捕獲膜を増殖液の液面よりも上方に位置させて生成した藻類を捕獲し、そして、長尺帯状捕獲膜の藻類捕獲部分を巻取り用ロールに巻き取っていくというようにしており、しかも、それを繰り返して、同じ長尺帯状捕獲膜で生成藻類の捕獲を複数回行うようにしているので、増殖液、即ち使用済み植物培養液からの藻類の分離、回収を、手間少なく低コストにて遂行していくことができる。
【0010】
第1発明において、長尺帯状捕獲膜の藻類捕獲部分は、これを乾燥させた後に、巻取り用ロールに巻き取っていくとよい(第2発明)。こうすることで、長尺帯状捕獲膜の藻類捕獲部分を巻取り用ロールにコンパクトに巻き取っていくことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、以上のとおりのものであるから、藻類生成作用によって植物工場ユニットなどからの使用済み植物培養液を清浄化するに際して、使用済み植物培養液からの生成藻類の分離回収を、手間少なく低コストにて遂行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図(イ)は実施形態のシステムの全体構成を示す説明図、図(ロ)は処理装置の正面図である。
【図2】図(イ)〜図(ハ)は、図3及び図4と共に、処理の方法を順次に示す正面図である。
【図3】図(ニ)〜図(ヘ)は、図2及び図4と共に、処理の方法を順次に示す正面図である。
【図4】図(ト)〜図(リ)は、図2及び図3と共に、処理の方法を順次に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1(イ)に示す実施形態において、1は野菜類、花卉類等の植物を水耕栽培等により工場生産する植物工場ユニット、2,2は第1,第2の処理装置、3は水質調整槽であり、植物工場ユニット1での野菜類等の栽培によって生じた、窒素やリンを含む使用済み植物培養液は、第1の処理装置2にホース4で送られて処理された後、第2処理装置2にホース4で送られて処理され、更に、それが水質調整槽3にホース4で送られて該調整槽3にて最終の水質確認が行われ、その後、排水基準を満たした使用済み植物培養液のみが下水に放流されるようになされている。
【0015】
上記の第1,第2の処理装置2,2が、本発明方法において用いられる処理装置であり、各処理装置2では同じ処理が行われる。即ち、各処理装置2は、図1(ロ)及び図2(イ)〜第4(リ)に示すように、使用済み植物培養液5を収容する透光性の容器6と、該容器6に収容される使用済み植物培養液5の液面よりも上方に位置して互いに間隔をおき、平行に設けられた送出し用ロール7及び巻取り用ロール8と、送出し用ロール7に巻き付けられ、巻取り用ロール8に巻取り可能に連結された、藻類捕獲用の、透液性を備えた、不織布などからなる、長さが例えば15mと長尺な、帯状膜9とを備えていて、かかる長尺帯状捕獲膜9を、送出し用ロール7から送り出し、巻取り用ロール8に巻き取っていくことができるようになされている。各ロール7,8は、手動で回転するようになっていてもよいし、モーターで回転するようになっていてもよい。10は、透明な蓋である。
【0016】
この処理装置2を用い、図2(イ)(ロ)に示すように、送出し用ロール7と巻取り用ロール8との間を延びる長尺帯状捕獲膜部分を、容器6内に収容した使用済み植物培養液5中の底面がわに沈めた状態にして、該容器6内の使用済み植物培養液5を藻類増殖液とし、容器6に蓋10をして一週間ほど放置し、図2(ハ)に示すように、藻類11を生成する。
【0017】
その後、図3(ニ)〜(ヘ)に示すように、ロール7,8のうちのいずれか一方又は両方を回転させ、長尺帯状捕獲膜9を増殖液5の液面よりも上方に位置させる。これにより、藻類11は、長尺帯状捕獲膜9の有する透液性によって、長尺帯状捕獲膜9の上面部に効率良く吸着していき、生成した藻類11は、増殖液5から分離して長尺帯状捕獲膜9に捕獲される。
【0018】
捕獲後、長尺帯状捕獲膜9の藻類捕獲部分は、増殖液5の液面よりも上方に位置させたまま数時間ほど放置するなどして乾燥させ、その後、巻取り用ロール8に巻き取っていく。
【0019】
しかる後、図4(ト)(チ)に示すように、長尺帯状捕獲膜9の藻類捕獲部分を巻取り用ロール8に巻き取って回収し、容器6内の清浄化された増殖液5は、第2処理装置2の容器に送って同じ処理を行い、第1処理装置2では、図4(リ)及び図2(イ)(ロ)に示すように、植物工場ユニット1からの次の使用済み植物培養液5を容器6に送り込んで、処理を繰り返し、長尺帯状捕獲膜9で生成藻類11の捕獲を複数回行っていく。こうして、長尺帯状捕獲膜9が使い果たされたなら、使用済みの長尺帯状捕獲膜は回収して、新たな長尺帯状捕獲膜をセットして、上記の処理を繰り返していく。
【0020】
このように、上記の処理方法によれば、使用済み植物培養液5を増殖液として藻類11を生成することとしているので、藻類生成作用によって使用済み植物培養液5を清浄化することができ、それを、下水に放流することができ、放流しても排水処理場の負荷を大きくすることはなく、また、野菜類等の栽培に循環利用するようにすることもできる。
【0021】
そして、増殖液5から藻類11を分離するため、上記のような処理装置2を用い、送出し用ロール7と巻取り用ロール8との間を延びる長尺帯状捕獲膜部分を、容器6内に収容した使用済み植物培養液5中に沈めた状態にし、藻類11の生成後は、ロール7,8のうちのいずれか一方又は両方の回転させ、長尺帯状捕獲膜9を増殖液5の液面よりも上方に位置させて生成した藻類11を捕獲し、そして、長尺帯状捕獲膜9の藻類捕獲部分を巻取り用ロール8に巻き取っていくというようにしており、しかも、それを繰り返して、同じ長尺帯状捕獲膜9で生成藻類11の捕獲を複数回行うようにしているので、増殖液、即ち使用済み植物培養液5からの藻類11の分離、回収を、手間少なく低コストにて遂行していくことができる。
【0022】
また、長尺帯状捕獲膜9の藻類捕獲部分は、巻取り用ロール8に巻き取る前に、数時間放置するなどして乾燥させた後に、巻取り用ロール8に巻き取っていくようにしているので、長尺帯状捕獲膜9の藻類捕獲部分を巻取り用ロール8にコンパクトに巻き取っていくことができる。
【符号の説明】
【0023】
1…植物工場ユニット
2…処理装置
5…使用済み植物培養液(増殖液)
6…容器
7…送出し用ロール
8…巻取り用ロール
9…長尺帯状捕獲膜
11…藻類

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済み植物培養液を収容する容器と、
前記容器に収容される使用済み植物培養液の液面よりも上方に位置して互いに間隔をおき、平行に設けられた送出し用ロール及び巻取り用ロールと、
送出し用ロールに巻き付けられ、巻取り用ロールに巻取り可能に連結された藻類捕獲用の透液性を備えた長尺帯状膜と
が備えられ、該長尺帯状捕獲膜を、送出し用ロールから送り出し、巻取り用ロールに巻き取っていくことができるようになされた処理装置を用い、
送出し用ロールと巻取り用ロールとの間を延びる長尺帯状捕獲膜部分を、容器内に収容した使用済み植物培養液中に沈めた状態にして、該容器内の使用済み植物培養液を増殖液として藻類を生成した後、
いずれか一方又は両方のロールを回転させ、長尺帯状捕獲膜を増殖液の液面よりも上方に位置させることで、生成した藻類を増殖液から分離させて長尺帯状捕獲膜に捕獲し、しかる後、
長尺帯状捕獲膜の藻類捕獲部分を巻取り用ロールに巻き取っていく、ことを繰り返して、前記長尺帯状捕獲膜で生成藻類の捕獲を複数回行うことを特徴とする、使用済み植物培養液の処理方法。
【請求項2】
長尺帯状捕獲膜の藻類捕獲部分は、これを乾燥させた後に、巻取り用ロールに巻き取っていく請求項1に記載の、使用済み植物培養液の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−249611(P2012−249611A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126609(P2011−126609)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【Fターム(参考)】